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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06T
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06T
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06T
管理番号 1290089
審判番号 不服2013-16170  
総通号数 177 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-08-21 
確定日 2014-07-24 
事件の表示 特願2009- 92447「撮像装置、撮像装置方法及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成22年10月28日出願公開、特開2010-244304〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本願は、平成21年4月6日の出願であって、平成24年10月10日付けで拒絶の理由が通知され、平成24年12月17日付けで手続補正がなされたが、平成25年5月15日付けで拒絶査定がなされたものである。
本件は、上記拒絶査定を不服として、平成25年8月21日付けで請求された拒絶査定不服審判であって、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2.平成25年8月21日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成25年8月21日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容

上記手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項のうち、請求項1に係る補正は、補正前の請求項1である

「700nm乃至1200nmの波長の光である第1の光を生体組織に照射する第1の照射手段と、
前記生体組織によって後方散乱した前記第1の光を受光する第1の受光手段と、
前記第1の受光手段が受光した光に基づいて第1の画像行列を生成する第1の画像行列生成手段と、
700nm乃至1200nmの波長の光であって前記第1の光の波長より短い波長の光である第2の光を前記生体組織に照射する第2の照射手段と、
前記生体組織によって後方散乱した前記第2の光を受光する第2の受光手段と、
前記第2の受光手段が受光した光に基づいて第2の画像行列を生成する第2の画像行列生成手段と、
前記第1の画像行列を前記第2の画像行列により減算する減算手段と、
前記減算手段により算出された第3の画像行列を変換する画像変換手段と、を備え、
前記第1の画像行列及び前記第2の画像行列は、複数の画素の各々に対して設定された輝度値を要素としている、
ことを特徴とする撮像装置。」

を、

「第1の光源から700nm乃至1200nmの波長の光である第1の光を生体組織に照射する第1の照射手段と、
前記生体組織によって後方散乱した前記第1の光を受光する第1の受光手段と、
前記第1の受光手段が受光した光に基づいて第1の画像行列を生成する第1の画像行列生成手段と、
前記第1の光源と異なる第2の光源から700nm乃至1200nmの波長の光であって前記第1の光の波長より短い波長の光である第2の光を前記生体組織に照射する第2の照射手段と、
前記生体組織によって後方散乱した前記第2の光を受光する第2の受光手段と、
前記第2の受光手段が受光した光に基づいて第2の画像行列を生成する第2の画像行列生成手段と、
前記第1の画像行列を前記第2の画像行列により減算する減算手段と、
前記減算手段により算出された第3の画像行列を変換する画像変換手段と、を備え、
前記第1の画像行列及び前記第2の画像行列は、複数の画素の各々に対して設定された輝度値を要素としている、
ことを特徴とする撮像装置。」

と補正するものである。

2.補正の適否

補正された請求項1は、補正前の請求項1における「700nm乃至1200nmの波長の光である第1の光を生体組織に照射する第1の照射手段」について、「第1の光源から」照射することに限定し、「700nm乃至1200nmの波長の光であって前記第1の光の波長より短い波長の光である第2の光を前記生体組織に照射する第2の照射手段」について、「前記第1の光源と異なる第2の光源から」照射することに限定するものであるから、この補正は、補正前の請求項に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)本願補正発明

本願補正発明は、上記第2.1.に記載したとおりのものである。

(2)刊行物

(2-1)刊行物1

これに対して、原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願の日前に頒布された刊行物である特開2006-98340号公報(以下、「刊行物1」という)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

ア.「【0031】
電磁波が検出されると、差分演算部69は、反射した可視光の像と反射した近赤外線の像とを比較する(S104)。図3の画像(1)および画像(2)に示すように、イメージセンサ65が検出した像には汚れ16および皺17が現れる。可視光だけでなく近赤外線も人体61の表面で反射するからである。可視光は人体61の表面でそのすべてが反射する。画像(1)には血管15が現れ、画像(2)には血管15が現れないこととなる。差分演算部69は反射した近赤外線の像から反射した可視光の像に共通する画像を除去する(S106)。これにより、画像(1)における汚れ16および皺17の画像が除去される。画像(3)はそれらが除去された後の画像である。血管15のみが鮮明に現れる。」

イ.「【0038】
図8を参照して、本発明の実施の形態に係る内部検出装置は、第1の実施の形態に係る光源62に代えて光源82を含む。光源82は、3種類の電磁波を人体61に照射する。3種類の電磁波の1種類目は、可視光である。2種類目は、第1の近赤外線である。第1の近赤外線の波長は750nmである。第1の近赤外線の波長は700nmから800nmの範囲に含まれる。3種類目は、第2の近赤外線である。第2の近赤外線の波長は950nmである。第2の近赤外線の波長は800nmから1000nmの範囲に含まれる。第1の近赤外線および第2の近赤外線の波長は、波長の差が100nm以上離れている。波長の差が少なくなると、3種類の波長を用いる意味が失われるからである。これにより、光源82は、少なくとも1種類が生体である人体61の内部で反射する第1の近赤外線であって互いに異なる波長である2種類以上の電磁波を、生体の同じ部分に1種類ずつ照射することができる。光源82は、ハロゲンランプに光学フィルタを組合せたものである。この光学フィルタは、上述した3種類の電磁波の発生タイミングが異なるように、ハロゲンランプが発した電磁波を遮蔽できる。本実施の形態において、この光学フィルタは、駆動部64により制御される。電磁波の強度は、調整器63により制御される。なお、その他のハードウェア構成については第1の実施の形態と同じである。それらについての機能も同じである。したがって、それについての詳細な説明はここでは繰返さない。」
ウ.「【0039】
図9を参照して、内部検出装置で実行されるプログラムは、血管パターンの抽出に関し、以下のような制御構造を有する。なお、図9に示すフローチャートの中で、前述の図2に示した処理は同じステップ番号を付してある。それらの処理も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰返さない。
【0040】
S202にて、メイン制御部71は、駆動部64およびセンサ制御部66に、人体61から反射した第1の近赤外線を検出する旨の信号を出力する。駆動部64は、調整器63に第1の近赤外線の強度を表わす信号を出力する。調整器63は、光源82の電磁波の強度を調整する。駆動部64は、光源82に第1の近赤外線を照射させる。センサ制御部66は、イメージセンサ65に、人体61から反射した第1の近赤外線を検出させる。イメージセンサ65は、検出したデータを出力する。AD変換器67は、イメージセンサ65が出力したアナログデータをデジタルデータに変換する。第1メモリ68は、AD変換器67が出力したデジタルデータを保存する。
【0041】
S204にて、メイン制御部71は、駆動部64およびセンサ制御部66に、人体61から反射した第2の近赤外線を検出する旨の信号を出力する。駆動部64は、調整器63に第2の近赤外線の強度を表わす信号を出力する。調整器63は、光源82の電磁波の強度を調整する。駆動部64は、光源82に第2の近赤外線を照射させる。センサ制御部66は、イメージセンサ65に、人体61から反射した第2の近赤外線を検出させる。イメージセンサ65は、検出したデータを出力する。AD変換器67は、イメージセンサ65が出力したアナログデータをデジタルデータに変換する。第1メモリ68は、AD変換器67が出力したデジタルデータを保存する。
【0042】
S206にて、メイン制御部71は、差分演算部69に、反射した可視光の像と反射した第1の近赤外線の像とを比較する旨の信号を出力する。差分演算部69は、第1メモリ68から、反射した可視光の像と反射した第1の近赤外線の像とを読出す。画像が読出されると、差分演算部69は、反射した可視光の像と反射した第1の近赤外線の像とを比較する。
【0043】
S208にて、メイン制御部71は、反射した可視光の像と反射した第2の近赤外線の像とを比較する旨の信号を差分演算部69に出力する。差分演算部69は、第1メモリ68から反射した可視光の像と反射した第2の近赤外線の像とを読出す。画像が読出されると、差分演算部69は、反射した可視光の像と反射した第2の近赤外線の像とを比較する。
【0044】
S210にて、差分演算部69は、第2の近赤外線の像から可視光の像に共通する部分を取除くように、第2の近赤外線の像のデータを修正する。差分演算部69は、画像が除去された後の像のデータを第2メモリ70に記憶させる。
【0045】
S212にて、差分演算部69は、第2メモリ70から、S106にて画像が除去された第1の近赤外線の像(画像(4))を読出す。差分演算部69は、第2メモリ70から、S210にて画像が除去された第2の近赤外線の像(画像(5))を読出す。画像が読出されると、差分演算部69は、画像(4)と画像(5)とを比較する。
【0046】
S214にて、差分演算部69は、画像(4)のうち、画像(5)に共通する画像であって画像(5)より明るく現れた画像を除去する。画像が除去されると、差分演算部69は、画像を除去した後の画像データを動脈パターンの画像データとして第2メモリ70に保存する。差分演算部69は、画像(4)のうち、画像(5)に共通する画像であって画像(5)より暗く現れた画像を除去する。差分演算部69は、画像が除去された後の画像データを静脈パターンの画像データとして第2メモリ70に保存する。これらにより、差分演算部69は、画像(4)のうち、画像(5)に共通し、かつ画像(4)と画像(5)とで明度が異なる部分を表わす画像を作成することとなる。」
エ.「【0047】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、内部検出装置の動作について説明する。
【0048】
イメージセンサ65は、人体61から反射した第1の近赤外線を検出する(S202)。第1の近赤外線が検出されると、イメージセンサ65は、第2の近赤外線を検出する(S204)。可視光の検出から第2の近赤外線の検出までは短い時間(本実施の形態の場合0.1秒以内)に実施される。図10を参照して、このとき検出された電磁波が結ぶ像を表わす画像(1)?画像(3)を示す。画像(1)は、第1の近赤外線が結ぶ像を表わす。画像(2)は可視光が結ぶ像を表わす。画像(3)は第2の近赤外線が結ぶ像を表わす。
【0049】
電磁波が検出されると、差分演算部69は、可視光の像と第2の近赤外線の像とを比較する(S206)。比較が実施されると、差分演算部69は、第1の近赤外線の像から可視光の像に共通する部分を取除くように、第1の近赤外線の像のデータを修正する(S106)。これにより、差分演算部69は、反射した第1の近赤外線が結ぶ像のうち、反射した第1の近赤外線以外の電磁波である可視光が結ぶ像とは異なる部分を表わす画像を、反射した電磁波が結ぶ像のデータから作成することとなる。図10の画像(4)はこのとき可視光の像に共通する部分が除去された、第1の近赤外線の像を示す。
【0050】
差分演算部69は、可視光の像と第2の近赤外線の像とを比較する(S208)。比較が実施されると、差分演算部69は、第2の近赤外線の像から可視光の像に共通する部分を取除くように、第2の近赤外線の像のデータを修正する(S210)。これにより、差分演算部69は、生体の内部に侵入できかつ反射した第1の近赤外線および可視光のいずれとも異なる反射した第2の近赤外線が結ぶ像のうち、可視光が結ぶ像とは異なる部分を表わす画像を、反射した電磁波が結ぶ像のデータから作成することとなる。図10に示す画像(5)はこのとき反射した可視光の像に共通する部分が除去された第2の近赤外線の像を示す。
【0051】
差分演算部69は、画像(4)と画像(5)とを比較する(S212)。図11を参照して、画像(4)および画像(5)に差異が現れる理由を説明する。図11は、血管中を流れるヘモグロビンの光(波長600nm?1000nm)に対する吸収率を示す図である。図11の横軸は光の波長を示す。縦軸は吸収率を示す。この図は、ヘモグロビンが赤外線を吸収することを示す。このヘモグロビンが赤外線を吸収する性質により、血管のない部分に照射された近赤外線は反射する。反射した近赤外線はイメージセンサ65により検出される。血管がある部分に照射された近赤外線は吸収される。イメージセンサ65に検出されない。これらのことによって、イメージセンサ65が検出した像には、血管のない部分が明るく現れる。イメージセンサ65が検出した像には、血管がある部分が暗く現れる。また、酸化ヘモグロビンの吸収率と還元ヘモグロビンの吸収率とは、近赤外線の波長により異なる。700nmから800nmまでの範囲(特に750nm付近)の近赤外線に対しては、還元ヘモグロビンの吸収率が酸化ヘモグロビンの吸収率より高い。800nmから1000nmまでの範囲の近赤外線に対しては、酸化ヘモグロビンの吸収率が還元ヘモグロビンの吸収率より高い。酸化ヘモグロビンは酸素を含んだヘモグロビンである。酸化ヘモグロビンは、動脈血の中に多く含まれている。還元ヘモグロビンは、酸素を含まないヘモグロビンである。還元ヘモグロビンは、静脈血の中に多く含まれている。これにより、700nmから800nmまでの範囲(特に750nm付近)の近赤外線の像において、動脈の像が静脈の像より明るく現れる。800nmから1000nmまでの範囲の近赤外線の像において、静脈の像が動脈の像より明るく現れる。これにより、画像(4)および画像(5)に差異が現れる。画像(4)および画像(5)を比較することにより、動脈パターンの図が得られる。静脈パターンの図も得られる。波長画像が比較されると、差分演算部69は、静脈パターンの図を作成する(S214)。図10の画像(6)に静脈パターンの図を示す。差分演算部69は、動脈パターンの画像を作成する。図10に示す画像(7)は動脈パターンの図を示す。」
オ.「【0052】
以上のようにして、本実施の形態に係る内部検出装置は、動脈パターンおよび静脈パターンの抽出をすることができる。これらのパターンの抽出にあたり、反射光が利用される。透過光は利用されない。これにより、設備の自由度が大きくなる。その結果、設備の自由度を大きくできる内部検出装置を提供することができる。」

上記記載及び関連する図面を考慮すると、

(a)刊行物1には、上記オ.の段落【0052】の記載から、「静脈パターンの抽出をすることができる内部検出装置」が記載されている。

(b)上記イ.には、「光源82は、3種類の電磁波を人体61に照射する。3種類の電磁波の1種類目は、可視光である。2種類目は、第1の近赤外線である。・・・第1の近赤外線の波長は700nmから800nmの範囲に含まれる。3種類目は、第2の近赤外線である。・・・第2の近赤外線の波長は800nmから1000nmの範囲に含まれる。・・・光源82は、・・・互いに異なる波長である2種類以上の電磁波を、生体の同じ部分に1種類ずつ照射することができる。」(段落【0038】)と記載され、上記ウ.には、「メイン制御部71は、駆動部64およびセンサ制御部66に、人体61から反射した第1の近赤外線を検出する旨の信号を出力する。駆動部64は、調整器63に第1の近赤外線の強度を表わす信号を出力する。調整器63は、光源82の電磁波の強度を調整する。駆動部64は、光源82に第1の近赤外線を照射させる。センサ制御部66は、イメージセンサ65に、人体61から反射した第1の近赤外線を検出させる。イメージセンサ65は、検出したデータを出力する。AD変換器67は、イメージセンサ65が出力したアナログデータをデジタルデータに変換する。第1メモリ68は、AD変換器67が出力したデジタルデータを保存する。・・・メイン制御部71は、駆動部64およびセンサ制御部66に、人体61から反射した第2の近赤外線を検出する旨の信号を出力する。駆動部64は、調整器63に第2の近赤外線の強度を表わす信号を出力する。調整器63は、光源82の電磁波の強度を調整する。駆動部64は、光源82に第2の近赤外線を照射させる。センサ制御部66は、イメージセンサ65に、人体61から反射した第2の近赤外線を検出させる。イメージセンサ65は、検出したデータを出力する。AD変換器67は、イメージセンサ65が出力したアナログデータをデジタルデータに変換する。第1メモリ68は、AD変換器67が出力したデジタルデータを保存する。」(段落【0040】?【0041】)と記載されている。

すなわち、刊行物1の内部検出装置は、「互いに異なる波長である2種類以上の電磁波を照射することができる光源から、700nmから800nmの範囲の波長である第1の近赤外線および800nmから1000nmの範囲の波長である第2の近赤外線を人体61に照射する手段と、人体61から反射した第1の近赤外線および第2の近赤外線を検出するイメージセンサ65」を有するものである。

(c)上記ア.には、「差分演算部69は反射した近赤外線の像から反射した可視光の像に共通する画像を除去する(S106)。これにより、画像(1)における汚れ16および皺17の画像が除去される。」(段落【0031】)と記載され、上記ウ.には、「S206にて、・・・差分演算部69は、反射した可視光の像と反射した第1の近赤外線の像とを比較する。S208にて、・・・差分演算部69は、反射した可視光の像と反射した第2の近赤外線の像とを比較する。S210にて、差分演算部69は、第2の近赤外線の像から可視光の像に共通する部分を取除くように、第2の近赤外線の像のデータを修正する。」(段落【0042】?【0044】)、「S212にて、差分演算部69は、・・・S106にて画像が除去された第1の近赤外線の像(画像(4))を読出す。差分演算部69は、・・・S210にて画像が除去された第2の近赤外線の像(画像(5))を読出す。・・・S214にて、・・・差分演算部69は、画像が除去された後の画像データを静脈パターンの画像データとして第2メモリ70に保存する。これらにより、差分演算部69は、画像(4)のうち、画像(5)に共通し、かつ画像(4)と画像(5)とで明度が異なる部分を表わす画像を作成することとなる。」(段落【0045】?【0046】)と記載され、上記エ.には、「イメージセンサ65は、人体61から反射した第1の近赤外線を検出する・・・イメージセンサ65は、第2の近赤外線を検出する・・・図10を参照して、このとき検出された電磁波が結ぶ像を表わす画像(1)?画像(3)を示す。画像(1)は、第1の近赤外線が結ぶ像を表わす。・・・画像(3)は第2の近赤外線が結ぶ像を表わす。電磁波が検出されると、・・・差分演算部69は、第1の近赤外線の像から可視光の像に共通する部分を取除くように、第1の近赤外線の像のデータを修正する(S106)。・・・差分演算部69は、第2の近赤外線の像から可視光の像に共通する部分を取除くように、第2の近赤外線の像のデータを修正する(S210)。」(段落【0048】?【0050】)、「差分演算部69は、画像(4)と画像(5)とを比較する(S212)。・・・700nmから800nmまでの範囲(特に750nm付近)の近赤外線の像において、動脈の像が静脈の像より明るく現れる。800nmから1000nmまでの範囲の近赤外線の像において、静脈の像が動脈の像より明るく現れる。これにより、画像(4)および画像(5)に差異が現れる。画像(4)および画像(5)を比較することにより、・・・静脈パターンの図も得られる。波長画像が比較されると、差分演算部69は、静脈パターンの図を作成する(S214)。図10の画像(6)に静脈パターンの図を示す。」(段落【0051】)と記載され、【図9】のフローでは、S206→S106→S208→S210→S212→S214と遷移している。

すなわち、刊行物1の内部検出装置は、「イメージセンサ65が検出した第1の近赤外線が結ぶ第1の近赤外線の像(画像(1))から可視光の像に共通する部分を取除くように、第1の近赤外線の像(画像(1))のデータを修正し、イメージセンサ65が検出した第2の近赤外線が結ぶ第2の近赤外線の像(画像(3))から可視光の像に共通する部分を取除くように、第2の近赤外線の像(画像(3))のデータを修正し、第1の近赤外線の像(画像(1))から可視光の像に共通する画像が除去され動脈の像が静脈の像より明るく現れる第1の近赤外線の像(画像(4))と、第2の近赤外線の像(画像(3))から可視光の像に共通する画像が除去され静脈の像が動脈の像より明るく現れる第2の近赤外線の像(画像(5))を比較し、画像(4)のうち、画像(5)に共通し、かつ画像(4)と画像(5)とで明度が異なる部分を表わす画像を作成することにより、静脈パターンの画像(画像(6))を作成し、第2メモリ70に保存する差分演算部69」を有するものである。

以上の記載から、刊行物1には以下の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されている。

「互いに異なる波長である2種類以上の電磁波を照射することができる光源から、700nmから800nmの範囲の波長である第1の近赤外線および800nmから1000nmの範囲の波長である第2の近赤外線を人体61に照射する手段と、人体61から反射した第1の近赤外線および第2の近赤外線を検出するイメージセンサ65と、
イメージセンサ65が検出した第1の近赤外線が結ぶ第1の近赤外線の像(画像(1))から可視光の像に共通する部分を取除くように、第1の近赤外線の像(画像(1))のデータを修正し、イメージセンサ65が検出した第2の近赤外線が結ぶ第2の近赤外線の像(画像(3))から可視光の像に共通する部分を取除くように、第2の近赤外線の像(画像(3))のデータを修正し、第1の近赤外線の像(画像(1))から可視光の像に共通する画像が除去され動脈の像が静脈の像より明るく現れる第1の近赤外線の像(画像(4))と、第2の近赤外線の像(画像(3))から可視光の像に共通する画像が除去され静脈の像が動脈の像より明るく現れる第2の近赤外線の像(画像(5))を比較し、画像(4)のうち、画像(5)に共通し、かつ画像(4)と画像(5)とで明度が異なる部分を表わす画像を作成することにより、静脈パターンの画像(画像(6))を作成し、第2メモリ70に保存する差分演算部69と、を備える
ことを特徴とする静脈パターンの抽出をすることができる内部検出装置。」

(2-2)刊行物2

また、原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願の日前に頒布された刊行物である特開平10-127609号公報(以下、「刊行物2」という)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

「【0008】また、各画像毎に濃淡値の正規化を行うために、生体固定部に生体任意部位をおかない状態で、各光フィルタ6及び7の画像を定期的あるいは各撮像時に撮像し、正規化補正用画像として記憶装置10に保存する。各生体透過光画像は、アナログ-デジタル変換され2枚の濃淡のデジタル画像(以降デジタル濃淡画像と略す)となり、1または複数ある演算装置9に転送され、画像記憶装置10に保存される。
【0009】
各生体透過光画像は、保存された各正規化補正用画像で画像除算することで正規化補正される。光フィルタの透過光波長の中心波長λ1及びλ2を適切に選択すれば、保存された2枚のデジタル濃淡画像の差分画像から血管走行画像を容易に抽出することができる(その理由に関しては後述する)。」

すなわち、刊行物2には、各画像毎に濃淡値の正規化を行い、2枚のデジタル濃淡画像の差分画像から血管走行画像を抽出することが記載されている。

(3)対比、判断

(3-1)本願補正発明の「第1の光源から700nm乃至1200nmの波長の光である第1の光を生体組織に照射する第1の照射手段」及び「前記第1の光源と異なる第2の光源から700nm乃至1200nmの波長の光であって前記第1の光の波長より短い波長の光である第2の光を前記生体組織に照射する第2の照射手段」と、刊行物1発明の「互いに異なる波長である2種類以上の電磁波を照射することができる光源から、700nmから800nmの範囲の波長である第1の近赤外線および800nmから1000nmの範囲の波長である第2の近赤外線を人体61に照射する手段」について

「700nmから800nmの範囲の波長」、「800nmから1000nmの範囲の波長」は、「700nm乃至1200nmの波長」に含まれるものであり、「700nmから800nmの範囲の波長」は、「800nmから1000nmの範囲の波長」より短い波長であるから、刊行物1発明の「700nmから800nmの範囲の波長である第1の近赤外線」、「800nmから1000nmの範囲の波長である第2の近赤外線」は、本願補正発明の「700nm乃至1200nmの波長の光であって前記第1の光の波長より短い波長の光である第2の光」、「700nm乃至1200nmの波長の光である第1の光」に相当する。
刊行物1発明の「人体」は、本願補正発明の「生体組織」に相当する。

したがって、本願補正発明の「第1の光源から700nm乃至1200nmの波長の光である第1の光を生体組織に照射する第1の照射手段」及び「前記第1の光源と異なる第2の光源から700nm乃至1200nmの波長の光であって前記第1の光の波長より短い波長の光である第2の光を前記生体組織に照射する第2の照射手段」と、刊行物1発明の「互いに異なる波長である2種類以上の電磁波を照射することができる光源から、700nmから800nmの範囲の波長である第1の近赤外線および800nmから1000nmの範囲の波長である第2の近赤外線を人体61に照射する手段」は、「光源から700nm乃至1200nmの波長の光である第1の光を生体組織に照射、及び、光源から700nm乃至1200nmの波長の光であって前記第1の光の波長より短い波長の光である第2の光を前記生体組織に照射する照射手段」という点で共通する。
しかし、本願補正発明の光源は、「第1の光源」、「第2の光源」と2つの光源を有するのに対し、刊行物1発明の光源は、「互いに異なる波長である2種類以上の電磁波を照射することができる光源」であり、2種類以上の光を照射することができるものではあるが、「第1の光源」、「第2の光源」と2つの光源を有する構成であるかについては特定されておらず、本願補正発明は、2つの光源を有する構成であるため、照射手段が、「第1の光源から・・・照射する第1の照射手段」、「第2の光源から・・・照射する第2の照射手段」であるのに対し、刊行物1発明は、2つの光源を有する構成であるかについては特定されていないため、照射手段が、「第1の光源から・・・照射する第1の照射手段」、「第2の光源から・・・照射する第2の照射手段」であるかについて特定されていない。

(3-2)本願補正発明の「前記生体組織によって後方散乱した前記第1の光を受光する第1の受光手段」及び「前記生体組織によって後方散乱した前記第2の光を受光する第2の受光手段」と、刊行物1発明の「人体61から反射した第1の近赤外線および第2の近赤外線を検出するイメージセンサ65」について

(3-1)でも検討したように、刊行物1発明の「人体」は、本願補正発明の「生体組織」に相当する。
刊行物1発明の「人体61から反射した」とは、近赤外線が人体に当たって後側に戻ることである。光源からの照射光が、人体に照射されると、様々な組織により散乱が生じることは、周知のこと(例えば、特開2009-64455号公報の段落【0033】、特開2006-288872号公報の段落【0026】、特開2005-323892号公報の段落【0014】等)であり、後方散乱光とは、散乱光のうち,後ろ側に戻る光を指すものであることを考えると、刊行物1発明の「人体61から反射した」は、人体により後方散乱したことであるから、本願補正発明の「前記生体組織によって後方散乱した」に相当する。
そして、本願の明細書では、第1の受光手段及び第2の受光手段について、「受光部13(第1の受光手段、第2の受光手段)」(段落【0016】)と記載され、受光部13について、「受光部13は、第1の照射部11、第2の照射部12から発せられた光が生体組織において反射した光を受光して、生体画像を得る。受光部13は2次元平面に配置された複数のアレイ受光素子からなるCCD等で構成されている。」(段落【0017】)、「第1の照射部11は、第1の光を生体組織に照射し、受光部13は、生体組織によって後方散乱した第1の光を受光し、・・・第2の照射部12は、第1の光と異なる波長の第2の光を生体組織に照射し、受光部13は、生体組織によって後方散乱した第2の光を受光し、」(段落【0018】)、「第1の照射部11が光を照射すると、受光部13は、第1の照射部11から照射され、皮膚によって後方散乱した光を受光する(ステップS2)。」(段落【0019】)、「第2の照射部12が光を照射すると、受光部13は、第2の照射部12から照射され、皮膚によって後方散乱した光を受光する(ステップS5)。」(段落【0020】)と記載されていることから、第1の受光手段、第2の受光手段は、ともに受光部13を指し、第1の光を受光する場合を第1の受光手段、第2の光を受光する場合を第2の受光手段としているものである。そうすると、刊行物1発明の「第1の近赤外線および第2の近赤外線を検出するイメージセンサ65」は、本願補正発明の「前記第1の光を受光する第1の受光手段」及び「前記第2の光を受光する第2の受光手段」に相当する。

したがって、刊行物1発明の「人体61から反射した第1の近赤外線および第2の近赤外線を検出するイメージセンサ65」は、本願補正発明の「前記生体組織によって後方散乱した前記第1の光を受光する第1の受光手段」及び「前記生体組織によって後方散乱した前記第2の光を受光する第2の受光手段」に相当する。

(3-3)本願補正発明の「前記第1の受光手段が受光した光に基づいて第1の画像行列を生成する第1の画像行列生成手段」及び「前記第2の受光手段が受光した光に基づいて第2の画像行列を生成する第2の画像行列生成手段」と、刊行物1発明の「イメージセンサ65が検出した第1の近赤外線が結ぶ第1の近赤外線の像(画像(1))から可視光の像に共通する部分を取除くように、第1の近赤外線の像(画像(1))のデータを修正し、イメージセンサ65が検出した第2の近赤外線が結ぶ第2の近赤外線の像(画像(3))から可視光の像に共通する部分を取除くように、第2の近赤外線の像(画像(3))のデータを修正し」について

刊行物1発明の「イメージセンサ65が検出した第1の近赤外線が結ぶ第1の近赤外線の像(画像(1))から可視光の像に共通する部分を取除くように、第1の近赤外線の像(画像(1))のデータを修正」、「イメージセンサ65が検出した第2の近赤外線が結ぶ第2の近赤外線の像(画像(3))から可視光の像に共通する部分を取除くように、第2の近赤外線の像(画像(3))のデータを修正」は、それぞれ、イメージセンサ65が検出した第1の近赤外線に基づいて第1の画像に対応するものを生成、イメージセンサ65が検出した第2の近赤外線に基づいて第2の画像に対応するものを生成するものである。
そして、刊行物1発明の「イメージセンサ65が検出した第1の近赤外線」、「イメージセンサ65が検出した第2の近赤外線」は、本願補正発明の「前記第1の受光手段が受光した光」、「前記第2の受光手段が受光した光」に相当する。

そうすると、本願補正発明の「前記第1の受光手段が受光した光に基づいて第1の画像行列を生成する第1の画像行列生成手段」及び「前記第2の受光手段が受光した光に基づいて第2の画像行列を生成する第2の画像行列生成手段」と、刊行物1発明の「イメージセンサ65が検出した第1の近赤外線が結ぶ第1の近赤外線の像(画像(1))から可視光の像に共通する部分を取除くように、第1の近赤外線の像(画像(1))のデータを修正し、イメージセンサ65が検出した第2の近赤外線が結ぶ第2の近赤外線の像(画像(3))から可視光の像に共通する部分を取除くように、第2の近赤外線の像(画像(3))のデータを修正し」は、「前記第1の受光手段が受光した光に基づいて第1の画像に対応するものを生成する第1の生成手段」及び「前記第2の受光手段が受光した光に基づいて第2の画像に対応するものを生成する第2の生成手段」という点で共通する。
しかし、第1の生成手段、第2の生成手段で生成される「第1の画像に対応するもの」、「第2の画像に対応するもの」は、本願補正発明は、第1の画像行列、第2の画像行列であるのに対し、刊行物1発明は、第1の画像行列、第2の画像行列を利用するものであるかについては特定されていない点で相違する。

(3-4)本願補正発明の「前記第1の画像行列を前記第2の画像行列により減算する減算手段と、前記減算手段により算出された第3の画像行列を変換する画像変換手段」と、刊行物1発明の「第1の近赤外線の像から可視光の像に共通する画像が除去され動脈の像が静脈の像より明るく現れる第1の近赤外線の像(画像(4))と、第2の近赤外線の像から可視光の像に共通する画像が除去され静脈の像が動脈の像より明るく現れる第2の近赤外線の像(画像(5))を比較し、画像(4)のうち、画像(5)に共通し、かつ画像(4)と画像(5)とで明度が異なる部分を表わす画像を作成することにより、静脈パターンの画像(画像(6))を作成し、第2メモリ70に保存する差分演算部69」について

刊行物1発明は、画像(4)と、画像(5)を比較し、画像(4)のうち、画像(5)に共通し、かつ画像(4)と画像(5)とで明度が異なる部分を表わす画像を作成することにより、静脈パターンの画像(画像(6))を作成するものである。ここで、画像(4)は、動脈の像が静脈の像より明るく、画像(5)は、静脈の像が動脈の像より明るいことから、静脈パターンの画像(画像(6))は、画像(4)と画像(5)とで明度が異なる部分のうち、画像(4)の方が明るく現れた画像を除去し、暗く現れた画像を残した画像である。
そして、差分演算部69とは、差分を演算するものであるから、減算処理を行うものであり、差分演算すなわち減算処理は、画像(4)と、画像(5)を比較し、画像(4)のうち、画像(5)に共通し、かつ画像(4)と画像(5)とで明度が異なる部分を求めるために行われるものである。すなわち、画像(4)を画像(5)により減算することにより明度が異なる部分を求めている。
すなわち、刊行物1発明は、画像(4)を画像(5)により減算することにより明度が異なる部分を求め、画像(4)と画像(5)とで明度が異なる部分のうち、画像(4)の方が明るく現れた画像を除去し、暗く現れた画像を残した画像を作成するものである。
なお、(3-3)で検討したように、刊行物1発明は、第1の近赤外線の像(画像(1))のデータ、第2の近赤外線の像(画像(3))のデータを修正したものを生成しており、第1の画像行列、第2の画像行列を生成するものであるかについては特定されていない。

そうすると、本願補正発明の「前記第1の画像行列を前記第2の画像行列により減算する減算手段と、前記減算手段により算出された第3の画像行列を変換する画像変換手段」と、刊行物1発明の「第1の近赤外線の像から可視光の像に共通する画像が除去され動脈の像が静脈の像より明るく現れる第1の近赤外線の像(画像(4))と、第2の近赤外線の像から可視光の像に共通する画像が除去され静脈の像が動脈の像より明るく現れる第2の近赤外線の像(画像(5))を比較し、画像(4)のうち、画像(5)に共通し、かつ画像(4)と画像(5)とで明度が異なる部分を表わす画像を作成することにより、静脈パターンの画像(画像(6))を作成し、第2メモリ70に保存する差分演算部69」は、「第1の受光手段が受光した光に基づいて生成したものを第2の受光手段が受光した光に基づいて生成したものにより減算する減算手段」という点で共通する。
しかし、本願補正発明は、前記第1の画像行列を前記第2の画像行列により減算するものであるのに対し、刊行物1発明は、第1の近赤外線の像(画像(1))のデータを修正したもの(画像(4))と、第2の近赤外線の像(画像(3))のデータを修正したもの(画像(5))により減算するものであり、第1の画像行列、第2の画像行列を利用するものであるかについては特定されていない。
また、本願補正発明は、「前記減算手段により算出された第3の画像行列を変換する画像変換手段」を有するものであるのに対し、刊行物1発明は、減算手段により算出された画像のうち、画像(4)の方が明るく現れた画像を除去し、暗く現れた画像を残した画像を作成するものである。

(3-5)本願補正発明の「前記第1の画像行列及び前記第2の画像行列は、複数の画素の各々に対して設定された輝度値を要素としている」について

(3-3)で検討したように、刊行物1発明は、第1の近赤外線の像(画像(1))のデータ、第2の近赤外線の像(画像(3))のデータを修正したものを生成しており、第1の画像行列、第2の画像行列を生成するものであるかについては特定されていないため、刊行物1発明は、本願補正発明のように「前記第1の画像行列及び前記第2の画像行列は、複数の画素の各々に対して設定された輝度値を要素としている」かどうかについては特定されていない。

(3-6)本願補正発明の「撮像装置」と、刊行物1発明の「静脈パターンの抽出をすることができる内部検出装置」について

刊行物1発明の「静脈パターンの抽出をすることができる内部検出装置」は、人体61から反射した第1の近赤外線および第2の近赤外線を検出するイメージセンサ65を利用して、静脈パターンの抽出をするものであり、撮像する構成を有した装置であるから、刊行物1発明の「静脈パターンの抽出をすることができる内部検出装置」は、本願補正発明の「撮像装置」に相当する。

したがって、本願補正発明と刊行物1発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「光源から700nm乃至1200nmの波長の光である第1の光を生体組織に照射する照射手段と、
前記生体組織によって後方散乱した前記第1の光を受光する第1の受光手段と、
前記第1の受光手段が受光した光に基づいて第1の画像に対応するものを生成する第1の生成手段と、
光源から700nm乃至1200nmの波長の光であって前記第1の光の波長より短い波長の光である第2の光を前記生体組織に照射する照射手段と、
前記生体組織によって後方散乱した前記第2の光を受光する第2の受光手段と、
前記第2の受光手段が受光した光に基づいて第2の画像に対応するものを生成する第2の生成手段と、
前記第1の画像に対応するものを前記第2に対応するものにより減算する減算手段と、
を備える、
ことを特徴とする撮像装置。」

[相違点]

(1)光源に関して、本願補正発明の光源は、「第1の光源」、「第2の光源」と2つの光源を有するのに対し、刊行物1発明の光源は、「互いに異なる波長である2種類以上の電磁波を照射することができる光源」であり、2種類以上の光を照射することができるものではあるが、「第1の光源」、「第2の光源」と2つの光源を有する構成であるかについては特定されていない点。

(2)本願補正発明は、2つの光源を有する構成であるため、照射手段が、「第1の光源から・・・照射する第1の照射手段」、「第2の光源から・・・照射する第2の照射手段」であるのに対し、刊行物1発明は、2つの光源を有する構成であるかについては特定されていないため、照射手段が、「第1の光源から・・・照射する第1の照射手段」、「第2の光源から・・・照射する第2の照射手段」であるかについて特定されていない点。

(3)第1の生成手段、第2の生成手段で生成される「第1の画像に対応するもの」、「第2の画像に対応するもの」に関して、本願補正発明は、第1の画像行列、第2の画像行列であるのに対し、刊行物1発明は、第1の画像行列、第2の画像行列を利用するものであるかについては特定されていない点。

(4)本願補正発明は、前記第1の画像行列を前記第2の画像行列により減算するものであるのに対し、刊行物1発明は、第1の近赤外線の像(画像(1))のデータを修正したものと、第2の近赤外線の像(画像(3))のデータを修正したものにより減算するものであり、第1の画像行列、第2の画像行列を利用するものであるかについては特定されていない点。

(5)本願補正発明は、「前記減算手段により算出された第3の画像行列を変換する画像変換手段」を有するのに対し、刊行物1発明は、第1の画像行列、第2の画像行列を利用するものであるかについては特定されていないため、第3の画像行列を算出するものであるかについて特定されておらず、減算手段により算出された画像のうち、画像(4)の方が明るく現れた画像を除去し、暗く現れた画像を残した画像を作成するものであり、前記減算手段により算出された第3の画像行列を変換する画像変換手段を有することについて特定されていない点。

(6)刊行物1発明は、第1の画像行列、第2の画像行列を生成するものであるかについては特定されていないため、本願補正発明は「前記第1の画像行列及び前記第2の画像行列は、複数の画素の各々に対して設定された輝度値を要素としている」のに対し、刊行物1発明は、そのような構成が特定されていない点。

そこで、上記相違点について検討する。

相違点(1)及び(2)について

刊行物1には、刊行物1発明以外の別の実施例として、段落【0023】に、「本実施の形態の場合、光源62は、少なくとも1種類が生体の内部で反射する第1の電磁波でありかつ互いに異なる波長である2種類の電磁波を、生体の同じ部分に1種類ずつ照射する。2種類の電磁波のうち1種類目は、可視光(波長400?700nm、たとえば一例として400nm)である。2種類目は、近赤外線(波長700?1200nm、たとえば一例として1000nm)である。本実施の形態に係る光源62は、2種類のLED(Light-Emitting Diode)を備えることにより、2種類の電磁波を照射できる。LEDは、本実施の形態に係る内部検出装置の、電磁波の発生源として適している。LEDは特定の波長の電磁波のみを発生できるからである。」と記載されている。すなわち、異なる波長照射する際に、2種類のLEDを利用することが記載されている。また、異なる波長の光を照射する際に、2つの異なる光源を使用することと、複数の異なる波長の光を放射する単一の光源を使用することが置換可能であることについても、出願時において周知の技術思想(例えば、特表2007-536064号公報の段落【0008】?【0009】を参照)である。同一刊行物の別の実施例として、異なる波長照射する際に、2種類のLEDを利用することが記載され、また、異なる波長の光を照射する際に、2つの異なる光源を使用することと、複数の異なる波長の光を放射する単一の光源を使用することが置換可能であることという周知の技術に接した当業者であれば、刊行物1発明の「互いに異なる波長である2種類以上の電磁波を照射することができる光源」を「第1の光源」、「第2の光源」と2つの光源を有する構成とすることは、容易に想到できるといえる。
また、刊行物1発明を、「第1の光源」、「第2の光源」と2つの光源を有する構成とするのであれば、照射手段を、「第1の光源から照射する・・・第1の照射手段」、「第2の光源から照射する・・・第2の照射手段」とすることも、容易に想到できるといえる。

相違点(3)?(6)について

刊行物1発明は、静脈パターンの画像を作成するために、差分演算部69にて両者の画像を比較、すなわち、CCDの同じ箇所の画素の値を比較し、差分演算すなわち減算処理を行うものである。
そして、静脈読み取りに用いられるCCDは通常2次元CCDを採用するものであり、2次元CCDの各画素データについて、同じ箇所の画素データを減算処理するのであれば、2次元行列を利用して減算処理を行うようにすれば良いことは、通常に考え得ることであるから、両者の画像を比較、すなわち、CCDの同じ箇所の画素の値を比較し、差分演算すなわち減算処理を行うために、前記第1の受光手段が受光した光、前記第2の受光手段が受光した光に基づいて、第1の画像行列、第2の画像行列を生成し、第1の画像行列を第2の画像行列により減算することは、当業者であれば、容易に想到できるといえる。

そして、第1の画像行列、第2の画像行列を生成し、第1の画像行列を第2の画像行列により減算すると、減算処理により算出されたものは、第3の画像行列となる。

本願補正発明の「前記減算手段により算出された第3の画像行列を変換する」について、明細書の段落【0022】には、「画像変換部19は、減算部15が算出した第3の画像行列を画像に変換する」とあり、第3の画像行列を画像に変換するものである。さらに、段落【0019】には、「受光部13が受光すると、行列変換部14は、受光部13を構成する各アレイ受光素子の受光強度に基づいて第1の画像行列を生成する(ステップS3)。このとき、行列変換部14は、第1の画像行列の最小値を0、最大値を1として規格化する。」、段落【0020】には、「受光部13が受光すると、行列変換部14は、受光部13を構成する各アレイ受光素子の受光強度に基づいて第2の画像行列を生成する(ステップS6)。このとき、行列変換部14は、第2の画像行列の最小値を0、最大値を1として規格化する。」とあることから、第1の画像行列と第2の画像行列が、最小値を0、最大値を1として規格化されているので、第3の画像行列も、同様に規格化されており、「前記減算手段により算出された第3の画像行列を変換する」とは、規格化された値を元の画像にすることを指すものである。

差分画像の計算を行う上で、生のデータで計算するのではなく、規格化(正規化)して計算を行うことは、刊行物2に記載されているように、良く知られていることであるから、刊行物1発明についても、規格化して計算を行うようにすることは、容易に想到できるといえ、そのような場合には、減算処理した第3の画像行列についても、規格化された値となっているから、刊行物1発明において「静脈パターンの画像(画像(6))を作成し、第2メモリ70に保存する」場合に、静脈パターンの画像(画像(6))は、画像として保存する必要があることから、規格化された値である第3の画像行列を変換する必要があるものである。

なお、画像(4)と画像(5)とで明度が異なる部分があるので、減算手段により算出された値は、正負の値が存在するが、規格化された値を画像にする場合に、負の値は画像に変換することができないことから、規格化された値である第3の画像行列を変換する際に、負の値については除去する処理を行うことは当然に行う過程である。

そうすると、刊行物1発明において、本願補正発明のように、第3の画像行列を算出し、算出された第3の画像行列を変換する画像変換手段を有するようにしたことは、当然に成すことであるといえる。

そして、各画像行列の各画素の値は、CCDの出力値に関連する値であり、CCDの出力値として輝度値を用いることが通常のことである以上、刊行物1発明において、本願補正発明のように、前記第1の画像行列及び前記第2の画像行列は、複数の画素の各々に対して設定された輝度値を要素としていることは、当然である。

よって、各相違点については、格別のものではなく、本願補正発明に関する作用効果も、刊行物1発明、刊行物2、及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、刊行物1発明、刊行物2、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について

1.本願発明

上記のとおり、平成25年8月21日付けの手続補正は却下されたので、本件出願の請求項1ないし6に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載されたとおりのものであり、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、次のとおりである。

[本願発明](請求項1に係る発明)
「700nm乃至1200nmの波長の光である第1の光を生体組織に照射する第1の照射手段と、
前記生体組織によって後方散乱した前記第1の光を受光する第1の受光手段と、
前記第1の受光手段が受光した光に基づいて第1の画像行列を生成する第1の画像行列生成手段と、
700nm乃至1200nmの波長の光であって前記第1の光の波長より短い波長の光である第2の光を前記生体組織に照射する第2の照射手段と、
前記生体組織によって後方散乱した前記第2の光を受光する第2の受光手段と、
前記第2の受光手段が受光した光に基づいて第2の画像行列を生成する第2の画像行列生成手段と、
前記第1の画像行列を前記第2の画像行列により減算する減算手段と、
前記減算手段により算出された第3の画像行列を変換する画像変換手段と、を備え、
前記第1の画像行列及び前記第2の画像行列は、複数の画素の各々に対して設定された輝度値を要素としている、
ことを特徴とする撮像装置。」

2.刊行物1発明及び刊行物2

原査定の拒絶の理由で引用された刊行物1、その記載事項、刊行物1発明は、上記第2.2.(2-1)で認定したとおりである。
また、刊行物2については、上記第2.2.(2-2)で認定したとおりである。

3.対比・判断

本願発明は、上記第2.2.で検討した本願補正発明における「700nm乃至1200nmの波長の光である第1の光を生体組織に照射する第1の照射手段」について、「第1の光源から」照射することに限定し、「700nm乃至1200nmの波長の光であって前記第1の光の波長より短い波長の光である第2の光を前記生体組織に照射する第2の照射手段」について、「前記第1の光源と異なる第2の光源から」照射することに限定した限定事項を省いたものである。

そこで、限定事項を省いた構成である本願発明の「700nm乃至1200nmの波長の光である第1の光を生体組織に照射する第1の照射手段」、「700nm乃至1200nmの波長の光であって前記第1の光の波長より短い波長の光である第2の光を前記生体組織に照射する第2の照射手段」について検討するに、第1の光を生体組織に照射する照射手段を第1の照射手段、第2の光を生体組織に照射する照射手段を第2の照射手段と称しているものであり、刊行物1発明についても、照射手段は、「第1の光を生体組織に照射」及び「第2の光を生体組織に照射」する手段であるから、本願発明の「700nm乃至1200nmの波長の光である第1の光を生体組織に照射する第1の照射手段」、「700nm乃至1200nmの波長の光であって前記第1の光の波長より短い波長の光である第2の光を前記生体組織に照射する第2の照射手段」と刊行物1発明の「互いに異なる波長である2種類以上の電磁波を照射することができる光源から、700nmから800nmの範囲の波長である第1の近赤外線および800nmから1000nmの範囲の波長である第2の近赤外線を人体61に照射する手段」は、「700nm乃至1200nmの波長の光である第1の光を生体組織に照射する第1の照射手段」、「700nm乃至1200nmの波長の光であって前記第1の光の波長より短い波長の光である第2の光を前記生体組織に照射する第2の照射手段」を有するという点で一致する。

したがって、本願発明と刊行物1発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「700nm乃至1200nmの波長の光である第1の光を生体組織に照射する第1の照射手段と、
前記生体組織によって後方散乱した前記第1の光を受光する第1の受光手段と、
前記第1の受光手段が受光した光に基づいて第1の画像に対応するものを生成する生成手段と、
700nm乃至1200nmの波長の光であって前記第1の光の波長より短い波長の光である第2の光を前記生体組織に照射する第2の照射手段と、
前記生体組織によって後方散乱した前記第2の光を受光する第2の受光手段と、
前記第2の受光手段が受光した光に基づいて第2の画像に対応するものを生成する生成手段と、
前記第1の画像に対応するものを前記第2に対応するものにより減算する減算手段と、
を備える、
ことを特徴とする撮像装置。」

[相違点]

本願発明と刊行物1発明との相違点は、本願補正発明と刊行物1発明との相違点(3)?(6)と同じである。

本願補正発明と刊行物1発明との相違点(3)?(6)が上記第2.2.に記載したとおり、刊行物1発明及び刊行物2に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も同様の理由により、刊行物1発明及び刊行物2に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

第4.まとめ

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-05-20 
結審通知日 2014-05-27 
審決日 2014-06-09 
出願番号 特願2009-92447(P2009-92447)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06T)
P 1 8・ 121- Z (G06T)
P 1 8・ 572- Z (G06T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲広▼島 明芳  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 渡辺 努
小池 正彦
発明の名称 撮像装置、撮像装置方法及びプログラム  
代理人 佐伯 義文  
代理人 大浪 一徳  
代理人 堀内 正優  
代理人 大浪 一徳  
代理人 志賀 正武  
代理人 佐伯 義文  
代理人 堀内 正優  
代理人 志賀 正武  

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