• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) D06F
管理番号 1290897
審判番号 不服2012-1728  
総通号数 178 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-01-30 
確定日 2014-07-07 
事件の表示 特願2007-554455号「洗濯物を湿潤処理するための方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔2006年8月17日国際公開、WO2006/084548、平成20年8月7日国内公表、特表2008-529619号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2006年1月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2005年2月11日 ドイツ国、2005年8月12日 ドイツ国、2005年11月4日 ドイツ国)を国際出願日とする出願であって、平成23年9月21日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年9月29日)、これに対し、平成24年1月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。
そして、当審より平成24年10月18日付けで拒絶の理由が通知され、それに対して平成25年1月25日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項10に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成25年1月25日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項10に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「洗濯をするため、トンネル式洗濯装置(10)と、少なくとも1つの脱水装置とを備えた洗濯物を湿潤処理するための装置において、
前記トンネル式洗濯装置(10)が、前洗いゾーン(15)および主洗いゾーン(17)のみを備え、前記洗濯物は少なくとも1つの脱水装置にて濯がれ、
前記脱水装置は回転乾燥機(18)として構成されていることを特徴とする装置。」

第3 引用例
1.当審で通知した拒絶の理由に引用された刊行物である、特開昭52-154266号公報(以下「引用例1」という。)には、「連続洗滌装置」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は当審で付与。以下、同様。)

ア.1ページ左下欄17行?同右下欄1行
「本発明は、洗滌物を連続的に洗滌処理する連続洗滌装置に関するものであつて、洗滌処理能力を向上し得ると共に、洗滌物を効率良く処理することができる連続洗滌装置を提供せんとするものである。」
イ.1ページ右上欄3行?2ページ左上欄2行
「第1図は、本発明の連続洗滌装置を使用した連続洗滌処理設備の一例を示した概略図である。
図中、Aは洗滌物、Bは洗滌物運搬機、Cは洗滌物投入シユート、Dは洗滌ユニツト1を任意所要数連結した本発明の連続洗滌装置、Eは脱水機、Fは乾燥機である。
しかして、前記洗滌機ユニツト1は外筒胴2と、円筒状のバスケツト3とからなり、前記外筒胴2の前面板および後面板に透孔を設けると共に、前記外筒胴2中に受ローラー4を前記バスケツト3の同心円周上に3箇所設置し、一方前記バスケツト3の前面板および後面板に前記外筒胴2の透孔に挿入し得る洗滌物投入口部5および洗滌物吐出口部6を突設すると共に、バスケツト3の外周側にガイドレール7を敷設し、前記バスケツト3の吐出口部6を外筒胴2の透孔より突出させると共に、受ローラー4にガイドレール7を係合させて外筒胴2中にバスケツト3を回動自在に支持し、そのバスケツト3を駆動機構8により回動し得るようにする。」
ウ.2ページ右下欄2行?3ページ右上欄2行
「洗滌物Aを投入シユートCより1番目の洗滌ユニツト1Aのバスケツト3中に投入し、駆動機構8により前記バスケツト3を実線矢印方向に回転させてバスケツト3中の洗滌物を上昇落下を繰返させながら攪拌して洗滌処理する。そして、1番目の洗滌ユニツト1Aにおける一定時間の洗滌処理時間が終了したならば、バスケツト3を逆に破線矢印方向に数回転させると、バスケツト3中の洗滌物が仕切板13により掬い上げられて1番目の洗滌ユニツト1Aの吐出口6および2番目の洗滌ユニツト1Bの投入口5からバスケツト3中に投入される。次に、1番目の洗滌ユニツト1Aのバスケツト3中に新たな洗滌物を投入し、1番目および2番目の洗滌ユニツト1A,1Bのバスケツト3,3を実線矢印方向に回転させて一定洗滌板処理時間終了後逆に破線矢印方向に回転させ、2番目の洗滌ユニツト1B中の洗滌物を3番目の洗滌ユニツト1Cに、1番目の洗滌ユニツト1A中の洗滌物を2番目の洗滌ユニツト1Bにそれぞれ移送し、1番目の洗滌ユニツト1A中に新たな洗滌物を投入し、以下同様にして洗滌物を各洗滌ユニツト1A,1B,1C・・・において連続的に洗滌処理する。・・・略・・・そして、洗滌処理された洗滌物は最後の洗滌ユニツトの吐出口6より脱水機Eに移送されて脱水され、次に乾燥機Fにおいて乾燥される。
このように、本発明においては、洗滌ユニツトを任意所要数連結して洗滌物を連続的に洗滌処理するようにしたものであるから、洗滌処理能力が向上し、しかも洗滌ユニツトを洗滌物の汚れの度合に応じて増減することができると共に、各洗滌ユニツトが個々に駆動させることができるので、洗滌効率が良く、かつ洗滌ユニツトの空回りを防ぐことができる。」
記載事項ウによれば、洗滌処理された洗滌物は最後の洗滌ユニツトより脱水機に移送されて脱水されるのであるから、最後の洗滌ユニツトにおいて濯ぎが行われ、連続洗滌装置Dは順次洗滌から濯ぎまで行うものと認められる。

上記記載事項及び認定事項を総合して、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。

「円筒状のバスケツト3を有する複数の洗滌ユニツト1A,1B,1C・・・が連結されて洗滌物を連続的に洗滌処理する連続洗滌装置Dと、脱水機E、乾燥機F、とを備えた洗滌物を処理するための装置において、
前記連続洗滌装置Dが、複数の洗滌ユニツト1A,1B,1C・・・を備えており、順次洗滌から濯ぎまで行う装置。」

2.当審で通知した拒絶の理由に引用された刊行物である、実公昭40-34786公報(以下「引用例2」という。)には、「すすぎ洗い兼脱液装置」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア.1ページ左欄15?18行
「本案は二浴式洗濯方式において、洗濯物より洗剤汚液の除脱、すすぎ洗い及びすすぎ洗い液の洗濯物よりの除脱を一つの装置で行えるようにしたものである。」
イ.1ページ左欄19?24行
「本案の目的とする所は、従来の脱液機に小規模の改造を加え、これに適当な配管機構と、タンク、ポンプなどを設けることにより、比較的簡単且つ小規模な装置で、しかも比較的容易な操作で、上記一連の作業を能率的に行えるようにすることにある。」
ウ.1ページ左欄25?末行
「本案を図面について説明する。機台11に固定され、上方を開放した外胴1内に、上方を開放し、周壁に通液用の小孔2多数を穿つた内胴3を配設する。内胴3の底3_(1)の中心に、略内胴3の上端まで上方に突出した略円錐状の突出部4を設け、該部4に回転軸5を取付ける。突出部4の外側に之と小間隔を設けて略平行に、多数の噴液小孔7を有する噴液筒6を固定し、該筒6の上端部に、噴液筒6が回転出来、且つ液密を保つように導液管8の先端部を嵌合させる。
外胴1の底に排液管9の一端を開口させる。回転軸5を速度切換機構を介して電動機12で回転出来るようにする。排液管9を弁13を介して、洗剤汚液タンク14に連通させ、且つ該タンク14を送液ポンプ15を有する送液管16で、図示しない洗濯機の洗剤汚液タンクと連通させる。」
エ.1ページ右欄12行?2ページ左欄3行
「洗濯機で洗剤液によつて洗濯した洗濯物を内胴3内に入れ、電動機12により内胴3を高速回転させる。この際排液管9の弁13を開放し、分岐管17の弁18、導液管8の開閉弁23は閉鎖しておく。内胴3の高速回転により、洗濯物に含まれた洗剤液は遠心力で振り切られ、洗濯物より除脱される。除脱された洗剤液は排液管9より洗剤汚液タンク14に導かれる。該タンク14に洗剤液が溜つた場含には、適宜送液ポンプ15を作動させて洗剤液を排出する。・・・略・・・
洗濯物より洗剤液の除脱を終つた後、弁27、28 13を閉じ、弁20、開閉弁23を開放して、送液ポンプ21により、すすぎ洗い液タンク19内のすすぎ洗い液を、導液管8を介して噴液筒6に導く。これと共に内胴3の回転を低速回転に切換え、すすぎ洗い液を遠心力により噴液筒6の噴液小孔7より放射状に噴出させ、洗濯物を透過させると共に、外胴11にすすぎ洗い液を貯溜してすすぎ洗を行う。
すすぎ洗いを終つた後、送液ポンプ21の作動を停止し、開閉弁23を閉じ、すすぎ洗いの液の内胴3内への導入を停止する。これと同時に内胴3を高速回転させると共に、分岐管17の弁18を開き、排液管9、分岐管17を経て、外胴1内のすすぎ洗い液をすすぎ洗い液タンク19に回収しつつ、内胴3の回転による遠心力で洗濯物よりすすぎ洗い液を除脱するものである。洗濯物の乾燥後、内胴3の回転を停止し、洗濯物を内胴3より取出す。」
オ.2ページ右欄14?16行
「このため小規模な設備により能率的に二浴式洗濯を行い得るものでありながら、作業能率も良好である。」

上記記載事項エの「内胴3の回転による遠心力で洗濯物よりすすぎ洗い液を除脱するものである。洗濯物の乾燥後、内胴3の回転を停止し、洗濯物を内胴3より取出す」によれば、内胴3の回転による乾燥が行われるものと認められる。

上記記載事項及び認定事項を総合すると、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。
「洗濯機で洗剤液によつて洗濯した洗濯物を内胴3内に入れ、内胴3の高速回転により洗濯物より洗剤液の除脱を終った後、内胴3の低速回転によりすすぎ洗いを行い、すすぎ洗いを終つた後、内胴3の高速回転によりすすぎ洗い液を除脱し、内胴3の回転による乾燥が行われるすすぎ洗い兼脱液装置。」

第4 対比
本願発明と引用発明1とを対比すると、各文言の意味、機能または作用等からみて、引用発明1の「円筒状のバスケツト3を有する複数の洗滌ユニツト1A,1B,1C・・・が連結されて洗滌物を連続的に洗滌処理する連続洗滌装置D」は、本願発明の「トンネル式洗濯装置」に相当し、同様に、引用発明1の「脱水機E」は、本願発明の「脱水装置」に相当する。
そして、引用発明1において「洗滌物を処理する」ことは、洗滌物を洗滌処理することを含むから、本願発明の「洗濯物を湿潤処理する」ことに相当する。
また、引用発明1は洗滌物を処理するための装置であるから、洗濯するための装置ということができる。
そうすると、本願発明と引用発明1の一致点及び相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「洗濯をするため、トンネル式洗濯装置と、少なくとも1つの脱水装置とを備えた洗濯物を湿潤処理するための装置。」

[相違点1]
本願発明では、トンネル式洗濯装置が前洗いゾーン(15)および主洗いゾーン(17)のみを備え、洗濯物は少なくとも1つの脱水装置にて濯がれるのに対して、引用発明1では、連続洗滌装置Dは複数の洗滌ユニツト1A,1B,1C・・・を備えており、順次洗滌から濯ぎまで行うものである点。

[相違点2]
本願発明では、脱水装置は回転乾燥機(18)として構成されているのに対して、引用発明1では、脱水機Eと乾燥機Fを備えている点。

第5 当審の判断
上記相違点1及び2について検討する。
まず、引用発明1のような複数の洗滌ユニットで順次洗滌処理する連続洗滌装置においては、通常、洗滌(洗濯)はその上流側から前洗い(予洗い)、主洗い(本洗い)、すすぎを行う領域に分けて行われるものであり(必要ならば、特開平7-144084号公報(段落【0016】)、特開平7-674号公報(段落【0002】)、特公昭55-26880号公報(2欄14?16行)参照)、引用発明1の複数の洗滌ユニツトを前洗い、主洗い、すすぎのユニツトとすることは、当業者が適宜設定できることである。
次に、引用発明2において、「内胴3の高速回転により洗濯物より洗剤液の除脱を終った後、内胴3の低速回転によりすすぎ洗を行」うことは、洗濯の工程における濯ぎということができ、「すすぎ洗い液を除脱」することは、洗濯の工程における脱水ということができる。また、「すすぎ洗い兼脱液装置」は脱液が行われるから脱水装置ということができる。したがって、引用発明2は、洗濯物の濯ぎと脱水を行う脱水装置ということができる。
ところで、引用発明2は、作業を能率的に行えるようにするために、脱液装置、すなわち、脱水機を改造して、すすぎと脱水を一つの装置で行うようにしたもの(記載事項ア、イ)である。そして、作業を能率的に行うということは一般的な課題であって、引用発明1と同じ洗濯機の分野に属する引用発明2が検討の対象となることは明らかであるので、引用発明1において、引用発明2を採用する動機付けはあるといえる。なお、請求人は引用例2の装置は家庭用の脱液装置である旨主張しているが、その記載事項ア、イ、オからみて、事業所で用いられる装置であることは明らかであって、請求人の主張は採用できない。
してみると、引用発明2に接した当業者は、作業を能率的に行うべく引用発明1の脱水装置に洗濯物の濯ぎと脱水を行う脱水装置の適用を試みるものといえる。その際、引用発明1の連続洗滌装置で行っていたすすぎは、脱水装置で行うことになるから、連続洗滌装置は洗いのみを行うことになる。また、引用発明2の脱水装置は内胴3の回転による乾燥、すなわち、回転乾燥を行う装置であるから、回転乾燥機ということができる。
なお、本願発明において、脱水装置は回転乾燥機として特定されているが、ここでいう回転乾燥機は、明細書の記載を参酌すると、遠心分離式脱水機であって、引用発明2の内胴3の回転による装置と異なるものではない。
以上を総合すると、相違点1及び2に係る構成とすることは、引用発明1に引用発明2を適用することで、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願発明の奏する効果についてみても、引用発明1及び引用発明2から当業者が予測できた効果の範囲内のものである。

したがって、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 まとめ
以上のとおり、本願発明(請求項10に係る発明)は、引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-03-13 
結審通知日 2013-03-14 
審決日 2013-03-26 
出願番号 特願2007-554455(P2007-554455)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (D06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐々木 正章  
特許庁審判長 平上 悦司
特許庁審判官 長浜 義憲
森川 元嗣
発明の名称 洗濯物を湿潤処理するための方法および装置  
代理人 北村 修一郎  
復代理人 三宅 一郎  
復代理人 太田 隆司  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ