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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03F
管理番号 1290865
審判番号 不服2013-54  
総通号数 178 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-01-04 
確定日 2014-08-13 
事件の表示 特願2007-117866「マスク露光により三次元物体を作製する装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年11月15日出願公開、特開2007-298990〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は、平成19年4月27日(パリ条約による優先権主張、2006年4月28日、ドイツ、米国)の出願であって、平成24年8月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年1月4日に審判請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
その後、同年10月22日付けで当審による拒絶理由の通知がなされ、それに対して平成26年2月24日に意見書及び手続補正書が提出された。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成26年2月24日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認める。
「硬化性材料を硬化させて三次元物体の連続した断面領域を形成することにより、前記三次元物体を作製するための装置において:
電磁放射の作用で前記硬化性材料を硬化させることのできるエネルギーを入力するための画素(ピクセル)であって、互いに独立した所定数の前記画素(ピクセル)を備えたイメージングユニット;及びコンピュータ装置、IC及び/又はソフトウェアインプリメンテーション;を備えており、
前記画素(ピクセル)は、前記断面領域の夫々を形成するために、前記硬化性材料の造形面に前記エネルギーを供給するものであり、
前記コンピュータ装置、前記IC及び/又は前記ソフトウェアインプリメンテーションは、一つの断面領域を形成するための複数回の露光に用いられる一連の多重ラスターマスク(ビットマップ)の各々に基づいて前記エネルギーを前記造形面に供給させることにより、前記造形面に供給される前記エネルギーを制御する機能を有し、
前記一連の多重ラスターマスク(ビットマップ)は、前記一つの断面領域について、前記画素(ピクセル)によって供給される前記エネルギーを規定するものであり、前記コンピュータ装置、前記IC及び/又は前記ソフトウェアインプリメンテーションは、前記多重ラスターマスク(ビットマップ)にしたがって、前記イメージングユニットによって供給されるエネルギーに対する前記硬化性材料の一部の露光を制御し、前記硬化性材料の一部は、前記三次元物体の断面領域に対応する、装置。」

第3 引用刊行物
1.引用文献1
当審の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平5-304073号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。
(1)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、レジスト等の感応材料に所望パターンを形成する技術に係わり、特に感応材料に3次元構造を露光する3次元構造体の形成装置及び形成方法に関する。」
(2)「【0016】図1は、本発明の第1の実施例に係わる3次元構造体形成装置を示す概略構成図である。図中11は液晶シャッタ等からなる可変画像マスクであり、このマスク11には励起光源(図示せず)からの励起光12が照射される。マスク11を透過した光は、縮小投影光学系13により試料20上に縮小投影される。試料20は、シリコンウェーハ21上にフォトレジスト22を塗布したものである。試料20はステージ14に固定保持され、ステージ14はステージ駆動機構15により光軸方向に移動可能となっている。また、可変画像マスク11とステージ駆動機構15は、制御回路16により同期して駆動されるものとなっている。」
(3)「【0019】次に、上記レジストの3次元加工について、より具体的に説明する。図2は可変画像マスク11として液晶シャッタを用いた例である。液晶シャッタは、図2(a)に示すように微小画素がマトリックス状に配置されたものであり、外部からの駆動により各画素毎にオン・オフ(透過・遮光)が制御される。このようなマスクを用いることにより、例えば、図2(b)(c)(d)のように、透光部11aと遮光部11bからなる異なる任意のパターンを形成する形成することができる。
【0020】まず、液晶シャッタを図2(b)に示すパターンにし、結像位置を図3(a)に示すようにレジスト22の表面にする。この場合、レジスト22の表面が選択的に感光され硬化される。続いて、結像位置を移動させ表面よりも深い位置までレジスト22を硬化させていくと、図3(b)に示すように表面から所定の深さまで選択的に硬化部23が形成される。次いで、液晶シャッタを図2(c)に示すパターンにし、レジスト22を硬化させながらより深い位置まで結像位置を移動させ、図3(c)に示すように硬化部23を形成する。次いで、液晶シャッタを図2(d)に示すパターンにし、結像位置を移動させ、図3(d)に示すようにさらに深い位置に硬化部23を形成する。
【0021】その結果、レジスト22は3次元的に感光されることになる。そして、このレジスト22を現像すれば、図4(a)に示すように表面に複数の段差を有する形状のレジストパターンが得られる。この例では、レジストの露光は表面側から深い方向に行ったが、深い方から浅い方に順に行ってもよい。また、この例ではレジスト膜の内部には硬化されないで残る部分があるが、図5(a)(b)(c)のパターンを順次用いれば内部も硬化したパターンが得られる。」
(4)「【図2】


(5)「【図3】


(6)「【図4】


(7)「【図5】



2.引用発明
これらの記載事項を含む引用文献1全体の記載及び当業者の技術常識を総合すれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「微小画素がマトリックス状に配置され、外部からの駆動により各画素毎にオン・オフ(透過・遮光)が制御されることにより透光部(11a)と遮光部(11b)からなる異なる任意のパターンを形成することができる液晶シャッタからなる可変画像マスク(11)に励起光源からの励起光(12)が照射され、マスクを透過した光は、縮小投影光学系(13)によりシリコンウェーハ(21)上にフォトレジスト(22)を塗布した試料(20)上に縮小投影され、試料はステージ(14)に固定保持され、ステージはステージ駆動機構(15)により光軸方向に移動可能となっており、可変画像マスクとステージ駆動機構は、制御回路(16)により同期して駆動されるものとなっている3次元構造体の形成装置であって、
まず、液晶シャッタを第1のパターンにし、結像位置をレジストの表面にし、レジストの表面が選択的に感光され硬化され、
続いて、結像位置を移動させ表面よりも深い位置までレジストを硬化させていくと、表面から所定の深さまで選択的に硬化部(23)が形成され、
次いで、液晶シャッタを第2のパターンにし、レジストを硬化させながらより深い位置まで結像位置を移動させ硬化部を形成し、
次いで、液晶シャッタを第3のパターンにし、結像位置を移動させさらに深い位置に硬化部を形成する、
ことにより、レジストは3次元的に感光されることになる、
3次元構造体の形成装置。」

第4 対比・判断
1.対比
本願発明と、上記引用発明を対比する。
(1)引用発明の「フォトレジスト」は本願発明の「硬化性材料」に相当する。
以下同様に、
「3次元構造体」は「三次元物体」に、
「形成装置」は「作製するための装置」に、
「励起光」は「電磁放射」に、
「画素」は「画素」に、
「可変画像マスク」は「イメージングユニット」に、
「パターン」は「ラスターマスク」に、
「感光」は「露光」に、
それぞれ相当する。
(2)引用文献1の各図面を参酌すれば、引用発明の「3次元構造体」が「連続した断面領域を形成することにより」作成されていることは明らかである。
(3)引用発明の「画素」が「フォトレジストを硬化させることのできるエネルギーを入力」するためのものであって、同「可変画像マスク」が「互いに独立した所定数」の画素を備えることも自明(上記摘記事項(3)及び(4)参照)である。
(4)同様に、引用発明が「画素は断面領域の夫々を形成するために、フォトレジストの造形面にエネルギーを供給するものであ」ることも自明である。
(5)また、引用発明の「第1のパターン」、「第2のパターン」及び「第3のパターン」は、本願発明の「一連の多重ラスターマスク」に相当し、引用発明は、これら3つのパターンを用いて3回感光することにより所定の3次元構造体を形成している(上記摘記事項(3)及び各図面参照)から、形成される3次元構造体の一つの断面領域は3回の感光によって得られている。
すなわち、引用発明のこれら3つのパターンは「一つの断面領域を形成するための複数回の感光に用いられる」から、引用発明は本願発明の「一つの断面領域を形成するための複数回の露光に用いられる一連の多重ラスターマスクの各々に基づいて前記エネルギーを前記造形面に供給させること」に相当する構成を有する。
また、その結果「造形面に供給されるエネルギーを制御する」ことになるのは自明である。
(6)上記(5)のとおり、引用発明は、複数のパターンを順次使用することにより所定の3次元構造体を形成するから、それぞれの断面領域は複数のパターンを用いて形成されることになり、本願発明の「一連の多重ラスターマスクは、一つの断面領域について、画素によって供給されるエネルギーを規定するもの」に相当する構成を有する。
その場合、「一連の多重パターンにしたがって、可変画像マスクによって供給されるエネルギーに対するフォトレジストの一部の露光を制御し、フォトレジストの一部は、3次元構造体の断面領域に対応する」ことになるのは明らかである。

したがって両者は、
「硬化性材料を硬化させて三次元物体の連続した断面領域を形成することにより、前記三次元物体を作製するための装置において:
電磁放射の作用で前記硬化性材料を硬化させることのできるエネルギーを入力するための画素であって、互いに独立した所定数の前記画素を備えたイメージングユニットを備えており、
前記画素は、前記断面領域の夫々を形成するために、前記硬化性材料の造形面に前記エネルギーを供給するものであり、
一つの断面領域を形成するための複数回の露光に用いられる一連の多重ラスターマスクの各々に基づいて前記エネルギーを前記造形面に供給させることにより、前記造形面に供給される前記エネルギーを制御する機能を有し、
前記一連の多重ラスターマスクは、前記一つの断面領域について、前記画素(ピクセル)によって供給される前記エネルギーを規定するものであり、前記多重ラスターマスクにしたがって、前記イメージングユニットによって供給されるエネルギーに対する前記硬化性材料の一部の露光を制御し、前記硬化性材料の一部は、前記三次元物体の断面領域に対応する、装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

(相違点)
本願発明がエネルギー及び露光を制御する「コンピュータ装置、IC及び/又はソフトウェアインプリメンテーション」を備えているのに対して、引用発明がそのような構成を有しているかどうか不明な点。

2.判断
上記相違点について検討する。
硬化性材料を硬化させて三次元物体の連続した断面領域を形成することにより、前記三次元物体を作製するための装置において、「コンピュータ装置、IC及び/又はソフトウェアインプリメンテーション」を備えることは、ごく普通に行われる周知技術(引用発明の「制御回路」はそれを示唆している)である。
引用発明に当該周知技術を用いることにより、上記相違点に係る構成を採用することは、当業者が容易になしうる事項である。

そして、本願発明の作用・効果も、引用発明及び周知技術に基き、当業者が予測しうる範囲のものであって、格別なものではない。

以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-03-11 
結審通知日 2014-03-18 
審決日 2014-03-31 
出願番号 特願2007-117866(P2007-117866)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G03F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久保田 創  
特許庁審判長 神 悦彦
特許庁審判官 伊藤 昌哉
北川 清伸
発明の名称 マスク露光により三次元物体を作製する装置及び方法  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

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