• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1290514
審判番号 不服2012-11152  
総通号数 177 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-06-14 
確定日 2014-08-06 
事件の表示 特願2007-546284「医療用診断イメージングにおいて医療的に有意味の記述を生成するための高性能分類器を自動的に確立するための方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 6月22日国際公開,WO2006/064470,平成20年 7月10日国内公表,特表2008-523876〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成17年12月13日(優先権主張日 平成16年12月17日,米国)を国際出願日とする国際出願であって,平成23年2月21日付けで拒絶理由が通知され,同年9月1日付けで意見書と手続補正書の提出がなされたが,平成24年1月30日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年6月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに,同日付けで手続補正(以下「本件補正」という)がなされたものである。
その後,平成25年3月25日付けで特許法第164条第3項に基づく報告を引用した審尋がなされ,回答書が同年9月24日付けで請求人より提出された。

第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成24年6月14日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は,次のとおりに補正された。
「 【請求項1】
入力医療画像において対象物における少なくとも1つの医療的に有意味の特徴の存在を判定する方法であって:
複数の訓練医療画像における少なくとも1つの対象物に関して少なくとも1人の専門家から取得される評価を有する第1データベースを生成する段階であって、前記少なくとも1つの対象物は病変部分である、段階;
特定特徴を有する第2データベースを生成するために特徴を特定するように前記訓練画像における前記少なくとも1つの対象物をデータ処理器により解析する段階;
分類データ処理器に前記第1データベース及び前記第2データベースを入力する段階;
前記第1データベース及び前記第2データベースに基づいて少なくとも1つの医療的に有意味の特徴の所定の認識をエミュレートするように、前記分類データ処理器を訓練する段階;並びに
前記医療画像における対象物の少なくとも1つの医療的に有意味の特徴の存在の少なくとも1つの指標を出力するように、前記データ処理器及び訓練された前記分類器において前記医療画像を解析する段階;
を有する方法であり、
前記分類データ処理器は、専門家により決定される中間レベルの特徴に低レベルの特徴を関連付けることに基づいて、画像処理器により生成された低レベルの特徴から前記中間レベルの特徴を適切に予測するように学習し;
前記分類データ処理器は中レベルの特徴に対して低レベルの特徴をマッピングし、ニューラルネットワークが、そのマッピングを実行するように選択され、前記ニューラルネットワークについての入力-出力対の集合が備えられ、前記入力-出力対の集合は訓練集合及び評価集合に分けられ、最初に規定されるネットワークは前記訓練集合により訓練され、前記評価集合により評価され、次いで、最適化を実行すべき最適なニューラルネットワークが選択される;
方法。」(下線は補正箇所を示す)

2 本件補正について
本件補正は,請求項1において,
(1)「第1データベース」について,補正前の「複数の訓練医療画像における少なくとも1つの対象物の少なくとも1人の専門家による評価を有する」という特定を,「複数の訓練医療画像における少なくとも1つの対象物に関して少なくとも1人の専門家から取得される評価を有する」と,明りょうでない記載の釈明を目的とする補正を行うと共に,「前記少なくとも1つの対象物は病変部分である」と,該「対象物」を限定する補正を行うものであり,
(2)「分類データ処理器」に関連する段階について,補正前の「前記データ処理器に前記第1データベース及び前記第2データベースを入力する段階」,「前記第1データベース及び前記第2データベースに基づいて少なくとも1つの医療的に有意味の特徴の所定の認識をエミュレートするように、分類器を訓練する段階」,「前記分類器は、専門家により決定される中間レベルの特徴に低レベルの特徴を関連付けることに基づいて、前記分類データ処理器により生成された前記低レベルの特徴から前記中間レベルの特徴を適切に予測するように学習する」という特定を,それぞれ,「分類データ処理器に前記第1データベース及び前記第2データベースを入力する段階」,「前記第1データベース及び前記第2データベースに基づいて少なくとも1つの医療的に有意味の特徴の所定の認識をエミュレートするように、前記分類データ処理器を訓練する段階」,「前記分類データ処理器は、専門家により決定される中間レベルの特徴に低レベルの特徴を関連付けることに基づいて、画像処理器により生成された前記低レベルの特徴から前記中間レベルの特徴を適切に予測するように学習し」と,明りょうでない記載の釈明を目的とする補正を行うものであり,
(3)また,「分類データ処理器」による学習について,「前記分類データ処理器は中レベルの特徴に対して低レベルの特徴をマッピングし、ニューラルネットワークが、そのマッピングを実行するように選択され、前記ニューラルネットワークについての入力-出力対の集合が備えられ、前記入力-出力対の集合は訓練集合及び評価集合に分けられ、最初に規定されるネットワークは前記訓練集合により訓練され、前記評価集合により評価され、次いで、最適化を実行すべき最適なニューラルネットワークが選択される」と,その機能及びその手段を追加,限定する補正を行うものである。

そうすると,特許請求の範囲の請求項1についての本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされている同法による改正前(以下「平成18年改正前」という)の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするもの,および同項4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして,補正前の請求項2が削除されたことに伴い,項番号並びにその中で引用する請求項の項番号を対応して繰り上げて整合するように補正する,本件補正後の請求項1を引用する請求項2以下の請求項についての本件補正も,請求項1と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするもの,および同項4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。

そこで,本件補正後の特許請求の範囲の請求項1および請求項18に係る発明(以下「補正発明1」および「補正発明18」という)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3 補正発明18について
まず,補正発明18を検討するに,補正発明18は「請求項1に記載の方法であって、前記分類器はナイーブベイズ分類器である、方法。」と特定されており,一方,引用する補正発明1は,
「(省略)
分類データ処理器に前記第1データベース及び前記第2データベースを入力する段階;
前記第1データベース及び前記第2データベースに基づいて少なくとも1つの医療的に有意味の特徴の所定の認識をエミュレートするように、前記分類データ処理器を訓練する段階;並びに
前記医療画像における対象物の少なくとも1つの医療的に有意味の特徴の存在の少なくとも1つの指標を出力するように、前記データ処理器及び訓練された前記分類器において前記医療画像を解析する段階;
を有する方法であり、
前記分類データ処理器は、専門家により決定される中間レベルの特徴に低レベルの特徴を関連付けることに基づいて、画像処理器により生成された低レベルの特徴から前記中間レベルの特徴を適切に予測するように学習し;
前記分類データ処理器は中レベルの特徴に対して低レベルの特徴をマッピングし、ニューラルネットワークが、そのマッピングを実行するように選択され、前記ニューラルネットワークについての入力-出力対の集合が備えられ、前記入力-出力対の集合は訓練集合及び評価集合に分けられ、最初に規定されるネットワークは前記訓練集合により訓練され、前記評価集合により評価され、次いで、最適化を実行すべき最適なニューラルネットワークが選択される;
方法。」と特定されている。
そして,補正発明18の「ナイーブベイズ分類器」が補正発明1の「前記分類器」に対応することが明らかであるものの,「ナイーブベイズ分類器」は,「前記第1データベース及び前記第2データベースに基づいて少なくとも1つの医療的に有意味の特徴の所定の認識をエミュレートするように訓練される」と特定されている分類器として機能する「分類データ処理器」と異なるものであることは明らかであるから,両者の関係が不明である。
また,「訓練された」という特定がなされている点からみて,補正発明1の「前記分類器」が「前記分類データ処理器」の誤記であるとしても,補正発明1の「前記分類データ処理器」は,「中レベルの特徴に対して低レベルの特徴をマッピングし、ニューラルネットワークが、そのマッピングを実行するように選択され、前記ニューラルネットワークについての入力-出力対の集合が備えられ、前記入力-出力対の集合は訓練集合及び評価集合に分けられ、最初に規定されるネットワークは前記訓練集合により訓練され、前記評価集合により評価され、次いで、最適化を実行すべき最適なニューラルネットワークが選択される」と特定されているものであって,「ナイーブベイズ分類器」が「ニューラルネットワークの分類器」の下位概念ではない以上,補正発明18の「ナイーブベイズ分類器である」との特定と矛盾することとなる。
してみると,補正発明1を引用する発明である補正発明18は,どのような特定事項を有する発明であるのか,明確であるとはいえない。
したがって,補正発明18は,特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていない。

4 補正発明1について
(1)引用刊行物およびその記載事項
本願の優先権主張日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である「RANGARAJ M RANGAYYAN ET AL,"Measures of Acutance and Shape for Classification of Breast Tumors",IEEE TRANSACTIONS ON MEDICAL IMAGING,1997年12月,vol. 16, no. 6,p799-810」(以下「刊行物1」という)は,乳房腫瘍の分類に関する学術論文であって,次の事項が図及び表とともに記載されている。

(1-ア)
「In this article, we investigate region-based techniques to classify mammographic masses into two groups as benign/malignant or circumscribed/spiculated, as well as into four groups as circumscribed benign (CB), circumscribed malignant (CM), spiculated benign (SB), and spiculated malignant (SM). The techniques are based upon measures of the morphology (shape) and radiographic appearance of masses. We present an adaptive region-based edge profile acutance measure [12] which quantifies the diffusion of the density of a mass into surrounding tissue, and is expected to discriminate between benign and malignant masses based upon the radiographic definition (sharpness) of their edges. In addition, we use shape factors such as compactness, Fourier descriptors (FD's), moments, and chord-length statistics based upon contours of masses, as well as moments based upon density distributions to aid in classification of circumscribed and spiculated masses and four-group classification as mentioned above [13]. The features are evaluated by pattern classification experiments using the leave-one-out algorithm and the Mahalanobis distance procedures in the BMDP (Biomedical Programs) software package [14].
In Section II, we present a review of methods for analysis of abnormal breast parenchyma and classification of mammographic masses. Details of the images and databases used in this study are described in Section III. Details of the adaptive image edge profile acutance measure are given in Section IV. Shape analysis procedures based upon compactness, FD's, different types of moments, and chord-length statistics are described in Section V. A brief discussion on the pattern classification methods used is given in Section VI, and results of the classification experiments are presented and discussed in Section VII.」(800頁左欄20?51行,当審訳:「この報文で我々は,マンモグラフ上の腫瘤を良性/悪性又は限局性/小突起性として2つのグループに分類するのと同様,限局性良性(CB),限局性悪性(CM),小突起性良性(SB)及び小突起性悪性(SM)の4つのグループに分類するために,領域-ベース化技術を開発する。この技術は,形態学(形状)測定と腫瘤の放射線的見掛けに基づく。我々は,周囲組織への腫瘤の密度の拡散を定量化する適応的領域ベース化エッジプロフィル尖鋭度測定を提示する[12]。この測定は,周囲組織への腫瘤の密度の拡散を定量化し,そしてそれらのエッジの放射線的決定(シャープさ)に基づく良性と悪性の腫瘤の間を区別することが期待される。さらに,我々は,コンパクトさ,フーリエ記述子(FD's),モーメント及び腫瘤の輪郭に基づくコード長統計のような形状因子を,限局性腫瘤及び針状腫瘤の分類と4グループ分類を手助けするために,密度分散に基づくモーメントと同様に使用する[13]。特徴は,BMDP(生物医学プログラム)ソフトウエアパッケージ中の一個抜き出しアルゴリズムとマハラノビス距離方法を使用するパターン分類実験によって評価される[14]。
第II章で,我々は,異常乳房発達組織の分析とマンモグラム上の腫瘤の分類のための方法のレビューを提示する。この研究において使用された画像とデータの詳細は,第III章で記述される。適応性を示す画像エッジプロフィル尖鋭度測定は,第IV章に示される。コンパクトさ,フーリエ記述子(FD's),モーメント及びコード長統計に基づく形状分析手順は第V章に記述されている。使用されたパターン分類方法についての短い議論が,第VI章に与えられる。そして,分類実験の結果は,第VII章において提示され,議論されている。」)

(1-イ)
「 III. IMAGES AND DATABASES
Thirty-nine mammographic images including 16 CB, four CM, 12 SB, and seven SM biopsy-proven tumors were selected from the Mammographic Image Analysis Society (MIAS, UK) database [42]. The images are all of mediolateral oblique (MLO) views. The scanner used was a Joyce-Loebl SCANDIG-3 microdensitometer, which has a linear response in the optical density (OD) range 0 to 3.2. Each pixel is 8-b deep and at a resolution of 50 μm ×50 μm.
Although a majority of malignant masses encountered in mammographic screening are spiculated and a majority of the benign masses encountered are well-circumscribed, the MIAS database has a relatively large number of SB masses. In order to augment the numbers of the two types of malignant tumors in the MIAS database, 15 images from Screen Test: Alberta Program for the Early Detection of Breast Cancer were digitized using an Eikonix 1412 scanner (Eikonix Inc., Bedford, MA.) and a Plannar 1417 light box (Gordon Instruments, Orchard Park, NY). This set (to be henceforth called the Calgary database in this paper), includes three CM and 12 SM biopsy-proven tumors. Either of the two standard views - MLO or cranio-caudal (CC)- was used. The 15 images were of fifteen different patients.」(801頁左欄32行?同頁同欄下から3行,当審訳:「III. 画像とデータベース
16CB,4CM,12SB及び7SMの生検証明済み腫瘍を含む39マンモグラフィー画像は,マンモグラフィー画像分析協会(MIAS,US)データベース[42]から選択された。画像はすべて,医学的側面斜視(MLO)観察像である。使用されたスキャナーは,Joyce-Loeblマイクロデンシトメータで,それは光学密度(OD)範囲0?3.2の線形応答を有する。各画素は,8-b深さで50μm×50μmの解像度を有する。
マンモグラフィー像スクリーニング中で遭遇した悪性腫瘤の大部分は小突起性であり,遭遇した良性腫瘤の大部分は良く限局性なものであったけれど,MIASデータベースは相対的に多数のSB腫瘤を有している。MIASデータベースにおける2つのタイプの悪性腫瘍の数を増加するために,スクリーンテスト:乳癌の初期検出のためのAlbertaプログラム,からの15画像が,Eikonix 1412スキャナー(エイコニックス社,ベドフォード,マサチューセッツ州)とPlannar 1417光源箱(ゴールドンインスツルメント社,オーチャードパーク,ニューヨーク州)を使用してデジタル化された。このセット(この論文ではカルガリーデータベースと以下,呼ばれる。)は,3CMと12SMの生検証明済み腫瘍を含む。2つの典型的観察像-MLOまたは頭蓋-尾部(CC)-のいずれかが使用された。15画像は,15人の異なる患者からのものであった。」)

(1-ウ)
「 IV. EDGE DEFINITION AND ACUTANCE
The need for a measure to characterize the sharpness or crispness of an image has been recognized by a number of researchers, and many different objective measures of image quality have been proposed (see Rangayyan and Elkadiki [44] for a detailed review on this topic). ・・・・・・
It is established that while most benign masses are wellcircumscribed with well-defined borders, malignant tumors often possess fuzzy and blurred boundaries; density variations from inside a malignant tumor to the outside are usually smooth and gradual. While shape factors can characterize the shape complexities of tumors, they do not address the above-mentioned difference. Although edge-strength measures were proposed to address this point by Kok et al. [30], the measures were based on derivatives limited to four directions at boundary pixels. We present in this section a modified measure of acutance where inside-to-outside differences between the density of a tumor and surrounding tissues are computed along normals to the ROI boundary, rather than with 3×3 masks for a limited number of directional gradients. The advantage of the proposed adaptive measure of acutance lies in its capability to quantify density variations across the boundary of an ROI along normals that could lie in any direction. We hypothesize that the sharpness of a tumor ROI across its boundary can be an indicator or index of the diffusive nature of malignant tumors and, hence, aid in distinguishing between benign masses and malignant tumors. Further, such a measure could complement shape factors in classification of masses, and aid in classification of masses into four categories (CB, CM, SB, and SM) as described earlier.

A. Polygonal Approximation of Tumor Boundaries
・・・・・・
In the present work, the boundary of each ROI was polygonapproximated according to the algorithm discussed above. ・・・・・・The numbers of sides of the polygonal approximations were in the range 20-50 for circumscribed masses and 40-150 for spiculated tumors.

B. Adaptive Computation of Region-Based Edge Profile Acutance
Two innovations are proposed in the present paper to the algorithm for computation of region-based edge profile acutance proposed by Rangayyan and El-kadiki [44]. First, the ROI boundary is approximated by a polygon, as described in the Section IV-A; this facilitates computation of the equation of the normal to the ROI boundary at each pixel, instead of using 9×9 blocks to approximate the normal as done in the original algorithm. Second, the number of pixels along the normal used to compute the differences between the object and the background is adaptive in relation to image resolution and to ROI shape complexity. However, an equal number of pixels along the normal from inside the ROI and from outsidethe ROI are used at every boundary pixel.
Fig. 7 shows a generic polygonal approximation of an ROI, along with the equations to a side and the corresponding normal at the point marked (1). The equation of each side of the polygonal approximations to the tumor boundaries was easily calculated, and so was the equation of its normal. Differences along the normal at each boundary pixel were computed in an inside-to-outside fashion [44].・・・・・・
In this work, the acutance measure was evaluated by first calculating the sum of differences d(j) along the normal to each boundary point j = 0,1,・・・, N-1, where N is the number of boundary points of the ROI, as
d(j) = (省略) (1)
where f(i) and b(i), i = 0,1,・・・,n_(j) are pixels along the normal inside and outside the ROI, respectively [44]. n_(j) is the number of pixel pairs along the normal used to compute the differences for the th boundary pixel, and is subject to a maximum of n_(max)= 80(in this work) as mentioned earlier.・・・・・・The normalized value of was then computed over all boundary pixels to obtain the acutance measure A as
A = (省略) (2)
where d_(max) is a normalization factor dependent upon the maximum grey-level range and n_(max), such that A is limited to a maximum value of one.
In this work, acutance is used as a measure of edge strength or diffusion of a tumor or mass into the surrounding regions in the mammogram. Given that malignant tumors have fuzzy, ill-defined boundaries, we expect the acutance value to be low for malignant tumors and high for benign masses, within the range (0, 1).」(801頁右欄33行?804頁右欄15行,当審訳:「IV. エッジ決定及び尖鋭度
画像のシャープさ又は輪郭のはっきり度を特徴付けるための測定の必要性は,何人かの検索者によって認識されていて,画像の多くの異なる対象物測定が提案されてきた(このトピックスについての詳細なレビューに対してはRangayyanとElkadiki[44]参照)。・・・・・・
大部分の良性腫瘤は,うまく決定された境界線を備えたよい限局性である一方,悪性腫瘍はしばしばぼやけたギザギザした境界を有することが確立されている;悪性腫瘍の内部から外部への密度変化は,通常滑らかで緩やかである。形状因子は腫瘍の複雑性を特徴付けることができる一方,それらは上述の相違を提示することはない。エッジ-強度測定は,Kokら[30]によってこの点に狙いを定めることが提案されたが,その測定は境界画素において4方向に限定された導関数に基づいていた。我々は,この章において,腫瘍と周囲組織の密度の内部から外部への相違が,方向性勾配の限定された数に対する3×3マスクを使うよりもむしろ,正常部に沿ってROI境界へ計算されるところの尖鋭度の改良測定を提示する。提案された尖鋭度の適応的測定は,任意の方向にあり得る正常部に沿ったROIの境界を横切る密度変化を定量化するための可能性が存在し得る。我々は,その境界を横切る腫瘍ROIのシャープさが悪性腫瘍の拡散的性質の指標又は指数であり得るし,そしてこのことから良性腫瘤と悪性腫瘍との間を区別することを助けると仮定している。さらに,そのような測定は,腫瘤の分類における形状因子を補足し,先に記載したように,4つのカテゴリ(CB,CM,SBおよびSM)に腫瘤を分類することに役立つことができた。

A.腫瘍境界の多角形近似
・・・・・・
この研究において,各ROIの境界は上で議論されたアルゴリズムによって,多角形近似された。・・・・・・ 多角形近似の辺の数は,限局性腫瘤に対しては20-50の範囲で,小突起性腫瘍に対しては40-150の範囲であった。

B.領域ベース化エッジプロフィル尖鋭度の適合性計算
2つの革新がこの論文において,RangayyanとEl-kadiki[44]によって提示された領域ベース化エッジプロフィル尖鋭度の計算に対するアルゴリズムに対して提案されている。第一に,ROI境界は,第VI-A章で述べられたように,多角形によって近似されている;これは,オリジナルのアルゴリズムでなされていたように正常部を近似するために9×9ブロックを使用することに代わって,各画素でのROI境界に対しての正常部の式計算を容易化する。第二に,対象物と背景との間の違いを計算するために使用された正常部に沿った画素の数は,画像解像度とROIの形状の複雑性に関連して適用的である。しかしながら,ROI内部からおよびROI外部から正常部に沿った同数の画素が,各境界画素で用いられる。
図7は,辺と(1)と印付けされた点の対応する正常部に沿って,ROIの一般的多角形近似を示す。腫瘍境界の多角形近似の各辺の式は,容易に計算されるし,その正常部の式もそうである。各境界画素における正常部の相違は,内部対外部方式[44]で計算された。・・・・・・
この研究において,尖鋭度測定は,最初の計算で,各境界点j=0,1,・・,N-1に沿った正常部に沿った相違の合計d(j)が評価された。ここで,NはROIの境界点の数であり,
d(j)= (省略) (1)
ここでf(i)とb(i),i=1,2,・・・,n_(j)は,j番目の境界画素に対する相違を計算するために使用された正常部に沿った画素対の数であり,前に述べたように最大n_(max)=80(本研究において)を条件とする。・・・・・・ d(j)の正規化された値は,次いで尖鋭度Aを得るためにすべての境界画素にわたって計算された:
A= (省略) (2)
ここで,d_(max)は,Aが1の最大値に制限されるように,最大グレーレベル範囲とn_(max)に依存する正規化因子である。
この研究において,尖鋭度は,マンモグラフィー像における周囲領域への腫瘍または腫瘤のエッジ強さ又は拡散の測定として使用される。悪性腫瘍がはっきりしない,決定しにくい境界を有すると仮定すると,我々は,範囲(0,1)内で悪性に対しては低く,良性に対しては高い尖鋭度値を期待する。」)

(1-エ)
「 V. SHAPE ANALYSIS
It is well established that benign masses are usually round or macro-lobulated in appearance, and well-circumscribed with smooth contours. On the other hand, malignant tumors typically possess rough or irregular boundaries, including micro-lobulations, spicules, and concavities [47]. In computerized shape analysis, it is desirable to classify objects using robust features which are independent of scaling, translation, and rotation [48], [49]. Compactness, FD's, central invariant moments, and chord-length distributions are the most commonly used methods for shape analysis.

A. Compactness
Compactness C is a simple measure of contour complexity versus the enclosed area, defined as C = p^(2)/a, where p and a are the object perimeter and area, respectively. A malignant tumor with a number of concavities or spicules could be expected to possess a higher C value than a smooth and round benign mass. In order to restrict the range of C to (0, 1), and to obtain increasing values with increasing shape complexity or roughness, we use the following, modified definition of compactness [50]:
C =(省略) (3)
The modified compactness value is zero for a circle, and increases with shape elongation or roughness. We have previously used the modified measure of compactness as a feature to discriminate between benign and malignant calcifications [50].

B. Fourier Descriptors
Persoon and Fu [51] showed that the FD's may be used to characterize skeletons of objects, with applications in character recognition and machine-part recognition. ・・・・・・ The FD's are defined as
A(n)=(省略) (4)
Using only the magnitude of the FD's, normalized FD's (NFD's) may be obtained as [53], [50]
NDF(k)=(省略) (5)
Emphasizing low-frequency components, we derived an FD-based shape factor (FF)as [50]
FF =(省略) (6)
The advantage of this measure is that it is not sensitive to noise, which would be caused if weights increasing with frequency were used. FF is invariant to translation, rotation, starting point, and contour size, and becomes larger as the object shape becomes more complex and rough, and is limited to the range (0, 1). Tumors with micro-lobulations and jagged boundaries are expected to have larger FF values than masses with smooth or macro-lobulated boundaries. We have successfully applied FF to shape analysis of mammographic calcifications [53], [50].

C. Moment-Based Shape Factors
Various moments may be computed from an object's silhouette or boundary; the former is less sensitive to noise and is an indicator of gross shape, while the latter is more sensitive to high-frequency edge details. Computation of moments is simple, but has three disadvantages: the first is the difficulty in associating the moments with perceptual correlates; the second is the need of a large dynamic range for higher-order moments; the third is the sensitivity of the higher-order moments to sampling error in digitizing the object boundary [54], [55].
・・・・・・
・・・We modified the methods of Gupta and Srinath [55], and proposed a new shape factor MF_(1-3) based upon low-orderd moments F_(1) and F_(3) as [50], [53]
MF_(1-3) = F_(1)-F_(3)
F_(1) =(省略) (10)
F_(3) =(省略) (11)
m_(1) =(省略) (12)
where N is the number of boundary pixels. Note that this measure is independent of pixel intensity.・・・・・・
In this work, the shape factors, listed above were computed for each tumor ROI to obtain the set MF_(1-3), M^(bd)_(1-7), M^(,b)_(1-7), M^(rd)_(1-7), M^(r)_(1-7), and M^(rd')_(1-7) computed as follows; MF_(1-3) was computed using (10)-(13); M^(bd)_(1-7) were obtained using (7) and (14)-(20) using only the ROI boundary pixels with their grey-level values; M^(,b)_(1-7) are similar to M^(bd)_(1-7), but do not use the grey-level values; M^(rd)_(1-7) were obtained using all the pixels within the ROI along with their grey-level values in (7) and (14)-(20); were obtained as , but without the grey-level values; and were obtained using all the pixels within the ROI along with their grey-level values in (9) and (14)-(20). Here, superscript b denotes use of baoundary pixels only, d denotes use of grey-level or density, r denotes use of the entire region, and ' denotes use of the difference in grey-level with respect to ROI mean as in (9).

D. Chord-Length Statistics
Discrimination of 2-D closed shapes using their chordlength distributions was discussed by You and Jain [60]. A chord-length measure L_(i) is defined as the length of the line segment which links a pair of boundary points, normalized by the length of the longest chord. The complete set of chords for a given object consists of all possible chords drawn from every boundary pixel to every other boundary pixel. You and Jain [60] considered the K = N(N-1)/2 unique chords of the N boundary points of an object as a sample distribution set and computed Kolmogorov-Smirnov (K-S) statistics of the chordlength distribution as shape factors. The technique was applied to boundary maps of seven countries and six machine parts with different levels of resolution, and the results indicated good discrimination between shapes. The method is invariant to size, translation, and rotation, and is stable with respect tonoise and distortion in the shape boundary. The method has two main disadvantages: it is possible for two different shapes to have the same chord-length distribution, and the method is computationally expensive. Shape features may be computed from chord-length distributions as
M_(c1) =(省略) (21)
M^(2)_(c2) =(省略) (22)
M_(c3) =(省略) (23)
M_(c4) =(省略) (24)
The measures listed above, in order, represent the mean, variance, skewness, and kurtosis of the chord-length distributions. 」(804頁右欄16行?806頁右欄下から13行,当審訳:「V.形状分析
良性腫瘤は通常外観が円形又は大きな分葉状であって,滑らかな輪郭の境界明瞭なものであることが広く認められている。一方,悪性腫瘍は典型的には粗い,又は不規則な境界線をもち,微小分葉,小突起,凹部を含んでいる[47]。コンピュータによる形状分析において,拡大縮小,転換,回転と無関係なロバスト特性を用いて対象を分類することが望ましい[48],[49]。形状分析として,稠密度,フーリエ記述子(FD),中央不変モーメント,コード長分布が最もよく用いられる方法である。

A. 稠密度
稠密度Cは,周囲を囲まれた区域に対する,輪郭の複雑さの簡単な尺度であって,C = p^(2) / aと定義される。ここでpとaは対象のそれぞれ周囲長と面積である。多くの凹部又は小突起のある悪性腫瘍は,滑らかな円形の良性腫瘤よりもC値が大きいことが予想される。Cの範囲を(0,1)に限定するために,且つ形状の複雑さや粗度が増すにつれ値が大きくなるようにするために,我々は以下のような稠密度の修正定義を用いる[50]。
C =(省略) (3)
修正稠密度の値は,円形のとき0であり,形状の伸長度又は粗度の増大にしたがって値が大きくなる。我々は前もって,良性石灰化と悪性石灰化を区別するための特性として稠密度の修正尺度を用いた。
B.フーリエ記述子(FD)
PersonとFu [51]は,文字認識と機械部品認識における応用によって,対象の骨格を特徴付けるためにFDが用いられることがあることを示した。・・・・・・FD'sは次のように定義される。
A(n)=(省略) (4)
FD'sの強度だけを使用して,正規化されたFD's(NFD's)は次のように得られ得る。[53],[50]
NFD(k) = (省略) (5)
低周波数成分を強調して,我々はFDに基づく形状因子(FF)を次のように誘導した。[50]
FF = (省略) (6)
この尺度の長所は,周波数と共に増加する重みが用いられるときに生じ得るノイズに対して感度が低いことである。FFは,転換,回転,開始点,輪郭の大きさに対して不変であって,対象の形状がより複雑且つ粗くなるにつれて大きくなり,範囲(0,1)に限定される。微小分葉やギザギザした境界線をもつ腫瘍は,滑らかな,又は,大きな分葉状の境界線のある腫瘤よりも,FF値が大きくなると予想される。我々はFFをマンモグラフによる分類の形状分析に応用することに成功した[53],[50]。

C.モーメントに基づく形状因子
様々なモーメントを,対象のシルエット又は境界線から計算することができる。前者はノイズに対して感度が低く,全体的形状の指標となるが,後者は高周波数エッジの細部に対して感度がより高い。モーメントの計算は簡単であるが,三つの短所がある。一つは,モーメントを知覚的相関要因と関連付けることが困難であること,二つ目は,より高位のモーメントのために大きなダイナミック・レンジが必要であること,三つ目は,対象の境界線をデジタル化する上での誤差の抽出に対する高位のモーメントの感度である[54],[55]。
・・・・・・
我々は,GuptaとSrinathの方法[55]を改良し,低周波数モーメントF1及びF3に基づく新しい形状因子MF_(1-3)を次のように提案した[50],[53]。
MF_(1-3) = F_(1)-F_(3)法 (10)
F_(1)= (省略) (11)
F_(3)= (省略) (12)
m_(1)= (省略) (13)
ここでNは境界画素の数である。この測定は画素強度から独立していることを注記する。
・・・・・・
この研究において,上に挙げた形状因子は,次のように計算されたMF_(1-3),M^(bd)_(1→7),M^(b)_(1→7),M^(rd)_(1→7),M^(r)_(1→7),M^(rd’)_(1→7)のセットを得るために,各腫瘍ROIに対して計算された;MF_(1-3)は(10)-(13)を使って計算された;M^(bd)_(1→7)は(7)とROI境界画素だけでそれらのグレーレベル値を用いて得られた;M^(b)_(1→7)はM^(bd)_(1→7)と同様であるが,グレーレベル値は使用されない;M^(rd)_(1→7)は(7)と(14)-(20)においてグレーレベル値を用いてROIに沿った内部のすべての画素を使って得られた;M^(r)_(1→7)はM^(bd)_(1→7)のように得られたが,グレーレベル値は使用されない;そしてM^(rd’)_(1→7)は(9)と(14)-(20)においてグレーレベル値を用いてROIに沿った内部のすべての画素を使って得られた。ここで,上付き文字bは境界画素だけの使用を意味し,dはグレーレベル又は密度の使用を意味し,rは全体領域の使用を意味し,そして’は(9)でのようにROI平均に関してグレーレベルにおける相違の使用を意味する。

D. コード長統計
コード長分布を用いる2-Dの閉じた形状の判別は,YouとJain[60]によって考察された。コード長の尺度であるLiは,境界点の1対をつなげる線分の長さとして定義され,最長コードの長さによって規格化される。所定の対象についてのコードの完全集合は,あらゆる境界画素から他のあらゆる境界画素までひかれた可能性のあるコード全体から成る。YouとJain[60]は,標本分布セットとしてK = N ( N-1) / 2という対象のN境界点の独特のコードと,形状因子としてコード長分布のコンピュータによるKolmogorov-Sminov (K-S)統計を考案した。この技術は異なる解像度によって7カ国及び6つの機械部品の境界図に応用され,その結果,良好な形状の判別を示した。この方法は,大きさ,転換,回転に対して不変であり,形状境界におけるノイズ及び歪みに関して安定性がある。この方法には主に二つの短所がある。二つの異なる形状について同じコード長分布となる可能性があることと,この方法はコンピュータ計算上の費用が高いことである。形状特徴は,次のようにコード長分布から計算され得る。
M_(c1) = (省略) (21)
M^(2)_(c2) = (省略) (22)
M_(c3) = (省略) (23)
M_(c4) = (省略) (24)
上に挙げられた測定は,その順で,平均,変動,ねじれ,コード長分布の尖度を表す。」)

(1-オ)
「 VI. PATTERN CLASSIFICATION
The shape factors C, FF, MF_(1-3), M^(bd)_(1-7), M^(,b)_(1-7), M^(rd)_(1-7), M^(r)_(1-7), M^(rd')_(1-7) and M_(c1) to M_(c4), and acutance A were computed for each tumor or mass for use as features in pattern classification. Cases selected from the MIAS database were treated as one set; the combination of the Calgary database with the MIAS database was treated as a separate second set (called the“combined”database) in the pattern classification experiments. This was done in order to provide separate results for the MIAS database as it is well-known and available world wide for research. However, the numbers of CM and SM tumors are low in the MIAS database; hence we have supplemented it with a few selected local cases to form the combined database. Table I shows the numbers of the various types of cases in each dataset.
The BMDP “7M”step-wise discriminant analysis program [14] was used to perform pattern classification experiments. The program requires the feature set to be specified, and provides measures of performance of each feature in the classification task. Other methods, such as genetic algorithms, could be used to preanalyze the features and select the most discriminant features [61]; this step has not been done in the present work. The 7M program performs a jack-knife validation procedure (leave-one-out algorithm). It computes the Mahalanobis distance to each group mean and the posterior probabilities of belonging to each group. Then, it classifies each case into the group with the highest posterior probability according to classification functions computed from all data provided except the case being classified.
Many different combinations of the features were used in classifying each tumor as benign/malignant, circumscribed/ spiculated, or CB/CM/SB/SM in two-group and four-group classification experiments with the two databases. Given the large number of features in the study, it is not practical to test all possible combinations. Various feature groups were formed with representation from each type of feature studied. The results for only some of the interesting combinations tried are reported in the next section.」(806頁右欄下から12行?807頁左欄26行,当審訳:「VI.パターン分類
形状因子であるC,FF,MF_(1-3),M^(bd)_(1→7),M^(b)_(1→7),M^(rd)_(1→7),M^(r)_(1→7),M^(rd’)_(1→7),M_(c1) ,M_(c4) ,及び,尖鋭度Aを,パターン分類における特徴として用いるために各腫瘍又は腫瘤について計算した。MIASデータベースから選抜した症例を一式として処置した。カルガリー・データベースとMIASデータベースの組合せは,パターン分類実験における別の一式として扱った(以下組合せデータベースと称する)。MIASデータベースは周知されており世界中で研究用に利用可能なため,これは同データベースについて個別の結果を提供するために行われた。しかしながら,MIASデータベースではCM及びSM腫瘍の数が少ないので,我々は組み合わせデータベースを作るためにいくつか選んだ地域の症例によってこれを補完した。表Iは各データセットにおける様々な症例の数を示す。
BMDP“7M”階段状判別分析プログラム[14]を用いて,パターン分類実験を実施した。このプログラムは特定される特徴セットを必要とし,その分類作業においてそれぞれの特徴の実行尺度を提供する。遺伝的アルゴリズムのような他の方法は,特徴を予分析するために用いられることがあり,最も判別可能な特徴を選択する[61]。この段階は本報では行われなかった。7Mプログラムは,ジャックナイフ式検証手順(一個抜き出しアルゴリズム)を実行するものである。これは各群の平均値のマハラノビス距離と各群に属する事後確率を計算する。次に,分類されたその症例を除き,全ての提供データから計算された分類関数に従って,最も高い事後確率によって各症例を群に分類する。
多くの様々な特徴の組合せを用いて,二つのデータベースによる2群及び4群の分類実験において,各腫瘍を良性又は悪性,限局性又は小突起性,あるいはCB/CM/SB/SMに分類した。本報における特徴数の多さを考えると,全ての可能な組合せを検証することは現実的ではない。検討した特徴のそれぞれの種類の代表的なものによって様々な特徴群を作成した。試験した興味深い組合せの一部についてのみ,その結果を次節で報告する。」)

(1-カ)
「 VII. RESULTS AND DISCUSSION
A. Benign/Malignant Classification
The benign/malignant classification results for the MIAS and combined databases using the acutance measure only are given in Tables II and III, respectively. The percent accuracy rates of benign/malignant classification using all of the features in selected combinations are given in Table IV. The acutance measure alone gave 94.9% and 92.6% correct benign/malignant classification rates for the MIAS and combined databases, respectively, which are the best rates achieved with the various combinations of the features used in this study. True negative (TN) and true positive(TP) classification rates are 92.9% and 100% for the MIAS database, and 92.9% and 92.3% for the combined database, respectively, as shown in Tables II and III.
The shape measures that depend on boundary information only, namely, C, FF, MF_(1-3), M^(,b)_(1-7), and M_(c1) to M_(c4), in different combinations gave benign/malignant classification rates of no more than 69.2% and 75.9% for the two databases, as shown in Table IV. The shape factors M^(r)_(1-7 )based upon the whole ROI but not including the density did not fare any better than the shape factors based on boundary information only as above. Addition of information on boundary pixel or ROI density to the shape factors in computing M^(bd)_(1-7), M^(rd)_(1-7), and M^(rd')_(1-7) and did not provide benign/malignant classification accuracies of more than 74.5% for the MIAS database and 70.4% for the combined database, as shown in Table IV. Further, the chord-length measures did not fare any better than the other shape measures.
The benign/malignant classification experiments, thus, show that ROI shape and density information do not directly provide good results. The acutance measure, being based on adaptively computed directional derivatives along normals to the ROI boundary and representing boundary fuzzyness of the ROI, provides the best classification rate.

B. Circumscribed/Spiculated Classification
The best circumscribed/spiculated classification rates of 94.9% for the MIAS database and 94.4% for the combined database were obtained using the combination C, FF, MF_(1-3), and M_(c1) to M_(c4), as shown in Tables V and VI. The accuracies of classification for some of the many combinations of the features that were tried are given in Table VII. The simple measure of compactness alone gave a high accuracy of 92.3% with the MIAS database, but a lower rate of 88.9% with the combined database. The combination of M^(bd)_(1-7) and M^(,b)_(1-7) gave a high circumscribed/spiculated classification rate of 92.3% for the MIAS database. The chord-length features gave, on their own, lower circumscribed/spiculated classificationrates of 79.5% and 87% for the two databases, respectively. As expected, acutance alone did not perform well in circumscribed/spiculated classification (see Table VII).
The results indicate that the extremely simple shape measure of compactness C provides high accuracy in circumscribed/ spiculated classification; FF also gave similar results. The contribution of M_(c1) to M_(c4), and MF_(1-3), in achieving the highest rate may be considered to be marginal.

C. Four-Group Classification
(以下略) 」
(806頁右欄下から12行?807頁左欄26行,当審訳:「VII.結果と考察
A. 良性/悪性分類
MIASデータベース及び組合せデータベースについて,尖鋭度測定のみを用いた良性/悪性分類を,表II及び表IIIにそれぞれ示す。選択した組合せにおける全ての特性を用いた良性/悪性分類の精度(%)を表IVに示す。尖鋭度測定Aのみでは,MIASデータベースと組合せデータベースについてそれぞれ94.9%及び92.6%が正しい良性/悪性分類であったが,それは本研究で用いた特性の各種組合せによって達成された最高率である。陰性(TN)及び真陽性(TP)分類率は,表II及び表IIIに示したように,MIASデータベースについては,それぞれ92.9%及び100%,組合せデータベースについては92.9%及び92.3%であった。
境界線情報のみ,すなわち異なる組合せにおけるC,FF,MF_(1-3),M^(b)_(1→7),M_(c1)?M_(c) に基づく形状測定では,表IVに示したように,二つのデータベースについての良性/悪性分類率は69.2%及び75.9%未満であった。ROI(関心領域)全体に基づくが密度は含まない形状因子M^(r)_(1→7)は,上述のように境界線情報のみに基づいた形状因子ほどには良好ではなかった。M^(bd)_(1→7),M^(rd)_(1→7), M^(rd’)_(1→7)を計算する上で,境界線の画素上の情報又はROI密度の形状因子への追加は,表IVに示したように,MIASデータベースについて74.5%,組合せデータベースについて70.4%を上回る良性/悪性分類精度とはならなかった。更に,コード長測定はその他の形状測定法ほどには良好ではなかった。
このように,良性/悪性分類実験によって,ROI形状及び密度情報は直接的に良好な結果とはならないことがわかった。尖鋭度測定は,順応して計算されたROI境界に対する標準的な方向微分係数に基づいて,ROIの境界のあいまいさを表すと,最良の分類率となる。
B. 限局性/小突起性の分類
限局性/小突起性の分類の最高率が,MIASデータベースで94.9%,組合せデータベースで94.4%となったのは,表V及び表VIに示したように,C,FF,MF_(1-3),M_(c1)?M_(c) の組合せであった。試行された特性の多くの組合せのいくつかについての分類精度を表VIIに示す。稠密度のみの単純な測定法は,MIASデータベースで92.3%と高い精度であったが,組合せデータベースでは88.9%と低かった。M^(bd)_(1→7)とM^(rd)_(1→7)は,MIASデータベースについて限局性/小突起性の分類率が92.3%と高かった。コード長特性は独自に,二つのデータベースの限局性/小突起性の分類率がそれぞれ79.5%,87%と低かった。予想されたように,尖鋭度だけでは限局的/小突起性分類がうまくいかなかった(表VII参照)。
この結果から,稠密度Cの非常に簡単な形状測定法は,限局性/小突起性の分類において高い精度を示したことがわかる。FFもまた同様な結果であった。高率を達成する上で,M_(c1)?M_(c)とMF_(1-3)の寄与は,最低限のものであると考えられよう。

C. 4グループ分類
(以下,略) 」)

(1-キ)
「 VIII. CONCLUSION
Characterization of mammographic masses and tumors and their classification as being benign or malignant is difficult. In this paper, we have proposed a new measure of edge strength or acutance of the tumor ROI to characterize the fuzzy nature of malignant tumor boundaries and the sharply defined nature of benign masses. Acutance alone gave a benign/malignant decision accuracy of about 95% with 39 cases from the MIAS database and 93% with the combined database of 54 cases.
We have also analyzed the effectiveness of a number of shape factors in distinguishing between circumscribed and spiculated tumors. The simple measure of compactness provided a high level of accuracy in this task, achieving an accuracy of 92.3% with 39 cases from the MIAS database. More complex shape measures based on FD's and moments did not give any higher accuracy. Chord-length statistics did not perform well on their own.
We have demonstrated that four-group classification of tumors and masses as CB, CM, SB, and SM requires the combined application of acutance and shape measures. The combination of acutance, moment-based shape factors, and FD's gave a high four-group classification accuracy of about 95% with 39 cases from the MIAS database.
This paper has, therefore, established the usefulness of the proposed acutance and shape measures in tumor classification. A limitation of this work has been in the use of manually-input contours of the tumor ROI's.We intend to develop methods for automatic detection of tumor areas as well as for the derivation of their boundaries.」
(801頁右欄33行?804頁右欄15行,当審訳:「VIII. 結論
マンモグラフ上の腫瘤と腫瘍を特徴付け,そして良性であるか悪性であるかを分類することは困難である。本報文で我々は,悪性腫瘍境界線のあいまいな性質と,良性腫瘤の明確に定義された性質を特徴付けるために,腫瘍ROIのエッジ強度又は尖鋭度を測定する新しい方法を提案した。尖鋭度だけでは,良性/悪性の判定精度はMIASデータベースの39症例について約95%であり,組合せデータベースの54症例において93%であった。
我々はまた,限局性腫瘍及び小突起性腫瘍の区別において多くの形状因子の有効性を分析した。稠密度の簡単な測定は,この作業において高い精度を示し,MIASデータベースの39症例で92.3%の精度を達成した。FD及びモーメントに基づいたより複雑な形状測定は,精度は高くなかった。コード長統計は,それだけでは成功しなかった。
我々は,CB,CM,SB,SMのような腫瘍及び腫瘤の4群分類には尖鋭度と形状測定を組み合わせて応用する必要があることを立証した。尖鋭度,モーメントに基づく形状因子,FDの組合せは,MIASデータベースの39症例について約95%と高い4群分類精度を示した。
従って本報では,腫瘍の分類において提案した尖鋭度と形状測定の有効性が立証された。この研究の限界は,腫瘍ROIの輪郭を手動で入力して利用することにあった。我々は,それらの境界線の導出だけでなく,腫瘍範囲を自動的に検出する方法を開発する予定である。」)

そして,刊行物1において,マンモグラフィー画像上の腫瘤が限局性であるのか小突起性であるのか,あるいは良性であるか悪性であるか等に分類するために利用される,尖鋭度Aや各種の形状因子は,上記記載事項(1-ウ)および(1-エ)の記載から,手動的に計算されるものではないことは明らかであるから,データ処理器により解析された画像中の腫瘤部分の特徴データである。
また,上記記載事項(1-ア)に「特徴は,BMDP(生物医学プログラム)ソフトウエアパッケージ中の一個抜き出しアルゴリズムとマハラノビス距離方法を使用するパターン分類実験によって評価される[14]。」と,上記記載事項(1-オ)に「BMDP“7M”階段状判別分析プログラム[14]を用いて,パターン分類実験を実施した。」とあるように,分類するために分類データ処理器が使用されていることも明らかであるから,刊行物1のこれらの記載事項を整理すると,刊行物1には,次の発明が記載されているものと認められる。

「マンモグラフィー画像において腫瘤部分が良性であるか悪性であるのか,あるいは限局性であるか小突起性であるのか分類する方法であって,
MIASデータベース又はMIASデータベースとカルガリーデータベースを組み合わせたデータからの複数のマンモグラフィー画像における画像中の腫瘤部分が良性であるか悪性であるのか,あるいは限局性であるか小突起性であるのかが生検で証明済みの画像の腫瘤部分についてデータ処理器で解析して,その形状因子であるC,FF,MF_(1-3),M^(bd)_(1→7),M^(b)_(1→7),M^(rd)_(1→7),M^(r)_(1→7),M^(rd’)_(1→7),M_(c1) ?M_(c4) ,及び,尖鋭度Aのデータを得て,
該画像の腫瘤部分が良性であるか悪性であるのか,あるいは限局性であるか小突起性であるのかのデータと共に,上記の形状因子及び尖鋭度のデータに基づき,ジャックナイフ式検証手順を実行するBMDP“7M”階段状判別分析プログラムを用いるデータ処理器で,各画像の腫瘤部分が良性であるか悪性であるのか,あるいは限局性であるか小突起性であるのかを分類する方法。」(以下「引用発明」という。)

(2)対比
ア 補正発明1と引用発明との比較すると,引用発明の「マンモグラフィー画像」が医療画像であることは明らかであり,刊行物1の上記記載事項(1-ウ)に「大部分の良性腫瘤は,うまく決定された境界線を備えたよい限局性である一方,悪性腫瘍はしばしばぼやけたギザギザした境界を有することが確立されている」(802頁左欄4?6行)とあるように,引用発明において,その「腫瘤部分が限局性であるのか」否か分類することは,医療的に有意味の特徴の存在を判定することを意味する。そして,引用発明における「画像中の腫瘤部分が限局性であるのか小突起性であるのか」の分類(判定)は,上記記載事項(1-ウ)?(1-オ)に記載されているように,画像中の腫瘤部分の各種の特徴がデータ処理装置で解析されるから,マンモグラフィー画像の入力は当然であり,引用発明の「マンモグラフィー画像において腫瘤部分が良性であるか悪性であるのか,あるいは限局性であるか小突起性であるのか分類する方法」は,補正発明1の「入力医療画像において対象物における少なくとも1つの医療的に有意味の特徴の存在を判定する方法」に相当するといえる。

イ 引用発明の「腫瘤部分」は,補正発明1における「病変部分である」「対象物」に相当し,引用発明の「MIASデータベース又はMIASデータベースとカルガリーデータベースを組み合わせたデータからの複数のマンモグラフィー画像」では,画像中の腫瘤部分が良性であるか悪性であるのか,あるいは限局性であるか小突起性であるのかが,生検により証明済みであるので,少なくとも1人の専門家から取得される評価である,良性か悪性か,あるいは限局性か小突起性かのデータ群を有しており,そのようなデータベースからの複数のマンモグラフィー画像を使用する引用発明の方法は,補正発明1の「複数の医療画像における少なくとも1つの対象物に関して少なくとも1人の専門家から取得される評価を有する第1データベースを生成する段階であって,前記少なくとも1つの対象物は病変部分である,段階」を経た方法に相当することも明らかである。
そして,引用発明における「ジャックナイフ式検証手順を実行するBMDP“7M”階段状判別分析プログラムを用いるデータ処理器で,各画像の腫瘤が良性であるか悪性であるのか,あるいは限局性であるか小突起性であるのかを分類する」という段階は,上記プログラムについて上記記載事項(1-オ)に「7Mプログラムは,ジャックナイフ式検証手順(一個抜き出しアルゴリズム)を実行するものである。これは各群の平均値のマハラノビス距離と各群に属する事後確率を計算する。次に,分類されたその症例を除き,全ての提供データから計算された分類関数に従って,最も高い事後確率によって各症例を群に分類する。
多くの様々な特徴の組合せを用いて,二つのデータベースによる2群及び4群の分類実験において,各腫瘍を良性又は悪性,限局性又は小突起性,あるいはCB/CM/SB/SMに分類した。本報における特徴数の多さを考えると,全ての可能な組合せを検証することは現実的ではない。検討した特徴のそれぞれの種類の代表的なものによって様々な特徴群を作成した。」と説明されているように,決まった一つの手順を実行させる段階ではなく,多くの様々な特徴の組合せを試みてみて,どのような特徴の組合せが目的の分類結果を得るために有効であるか,分類する分類データ処理器を訓練し,学習させているといえる段階を含むものである。例えば,拒絶の理由に引用された「SANTAELLA C.H.M. ET AL,"Classification of nodules in mammograms image by using wavelet transform",MEDICAL IMAGING 2003: IMAGE PROCESSING.,2003年 5月,vol. 5032,pages 908-918」にも,「To test acutual images, the leave-one-out meathod was used to the classifier training.」(908頁の要約の項の下から3行,当審訳:「実際の画像を試験するために,一個抜き出し法が分類器訓練に使用された。」)と記載されている。
そうすると,引用発明における「MIASデータベース又はMIASデータベースとカルガリーデータベースを組み合わせたデータからの複数のマンモグラフィー画像における画像中の腫瘤部分が良性であるか悪性であるのか,あるいは限局性であるか小突起性であるのかが生検で証明済みの画像」は,分類データ処理器を訓練するための補正発明1における「訓練医療画像」および「訓練画像」に相当するし,引用発明における「MIASデータベース又はMIASデータベースとカルガリーデータベースを組み合わせたデータからの複数のマンモグラフィー画像における画像中の腫瘤部分が良性であるか悪性であるのか,あるいは限局性であるか小突起性であるのかが生検で証明済みの画像の腫瘤部分についてデータ処理器で解析して,その形状因子であるC,FF,MF_(1-3),M^(bd)_(1→7),M^(b)_(1→7),M^(rd)_(1→7),M^(r)_(1→7),M^(rd’)_(1→7),M_(c1) ?M_(c4) ,及び,尖鋭度Aのデータを得て」は,補正発明1における「複数の訓練医療画像における少なくとも1つの対象物に関して少なくとも1人の専門家から取得される評価を有する第1データベースを生成する段階であって,前記少なくとも1つの対象物は病変部分である,段階;
特定特徴を有する第2データベースを生成するために特徴を特定するように前記訓練画像における前記少なくとも1つの対象物をデータ処理器により解析する段階;」に相当するといえる。

ウ 引用発明における「データ処理器」が「各画像の腫瘤部分が良性であるか悪性であるのか,あるいは限局性であるか小突起性であるのかを分類する」ためには,良性であるか,悪性,すなわち良性でないという,あるいは限局性であるか,小突起性,すなわち限局性でないという,医療的に有意味の特徴の存在の指標を当然出力させなければならないから,引用発明における「該画像の腫瘤部分が良性であるか悪性であるのか,あるいは限局性であるか小突起性であるのかのデータと共に,上記の形状因子及び尖鋭度のデータに基づき,ジャックナイフ式検証手順を実行するBMDP“7M”階段状判別分析プログラムを用いる分類データ処理器で,各画像の腫瘤部分が良性であるか悪性であるのか,あるいは限局性であるか小突起性であるのかを分類する」は,補正発明1における「分類データ処理器に前記第1データベース及び前記第2データベースを入力する段階;
前記第1データベース及び前記第2データベースに基づいて少なくとも1つの医療的に有意味の特徴の所定の認識をエミュレートするように,前記分類データ処理器を訓練する段階;並びに
前記医療画像における対象物の少なくとも1つの医療的に有意味の特徴の存在の少なくとも1つの指標を出力するように,前記データ処理器及び訓練された前記分類データ処理器において前記医療画像を解析する段階;」に相当するといえる。なお,補正発明1における「前記分類器」という特定は,「前記分類データ処理器」の誤記であるとして,上記のように認定し,以下検討した。

エ 補正発明1における「中(間)レベルの特徴」とは,本願明細書の段落【0013】に「そのような中間レベルの特徴の例は,病変における組織中のカルシウム塩の異常析出,病変が標準的な長円であるかどうか,及び/又は病変が同じ種類又は性質を有しない要素を有するか否かを含む。」と記載されているし,「低レベルの特徴」は,同段落【0014】に「得ることが可能である低レベルの特徴の中には,フーリエ記述子,モーメント,形状並びに確立,共起及び自己相関パラメータがある。」と記載されているから,腫瘤部分が境界の明瞭な,引用発明の「限局性」であるか否かは,補正発明1における「中(間)レベルの特徴」に相当するいえ,引用発明の「形状因子であるC,FF,MF_(1-3),M^(bd)_(1→7),M^(b)_(1→7),M^(rd)_(1→7),M^(r)_(1→7),M^(rd’)_(1→7),M_(c1) ?M_(c4) ,及び,尖鋭度A」は,補正発明1における「低レベルの特徴」に相当するといえる。

オ 「Pに対してQをマッピングする」とは,Pに対してQを位置付ける,PにQを関係づけることを意味するから,引用発明における「データ処理器」における,「形状因子であるC,FF,MF_(1-3),M^(bd)_(1→7),M^(b)_(1→7),M^(rd)_(1→7),M^(r)_(1→7),M^(rd’)_(1→7),M_(c1) ?M_(c4) ,及び,尖鋭度Aのデータに基づき,腫瘤部分が限局性であるか,そうではない小突起性であるのか分類する」ことは,両者の特徴間の関連付け,すなわち補正発明1の「マッピング」に相当するといえるし,上記記載事項(1-オ)に「次に,分類されたその症例を除き,全ての提供データから計算された分類関数に従って,最も高い事後確率によって各症例を群に分類する。」と記載されているように,入力画像を処理するデータ処理器(「画像処理器」といえる)により生成された上記の形状因子や尖鋭度(「低レベルの特徴」といえる)から腫瘤部分が限局性であるか,そうではない小突起性であるのか(「中間レベルの特徴」といえる)を適切に予測しようとしていることは明らかであるから,引用発明の「該画像の腫瘤部分が良性であるか悪性であるのか,あるいは限局性であるか小突起性であるのかのデータと共に,上記の形状因子及び尖鋭度のデータに基づき,ジャックナイフ式検証手順を実行するBMDP“7M”階段状判別分析プログラムを用いる分類データ処理器で,各画像の腫瘤部分が良性であるか悪性であるのか,あるいは限局性であるか小突起性であるのかを分類する」は,補正発明1における「前記分類データ処理器は,専門家により決定される中間レベルの特徴に低レベルの特徴を関連付けることに基づいて,画像処理器により生成された低レベルの特徴から前記中間レベルの特徴を適切に予測するように学習し;
前記分類データ処理器は中レベルの特徴に対して低レベルの特徴をマッピング」することに相当するといえる。

そうすると,補正発明1と引用発明とは,
(一致点)
「入力医療画像において対象物における少なくとも1つの医療的に有意味の特徴の存在を判定する方法であって:
複数の訓練医療画像における少なくとも1つの対象物に関して少なくとも1人の専門家から取得される評価を有する第1データベースを生成する段階であって,前記少なくとも1つの対象物は病変部分である,段階;
特定特徴を有する第2データベースを生成するために特徴を特定するように前記訓練画像における前記少なくとも1つの対象物をデータ処理器により解析する段階;
分類データ処理器に前記第1データベース及び前記第2データベースを入力する段階;
前記第1データベース及び前記第2データベースに基づいて少なくとも1つの医療的に有意味の特徴の所定の認識をエミュレートするように,前記分類データ処理器を訓練する段階;並びに
前記医療画像における対象物の少なくとも1つの医療的に有意味の特徴の存在の少なくとも1つの指標を出力するように,前記データ処理器及び訓練された前記分類データ処理器において前記医療画像を解析する段階;
を有する方法であり,
前記分類データ処理器は,専門家により決定される中間レベルの特徴に低レベルの特徴を関連付けることに基づいて,画像処理器により生成された低レベルの特徴から前記中間レベルの特徴を適切に予測するように学習し;
前記分類データ処理器は中レベルの特徴に対して低レベルの特徴をマッピングする,
方法。」
である点で一致し,下記の点で相違する。

(相違点)
「分類データ処理器の中レベルの特徴に対して低レベルの特徴をマッピングする手段」が,補正発明1では「ニューラルネットワークが,そのマッピングを実行するように選択され,前記ニューラルネットワークについての入力-出力対の集合が備えられ,前記入力-出力対の集合は訓練集合及び評価集合に分けられ,最初に規定されるネットワークは前記訓練集合により訓練され,前記評価集合により評価され,次いで,最適化を実行すべき最適なニューラルネットワークが選択される」ものであるのに対し,引用発明においては,「ジャックナイフ式検証手順を実行するBMDP“7M”階段状判別分析プログラムを用いるデータ処理器」を用いており,ニューラルネットワークが選択されるものではない点。

(3)相違点の検討
対象物の画像から物体や状態を分類,判別する技術において「ニューラルネットワークを用いて画像をマッピングしてある物体やある状態であると分類,判別を行う」ことは,本願優先権主張日前に周知慣用の手法であるといえる。
例えば,本願優先権主張日前に頒布された刊行物である特開2003-307493号公報には,「【0088】紙葉類の特徴抽出及び同類分類に関する第2の方法は競合型学習を用いたニューラルネットワークの一手法である自己組織化特徴地図(self-organizingfeature map)を画像の同類分類処理の一部にマッピング演算として活用する。この自己組織化特徴地図の手法はニューラルネットワークモデルの一つのパラダイムとしてKohonenにより提唱されており,本発明では,分類性能を上げるために教師無し学習の一手法である競合型学習を対象として,自己組織的な学習則を適応する。」と記載されている。
同じく,本願優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平10-21406号公報には,「【特許請求の範囲】
【請求項1】 特徴の集合をもつ物体を認識する方法において,
サンプル・ベクトルの集合が発生されるように物体の画像をサンプリングし,
前記ベクトルの次元の数を減少し,
前記次元の減少したベクトルから物体の特徴を抽出し,ならびに物体を周知のクラスに分類するステップを有する物体認識方法。
【請求項2】 前記サンプリング・ステップが,
物体の全体画像上で窓を異なる位置に移し,ならびに前記異なる位置の各1つで局部画像サンプルを抽出して,ベクトルの集合を生成するステップを有する請求項1に記載の物体認識方法。
【請求項3】 前記次元の数を減少するステップが,
前記ベクトルの集合上で自己組織化マップを訓練し,
任意の訓練と任意のテスト集合に含まれる任意の画像上で窓を異なる位置に移して,前記異なる位置の各1つで結果局部画像サンプルを生成し,ならびに結果局部画像サンプルを自己組織化マップに通すことによって自己組織化マップの出力空間に新しいテスト訓練集合と新しいテスト集合とを生成するステップを有する請求項2に記載の物体認識方法。
【請求項4】 前記特徴抽出ステップが,
新しく生成された訓練集合上で畳み込みニューラルネットワークを訓練するステップを有する請求項3に記載の物体認識方法。」および
「【0008】より最近における従来技術はニューラルネットワークを利用する顔認識技術に集中している。」と記載されている。
同じく,本願優先権主張日前に頒布された刊行物である特開2004-191276号公報には,「【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面の所定領域を含む領域のカラー画像を撮像する撮像手段と,
前記撮像手段から得られたカラー画像のうちの前記所定領域に対応する画像領域の各画素の各色の濃淡値に基づいて,前記画像領域の各色ごとの分散値を得る分散値演算手段と,
前記各色をそれぞれ空間の異なる次元として,前記画像領域の各画素を当該画素の各色の濃淡値に従って前記空間内にプロットしたときの,前記画像領域の各画素の前記空間内における分布の広がり状態を示す指標を得る,指標演算手段と,
前記分散値演算手段により得られた前記画像領域の各色ごとの前記分散値,及び,前記指標演算手段により得られた前記指標に基づいて,前記路面上の水分の有無を判別する水分有無判別手段と,
を備えたことを特徴とする路面状態判別装置。
【請求項2】
路面の所定領域を含む領域のカラー画像を撮像する撮像手段と,
前記撮像手段から得られた画像のうちの前記所定領域に対応する画像領域の各画素の輝度の濃淡値に基づいて,前記画像領域の輝度の分散値を得る分散値演算手段と,
各色をそれぞれ空間の異なる次元として,前記画像領域の各画素を当該画素の各色の濃淡値に従って前記空間内にプロットしたときの,前記画像領域の各画素の前記空間内における分布の広がり状態を示す指標を得る,指標演算手段と,
前記分散値演算手段により得られた前記画像領域の輝度の前記分散値,及び,前記指標演算手段により得られた前記指標に基づいて,前記路面上の水分の有無を判別する水分有無判別手段と,
を備えたことを特徴とする路面状態判別装置。
【請求項3】
前記指標演算手段は,(a)前記各色にそれぞれ対応する入力層ユニットと所定数の競合層ユニットとを有し,前記画像領域の前記各画素の各色の濃淡値が,訓練パターンとして,対応する入力層ユニットにそれぞれ入力されて,自己組織化を行う自己組織化ニューラルネットワークと,(b)自己組織化後の前記所定数の競合層ユニットのうちの少なくとも2つの競合層ユニット間の距離を得る距離演算手段と,を有し,
前記距離演算手段により得られた前記距離に応じた値を,前記指標として用いることを特徴とする請求項1又は2記載の路面状態判別装置。」および
「【0127】
図12に示すバックプロパゲーション型ニューラルネットワーク23は,指標演算部21からの出力される距離r1,r2,r3及び分散値演算部22から出力されるR,G,Bの分散値VR,VG,VBが入力層41に入力されて,これらの入力に応じた領域R1の路面領域の水分の有無を示す出力を,出力層44から出力する。ニューラルネットワーク23は,周知のバックプロパゲーション法により,実際の種々の状況で得られた指標演算部21からの出力される距離r1,r2,r3及び分散値演算部22から出力されるR,G,Bの分散値VR,VG,VBに対して目視等により調べた実際の水分の有無の情報を,教師データとして用いることで,予め学習されたものである。
【0128】
本実施の形態では,このネットワーク23は,入力層41及び出力層44の他に,2つの中間層42,43を有し,入力層41は6個のユニットを持ち,中間層42は30個のユニットを持ち,中間層43は15個のユニットを持ち,出力層44は3個のユニットを持っている。例えば,出力層44の3個のユニットの値が1,0,1の場合に水分があることを示し,1,1,0の場合に水分がないことを示すようになっている。もっとも,本発明では,バックプロパゲーション型ニューラルネットワークの構造自体はこのような構造に限定されるものではなく,また,ニューラルネットワーク23に代えて,バックプロパゲーション型ニューラルネットワーク以外の階層型ニューラルネットワークや,教師あり学習により予め学習されたニューラルネットワークを用いてもよい。」と記載されている。特に,上記記載の「図12に示すバックプロパゲーション型ニューラルネットワーク23は,指標演算部21からの出力される距離r1,r2,r3及び分散値演算部22から出力されるR,G,Bの分散値VR,VG,VBが入力層41に入力されて,これらの入力に応じた領域R1の路面領域の水分の有無を示す出力を,出力層44から出力する。」からみて,入力される距離r1,r2,r3及びR,G,Bの分散値VR,VG,VBとこれらの入力に応じた領域R1の路面領域の水分の有無を示す出力は,入力-出力対の関係にあり,また,同「実際の種々の状況で得られた指標演算部21からの出力される距離r1,r2,r3及び分散値演算部22から出力されるR,G,Bの分散値VR,VG,VBに対して目視等により調べた実際の水分の有無の情報を,教師データとして用いることで,予め学習されたものである。」と記載されているように,実際の種々の状況で得られた入力-出力対,すなわち入力-出力対の集合が備えられ,該集合は,入力側データがニューラルネットワークを訓練する訓練集合に,出力側データがネットワークによるマッピングを評価する評価集合に分けられ,最初に規定されるネットワークは前記訓練集合により訓練され,前記評価集合により評価され,次いで,最適化を実行すべき最適なニューラルネットワークが選択される,という学習,訓練が行われることが開示されており,そのような方式の分類データ処理器の学習,訓練は,教師データを用いるニューラルネットワークでのマッピングにおいて,普通に行われていることである。

そうすると,既に複数のマンモグラフィー画像における画像中の腫瘤部分が限局性であるか小突起性であるかが生検で証明済みであるという,マンモグラフィー画像において腫瘤部分が中レベルの特徴である限局性であるか,そうでない小突起性であるのか分類しようとする分類データ処理器の善し悪しの評価が可能な評価集合データを有しているといえる,MIASデータベース又はMIASデータベースとカルガリーデータベースを組み合わせたデータからの複数のマンモグラフィー画像を用いる引用発明の分類データ処理器の中レベルの特徴(限局性であるのか否か)に対して低レベルの特徴(各種の形状因子や尖鋭度)をマッピングする手段を,ジャックナイフ式検証手順を実行するBMDP“7M”階段状判別分析プログラムを用いる分類データ処理器により行うことに変えて,ニューラルネットワークが,そのマッピングを実行するように選択され,前記ニューラルネットワークについての入力-出力対の集合が備えられ,前記入力-出力対の集合は訓練集合及び評価集合に分けられ,最初に規定されるネットワークは前記訓練集合により訓練され,前記評価集合により評価され,次いで,最適化を実行すべき最適なニューラルネットワークが選択されるものとするように設計することは,当業者が必要に応じ,容易に設計変更し得る範囲内の事項である。

そして,相違点による効果も,刊行物1の記載および周知技術から当業者ならば予測し得る範囲のものであって,格別顕著なものとはいえない。

したがって,補正発明1は,刊行物1および周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5 まとめ
以上のとおりであるから,本件補正は,平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり,特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されることとなるので,本願の請求項1ないし26に係る発明は,平成23年9月1日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし26に記載された事項により特定されるものであって,その請求項1は以下のとおりのものである。

「 【請求項1】
入力医療画像において対象物における少なくとも1つの医療的に有意味の特徴の存在を判定する方法であって:
複数の訓練医療画像における少なくとも1つの対象物の少なくとも1人の専門家による評価を有する第1データベースを生成する段階;
特定特徴を有する第2データベースを生成するために特徴を特定するように前記訓練画像における前記少なくとも1つの対象物をデータ処理器により解析する段階;
分類器に前記第1データベース及び前記第2データベースを入力する段階;
前記第1データベース及び前記第2データベースに基づいて少なくとも1つの医療的に有意味の特徴の所定の認識をエミュレートするように前記分類器を訓練する段階;並びに
前記医療画像における対象物の少なくとも1つの医療的に有意味の特徴の存在の少なくとも1つの指標を出力するように,前記データ処理器及び訓練された前記分類器において前記医療画像を解析する段階;
を有する方法であり,
前記分類器は,専門家により決定される中間レベルの特徴に低レベルの特徴を関連付けることに基づいて,前記データ処理器により生成された前記低レベルの特徴から前記中間レベルの特徴を適切に予測するように学習する;
方法。」(以下「本願発明」という)

なお,本願発明の「前記データ処理器に前記第1データベース及び前記第2データベースを入力する段階;」の「前記データ処理器」という記載は,請求項1ならび明細書の記載及び技術常識からみて,本願発明においては「分類器」の誤記であると認められるし,また「前記分類データ処理器により生成された前記低レベルの特徴から前記中間レベルの特徴を適切に予測するように学習する」とある「前記分類データ処理器」も,請求項1には「データ処理器」という記載はあっても,「分類データ処理器」という記載は存在しないし,「分類データ処理器」に「により生成された前記低レベルの特徴」と続く記載があり,「低レベルの特徴」と「特定特徴を有する第2データベース」との関係についての明細書の記載(例えば,段落【0014】,【0034】等参照)からみて,上記「前記分類データ処理器」は,「前記データ処理器」の誤記であると認められるので,本願発明を上記のとおり認定した。

2 引用刊行物およびその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1の記載事項は,上記「第2 本件補正についての補正の却下の決定 4 補正発明1について (1)引用刊行物およびその記載事項」に記載したとおりである。

3 対比,判断
本願発明は,補正発明1において,その「分類データ処理器」について,実質的に「前記分類データ処理器は中レベルの特徴に対して低レベルの特徴をマッピングし、ニューラルネットワークが、そのマッピングを実行するように選択され、前記ニューラルネットワークについての入力-出力対の集合が備えられ、前記入力-出力対の集合は訓練集合及び評価集合に分けられ、最初に規定されるネットワークは前記訓練集合により訓練され、前記評価集合により評価され、次いで、最適化を実行すべき最適なニューラルネットワークが選択される」との限定がないものである。
そうすると,本願発明の特定事項を全て含み,さらに他の特定事項を付加したものに相当する補正発明1が,前記「第2 本件補正についての補正の却下の決定 4 補正発明1について」において検討したとおり,刊行物1および周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により,刊行物1および周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないから,その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-01-08 
結審通知日 2014-01-21 
審決日 2014-03-24 
出願番号 特願2007-546284(P2007-546284)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
P 1 8・ 575- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 樋口 宗彦  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 藤田 年彦
森林 克郎
発明の名称 医療用診断イメージングにおいて医療的に有意味の記述を生成するための高性能分類器を自動的に確立するための方法及び装置  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠彦  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ