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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09G |
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管理番号 | 1290516 |
審判番号 | 不服2012-13769 |
総通号数 | 177 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-09-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-07-19 |
確定日 | 2014-08-06 |
事件の表示 | 特願2006-306546「有機発光ダイオード表示素子及びその駆動方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 1月10日出願公開、特開2008- 3542〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許出願: 平成18年11月13日 (パリ条約による優先権主張2006年6月22日、韓国) 拒絶査定: 平成24年3月12日(送達日:同年同月19日) 拒絶査定不服審判の請求: 平成24年7月19日 手続補正: 平成24年7月19日(以下、「補正1」という。) 拒絶理由通知: 平成25年9月4日(以下、「当審拒絶理由」という。発送日:同年同月5日) 手続補正: 平成26年2月5日(以下、「本件補正」という。) 意見書: 平成26年2月5日(以下、「本件意見書」という。) 2.本願発明 本願の請求項1ないし3に係る発明は、本件補正によって補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりである。 「駆動電圧を発生する駆動電圧源、 基底電圧を発生する基底電圧源、 基準電圧を発生する基準電圧源、 前記駆動電圧源と前記基底電圧源との間に流れる電流により発光される有機発光ダイオード素子、 第1ノードと第2ノードとの間に接続されたキャパシタ、 所定の時間差を置いて、第1スキャン信号と第2スキャン信号とが供給される第1スキャンライン、 所定の時間差を置いて、第3スキャン信号と第4スキャン信号とが供給される第2スキャンライン、 前記第1及び前記第2スキャンラインと交差して、データ電圧とリセット電圧が供給されるデータライン、 第1期間内に前記第1スキャン信号によりターンオンされ、前記基準電圧を前記第2ノードに供給した後、第2期間の間にターンオフされ、前記第2期間以後の第3期間内に前記第2スキャン信号によりターンオンされ、前記基準電圧を前記第2ノードに供給する第1aスイッチ素子、 前記第1期間内に前記第1スキャン信号によりターンオンされ、前記データ電圧を前記第1ノードに供給した後、前記第2期間の間にターンオフされ、前記第3期間内に前記第2スキャン信号によりターンオンされ、前記リセット電圧を前記第1ノードに供給する第1bスイッチ素子、 前記第1ノードに供給された前記データ電圧により、前記有機発光ダイオード素子に電流を流し、前記第1ノードに供給された前記リセット電圧によりターンオフされる駆動素子、及び 前記第1期間の間に前記第3スキャン信号によりターンオフされた後、前記第2期間内にターンオンされ、前記駆動電圧を前記第2ノードに供給し、前記第3期間の間に前記第4スキャン信号によりターンオフされる第2スイッチ素子を備え、 前記有機発光ダイオード素子は、前記駆動素子と前記基底電圧源との間に接続され、 前記駆動素子は、非晶質シリコンとポリシリコンのうち、何れか一つを含む半導体層を有するPタイプのMOS-FETからなり、 前記スイッチ素子は、非晶質シリコンとポリシリコンのうち、何れか一つを含む半導体層を有するPタイプのMOS-FETからなり、 前記第1aスイッチ素子は、前記第1スキャンラインに接続されたゲート電極、前記基準電圧源に接続されたソース電極、及び前記第2ノードに接続されたドレイン電極を含み、 前記第1bスイッチ素子は、前記第1スキャンラインに接続されたゲート電極、前記データラインに接続されたソース電極、及び前記第1ノードに接続されたドレイン電極を含み、 前記駆動素子は、前記第1ノードに接続されたゲート電極、前記駆動電圧源に接続されたソース電極、及び前記有機発光ダイオード素子のアノード電極に接続されたドレイン電極を含み、 前記第2スイッチ素子は、前記第2スキャンラインに接続されたゲート電極、前記駆動電圧源に接続されたソース電極、及び前記第2ノードに接続されたドレイン電極を含み、 前記第3スキャン信号は、前記第1スキャン信号に対して逆位相で発生され、 前記第4スキャン信号は、前記第2スキャン信号に対して逆位相で発生され、 前記リセット電圧は前記有機発光ダイオード素子に電流が流れないように前記駆動素子をターンオフさせるためブラックデータ対応電圧であることを特徴とする有機発光ダイオード表示素子。」(以下、「本願発明」という。) 3.当審拒絶理由 これに対し、当審拒絶理由における理由2の概要は、本願の各請求項に係る発明は、いずれも、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2006-72303号公報(発明の名称:有機発光表示装置およびその表示ユニット、出願人:エイユー オプトロニクス コーポレーション、公開日:平成18年3月16日、以下、「引用例1」という。)に記載された発明、及び特開2002-91376号公報(発明の名称:画像表示装置及びその駆動方法、出願人:株式会社日立製作所、公開日:平成14年3月27日、以下、「引用例2」という。)、特開2004-70293号公報(発明の名称:電子装置、電子装置の駆動方法及び電子機器、出願人:セイコーエプソン株式会社、公開日:平成16年3月4日、以下、「引用例3」という。)、特開2002-236470号公報(発明の名称:アクティブマトリクスエレクトロルミネッセントディスプレイの駆動方法、出願人:チ メイ オプトエレクトロニクス コーポレーション、 公開日:平成14年8月23日、以下、「引用例4」という。)に記載された周知技術に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 4.引用例記載の事項・引用発明 (1)記載事項 引用例1には、次の事項(a)ないし(b)が図面の図1ないし図5とともに記載されている。 (a) 「【0004】 図2は、従来の有機発光表示装置を示す模式図である。 ・・・主電圧Vddは略一定である。だが実際には、主電圧線VL(1)?VL(n)のインピーダンスにより、主電圧Vddに電圧低下が生じる。図2のA点およびB点を例にとると、A点およびB点には、主電圧線VL(2)により略同じ主電圧Vddが供給される。しかし、主電圧線VL(2)の電流とインピーダンスとが原因で電圧低下が起こり、B点の主電圧VddはA点の主電圧Vddよりも低くなる。つまり実際には、表示ユニット100の異なる位置では、異なるレベルの主電圧Vddが受け取られている。このため、表示ユニット100の輝度にばらつきが生じ、求められる輝度との差が生じる。」 (b) 「【0010】 図4は、本発明の好適な実施形態に係る有機発光表示ユニットを示す回路図である。図4を参照して、有機発光表示ユニット400は、PMOS(P型金属酸化物半導体)トランジスタQ4と、OLED(有機発光ダイオード) O2と、キャパシタC2と、第一スイッチQ1と、第二スイッチQ2と、第三スイッチQ3とを含む。PMOSトランジスタQ4は、駆動電流Idを生成し、第三スイッチQ3に連結(接続)されたソースと、OLED O2の正極端部に連結されたドレンとを有する。OLED O2は、駆動電流Idに応じて発光し、主ロー電圧Vssに連結された負極端部を有する。キャパシタC2は、第一スイッチQ1とPMOSトランジスタQ4のゲートとに連結された第一端部と、第二スイッチQ2に連結された第二端部とを有する。第三スイッチQ3は、キャパシタC2とPMOSトランジスタQ4との間に連結されている。第三スイッチQ3は例えば、キャパシタC2の第二端部をPMOSトランジスタQ4のソースに接続する。 【0011】 第一スイッチQ1は、走査信号Scanにより制御され、本実施形態ではNMOS(N型金属酸化物半導体)トランジスタである。NMOSトランジスタQ1は、データ信号Dataを受け取るためのドレンと、走査信号Scanを受け取るためのゲートと、キャパシタC2の第一端部に連結されたソースとを有する。第二スイッチQ2は、走査信号Scanにより制御され、本実施形態ではNMOSトランジスタである。NMOSトランジスタQ2は、基準電圧Vrefを受け取るためのドレンと、走査信号Scanを受け取るためのゲートと、キャパシタC2の第二端部に連結されたソースとを有する。第三スイッチQ3は、走査信号Scanにより制御され、本実施形態ではPMOSトランジスタである。PMOSトランジスタQ3は、キャパシタC2の第二端部に連結されたドレンと、走査信号Scanを受け取るためのゲートと、PMOSトランジスタQ4のソースに連結されたソースとを有する。 【0012】 走査信号Scanが有効になると、第一スイッチQ1および第二スイッチQ2はオンになり、第三スイッチQ3がオフになり、データ信号Dataが第一スイッチQ1を介してキャパシタC2の第一端部に送られ、基準電圧Vrefが第二スイッチQ2を介してキャパシタC2の第二端部に入力される。このとき、キャパシタC2のクロスオーバー電圧Vcは、基準電圧Vrefとデータ信号Dataとの差分Vaである。このときの基準電圧Vrefの機能は、キャパシタC2を充電することのみであり、充電作業完了後、電流はキャパシタC2に流れない。結果として、基準電圧Vrefの電圧低下は起こらず、基準電圧Vrefは一定レベルに保たれる。走査信号Scanが有効でなくなると、第一スイッチQ1および第二スイッチQ2はオフになり、第三スイッチQ3がオンになって、キャパシタC2がPMOSトランジスタQ4と電気的に接続される。PMOSトランジスタQ4のソースは、主電圧Vddでバイアスされ、PMOSトランジスタQ4のソース・ゲート間の電圧差Vgsは、キャパシタC2のクロスオーバー電圧Vc(つまり、差分Va)と略等しくなる。PMOSトランジスタQ4は、差分Vaに対応する駆動電流Idを生成する。 【0013】 図5は、本発明の好適な実施形態における有機発光表示装置を示す模式図である。図5を参照して、有機発光表示装置500は、表示ユニット400(1,1)?400(m,n)と、走査線SL(1)?SL(m)と、データ線DL(1)?DL(n)と、主電圧線VL(1)?VL(n)と、基準線RL(1)?RL(m)とを含む。走査線SL(1)?SL(m)はそれぞれ、走査信号Scan(1)?Scan(m)を対応する表示ユニット400に送る。データ線DL(1)?DL(n)は、データ信号Data(1)?Data(n)を表示ユニット400に送る。基準線RL(1)?RL(m)は、基準電圧Vrefを表示ユニット400に出力する。主電圧線VL(1)?VL(n)は、主電圧Vddを表示ユニット400に出力する。 【0014】 この実施形態においては、表示ユニット400の第一スイッチQ1がNMOSトランジスタで実現される場合、そのドレンを、データ信号Dataを受け取るためにデータ線DLに連結し、そのゲートを、走査信号Scanを受け取るために走査線SLに連結し、そのソースをキャパシタC2の第二端部に連結する。表示ユニット400の第二スイッチQ2がNMOSトランジスタで実現される場合、そのドレンを、基準電圧Vrefを受け取るために基準線RLに連結し、そのゲートを、走査信号Scanを受け取るために走査線SLに連結し、そのソースをキャパシタC2の第二端部に連結する。表示ユニット400の第三スイッチQ3がPMOSトランジスタで実現される場合、そのゲートを、走査信号Scanを受け取るために走査線SLに連結し、そのソースを、主電圧Vddを受け取るために主電圧線VLに連結し、そのドレンをキャパシタC2の第二端部に連結する。」 これらの記載と図1ないし図5の内容からみて、引用例1には以下の発明が記載されている。 「主電圧Vddを供給する主電圧源、 主ロー電圧Vssを供給する主ロー電圧源、 基準電圧Vrefを発生する基準電圧源、 前記主電圧源と前記主ロー電圧源との間に流れる電流により発光される有機発光ダイオード02、 第一端部と第二端部とを有するキャパシタC2、 走査信号Scanを送る走査線SL、 前記走査線SLと交差して、データ信号Dataが送られるデータ線DL、 走査信号Scanが有効になるとオンになり、前記基準電圧Vrefが前記第二端部に入力された後、走査信号Scanが有効でなくなるとオフになる、第二スイッチQ2、 走査信号Scanが有効になるとオンになり、前記データ信号Dataが前記第一端部に入力された後、走査信号Scanが有効でなくなるとオフになる、第一スイッチQ1、 前記データ信号Dataにより、前記有機発光ダイオード02に電流を流すトランジスタQ4、及び 走査信号Scanが有効になるとオフになり、走査信号Scanが有効でなくなるとオンされ、前記主電圧Vddを前記第二端部に入力する第三スイッチQ3を備え、 前記有機発光ダイオード02は、前記トランジスタQ4と前記主ロー電圧源との間に接続され、 前記トランジスタQ4は、PMOSトランジスタからなり、 前記第三スイッチQ3はPMOSトランジスタからなり、 前記第二スイッチQ2は、前記走査線SLに接続されたゲート、前記基準電圧源に接続されたドレン、及び前記第二端部に接続されたソースを含み、 前記第一スイッチQ1は、前記走査線SLに接続されたゲート、前記データ線DLに接続されたドレン、及び前記第一端部に接続されたソースを含み、 前記トランジスタQ4は、前記第一端部に接続されたゲート、前記主電圧源に接続されたソース、及び前記有機発光ダイオード02の正極端部に接続されたドレンを含み、 前記第三スイッチQ3は、前記走査線SLに接続されたゲート、前記主電圧源に接続されたソース、及び前記第二端部に接続されたドレンを含むことを特徴とする有機発光ダイオード表示素子。」(以下、「引用発明」という。) 5.対比 本願発明と引用発明とを対比する。 まず、引用発明の「主電圧Vddを供給する主電圧源」は、本願発明の「駆動電圧を発生する駆動電圧源」に相当する。また同様に、引用発明の「主ロー電圧Vssを供給する主ロー電圧源」は、本願発明の「基底電圧を発生する基底電圧源」に相当し、引用発明の「基準電圧Vrefを発生する基準電圧源」は、本願発明の「基準電圧を発生する基準電圧源」に相当するので、引用発明における「前記主電圧源と前記主ロー電圧源との間に流れる電流により発光される有機発光ダイオード02」は、本願発明の「前記駆動電圧源と前記基底電圧源との間に流れる電流により発光される有機発光ダイオード素子」に相当する。 さらに、引用発明の「第一端部と第二端部とを有するキャパシタC2」は、本願発明の「第1ノードと第2ノードとの間に接続されたキャパシタ」に相当する。 次に、引用発明における「走査信号Scanを送る走査線SL」と、本願発明の「所定の時間差を置いて、第1スキャン信号と第2スキャン信号とが供給される第1スキャンライン」とは、いずれも「第1スキャン信号が供給される第1スキャンライン」である点で共通し、また引用発明の「前記走査線SLと交差して、データ信号Dataが送られるデータ線DL」と、本願発明の「前記第1及び前記第2スキャンラインと交差して、データ電圧とリセット電圧が供給されるデータライン」とは、いずれも「前記第1スキャンラインと交差して、データ電圧が供給されるデータライン」である点で共通し、引用発明の「走査信号Scanが有効になるとオンになり、前記基準電圧Vrefが前記第二端部に入力された後、走査信号Scanが有効でなくなるとオフになる、第二スイッチQ2」と、本願発明の「第1期間内に前記第1スキャン信号によりターンオンされ、前記基準電圧を前記第2ノードに供給した後、第2期間の間にターンオフされ、前記第2期間以後の第3期間内に前記第2スキャン信号によりターンオンされ、前記基準電圧を前記第2ノードに供給する第1aスイッチ素子」とは、いずれも「第1期間内に前記第1スキャン信号によりターンオンされ、前記基準電圧を前記第2ノードに供給した後、第2期間の間にターンオフされる第1aスイッチ素子」である点で共通し、また同様に、引用発明の「走査信号Scanが有効になるとオンになり、前記データ信号Dataが前記第一端部に入力された後、走査信号Scanが有効でなくなるとオフになる、第一スイッチQ1」と、本願発明の「前記第1期間内に前記第1スキャン信号によりターンオンされ、前記データ電圧を前記第1ノードに供給した後、前記第2期間の間にターンオフされ、前記第3期間内に前記第2スキャン信号によりターンオンされ、前記リセット電圧を前記第1ノードに供給する第1bスイッチ素子」とは、いずれも「前記第1期間内に前記第1スキャン信号によりターンオンされ、前記データ電圧を前記第1ノードに供給した後、前記第2期間の間にターンオフされる第1bスイッチ素子」である点で共通し、引用発明の「前記データ信号Dataにより、前記有機発光ダイオード02に電流を流すトランジスタQ4」と、本願発明の「前記第1ノードに供給された前記データ電圧により、前記有機発光ダイオード素子に電流を流し、前記第1ノードに供給された前記リセット電圧によりターンオフされる駆動素子」とは、いずれも「前記第1ノードに供給された前記データ電圧により、前記有機発光ダイオード素子に電流を流す駆動素子」である点で共通し、引用発明の「走査信号Scanが有効になるとオフになり、走査信号Scanが有効でなくなるとオンされ、前記主電圧Vddを前記第二端部に入力する第三スイッチQ3」と、本願発明の「前記第1期間の間に前記第3スキャン信号によりターンオフされた後、前記第2期間内にターンオンされ、前記駆動電圧を前記第2ノードに供給し、前記第3期間の間に前記第4スキャン信号によりターンオフされる第2スイッチ素子」とは、いずれも「前記第1期間の間にスキャン信号によりターンオフされた後、前記第2期間内にターンオンされ、前記駆動電圧を前記第2ノードに供給する第2スイッチ素子」である点で共通する。 引用発明の「前記有機発光ダイオード02は、前記トランジスタQ4と前記主ロー電圧源との間に接続され」る点は、本願発明の「前記有機発光ダイオード素子は、前記駆動素子と前記基底電圧源との間に接続され」る点に相当する。 引用発明の「前記トランジスタQ4は、PMOSトランジスタからなり、前記第三スイッチQ3はPMOSトランジスタからな」る点と、本願発明の「前記駆動素子は、非晶質シリコンとポリシリコンのうち、何れか一つを含む半導体層を有するPタイプのMOS-FETからなり、前記スイッチ素子は、非晶質シリコンとポリシリコンのうち、何れか一つを含む半導体層を有するPタイプのMOS-FETからな」る点とは、いずれも「前記駆動素子は、PタイプのMOSトランジスタからなり、前記第2スイッチ素子は、PタイプのMOSトランジスタからな」る点で共通する。 引用発明の「前記第二スイッチQ2は、前記走査線SLに接続されたゲート、前記基準電圧源に接続されたドレン、及び前記第二端部に接続されたソースを含み、前記第一スイッチQ1は、前記走査線SLに接続されたゲート、前記データ線DLに接続されたドレン、及び前記第一端部に接続されたソースを含み、前記トランジスタQ4は、前記第一端部に接続されたゲート、前記主電圧源に接続されたソース、及び前記有機発光ダイオード02の正極端部に接続されたドレンを含」む点は、本願発明の「前記第1aスイッチ素子は、前記第1スキャンラインに接続されたゲート電極、前記基準電圧源に接続されたソース電極、及び前記第2ノードに接続されたドレイン電極を含み、前記第1bスイッチ素子は、前記第1スキャンラインに接続されたゲート電極、前記データラインに接続されたソース電極、及び前記第1ノードに接続されたドレイン電極を含み、前記駆動素子は、前記第1ノードに接続されたゲート電極、前記駆動電圧源に接続されたソース電極、及び前記有機発光ダイオード素子のアノード電極に接続されたドレイン電極を含」む点に相当する。 引用発明の「前記第三スイッチQ3は、前記走査線SLに接続されたゲート、前記主電圧源に接続されたソース、及び前記第二端部に接続されたドレンを含むことを特徴とする有機発光ダイオード表示素子」と、本願発明の「前記第2スイッチ素子は、前記第2スキャンラインに接続されたゲート電極、前記駆動電圧源に接続されたソース電極、及び前記第2ノードに接続されたドレイン電極を含」とは、いずれも「前記第2スイッチ素子は、スキャンラインに接続されたゲート電極、前記駆動電圧源に接続されたソース電極、及び前記第2ノードに接続されたドレイン電極を含」む点で共通する。 してみると、両者の一致点、相違点は次のとおりである。 (一致点) 「駆動電圧を発生する駆動電圧源、 基底電圧を発生する基底電圧源、 基準電圧を発生する基準電圧源、 前記駆動電圧源と前記基底電圧源との間に流れる電流により発光される有機発光ダイオード素子、 第1ノードと第2ノードとの間に接続されたキャパシタ、 第1スキャン信号が供給される第1スキャンライン、 前記第1スキャンラインと交差して、データ電圧が供給されるデータライン、 第1期間内に前記第1スキャン信号によりターンオンされ、前記基準電圧を前記第2ノードに供給した後、第2期間の間にターンオフされる第1aスイッチ素子、 前記第1期間内に前記第1スキャン信号によりターンオンされ、前記データ電圧を前記第1ノードに供給した後、前記第2期間の間にターンオフされる第1bスイッチ素子、 前記第1ノードに供給された前記データ電圧により、前記有機発光ダイオード素子に電流を流す駆動素子、及び 前記第1期間の間にスキャン信号によりターンオフされた後、前記第2期間内にターンオンされ、前記駆動電圧を前記第2ノードに供給する第2スイッチ素子を備え、 前記有機発光ダイオード素子は、前記駆動素子と前記基底電圧源との間に接続され、 前記駆動素子は、PタイプのMOSトランジスタからなり、 前記第2スイッチ素子は、PタイプのMOSトランジスタからなり、 前記第1aスイッチ素子は、前記第1スキャンラインに接続されたゲート電極、ソース電極、及びドレイン電極を含み、 前記第1bスイッチ素子は、前記第1スキャンラインに接続されたゲート電極、ソース電極、及びドレイン電極を含み、 前記駆動素子は、前記第1ノードに接続されたゲート電極、前記駆動電圧源に接続されたソース電極、及び前記有機発光ダイオード素子のアノード電極に接続されたドレイン電極を含み、 前記第2スイッチ素子は、スキャンラインに接続されたゲート電極、前記駆動電圧源に接続されたソース電極、及び前記第2ノードに接続されたドレイン電極を含むことを特徴とする有機発光ダイオード表示素子。」 (相違点) 相違点1:本願発明においては、第1スキャンライン及び第2スキャンラインの2つのスキャンラインが設けられ、互いに逆位相の信号が供給されるのに対し、引用発明は単一の走査線SLが設けられている点。 相違点2:本願発明においては、「前記有機発光ダイオード素子に電流が流れないように前記駆動素子をターンオフさせるためブラックデータ対応電圧である」リセット電圧が供給されているのに対し、引用発明では供給されておらず、また本願発明でリセット電圧供給のタイミングを取るために、第1及び第3スキャン信号と所定の時間差を置いて供給される、第2及び第4スキャン信号も、引用発明では供給されていない点。 相違点3:本願発明においては、駆動素子及び各スイッチ素子は「非晶質シリコンとポリシリコンのうち、何れか一つを含む半導体層を有するPタイプのMOS-FET」からなるとされているのに対し、引用発明においては、トランジスタQ4及び第三スイッチQ3はPMOSトランジスタからなるものの、第一スイッチQ1及び第二スイッチQ2はそのようにされておらず、また、各々のソースとドレンに接続されるものも本願発明とは逆となっている点。 6.判断 上記相違点1ないし3について検討する。 (1)相違点1及び3について: 相違点1及び3は、互いに関連する事項であるから、併せて検討する。 引用発明の各スイッチのように、同一のタイミングで複数のスイッチのオン、オフを逆に切り替えようとした際に、同一特性のスイッチを設け、逆位相の2つの信号を供給して切替を行うか、もしくは逆特性のスイッチを設け、1つの信号によって切替を行うかといったことは、その選択に伴って当然に発生する各スイッチへの接続状態の変更も含めて、具体的な回路設計の段階において当業者が適宜決定すべき設計事項にすぎない。また、表示装置の駆動回路に用いられるスイッチ素子として、「非晶質シリコンとポリシリコンのうち、何れか一つを含む半導体層を有するPタイプのMOS-FET」は、例示するまでもなく周知なものであり、その採用も設計事項である。 スキャンラインを2つ設けたことや、各スイッチ素子をPタイプのMOS-FETとしたこと等により、当業者の予想し得ない効果が生じているとも認められない。 (2)相違点2について: 引用例2-4にもそれぞれ開示されているように、有機発光ダイオード表示素子の動画表示を改善するために、データラインへ、駆動素子をターンオフさせるブラックデータ対応電圧をフレーム毎に供給するようにした構成は周知(以下、「周知技術1」という。)である。 引用発明の有機発光ダイオード表示装置においても、動画表示を改善するという課題が共通に存在することは明らかであるから、周知技術1を引用発明に適用することは当業者が容易になし得たものである。そして、引用発明においてリセット電圧をフレーム毎に供給する場合、表示のための走査信号と所定の時間差を置いて、別の走査信号(第2及び第4スキャン信号に相当。)を供給する必要があることも、当業者であれば明らかである。 そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術1から当業者が予測可能なものであって、格別のものではない。 したがって、本願発明は引用発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明し得たものである。 7.請求人の主張について 審判請求人は、本件意見書において、概略、以下のように主張しているので、検討する。 (1)請求人の主張の概要 ア 引用例1に記載の発明においては、反転した(即ち、逆位相の)スキャン信号がピクセル回路に印加されない点で本願発明と異なる。 イ 引用例2ないし4に記載のピクセル回路を引用例1に記載のピクセル回路に組み合わせることはできない。 (2)検討 ア 上記主張アについて 上記「6.判断(1)」において説示したように、同一のタイミングで複数のスイッチのオン、オフを逆に切り替えようとした際に、同一特性のスイッチを設け、逆位相の2つの信号を供給して切替を行うか、もしくは逆特性のスイッチを設け、1つの信号によって切替を行うかといったことは、具体的な回路設計の段階において当業者が適宜決定すべき設計事項にすぎない。 イ 上記主張イについて 上記「6.判断(2)」において説示したように、課題の共通性を考慮すれば、周知技術1を引用発明に適用することは当業者が容易になし得たものである。 以上のとおりであり、審判請求人の主張は採用できない。 8.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は当審拒絶理由によって拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-03-07 |
結審通知日 | 2014-03-11 |
審決日 | 2014-03-25 |
出願番号 | 特願2006-306546(P2006-306546) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G09G)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小川 浩史、樫本 剛 |
特許庁審判長 |
飯野 茂 |
特許庁審判官 |
中塚 直樹 森 竜介 |
発明の名称 | 有機発光ダイオード表示素子及びその駆動方法 |
代理人 | 岡部 讓 |
代理人 | 吉澤 弘司 |