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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1290981
審判番号 不服2012-5509  
総通号数 178 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-03-25 
確定日 2014-08-12 
事件の表示 特願2006-524199「局所適用性産物およびその使用」拒絶査定不服審判事件〔平成17年3月3日国際公開、WO2005/018585、平成19年2月22日国内公表、特表2007-503402〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.出願の経緯
本願は、2004年8月23日(優先権主張 2003年8月25日 欧州特許庁)を国際出願日とする特許出願であって、平成22年11月18日付けで拒絶理由が通知され、平成23年3月18日に意見書及び手続補正書が提出され、同年11月29日付けで拒絶査定され、平成24年3月25日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、同年6月11日付けで前置審査の結果が報告され、当審において、平成25年8月27日付けで審尋され、同年11月5日に回答書が提出されたものである。

2.本願発明について
本願の請求項1?12に係る発明は、平成24年3月25日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?12にそれぞれ記載された事項により特定されるとおりのものと認める。ここで、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

【請求項1】
a)単一または複数の治療的または助成的活性成分、および、
b)活性成分を爪およびその周縁皮膚に浸透させる浸透促進作用を有する式Iの単一または複数の化合物
R-O-R_(1) (I)
ここで、
Rは5?8個の炭素原子をもつ直鎖または分岐鎖アルキル基を表し、
R_(1)はホルミル基またはアセチル基を表す、
を含むか、
c)テルペンまたは油含有テルペン、アルコール類、8?21個の炭素原子を有する脂肪酸のエステル類、ポリグリコール類、界面活性剤、尿素、抗酸化剤および錯化剤のグループから選ばれる単一または複数の生理学的に適合性の補助薬
を更に含み、
ラッカーまたは皮膜生成性添加剤を含むことのない、爪疾患の治療および爪医療のための局所適用性産物。

3.原査定の拒絶の理由の概要
原査定は、本願は、「平成22年11月18日付け拒絶理由通知書に記載した理由2,3によって、拒絶をすべき」というものであるところ、当該理由2は
「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。」というものであり、併せて次の文献が引用されている。
3.米国特許第6344190号明細書
(なお、上記拒絶理由通知書には全部で7件の文献が引用されているが、上記文献3以外は省略する。)

4.当審の判断
(1)刊行物に記載された事項
引用文献3(米国特許第6344190号明細書)には、次の事項が記載されている。
ア.「1.局所担体中の有効量の成分であるカンファー、メントール、ユーカリ油及びチモールを、皮膚糸状菌が阻止されるまで爪に複数回に分けて塗布することを含む、ヒトの感染した爪における皮膚糸状菌を阻止する方法。
前記局所担体は、該成分の溶媒であり、該爪及び皮膚に吸収され、グリース又はゼリーではなく、
ここで、組成物により阻止される該皮膚糸状菌がAcremonium chrysogenum、A.strictum、Aspergillus flavus、A.terreus、Candida albicans、C.kruseii、C.parapsilosis、Epidermophyton floccosum、Fulsarium oxysporum、F.proliferatum、Microsporum canis、Scopulariopsis brevicaulis、Scytalidium dimidiatum、S.hyalinum、Trichophyton mentagrophytes、及びT.rubrumである。
5.該溶媒がアルコールのエステルであるクレーム1の方法。
6.該溶媒が酢酸イソアミルであるクレーム1の方法。
7.ヒトの感染した爪における皮膚糸状菌を阻止する方法であり、局所担体中の成分を、該皮膚糸状菌が阻止されるまで該爪に複数回に分けて塗布することを含む。
前記成分は、カンファー、メントール、ユーカリ油及びチモールであり、
ここで、該組成物は、Acremonium chrysogenum、A.strictum、Aspergillus flavus、A.terreus、Candida albicans、C.kruseii、C.parapsilosis、Epidermophyton floccosum、Fulsarium oxysporum、F.proliferatum、Microsporum canis、Scopulariopsis brevicaulis、Scytalidium dimidiatum、S.hyalinum、Trichophyton mentagrophytes、及びT.rubrumに対して、該局所担体中に該組成物の少なくとも750μg/mlの最小阻止濃度(MIC_(100))を有する。」(16欄のクレーム)

イ.「目的
したがって、爪真菌症を治療するために使用され、非常に顕著な改善をもたらす局所組成物と方法を提供することは、本発明の目的である。さらに、米国規制下でGRAS(一般に安全と認められる)である天然資源からの植物材料を使用する組成物を提供することは、本発明の目的である。さらにまた、安価である組成物を提供することは、本発明の目的である。」(3欄23?30行)

ウ.「実施例2
種々の試験生物を、20mLの各培地(YMG、PDA、麦芽寒天、又はサブロー寒天)を含むペトリ皿で培養した。各生物の成熟したプレートからの細胞を、食塩水(5mL)中に分散し、5×10^(4)CFU/mLとなるように希釈した。次に、この分散液1μLを、対応する培地と寒天(1mL)を含む24穴プレートに接種するために使用した。試験化合物を、DMSO、アセトン/酢酸エチル(1:1)又はアセトン/酢酸イソアミル(1:1)に溶解し、5000?1000μg/mLの範囲の濃度で接種プレートに加え(20μL)、27℃で7日間培養した。培養期間経過後、各試験生物ごとに試験化合物のMIC_(100)(対照と比較した試験生物の完全な阻害を引き起こす試験化合物の濃度)を記録した。20μLのDMSO、アセトン/酢酸エチル(1:1)又はアセトン/酢酸イソアミル(1:1)を接種プレートに添加することにより対照を用意した。
手順1:1000?250μg/mlのM2^(*)での24穴寒天プレートを使用するMIC_(100)の測定
種々の試験生物を、20mLの各培地(YMG、PDA、麦芽寒天、又はサブロー寒天)を含むペトリ皿で培養する。
各生物の成熟したプレートからの細胞を、食塩水(5mL)中に分散し、5×10^(6)CFU/mLとなるように希釈する。
次に、この分散液50μLを、対応する培地と寒天(1mL)を含む24穴プレートに接種するために使用する。
試験化合物を、DMSO、アセトン/酢酸エチル(1:1)又はアセトン/酢酸イソアミル(1:1)に溶解し、1000?250μg/mLの範囲の濃度で接種プレートに加え(20μL)、27℃で7日間培養する。
培養期間経過後、各試験生物ごとに試験化合物のMIC_(100)(対照と比較した試験生物の完全な阻害を引き起こす試験化合物の濃度)を記録する。
20μLのDMSO、アセトン/酢酸エチル(1:1)又はアセトン/酢酸イソアミル(1:1)を接種プレートに添加することにより対照を用意した。^(*)Ca、M、T及びEucalyptus citriodoraの混合物。
手順2:24穴寒天プレートを使用するMIC_(100)の測定-1000?125pg/mLのM2
種々の試験生物を、20mLの各培地(YMG、PDA、麦芽寒天、又はサブロー寒天)を含むペトリ皿で培養する。
各生物の成熟したプレートからの細胞を、食塩水(5mL)中に分散し、5×10^(6)CFU/mLとなるように希釈する。
次に、この分散液1μLを、対応する培地と寒天(1mL)を含む24穴プレートに接種するために使用する。
試験化合物を、DMSO、アセトン/酢酸エチル(1:1)又はアセトン/酢酸イソアミル(1:1)に溶解し、1000?125μg/mLの範囲の濃度で接種プレートに加え(20μL)、27℃で7日間培養する。
培養期間経過後、各試験生物ごとに試験化合物のMIC_(100)(対照と比較した試験生物の完全な阻害を引き起こす試験化合物の濃度)を記録する。
20μLのDMSO、アセトン/酢酸エチル(1:1)又はアセトン/酢酸イソアミル(1:1)を接種プレートに添加することにより対照を用意した。
手順3:5000?1000μg/mLのM2での24穴寒天プレートを使用するMIC_(100)の測定
種々の試験生物を、20mLの各培地(YMG、PDA、麦芽寒天、又はサブロー寒天)を含むペトリ皿で培養する。
各生物の成熟したプレートからの細胞を、食塩水(5mL)中に分散し、5×10^(6)CFU/mLとなるように希釈する。
次に、この分散液1μLを、対応する培地と寒天(1mL)を含む24穴プレートに接種するために使用する。
試験化合物を、DMSO、アセトン/酢酸エチル(1:1)又はアセトン/酢酸イソアミル(1:1)に溶解し、5000?1000μg/mLの範囲の濃度で接種プレートに加え(20μL)、27℃で7日間培養する。
培養期間経過後、各試験生物ごとに試験化合物のMIC_(100)(対照と比較した試験生物の完全な阻害を引き起こす試験化合物の濃度)を記録する。
20μLのDMSO、アセトン/酢酸エチル(1:1)又はアセトン/酢酸イソアミル(1:1)を接種プレートに添加することにより対照を用意した。
結果は表3及び4に示される。
表3
?????????????????????????????????
MIC_(100)の測定で使用されるサンプルのリスト
コード 説明
?????????????????????????????????
C DMSOコントロール
A/E アセトン/酢酸エチル(1:1)
A/I アセトン/酢酸イソアミル(1:1)
Ca カンファー
M メントール
T チモール
4 Eucalyptus citriodora
M2 DMSO中のCa、M、T及び4(4サンプル)の混合物
M3 A/E中のCa、M、T及び4(4サンプル)の混合物
M4 A/I中のCa、M、T及び4(4サンプル)の混合物
?????????????????????????????????
表4
???????????????????????????
足爪真菌症を惹起する生物に対する
混合物M2、M3及びM4のMIC_(100)(μg/mL)
生物 M2 M3 M4
???????????????????????????
Acremonium chrysogenum 750 1000 1000
A.strictum 5000 5000 5000
Aspergillus flavus 5000 5000 5000
A.terreus 5000 5000 5000
Candida albicans 1000 2000 2000
C.kruseii 1000 2000 3000
C.parapsilosis 5000 5000 5000
Epidermophyton floccosum 2000 2000 2000
Fulsarium oxysporum 3000 4000 4000
F.proliferatum 3000 4000 4000
Microsporum canis 750 2000 2000
Scopulariopsis brevicaulis 5000 5000 5000
Scytalidium dimidiatum 4000 5000 5000
S.hyalinum 5000 5000 5000
Trichophyton mentagrophytes 3000 4000 4000
T.rubrum 2000 3000 4000
???????????????????????????」(5欄48行?7欄23行並びに表3及び表4)

エ.「実施例3
局所担体として本発明で使用される溶媒は、好ましくはアルコールのエステル(例えば酢酸イソアミル)である。これらの担体は、例えばマニキュア除去液で使用され、組成物に果実香を与える。
市販のVapo Rubsで使用されているグリース又はゼリーは重要でなく、それらが衣類にしみをつけることから実際有害である。本発明の局所担体は、蒸発するか皮膚や爪に吸収される溶媒で提供される。このすべては当業者によく知られている。」(7欄61行?8欄4行)

(2)刊行物に記載された発明
引用文献3には、摘示アに、「局所担体中の有効量の成分であるカンファー、メントール、ユーカリ油及びチモールを、皮膚糸状菌が阻止されるまで爪に複数回に分けて塗布することを含む、ヒトの感染した爪における皮膚糸状菌を阻止する方法」、「前記局所担体は、該成分の溶媒であり、該爪及び皮膚に吸収され、グリース又はゼリーではない」及び「該溶媒が酢酸イソアミルである」と、さらに、摘示イに「爪真菌症を治療するために使用され、非常に顕著な改善をもたらす局所組成物と方法」と記載されていることからみて、
「局所担体としての酢酸イソアミル中に有効量の成分であるカンファー、メントール、ユーカリ油及びチモールを含む爪真菌症を治療するための局所組成物」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

(3)対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、
引用発明の「有効量の成分であるカンファー、メントール、ユーカリ油及びチモール」は本願発明の「a)単一又は複数の治療的又は助成的活性成分」に相当する。
また、引用発明の「酢酸イソアミル」は、本願発明の式I中、Rが5個の炭素を持つ分岐鎖アルキル基に、R_(1)がアセチル基の化合物に該当するから、「b)式Iの単一又は複数の化合物」に相当する。
さらに、引用発明の「爪真菌症を治療するための局所組成物」は、本願発明の「爪疾患の治療および爪医療のための局所適用性産物」に相当する。
そして、引用発明は、例えば実施例2(摘示ウ)をみても、「ラッカー又は皮膜生成性添加剤を含んでいないことは明らかである。
そうすると、本願発明と引用発明とは、
「a)単一または複数の治療的または助成的活性成分、および、
b)式Iの単一または複数の化合物
R-O-R_(1) (I)
ここで、
Rは5?8個の炭素原子をもつ直鎖または分岐鎖アルキル基を表し、
R_(1)はホルミル基またはアセチル基を表す、
を含む、
ラッカーまたは皮膜生成性添加剤を含むことのない、爪疾患の治療および爪医療のための局所適用性産物。」
の点で一致するものの、以下の点で一応相違する。

相違点:本願発明では、「b)式Iの単一又は複数の化合物」が「活性成分を爪およびその周縁皮膚に浸透させる浸透促進作用を有する」ものとされているが、引用発明では、「b)式Iの単一又は複数の化合物」に相当する酢酸イソアミルのそのような作用について特定されていない点。

上記相違点について検討する。
本願発明でいう「活性成分を爪およびその周縁皮膚に浸透させる浸透促進作用を有する」というのは、「b)式Iの単一又は複数の化合物」の性質を示したものである。そして、本願明細書には、「b)式Iの単一又は複数の化合物」に「酢酸イソアミル」が含まれることは明細書段落0019や段落0062(実施例1)、段落0065(実施例4)に記載されているとおりである。
ところで、「活性成分を爪およびその周縁皮膚に浸透させる浸透促進作用を有する」という性質は、そのことが知られているか否かにかかわらず、「b)式Iの単一又は複数の化合物」、すなわち「酢酸イソアミル」が活性成分を含む組成物中に使用されていれば必然的に発揮されるものである。
そして、引用発明が「酢酸イソアミル」を溶媒として使用するものであることは上記したとおりであるから、引用発明においてもその酢酸イソアミルは「活性成分を爪およびその周縁皮膚に浸透させる浸透促進作用を有する」化合物であるといえる。
そうすると、上記相違点は実質的に相違点ではなく、本願発明は引用発明と差異がないものである。
したがって、本願発明は引用文献3に記載された発明である。

5.請求人の主張について
(1)請求人は、審判請求書において、「引用文献3、5の具体例(実施例2)では、局所担体の溶媒として、アセトンと酢酸イソアミルとの1:1の混合物が使用されている。しかし、アセトン等のケトン溶媒は、今回の補正により、本願請求項1発明の成分c)の補助薬から除外された。従って、引用文献3、5に具体的に記載された発明は、前記浸透促進作用を有する成分b)と成分c)の組合せにおいて、成分c)としてケトン類を含むことのない本願請求項1発明とは、局所適用性産物の組成自体が相違している。……。しかも、引用文献3、5に具体的に記載された発明では、酢酸イソアミルはアセトンとの混合溶媒の形態で使用されている。かかる混合溶媒は、精油(試験化合物)の皮膚糸状菌阻害試験に供するための溶媒であって、本願請求項1発明の範囲外にある。」と、また回答書において、「引用文献3,5の実施例2では、局所担体としてアセトンと酢酸イソアミルの等量混合溶媒が使用されている。しかし、アセトン等のケトン溶媒は、審判請求時の補正により、本願請求項1に記載の成分c)の補助薬から除外された。それ故に、本願発明において任意の成分c)を使用する場合、成分b)と成分c)の組合せに関して、成分c)にケトン類が含まれることはないので、引用文献3,5の実施例2に開示された組成物は、本願発明の局所適用性産物とは組成成分が相違している。」と主張している。
確かに、審判請求時の補正(すなわち、平成24年3月25日付け手続補正書による補正)において、c)成分の「補助薬」中にケトンは含まれておらず、一方、明細書段落0042の「併用補助剤」の例示中に「ケトン」が含まれていることと対比すれば、c)成分の「補助薬」からケトンは除外されているものと理解できる。
しかしながら、c)成分は任意成分であることがその記載から明らかであるから、本願発明の「爪疾患の治療および爪医療のための局所適用性産物」は、(i)a)及びb)を含むもの、又は、(ii)a)及びb)を含み、c)を更に含むもの、という構成からなるものと解される。
ここで、例えば、(i)の構成のように「a)及びb)」を含む構成をみれば、c)成分の「補助薬」から「ケトン」を除外したとしても、「補助薬」でない成分としてケトンを含むことについては何ら影響を受けるものではない。そして、そのような構成は、本願明細書にも「適当な液剤メディエーターはアセトン……である。」(段落0051)と記載されているとおり許容されているものである。(なお、この段落0051の記載は、併用補助薬について記載した段落0042?0050とは明らかに区別されているものである。)
なお、(ii)の構成であっても同様である。
そうすると、請求人の上記主張は採用できない。

(2)請求人は、審判請求書において、「審判請求人は、上申書によって、成分b)の化合物(I)が優れた浸透促進作用を有することを示す実験成績証明書を後日提出したと考えています。何卒、かかる上申書の提出をご容認下さいますようお願い申し上げます。」と、また回答書において、「本願明細書には、局所適用性産物の薬理試験データ等の試験結果が明示されていない。そこで、審判請求人は、審判請求書でも言及致しました通り、手続補足書によって、式Iの化合物が優れた浸透促進作用を有することを示す実験成績証明書を提出する予定です。そのために、本件代理人は、回答書提出後間を置かず、上記証明書を作成すべく速やかに薬理試験に着手するよう審判請求人に要請致します。つきましては、本件審判の審理を暫くの間ご猶予下さいますようお願い申し上げますと共に、手続補足書が提出されたときは、実験成績証明書を有意義にご利用下さいますようお願い申し上げます。」と主張している。
しかしながら、上記したとおり、引用発明には「b)式Iの単一又は複数の化合物」としての「酢酸イソアミル」が使用されていることは事実であり、本願発明と引用発明ではその点において一致しているのであるから、「b)式Iの単一又は複数の化合物」が優れた浸透促進作用を有するか否かは新規性の判断において問題とはならない。請求人は、提出を希望する実験成績証明書について、漠然と「成分b)の化合物(I)が優れた浸透促進作用を有することを示す」と述べるのみであるが、仮に、請求人が、「b)式Iの単一又は複数の化合物」として実施例で用いられている「酢酸イソアミル」が優れた浸透促進作用を有することを実験成績証明書で明らかにしても、そのことは、「酢酸イソアミル」を使用する引用発明においても同じく優れた浸透促進作用を有していることを示すことになるだけであり、引用発明が「酢酸イソアミル」を使用しているという事実はそのまま残るので、新規性の判断に何ら影響を与えるものではない。
したがって、請求人が提出を希望している実験成績証明書は、上記審決の判断を覆すことのできるものとは考えられず、その提出を求める必要性は認められない。

6.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明及び原査定における他の拒絶の理由について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって、上記結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-03-18 
結審通知日 2014-03-19 
審決日 2014-04-02 
出願番号 特願2006-524199(P2006-524199)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清野 千秋田村 直寛  
特許庁審判長 松浦 新司
特許庁審判官 星野 紹英
齋藤 恵
発明の名称 局所適用性産物およびその使用  
代理人 市之瀬 宮夫  

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