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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B |
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管理番号 | 1290473 |
審判番号 | 不服2013-16993 |
総通号数 | 177 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-09-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-09-04 |
確定日 | 2014-08-07 |
事件の表示 | 特願2012- 23908「光路変換体及びその実装構造並びに光モジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 5月24日出願公開、特開2012- 98756〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成13年6月28日に出願した特願2001-197125号(以下「原出願」という。)の一部を平成24年2月7日に新たな特許出願としたものであって、同年7月5日付けで拒絶の理由が通知され、同年9月10日に手続補正がなされたが、平成25年6月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年9月4日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項に係る発明は、平成25年9月4日の手続補正により補正された請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「第1光入出射面、該第1光入出射面から入射した光を反射させる傾斜面、および該傾斜面で反射した光を出射させる第2光入出射面を有する本体部と、 前記第1光入出射面に配置された第1のレンズ部と、 前記第2光入出射面に配置された、前記第1のレンズ部の焦点距離と異なる焦点距離を持つ第2のレンズ部と、 前記第2光入出射面に配置された第3のレンズ部と、 前記第1光入出射面に配置された、前記第3のレンズ部の焦点距離と異なる焦点距離を持つ第4のレンズ部とを有しており、 前記第1のレンズ部を通って前記第1光入出射面から前記本体部に入射した光が、前記傾斜面で反射して前記第2光入出射面から前記第2のレンズ部を通って出射し、 前記第3のレンズ部を通って前記第2光入出射面から前記本体部に入射した光が、前記傾斜面で反射して前記第1光入出射面から前記第4のレンズ部を通って出射する光路変換体。」 第3 刊行物の記載 (1)原査定の拒絶の理由に引用され、原出願の出願前に頒布された刊行物である特開平9-127375号公報 (以下「引用文献」という。)には、図とともに以下の記載がある(なお、下線は当審で付した。以下同じ。)。 ア 「【0071】(第2の実施形態)図5は、本発明の第2の実施形態による光結合モジュール500の構成を、模式的に示す側面図である。なお、光結合モジュール500において、第1の実施形態の光結合モジュール100と同じ構成要素には同じ参照符号を付しており、ここではその説明を省略する。 【0072】光結合モジュール500は、基板510の上に取り付けられた光ファイバアレイフェルール610と、基板510に平行に取り付けられた面発光レーザアレイ120と、面発光レーザアレイ120から出力されるレーザ光160を光ファイバアレイフェルール610の2次元光ファイバアレイに導くプリズム520と、を有している。 【0073】光ファイバアレイフェルール610は、第1の支持体511と、第2の支持体512と、第3の支持体513と、第1の支持体511と第2の支持体512との間ならびに第2の支持体512と第3の支持体513との間に挟まれた光ファイバの芯線114と、芯線114を保護している被覆115と、を有している。なお、光ファイバは、芯線114と被覆115とを含んでいる。面発光レーザアレイ120から出力されるレーザ光160は、プリズム520を介して光ファイバアレイフェルール610の2次元光ファイバアレイに導かれ、光ファイバの芯線114に光学的に結合している。」 イ 「【0080】次に、プリズム520について図5を参照して説明する。 【0081】プリズム520は、45度ミラー521とレンズ522とを含んでいる。45度ミラー521は、具体的にはアルミなどの金属が蒸着された面であって、基板510に対して垂直に出射された面発光レーザアレイ120からのレーザ光160を反射して、基板510に対して平行に配置された光ファイバアレイフェルール610の光ファイバの芯線114に結合させる。レンズ522は、ある程度の拡がり角を持ったレーザ光160を、光ファイバの芯線114のコアに効率よく結合させる。レンズ522を含むプリズム520は、金型を使用した一体成形など、当該技術で公知の方法によって製造することができる。」 ウ 図5は、以下のものである。 (2)引用文献に記載された発明 ア 上記(1)ア及びイの記載によれば、 引用文献には、 「45度ミラー521とレンズ522とを含み、 45度ミラー521は、具体的にはアルミなどの金属が蒸着された面であり、 レンズ522は、ある程度の拡がり角を持ったレーザ光160を、光ファイバの芯線114のコアに効率よく結合させる、プリズム520。」 が記載されているものと認められる。 イ また、上記(1)ア及びイの記載を踏まえて、側面図である図5を見ると、 上記アの「プリズム520」は、 面発光レーザアレイ120側の底面(以下「光入射面」という。)と光ファイバの芯線114側の垂直面(以下「光出射面」という。)とを備え、 光入射面の左側凸レンズ(以下「第1凸レンズ」という。)に入射した光は、45度ミラーで反射して、光出射面の上側凸レンズ(以下「第2凸レンズ」という。」)から出射し、 光入射面の右側凸レンズ(以下「第4凸レンズ」という。)に入射した光は、45度ミラーで反射して、光出射面の下側凸レンズ(以下「第3凸レンズ」という。」)から出射することが把握できる。 ウ 上記ア及びイから、引用文献には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「45度ミラーとレンズとを含み、 45度ミラーは、具体的にはアルミなどの金属が蒸着された面であり、 レンズは、ある程度の拡がり角を持ったレーザ光を、光ファイバの芯線のコアに効率よく結合させる、プリズムであって、 光入射面と光出射面とを備え、 光入射面の第1凸レンズに入射した光は、45度ミラーで反射して、光出射面の第2凸レンズから出射し、光入射面の第4凸レンズに入射した光は、45度ミラーで反射して、光出射面の第3凸レンズから出射する、 プリズム。」 第4 対比・判断 1 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の「45度ミラー」は本願発明の「傾斜面」に相当し、以下同様に、 「プリズム」は「本体部」及び「光路変換体」に、 「第1凸レンズ」は「第1のレンズ部」に、 「第2凸レンズ」は「第2のレンズ部」に、 「第3凸レンズ」は「第3のレンズ部」に、 「第4凸レンズ」は「第4のレンズ部」に、それぞれ、相当する。 (2)引用発明は「光入射面」及び「光出射面」を備えることに照らせば、 引用発明と本願発明とは「第1面、該第1面から入射した光を反射させる傾斜面、および該傾斜面で反射した光を出射させる第2面を有する本体部と、前記第1面に配置された第1のレンズ部と、 前記第2面に配置された、第2のレンズ部と、 前記第2面に配置された第3のレンズ部と、 前記第1面に配置された、第4のレンズ部とを有して」いる点で共通する。・ (3)また、引用発明と本願発明とは「前記第1のレンズ部を通って前記第1面から前記本体部に入射した光が、前記傾斜面で反射して前記第2面から前記第2のレンズ部を通って出射する」点で共通する。 (4)以上のことから、本願発明と引用発明とは以下の点で一致する。 <一致点> 「第1面、該第1面から入射した光を反射させる傾斜面、および該傾斜面で反射した光を出射させる第2面を有する本体部と、 前記第1面に配置された第1のレンズ部と、 前記第2面に配置された、第2のレンズ部と、 前記第2面に配置された第3のレンズ部と、 前記第1面に配置された、第4のレンズ部とを有しており、 前記第1のレンズ部を通って前記第1面から前記本体部に入射した光が、前記傾斜面で反射して前記第2面から前記第2のレンズ部を通って出射する、光路変換体。」 (5)一方で、本願発明と引用発明とは、以下の点で相違する。 <相違点1> 第1面及び第2面に関し、 本願発明は、光入出面であるのに対して、 引用発明は、第1面が光入射面であり、第2面が光出射面である点。 <相違点2> 第1ないし4のレンズ部の焦点距離に関し、 本願発明は、「前記第1のレンズ部の焦点距離と異なる焦点距離を持つ第2のレンズ部」及び「前記第3のレンズ部の焦点距離と異なる焦点距離を持つ第4のレンズ部とを有して」いるのに対して、 引用発明は、各レンズの焦点距離が不明である点。 <相違点3> 光の入射方向に関し、 本願発明は、「前記第3のレンズ部を通って前記第2面から前記本体部に入射した光が、前記傾斜面で反射して前記第1面から前記第4のレンズ部を通って出射する」のに対して、 引用発明は、第4凸レンズ(第4のレンズ部)を通って第1面から入射した光が45度ミラーで反射して第2面から第3凸レンズ(第3のレンズ部)を通って出射する点。 2 判断 (1)まず、上記<相違点2>について検討する。 引用発明の「第1ないし第4凸レンズ」の各焦点距離は、当業者が引用発明を実施するに際して適宜定めるべき事項であるところ、引用発明の「レンズ」は、ある程度の拡がり角を持ったレーザ光を、光ファイバの芯線のコアに効率よく結合させるものであることに照らせば、 面発光レーザアレイを第1凸レンズ及び第4凸レンズの焦点位置に配置するとともに、光ファイバの芯線のコアの端面を第2凸レンズ及び第3凸レンズの焦点位置に配置することで、レーザ光を芯線のコアに効率良く結合させることは、当業者が容易になし得たことである。 その際、面発光レーザアレイ側の凸レンズの焦点距離とコア側の凸レンズとの焦点距離を同じにしなければならないという特段の事情もないことちから、異なる焦点距離にすることは、部材の配置関係に応じて、当業者が適宜なし得た設計事項である。 (2)次に、上記<相違点1>及び上記<相違点3>について検討する。 ア 本願発明を特定するために必要な上記相違点3に係る構成は、「光路変換体」において、光の通過する順番を特定したものであって、「光路変換体」の構造を特定するものではない。 イ 一方、引用発明の「プリズム」においても、 光出射面にある第3凸レンズに光を入射させると、45度ミラーで反射して、光入射面にある第4凸レンズから出射すること、即ち、上記相違点3により特定される順番でプリズムを通過することは、当業者にとって明らかである。 ウ してみると、引用発明の「光入射面」及び「光出射面」は、それぞれ、「光入出面」であるといえる。 エ 以上の検討によれば、上記<相違点1>及び上記<相違点3>は、実質的な相違点ではない。 (3)効果 本願発明の奏する効果は、当業者が引用発明から予測し得る範囲内のものである。 3 平成26年6月6日送付のファクシミリ 請求人は、上記ファクシミリにおいて、以下のとおり主張する。 「進行方向異なる光こどとに・・・異なる進行方向の光同士でクロストークが発生しにくくすることができます。」 しかしながら、本願明細書の【0058】には「面発光素子と受光素子とを設けて光受発信用モジュールに適用できることは当然である。」と記載されているだけで、焦点距離を異ならせることでクロストークを発生しにくくすることや、光路変換体に異なる進行方向の光を同時に通過させること、即ち、「第1のレンズ部を通って前記第1光入出射面から前記本体部に入射した光が、前記傾斜面で反射して前記第2光入出射面から前記第2のレンズ部を通って出射し、 前記第3のレンズ部を通って前記第2光入出射面から前記本体部に入射した光が、前記傾斜面で反射して前記第1光入出射面から前記第4のレンズ部を通って出射する」ようにすることは、記載されておらず、請求人の主張は、その前提を欠くものであって、採用することはできない。 また、主張する効果も、予測できないほど顕著なものであるとは認められない。 4 まとめ 本願発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は、当業者が引用文献に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-06-09 |
結審通知日 | 2014-06-10 |
審決日 | 2014-06-23 |
出願番号 | 特願2012-23908(P2012-23908) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G02B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大石 敏弘、大森 伸一、岡田 吉美 |
特許庁審判長 |
服部 秀男 |
特許庁審判官 |
星野 浩一 松川 直樹 |
発明の名称 | 光路変換体及びその実装構造並びに光モジュール |