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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01R
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01R
管理番号 1290456
審判番号 不服2013-2337  
総通号数 177 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-02-06 
確定日 2014-08-07 
事件の表示 特願2008-549358「導電性接触子ホルダおよび導電性接触子ユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 6月19日国際公開、WO2008/072699〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成19年12月13日を出願日(優先権主張 平成18年12月15日(以下、「優先日」という。)日本)とする国際特許出願であって、平成21年6月19日付けで明細書及び特許請求の範囲についての補正がなされ、平成24年7月5日付けで特許請求の範囲についての補正がなされ(以下、「補正1」という。)、同年10月31日付け(送達:同年11月6日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年2月6日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲についての補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。
その後、当審より平成25年11月7日付け審尋書により審尋をしたところ、平成26年1月14日付けで回答書が提出された。

第2 補正却下の決定
[結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を次のとおり補正するものである。

(本件補正前)
「【請求項1】
検査対象の回路構造と該回路構造に供給する信号の生成を行う回路基板に対して信号の入出力または電力の供給を行う導電性接触子を収容する導電性接触子ホルダであって、
前記導電性接触子をそれぞれ収容する複数の開口部を有する第1基板と、
前記第1基板が有する前記複数の開口部を充填するとともに前記第1基板の一方の表面の一部を被覆する被膜部を形成した後で該被膜部の一部を残して表面が平滑化された絶縁性材料からなり、前記複数の開口部にそれぞれ対応した位置に形成されて前記導電性接触子を挿通する複数の孔部を有する第1保持部材と、
前記第1基板と略同形状をなし、前記第1基板に積層される導電性の第2基板と、
前記第1保持部材と略同形状をなし、前記第1保持部材が有する前記複数の孔部のいずれかとそれぞれ連通する複数の孔部を有する第2保持部材と、
を備え、
前記第1保持部材が有する被膜部および前記第2保持部材が有する被膜部は、前記第1および第2基板を挟んで互いに反対側の表面に位置し、
前記第1基板は、
前記複数の開口部の一部であって互いに隣接する少なくとも2つの開口部の開口端を底面に含み、表面から所定の深さで穿設され、前記絶縁性材料が充填されることによって前記被膜部が形成される凹部を有することを特徴とする導電性接触子ホルダ。
【請求項2】
前記第1基板が有する開口部は、
前記第2基板と対向している表面側の径が最大であり、板厚方向に沿って徐々に径が小さくなるテーパ部と、
前記テーパ部の最小径と同じ径を有して前記テーパ部に連なる円筒状の小径部と、
を有することを特徴とする請求項1記載の導電性接触子ホルダ。
【請求項3】
前記絶縁性材料はフッ素樹脂であることを特徴とする請求項1または2記載の導電性接触子ホルダ。
【請求項4】
請求項1?3のいずれか一項に記載の導電性接触子ホルダと、
前記導電性接触子ホルダに収容された複数の前記導電性接触子と、
前記回路基板と、
を備えたことを特徴とする導電性接触子ユニット。」

(本件補正後)
「【請求項1】
検査対象の回路構造と該回路構造に供給する信号の生成を行う回路基板に対して信号の入出力または電力の供給を行う導電性接触子を収容する導電性接触子ホルダであって、
前記導電性接触子をそれぞれ収容する複数の開口部を有する第1基板と、
前記第1基板が有する前記複数の開口部を充填するとともに前記第1基板の一方の表面の一部を被覆する被膜部を形成した後で該被膜部の一部を残して表面が切削加工によって平滑化された絶縁性材料からなり、前記複数の開口部にそれぞれ対応した位置に形成されて前記導電性接触子を挿通する複数の孔部を有する第1保持部材と、
前記第1基板と略同形状をなし、前記第1基板に積層される導電性の第2基板と、
前記第1保持部材と略同形状をなし、前記第1保持部材が有する前記複数の孔部のいずれかとそれぞれ連通する複数の孔部を有する第2保持部材と、
を備え、
前記第1保持部材が有する被膜部および前記第2保持部材が有する被膜部は、前記第1および第2基板を挟んで互いに反対側の表面に位置し、
前記第1基板は、
前記複数の開口部の一部であって互いに隣接する少なくとも2つの開口部の開口端を底面に含み、表面から所定の深さで穿設され、前記絶縁性材料が充填されることによって前記被膜部が形成される凹部を有することを特徴とする導電性接触子ホルダ。
【請求項2】
前記第1基板が有する開口部は、
前記第2基板と対向している表面側の径が最大であり、板厚方向に沿って徐々に径が小さくなるテーパ部と、
前記テーパ部の最小径と同じ径を有して前記テーパ部に連なる円筒状の小径部と、
を有することを特徴とする請求項1記載の導電性接触子ホルダ。
【請求項3】
前記絶縁性材料はフッ素樹脂であることを特徴とする請求項1または2記載の導電性接触子ホルダ。
【請求項4】
請求項1?3のいずれか一項に記載の導電性接触子ホルダと、
前記導電性接触子ホルダに収容された複数の前記導電性接触子と、
前記回路基板と、
を備えたことを特徴とする導電性接触子ユニット。」
(下線は補正箇所。)

本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「平滑化された」を「切削加工によって平滑化された」と限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

2 引用例記載の事項・引用発明
(1)記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、優先日前に頒布された刊行物である国際公開第00/03250号(発明の名称:「導電性接触子」、出願人:日本発条株式会社、公開日:平成12年1月20日、以下「引用例1」という。)には、次の事項(a)ないし(e)が図面とともに記載されている。

(a)
「従来、半導体製品の検査において、導電性接触子を複数配設して多点同時測定用検査ユニットなどに用い得るようにしたものがある。」(第1頁第8?9行)

(b)
「上記課題を解決するため、本発明においては、ホルダに設けた貫通孔により、被接触体に接触させる導電性針状体を軸線方向に出没自在にガイドすると共に前記導電性針状体を突出させる方向に弾発付勢する圧縮コイルばねを同軸的に受容した導電性接触子であって、前記ホルダが少なくとも1枚の高強度材からなるプレートを有し、前記貫通孔が、前記導電性針状体をガイドする針状体ガイド孔と、前記導電性針状体を前記弾性付勢力に抗して抜け止めするための抜け止め肩部とを有し、前記プレートに前記針状体ガイド孔が形成され、かつ前記針状体ガイド孔の内周面に絶縁皮膜が形成されていることとした。」(第2頁第1?8行)

(c)
「また、前記導電性針状体が、前記圧縮コイルばねの両コイル端部に設けられていることにより、導電性接触子を両端可動型とすることができ、その両導電性針状体を各被接触体(例えば検査対象基板と測定回路基板)の間に設けて好適に検査・測定を行うことができる。」(第2頁第17?20行)

(d)
「図3に本発明に基づく第2の実施の形態を示す。なお、前記図示例と同様の部分については同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。この形態にあっては、2枚の導電性金属プレート11・12を互いに重ね合わせた積層状態で支持ブロック8が形成されていると共に、プレート12が接地されている。それら両金属プレート11・12には、その積層方向に貫通するストレート孔状の貫通孔13が設けられており、その貫通孔13の内周面及び両金属プレート11・12の各外面(図における上下の各端面)に、それら各面間に渡って連続する絶縁膜14が形成されている。これらプレート11・12の材質や絶縁膜14の種類は、上記した材質の組み合わせであって良い。
本実施の形態にあっては、貫通孔13の内周面の全面に絶縁膜14が形成されていることから、針状体ガイド孔14a及びコイルばね支持孔14bが絶縁膜14により形成されている。そして、コイルばね支持孔14b内に圧縮コイルばね5が同軸的に受容されており、その圧縮コイルばね5の両コイル端部に、各導電性針状体6が設けられている。」(第6頁第14行?第7頁第1行)

(e)
「本図示例の導電性針状体6にあっては、外向フランジ部6aから針先部6bに至る部分の形状は前記実施の形態と同様であるが、外向フランジ部6aから針先部6bとは相反する向きに突出するボス部6cが一体に形成されている。そのボス部6cが圧縮コイルばね5のコイル端部に挿入されていると共に、ボス部6cの基部側(外向フランジ6a側)にて若干拡径された拡径部がコイル端部に圧入されており、このようにして圧縮コイルばね5の両コイル端部に各導電性針状体6が結合されている。
そして、前記実施の形態と同様に、針状体ガイド孔14aの方がコイルばね支持孔14bよりも縮径されており、針状体ガイド孔14aの内径は導電性針状体6の針部の外径よりも大きいが外向フランジ部6aの外径よりは小さくされており、両孔14a・14b間の径違いによる段付き部には、絶縁被膜からなる肩部14cが形成され、外向フランジ部6aが肩部14cに係合して、導電性針状体6が抜け止めされている。なお、導電性針状体14は、針状体ガイド孔14aにより摺接支持されているが、外向フランジ部6aもコイルばね支持孔14bにより摺接支持されていて良い。」(第7頁第2?16行)

・上記記載(c)より、検査対象基板は、測定回路基板により検査・測定をされることから、測定回路基板は検査対象基板に供給する信号を生成し、圧縮コイルばね5及び導電性針状体6を介して当該信号の入出力を行うものと認められ、上記記載(b)、(c)、(d)、及び図3より、
ア 「検査対象基板と検査対象基板に供給する信号の生成を行う測定回路基板に対して信号の入出力を行う圧縮コイルばね5及び導電性針状体6を受容するホルダ」との技術的事項が読み取れる。

・上記記載(a)より、一般的に導電性接触子は複数配設されることを考慮すると、上記記載(a)、(d)、及び図3より、
イ 「圧縮コイルばね5及び導電性針状体6をそれぞれ受容する複数の貫通孔13を有する導電性金属プレート11」との技術的事項が読みとれる。

・上記記載(a)より、一般的に導電性接触子は複数配設されることを考慮すると、上記記載(a)、(d)、(e)、及び図3より、
ウ 「絶縁性材料からなり、複数の貫通孔13の内周面に形成されて導電性針状体6を摺接支持する複数の針状体ガイド孔14aと、圧縮コイルばね5を受容する複数のコイルばね支持孔14bとを形成する絶縁膜14」との技術的事項が読み取れる。

・図3より、導電性金属プレート12は、導電性金属プレート11と略同形状をなしていると認められ、上記記載(d)及び図3より、
エ 「導電性金属プレート11と略同形状をなし、導電性金属プレート11に積層される導電性金属プレート12」との技術的事項が読み取れる。

・上記記載(d)及び図3より、導電性金属プレート12に設けられた貫通孔13の内周面にも絶縁膜14が設けられ、図3より当該絶縁膜14は、導電性金属プレート11に設けられた絶縁膜14と略同形状をなしており、かつ、導電性金属プレート12に設けられた絶縁膜14が形成するコイルばね支持孔14bと、導電性金属プレート11に設けられた絶縁膜14が形成するコイルばね支持孔14bとは連続すると認められる。そして、上記記載(a)より、一般的に導電性接触子は複数配設されることを考慮すると、上記記載(a)、(d)、及び図3より
オ 「導電性金属プレート11に設けられた絶縁膜14と略同形状をなし、導電性金属プレート11に設けられた絶縁膜14が形成する複数のコイルばね支持孔14bのいずれかとそれぞれ連続する複数のコイルばね支持孔14bと針状体ガイド孔14aとを有する導電性金属プレート12に設けられた絶縁膜14」との技術的事項が読み取れる。

(2)引用発明
以上の技術的事項アないしオを総合勘案すると、引用例1には次の発明が記載されているものと認められる。

「検査対象基板と該検査対象基板に供給する信号の生成を行う測定回路基板に対して信号の入出力を行う圧縮コイルばね5及び導電性針状体6を受容するホルダであって、
前記圧縮コイルばね5及び導電性針状体6をそれぞれ受容する複数の貫通孔13を有する導電性金属プレート11と、
絶縁性材料からなり、前記複数の貫通孔13の内周面に形成されて前記導電性針状体6を摺接支持する複数の針状体ガイド孔14aと、前記圧縮コイルばね5を受容する複数のコイルばね支持孔14bとを形成する絶縁膜14と、
前記導電性金属プレート11と略同形状をなし、前記導電性金属プレート11に積層される導電性金属プレート12と、
前記導電性金属プレート11に設けられた絶縁膜14と略同形状をなし、前記導電性金属プレート11に設けられた絶縁膜14が形成する前記複数のコイルばね支持孔14bのいずれかとそれぞれ連続する複数のコイルばね支持孔14bと針状体ガイド孔14aとを有する導電性金属プレート12に設けられた絶縁膜14と、を有するホルダ。」(以下、「引用発明」という。)

3 対比
本願補正発明と引用発明とを、主たる構成要件毎に順次対比する。

(1)引用発明における「検査対象基板」、「測定回路基板」、「受容」、「貫通孔13」、「導電性金属プレート11」、及び「導電性金属プレート12」は、本願補正発明における「検査対象の回路構造」、「回路基板」、「収容」、「開口部」、「第1基板」、及び「導電性の第2基板」に、それぞれ相当する。

(2)引用発明では、「圧縮コイルバネ5」及び「導電性針状体6」により「検査対象基板」及び「測定回路基板」に対して信号の入出力を行うから、引用発明の「圧縮コイルバネ5」及び「導電性針状体6」の両者を合わせたものが、本願補正発明の「導電性接触子」に相当する。
また、引用発明のホルダは、「圧縮コイルばね5」及び「導電性針状体6」を受容しているから、上記相当関係を踏まえると、引用発明の「ホルダ」は、本願補正発明の「導電性接触子ホルダ」に相当する。
そして、これらの相当関係を踏まえると、引用発明の「検査対象基板と該検査対象基板に供給する信号の生成を行う測定回路基板に対して信号の入出力を行う圧縮コイルばね5及び導電性針状体6を受容するホルダ」と、本願補正発明の「検査対象の回路構造と該回路構造に供給する信号の生成を行う回路基板に対して信号の入出力または電力の供給を行う導電性接触子を収容する導電性接触子ホルダ」とは、「検査対象の回路構造と該回路構造に供給する信号の生成を行う回路基板に対して信号の入出力を行う導電性接触子を収容する導電性接触子ホルダ」という点で共通する。

(3)引用発明の絶縁膜14は、貫通孔13の内周面に形成されており、これは、本願補正発明の「開口部にそれぞれ対応した位置に形成され」ることに相当し、また、引用発明では、「針状体ガイド孔14a」と「コイルばね支持孔14b」とにより「導電性針状体6」と「圧縮コイルばね5」とを受容しているから、上記相当関係を踏まえると、「針状体ガイド孔14a」及び「コイルばね支持孔14b」の両者を合わせたものが、本願補正発明の「孔部」に相当する。
さらに、引用発明の絶縁膜14のうち、導電性金属プレート11に設けられた絶縁膜14は、本願補正発明の「第1保持部材」に相当するから、これらの相当関係から、引用発明の「絶縁性材料からなり、前記複数の貫通孔13の内周面に形成されて前記導電性針状体6を摺接支持する複数の針状体ガイド孔14aと、前記圧縮コイルばね5を受容する複数のコイルばね支持孔14bとを形成する絶縁膜14」と、本願発明の「前記第1基板が有する前記複数の開口部を充填するとともに前記第1基板の一方の表面の一部を被覆する被膜部を形成した後で該被膜部の一部を残して表面が切削加工によって平滑化された絶縁性材料からなり、前記複数の開口部にそれぞれ対応した位置に形成されて前記導電性接触子を挿通する複数の孔部を有する第1保持部材」とは、「絶縁性材料からなり、前記複数の開口部にそれぞれ対応した位置に形成されて前記導電性接触子を挿通する複数の孔部を有する第1保持部材」という点で共通する。

(4)引用発明において、導電性金属プレート11に設けられた絶縁膜14と導電性金属プレート12に設けられた絶縁膜14とは連続しているから、導電性金属プレート11に設けられた絶縁膜14が形成するコイルばね支持孔14bと、導電性金属プレート12に設けられた絶縁膜14が形成するコイルばね支持孔14bとは連続しており、これは本願補正発明の「連通」に相当し、上記相当関係を踏まえると、引用発明の「前記導電性金属プレート11に設けられた絶縁膜14と略同形状をなし、前記導電性金属プレート11に設けられた絶縁膜14が形成する前記複数のコイルばね支持孔14bのいずれかとそれぞれ連続する複数のコイルばね支持孔14bと針状体ガイド孔14aとを有する導電性金属プレート12に設けられた絶縁膜14」は、本願補正発明の「前記第1保持部材と略同形状をなし、前記第1保持部材が有する前記複数の孔部のいずれかとそれぞれ連通する複数の孔部を有する第2保持部材」に相当する。

(5)以上の関係を整理すると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(一致点)
「検査対象の回路構造と該回路構造に供給する信号の生成を行う回路基板に対して信号の入出力を行う導電性接触子を収容する導電性接触子ホルダであって、
前記導電性接触子をそれぞれ収容する複数の開口部を有する第1基板と、
絶縁性材料からなり、前記複数の開口部にそれぞれ対応した位置に形成されて前記導電性接触子を挿通する複数の孔部を有する第1保持部材と、
前記第1基板と略同形状をなし、前記第1基板に積層される導電性の第2基板と、
前記第1保持部材と略同形状をなし、前記第1保持部材が有する前記複数の孔部のいずれかとそれぞれ連通する複数の孔部を有する第2保持部材と、を有する導電性接触子ホルダ。」

(相違点1)
本願補正発明では、第1、第2保持部材が、第1、第2基板が有する複数の開口部を充填するとともに前記第1基板の一方の表面の一部を被覆する被膜部を形成した後で該被膜部の一部を残して表面を切削加工によって平滑化された絶縁性材料からなっているのに対し、引用発明では、第1、第2保持部材をどのように形成するか不明な点。
(相違点2)
本願補正発明では、第1保持部材、第2保持部材が有する被膜部が、第1、第2基板を挟んで互いに反対側の表面に位置しているのに対し、引用発明では、被膜部を設けていない点。
(相違点3)
本願補正発明では、複数の開口部の一部であり、互いに隣接する少なくとも2つの開口部の開口端を底面に含み、表面から所定の深さで穿設され、絶縁性材料が充填されることによって被膜部が形成される凹部を有しているのに対し、引用発明では、凹部を有していない点。

4 判断
前記相違点1ないし3は、いずれも、基板に形成された貫通孔の内周面を絶縁性材料で被覆する点で互いに関連しているから、これらを併せて検討する。
原査定の拒絶の理由で引用され、優先日前に頒布された刊行物である特開2006-125988号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。
「【0019】
この固定手段3の製法を、図2を参照しながらさらに詳細に説明する。まず、図2(a)に示されるように、金属ブロック2の一面に設けられる、たとえばアルミニウムまたは真鍮からなる1.5mm程度の厚さRの金属板31に、金属ブロック2に設けられる各コンタクトプローブ1SIG、1POWなどの位置に合せてコンタクトプローブ1のプランジャ11を貫通させるプランジャ11の太さより大きい径C、たとえば0.25mm程度の貫通孔31aを形成し、さらにその金属板31の金属ブロック2側の面31dから、その貫通孔31aと同心で凹部31bを1.3mm程度の深さSで、内径Dを0.35mm程度に形成する(図2では、1個のコンタクトプローブに対応する貫通孔31aおよび凹部31bのみが示されている)。
【0020】
この凹部32bを形成するときに、図2(d)に凹部32b近傍の断面説明図が示されるように、凹部31b周囲の1ヵ所または数カ所に凹部31bの軸方向に沿って窪み部31cを形成しておくことにより、後述する絶縁性樹脂32dに貫通孔32aや凹部32bをドリルなどにより形成する場合に、絶縁性樹脂32dの回転を防止することができるため好ましい。この回転防止手段としては、図2(e)に金属板31の一部平面説明図が示されるように、貫通孔31aまたは凹部31bと連通して、たとえば十字状に金属板31の表面に樹脂を充填し得る樹脂溝31fを形成しておくこともできる。このような十字状の樹脂溝31fと連通して金属板の内部に樹脂溝31fの幅より広い、金属板31と平行方向の窪み部を形成することにより、回転防止のみならず、金属板31と垂直方向の移動も防止することができる。なお、樹脂溝31fは、十字状でなくて一方向のみに形成されていてもよい。また、窪み部31cや樹脂溝31fが設けられるだけでも、絶縁性スペーサ32が金属板31から抜け出にくくすることができる。
【0021】
つぎに、図2(b)に示されるように、金属板31の貫通孔31aおよび凹部31b内に、たとえば絶縁性樹脂32dを充填して硬化させる。絶縁性樹脂32dとしては、高速・高周波対応のために誘電率が小さくて均一で、微細な加工が可能な材料が選定され、たとえばエポキシ系樹脂やガラス繊維(Eガラス)を含む樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)などが使用される。なお、図2(b)に示される例では、金属板31の貫通孔31a内にも金属板31の表面に至るまで樹脂を充填しているが、凹部31部の全体に設けられないで、金属ブロック2側の一部には充填されなくてもよく、また、逆に貫通孔31aの部分はその長さの全体に亘って樹脂が充填されていなくてもよい。要はコンタクトプローブ1の肩部を固定する部分に絶縁性スペーサ32が形成されればよい。
【0022】
その後、図2(c)に示されるように、絶縁性樹脂32dに貫通孔32aおよび凹部32bを形成する。この貫通孔32aおよび凹部32bは、たとえば金属板31の貫通孔31aの中心に位置合せをして、金属板31の金属ブロック側の表面31dから、ドリルにより、まず0.12?0.17mm程度の径(E)の貫通孔32aを形成し、引き続き内径Fが0.17?0.33mm程度で、深さTが1.1mm程度の凹部32bを形成する。その結果、図2(c)に示されるように、金属板31の貫通孔31aおよび凹部31b内に、肉厚が0.05mm程度の非常に薄い絶縁性スペーサ32が密着して形成される。この際、前述のように、金属板31の凹部31bに窪み部31cあるいは樹脂溝が形成されていれば、その窪み部31cあるいは樹脂溝31fにも樹脂が充填されるため、ドリルにより穿孔する場合でも、絶縁性樹脂が金属板31から剥離して回転することはない。」

以上のとおり、引用例2には、金属板に形成された貫通孔の内周面を絶縁性材料で被覆する手法として、金属板の貫通孔内に絶縁性樹脂を充填し、ドリルにより穿孔すること、また、ドリルで穿孔する際に絶縁性樹脂の回転を防止するために金属板の表面に、他の貫通孔と連通する樹脂溝を設け、樹脂溝に樹脂を充填する技術が記載されており、引用発明において、第1、第2基板の開口部に絶縁性材料からなる第1、第2保持部材を設ける手法として、引用例2に記載された技術を適用し、隣接する少なくとも2つの開口部と連通する樹脂溝を第1、第2基板の表面に設け、当該樹脂溝及び開口部を絶縁性材料で充填し、ドリルにより穿孔して第1、第2保持部材を形成するようにすることに格別の困難性はない。そして、そのように適用すれば、相違点2、3に係る構成のように、樹脂溝が本願補正発明の「凹部」に相当し、樹脂溝に充填された絶縁性材料が本願補正発明の「被膜部」となること、及び当該「被膜部」が第1、第2基板を挟んで反対側の表面に位置することは明らかである。
また、相違点1に関し、充填した樹脂を、切削加工により平坦化することは、原査定の拒絶の理由に引用され、優先日前に頒布された刊行物である国際公開第03/087852号(第16頁第7?15行、図8a?8cを参照)や、優先日前に頒布された刊行物である特開2003-133727号公報(例えば、「【0005】次に、穴埋め樹脂6を温度130?180℃で熱硬化させる。図6(d)は、埋め樹脂6を硬化させた後の状態を示している。最後に、基板表面をベルトサンダーやバフを使用して研磨して、コア基板表面から突出した部分の穴埋め樹脂を削り取り、平坦化し、コア基板が製造される(図6(e))。」を参照)に記載のとおり周知技術である。
そうしてみると、引用発明に対して引用例2に記載の技術及び前記周知技術を適用し、本願補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明、引用例2に記載の技術及び前記周知技術から当業者が予測可能なものであって格別のものではない。

5 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
本件補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし4に係る発明は、補正1によって補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりである。

「検査対象の回路構造と該回路構造に供給する信号の生成を行う回路基板に対して信号の入出力または電力の供給を行う導電性接触子を収容する導電性接触子ホルダであって、
前記導電性接触子をそれぞれ収容する複数の開口部を有する第1基板と、
前記第1基板が有する前記複数の開口部を充填するとともに前記第1基板の一方の表面の一部を被覆する被膜部を形成した後で該被膜部の一部を残して表面が平滑化された絶縁性材料からなり、前記複数の開口部にそれぞれ対応した位置に形成されて前記導電性接触子を挿通する複数の孔部を有する第1保持部材と、
前記第1基板と略同形状をなし、前記第1基板に積層される導電性の第2基板と、
前記第1保持部材と略同形状をなし、前記第1保持部材が有する前記複数の孔部のいずれかとそれぞれ連通する複数の孔部を有する第2保持部材と、
を備え、
前記第1保持部材が有する被膜部および前記第2保持部材が有する被膜部は、前記第1および第2基板を挟んで互いに反対側の表面に位置し、
前記第1基板は、
前記複数の開口部の一部であって互いに隣接する少なくとも2つの開口部の開口端を底面に含み、表面から所定の深さで穿設され、前記絶縁性材料が充填されることによって前記被膜部が形成される凹部を有することを特徴とする導電性接触子ホルダ。」(以下、「本願発明」という。)

1 引用例記載の事項・引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された発明・事項は、前記「第2 2 引用例記載の事項・引用発明」に記載したとおりである。

2 対比・判断
本願発明は、前記「第2 1 補正の内容」で検討した本願補正発明から「平滑化された」の限定事項である「切削加工によって」との発明特定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含む本願補正発明が、前記「第2 3 対比」、「第2 4 判断」に記載したとおり、引用発明、引用例2に記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び引用例2に記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例2に記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-06-05 
結審通知日 2014-06-10 
審決日 2014-06-23 
出願番号 特願2008-549358(P2008-549358)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01R)
P 1 8・ 121- Z (G01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 荒井 誠  
特許庁審判長 飯野 茂
特許庁審判官 関根 洋之
武田 知晋
発明の名称 導電性接触子ホルダおよび導電性接触子ユニット  
代理人 酒井 宏明  

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