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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H01S
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01S
管理番号 1290476
審判番号 不服2013-17648  
総通号数 177 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-09-11 
確定日 2014-08-07 
事件の表示 特願2008-125205「半導体光源装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年11月26日出願公開、特開2009-277734〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成20年5月12日の出願であって、平成24年9月24日に手続補正がなされたが、平成25年6月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正がなされたものである。(以下、この平成25年9月11日になされた手続補正を「本件補正」という。)

2 本件補正についての却下の決定
(1)結論
本件補正を却下する。

(2)理由
ア 補正の内容
(ア)本件補正は、特許請求の範囲の請求項1につき、補正前の
「互いに異なる第一、第二、第三の波長領域の光をそれぞれ射出する第一、第二、第三の光源と、
前記第一、第二、第三の光源とそれぞれ光学的に接続された第一、第二、第三の入射端と、少なくとも一つの射出端とを有している導光素子と、
前記導光素子の前記射出端と光学的に接続された波長変換ユニットとを備え、
前記波長変換ユニットは、
前記第一の波長領域の光を吸収して、第一の変換光に波長変換する第一の波長変換部材と、
前記第二の波長領域の光を吸収して、前記第一の変換光とは異なる波長の第二の変換光に波長変換する第二の波長変換部材とを含んでおり、
前記第一の波長変換部材の吸収スペクトルの有効波長領域は、前記第一の波長領域を含み、かつ、前記第二、第三の波長領域とは互いに重ならず独立しており、
前記第二の波長変換部材の吸収スペクトルの有効波長領域は、前記第二の波長領域を含み、かつ、前記第一、第三の波長領域とは互いに重ならず独立している、半導体光源装置。」
を、
「互いに異なる第一、第二、第三の波長領域の光をそれぞれ射出する第一、第二、第三の光源と、
前記第一、第二、第三の光源とそれぞれ光学的に接続された第一、第二、第三の入射端と、少なくとも一つの射出端とを有している導光素子と、
前記導光素子の前記射出端と光学的に接続された波長変換ユニットとを備え、
前記波長変換ユニットは、
前記第一の波長領域の光を吸収して、第一の変換光に波長変換する第一の波長変換部材と、
前記第二の波長領域の光を吸収して、前記第一の変換光とは異なる波長の第二の変換光に波長変換する第二の波長変換部材とを含んでおり、
波長変換部材の吸収スペクトルの有効波長領域を、吸収スペクトルのピーク強度の半分以上である波長領域と定義したときに、
前記第一の波長変換部材の吸収スペクトルの有効波長領域は、前記第一の波長領域を含み、かつ、前記第二、第三の波長領域とは互いに重ならず独立しており、
前記第二の波長変換部材の吸収スペクトルの有効波長領域は、前記第二の波長領域を含み、かつ、前記第一、第三の波長領域とは互いに重ならず独立しており、
前記第一の波長変換部材は、第二の波長領域の光または第三の波長領域の光を吸収し波長変換したときに射出する第一の変換光の強度が、第一の波長領域の光を吸収し波長変換したときに射出する第一の変換光の強度の半分以下であり、
前記第二の波長変換部材は、第一の波長領域の光または第三の波長領域の光を吸収し波長変換したときに射出する第二の変換光の強度が、第二の波長領域の光を吸収し波長変換したときに射出する第二の変換光の強度の半分以下である、半導体光源装置。」
に補正する内容を含むものである。

(イ)上記(ア)の補正の内容は、補正前の請求項1における「有効波長領域」を「波長変換部材の吸収スペクトルの有効波長領域を、吸収スペクトルのピーク強度の半分以上である波長領域」に限定し、また、「前記第一の波長変換部材は、第二の波長領域の光または第三の波長領域の光を吸収し波長変換したときに射出する第一の変換光の強度が、第一の波長領域の光を吸収し波長変換したときに射出する第一の変換光の強度の半分以下であり、前記第二の波長変換部材は、第一の波長領域の光または第三の波長領域の光を吸収し波長変換したときに射出する第二の変換光の強度が、第二の波長領域の光を吸収し波長変換したときに射出する第二の変換光の強度の半分以下である」との特定事項を付加するものと認められる。

イ 補正の適否についての判断
(ア)本願の本願当初明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、これらを併せて「本願当初明細書」という。)には、上記アの補正の内容に係る「前記第一の波長変換部材は、第二の波長領域の光または第三の波長領域の光を吸収し波長変換したときに射出する第一の変換光の強度が、第一の波長領域の光を吸収し波長変換したときに射出する第一の変換光の強度の半分以下であり、前記第二の波長変換部材は、第一の波長領域の光または第三の波長領域の光を吸収し波長変換したときに射出する第二の変換光の強度が、第二の波長領域の光を吸収し波長変換したときに射出する第二の変換光の強度の半分以下である」との事項を開示する記載は認められない。

(イ)本件補正の根拠につき、請求人は、審判請求書において、本願当初明細書の段落【0018】の記載に基づく旨主張するところ、本願当初明細書には、
「【0017】
第一の蛍光体の吸収スペクトルの有効波長領域は、第一の波長領域を含み、かつ、第二、第三の波長領域とは独立している。第二の蛍光体の吸収スペクトルの有効波長領域は、第二の波長領域を含み、かつ、第一、第三の波長領域とは独立している。第三の蛍光体の吸収スペクトルの有効波長領域は、第三の波長領域を含み、かつ、第一、第二の波長領域とは独立している。
【0018】
ここで、「有効波長領域」とは、対象の蛍光体から蛍光を発生させる励起光の波長範囲を言う。本実施形態では、一例として、励起光強度が吸収スペクトルのピーク強度の半分以上である波長領域としている。しかし、有効波長領域は、これに限定されるものではなく、要求される条件などに応じて吸収スペクトルの任意の波長領域に設定してよい。また「独立している」とは、重なっていないことを意味している
例えば、第一の蛍光体は、第一の波長領域の光を吸収して赤色の蛍光を射出する赤色蛍光体であり、第二の蛍光体は、第二の波長領域の光を吸収して緑色の蛍光を射出する緑色蛍光体であり、第三の蛍光体は、第三の波長領域の光を吸収して青色の蛍光を射出する青色蛍光体である。」
との記載がある。

(ウ)上記(イ)によれば、本件補正後の「波長変換部材の吸収スペクトルの有効波長領域を、吸収スペクトルのピーク強度の半分以上である波長領域と定義」することに関し、「有効波長領域」とは、一例として、「励起光強度が吸収スペクトルのピーク強度の半分以上である波長領域」であることが本願当初明細書の段落【0018】に記載されているものと認められる。
しかし、本件補正後の上記(ア)の事項は、「第一の波長変換部材」に関し、「第二の波長領域の光または第三の波長領域の光を吸収し波長変換したときに射出する第一の変換光の強度」と「第一の波長領域の光を吸収し波長変換したときに射出する第一の変換光の強度」との関係について、前者が後者の半分以下であると特定し、また、「第二の波長変換部材」に関し、同様の関係を特定するものと認められるところ、このように変換光の強度が特定されることが、同段落に記載されているとは認められない。

(エ)したがって、上記アの補正の内容が、本願当初明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものということはできず、かかる補正の内容を含む本件補正が、本願当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえない。

ウ 小括
よって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

(3)付言
なお、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)についてみるに、以下に検討するとおり、特許を受けることができないものである。

ア 引用文献の記載
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開2006-314686号公報(以下「引用文献」という。)には、以下の記載がある(下線は、審決で付した。)。

(ア)「【0001】
この発明は、照明光学系で照明された被観察体像を観察光学系で撮像して観察する内視鏡に関する。」

(イ)「【0022】
以下、図面を参照しながらこの発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態という)について図1ないし図4を用いて説明する。
図1に示すように、この実施の形態に係る内視鏡システム10は、内視鏡12と、プロセッサ装置14と、モニタ16とを備えている。
【0023】
内視鏡12は、細長い挿入部22と、この挿入部22の基端部に設けられた操作部24と、この操作部24から延出されたユニバーサルケーブル26とを備えている。
操作部24には、挿入部22の先端部を上下左右方向などに曲げ操作するための湾曲操作ノブ24aが取り付けられている。また、この操作部24には、撮影ボタン24bなどが設けられている。この電子内視鏡12はユニバーサルケーブル26の端部のコネクタ26aによって外部のプロセッサ装置14に接続されている。このプロセッサ装置14には、モニタ16が接続されている。
【0024】
なお、このプロセッサ装置14は、制御回路14aと、信号処理回路14bと、発光素子駆動回路14cとを備えている。制御回路14aには、それぞれ信号処理回路14bおよび発光素子駆動回路14cが電気的に接続されている。すなわち、信号処理回路14bおよび発光素子駆動回路14cは、それぞれ制御回路14aによって制御される。
【0025】
図2に示すように、内視鏡12は、観察光学系32と、照明光学系34とを備えている。観察光学系32は、内視鏡12の挿入部22の先端に配設された対物レンズ42と、この対物レンズ42の後側に配設された撮像素子44とを備えている。対物レンズ42および撮像素子44は、挿入部22の先端部で互いに光学的に接続されている。このため、対物レンズ42により内視鏡12の内部に入射された光は像を形成してその像が撮像素子44により撮像される。この撮像素子44からは、信号線46が挿入部22の基端部側に延出されている。このため、この撮像素子44で撮像した像のデータを信号処理回路14bに伝送可能である。」

(ウ)「【0026】
照明光学系34は、図示しない照明レンズと、ライトガイド52と、発光部54とを備えている。このライトガイド52は、対物レンズ42、撮像素子44および信号線46に並設されている。このライトガイド52の基端部の入射端部には、発光部54が配設されている。この発光部54には、発光素子駆動回路14cが接続されている。このため、この発光素子駆動回路14cの制御によって、発光部54が点灯駆動される。
【0027】
図3に示すように、ライトガイド52は、1つの出射端部62と、第1ないし第3の入射端部64a,64b,64cとを備えている。これら第1ないし第3の入射端部64a,64b,64cの各入射端面には、発光部54の発光素子としてそれぞれ発光ダイオード(LED)54a,54b,54cが配設されている。ここでは、第1の入射端部64aには、赤色(R)光LED54aが配設されている。第2の入射端部64bには、緑色(G)光LED54bが配設されている。第3の入射端部64cには、青色(B)光LED54cが配設されている。これらのLED54a,54b,54cはそれぞれレンズ部55a,55b,55cがモールド形成され、レンズ部55a,55b,55cにそれぞれに割り当てられたライトガイド52の第1ないし第3の入射端部64a,64b,64cが接着剤等により密着状態に接続されている。
【0028】
図3に示すライトガイド52は、極細のファイバーが多数集められてバンドル(ファイバーバンドル)が形成されている。このとき、各ファイバーは、1つの出射端部62と、第1ないし第3の入射端部64a,64b,64cとの間で、ランダムに混ぜ合わせられている。すなわち、入射端部64a,64b,64cのファイバーの配列に対して、出射端部62のファイバーの配列が不規則に分散されている。このため、第1の入射端部64aに入射された光は、1つの出射端部62の全体から均一的に出射される。第2の入射端部64bや第3の入射端部64cに光が入射されたときも同様である。
【0029】
なお、この発光部54は、例えば面順次式に用いられている。図4(A)ないし図4(C)に示すように、発光素子駆動回路14cは、LED54a,54b,54cを順次点灯駆動する。LED54a,54b,54cには、1フィールド期間ごとに点灯電圧V1,V2,V3がそれぞれ印加される。このため、R光LED54a、G光LED54b、B光LED54cが順に発光する。したがって、ライトガイド52の第1ないし第3の入射端部64a,64b,64cを通して出射端部62から均一に光が出射される。すなわち、照明レンズから均一に光が出射される。
【0030】
次に、この実施の形態に係る作用について説明する。
【0031】
電子内視鏡12で画像を形成する場合、図2に示す制御回路14aによって、発光素子駆動回路14cを制御する。このため、LED54a,54b,54cが発光する。面順次式の場合、R光、G光およびB光が順次ライトガイド52の第1ないし第3の入射端部64a,64b,64cを介して挿入部22の先端部(出射端部62)側に供給され、これらの光が出射端部62から出射することによって被観察体内が照射される。
【0032】
図4(A)ないし図4(C)に示すように、発光素子駆動回路14cは、LED54a,54b,54cを点灯駆動する。この場合、LED54a,54b,54cには、1フィールド期間ごとに点灯電圧V1,V2,V3がそれぞれ印加される。このため、R光LED54a、G光LED54b、B光LED54cが順に発光する。ライトガイド52は、第1ないし第3の入射端部64a,64b,64cのファイバーが出射端部62で混成された状態にあるので、第1ないし第3の入射端部64a,64b,64cを通して出射端部62から均一に光が出射される。したがって、照明レンズから均一に光が出射される。
【0033】
照明光が照射された被観察体内は、対物レンズ42を通して撮像素子44に像が結像される。撮像素子44は、結像された像を光電変換して電気信号に変換し、信号線46を通して制御回路14aに制御される信号処理回路14bに出力する。この信号処理回路14bは、電気信号について所定の画像処理が施されてビデオ信号に変換された後、図示しないメモリに一旦記憶される。このようにして処理されたビデオ信号は、最終的にモニタ16に出力されて画像として表示される。」
ここで、図3及び図4は、次のものである。


(エ)「【0039】
また、この実施の形態では、LED54a,54b,54cを用いて説明したが、その他、図5に示すレーザーダイオード(LD)72a,72b,72cを用いることも好適である。このとき、ライトガイド52の出射端部62に光学フィルタ74を配設することも好適である。光学フィルタ74は、R光、G光やB光が照射されると蛍光を発するものや、蛍光を励起させたりすることができるものであることが好適である。また、この光学フィルタ74は、R光用、G光用、B光用LD72a,72b,72cからの光のどれでも蛍光が発せられるものであることも好適である。」
ここで、図5は、次のものである。


(オ)「【0043】
上記説明によれば、下記の事項の発明が得られる。また、各項の組み合わせも可能である。
【0044】
[付記]
(付記項1)
スコープ先端部出射口(照明レンズ)とRGB各色を発光する発光素子との間に光学部材を設け、前期発光素子の光が、先端部出射口では同一の位置から出射されることを特徴とする内視鏡。
【0045】
(付記項2)
前記光学部材は、一端が1つで他端が3つに分割された単ファイバーであることを特徴とする付記項1に記載の内視鏡。
【0046】
(付記項3)
前記光学部材は、一端が1つに束ねられ、他端が3つに分割されたファイバーバンドルであることを特徴とする付記項1に記載の内視鏡。
【0047】
(付記項4)
一端が1つに束ねられたファイバーバンドルは、他端の3つ分のファイバーバンドルが混成されていることを特徴とする付記項3に記載の内視鏡。
【0048】
(付記項5)
前記ファイバーバンドルは、不規則に混成され、他端から入射されるRGB光が一端で一様に分布されることを特徴とする付記項4に記載の内視鏡。
【0049】
(付記項6)
各発光素子は、それ自体がRGB光のいずれかを出射するLEDであることを特徴とする付記項1ないし付記項5のいずれか1に記載の内視鏡。
【0050】
(付記項7)
各発光素子は、蛍光体と組み合わせられてRGB光のいずれかを出射するLEDであることを特徴とする付記項1ないし付記項5のいずれか1に記載の内視鏡。
【0051】
(付記項8)
各発光素子は、蛍光体と組み合わせられてRGB光のいずれかを出射するLDであることを特徴とする付記項1ないし付記項5のいずれか1に記載の内視鏡。
【0052】
(付記項9)
前記LEDもしくはLDは、前記RGB光を発光させるために、補色を有するLEDが用いられていることを特徴とする付記項6ないし付記項8のいずれか1に記載の内視鏡。
【0053】
(付記項10)
前記光学部材は、1つに束ねられた一端のファイバーバンドルもしくは単ファイバーの先端に、前記LDに対応する蛍光体が混ぜ合わせられて配置されていることを特徴とする付記項8もしくは付記項9のいずれか1に記載の内視鏡。」

イ 引用発明
(ア)上記ア(ウ)によれば、引用文献の図3に示される照明光学系34は、【0029】に記載されるように面順次式に用いられるものであって、図4(A)ないし図4(C)に示される発光素子駆動回路14cの点灯電圧V1,V2,V3が、赤色(R)光LED54a,緑色(G)光LED54b,青色(B)光LED54cに1フィールド期間ごとにそれぞれ印加され、R光LED54a、G光LED54b、B光LED54cが順に発光し、R光、G光およびB光が順次出射端部62から出射するものと認められる。

(イ)一方、上記ア(エ)の【0039】には、「この実施の形態では、LED54a,54b,54cを用いて説明したが、その他、図5に示すレーザーダイオード(LD)72a,72b,72cを用いることも好適である。このとき、ライトガイド52の出射端部62に光学フィルタ74を配設することも好適である。…。また、この光学フィルタ74は、R光用、G光用、B光用LD72a,72b,72cからの光のどれでも蛍光が発せられるものであることも好適である。」と記載され、また、引用文献の図5には、図3と同様に、発光素子駆動回路14cが、レーザーダイオード(LD)72a,72b,72cに点灯電圧V1,V2,V3を印加することが示されていることに照らせば、引用文献の図5に示される照明光学系34も、図3に示される照明光学系34と同様に、面順次式に用いられるものであって、点灯電圧V1,V2,V3の印加に応じて、出射端部62の光学フィルタ74から、それぞれ、R光、G光、B光が順に出射するものであると解される。
してみると、「光学フィルタ74」は、「LD72a」の照射によりR光の蛍光を発光するものであり、「LD72b」の照射によりG光の蛍光を発光するものであり、また、「LD72c」の照射によりB光の蛍光を発光するものであると認められる。

(ウ)そして、上記ア(オ)の【0051】に「(付記項8)各発光素子は、蛍光体と組み合わせられてRGB光のいずれかを出射するLDであることを特徴とする付記項1ないし付記項5のいずれか1に記載の内視鏡。」と記載され、【0053】に「(付記項10)前記光学部材は、1つに束ねられた一端のファイバーバンドルもしくは単ファイバーの先端に、前記LDに対応する蛍光体が混ぜ合わせられて配置されていることを特徴とする付記項8もしくは付記項9のいずれか1に記載の内視鏡。」と記載されていることを併せて考慮すると、上記「光学フィルタ74」は、LD72aの照射によりR光の蛍光を発光する蛍光体と、LD72bの照射によりG光の蛍光を発光する蛍光体と、LD72cの照射によりB光の蛍光を発光する蛍光体が混ぜ合わせられたものであると解される。

(エ)以上によれば、引用文献には、【0039】に記載され、図5に示される照明光学系34として、
「ライトガイド52と、発光部54とを備えている照明光学系34であって、ライトガイド52は、1つの出射端部62と、第1ないし第3の入射端部64a,64b,64cとを備えており、これら第1ないし第3の入射端部64a,64b,64cの各入射端面には、それぞれレーザーダイオード(LD)72a,72b,72cが配設され、出射端部62には、光学フィルタ74が配設され、光学フィルタ74は、LD72aの照射によりR光の蛍光を発光する蛍光体と、LD72bの照射によりG光の蛍光を発光する蛍光体と、LD72cの照射によりB光の蛍光を発光する蛍光体が混ぜ合わせられたものであり、LD72a,72b,72cには、発光素子駆動回路14cの点灯電圧V1,V2,V3が1フィールド期間ごとにそれぞれ印加され、LD72a,72b,72cが順に発光し、光学フィルタ74は、LD72aの照射によりR光の蛍光を発光し、LD72bの照射によりB光の蛍光を発光し、LD72cの照射によりB光の蛍光を発光する面順次式の照明光学系34。」(以下「引用発明」という。)
が記載されているものと認められる。

(オ)請求人は、上記(付記項8)が付記項1を引用するものであり、付記項1には、「RGB各色を発光する発光素子」と記載されているから、(付記項8)の「各発光素子」はRGB各色を発光するものであり、「蛍光体と組み合わせられてRGB光のいずれかを出射する」ものではない旨主張する。
しかし、各発光素子自体がRGB光のいずれかを出射するものについては、【0049】に(付記項6)として「各発光素子は、それ自体がRGB光のいずれかを出射するLEDであることを特徴とする付記項1ないし付記項5のいずれか1に記載の内視鏡。」と記載されているところであり、これに対して、(付記項8)には、上記のとおり「蛍光体と組み合わせられてRGB光のいずれかを出射する」と記載されているのであるから、請求人の主張は、採用の限りでない。
なお、付記項6ないし8及び10のいずれにおいても付記項1が引用されていることを考慮すると、付記項1の「RGB各色を発光する発光素子」は、「(出射部から)RGB各色を発光する(ための)(各)発光素子」の意であると考えられるところである。

ウ 対比・判断
本願補正発明と引用発明を対比する。

(ア)引用発明の「照明光学系34」は、「レーザーダイオード(LD)」を用いるものであるから、「半導体光源装置」といえる。

(イ)引用発明の「光学フィルタ74」は、「LD72a」の照射によりR光の蛍光を発光し、「LD72b」の照射によりB光の蛍光を発光し、また、「LD72c」の照射によりB光の蛍光を発光するから、引用発明の「レーザーダイオード(LD)72a,72b,72c」のそれぞれが射出する波長領域が互いに異なることは明らかであり(この波長領域が同じであれば、光学フィルタ74からは、同じ波長域の光が出射することになり、R光、G光及びB光が順次発光することにはならない。)、引用発明の「レーザーダイオード(LD)72a,72b,72c」は、本願補正発明の「互いに異なる第一、第二、第三の波長領域の光をそれぞれ射出する第一、第二、第三の光源」に相当する。

(ウ)引用発明の「第1ないし第3の入射端部64a,64b,64c」、「出射端部62」及び「ライトガイド52」は、それぞれ、本願補正発明の「第一、第二、第三の入射端」、「少なくとも一つの射出端」及び「導光素子」に相当する。

(エ)引用発明の「LD72aの照射によりR光の蛍光を発光する蛍光体」及び「LD72bの照射によりG光の蛍光を発光する蛍光体」が本願補正発明の「前記第一の波長領域の光を吸収して、第一の変換光に波長変換する第一の波長変換部材」及び「前記第二の波長領域の光を吸収して、前記第一の変換光とは異なる波長の第二の変換光に波長変換する第二の波長変換部材」にそれぞれ相当するところであり、引用発明の「光学フィルタ74」は、本願補正発明の「前記導光素子の前記射出端と光学的に接続された波長変換ユニット」に相当する。

(オ)以上によれば、本願補正発明と引用発明とは、
「互いに異なる第一、第二、第三の波長領域の光をそれぞれ射出する第一、第二、第三の光源と、
前記第一、第二、第三の光源とそれぞれ光学的に接続された第一、第二、第三の入射端と、少なくとも一つの射出端とを有している導光素子と、
前記導光素子の前記射出端と光学的に接続された波長変換ユニットとを備え、
前記波長変換ユニットは、
前記第一の波長領域の光を吸収して、第一の変換光に波長変換する第一の波長変換部材と、
前記第二の波長領域の光を吸収して、前記第一の変換光とは異なる波長の第二の変換光に波長変換する第二の波長変換部材とを含んでいる、半導体光源装置。」
である点で一致し、本願発明は、
「波長変換部材の吸収スペクトルの有効波長領域を、吸収スペクトルのピーク強度の半分以上である波長領域と定義したときに、前記第一の波長変換部材の吸収スペクトルの有効波長領域は、前記第一の波長領域を含み、かつ、前記第二、第三の波長領域とは互いに重ならず独立しており、前記第二の波長変換部材の吸収スペクトルの有効波長領域は、前記第二の波長領域を含み、かつ、前記第一、第三の波長領域とは互いに重ならず独立しており、前記第一の波長変換部材は、第二の波長領域の光または第三の波長領域の光を吸収し波長変換したときに射出する第一の変換光の強度が、第一の波長領域の光を吸収し波長変換したときに射出する第一の変換光の強度の半分以下であり、前記第二の波長変換部材は、第一の波長領域の光または第三の波長領域の光を吸収し波長変換したときに射出する第二の変換光の強度が、第二の波長領域の光を吸収し波長変換したときに射出する第二の変換光の強度の半分以下である」
と特定されるものであるのに対して、引用発明はそのように特定されるものかどうか明らかでない点で相違するものと認められる。

エ 判断
(ア)引用発明の照明光学系34は、面順次式の照明光学系であり、引用文献の図3に示される照明光学系34と同様に、点灯電圧V1,V2,V3の印加に応じて、順次、R光、G光、B光のみを出射するものであるのが望ましいことが明らかである。
このことは、引用発明の「LD72aの照射によりR光の蛍光を発光する蛍光体」についていえば、LD72aの波長の光を吸収してR光を発光するが、LD72bやLD72cの波長の光の照射によってはR光を発光しない(R光を発光するにしても問題にならない程度の少量である)のが望ましいということであるから、引用発明において、「前記第一の波長変換部材は、第二の波長領域の光または第三の波長領域の光を吸収し波長変換したときに射出する第一の変換光の強度」が、本願補正発明の特定事項である「第一の波長領域の光を吸収し波長変換したときに射出する第一の変換光の強度の半分以下であり」との要件を満たす程度に小さくなるようにすることは、当業者が当然考慮することである。
また、そうするためには、「LD72aの照射によりR光の蛍光を発光する蛍光体」は、LD72aの波長の光を吸収するが、LD72bやLD72cの波長の光は吸収しない(吸収するにしても少量である)のが望ましいことが明らかであるから、引用発明において、本願補正発明の特定事項である「(波長変換部材の吸収スペクトルの有効波長領域を、吸収スペクトルのピーク強度の半分以上である波長領域と定義したときに)前記第一の波長変換部材の吸収スペクトルの有効波長領域は、前記第一の波長領域を含み、かつ、前記第二、第三の波長領域とは互いに重ならず独立しており」との要件を満たすようにすることも、当業者が当然考慮することである。

(イ)同様に、引用発明の「LD72bの照射によりG光の蛍光を発光する蛍光体」についていえば、LD72bの波長の光を吸収してG光を発光するが、LD72aやLD72cの波長の光の照射によってはG光を発光しない(G光を発光するにしても問題にならない程度の少量である)のが望ましいということであるから、引用発明において、「前記第二の波長変換部材は、第一の波長領域の光または第三の波長領域の光を吸収し波長変換したときに射出する第二の変換光の強度」が、本願補正発明の特定事項である「第二の波長領域の光を吸収し波長変換したときに射出する第二の変換光の強度の半分以下である」との要件を満たす程度に小さくなるようにすることは、当業者が当然考慮することである。
また、そうするためには、「LD72bの照射によりG光の蛍光を発光する蛍光体」は、LD72bの波長の光を吸収するが、LD72aやLD72cの波長の光は吸収しない(吸収しても少量である)のが望ましいことが明らかであるから、引用発明において、本願補正発明の特定事項である「(波長変換部材の吸収スペクトルの有効波長領域を、吸収スペクトルのピーク強度の半分以上である波長領域と定義したときに)前記第二の波長変換部材の吸収スペクトルの有効波長領域は、前記第二の波長領域を含み、かつ、前記第一、第三の波長領域とは互いに重ならず独立しており」との要件を満たすようにすることも、当業者が当然考慮することである。

(ウ)以上のとおりであって、引用発明において、上記ウ(オ)の相違点に係る本願補正発明の特定事項を備えるものとすることは、当業者が当然考慮することである。

オ 小括
以上の検討によれば、本願補正発明は、当業者が引用発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3 本願発明について
(1)本願発明
上記のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成24年9月24日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項16に記載された事項によって特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記2(2)アに補正前の請求項1として示したとおりのものである。

(2)判断
前記2(3)ア(イ)によれば、本願補正発明は、本願発明を限定し、また特定事項を付加したものと認められる。してみると、前記2(3)における本願補正発明についての検討のとおり、本願発明を限定し、また特定事項を付加した本願補正発明が、当業者が引用発明に基いて容易に発明をすることができたものである以上、本願発明が、当業者が引用発明に基いて容易に発明をすることができたものであることは、明らかである。

4 むすび
上記のとおり、本願発明は、当業者が引用発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-06-13 
結審通知日 2014-06-17 
審決日 2014-06-24 
出願番号 特願2008-125205(P2008-125205)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (H01S)
P 1 8・ 121- Z (H01S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 日夏 貴史  
特許庁審判長 小松 徹三
特許庁審判官 近藤 幸浩
服部 秀男
発明の名称 半導体光源装置  
代理人 峰 隆司  
代理人 佐藤 立志  
代理人 砂川 克  
代理人 岡田 貴志  
代理人 福原 淑弘  
代理人 堀内 美保子  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 井関 守三  
代理人 中村 誠  
代理人 河野 直樹  
代理人 野河 信久  

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