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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08G
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08G
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 C08G
管理番号 1291330
審判番号 不服2013-5769  
総通号数 178 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-03-29 
確定日 2014-08-28 
事件の表示 特願2010-538317「ポリチオエーテルイミド及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 7月 9日国際公開、WO2009/082942、平成23年 3月 3日国内公表、特表2011-506691〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、国際出願日である平成20年12月19日(優先権主張 2007年12月19日、2008年3月14日 いずれも中華人民共和国(CN))を出願日とする特許出願であって、平成24年2月21日付けで拒絶理由が通知され、同年8月23日に手続補正書および意見書が提出されたが、同年11月26日付けで拒絶査定がなされた。
これに対し、平成25年3月29日に拒絶査定に対する不服の審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、同年9月24日付けで前置報告がなされ、同年10月24日付けで当審において審尋がなされたが、請求人から回答書が提出されなかったものである。

第2.平成25年3月29日提出の手続補正書による補正の却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成25年3月29日提出の手続補正書による手続補正を却下する。
[理由]
(1)本件手続補正の内容
平成25年3月29日提出の手続補正書による手続補正(以下、「本件手続補正」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲に

「 【請求項1】
下記の構造式Iで表される構造を有することを特徴とする、ポリチオエーテルイミド。
【化1】

ただし、重合体のフタルイミド構造単位におけるチオエーテル結合の位置は3-位または4-位であり、
有機基Rは置換または非置換の脂肪族ジアミンまたは芳香族ジアミンであり、
前記ポリチオエーテルイミドは、30℃で濃度0.5g/dLのメタクレゾールにおいて測定されるインヘレント粘度が0.13dL/g?1.90dL/gで、重量平均分子量が3,000?200,000で、多分散性が1.8?5.4である。
【請求項2】
前記有機基Rは、1,6-ヘキサンジアミン、1,6-シクロヘキサンジアミン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンジジン、3,3’-ジメチルベンジジン、2,2’-ジメチルベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルイソプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、2,2’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-ジフェノキシ-4’’,4’’’-ビフェニル、4,4’-ジアミノ-ジフェノキシ-4’’,4’’’-ジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノ-ジフェノキシ-4’’,4’’’-ジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノ-ジフェノキシ-4’’,4’’’-ジフェニルイソプロパン、2,4-トルイレンジアミン、5-メチル?4,6?ジエチル?1,3?フェニレンジアミン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2’,3,3’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン及びこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載のポリチオエーテルイミド。
【請求項3】
下記の構造式IIで表されるクロロ無水フタル酸またはニトロ無水フタル酸異性体を原料として用い、0.5モル当量の二置換アミンであるNH_(2)RNH_(2)と反応させ、生成した二置換フタルイミドをさらに等モル当量のアルカリ金属硫化物とカップリング反応させ、請求項1に記載の構造式Iで表されるポリチオエーテルイミド樹脂を生成することを特徴とする、ポリチオエーテルイミドの製造方法。
【化2】
(当審注:化学構造式とその説明の記載を省略。)

【請求項4】
前記原料であるクロロ無水フタル酸またはニトロ無水フタル酸異性体において、3-置換無水フタル酸と4-置換無水フタル酸のモル比は99.9:0.1?0.1:99.9の範囲にあり、
クロロ無水フタル酸またはニトロ無水フタル酸と0.5モル当量の二置換アミンであるNH_(2)RNH_(2)との反応は極性非プロトン性溶媒中で行い、或いは氷酢酸中で加熱還流して行い、或いはベンゼン系溶媒と極性非プロトン性溶媒との混合溶媒中で加熱還流して行い、反応温度の範囲は100℃?200℃であるステップ1と、二置換フタルイミドと等モル当量のアルカリ金属硫化物とのカップリングは極性非プロトン性溶媒中で行い、或いはベンゼン系溶媒と極性非プロトン性溶媒との混合溶媒中で行い、前記反応は反応触媒の存在下で行い、或いは触媒なしで行い、反応温度の範囲は80℃?220℃であるステップ2と、の二つのステップで行われることを特徴とする、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記極性非プロトン性溶媒は、N,N’-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホトリアミド(HMPA)またはスルホランであり、
前記ベンゼン系溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレンまたはクロロベンゼンから選ばれ、
前記アルカリ金属硫化物は、無水硫化リチウム、硫化カリウムまたは硫化ナトリウムであり、
前記有機基Rは置換または非置換の脂肪族ジアミンまたは芳香族ジアミンであることを特徴とする、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記有機基Rは、1,6-ヘキサンジアミン、1,6-シクロヘキサンジアミン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンジジン、3,3’-ジメチルベンジジン、2,2’-ジメチルベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルイソプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、2,2’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-ジフェノキシ-4’’,4’’’-ビフェニル、4,4’-ジアミノ-ジフェノキシ-4’’,4’’’-ジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノ-ジフェノキシ-4’’,4’’’-ジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノ-ジフェノキシ-4’’,4’’’-ジフェニルイソプロパン、2,4-トルイレンジアミン、5-メチル?4,6?ジエチル?1,3?フェニレンジアミン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2’,3,3’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン及びこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項5に記載のポリチオエーテルイミド。
【請求項7】
前記二置換フタルイミドをアルカリ金属硫化物とカップリング反応させる場合、少なくとも1種の重合反応の末端封止剤を用いて反応の重合度及び最終の重合体の分子量を制御することを特徴とする、請求項4に記載の製造方法。
【請求項8】
前記末端封止剤は、下記の構造式IIIで表される構造を有するアリール化合物であることを特徴とする、請求項7に記載の製造方法。
【化3】
(当審注:化学構造式とその説明の記載を省略。)

前記末端封止剤は、3?クロロフェニル-t-ブチルケトン、3?フルオロフェニル-t-ブチルケトン、4?クロロベンゾフェノン、3?ニトロベンゾフェノン、4-ニトロフェニルメチルスルホン、4-フルオロフェニルフェニルスルホン、2-ヨードニトロベンゼン、4-ブロモフェニルアゾベンゼン、4-フルオロピリジン、3?クロロ安息香酸、1-ニトロ?4?トリフルオロメチルベンゼン、1-クロロ?3?トリフルオロメチルベンゼン、N-フェニル?3?クロロフタルイミド、N-フェニル?4?フルオロフタルイミド、N-メチル?3?クロロフタルイミド、N-メチル?4?ニトロフタルイミド、N-ブチル?3?クロロフタルイミド、N-シクロへキシル?4?クロロフタルイミドまたはこれらの2種以上の混合物である。
【請求項9】
請求項3に記載の構造式IIで表されるクロロ無水フタル酸またはニトロ無水フタル酸異性体を原料として用い、0.5モル当量の有機ジアミンであるNH_(2)RNH_(2)と反応させ、生成した二置換フタルイミドをさらに等モル当量の硫黄とカップリング反応させ、請求項1に記載の構造式Iで表されるポリチオエーテルイミド樹脂を生成することを特徴とする、ポリチオエーテルイミドの製造方法。
【請求項10】
前記原料であるクロロ無水フタル酸またはニトロ無水フタル酸異性体において、3-置換無水フタル酸と4-置換無水フタル酸のモル比は99.9:0.1?0.1:99.9の範囲にあり、
クロロ無水フタル酸またはニトロ無水フタル酸と0.5モル当量の有機ジアミンとを反応させて二置換のフタルイミドを製造し、該当反応は極性非プロトン性溶媒中で行い、或いは氷酢酸中で加熱還流して行い、或いはベンゼン系溶媒と極性非プロトン性溶媒との混合溶媒中で加熱還流して行い、或いは加熱溶融で行い、反応温度の範囲は100℃?350℃であるステップ1と、二置換フタルイミドと等モル当量の硫黄とをカップリング反応させてポリチオエーテルイミドを製造し、ただし、硫黄の使用量のモル数は相応の二置換フタルイミドの使用量のモル数に対して0.90倍?1.30倍であり、該当反応は還元剤、触媒及び反応助剤の作用によって行う必要があり、直接に極性非プロトン性溶媒中で行い、或いはベンゼン系溶媒と極性非プロトン性溶媒との混合溶媒中で行い、該当反応の温度範囲は60℃?260℃であるステップ2と、の二つのステップで行われることを特徴とする、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記極性非プロトン性溶媒は、N,N’-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホトリアミド(HMPA)、ジフェニルスルホンまたはスルホランであることを特徴とする、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記ベンゼン系溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレンまたはクロロベンゼンから選ばれ、
前記有機基Rは、1,2-ヘキサンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,6-シクロヘキサンジアミン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンジジン、3,3’-ジメチルベンジジン、2,2’-ジメチルベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルイソプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、2,2’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-ジフェノキシ-4’’,4’’’-ビフェニル、4,4’-ジアミノ-ジフェノキシ-4’’,4’’’-ジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノ-ジフェノキシ-4’’,4’’’-ジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノ-ジフェノキシ-4’’,4’’’-ジフェニルイソプロパン、2,4-トルイレンジアミン、5-メチル?4,6?ジエチル?1,3?フェニレンジアミン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2’,3,3’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン及びこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種の置換または非置換の脂肪族ジアミンまたは芳香族ジアミンであり、
前記二置換フタルイミドと硫黄とのカップリング重合反応における還元剤は、ギ酸塩、蓚酸塩、ヒドラジン類、ヒドロキシルアミン、金属単体類、水素化物、アンモニア、水素及びこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種であり、これらの還元剤の使用量のモル数は相応の硫黄の使用量のモル数に対して0.2倍?6倍であり、
前記二置換フタルイミドと硫黄とのカップリング重合反応における助剤と触媒は、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩、水酸化物塩基、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、ハロゲン化物、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化リチウム、フッ化カリウム、ヨウ化ナトリウム及びこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種であり、これらの反応助剤と触媒の使用量のモル数は相応の硫黄の使用量のモル数に対して0.02倍?3倍であり、
前記二置換フタルイミドと硫黄とのカップリング重合反応は不活性ガス雰囲気下で行い、不活性ガス雰囲気は窒素或いはアルゴンから選ばれることを特徴とする、請求項10に記載の製造方法。
【請求項13】
前記二置換フタルイミドを硫黄とカップリング重合反応させる場合、少なくとも1種の重合反応の末端封止剤を用いて反応の重合度及び最終の重合体の分子量を制御することを特徴とする、請求項10に記載の製造方法。
【請求項14】
前記末端封止剤は、下記の構造式IIIで表される構造を有するアリール化合物であることを特徴とする、請求項13に記載の製造方法。
【化4】
(当審注:化学構造式とその説明の記載を省略。)

前記末端封止剤は、3?クロロフェニル-t-ブチルケトン、3?フルオロフェニル-t-ブチルケトン、4?クロロベンゾフェノン、3?ニトロベンゾフェノン、4-ニトロフェニルメチルスルホン、4-フルオロフェニルフェニルスルホン、2-ヨードニトロベンゼン、4-ブロモフェニルアゾベンゼン、4-フルオロピリジン、3?クロロ安息香酸、1-ニトロ?4?トリフルオロメチルベンゼン、1-クロロ?3?トリフルオロメチルベンゼン、N-フェニル?3?クロロフタルイミド、N-フェニル?4?フルオロフタルイミド、N-メチル?3?クロロフタルイミド、N-メチル?4?ニトロフタルイミド、N-ブチル?3?クロロフタルイミド、N-シクロへキシル?4?クロロフタルイミドまたはこれらの2種以上の混合物であり、これら末端封止剤の使用量のモル数は相応の二置換フタルイミドの使用量のモル数に対して0.01倍?0.15倍である。
【請求項15】
前記ポリチオエーテルイミドは、示差走査熱量測定(DSC)により測定されるガラス転移点が200℃?350℃であり、測定はPerkin Elmer Diamond DSCを用いてアンモニア雰囲気下で20℃/分の加熱速度プログラムによる二次加熱データを使用し、
前記ポリチオエーテルイミドは、Physica MCR?301回転式レオメーターにより380℃・1000S-1で測定される粘度が500ポアズ?100,000ポアズであり、
前記ポリチオエーテルイミドは、Instron model 5567引張試験機により室温・5mm/minの速度で測定される薄膜引張強度が60MPa?200MPaであり、破断伸度が5%?40%であることを特徴とする、請求項3?14のいずれかに記載の製造方法。」

とあったものを、

「 【請求項1】
下記の構造式Iで表される構造を有することを特徴とする、ポリチオエーテルイミド。
【化1】

ただし、重合体のフタルイミド構造単位におけるチオエーテル結合の位置は3-位または4-位であり、
Rは脂肪族ジアミン構造または芳香族ジアミン構造の有機基であり、
前記ポリチオエーテルイミドは、30℃で濃度0.5g/dLのメタクレゾールにおいて測定されるインヘレント粘度が0.13dL/g?1.90dL/gで、重量平均分子量が3,000?200,000で、多分散性が1.8?5.4である。
【請求項2】
前記脂肪族アミンまたは芳香族アミンは、1,2-ヘキサンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,6-シクロヘキサンジアミン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンジジン、3,3’-ジメチルベンジジン、2,2’-ジメチルベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルイソプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、2,2’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-ジフェノキシ-4’’,4’’’-ビフェニル、4,4’-ジアミノ-ジフェノキシ-4’’,4’’’-ジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノ-ジフェノキシ-4’’,4’’’-ジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノ-ジフェノキシ-4’’,4’’’-ジフェニルイソプロパン、2,4-トルイレンジアミン、5-メチル?4,6?ジエチル?1,3?フェニレンジアミン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2’,3,3’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン及びこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載のポリチオエーテルイミド。
【請求項3】
下記の構造式IIで表されるクロロ無水フタル酸またはニトロ無水フタル酸異性体を原料として用い、0.5モル当量の二置換アミンであるNH_(2)RNH_(2)と反応させ、生成した二置換フタルイミドをさらに等モル当量のアルカリ金属硫化物とカップリング反応させ、請求項1に記載の構造式Iで表されるポリチオエーテルイミド樹脂を生成することを特徴とする、ポリチオエーテルイミドの製造方法。
【化2】
(当審注:化学構造式とその説明の記載を省略。)

【請求項4】
前記原料であるクロロ無水フタル酸またはニトロ無水フタル酸異性体において、3-置換無水フタル酸と4-置換無水フタル酸のモル比は99.9:0.1?0.1:99.9の範囲にあり、
クロロ無水フタル酸またはニトロ無水フタル酸と0.5モル当量の二置換アミンであるNH_(2)RNH_(2)との反応は極性非プロトン性溶媒中で行い、或いは氷酢酸中で加熱還流して行い、或いはベンゼン系溶媒と極性非プロトン性溶媒との混合溶媒中で加熱還流して行い、反応温度の範囲は100℃?200℃であるステップ1と、二置換フタルイミドと等モル当量のアルカリ金属硫化物とのカップリングは極性非プロトン性溶媒中で行い、或いはベンゼン系溶媒と極性非プロトン性溶媒との混合溶媒中で行い、前記反応は反応触媒の存在下で行い、或いは触媒なしで行い、反応温度の範囲は80℃?220℃であるステップ2と、の二つのステップで行われることを特徴とする、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記極性非プロトン性溶媒は、N,N’-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホトリアミド(HMPA)またはスルホランであり、
前記ベンゼン系溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレンまたはクロロベンゼンであり、
前記アルカリ金属硫化物は、無水硫化リチウム、硫化カリウムまたは硫化ナトリウムであることを特徴とする、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記Rは、1,6-ヘキサンジアミン、1,6-シクロヘキサンジアミン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンジジン、3,3’-ジメチルベンジジン、2,2’-ジメチルベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルイソプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、2,2’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-ジフェノキシ-4’’,4’’’-ビフェニル、4,4’-ジアミノ-ジフェノキシ-4’’,4’’’-ジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノ-ジフェノキシ-4’’,4’’’-ジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノ-ジフェノキシ-4’’,4’’’-ジフェニルイソプロパン、2,4-トルイレンジアミン、5-メチル?4,6?ジエチル?1,3?フェニレンジアミン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2’,3,3’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン及びこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種の脂肪族ジアミン構造または芳香族ジアミン構造の有機基であることを特徴とする、請求項4に記載の製造方法。
【請求項7】
前記二置換フタルイミドをアルカリ金属硫化物とカップリング反応させる場合、少なくとも1種の重合反応の末端封止剤を用いて反応の重合度及び最終の重合体の分子量を制御することを特徴とする、請求項4に記載の製造方法。
【請求項8】
前記末端封止剤は、下記の構造式IIIで表される構造を有するアリール化合物であることを特徴とする、請求項7に記載の製造方法。
【化3】
(当審注:化学構造式とその説明の記載を省略。)

前記末端封止剤は、3?クロロフェニル-t-ブチルケトン、3?フルオロフェニル-t-ブチルケトン、4?クロロベンゾフェノン、3?ニトロベンゾフェノン、4-ニトロフェニルメチルスルホン、4-フルオロフェニルフェニルスルホン、2-ヨードニトロベンゼン、4-ブロモフェニルアゾベンゼン、4-フルオロピリジン、3?クロロ安息香酸、1-ニトロ?4?トリフルオロメチルベンゼン、1-クロロ?3?トリフルオロメチルベンゼン、N-フェニル?3?クロロフタルイミド、N-フェニル?4?フルオロフタルイミド、N-メチル?3?クロロフタルイミド、N-メチル?4?ニトロフタルイミド、N-ブチル?3?クロロフタルイミド、N-シクロへキシル?4?クロロフタルイミドまたはこれらの2種以上の混合物である。
【請求項9】
請求項3に記載の構造式IIで表されるクロロ無水フタル酸またはニトロ無水フタル酸異性体を原料として用い、0.5モル当量の有機ジアミンであるNH_(2)RNH_(2)と反応させ、生成した二置換フタルイミドをさらにほぼ等モル当量の硫黄とカップリング反応させ、請求項1に記載の構造式Iで表されるポリチオエーテルイミド樹脂を生成することを特徴とする、ポリチオエーテルイミドの製造方法。
【請求項10】
前記原料であるクロロ無水フタル酸またはニトロ無水フタル酸異性体において、3-置換無水フタル酸と4-置換無水フタル酸のモル比は99.9:0.1?0.1:99.9の範囲にあり、
クロロ無水フタル酸またはニトロ無水フタル酸と0.5モル当量の有機ジアミンとを反応させて二置換のフタルイミドを製造し、該当反応は極性非プロトン性溶媒中で行い、或いは氷酢酸中で加熱還流して行い、或いはベンゼン系溶媒と極性非プロトン性溶媒との混合溶媒中で加熱還流して行い、或いは加熱溶融で行い、反応温度の範囲は100℃?350℃であるステップ1と、二置換フタルイミドとほぼ等モル当量の硫黄とをカップリング反応させてポリチオエーテルイミドを製造し、ただし、硫黄の使用量のモル数は相応の二置換フタルイミドの使用量のモル数に対して0.90倍?1.30倍であり、該当反応は還元剤、触媒及び反応助剤の作用によって行う必要があり、直接に極性非プロトン性溶媒中で行い、或いはベンゼン系溶媒と極性非プロトン性溶媒との混合溶媒中で行い、該当反応の温度範囲は60℃?260℃であるステップ2と、の二つのステップで行われることを特徴とする、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記極性非プロトン性溶媒は、N,N’-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホトリアミド(HMPA)、ジフェニルスルホンまたはスルホランであり、
前記ベンゼン系溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレンまたはクロロベンゼンであることを特徴とする、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記Rは、1,2-ヘキサンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,6-シクロヘキサンジアミン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンジジン、3,3’-ジメチルベンジジン、2,2’-ジメチルベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルイソプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、2,2’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-ジフェノキシ-4’’,4’’’-ビフェニル、4,4’-ジアミノ-ジフェノキシ-4’’,4’’’-ジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノ-ジフェノキシ-4’’,4’’’-ジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノ-ジフェノキシ-4’’,4’’’-ジフェニルイソプロパン、2,4-トルイレンジアミン、5-メチル?4,6?ジエチル?1,3?フェニレンジアミン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2’,3,3’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン及びこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種の脂肪族ジアミン構造または芳香族ジアミン構造の有機基であることを特徴とする、請求項10に記載の製造方法。
【請求項13】
前記二置換フタルイミドと硫黄とのカップリング重合反応における還元剤は、ギ酸塩、蓚酸塩、ヒドラジン類、ヒドロキシルアミン、金属単体類、水素化物、アンモニア、水素及びこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種であり、これらの還元剤の使用量のモル数は相応の硫黄の使用量のモル数に対して0.2倍?6倍であり、
前記二置換フタルイミドと硫黄とのカップリング重合反応における助剤と触媒は、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩、水酸化物塩基、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、ハロゲン化物、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化リチウム、フッ化カリウム、ヨウ化ナトリウム及びこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種であり、これらの反応助剤と触媒の使用量のモル数は相応の硫黄の使用量のモル数に対して0.02倍?3倍であり、
前記二置換フタルイミドと硫黄とのカップリング重合反応は不活性ガス雰囲気下で行い、不活性ガス雰囲気は窒素或いはアルゴンから選ばれることを特徴とする、請求項10に記載の製造方法。
【請求項14】
前記二置換フタルイミドを硫黄とカップリング重合反応させる場合、少なくとも1種の重合反応の末端封止剤を用いて反応の重合度及び最終の重合体の分子量を制御することを特徴とする、請求項10に記載の製造方法。
【請求項15】
前記末端封止剤は、下記の構造式IIIで表される構造を有するアリール化合物であることを特徴とする、請求項14に記載の製造方法。
【化4】
(当審注:化学構造式とその説明の記載を省略。)

前記末端封止剤は、3?クロロフェニル-t-ブチルケトン、3?フルオロフェニル-t-ブチルケトン、4?クロロベンゾフェノン、3?ニトロベンゾフェノン、4-ニトロフェニルメチルスルホン、4-フルオロフェニルフェニルスルホン、2-ヨードニトロベンゼン、4-ブロモフェニルアゾベンゼン、4-フルオロピリジン、3?クロロ安息香酸、1-ニトロ?4?トリフルオロメチルベンゼン、1-クロロ?3?トリフルオロメチルベンゼン、N-フェニル?3?クロロフタルイミド、N-フェニル?4?フルオロフタルイミド、N-メチル?3?クロロフタルイミド、N-メチル?4?ニトロフタルイミド、N-ブチル?3?クロロフタルイミド、N-シクロへキシル?4?クロロフタルイミドまたはこれらの2種以上の混合物であり、これら末端封止剤の使用量のモル数は相応の二置換フタルイミドの使用量のモル数に対して0.01倍?0.15倍である。」
と補正することを目的とするものである。

(2)判断
そうすると、本件手続補正は、本件手続補正後の請求項13を新たに追加する(合わせて、本件手続補正前の請求項13および14をそれぞれ本件手続補正後の請求項14および15とするとともに、本件手続補前の請求項15を削除する)いわゆる増項補正を目的とするものであるから、特許法第17条の2第5項各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しない。
したがって、本件手続補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明
本願の請求項1?15に係る発明は、平成24年8月23日提出の手続補正書により適法に補正された、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?15に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「下記の構造式Iで表される構造を有することを特徴とする、ポリチオエーテルイミド。
【化1】


ただし、重合体のフタルイミド構造単位におけるチオエーテル結合の位置は3-位または4-位であり、
有機基Rは置換または非置換の脂肪族ジアミンまたは芳香族ジアミンであり、
前記ポリチオエーテルイミドは、30℃で濃度0.5g/dLのメタクレゾールにおいて測定されるインヘレント粘度が0.13dL/g?1.90dL/gで、重量平均分子量が3,000?200,000で、多分散性が1.8?5.4である。」

第4.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶理由は、要するに、この出願に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができず、また、この出願に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないという理由を含むものであり、刊行物として、下記の引用文献1乃至5を引用するものである。

1.特開昭63-120735号公報
2.特開昭63-120736号公報
3.特開平02-229829号公報
4.米国特許第4092297号明細書
5.中国特許出願公開第1367192号明細書

第5.当審の判断
(1)特許法第29条第1項3号について

原査定の拒絶の理由において引用された本願出願前に頒布された刊行物である特開昭63-120735号公報(以下、「刊行物1」という(原審引用例1)。)には、以下の事項が記載されている。

(ア)
「1)一般式(1)

(式中、Arは芳香族化合物を、-S-の結合位置は3,3′-位または4,4′-位を、nは3以上の整数を表わす)
で表わされる主鎖にイミド環構造と硫黄を含有する芳香族系ポリイミドチオエーテルを合成するに際し、3-ニトロフタル酸無水物または、4-ニトロフタル酸無水物と芳香族ジアミンまたは芳香族ジイソシアナートから合成される一般式(2)

(式中、Arは芳香族化合物を、-NO_(2)の結合位置は3,3′-位または、4,4′-位を表わす)
で表わされるジニトロ化合物とスルフィド化剤とを有機溶媒中で反応させることを特徴とするポリイミドチオエーテルの製造方法。」(特許請求の範囲)
(イ)
「[産業上の利用分野]
本発明は、エレクトロニクス、輸送機器および航空機材料等の分野で使用可能なポリイミドチオエーテルの製造方法に関する。
[従来の技術]
従来、ポリイミド樹脂は優れた耐熱性とともに、優れた電気的、機械的特性を有し、広く工業材料として使用されてきた。しかしこれらの多くのポリイミド樹脂、たとえばピロメリット酸無水物または、その同族体とジアミンから得られる公知の耐熱性ポリイミド樹脂は耐熱性に優れるが熱的に不融であり、通常の成形加工機を用いて加工することは困難であった。
このため、溶融状態で加工できることをめざし、種々のポリマー構造の分子設計が検討され、種々のポリエーテルイミドおよびポリイミドチオエーテルが提案されている。・・・」(1頁右下欄下から10行?2頁左上欄7行)
(ウ)
「[発明が解決しようとする問題点]
本発明の目的は、エレクトロニクス、輸送機および航空機材料等の分野で使用可能なポリイミドチオエーテルを製造するに際し工業的に製造する上で不利な点がある従来の5段階プロセスにかわり、2段階の簡便な製造方法を提供することにある。
[問題点を解決するための手段]
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意努力し、3-ニトロフタル酸無水物または4-二トロフタル酸無水物と芳香族ジアミンまたは芳香族ジイソシアナートから合成されるジニトロ化合物とスルフィド化剤とを有機溶媒で反応させることによりわずか2段階のプロセスで合成できることを見い出し本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、一般式(1)

(式中、Arは芳香族化合物を、-S-の結合位置は、3,3′-位または、4,4′-位を、nは3以上の整数を表わす)
で表わされる主鎖にイミド環構造と硫黄を含有する芳香族ポリイミドチオエーテルを合成するに際し、3-ニトロフタル酸無水物または、4-ニトロフタル酸無水物と芳香族ジアミンまたは芳香族ジイソシアナートから合成される一般式(2)

(式中、Arは芳香族化合物を、-NO_(2)の結合位置は3,3′-位または、4,4′-位を表わす)で表わされるジニトロ化合物とスルフィド化剤とを、有機溶媒中で反応させることにより、一般式(1)で表わされるポリイミドチオエーテルを2段階という短縮されたプロセスで製造することを可能とするものである。
本発明で用いられるスルフィド化剤としては、硫化アルカリ金属化合物およびイオウ源と水酸化アルカリ金属化合物の併用等が挙げられる。
硫化アルカリ金属化合物としては、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムおよびこれらの混合物が含まれる。
イオウ源としては、水硫化アルカリ金属化合物、硫化水素チオアミド、チオ尿素、チオカルバネート、チオカルボン酸、二硫化炭素、チオカルボキシレート、イオウ、五硫化リン等が挙げられる。特に水硫化アルカリ金属化合物としては、水硫化リチウム、水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウムおよびこれらの混合物が含まれる。
又水酸化アルカリ金属化合物としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウムおよびこれらの混合物が挙げられ、水酸化ナトリウムが特に好ましい。
本発明に使用される芳香族ジアミンとしては、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、3,3’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-メチレンジアニリン、4,4’-メチレンジアニリン、4,4’-エチレンジアニリン、3,3’-オキシジアニリン、4,4’-オキシジアニリン、3,4’-オキシドアニリン、3,3’-チオジアニリン、4,4′-チオジアニリン、3,3’-カルボニルジアニリン、4,4’-カルボニルジアニリン、3,3′-スルホニルジアニリン、4,4’-スルホニルジアニリン、1,4-ナフタレンジアミン、1,5-ナフタレンジアミン、2,6-ナフタレンジアミン等を例示することができる。
芳香族ジイソシアナートとしては前記芳香族ジアミンのジイソシアナート等を例示することができる。」(2頁左下欄10行?3頁右上欄末行)
(エ)
「このようにして得られた一般式(2)で表わされるジニトロ化合物とスルフィド化剤から一般式(1)で表わされるポリイミドチオエーテルを得る反応は、一般に無水の有機溶媒中で、不活性ガス、たとえば窒素の気流下20?200℃の温度で約1時間?20時間加熱して行われる。
スルフィド化剤の使用量は、ジニトロ化合物1モルに対してイオウ元素が0.7?1.3モルであることが好ましく、特に0.9?1.10の範囲が好ましい。
一般には、重合反応開始時における原料モノマー(ジニトロ化合物+スルフィド化剤)濃度は50?400g/l溶媒の範囲が選択される。
一般式(1)および(2)で表わされる物質を製造する際に使用される有機溶媒としてはN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶媒、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、スルホラン等のイオウ系溶媒、ニトロベンゼン、クレゾール等のベンゼン系溶媒等を例示することができる。」(3頁左下欄15行?右下欄15行)
(オ)
「実施例6
実施例1と同様の装置方法を用いて、4-ニトロフタル酸無水物と4,4′-オキシジアニリンからジニトロ化合物を得た。
このジニトロ化合物5.50g(0.01モル)、硫化水素ナトリウム0.48g(0.01モル)、水酸化ナトリウム0.40g(0.01モル)およびジメチルホルムアミド60mlをフラスコに加え窒素気流下60℃で24時間反応させ、実施例1と同様に処理して淡黄色の粉末を得た。収量4.67g(収率95%)。
このポリマーの固有粘度は0.72(0.5g/dl-m-クレゾール、25℃)であり、赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)は1780cm^(-1)、1720cm^(-1)および750cm^(-1)にポリイミドチオエーテルにもとずく特性吸収を示した。
実施例7
4-ニトロフタル酸無水物のかわりに3-二トロフタル酸無水物を使用した以外は実施例6と全く同様の方法で行い褐色のポリマーを得た。収量4.44g (収率91%)。
このポリマーの固有粘度は0.42(0.5g/dl-m-クレゾール、25℃)であり、赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)は1780cm^(-1)、1720cm^(-1)および750cm^(-1)にポリイミドチオエーテルにもとずく特性吸収を示した。」(5頁左上欄7行?右上欄13行)

摘示(オ)の実施例6で得られたポリイミドチオエーテルは、一般式(1)においてArが「4,4′-オキシジアニリン」からアミノ基を除いた部分であり、-S-の結合位置は4,4′-位であるポリイミドチオエーテルであることから、刊行物1には、下記の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「一般式(1)

(式中、Arはオキシジフェニレンを、-S-の結合位置は4,4′-位を、nは3以上の整数を表わす)
で表わされ、固有粘度は0.72(0.5g/dl-m-クレゾール、25℃)である主鎖にイミド環構造と硫黄を含有する芳香族系ポリイミドチオエーテル」

本願発明と引用発明1とを対比すると、両者は、下記の点で一致する。

「下記の構造式Iで表される構造を有する、ポリチオエーテルイミド。
【化1】

ただし、重合体のフタルイミド構造単位におけるチオエーテル結合の位置は3-位または4-位であり、有機基Rは置換または非置換の脂肪族ジアミンまたは芳香族ジアミンである。」

また、次の点で一応相違している。

ポリチオエーテルイミドについて、本願発明が、「前記ポリチオエーテルイミドは、30℃で濃度0.5g/dLのメタクレゾールにおいて測定されるインヘレント粘度が0.13dL/g?1.90dL/gで、重量平均分子量が3,000?200,000で、多分散性が1.8?5.4である。」としているのに対し、引用発明1は、「固有粘度は0.72(0.5g/dl-m-クレゾール、25℃)である」点。

相違点について検討する。
引用発明1の固有粘度と本願発明のインヘレント粘度は同義であり、溶媒と濃度も共通しているから、測定温度の違いが5℃あることを勘案しても、引用発明1の「固有粘度が0.72(0.5g/dl-m-クレゾール、25℃)」は、本願発明の「インヘレント粘度は、0.13dL/g?1.90dL/g」を満足すると認められる。

また、本願発明と引用発明1は、その化学構造式が一致するとともに、インヘレント粘度の値が実質的に一致し、さらに、その製造方法についても、3-ニトロフタル酸無水物または4-二トロフタル酸無水物と芳香族ジアミンを反応させてジニトロ体を得た後、このジニトロ体と約等モル当量のアルカリ金属硫化物とをカップリング反応させるものである点で一致しており、反応溶媒の種類や反応温度、反応時間も重複一致している。(摘示(ウ)乃至(オ))

そうすると、本願発明のポリチオエーテルイミドと引用発明1のポリチオエーテルイミドは、重量平均分子量及び多分散性の物性値も本願発明と一致している蓋然性が高いと認められる。

したがって、相違点は、実質的に相違点ではないから、本願発明は、引用発明1と実質的に同一であると認められる。

(2)特許法第29条第2項について

摘示(ア)から、刊行物1には、下記の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「一般式(1)

(式中、Arは芳香族化合物を、-S-の結合位置は3,3’-位または4,4′-位を、nは3以上の整数を表わす)
で表わされる主鎖にイミド環構造と硫黄を含有する芳香族系ポリイミドチオエーテル」

本願発明と引用発明2とを対比すると、両者は、下記の点で一致する。


「下記の構造式Iで表される構造を有する、ポリチオエーテルイミド。
【化1】

ただし、重合体のフタルイミド構造単位におけるチオエーテル結合の位置は3-位または4-位であり、有機基Rは置換または非置換の脂肪族ジアミンまたは芳香族ジアミンである。」

また、次の点で相違している。

ポリチオエーテルイミドについて、本願発明が、「前記ポリチオエーテルイミドは、30℃で濃度0.5g/dLのメタクレゾールにおいて測定されるインヘレント粘度が0.13dL/g?1.90dL/gで、重量平均分子量が3,000?200,000で、多分散性が1.8?5.4である」としているのに対し、引用発明2は、この点について格別特定していない点。

相違点について検討する。
引用発明2のポリチオエーテルイミドの具体例として、実施例2には、固有粘度が0.62(0.5g/dl-m-クレゾール、25℃)であるポリチオエーテルイミドが記載され、実施例6には固有粘度が0.72(0.5g/dl-m-クレゾール、25℃)であるポリチオエーテルイミドが記載され、実施例7には、固有粘度が0.42(0.5g/dl-m-クレゾール、25℃)であるポリチオエーテルイミドが記載されている。
そうすると、本願発明の属する技術分野(以下、「当業界」という。)における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)であれば、引用発明2において固有粘度(インヘレント粘度)の好ましい範囲を決定し「インヘレント粘度が、30℃で濃度0.5g/dLのメタクレゾールにおいて0.13dL/g?1.90dL/g」とする程度のことは容易になしうると認められる。
また、重量平均分子量とインヘレント粘度は、互いに相関を有する物性であり、重量平均分子量やインヘレント粘度とともに多分散性を特定することも当業界でよく行われていることであるから、インヘレント粘度の好ましい範囲を決定する際に重量平均分子量や多分散性の好ましい範囲も決定する程度のことは、当業者であれば適宜なしうると認められる。
本願発明において、ポリチオエーテルイミドのインヘレント粘度、重量平均分子量、多分散性をそれぞれ限定したことにより、当業者に予測することができない格別顕著な効果が奏されているわけでもない。

したがって、本願発明は、刊行物1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6.むすび
以上のとおりであるから、原査定の拒絶の理由は妥当なものであり、その他の請求項について検討するまでもなく、本願は、この理由により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-03-28 
結審通知日 2014-04-02 
審決日 2014-04-16 
出願番号 特願2010-538317(P2010-538317)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (C08G)
P 1 8・ 121- Z (C08G)
P 1 8・ 57- Z (C08G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉備永 秀彦阪野 誠司  
特許庁審判長 蔵野 雅昭
特許庁審判官 小野寺 務
塩見 篤史
発明の名称 ポリチオエーテルイミド及びその製造方法  
代理人 吉田 精孝  
代理人 吉田 精孝  
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