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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04B |
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管理番号 | 1290899 |
審判番号 | 不服2012-22119 |
総通号数 | 178 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-10-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-11-07 |
確定日 | 2014-08-15 |
事件の表示 | 特願2009- 63749「床用目地装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 9月30日出願公開、特開2010-216139〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は,平成21年3月17日の出願であって,平成24年9月25日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年11月7日に拒絶査定不服審判請求がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1及び2に係る発明は,平成24年6月11日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるところ,そのうち請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりである。 「目地部を介して設けられた左右の床躯体の一方の床躯体の目地部側に反目地部側が傾斜面に形成された目地プレートスライド支持凹部と、この目地プレートスライド支持凹部にスライド可能に支持される目地プレートの後端の両側部寄りの部位を支持する他方の床躯体の目地部側に固定された一対の筒状の支持部材と、この一対の筒状の支持部材に後端部が支持され、先端部が前記目地プレートスライド支持凹部に支持され、地震で目地部が狭くなると先端部が上方へ回動する目地プレートと、この目地プレートの後端の両側部寄りの中央部に上部が枢支ピンで、該目地プレートの回動が可能に枢支された前記一対の筒状の支持部材に遊挿される一対の柱状の支持杆と、前記目地プレートの後部側の底面に固定された後部側が下方へ順次突出する傾斜面状の目地プレートせり上げ部材とからなることを特徴とする床用目地装置。」 3.引用刊行物 (1)刊行物1 原査定の拒絶の理由に引用され,本願出願前に頒布された刊行物である,特開2007-70958号公報(以下,「刊行物1」という。)には,図面と共に,次の記載がある。 (1a)「【請求項1】 目地部が狭くなると目地部を覆う目地プレートが上方へ移動する床用目地装置において、前記目地プレートの後端部を支持する部材に固定された支持筒と、この支持筒に出没可能に収納された少なくとも1個以上の伸縮筒と、この少なくとも1個以上の伸縮筒内に先端部を除く部位がスライド移動可能に収納された先端部に取付けられた、前記目地プレートを枢支する枢支ピンを備える支持体とからなる目地プレート支持具を用いたことを特徴とする床用目地装置。 【請求項2】 省略。 【請求項3】 支持筒、少なくとも1個以上の伸縮筒および支持体は回動不能に伸縮できる多角形状で、かつ支持筒、少なくとも1個以上の伸縮筒および支持体が抜け脱しないようにそれぞれ抜け脱防止手段が設けられていることを特徴とする請求項1、2いずれかに記載の床用目地装置。」 (1b)「【0008】 (1)目地部が狭くなると目地部を覆う目地プレートが上方へ移動する床用目地装置において、前記目地プレートの後端部を支持する部材に固定された支持筒と、この支持筒に出没可能に収納された少なくとも1個以上の伸縮筒と、この少なくとも1個以上の伸縮筒内に先端部を除く部位がスライド移動可能に収納された先端部に取付けられた、前記目地プレートを枢支する枢支ピンを備える支持体とからなる目地プレート支持具を用いて構成されているので、目地プレート支持具によって目地プレートの先端部をスムーズに上下方向へ回動させることができるとともに、目地プレートが上方へ移動する場合には、支持体および、少なくとも1個以上の伸縮筒が伸長して、その移動をスムーズにさせることができる。 したがって、目地プレートの移動をスムーズに行なわせることができる。」 (1c)「【0014】 図1ないし図8に示す本発明を実施するための最良の第1の形態において、1は目地部2を介して設けられた一方の床躯体3の目地部側に形成された支持凹部4および、他方の床躯体5の目地部側に反目地部側が傾斜面6に形成されたスライド支持凹部7を覆う本発明の床用目地装置で、この床用目地装置1は前記支持凹部4に後端部が支持され、前記スライド支持凹部7に先端部が支持された目地プレート8と、この目地プレート8の後端部を先端部が上下方向に回動するとともに、後端部を上下移動可能に支持する目地プレート支持支持具(注:「目地プレート支持支持具」とは「目地プレート支持具」の誤記と認める。)9、9と、前記目地プレート8の先端部に先端部が上下方向に、回動可能にヒンジ部材10を介して取付けられたカバープレート11とで構成されている。 【0015】 前記目地プレート8は後端部の両側部寄りの部位にコ字状の取付け凹部12、12が形成され、先端部の底面が傾斜面13に形成された金属材製の浅皿状の目地プレート本体14と、この目地プレート本体14内に充填されたモルタルやセメント15および、表面を覆うタイル等の床化粧板16とで構成されている。 なお、前記コ字状の取付け凹部12、12の上面には必要に応じてカバーを取り付けたり、あるいは上面が覆われたコ字状の取付け凹部12、12であっても良い。 【0016】 前記目地プレート支持具9、9は図3ないし図5に示すように、前記支持凹部4に複数本のタッピングビス等のビス17で下部のフランジ部18が固定される上部内壁面に内側へ突出するストッパー片19が形成された多角形状、本発明を実施する形態では正方形状の支持筒20と、この支持筒20に出没可能に収納された下部外周部に、前記支持筒20のストッパー片19と当接するストッパー片21が形成され、上部内壁面に内側へ突出する上部ストッパー片22が形成された正方形状の伸縮筒23と、この伸縮筒23内に先端部を除く部位がスライド移動可能に収納された先端部に、前記目地プレート8の取付け凹部12の上部寄りの部位に枢支ピン24で枢支される枢支部25が形成され、下部外周部に前記伸縮筒23の上部ストッパー片22と当接するストッパー片26が形成された支持体27とで構成されている。 なお、前記ストッパー片19、21、上部ストッパー片22およびストッパー片26は抜け脱防止手段28である。 【0017】 上記構成の床用目地装置1は、通常時には図1および図2に示すように、一方の床躯体3の支持凹部4と他方の床躯体5のスライド支持凹部7とを目地プレート8で覆った状態となっている。 地震等によって目地部2が狭くなるように両方の床躯体3、5が揺れ動いた場合、図6に示すように目地プレート8の先端部が他方の床躯体5のスライド支持凹部7の傾斜面6によって上方へ押し上げられるように回動し、さらに大きく移動すると図7に示すように、目地プレート8の後端部が上方へ移動する。 この時、目地プレート支持具9、9の支持体27、27および伸縮筒23、23が上方へスライド移動して、その移動をスムーズにさせる。 目地部2が元の状態に戻ると、目地プレート支持具9、9および目地プレート8は自動的に元の状態へ戻る。 目地部2が広くなるように両方の床躯体3、5が揺れ動くと、図8に示すように一方の床躯体3によって、目地プレート支持具9、9を介して目地プレート8の先端部を他方の床躯体5のスライド支持凹部7上をスライド移動して、その揺れ動きを吸収する。」 (1d)上記記載事項(1c)を参照して,図1をみると,一方の床躯体3と他方の床躯体5は,目地部2を介して左右に設けられていることが,また,目地プレート支持具9,9は一対あり,つまり,目地プレート支持具9を構成する支持筒20と伸縮筒23と支持体27も一対あることが,さらに,図5をみると,支持体27は柱状であることが,図1,6をみると,目地プレート8後端部の両側部寄りの部位に形成された取付け凹部12の上部寄りの部位に枢支ピン24で柱状の支持体27の先端部が,目地プレート8の回動が可能に枢支されていることが,いずれも明らかである。 これら記載事項(1a)乃至(1d)及び図面の記載から,刊行物1には,次の発明が記載されているものと認められる。 「目地部2を介して左右に設けられた一方の床躯体3の目地部側に形成された支持凹部4および,他方の床躯体5の目地部側に反目地部側が傾斜面6に形成されたスライド支持凹部7と,前記支持凹部4に後端部が支持され前記スライド支持凹部7に先端部がスライド可能に支持されて,地震等によって目地部2が狭くなると先端部が上方へ回動する目地プレート8と,この目地プレート8の後端部を先端部が上下方向に回動するとともに,後端部を上下移動可能に支持する一対の目地プレート支持具9,9とからなり,この目地プレート支持具9,9は,前記目地プレート8の後端部を支持する支持凹部4に下部のフランジ部18が固定される正方形状の一対の支持筒20と,この支持筒20に出没可能に収納された正方形状の一対の伸縮筒23と,この伸縮筒23内に先端部を除く部位がスライド移動可能に収納され,先端部が前記目地プレート8後端部の両側部寄りの部位に形成された取付け凹部12の上部寄りの部位に枢支ピン24で,目地プレート8の回動が可能に枢支される一対の柱状の支持体27とで構成されていて,目地プレート支持具9,9によって目地プレート8の先端部をスムーズに上下方向へ回動させることができるとともに,目地プレート8が上方へ移動する場合には,支持体27及び伸縮筒23が伸長して,スムーズにその移動をさせることができる床用目地装置。」(以下,「刊行物1記載の発明」という。) (2)刊行物2 原査定の拒絶の理由に引用され,本願出願前に頒布された刊行物である,特開2003-221877号公報(以下,「刊行物2」という。)には,図面と共に,次の記載がある。 (2a)「【0008】図1ないし図7に示す本発明の第1の実施の形態において、1は目地部2を介して設けられた左右の建物3、3の床躯体3a、3a間の目地部を覆う本発明の床用目地装置で、この床用目地装置1は前記左右の建物3、3の一方の目地部側の床躯体3aに形成された反目地部側が傾斜面4の目地プレート支持ガイド凹部5と、前記左右の床躯体3a、3aの他方の目地部側床躯体3aに上面が該他方の床躯体3aの上面とほぼ同一面で、上方へ移動可能な取付け具6を介して後端部が取付けられ、先端部が前記目地プレート支持ガイド凹部5を覆い、目地部2が狭くなると先端部が一方の床躯体3aへ乗り上げることができる目地プレート7と、前記目地部2に位置する前記目地プレート7の両側面寄りの底面に形成された一方の床躯体3a側より他方の床躯体3a側が順次下方へ突出する傾斜面8の押し上げ片9、9と、この押し上げ片9、9と当接し、目地部2が狭くなると前記目地プレート7を押し上げる、前記一方の床躯体3aの目地部側に必要に応じて取付けられた目地プレート押し上げスベリ支承としてのローラー10、10と、前記目地プレート7の後端および先端部の上部に枢支ピン11、11で枢支された端部ガイドプレート12、12とで構成されている。」 4.対比・判断 本願発明において,「この目地プレートの後端の両側部寄りの中央部に上部が枢支ピンで」とある,「両側部寄りの中央部」とは,どこを指すのか不明確であるが,平成26年1月9日付けFAXにおける,「両側部寄りの部位」の誤記であるとの主張を認めて対比・判断する。 本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると, 刊行物1記載の発明の「他方の床躯体5」は,本願発明の「一方の床躯体」に相当しており, 以下同様に, 「一方の床躯体3」は,「他方の床躯体」に, 「スライド支持凹部7」は,「目地プレートスライド支持凹部」に, 「一方の床躯体3の目地部側に形成された支持凹部4」「(支持凹部4)に下部のフランジ部18が固定される」は,「他方の床躯体の目地部側に固定された」に, 「地震等によって目地部2が狭くなると」は,「地震で目地部が狭くなると」に, 「支持筒20」は,「筒状の支持部材」に, 「支持筒20に出没可能に収納された正方形状の一対の伸縮筒23と,この伸縮筒23内に先端部を除く部位がスライド移動可能に収納され」は,「筒状の支持部材に遊挿され」に, 「支持体27」は,「支持杆」に,それぞれ相当する。 そして,本願発明において,「目地プレートの後端の両側部寄りの部位を支持する・・・一対の筒状の支持部材」,「この一対の筒状の支持部材に後端部が支持され・・・る目地プレート」,「この目地プレートの後端の両側部寄りの部位に上部が枢支ピンで,該目地プレートの回動が可能に枢支された前記一対の筒状の支持部材に遊挿される一対の柱状の支持杆」とあるが,詳細な説明及び,特に図2,4?6をみると,目地プレート7の後端部は,この目地プレート7の後端の両側部寄りの部位に上部が枢支ピンで枢支され,筒状の支持部材6に遊挿された一対の柱状の支持杆9を介して,一対の筒状の支持部材6に支持されていることから,該事項は,刊行物1記載の発明の,「この目地プレート8の後端部を先端部が上下方向に回動するとともに,後端部を上下移動可能に支持する一対の目地プレート支持支持具9,9とからなり,この目地プレート支持具9,9は,前記目地プレート8の後端部を支持する支持凹部4に下部のフランジ部18が固定される正方形状の一対の支持筒20と,この支持筒20に出没可能に収納された正方形状の一対の伸縮筒23と,この伸縮筒23内に先端部を除く部位がスライド移動可能に収納され,先端部が前記目地プレート8後端部の両側部寄りの部位に形成された取付け凹部12の上部寄りの部位に枢支ピン24で,目地プレート8の回動が可能に枢支される一対の柱状の支持体27とで構成されてい」るという事項に相当する。 したがって,両者は,下記の点で一致している。 「目地部を介して設けられた左右の床躯体の一方の床躯体の目地部側に反目地部側が傾斜面に形成された目地プレートスライド支持凹部と,この目地プレートスライド支持凹部にスライド可能に支持される目地プレートの後端の両側部寄りの部位を支持する他方の床躯体の目地部側に固定された一対の筒状の支持部材と,この一対の筒状の支持部材に後端部が支持され,先端部が前記目地プレートスライド支持凹部に支持され,地震で目地部が狭くなると先端部が上方へ回動する目地プレートと,この目地プレートの後端の両側部寄りの部位に上部が枢支ピンで,該目地プレートの回動が可能に枢支された前記一対の筒状の支持部材に遊挿される一対の柱状の支持杆とからなる床用目地装置。」 そして,以下の点で相違している。 本願発明では,目地プレートの後部側の底面に固定された後部側が下方へ順次突出する傾斜面状の目地プレートせり上げ部材が設けられているのに対し, 刊行物1記載の発明では,目地プレートの後部側の底面に目地プレートせり上げ部材は設けられていない点。 上記,相違点について検討する。 刊行物2をみると,刊行物2には,目地部2を介して設けられた左右の建物3,3の床躯体3a,3a間の目地部を覆う床用目地装置において,一方の目地部側の床躯体3aに形成された反目地部側が傾斜面4の目地プレート支持ガイド凹部5(本願発明の「目地プレートスライド支持凹部」に相当。)と,前記左右の床躯体3a、3aの他方の目地部側床躯体3aに後端部が取付けられ,先端部が前記目地プレート支持ガイド凹部5を覆い(本願発明の「支持され」に相当。),目地部2が狭くなると先端部が一方の床躯体3aへ乗り上げる(本願発明の「上方へ回動する」に相当。)ことができる目地プレート7とが設けられており,前記目地部2に位置する前記目地プレート7(本願発明の「目地プレートの後部側」に相当。)の底面には,一方の床躯体3a側より他方の床躯体3a側が順次下方へ突出する(本願発明の「後部側が下方へ順次突出する」に相当。)傾斜面8の押し上げ片9(本願発明の「傾斜面状の目地プレートせり上げ部材」に相当。)が形成されていることが記載されており,刊行物1及び2記載の発明は,何れも,目地部を介して設けられた左右の床躯体の一方の床躯体の目地部側に反目地部側が傾斜面に形成された目地プレートスライド支持凹部と,先端部が前記目地プレートスライド支持凹部に支持され,目地部が狭くなると先端部が上方へ回動する目地プレートとを備えた,目地部を介して設けられた左右の建物の床躯体間の目地部を覆う床用目地装置という共通の機能を有する発明であるので,刊行物1記載の発明の目地プレートの後部側の底面に上記技術を採用し,本願発明の相違点に係る発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到し得ることである。 なお,本願発明において,「筒状の支持部材」と「柱状の支持杆」とが直接遊挿されているとの限定はないが,もしそうであったとしても,刊行物1記載の発明において,伸縮筒23を設けずに支持筒20に柱状の支持体27をスライド移動可能に収納することは,設計的事項にすぎない。 そして,本願発明全体の効果は,刊行物1及び2記載の発明から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものということができない。 したがって,本願発明は,刊行物1及び2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 5.むすび 以上のとおり,本願発明は特許を受けることができないから,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-05-30 |
結審通知日 | 2014-06-10 |
審決日 | 2014-06-25 |
出願番号 | 特願2009-63749(P2009-63749) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(E04B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 星野 聡志 |
特許庁審判長 |
杉浦 淳 |
特許庁審判官 |
高橋 三成 住田 秀弘 |
発明の名称 | 床用目地装置 |
代理人 | 三浦 光康 |