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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1290395
審判番号 不服2013-9558  
総通号数 177 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-05-24 
確定日 2014-08-08 
事件の表示 特願2008-539560「基板への光素子の組み立て方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 5月18日国際公開、WO2007/054868、平成21年 4月 9日国内公表、特表2009-515355〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、2006年(平成18年)11月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2005年11月9日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成25年1月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月24日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに、これと同時に手続補正がなされたものである。

2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成25年5月24日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし27に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項21に係る発明は次のとおりのものである。

「少なくとも1つの光素子及び少なくとも1つの支持素子を備える光モジュールであって、前記光素子及び前記支持素子が1つのステップにおいて基板へ実装される、光モジュール。」(以下「本願発明」という。)

3 刊行物の記載
原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である特開2005-101477号公報(以下「引用文献」という。)には、以下の記載がある。

(1)「【請求項1】
上面の中央部に発光素子を搭載する搭載部を有する基体と、該基体の前記上面の外周部に前記搭載部を囲繞するように取着された第1の枠体と、該第1の枠体上に設けられた、内周面が上側に向かうに伴って外側に広がるように傾斜しているとともに前記内周面が前記発光素子が発光する光を反射する反射面とされている第2の枠体とを具備しており、該第2の枠体は、下面と外周面との間に全周にわたって段差が形成されているとともに該段差が前記第1の枠体の内周面および上面に接合されて前記第1の枠体上に設けられていることを特徴とする発光素子収納用パッケージ。
……
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の発光素子収納パッケージと、前記搭載部に搭載された発光素子と、該発光素子を被覆する透光性部材とを具備していることを特徴とする発光装置。」

(2)「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来のパッケージ11では、発光素子14から出る熱によりパッケージ11に歪みが発生し易くなるため、発光素子14から発せられて枠体13で反射される光束(光ビーム)のパターンが一定にならず光の放射角度が不安定となったり、単一の光束またはそれらの集合体で表される光強度分布が所望の値およびパターンからずれるという問題点を有していた。
【0009】
特に、発光装置が局部照明の用途等に使用される場合、光の放射角度や光強度分布の不安定性は重要な問題点となる。
【0010】
また、輝度を上げるために発光素子14の入力パワーを上げると、発光素子14から生じる熱量が非常に大きくなってパッケージ11が高温となりやすく、その結果、パッケージ11の放熱性が低下して発光素子14の温度が上昇し易くなり、温度上昇および温度降下の熱履歴が繰り返されることによって発光素子14自体の強度、寿命が低下するという問題点も有していた。
【0011】
したがって、本発明はかかる従来の問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は、発光素子が発光する光を良好に反射させ外部に均一に効率よく放射させるとともに、温度変化によって光強度、光の放射角度および光強度分布が変化しない安定した光学的特性が得られる発光装置を作製できる発光素子収納用パッケージおよび発光装置を提供することにある。」

(3)「【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の発光素子収納用パッケージは、上面の中央部に発光素子を搭載する搭載部を有する基体と、該基体の前記上面の外周部に前記搭載部を囲繞するように取着された第1の枠体と、該第1の枠体上に設けられた、内周面が上側に向かうに伴って外側に広がるように傾斜しているとともに前記内周面が前記発光素子が発光する光を反射する反射面とされている第2の枠体とを具備しており、該第2の枠体は、下面と外周面との間に全周にわたって段差が形成されているとともに該段差が前記第1の枠体の内周面および上面に接合されて前記第1の枠体上に設けられていることを特徴とする。
……
【0015】
本発明の発光装置は、上記本発明の発光素子収納パッケージと、前記搭載部に搭載された発光素子と、該発光素子を被覆する透光性部材とを具備していることを特徴とする。」

(4)「【発明の効果】
【0016】
本発明の発光素子収納用パッケージは、上面の中央部に発光素子を搭載する搭載部を有する基体と、基体の上面の外周部に搭載部を囲繞するように取着された第1の枠体と、第1の枠体上に設けられた、内周面が上側に向かうに伴って外側に広がるように傾斜しているとともに内周面が発光素子が発光する光を反射する反射面とされている第2の枠体とを具備しており、第2の枠体は、下面と外周面との間に全周にわたって段差が形成されているとともに段差が第1の枠体の内周面および上面に接合されて第1の枠体上に設けられていることから、傾斜した光反射面とされた内周面によって発光素子から出る光を外部に80%以上反射させることができ、発光素子の入力パワーを比較的低くしても十分な輝度を得ることができる。その結果、発光素子から発生する熱量を抑制して発光素子が高温となって寿命が低下するのを有効に防止し、高い発光効率を長期間にわたり維持することができる。
【0017】
また、第2の枠体が第1の枠体を介して基体に接合されているので、発光素子の熱によって発光素子収納用パッケージが歪んだとしても、歪みによって生じる応力を第1の枠体により緩和して第2の枠体におよぼす影響を非常に低減することができる。さらに、発光素子の熱が基体から第1の枠体を経由して第2の枠体に伝達するので、発光素子から第2の枠体までの熱抵抗が大きくなって第2の枠体が熱により歪むのを有効に抑制できる。従って、発光素子収納用パッケージから放出される光の強度分布や照射面における照度分布にムラが生じず、安定した光を出力し、発光装置を長期間にわたり高信頼性でかつ安定して作動することができる。
【0018】
さらに、第2の枠体は、下面と外周面との間に形成された段差で第1の枠体と接合されていることから、第2の枠体の内周面と段差との距離を大きくして、第1の枠体との接合部から熱が内周面に伝わり難くすることができる。その結果、発光素子の光を反射する内周面が熱により変形するのを有効に抑制して、内周面の光反射特性を良好に維持することができる。
……
【0021】
本発明の発光装置は、上記本発明の発光素子収納パッケージと、搭載部に搭載された発光素子と、発光素子を被覆する透光性部材とを具備していることから、発光効率に優れ、安定した光学的特性を得ることができ、高性能なものとなる。」

(5)「【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の発光素子収納用パッケージについて以下に詳細に説明する。図1は本発明のパッケージについて実施の形態の一例を示す断面図である。図1において、2は基体、3は第2の枠体、6は第1の枠体であり、これらで発光素子4を収容するためのパッケージ1が主に構成されている。
【0023】
本発明のパッケージ1は、上側主面の中央部に発光素子4が搭載される搭載部2aを有するセラミックスから成る基体2と、基体2の上側主面の外周部に搭載部2aを囲むように取着された第1の枠体6と、第1の枠体6の上面に搭載部2aを囲むように取着された、内周面が上側に向かうに伴って外側に広がるように傾斜しているとともに内周面が発光素子4が発光する光を反射する反射面とされている第2の枠体3とを具備している。
【0024】
本発明の基体2は、発光素子4を支持し搭載するための支持部材および発光素子4の熱を放熱させるための放熱部材として機能する。基体2の上面中央部には発光素子4を搭載する搭載部2aが設けられている。この搭載部2aには、発光素子4が樹脂接着剤や錫(Sn)-鉛(Pb)半田、Sn-Au等の低融点ロウ材を介して取着される。そして、発光素子4の熱は、樹脂接着剤や低融点ロウ材を介して基体2に伝達され外部に効率よく放散されることにより、発光素子4の作動性を良好に維持する。また、発光素子4から出射される光は、第2の枠体6の内周面で反射されて外部に放射される。……」

(6)図1は次のものである。



4 引用発明
上記3(特に(1))によれば、引用文献には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「上面の中央部に発光素子を搭載する搭載部を有する基体と、該基体の前記上面の外周部に前記搭載部を囲繞するように取着された第1の枠体と、該第1の枠体上に設けられた、内周面が上側に向かうに伴って外側に広がるように傾斜しているとともに前記内周面が前記発光素子が発光する光を反射する反射面とされている第2の枠体とを具備しており、該第2の枠体は、下面と外周面との間に全周にわたって段差が形成されているとともに該段差が前記第1の枠体の内周面および上面に接合されて前記第1の枠体上に設けられている発光素子収納用パッケージと、前記搭載部に搭載された発光素子と、該発光素子を被覆する透光性部材とを具備している発光装置。」

5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「発光素子」、「基体」及び「発光装置」は、それぞれ本願発明の「光素子」、「基板」及び「光モジュール」に相当する。

(2)引用発明の「発光素子」は、「基体」の「搭載部に搭載され」るから、引用発明は,本願発明の「『光素子が』『基板へ実装される』」との特定事項を備えている。

(3)引用発明の「第1の枠体」は、「基体の前記上面の外周部に」「取着され」、「第2の枠体」に形成された「段差」が「第1の枠体の内周面および上面に接合され」るから、引用発明の「第1の枠体」は、本願発明の「支持素子」に相当し、引用発明は,本願発明の「『支持素子が』『基板へ実装される』」との特定事項を備えている。

(4)以上によれば、両者は、

「1つの光素子及び1つの支持素子を備える光モジュールであって、前記光素子及び前記支持素子が基板へ実装される、光モジュール。」

で一致し、以下の点で相違するものと認められる。

「本願発明では、光素子及び支持素子が1つのステップにおいて基板へ実装されるのに対し、引用発明では、発光素子及び第1の枠体が1つのステップにおいて基体へ実装されるか否かが特定されていない点。」(以下「相違点」という。)

6 判断
(1)相違点について
ア 回路基板に部品を実装する際に、複数の部品を一括して実装することは、本願優先日当時における周知技術である(例えば、特開2004-247448号公報の【請求項6】には、ホルダの凹部に複数の個別部品の頂部を嵌め込んで仮保持し、回路基板の所定位置にマウントする実装方法が記載されている。また、特開平10-12992号公報の【請求項1】には、電子部品収納パレットの凹部に嵌め込まれた電子部品の各電極に基板の一面を押しつける実装方法が記載されている。)。

イ そして、引用発明において、発光素子及び第1の枠体をどのような工程で基体へ実装するかは、当業者が適宜決定し得る設計的事項というべきところ、引用文献には、「【0024】……この搭載部2aには、発光素子4が樹脂接着剤や錫(Sn)-鉛(Pb)半田、Sn-Au等の低融点ロウ材を介して取着される。……」及び「【0048】次に、第1の枠体6を基体2の上面の接合部にAu-Snロウで接合し……」と記載されており、発光素子及び第1の枠体は、同じAu-Snロウ材で実装することができるから、上記周知技術を適用して、発光素子及び第1の枠体をAu-Snロウ材で同時に実装すること、すなわち相違点に係る本願発明の構成とすることは当業者が適宜なし得ることである。

(2)本願発明の効果について
本願発明によってもたらされる効果を全体としてみても、引用発明及び周知技術から当業者が当然に予測できる程度のものであって、格別顕著なものとはいえない。

(3)回答書の主張について
請求人は、本願の請求項1に係る発明は、光素子を支持素子とともに1つの実装平面において位置決めすること、及び、光素子を支持素子とともに1つのステップにおいて基板へ表面実装することにより、組み立て方法を単純化できるとともに、組み立てに要するコストを低減することを可能としており、かかる技術的思想は、引用文献に開示も示唆もされておらず、周知技術でもない旨主張し、本願発明についても同様である旨主張する。
しかし、本願発明においては、光素子を支持素子とともに1つの実装平面において位置決めすることは、特定されていない。
また、光素子を支持素子とともに1つの実装平面において位置決めすることを想定しても、当該事項は、本願発明の光モジュールの構成を特定する上で、特段の意味を持つものではない。
よって、請求人の主張は、採用できない。

7 むすび
以上の検討によれば、本願発明は、当業者が引用文献に記載された発明及び周知技術に基いて、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-03-13 
結審通知日 2014-03-18 
審決日 2014-03-31 
出願番号 特願2008-539560(P2008-539560)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 百瀬 正之  
特許庁審判長 江成 克己
特許庁審判官 中田 誠
畑井 順一
発明の名称 基板への光素子の組み立て方法  
代理人 浅村 敬一  
代理人 津軽 進  
代理人 笛田 秀仙  

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