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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01B
管理番号 1291312
審判番号 不服2013-9106  
総通号数 178 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-05-17 
確定日 2014-08-26 
事件の表示 特願2010-117270「リボン状の端を有する可撓性相互接続ケーブル」拒絶査定不服審判事件〔平成22年10月14日出願公開、特開2010-232182〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

この出願は、平成14年 2月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理平成13年 3月30日及び12月18日、米国)を国際出願日とする特願2002-578521号の一部を平成22年 5月21日に新たな特許出願としたものであって、平成24年 6月14日付けの拒絶理由が通知され、同年12月21日付けの手続補正がされ、平成25年 1月11日付けの拒絶査定がされ、これに対し、同年 5月17日付けの手続補正とともに、査定を不服とする本件審判が請求されたものである。

2.本願発明の認定

この出願の請求項13に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成25年 5月17日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項13に記載された次の事項により特定されるとおりものと認められる。

「ケーブルアセンブリであって、
第1の端及びその反対側の第2の端を各々が有する複数のワイヤーを備え、
前記複数のワイヤーは、前記第1の端と第2の端との間に中間部分を有し、前記中間部分は互いに他から離されており、
内側編組シールドを含み、前記複数のワイヤーの前記中間部分をきつく圧縮した束の直径よりも大きい直径を有する孔を画定しているシースを更に備え、
前記複数のワイヤーの前記中間部分は、前記内側編組シールドに対してゆるく支持されている、
ことを特徴とするケーブルアセンブリ。」

3.原査定の理由

これに対し、原審の拒絶査定の理由の一つは、
引用例1:特開昭57- 92705号公報
引用例2:特開昭62-126505号公報
周知例3:特開平 3-155011号公報
周知例4:実公平 6- 11599号公報
を引用し、
「本願発明は、その優先権主張の基礎とされた先の出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された発明に基いて、その優先権主張の基礎とされた先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」
というものである。

4.引用例及び周知例の記載

引用例1

摘示1-1(1頁左欄5?15行)
1.平形ケーブルの形をした多数のリッツ線が、当該リッツ線の端部に接触接続されるプラグボードとつづけて接続できる電気装置用接続ケーブルにおいて、平形ケーブル各端部(1)の間にあるリッツ線部分は、相互に分離され、1つの丸形ケーブルに整然と納められた複数リッツ線束(3')から構成され、該リッツ線束(3')はいっしょにまとめてフレキシブルな管状被覆体(4)によってゆるく包囲されていることを特徴とする電気装置用接続ケーブル。

摘示1-2(2頁右下欄9?11行)
リッツ線束3を被覆4によってゆるく包囲することによって、接続ケーブルは非常に良好なフレキシビリティが得られる。

摘示1-3(図)


引用例2

摘示2-1(5頁右上欄16行?左下欄8行)
第4?8図はケーブル組立体66を示し、本発明による平ケーブルの他の実施例による平ケーブル20Aを示す。平ケーブル20Aの部品の平ケーブル20の部品に相当するものは平ケーブル20の部品の符号に添字Aを附して示す。第4図に示す通り、平ケーブル20Aは長手方向に複数の離間したセクションに分割し、第1のケーブルセクション68においては導線26Aは所定間隔の平行関係にキャリアフィルム24Aによって保持され取付け層44Aを導線ジャケットに融着し、複数の第2のケーブルセクション70では導線は保持されない。第2のセクション70内の導線は第4,5図に示す捩った組、又は導線を組としない構成とする。

摘示2-2(5頁左下欄20行?右下欄17行)
平ケーブル2OAはケーブル組立体66の一部である時は非平面に変形し、好適な例でほぼ円形とする。ケーブル組立体66は外側ジャケット72を有しケーブル20Aの外周を囲む装置を形成してケーブルをほぼ円形断面に保持する。外側ジャケットは丈夫な耐摩耗性熱可塑性材料で形成し、ジャケット72の外面に離間した記号74、例えば円形の線等を設けて第1のケーブルセクション68の存在を示す。使用者は容易に第1のケーブルセクションを知り、外側ジャケットを剥し、ケーブルセクションを平面状態に戻してコネクタ22を取付ける。ケーブル組立体66内に保持されたケーブル20Aの円形はケーブル組立体を敷設する時に多くの利点がある。丸い形状は寸法が小さく所要方向に曲げることが容易であり、平ケーブルはケーブル面以外の方向に曲げられない。更に敷設に際して、例えば導管内をケーブル組立体を引張る時に損傷が少ない。

摘示2-3(6頁左上欄9?18行)
他の例として、ケーブル組立体66は変形した平ケーブル20Aを囲む金属シールドを設ける。シールドはシュポン社のポリエステルフィルムの商品名マイラー等のフォイル78、及び又は金属の網80を有する。網80の下に接してフォイル78を配置することによって適切なシールドとなり、網を被せることによって無線周波数漏洩は最小となり、電気的ノイズは最小となる。網は低周波数ノイズの透過を限定する機能を有し、フォイルの存在は高周波数ノイズの透過を限定する。

摘示2-4(6頁右上欄8行?左下欄1行)
第4図は本発明によるケーブルの他の実施例によるケーブル組立体の外側保護シースを除去して円形から平面状とし第1のケーブルセクションの導線は平行でキャリアフィルムによって保持され離間した第2のケーブルセクションはキャリアフィルムがなく導線が組として捩った構成の平面図、第5図は第4図のケーブル組立体の一部を除去しケーブル全長を円形とした図、第6図は第5図の6-6線に沿い第1のケーブルセクションを中央強度部材を囲んでスパイラル状とした断面図、第7図は第5図の7-7線に沿い第2のケーブルセクションを通る断面図、第8図は第4図のケーブルの他の実施例による平ケーブルを畳んだ断面図である

摘示2-5(第4?8図)


周知例3

摘示3-1(2頁左上欄1?16行)
(発明の目的)
本発明の目的は可撓性に富んだシールドケーブルの製造方法を提供することにある。
(課題を解決するための手段)
本発明のシールドケーブルの製造方法は、第1図のようにケーブルAの外周に二以上の編組用線材Cを回転しながら供給して同ケーブルAの外周に金属編組Bを施すようにしたシールドケーブルの製造方法において、前記ケーブルAをバイブ状のガイド1内に通し、前記編組用線材Cを同ガイド1の外周面上に回転させながら供給して同ガイド1の外周面に内径がケーブルAの外径よりも大きい金属編組Bを構成し、同金属編組Bを前記ガイド1から押出すか引抜くかしてケーブルAの外周に隙間Eを介して被せるようにしたことを特徴とするものである。

摘示3-2(第1図)


周知例4

摘示4-1(4欄1?8行)
電磁波シールド用スリーブの素材として、糸の表面に、金属箔を隣接する金属箔と重ならないよう、隙間を空けて、螺旋状に巻き付けた複数糸を用いてスリーブ状に編組したことにより、被電磁波遮蔽物、例えば電線を、かかるスリーブの中にとおすだけで、短時間に確実に電磁波からシールド処理することができた。
その他、被電磁波遮蔽物の径、形状に対する汎用性を持たすこともできた。

5.発明の対比

本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「電気装置用接続ケーブル」「平形ケーブルの形をした両端部」「多数のリッツ線」「リッツ線部分」「相互に分離された」「管状被覆体」は、それぞれ本願発明の「ケーブルアセンブリ」「第1の端及びその反対側の第2の端」「複数のワイヤー」「中間部分」「互いに他から離され」「シース」に相当し、また、引用発明の「複数リッツ線束」が、本願発明の「複数のワイヤーの前記中間部分をきつく圧縮した束」の直径よりも大きい直径を有することは明らかだから、本願発明のうち、
「ケーブルアセンブリであって、
第1の端及びその反対側の第2の端を各々が有する複数のワイヤーを備え、
前記複数のワイヤーは、前記第1の端と第2の端との間に中間部分を有し、前記中間部分は互いに他から離されており、
前記複数のワイヤーの前記中間部分をきつく圧縮した束の直径よりも大きい直径を有する孔を画定しているシースを更に備える、
ケーブルアセンブリ。」
の点は、引用発明との差異にはならず、両者は次の点で相違する。

相違点:本願発明のシースが、「内側編組シールドを含み、複数のワイヤーの中間部分は、前記内側編組シールドに対してゆるく支持されている」のに対し、引用発明の管状被覆体は、内側編組シールドを含まず、多数のリッツ線のリッツ線部分は、管状被覆体によってゆるく包囲されている点。

6.相違点の判断

(1)引用例2には、導線が平行に保持された第1のケーブルセクションと、導線を保持しない第2のケーブルセクションを有するケーブル組立体(摘示2-1)において、ケーブルを所要方向に曲げられるように、ケーブルをほぼ円形断面に保持する外側ジャケットを形成すること(摘示2-2)に加え、電気的ノイズを最小とするため、該外側ジャケットの内側に金属網等の金属シールドを設けること(摘示2-3)が記載され、第7図には、導線の第2のケーブルセクションが、この金属シールドにゆるく支持されていること(摘示2-4,2-5)も図示されている。
してみると、引用発明の「リッツ線」「平形ケーブルの形をした両端部」「リッツ線部分」「電気装置用接続ケーブル」「管状被覆体」が、それぞれその目的や構造から見て、上記「導線」「第1のケーブルセクション」「第2のケーブルセクション」「ケーブル組立体」「外側ジャケット」に相当することは明らかだから、引用発明において、管状被覆体に、リッツ線のリッツ線部分をゆるく支持する内側金属網シールドを設けること、すなわち、上記相違点を解消することは、電気的ノイズを最小とするため、当業者が容易になし得た設計変更といえる。

(2)請求人は、原審意見書及び審判請求書にて、金属シールドは、通常、ワイヤーの周りに巻き付けることにより形成されるものであるから、引用例2の金属シールドは、ワイヤーの束の周りにきつく巻き回されたものであって柔軟性がないものであると主張している。
しかしながら、金属シールドを、ワイヤーの周りに巻き付けることなく形成すること(摘示3-1,3-2,4-1)も知られており、さらに、そもそも引用例2の金属シールドは、ケーブルを所要方向に曲げるために形成される外側ジャケットに付加されるものであるから、ケーブルの柔軟性が悪化するような方法で形成されているとは認められない。
したがって、引用例2の金属シールドを、図示されているとおりにワイヤーの束をゆるく支持するものと解することに誤りはなく、上記主張は採用できない。

7.むすび

以上のとおり、本願発明は、その優先権主張の基礎とされた先の出願前に日本国内において頒布された引用例1,2に記載された発明に基いて、その優先権主張の基礎とされた先の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、原査定の理由により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-03-31 
結審通知日 2014-04-02 
審決日 2014-04-15 
出願番号 特願2010-117270(P2010-117270)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 増山 慎也  
特許庁審判長 山田 靖
特許庁審判官 小柳 健悟
大橋 賢一
発明の名称 リボン状の端を有する可撓性相互接続ケーブル  
代理人 大塚 文昭  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 西島 孝喜  
代理人 平野 誠  
代理人 辻居 幸一  
代理人 上杉 浩  
代理人 須田 洋之  

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