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審決分類 |
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 G01J 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01J 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01J |
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管理番号 | 1290031 |
審判番号 | 不服2013-857 |
総通号数 | 177 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-09-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-01-17 |
確定日 | 2014-07-25 |
事件の表示 | 特願2007-552618「センサおよびキャップ配置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 8月 3日国際公開、WO2006/079588、平成20年 7月31日国内公表、特表2008-528987〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成18年(2006年)1月12日(優先日 2005年1月26日 米国)を国際出願日とする特願2007-552618号であって、平成23年4月28日付けで拒絶理由が通知され、同年8月8日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、同年12月20日付けで拒絶理由(最後)が通知され、平成24年3月22日付けで意見書が提出されるとともに、同日付で手続補正がなされたが、同年9月18日付けで同年3月22日付けの手続補正に対する補正の却下の決定がなされ、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成25年1月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。 その後、当審において、平成25年10月1日付けで前置報告書の内容について請求人の意見を事前に求める審尋をし、同年12月18日付けで回答書が提出された。 第2 平成25年1月17日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成25年1月17日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成23年8月8日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の、 「第1の基板の内部に形成された少なくとも1つのセンサ素子と、 第2の基板に形成された少なくとも1つの回折光学素子とを備え、 前記第1基板および前記第2の基板は、シリコンで与えられ、前記第2の基板が前記少なくとも1つのセンサ素子上にキャップを形成するように互いに関係して構成され、前記少なくとも1つの回折光学素子は前記キャップ上の入射光を前記少なくとも1つのセンサ素子に導くように構成され、前記キャップは側壁を有し、前記少なくとも1つの光学素子は前記キャップ内に形成されており、前記キャップが前記少なくとも1つのセンサ素子周りの空洞を区画するように、前記側壁の底部に備えられた接合材料を使用して前記側壁が前記第1の基板に接合されて、前記区画された空洞は前記キャップおよび前記少なくとも1つのセンサ素子によって共有されており、前記少なくとも1つの回折光学素子は前記キャップ上の入射放射を下方に位置している前記少なくとも1つのセンサ素子の少なくとも1つへ集光すること を特徴とするセンサ。」が 「第1の基板の中に形成された少なくとも1つのセンサ素子と、 第2の基板上に形成されることによって、シリコンの中に実装された少なくとも1つの光学素子とを備え、 前記第1基板および前記第2の基板は、前記第2の基板が前記少なくとも1つのセンサ素子上にキャップを形成するように互いに関係して構成され、前記キャップの内側表面または外側表面上に反射防止被覆が備えられており、前記キャップは垂直側壁を有し、前記少なくとも1つの光学素子は前記キャップ内に形成されており、前記キャップが、周囲圧力よりも低い圧力を有する前記少なくとも1つのセンサ素子周りのシールされた空洞を区画するように、前記側壁の底部に備えられたシール材料を使用して前記側壁が前記第1の基板に真空状態下で接合されて、前記シールされた空洞は前記キャップおよび前記少なくとも1つのセンサ素子によって共有されており、前記少なくとも1つの光学素子は前記キャップ上の入射放射を下方に位置している前記少なくとも1つのセンサ素子の少なくとも1つへ集光すること を特徴とするセンサ。」と補正された。(下線は、補正された箇所を示す。) そして、この補正には、少なくとも、 (1)光学素子の種類について、本件補正前の請求項1においては「回折光学素子」と特定されていたものを、本件補正後においては単に「光学素子」とする補正事項、及び、 (2)第1の基板について、本件補正前の請求項1においては「シリコンで与えられ」ていることを特定していたのに、本件補正により「シリコンで与えられ」ることの限定を解除する補正事項 を含むものである。 上記の(1)(2)の補正事項については、実質上特許請求の範囲を拡張するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第1ないし4号に掲げるいずれの事項をも目的とするものではない。 よって、請求項1についての上記の(1)(2)の補正事項を含む本件補正は、同法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定によって却下されるべきものである。 2 独立特許要件(特許法第29条第2項)違反についての検討 仮に、本件補正における請求項1の補正が、特許請求の範囲のいわゆる限定的減縮を目的とする補正である、すなわち、本件補正における特許請求の範囲の請求項1についてする補正が、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものとした場合、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に違反しないか)について検討する。 (1)引用例 ア 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平11-258038号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。(後述の「イ 引用例1に記載された発明の認定」において発明の認定に直接関係する記載に下線を付した。) 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、直列接続された複数個の熱電対により赤外線量や温度、温度変化等を計測する赤外線センサに関する。」 「【0013】 【発明の実施の形態】(第1の実施形態)図3は本発明の一実施形態によるサーモパイル型赤外線センサ21の一部破断した斜視図、図4はその断面図である。このサーモパイル型赤外線センサ21にあっては、シリコン基板によって形成されたヒートシンク22の中央部上面に空洞部23が開口されており、空洞部23の上面には熱絶縁薄膜24が形成されている。この熱絶縁薄膜24は、Si02やSiNなどによって形成されており、熱容量を小さくするため数ミクロンの厚みにしている。ヒートシンク22と熱絶縁薄膜24の境界部分においては、ヒートシンク22の上面と熱絶縁薄膜24の上面にかけて第1熱電材料25と第2熱電材料26が交互に配線されており、ヒートシンク22上面で第1及び第2熱電材料25,26を接合させて熱電対の冷接点27を設け、熱絶縁薄膜24上面で第1及び第2熱電材料25,26を接合させて熱電対の温接点28を設け、これによって熱電対が直列に接続された温度計測用のサーモパイル29を形成している(図5)。熱絶縁薄膜24上の温接点28が設けられた領域は、図5に示すように、Au、Bi等の金属黒からなる赤外線吸収体30によって円環状に覆われている。また、温度計測用のサーモパイル29の両端には、それぞれ電極31が設けられている。なお、図5において、斜線を施した領域のサーモパイル29は第1の熱電材料25を表し、斜線を施していない領域のサーモパイル29は第2の熱電材料26を表し、網掛けした領域は赤外線吸収体30を設ける領域を示している。 【0014】さらに、ヒートシンク22上には、シリコン基板によって形成されたレンズ基板32がシリコンフュージョンボンディング等によって接合されている。レンズ基板32の上面には、図6に示すような輪帯状をしたフレネルレンズ33が形成されている。また、レンズ基板32の下面には凹部34が設けられており、凹部34の周囲をヒートシンク22に接合させてある。従って、サーモパイル29や赤外線吸収体30は、ヒートシンク22とレンズ基板32との間に気密的に封入されており、サーモパイル29等の特性変化が少なくなっている。また、内部に窒素ガスや不活性ガスを封入することもできる。さらに、電極31の位置に対向させて、レンズ基板32には電極31を外部に露出させるためのホール35が穿孔されている。 【0015】しかして、この赤外線センサ21に赤外線が入射すると、赤外線はフレネルレンズ33によって集光され、温接点28上に形成された赤外線吸収体30に吸収されて熱に変換される。そして、ヒートシンク22上に形成された冷接点27と温接点28に温度差が生じることでサーモパイル29の電極31間に起電力が出力される。 【0016】ここで、例えば赤外線吸収体30を円板状にして、フレネルレンズ33の焦点を赤外線吸収体30の1点にスポット状に集光させると検出効率は高くなるが、赤外線吸収体30の面積が小さくなり、サーモパイル29の熱電対本数を多くとることができないため出力が落ちる。また、光学系のアライメントにも高い精度が要求される。 【0017】そこで、本発明においては、図7に示すように、フレネルレンズ33の焦点が、検出対象とする波長λの赤外線において赤外線受光面の位置の手前または奥になるようにわざとずらし、赤外線受光面において当該波長λの赤外線が輪帯状に少し広がるように設計する。赤外線受光面で輪帯状に少し広がっている赤外線領域に一致させて赤外線吸収体30の位置及びサイズを決めることにより、赤外線吸収体30の面積を広げることができ、サーモパイル29の熱電対本数(温接点数)を減らすことなく赤外線吸収体30による赤外線の検出効率を高くすることができる。なお、図7に示す33Aは、比較のためにフレネルレンズ33の大きさを示したもの(フレネルレンズ33の影)である。 【0018】さらに、図8に示すように、フレネルレンズ33は波長により焦点距離が異なるため、フレネルレンズ33と円環状の赤外線吸収体30とを組合わせ、赤外線吸収体30の輪帯の幅および直径の大きさを調節することにより、特定の波長域の赤外線のみを険出することができる。すなわち、特定の波長外の光は、赤外線吸収体30の外周側もしくは内周側へ外れるようにして、赤外線吸収体30に照射されないようにする。具体的にいうと、検出対象とする赤外線の波長領域のうち最大波長の光が赤外線吸収体30の外周縁(又は、内周円)に照射され、最小波長の光が赤外線吸収体30の内周縁(又は、外周円)に照射されるようにする。 【0019】これと同じ効果を赤外線フィルタで実現しようとすると、フィルタの両面に反射防止用の多層膜を施すなどの加工が必要となるため高価なデバイスとなるが、この方法を用いれば安価で容易に実現することができる。例えばSiフィルタは、1?15μmの赤外線を通すが、このうち5μm以下の波長をカットし、波長10μm付近の赤外線を主に検出したい場合には、図9に示すように、波長1?5μmの赤外線の光路を赤外線吸収体30からはずし、波長10μm(5?15μm)の赤外線の光路の部分に赤外線吸収体30を配置してやればよい。 【0020】また、この実施形態によれば、サーモパイル29及び赤外線吸収体30を形成したヒートシンク22とフレネルレンズ33を形成したレンズ基板32とを積層して内部にサーモパイル29や赤外線吸収体30を封止する構造としているので、光学系のアライメントが容易に行える。また、金属ステムや缶ケース等が不要になるので、コストダウンを図ることができる。」 「【0021】 次に、上記サーモパイル型赤外線センサ21の製造方法を図10により説明する。まず、ヒートシンク22となるシリコン基板36の両面に窒化膜等からなる熱絶縁薄膜24a,24bを被覆する[図10(a)]。ついで、シリコン基板36の赤外線検出面側にビスマスとアンチモン等の異種熱電材料からなる熱電対を複数個直列に接続し、複数の温接点28及び冷接点27を有するサーモパイル29を形成する。このときビスマスとアンチモンの電導ラインは、それぞれ蒸着法およびフォトリソグラフィ工程、リフトオフ法によりパターニングされる[図10(b)]。この後、スパッタなどによりシリコン基板36の両面に酸化膜等からなる絶縁膜37を被覆する[図10(c)]。シリコン基板36の赤外線検出面側に形成された絶縁膜37を、フォトリソグラフィ工程により赤外線吸収体30のパターンに合わせて一部除去した後、蒸着やスパッタなどにより金やビスマス等の金属黒を堆積させ、リフトオフ法により温接点28を覆う赤外線吸収体30を輪帯状にパターニングし、絶縁膜37を剥離する[図10(d)]。ついで、熱絶縁薄膜24に孔又はスリットをあけてKOH溶液等によりシリコン基板36を赤外線検出面側から異方性エッチングすることにより空洞部23と宙空状の熱絶縁薄膜24を形成する[図10(e)]。 【0022】一方、レンズ基板32となるシリコン基板38を異方性エッチングすることにより、電極31を取り出すためのホール35をあけ[図(f)]、シリコン基板38の赤外線検出面側と反対側の面を異方性エッチングすることにより凹部34を形成する[図10(g)]。こうして製作されたヒートシンク22とレンズ基板32を重ね合わせ、電極31とホール35等を位置合わせして接合する[図10(h)]。この後、レンズ基板32の赤外線検知面側にAuやAlの金属膜を蒸着またはスパッタし、フォトリソグラフィ工程によりフレネルレンズ33のパターンを形成する[図10(i)]。このとき、両面アライナを用いることにより、フレネルレンズ33と赤外線吸収体30の各中心が一致するように形成する。また、同時にレンズ基板32とヒートシンク22の間の内部空間を真空に封止する。 【0023】フレネルレンズ33は、シリコン基板38を等方性エッチングすることによって形成することができるが、あるいは、レンズ基板32上に金属や有機系の薄膜を形成し、これをエッチングすることによってフレネルレンズ33を形成してもよい。」 「【図3】 」 「【図4】 」 イ 引用例1に記載された発明の認定 【図3】及び【図4】から、 (i)レンズ基板32は、ヒートシンク22上に形成された温度計測用のサーモバイル29上にキャップを形成するように構成されていること、 (ii)レンズ基板32は、垂直側壁を有し、その垂直側壁で支持された天板部の上面にフレネルレンズ33が形成されていること、 (iii)レンズ基板32とヒートシンク22とによって形成されている内部空間が、温度計測用のサーモパイル29とフレネルレンズ33によって共有されていること、 を見て取ることができる。 すると、上記記載(図面の記載も含む)から、引用例1には、 「サーモパイル型赤外線センサ21であって、 シリコン基板によって形成されたヒートシンク22の中央部上面に空洞部23が開口されており、 ヒートシンク22上面で第1及び第2熱電材料25,26を接合させて熱電対の冷接点27を設け、熱絶縁薄膜24上面で第1及び第2熱電材料25,26を接合させて熱電対の温接点28を設け、これによって熱電対が直列に接続された温度計測用のサーモパイル29を形成し、 さらに、ヒートシンク22上には、シリコン基板によって形成されたレンズ基板32がシリコンフュージョンボンディング等によって接合され、レンズ基板32の上面には、輪帯状をしたフレネルレンズ33が形成され、 また、レンズ基板32の下面には凹部34が設けられており、凹部34の周囲をヒートシンク22に接合させてあり、従って、サーモパイル29や赤外線吸収体30は、ヒートシンク22とレンズ基板32との間に気密的に封入されており、 レンズ基板32は、ヒートシンク22上に形成された温度計測用のサーモバイル29上にキャップを形成するように構成され、 レンズ基板32は、垂直側壁を有し、その垂直側壁で支持された天板部の上面にフレネルレンズ33が形成され、 レンズ基板32とヒートシンク22の間の内部空間は真空に封止され、前記内部空間が、温度計測用のサーモパイル29とフレネルレンズ33によって共有され、 この赤外線センサ21に赤外線が入射すると、赤外線はフレネルレンズ33によって集光され、温接点28上に形成された赤外線吸収体30に吸収されて熱に変換され、そして、ヒートシンク22上に形成された冷接点27と温接点28に温度差が生じることでサーモパイル29の電極31間に起電力が出力されるサーモパイル型赤外線センサ。」 の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 ウ 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2001-349787号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、赤外線検出素子および測温計に関する。」 「【0039】まず、上述の耳式体温計100では、図3、図4(a)および図5(a)に示すように、入光した赤外線を導波管206内に伝搬させ、赤外線検出チップ210に誘導する。赤外線検出チップ210では、サーモパイル型の赤外線センサ209と基準温度を検出するためのサーミスタ211とをパッケージ基材212上に搭載し、パッケージケース213により全体を一体化させ、赤外線を入光する窓には、可視光を遮断し赤外線を透過するためのシリコン(Si)等から成るフィルタ(赤外線フィルタ)208が設けられている。 【0040】一方、図1(本実施形態)の耳式体温計1では、まず、図5(b)に示すように、上記の赤外線センサ209に対応するサーモパイルチップSPCの表面に直接接触(接合)するようにバイナリレンズBLを設けて、赤外線検出チップ21として一体化している。バイナリレンズBLは、シリコン(またはゲルマニウム:SiまたはGe)基板BLaに対してエッチング等により多段構成のバイナリエレメントBLb(誇張して図示)を構成することにより、全体として赤外線を集光するバイナリレンズとして機能させたレンズ(用)基板であり、サーモパイルチップSPCの表面に直接接合している。また、その組成から、上記の赤外線フィルタ208と同様に、可視光を遮断し赤外線を透過する赤外線フィルタとしての機能も兼ね備えているが、さらに近赤外線等を遮断するなど波長領域を絞るために、硫化亜鉛(ZnS)やゲルマニュウム(Ge)の多層膜による赤外線コーティングBLcを施している。」 「【0093】本例では、図21(a)および図22に示すように、赤外線チップ12は、バイナリレンズチップBLC(ただし、図21(a)では図5(b)と同様にバイナリエレメントBLbを誇張して図示)と、ダイオードチップDDCと、サーモパイルチップSPC(ただし、PNダイオードPNDはダイオードチップDDC側に形成するため除く)と、を備え、それらを接合して一体化している。これらは全て、前述と同様に、所定のシリコン(またはゲルマニュウム)基板に対して、エッチング等により形成した後に接合する。また、接合後には、ボンディングワイヤ26を片側(図示左側)からのみ引き出して、回路基板3に接続する。」 「【図21】 」 (2)本願補正発明と引用発明との対比 ア 対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「シリコン基板によって形成されたヒートシンク22」及び「温度計測用のサーモパイル29」が、それぞれ、本願補正発明の「第1の基板」及び「センサ素子」に相当するから、引用発明の「シリコン基板によって形成されたヒートシンク22の中央部上面に空洞部23が開口されており、ヒートシンク22上面で第1及び第2熱電材料25,26を接合させて熱電対の冷接点27を設け、熱絶縁薄膜24上面で第1及び第2熱電材料25,26を接合させて熱電対の温接点28を設け」たことによって形成された「熱電対が直列に接続された温度計測用のサーモパイル29」と、本願補正発明の「第1の基板の中に形成された少なくとも1つのセンサ素子」とは、「第1の基板に形成された少なくとも1つのセンサ素子」である点で共通する。(下線は当審において付したものである。) 引用発明の「シリコン基板によって形成されたレンズ基板32」及び「輪帯状をしたフレネルレンズ33」が、それぞれ、本願補正発明の「第2の基板」及び「光学素子」に相当するから、引用発明の「シリコン基板によって形成された」「レンズ基板32の上面に」形成された「輪帯状をしたフレネルレンズ33」が、本願補正発明の「第2の基板上に形成されることによって、シリコンの中に実装された少なくとも1つの光学素子」に相当する。 引用発明の「ヒートシンク22上面で第1及び第2熱電材料25,26を接合させて熱電対の冷接点27を設け、熱絶縁薄膜24上面で第1及び第2熱電材料25,26を接合させて熱電対の温接点28を設け、これによって熱電対が直列に接続された温度計測用のサーモパイル29を形成し、さらに、ヒートシンク22上には、シリコン基板によって形成されたレンズ基板32がシリコンフュージョンボンディング等によって接合され」ることが、本願補正発明の「前記第1基板および前記第2の基板は、前記第2の基板が前記少なくとも1つのセンサ素子上にキャップを形成するように互いに関係して構成され」ることに相当する。 引用発明の「レンズ基板32は、ヒートシンク22上に形成された温度計測用のサーモバイル29上にキャップを形成するように構成され」「レンズ基板32は、垂直側壁を有し、その垂直側壁で支持された天板部の上面にフレネルレンズ33が形成され」ることと、本願補正発明の「前記キャップは垂直側壁を有し、前記少なくとも1つの光学素子は前記キャップ内に形成されて」いることとは、「前記キャップは垂直側壁を有し、前記少なくとも1つの光学素子は前記キャップに形成されて」いる点で共通する。(下線は当審において付したものである。) 引用発明の「シリコンフュージョンボンディング等」が本願補正発明の「シール材料」に相当し、また、引用発明の「(レンズ基板32とヒートシンク22の間の)内部空間は真空に封止」されることが、本願補正発明の「周囲圧力よりも低い圧力を有する」「空洞」を「区画するように」「真空状態下で接合」することに相当するから、引用発明の「ヒートシンク22上には、シリコン基板によって形成されたレンズ基板32がシリコンフュージョンボンディング等によって接合され」、「レンズ基板32とヒートシンク22の間の内部空間は真空に封止され、前記内部空間が、温度計測用のサーモパイル29とフレネルレンズ33によって共有され」ることが、本願補正発明の「前記キャップが、周囲圧力よりも低い圧力を有する前記少なくとも1つのセンサ素子周りのシールされた空洞を区画するように、前記側壁の底部に備えられたシール材料を使用して前記側壁が前記第1の基板に真空状態下で接合されて、前記シールされた空洞は前記キャップおよび前記少なくとも1つのセンサ素子によって共有されて」いることに相当する。 引用発明の「この赤外線センサ21に赤外線が入射すると、赤外線はフレネルレンズ33によって集光され、温接点28上に形成された赤外線吸収体30に吸収されて熱に変換され、そして、ヒートシンク22上に形成された冷接点27と温接点28に温度差が生じることでサーモパイル29の電極31間に起電力が出力される」ことが、本願補正発明の「前記少なくとも1つの光学素子は前記キャップ上の入射放射を下方に位置している前記少なくとも1つのセンサ素子の少なくとも1つへ集光する」ことに相当する。 イ 一致点 したがって、本願補正発明と引用発明とは、 「第1の基板に形成された少なくとも1つのセンサ素子と、 第2の基板上に形成されることによって、シリコンの中に実装された少なくとも1つの光学素子とを備え、 前記第1基板および前記第2の基板は、前記第2の基板が前記少なくとも1つのセンサ素子上にキャップを形成するように互いに関係して構成され、前記キャップは垂直側壁を有し、前記少なくとも1つの光学素子は前記キャップに形成されており、前記キャップが、周囲圧力よりも低い圧力を有する前記少なくとも1つのセンサ素子周りのシールされた空洞を区画するように、前記側壁の底部に備えられたシール材料を使用して前記側壁が前記第1の基板に真空状態下で接合されて、前記シールされた空洞は前記キャップおよび前記少なくとも1つのセンサ素子によって共有されており、前記少なくとも1つの光学素子は前記キャップ上の入射放射を下方に位置している前記少なくとも1つのセンサ素子の少なくとも1つへ集光するセンサ。」 の発明である点で一致し、次の各点で相違する。 ウ 相違点 (ア)相違点1 第1の基板に形成されるセンサ素子が、本願補正発明においては「(第1の基板の)中」に形成されるのに対して、引用発明においては、その点の限定がない点。 (イ)相違点2 キャップ(第2基板)に形成される光学素子が、本願補正発明においては「(キャップの)内」に形成されるのに対して、引用発明においては、「(レンズ基板(キャップに相当))の天板部の上面」に形成される点。 (ウ)相違点3 本願補正発明においては「キャップの内側表面または外側表面上に反射防止被覆が備えられて」いるのに対して、引用発明においては、その点の限定がない点。 (3)当審の判断 ア 上記各相違点について検討する。 (ア)相違点1について 赤外線検出センサにおいてセンサ素子を支持基板の「中」に形成することは、例えば、特開2000-19015号公報の図中にも記載されている周知の技術である。 引用発明においても、例えば、製造上の利点等をも勘案して、必要に応じて適宜上記周知技術を適用し、センサ素子を支持基板の「中」に形成するようにして、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項を得ることは当業者が容易になし得たことである。 (イ)相違点2について 引用例2には、検出素子(センサ)の上側をバイナリーレンズ(光学素子)が形成されたシリコン基板で覆う赤外線検出素子(センサ)において、上記バイナリーレンズ(光学素子)をシリコン基板の内(下)側に形成するものが記載されている(特に図21(a)参照)。 そして、上記の赤外線検出センサにおいて、上記光学素子を基板の上(外)に形成するか、内(下)に形成するかは、それによって作用効果に格別の差異が生じるものではなく、両者は相互に変換し得る(選択し得る)技術的に等価な構成であるから、引用発明においても、上記引用例2に記載された技術を採用して、光学素子を基板の上(外)に形成することに換えて内側に形成するようにして、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項を得ることは当業者が容易になし得たことである。 (ウ)相違点3について 光学素子に、光をより多く透過させるために反射防止被膜で被覆することは、例えば、特開昭61-266927号公報(第2ページ右下欄下から第3行?末行)、特開平6-53537号公報(【0008】)にも記載されているように周知の技術である。 引用発明においても、光学素子(フレネルレンズ)に、光をより多く透過させるために上記周知技術を採用し、光学素子(フレネルレンズ)が形成されているキャップ(レンズ基板)を反射防止被膜で被覆するようにして、上記相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項を得ることは当業者が容易になし得たことである。 イ 本願補正発明の奏する作用効果 そして、本願補正発明によってもたらされる効果は、引用発明、引用例2に記載された発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。 ウ まとめ したがって、本願補正発明は、引用発明、引用例2に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 エ 備考(回答書の補正案について) 平成25年12月18日付けで提出された回答書において、請求人は特許請求の範囲についての補正案を提示した。 当該補正案における請求項1(に係る発明)は、本願補正発明に対してさらに、センサ素子を「複数」備え、「少なくとも1つの光学素子のそれぞれは前記キャップ上に衝突する入射放射の複数の異なる波長成分を前記複数のセンサ素子のうちの複数の異なるセンサ素子に導くように構成されている」ことを特定(限定)するものであるが、上記の特定事項は、例えば、特開平8-145787号公報(【図2】参照)にも記載されている公知の技術的事項であり、引用発明に上記の公知の技術的事項を採用することには当業者にとって容易に想到し得ることといえるから、上記補正案を採用することはできない。 (4)小括 したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 3 むすび 以上のとおりであり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1ないし4号に掲げるいずれの事項をも目的とするものではない補正事項を含むから、同法第17条の2第4項の規定に違反するものである。 また、仮に、本件補正が、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲のいわゆる限定的減縮を目的とする補正であるとしても、特許出願の際独立して特許を受けることができないから、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものである。したがって、本件補正は、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成25年1月17日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成23年8月8日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記「第2 平成25年1月17日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の「1 本件補正について」の記載参照。) 2 引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例の記載事項及び引用発明については、上記「第2 平成25年1月17日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の「2 独立特許要件(特許法第29条第2項)違反についての検討」の「(1)引用例」に記載したとおりである。 3 対比・判断 (1)対比・一致点 本願発明と引用発明とを対比すると、上記「第2 平成25年1月17日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「2 独立特許要件(特許法第29条第2項)違反についての検討」の「(2)本願補正発明と引用発明の対比」の「ア 対比」において記載したのと同様の対比の手法及び結果により、本願発明と引用発明は、 「第1の基板に形成された少なくとも1つのセンサ素子と、 第2の基板に形成された少なくとも1つの光学素子とを備え、 前記第1基板および前記第2の基板は、シリコンで与えられ、前記第2の基板が前記少なくとも1つのセンサ素子上にキャップを形成するように互いに関係して構成され、前記少なくとも1つの光学素子は前記キャップ上の入射光を前記少なくとも1つのセンサ素子に導くように構成され、前記キャップは側壁を有し、前記少なくとも1つの光学素子は前記キャップに形成されており、前記キャップが前記少なくとも1つのセンサ素子周りの空洞を区画するように、前記側壁の底部に備えられた接合材料を使用して前記側壁が前記第1の基板に接合されて、前記区画された空洞は前記キャップおよび前記少なくとも1つのセンサ素子によって共有されており、前記少なくとも1つの光学素子は前記キャップ上の入射放射を下方に位置している前記少なくとも1つのセンサ素子の少なくとも1つへ集光するセンサ。」 の発明である点で一致する。 (2)相違点 そして、両者は、次の各点で相違する ア 相違点1,2 上記「第2 平成25年1月17日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の「2 独立特許要件(特許法第29条第2項)違反についての検討」の「(2)本願補正発明と引用発明との対比」の「ウ 相違点」における「(ア)相違点1」及び「(イ)相違点2」に相当する相違点で相違する。(すなわち、「(ア)相違点1」及び「(イ)相違点2」における「本願補正発明」を「本願発明」と置き換えた相違点。) なお、相違点1について、本願発明の「内部」は、本願補正発明の「中」と同じであると解される。 イ 相違点4 さらに、光学素子について、本願発明においては「回折光学素子」であるのに対して、引用発明においては「フレネルレンズ」である点。 (3)判断 ア 相違点についての検討 (ア)相違点1,2について 上記の相違点1及び相違点2については、それぞれ、上記「第2 平成25年1月17日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の「2 独立特許要件(特許法第29条第2項)違反についての検討」の「(3)当審の判断」の「ア」における「(ア)相違点1について」及び「(イ)相違点2について」で、検討したとおりであり、上記相違点1及び2に係る本願発明の発明特定事項を得ることは当業者が容易になし得たことである。 (イ)相違点4について 引用例2には、光学素子として、回折光学素子であるバイナリレンズが記載されており、上記相違点4に係る事項は引用例2に記載された事項にすぎない。 そして、引用発明のフレネルレンズも、引用例2の回折光学格子も、それぞれにおいて、集光作用を奏するために用いたという点において等価な技術的事項を備えたものであるといえるから、引用発明において、フレネルレンズに換えて上記引用例2に記載のバイナリレンズ(回折光学素子)を採用し、上記相違点4に係る本願発明の発明特定事項を得ることは当業者が容易になし得たことである。 イ 本願発明の奏する作用効果 本願発明によってもたらされる効果は、引用発明、引用例2に記載された発明及び及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。 ウ まとめ 本願発明は、引用発明、引用例2に記載された発明及び及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明、引用例2に記載された発明及び及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-02-28 |
結審通知日 | 2014-03-03 |
審決日 | 2014-03-17 |
出願番号 | 特願2007-552618(P2007-552618) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G01J)
P 1 8・ 575- Z (G01J) P 1 8・ 57- Z (G01J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 平田 佳規 |
特許庁審判長 |
森林 克郎 |
特許庁審判官 |
藤田 年彦 岡田 孝博 |
発明の名称 | センサおよびキャップ配置 |
代理人 | 石川 大輔 |
代理人 | 山本 健策 |
代理人 | 森下 夏樹 |
代理人 | 飯田 貴敏 |
代理人 | 山本 秀策 |