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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F23N |
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管理番号 | 1290467 |
審判番号 | 不服2013-15414 |
総通号数 | 177 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-09-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-08-09 |
確定日 | 2014-08-07 |
事件の表示 | 特願2007-238141「燃料ガスの燃焼制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 4月 2日出願公開、特開2009- 68774〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、平成19年9月13日の出願であって、平成24年8月14日付けで拒絶の理由が通知され、平成24年10月22日に意見書が提出されたが、平成25年4月26日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成25年8月9日に拒絶査定不服の審判が請求されたものである。 2 本願発明 本願の請求項1ないし3に係る発明は、出願当初の明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。 「【請求項1】 燃焼炉における燃料ガスの燃焼制御方法であって、燃料ガス量から、前記燃料ガスのガス温度における飽和水蒸気量となる湿分を減じて実質燃料ガス量とし、当該実質燃料ガス量に対して求めた理論空気量を用いて燃焼制御を行うことを特徴とする燃料ガスの燃焼制御方法。」 3 引用文献 (1)引用文献の記載 本願の出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2007-139260号公報(平成19年6月7日公開。以下、「引用文献」という。)には、例えば、以下の記載がある。(なお、下線は、理解の一助のために、当審で付したものである。) (a)「【0001】 本発明は、鋼板を焼鈍する焼鈍炉等に代表される燃焼炉に導入される燃料ガスが水蒸気を含有している場合に、その水蒸気分に基づき燃料ガスの流量を補正する方法に関するものである。」(段落【0001】) (b)「【0002】 製鉄所で発生するガスは、主として製鉄所内での加熱炉や焼鈍炉等の燃焼炉の燃料として用いられている。このような発生ガス、なかでも高炉ガスや転炉ガス等では、発生時にかなり高温となるので、これを搬送するために冷却する必要がある。その際、ガスに対して放水することにより冷却するため、前記ガス中には必ず水蒸気分が含有され、高露点のガスとなっている(通常、露点は40?50℃程度になっている)。 【0003】 一方、このような発生ガスを用いた焼鈍炉を操業する際に、年間のうち夏場になると加熱能力不足になるという問題があった。この原因が炉体放散によるエネルギーロスと考えると、むしろ気温の低い冬場において放散する熱量は多くなるので、現状とは矛盾する。そこで、詳細に調査したところ、前述のとおり発生ガス中に含まれる水蒸気分によって、見かけの熱量が低下していることに思い至ったのである。 【0004】 ガス中の湿分を補正する方法として、特許文献1には、配管内に湿分計を設置して、その湿分計により測定された湿度に基づいて、ガス流量における水蒸気分を補正する方法が記載されている。 【特許文献1】特開昭63-132117号公報 (中略) 【0006】 本発明は、製鉄所で発生し製鉄所内で利用されるガスのような特定の燃料ガスの状況に鑑みて、燃料ガス中の水蒸気分に基づく燃料ガスの流量補正を安価に行うことができる燃料ガスの流量補正方法を提供することを目的とする。」(段落【0002】ないし【0006】) (c)「【0007】 上記課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有する。 【0008】 [1]水蒸気を含有する燃料ガスを燃焼炉まで導くまでに、前記燃料ガスの露点より低い所定の温度まで燃料ガスを冷却し、 前記燃焼炉における燃料ガスの流量を調整するときに、前記所定の温度における飽和水蒸気圧に基づいて前記燃料ガスの流量を補正することを特徴とする燃料ガスの流量補正方法。 【0009】 [2]外気温より高い露点を有する燃料ガスを、屋外の配管を経由して燃焼炉まで導く場合において、 前記燃焼炉における燃料ガスの流量を調整するときに、 外気温における飽和水蒸気圧に基づいて前記燃料ガスの流量を補正することを特徴とする燃料ガスの流量補正方法。 【0010】 [3]外気温より高い露点を有する燃料ガスを、屋外の配管を経由して燃焼炉まで導く場合において、 年間を複数の時期に分割し、その各時期における外気温の代表値を定め、 前記燃焼炉における燃料ガスの流量を調整するときに、前記外気温の代表値における飽和水蒸気圧に基づいて前記燃料ガスの流量を補正することを特徴とする燃料ガスの流量補正方法。 【0011】 [4]前記[1]?[3]のいずれかにおいて、前記燃焼炉における燃料ガスの流量を調整するときの燃料ガスの温度が変化する場合、その温度変化による体積変化分について、前記燃料ガスの流量を補正することを特徴とする燃料ガスの流量補正方法。」(段落【0007】ないし【0011】) (d)「【0012】 本発明においては、用いる燃料ガスが発生時に高露点となっていることを利用して、燃料ガス中の水蒸気量に基づく流量補正を、外気温等における飽和水蒸気圧を用いて行うようにしているので、配管内に露点計等のセンサーを有する必要がなく、設置は勿論のこと、露点計の較正等の日常におけるメンテナンスについても低コストとすることができる。」(段落【0012】) (e)「【0013】 さて、発明者らは、同流量の燃料ガスについて、夏場と冬場で加熱能力に差が生じ、夏場で加熱能力が不足していることについて、前記した炉体からの熱放散という燃焼炉自体ではなく、燃焼炉までガスを搬送する供給過程に原因があると考えた。ここで、発生時に高温であったガスは屋外の配管を通って燃焼炉まで供給されるが、その配管におけるドレン発生量を調査したところ、夏場と冬場でその発生量の差が大きいことがわかった。すなわち、ガス中の水蒸気量も同様に夏場の方が多くなるので、このガス中の水蒸気量の差を原因と考えれば、夏場の加熱能力不足を矛盾無く説明することができる。 【0014】 ここで、さらに考慮すると、製鉄所で発生する燃料ガスは、発生時に高温であって多量の水分を含有し、それゆえ高露点であるが、屋外の配管まで搬送されると冷却されて結露しドレンを生じ、燃料ガスは屋外の配管内での温度における飽和水蒸気量を含んでいる。それゆえ、ガスの全量に対して屋外の配管内での温度対応する飽和水蒸気量の分だけ、見かけの熱量が下がっていることになる。ここで、燃料ガスが定常的に配管内を流れている場合には、燃料ガスと配管の温度(内外壁)の温度は等しくなっている。そこで、燃焼炉で燃料ガスの流量を制御する際に、外気温(つまり配管外壁の温度)に対応する飽和水蒸気圧により前記燃料ガスの流量を補正する、すなわち、ガスの全量より、外気温に対応する飽和水蒸気量の分を差し引いた流量を用いればよいのである。 【0015】 また、上記の例であれば、燃焼ガスの発生から燃焼炉まで供給される過程のなかで、屋外における配管において、燃焼ガス温度が最も低くなるので、水蒸気分を補正するために、屋外における燃料ガス温度、すなわち外気温(配管の温度)に対応する飽和水蒸気量(飽和水蒸気圧)を用いたが、要するに、供給中に燃焼ガスが最も低くなる所定の温度における飽和水蒸気量で燃焼ガスの流量を補正すればよい。 【0016】 具体的には、流量計での流量をQとし、一方、燃焼炉の温度調整等の制御をするのに実際に用いる流量をQ’とすれば、 Q’=Q×(1-H)という補正式を燃焼炉の制御手段等に持たせて制御を行えばよい。ここで、Hは外気温(屋外における配管の温度)、もしくは燃料ガス供給中に最も温度が低くなる所定の温度における飽和水蒸気圧に基づく水蒸気濃度である。 【0017】 具体的には、流量計でのガス流量Qと、制御に用いるガス流量Q’との比Q/Q’を表したのが図1である。」(段落【0013】ないし【0017】) (f)「【0023】 連続焼鈍炉にて、板厚0.30mm、幅1200mmの冷延鋼板を、通板速度130m/分で通板した。焼鈍炉の目標温度を800℃として、前記図1において破線で示されるように、温度補正のみによりガス流量を補正し、温度制御したところ、冬場(12月)では平均800℃と目標に達していたのに対し、夏場(8月)では平均775℃と加熱不足を生じていた。一方、本発明の方法により、前記図1において実線で示されるように、温度および水蒸気の両方を勘案してガス流量を補正し、温度制御したところ、冬場(12月)では平均800℃と目標に達したのは勿論のこと、夏場(8月)においても平均800℃と目標炉温通りに加熱することができ、炉温を年間における較差なく、制御することが可能となった。」(段落【0023】) (2)引用文献記載の事項 上記(1)(a)ないし(f)及び図面の記載から、以下の事項が分かる。 (ア)上記(1)(a)ないし(f)及び図面の記載から、引用文献には、加熱炉や焼鈍炉等の燃焼炉における燃料ガスの流量補正方法が記載されていることが分かる。また、引用文献に記載された燃料ガスの流量補正方法は、燃焼を制御することにより燃焼炉の温度を制御することができるものであるから、燃焼制御方法であるともいえる。 (イ)上記(1)(a)ないし(f)(特に段落【0016】を参照。)及び図面の記載から、引用文献に記載された燃料ガスの流量補正方法及び燃焼制御方法は、燃料ガスの流量Qから、飽和水蒸気圧に基づく水蒸気濃度Hから計算した水蒸気量(Q×H)を差し引いて、燃焼炉の温度調整等の制御をするのに実際に用いる流量Q’とするものであることが分かる。 (ウ)上記(1)(a)ないし(f)(特に段落【0023】を参照。)及び図面の記載から、引用文献に記載された燃料ガスの流量補正方法及び燃焼制御方法を利用して、連続焼鈍炉の温度制御をしたところ、夏場(8月)においても平均800℃と目標炉温通りに加熱することができ、炉温を年間における較差なく、制御することが可能となったことが分かる。したがって、燃焼ガスの流量を補正することにより、効率的な加熱が可能になったことが分かる。 (エ)引用文献中には明記されていないが、燃料ガスを燃焼させるためには、燃料ガス量(実際に用いる流量Q’)に対する所定の空気量を用いて燃焼制御を行うことは技術常識である。 (3)引用文献記載の発明 上記(1)及び(2)並びに図面を参酌すると、引用文献には次の発明(以下、「引用文献記載の発明」という。)が記載されているといえる。 「燃焼炉における燃料ガスの流量補正方法及び燃焼制御方法であって、燃料ガス量から、燃料ガスのガス温度における飽和水蒸気圧に基づく水蒸気濃度Hから計算した水蒸気量(Q×H)を差し引いて実際に用いる流量Q’とし、実際に用いる流量Q’に対する所定の空気量を用いて燃焼制御を行う、燃料ガスの流量補正方法及び燃焼制御方法。」 4 対比 まず、本願発明における「理論空気量を用いて」という用語の意味について検討する。 本願発明における「理論空気量」とは、「燃料ガス1Nm^(3)を完全燃焼させる場合、理論酸素量を更に空気換算して求めた理論空気量TNm^(3)」(段落【0002】)というものであり、換言すれば、「燃料ガスを完全燃焼させるために必要な最小限の空気量」ということになる。 さらに、本願の明細書には、 「【0016】 空気量の設定は演算制御器5により以下のように計算を行う。まず、燃料ガス温度を炉周辺の大気温度T2とみなして、当該大気温度T2における飽和水蒸気量を湿分量とし、燃料ガス流量センサ9が検出する燃料ガス量から前記湿分量を減じて実質燃料ガス量とし、前記実質燃料ガス量に対して理論空気量を求める。 【0017】 演算制御器5で求めた前記理論空気量と、前記理論空気量に過剰空気量を足した供給空気量の比である空気比を比率設定器(R1)11で所望の値に設定し、空気流量センサ8で検出される供給空気量が、設定された前記空気比を満足する供給空気量になるように供給空気流量調節計(FIC3)10で空気流量調節弁7を調整する。」(段落【0016】及び【0017】。なお、下線は当審で付した。)と記載されている。 すなわち、本願発明の実施例においては、「理論空気量」の空気を供給するのではなく、「理論空気量に過剰空気量を足した供給空気量」の空気を供給するものである。 そうすると、本願発明における「理論空気量を用いて」という用語の意味は、「理論空気量の空気を供給して」という意味ではなく、「理論空気量を計算に用いて」という意味だと解される。 以上のことを踏まえて本願発明と引用文献記載の発明とを対比する。 引用文献記載の発明における「燃料ガスの流量補正方法及び燃焼制御方法」は、燃料ガスの流量を補正することにより燃料の燃焼を制御する方法であるから、その技術的意義からみて、本願発明における「燃料ガスの燃焼制御方法」に相当する。 また、引用文献記載の発明における「燃料ガスのガス温度における飽和水蒸気圧に基づく水蒸気濃度Hから計算した水蒸気量(Q×H)を差し引いて実際に用いる流量Q’とし」は、その技術的意義からみて、本願発明における「燃料ガスのガス温度における飽和水蒸気量となる湿分を減じて実質燃料ガス量とし」に相当する。 また、引用文献記載の発明における「実際に用いる流量Q’に対する所定の空気量を用いて」は、本願発明における「当該実質燃料ガス量に対して求めた理論空気量を用いて」に、「実質燃料ガス量に対する所定の空気量を用いて」という限りにおいて相当する。 したがって、両者は、 〈一致点〉 「燃焼炉における燃料ガスの燃焼制御方法であって、燃料ガス量から、燃料ガスのガス温度における飽和水蒸気量となる湿分を減じて実質燃料ガス量とし、実質燃料ガス量に対する所定の空気量を用いて燃焼制御を行う、燃料ガスの燃焼制御方法。」 において一致し、次の点で相違する。 〈相違点〉 「実質燃料ガス量に対する所定の空気量を用いて」に関して、本願発明においては、「実質燃料ガス量に対して求めた理論空気量」を用いて燃焼制御を行うのに対し、引用文献記載の発明においては、実際に用いる流量Q’(本願発明における「実質燃料ガス量」に相当する。)に対するどのような所定の空気量を用いて燃焼制御を行うのか不明である点(以下、「相違点」という。)。 5 判断 上記相違点について検討する。 燃焼炉における燃焼のために、「(燃料ガス量に対して求めた)理論空気量」を用いて供給空気量を計算することは、周知技術(以下、「周知技術」という。例えば、特開昭62-255722号公報[例えば、特許請求の範囲の記載を参照。]、実願昭54-22534号(実開昭55-122065号)のマイクロフィルム[例えば、実用新案登録請求の範囲及び明細書第6ページ第3ないし17行の記載を参照。]、特開2001-99407号公報[例えば、段落【0030】の記載を参照。]、特開平2-250926号公報[例えば、第5ページ左上欄第4行ないし右上欄第13行の記載を参照。]等を参照。)である。 してみれば、引用文献記載の発明において、供給空気量の計算のために、周知技術である、「(燃料ガス量に対して求めた)理論空気量」を用いて必要な空気量を計算することにより、相違点に係る本願発明の発明特定事項を想到することは、当業者が容易になし得たことである。 そして、本願発明を全体としてみても、本願発明の奏する効果は、引用文献記載の発明及び周知技術から当業者が予測できた範囲内のものであり、格別に顕著な効果ではない。 6 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-05-26 |
結審通知日 | 2014-05-27 |
審決日 | 2014-06-25 |
出願番号 | 特願2007-238141(P2007-238141) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F23N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 藤原 弘 |
特許庁審判長 |
林 茂樹 |
特許庁審判官 |
金澤 俊郎 藤原 直欣 |
発明の名称 | 燃料ガスの燃焼制御方法 |
代理人 | 井上 茂 |