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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
管理番号 1290231
審判番号 不服2012-25892  
総通号数 177 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-12-27 
確定日 2014-07-29 
事件の表示 特願2008-551432「ワイヤレスリンクを介して電子デバイスに電力供給するための方法およびシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 7月26日国際公開、WO2007/084716、平成21年 6月25日国内公表、特表2009-524398〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2007年1月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年1月18日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成24年8月29日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成24年9月4日)、これに対し、平成24年12月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書が提出され、当審より平成25年9月20日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成25年9月24日)、これに対し、平成26年1月7日付で意見書及び手続補正書が提出されたものである。


2.本願発明
本願の請求項1-22に係る発明(以下、請求項1記載の発明を「本願発明」という。)は、平成26年1月7日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1-22に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
無線周波数リンクを介して充電式デバイスに電力を提供するように構成されるシステムであって、
前記充電式デバイスに電力供給または充電するための、実質的に変調されていない信号を生成するように構成される送信機と、
前記送信機から前記実質的に変調されていない信号を受信し、前記充電式デバイスに充電または電力供給するのに十分な実質的に変調されていない無線周波数(Radio Frequency;RF)信号を放射するように構成される送信アンテナと、を備え、
前記実質的に変調されていないRF信号は、実質的に情報のないRF信号を含み、
前記充電式デバイスは、充電受信アンテナをさらに備え、前記送信アンテナの偏波状態は、前記充電受信アンテナの偏波状態と一致させて最大電力移送を実現するように調整される、システム。
【請求項2】
前記送信アンテナは、指向性経路を介して、前記実質的に変調されていない無線周波数信号を前記充電式デバイスに放射するように構成される指向性アンテナを成す、請求項1
に記載のシステム。
【請求項3】
前記指向性アンテナのビーム幅は、0.05乃至20度の範囲から選択される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記実質的に変調されていないRF信号は、実質的に単一の周波数信号を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記実質的に変調されていないRF信号は、本質的に、実質的に単一の周波数信号から成る、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記実質的に変調されていないRF信号は、実質的に単一の周波数信号から成る、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記実質的に単一の周波数信号の周波数は、88MHz乃至108MHzである、請求項4に記載のシステム。
【請求項8】
前記実質的に変調されていないRF信号は、正弦波を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記実質的に変調されていないRF信号は、正弦波から成る、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記実質的に変調されていないRF信号は、本質的に正弦波から成る、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記実質的に変調されていないRF信号は、実質的に搬送波信号を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記充電式デバイスは、携帯型デバイスを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記充電式デバイスは、メディアプレーヤーと、携帯情報端末と、携帯型コンピュータと、モバイルまたはセルラー式電話(携帯電話)と、時計と、電子ディスプレイと、のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記送信アンテナによって放射される前記RF信号の電界成分の配向は、前記充電受信アンテナの配向と実質的に一致する、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
無線周波数リンクを介して充電式デバイスに電力を提供する方法であって、
実質的に変調されていない信号を生成するステップと、
前記実質的に変調されてない信号に基づき、送信アンテナを介して、前記充電式デバイスに電力供給または充電するのに十分な、実質的に情報のない、実質的に変調されていない無線周波数(RF)信号を放射するステップであって、前記充電式デバイスは充電受信アンテナをさらに備える、ステップと、
前記充電受信アンテナの偏波状態と一致させて最大電力移送を実現するために、前記送信アンテナの偏波状態を調整するステップと、を含む、方法。
【請求項16】
前記送信アンテナは、指向性経路を介して、前記実質的に変調されていない無線周波数信号を前記充電式デバイスに放射するように構成される指向性アンテナを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記実質的に変調されていないRF信号は、正弦波を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記実質的に変調されていないRF信号は、実質的に単一の周波数信号から成る、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記実質的に変調されていないRF信号は、実質的に搬送波信号を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記実質的に変調されていないRF信号によって送達される前記電力により、前記充電式デバイスに電力供給または充電するステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
無線周波数リンクを介して充電式デバイスに電力を提供するためのシステムであって、
実質的に変調されていない信号を生成する手段と、
前記実質的に変調されてない信号に基づき、前記充電式デバイスに電力供給または充電するのに十分な、実質的に情報のない、実質的に変調されていない無線周波数(RF)信号を放射する手段であって、前記充電式デバイスは充電受信アンテナを備える、手段と、
前記充電受信アンテナの偏波状態と一致させて最大電力移送を実現するために、前記放射する手段の偏波状態を調整する手段と、を含むシステム。
【請求項22】
前記実質的に変調されていない信号を生成する前記手段は、電源を含み、前記放射する手段は、送信アンテナを含み、前記調整する手段は、コントローラを含む、請求項21に記載のシステム。」


3.引用例
これに対して、当審の拒絶の理由で引用された、特開2004-96262号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

a「無線通信用電波を送受信し充電用電波を受信する送受信手段と、受信した前記無線通信用電波と前記充電用電波とを分波する分波手段と、前記充電用電波を充電電力に変換する電力変換手段と、前記充電電力を充電する充電池とを備えることを特徴とする携帯無線機。」(【請求項1】)

b「前記電磁遮蔽筐体内における前記携帯無線機の位置を検出する位置検出手段と、前記位置検出手段の検出結果に従い前記無線送信手段のアンテナの放射方向を変化するアンテナ制御手段を備えることを特徴とする請求項2記載の非接触充電装置。」(【請求項3】)

c「本発明は、非接触充電機能を有する携帯無線機及び充電装置に関し、特に無線通信により充電池を充電する非接触充電装置及び携帯無線機に関する。」(【0001】)

d「しかしながら、上記従来の非接触充電装置では、携帯無線機の充電を行う際に使用者が携帯無線機を充電台に設置するかあるいは充電器に接続させる必要があった。また、携帯無線機にコイル等の充電電力取得手段を設けなければならず、携帯無線機の小型化の妨げとなっていた。」(【0004】)

e「まず、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態における携帯無線機の構成を説明する。図1において、携帯無線機101は、無線通信用の送受信機能と充電用のマイクロ波を受信する機能とをあわせ持つ送受信手段としてのアンテナ102と、交流電力を直流電力に変換する整流回路104と、充電して使用する充電池105と、無線通信用の無線回路106と、無線回路106に対するマイクロ波と整流回路104に対するマイクロ波とを分波する分波器103とから構成される。また、充電に用いられるマイクロ波は無線通信に用いられるマイクロ波と周波数が異なるように設定される。」(【0014】)

f「次に、図2を参照して、本発明の第2の実施の形態における非接触充電装置の構成を説明する。図2に示す非接触充電装置201は、装置全体が電磁遮蔽筐体202で覆われ、電磁遮蔽筐体202の内部には携帯無線機101に充電電力を送信する無線送信手段としてのアンテナ203及び送信部204とが備えられ、電磁遮蔽筐体202の外部には電源をオン、オフするための電源スイッチ205と、タイマー206とが設けられる。なお、本実施の形態において、第1の実施の形態で説明したものと同一の部分には同一符号を付して重複説明を避ける。
次に、図2を参照して、本発明の第2の実施の形態における非接触充電装置201を用いた携帯無線機101の充電池105の充電方法について説明する。まず、非接触充電装置201のなかに携帯無線機101を置く。次に、充電時間をタイマー206によって設定し、電源スイッチ205を押して電源をオンにする。電源スイッチ205がオンになると、送信部204により送信アンテナ203から高出力のマイクロ波の電波が非接触充電装置201内部に向けて送信される。このとき、送信される電波の周波数は携帯無線機101が通信に使用している周波数とは異なるものである。携帯無線機101は第1の実施の形態で述べた充電動作に従い、非接触充電装置201の送信アンテナ203から送信された電力を充電池105に蓄える。タイマー206がゼロになるか、あるいは電源スイッチ205を押して電源をオフにすると、マイクロ波の送信は停止し、充電は完了する。」(【0017】-【0018】)

g「次に、図3を参照して、本発明の第3の実施の形態における非接触充電装置の構成を説明する。図3に示す非接触充電装置201は、携帯無線機101を置く台の上に設置されて電流分布を読み取る電磁界スキャナ301と、電磁界スキャナ301で取得した電流分布を解析する電磁界解析装置302と、電磁界解析装置302で得られた情報をもとにアレーアンテナ304の放射方向を制御するアンテナ制御部303と、アレーアンテナ304とを備えている。すなわち、本実施の形態における非接触充電装置201は、アレーアンテナ304の放射方向を携帯無線機101のアンテナ102の方向に向ける手段を備えている点で第2の実施の形態の非接触充電装置201とは異なる。また、電磁界スキャナ301と電磁界解析装置302とにより携帯無線機101の位置検出手段を構成する。なお、本実施の形態において、第1及び第2の実施の形態のものと同一の部分には同一符号を付して重複説明を避ける。
次に、図3を参照して、本発明の第3の実施の形態における非接触充電装置201のアレーアンテナ304の放射方向をアンテナ102の方向に向け、携帯無線機101を充電する充電動作について説明する。まず、携帯無線機101を非接触充電装置201内部の電磁界スキャナ301上に置き、電源スイッチ205をオンにする。電磁界スキャナ301はスキャナ上の電流分布を読み取り、電磁界解析装置302がこの電流データをもとに、電磁界スキャナ301上で電流が最大となる位置を解析する。電流が最大となる位置に携帯無線機101のアンテナ102があるものとし、アンテナ制御部303は電流が最大となる方向へ放射方向が向くようにアレーアンテナ304を制御する。このような状態で、非接触充電装置201は第2の実施の形態で述べた充電動作に従い携帯無線機101の充電を行う。
以上、説明したように、本発明の第3の実施の形態における非接触充電装置201によれば、携帯無線機101のアンテナ102の位置を解析し、アレーアンテナ304をアンテナ102の方向に向けることにより、携帯無線機101の充電電力の受信効率を高くすることができる。」(【0020】-【0022】)

上記記載及び図面を参照すると、携帯無線機と非接触充電装置によりシステムが構築されている。
上記記載及び図面を参照すると、送信部が充電用のマイクロ波を生成するように構成されている。
上記記載及び図面を参照すると、アレーアンテナは送信部から充電用のマイクロ波を受信している。

上記記載事項からみて、引用例1には、
「充電用のマイクロ波で携帯無線機の充電池を充電するシステムであって、
前記携帯無線機に充電するための、充電用のマイクロ波を生成するように構成される送信部と、
前記送信部から充電用のマイクロ波を受信し、前記携帯無線機に充電用のマイクロ波を送信するように構成されるアレーアンテナと、を備え、
前記充電用のマイクロ波は、無線通信用のマイクロ波と異なる周波数を含み、
前記携帯無線機は、充電用のマイクロ波を受信する機能を有するアンテナをさらに備え、前記アレーアンテナは、前記アンテナの充電電力の受信効率が高くなるようにアンテナの方向に向ける制御を行う、システム。」
との発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

同じく、当審の拒絶の理由で引用された、特開昭55-133106号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

「この発明は地上と太陽発電用人工衛星との間でマイクロ波電力を送受するのに用いられる地上用受電アンテナに関するものである。」(第1頁右下欄1-3行)

「従来の受電素子の素子アンテナはこのように半波長ダイポールアンテナで構成されているので、受電しようとする電波の偏波方向がダイポールアンテナの主偏波方向からずれた場合、受電面に到達した全電力のうちダイポールアンテナの主偏波方向と平行な成分だけが受電されるので受電効率が低下する。」(第2頁左上欄11-17行)

同じく、当審の拒絶の理由で引用された、特開2002-152191号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

「これにより、伝搬環境推定部1020が推定した偏波状態に基づいて、受信局1002のアンテナ部1004での受信電力が最大になるように、すなわち(注:「すわわち」は誤記)偏波pの長軸とアンテナの放射特性で与えられる偏波面の軸とが一致するように、送信信号の偏波面を制御し得るようになっている。」(【0272】)


4.対比
そこで、本願発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「携帯無線機」、「充電」、「送信部」、「アレーアンテナ」、「アンテナ」は、それぞれ本願発明の「充電式デバイス」、「電力供給または充電」、「送信機」、「送信アンテナ」、「充電受信アンテナ」に相当する。

引用発明の「充電用のマイクロ波で携帯無線機の充電池を充電するシステム」は、マイクロ波は無線通信に用いられるので、システムは無線周波数リンクを介していることとなるから、本願発明の「無線周波数リンクを介して充電式デバイスに電力を提供するように構成されるシステム」に相当する。
引用発明の携帯無線機において、充電用のマイクロ波は無線通信用のマイクロ波と異なる周波数であって、アンテナは無線通信用の送受信機能と充電用のマイクロ波を受信する機能とをあわせ持っているから、充電用のマイクロ波は充電専用であって、充電用のマイクロ波に信号は付加されてはいない、即ち変調されてはいないから、引用発明の「充電用のマイクロ波を生成する」は、本願発明の「実質的に変調されていない信号を生成する」に相当し、引用発明の「前記送信部から充電用のマイクロ波を受信し、前記携帯無線機に充電用のマイクロ波を送信するように構成されるアレーアンテナ」は、本願発明の「前記送信機から前記実質的に変調されていない信号を受信し、前記充電式デバイスに充電または電力供給するのに十分な実質的に変調されていない無線周波数(Radio Frequency;RF)信号を放射するように構成される送信アンテナ」に相当し、引用発明の「前記充電用のマイクロ波は、無線通信用のマイクロ波と異なる周波数」は、本願発明の「前記実質的に変調されていないRF信号は、実質的に情報のないRF信号」に相当する。

したがって、両者は、
「無線周波数リンクを介して充電式デバイスに電力を提供するように構成されるシステムであって、
前記充電式デバイスに電力供給または充電するための、実質的に変調されていない信号を生成するように構成される送信機と、
前記送信機から前記実質的に変調されていない信号を受信し、前記充電式デバイスに充電または電力供給するのに十分な実質的に変調されていない無線周波数(Radio Frequency;RF)信号を放射するように構成される送信アンテナと、を備え、
前記実質的に変調されていないRF信号は、実質的に情報のないRF信号を含み、
前記充電式デバイスは、充電受信アンテナをさらに備える、システム。」
の点で一致し、以下の点で一応の相違がみられる。

〔相違点〕
本願発明は、送信アンテナの偏波状態は、充電受信アンテナの偏波状態と一致させて最大電力移送を実現するように調整されるのに対し、引用発明は、アレーアンテナは、アンテナの充電電力の受信効率が高くなるようにアンテナの方向に向ける制御を行う点。


5.判断
引用発明のシステムにおいて、電力の受信効率がより高い方が良いことは自明のことである。
引用例2には、マイクロ波電力を送受する装置において、受電しようとする電波の偏波方向がダイポールアンテナの主偏波方向からずれた場合、受電面に到達した全電力のうちダイポールアンテナの主偏波方向と平行な成分だけが受電されるので受電効率が低下することが示されている。
引用例3には、偏波の長軸とアンテナの放射特性で与えられる偏波面の軸とが一致するように、送信信号の偏波面を制御することによって、受信局のアンテナ部の受信電力が最大になることが示されている。
そうであれば、引用発明において、電力の受信効率をより高くするために、引用例2、3の上記記載に基づいて、送信アンテナの偏波状態を充電受信アンテナの偏波状態と一致させて最大電力移送を実現するように調整することは、当業者が容易に考えられることと認められる。

なお、請求人は、平成26年1月7日付意見書において、
『引用例1の要約によると、引用例1では、充電に用いられるマイクロ波が、無線通信に用いられるマイクロ波と周波数が異なるように設定されます。従って、引用例1は、使用に基づく動作中の周波数変調に関するものであり、故に本願請求項1の「実質的に情報のない、実質的に変調されていない無線周波数(RF)信号を放射するように構成される送信アンテナ」を検討していません。』
と主張するが、引用例1には「携帯無線機101は、無線通信用の送受信機能と充電用のマイクロ波を受信する機能とをあわせ持つ送受信手段としてのアンテナ102」、「また、充電に用いられるマイクロ波は無線通信に用いられるマイクロ波と周波数が異なるように設定される。」(e参照)とあるのみで、充電に用いられるマイクロ波を周波数変調するとの記載及び示唆は無い。しかも引用例1には「装置全体が電磁遮蔽筐体202で覆われ、電磁遮蔽筐体202の内部には携帯無線機101に充電電力を送信する無線送信手段としてのアンテナ203及び送信部204とが備えられ」(f参照)とあるから、充電時には無線通信用のマイクロ波が筐体によって遮蔽され、充電用のマイクロ波のみが携帯無線機に向かうことを想定しており、その際充電用のマイクロ波を周波数変調して信号を付加して筐体内で充電のために用いる意味がないから、充電に用いられるマイクロ波を周波数変調することは想定されておらず、アレーアンテナを用いる非接触充電装置の場合も、同様に筐体内で充電用のマイクロ波のみが携帯無線機に向かい、充電に用いられるマイクロ波は周波数変調が行われないものであり、「実質的に変調されていない無線周波数信号を放射するように構成される送信アンテナ」が実質的に開示されており、請求人の上記主張は採用できない。
更に、平成26年1月7日付意見書において、
『引用例2の要約によると、引用例2では、高調波の再放射を防ぐための低域通過フィルターF1に接続された十字ダイポールアンテナを用いて、アンテナ受電面に平行な面内で任意の方向に回転した直線偏波のマイクロ波電力を受信可能にして、発電用人工衛星の送信アンテナの偏波方向の制御が容易になります。引用例2は、高調波の人工衛星用途における偏波方向の制御に関するものであり、故に本願請求項1の「実質的に情報のない、実質的に変調されていない無線周波数(RF)信号を放射するように構成される送信アンテナ」を開示していません。また、引用例2は、アンテナの偏波状態の一致について検討していないので、本願請求項1の「送信アンテナの偏波状態は、充電受信アンテナの偏波状態と一致させて最大電力移送を実現するように調整される」という送信アンテナを開示していません。』
と主張するが、引用例2にはそもそも要約部分は存在せず、引用例2からは、周波数変調の技術を抽出するものでは無く、偏波状態の一致不一致による電力の受信効率の大小の技術を抽出するものであるから、請求人の上記主張は採用できない。
更に、平成26年1月7日付意見書において、
『引用例3は、無線伝搬路環境を考慮した秘匿情報保護に関するものです。引用例3は、通信システム(情報を持つRF信号)に関するものであり、故に本願請求項1の「前記送信機から前記実質的に変調されていない信号を受信し、前記充電式デバイスに充電または電力供給するのに十分な実質的に変調されていない無線周波数(Radio Frequency;RF)信号を放射するように構成される送信アンテナと、を備え、前記実質的に変調されていないRF信号は、実質的に情報のないRF信号を含み、前記充電式デバイスは、充電受信アンテナをさらに備え、前記送信アンテナの偏波状態は、前記充電受信アンテナの偏波状態と一致させて最大電力移送を実現するように調整される」を検討していません。』
と主張するが、偏波pの長軸とアンテナの放射特性で与えられる偏波面の軸とが一致することで受信電力が最大となることが記載され当該技術を抽出しているから、請求人の上記主張は採用できない。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-02-26 
結審通知日 2014-03-03 
審決日 2014-03-14 
出願番号 特願2008-551432(P2008-551432)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H02J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 麻川 倫広  
特許庁審判長 堀川 一郎
特許庁審判官 新海 岳
槙原 進
発明の名称 ワイヤレスリンクを介して電子デバイスに電力供給するための方法およびシステム  
代理人 黒田 晋平  
代理人 村山 靖彦  

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