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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1291331
審判番号 不服2013-6152  
総通号数 178 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-04-04 
確定日 2014-08-28 
事件の表示 特願2008-545564「ディジタル的に捕捉された画像から再生可能ディジタル映像プロダクトを与える方法、装置及びシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 6月21日国際公開、WO2007/070089、平成21年 5月21日国内公表、特表2009-520395〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本願は、2006年(平成18年)5月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2005年12月16日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成23年9月30日付けで拒絶理由の通知がなされ、これに対し、平成24年4月4日付けで手続補正がなされたが、平成24年11月30日付けで拒絶査定がなされたものである。
本件は、上記拒絶査定を不服として、平成25年4月4日に請求された拒絶査定不服審判であって、その審判請求と同時に手続補正書が提出されたものである。

第2.補正却下の決定

平成25年4月4日付けの手続補正について次のとおり決定する。

[補正却下の決定の結論]

平成25年4月4日付けの手続補正を却下する。

[補正却下の決定の理由]

1.補正の内容

平成25年4月4日付けの手続補正は、請求項1についてする以下の補正を含むものである。

[補正前](平成24年4月4日付けで補正された【請求項1】)

「処理器とメモリとを有するカラー装置における、ディジタル画像捕捉装置により捕捉されるディジタルビデオコンテンツの再生可能ディジタル映像プロダクトを与える方法であって、
前記処理器とメモリとが、前記ディジタルビデオコンテンツと、捕捉される最大範囲のディジタルビデオコンテンツと、前記ディジタル画像捕捉装置と、ディジタルビデオコンテンツを捕捉するように用いられる最大範囲のディジタル画像捕捉装置とのうち少なくとも1つのダイナミックレンジに関する情報を用いて、ログビデオ信号の階調密度値のフルレンジをマッピングすることにより、前記ディジタルビデオコンテンツのログビデオ信号表現を生成する段階を有する方法。」

[補正後](平成25年4月4日付けで補正された【請求項1】)

「処理器とメモリとを有するカラー装置における、ディジタル画像捕捉装置により捕捉されるディジタルビデオコンテンツの再生可能ディジタル映像プロダクトを与える方法であって、
前記処理器とメモリとが、前記ディジタル画像捕捉装置と、ディジタルビデオコンテンツを捕捉するように用いられる最大範囲のディジタル画像捕捉装置とのうち少なくとも1つのダイナミックレンジに関する情報を用いて、ログビデオ信号の階調密度値のフルレンジをマッピングすることにより、前記ディジタルビデオコンテンツのログビデオ信号表現を生成する段階を有する方法。」

2.補正の適法性

この請求項1についてする補正は、「前記ディジタルビデオコンテンツと、捕捉される最大範囲のディジタルビデオコンテンツと、前記ディジタル画像捕捉装置と、ディジタルビデオコンテンツを捕捉するように用いられる最大範囲のディジタル画像捕捉装置とのうち少なくとも1つのダイナミックレンジに関する情報」において、択一的記載の要素の一部である「前記ディジタルビデオコンテンツと、捕捉される最大範囲のディジタルビデオコンテンツと、」を削除し、「前記ディジタル画像捕捉装置と、ディジタルビデオコンテンツを捕捉するように用いられる最大範囲のディジタル画像捕捉装置とのうち少なくとも1つのダイナミックレンジに関する情報」と補正するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正であると認められる。

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するか否か)について以下に検討する。

(1)本願補正発明

本願補正発明は、以下のとおりである。

「処理器とメモリとを有するカラー装置における、ディジタル画像捕捉装置により捕捉されるディジタルビデオコンテンツの再生可能ディジタル映像プロダクトを与える方法であって、
前記処理器とメモリとが、前記ディジタル画像捕捉装置と、ディジタルビデオコンテンツを捕捉するように用いられる最大範囲のディジタル画像捕捉装置とのうち少なくとも1つのダイナミックレンジに関する情報を用いて、ログビデオ信号の階調密度値のフルレンジをマッピングすることにより、前記ディジタルビデオコンテンツのログビデオ信号表現を生成する段階を有する方法。」

(2)刊行物の記載事項

原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-217193号公報(以下、「刊行物1」という)には、図面とともに以下の記載がある。

「【要約】
【目的】 第1のメディアから第2のメディアに電気的に対象画像を移す。
【構成】 第1のメディア(映画フィルム)から第2のメディア(高品位ビデオ)に電気的に対象画像を移すことが階調スケールトラッキングを通じて行われる。HDフィルムスキャナ12で、映画フィルムから対象画像を表す3つの単チャンネルRin、Gin、Binが作成される。画像信号処理処理システム16が、オリジナルの対象画像からの色の劣化をフィルムとビデオ特性の補正によって各チャンネルに対する色補正を行なうとともに、色補正後のチャンネルのフォーマット等の変換を行う。変換後の出力単チャンネルRout、Gout、Boutが画像再構成システム18に供給されることで、ディスプレイ上に高品位ビデオ映像が表示される。」
「【0005】フィルムをビデオに変換する際、フィルムに光が照射されて光学像が生成される。この光学像が撮像デバイス上に投射されることで、高品位テレビジョン(HDTV)ビデオ信号が作成される。撮像デバイスの走査処理で作成されたHDTVビデオ信号は、フィルム走査のセットアップに関連する多数のファクタに依存している。」
「【0024】図1において、10は、この発明の一実施例が組み込まれたデジタル画像処理システムを示している。1つの対象画像(サブジェクトイメージであって、被写体の画像、メディア(媒体)中の対象とする画像、又はメディア中の背景画像を含む全画像を意味する)又は複数の対象画像が第1のメディア上に記録されている。この実施例で第1のメディアは映画フィルムである。その対象画像が第1のメディアから第2のメディアに電気的に変換される。この実施例で第2のメディアは高品位(HD)ビデオである。
【0025】なお、この実施例では、対象画像を映画フィルムからHDビデオに電気的に変換する過程を説明しているが、これに限らず、この発明は、任意の第1のメディアに記録されている対象画像を任意の第2のメディアに電気的変換により変換する全てのものに適用可能である。
【0026】この実施例において、対象画像を映画フィルムからHDビデオに電気的に変換するために、そのフィルムが画像読取手段としての高品位(HD)フィルムスキャナ12上に配される。
【0027】HDフィルムスキャナ12は、カラーフィルタ付き円板と組にされた光源を有し、その光源はHDフィルムスキャナ12上に配されたフィルムに対して上記色フィルタ付き円板を通して光を投射する。
【0028】この場合、そのカラーフィルタ付き円板が回転されることで、フィルタされた光源からの光が映画フィルム上に照射され、これによって、対象画像に対応する多色の、すなわち、カラー光学フィルム画像が作成(生成)される。
【0029】この後、このカラー光学画像はレンズ組立体を通じて平行光にされて撮像手段としての電荷結合デバイス(CCD)イメージセンサアレイ(以下、必要に応じて、単に、CCDイメージセンサという。)上に照射される。CCDイメージセンサとしては、例えば、高品位(HD)CCDイメージセンサが用いられ、このHDCCDイメージセンサは、1920×1035個の光感度素子アレイを有する。このHDCCDイメージセンサは、対象画像を、その構成要素である複数の単チャンネル光学フィルム画像に分離する。この実施例において、対象画像は、3原色の赤色(R)画像、緑色(G)画像及び青色(B)画像に分離される。なお、R,G,Bの色トリオに代替して、シアン、マゼンタ、黄色の色トリオのように、他の補色の組み合わせを用いても実質的に同様の効果が得られる。また、輝度・色信号のトリオ、すなわち、輝度信号Y、赤色信号Pr及び青色信号Pbを用いることもできる。
【0030】HDCCDイメージセンサとその関連回路により、3つの単チャンネル光学フィルム画像からアナログの高品位ビデオ信号が作成される。アナログの高品位ビデオ信号はアナログ・デジタル(A/D)変換器に供給される。このA/D変換器は、CCDイメージセンサによって作成された上記3つのアナログの高品位ビデオ信号から対象画像についての複数のサンプルとしてのデジタル信号を作成する。A/D変換器は、アナログ信号をデジタル信号に変換する装置として周知の技術であるので、これ以上の説明を省略する。」
「【0032】高品位フィルムスキャナ12は、3つのデジタル単チャンネル赤(Rin)、緑(Gin)、青(Bin)信号を画像信号処理サブシステム16に対して出力する。画像信号処理サブシステム16は、高品位フィルムスキャナ12からの出力に対して所定の処理を施して画像再構成サブシステム18に出力する。すなわち、画像信号処理サブシステム16は、3つのデジタル単チャンネル信号Rin、Gin、Binに対して信号調整と信号補正処理を含む変換を行う。この画像信号処理サブシステム16については、図2A及び図2Bを参照して後に詳しく説明する。
【0033】画像再構成サブシステム18は、画像信号処理サブシステム16の出力を入力として得、その画像を表示する。この画像再構成サブシステム18は、画像再構成という広い概念であり、ラスタースキャンのディスプレイ、HDTVモニタ等を含むが、周知の技術であるので、これ以上の説明は省略する。
【0034】画像信号処理サブシステム16は、操作(オペレータ)インタフェースサブシステム20を通じてオペレータ(操作者)と相互作用を行う。オペーレータは、操作インタフェースサブシステム20を通じて種々のコマンドと入力パラメータを画像信号処理サブシステム16に供給する。この操作インタフェースサブシステム20の詳細については、図3と図4を参照して後に詳しく説明する。
【0035】図2Aは、画像処理システム10を構成する画像信号処理サブシステム16の構成を示している。入力処理サブシステム20は、HDフィルムスキャナ12を構成するA/D変換器からの3つのデジタル単チャンネルRin、Gin、Binを受ける。この入力処理サブシステム20は、上記単チャンネルデジタル信号Rin、Gin、Binに対して初期補正を行い、初期補正後のデジタル信号を色補正器22に供給する。この初期色補正の内容は、例えば、特定のノイズを除去又は減少させるためのノイズ減少処理である。この入力処理サブシステム20も、その機能と構成が、アナログ信号をデジタル信号に変換する際の周知の技術であり、これ以上詳しく説明しない。
【0036】色補正器22は、入力として入力処理サブシステム20のデジタル出力を受け取り、それを所定処理して画像再構成サブシステム18に出力する。色補正器22は色補正の機能を実行する。」
「【0040】色補正器22は、信号調整と補正を含む種々の変換を遂行する。特に、色補正器22は、フィルム補正ユニット26とビデオ補正ユニット28とを有する。フィルム補正ユニット26は、フィルム対数ルックアップテーブル(LUT)を用いて、3つの単チャンネル信号Rin、Gin、Binをそれぞれの対数等価信号に変換する。また、フィルム補正ユニット26は、オリジナルのフィルム群の多色乳剤間のクロストークの各単チャンネルに対する補正を行うために、フィルムマスキングマトリクスを行う。さらに、フィルム補正ユニット26は、ハーター・ドリフィールド(HD)特性曲線に従って各チャンネルに対する特性曲線処理を行う。HD特性曲線は、相対フィルム露出の対数とフィルム染料密度との間の関係を示しており、以下に詳細に説明する。
【0041】第1のメディアに記録されている対象画像を第2のメディアに効果的に有効に再生するために、その変換システムは、第1のメディアの階調レベル(tone level) を第2のメディアの適正な階調レベルに相関させるというような校正がなされていなければならない。この方法によれば、第1のメディアに記録されている階調スケールが第2のメディアに再生された階調スケールに相関する。
【0042】映画フィルムをHDビデオに変換するために、色補正器22は、そのフィルム上の階調密度がHDビデオ信号上の階調密度に相関するように校正する。さらに、映画フィルム上に記録されたオリジナルの階調スケールを正確に再生するために、付加的なセットアップと校正処理とが必要にされる。
【0043】すなわち、まず、HDフィルムスキャナ12内の各CCDイメージセンサに入射される画像情報を有する光(以下、単に、画像光という。)は、CCDイメージセンサのダイナミックレンジの範囲内でなければならない。また、CCDイメージセンサに入射される画像光は、CCDイメージセンサ(イメージャ)のダイナミックレンジの全範囲を利用している必要がある。そして、入射画像光をCCDレンジに一致させることで、所望の光学画像が作成される。さらに、3つの単チャンネル信号に対する光強度がバランスしていて、かつ対象画像の焦点が合っている必要がある。さらにまた、フレアと影の影響が最小化されていなければならない。
【0044】図3は、本発明に係わる画像校正インタフェースを示している。入力レンジコントロール36は、操作インタフェースサブシステム20に含まれている。入力レンジコントロール36は、色補正器22に入力される3つの単チャンネルRin、Gin、Binに対しての相対階調密度を指定する。図3に示すように、各単チャンネルRin、Gin、Binに対して、入力白レンジ及び入力黒レンジコントロール(用)スライダが設けられている。
【0045】HDフィルムスキャナ12で作成された各単チャンネルに対して、ユーザは、対象画像の白レベルを表す(指定する)入力白コントロールスライダの使用を通じて第1の信号振幅を色補正器22に指定する。また、ユーザは、対象画像の黒レベルを表す(指定する)入力黒コントロールスライダの使用を通じて第2の信号振幅を指定する。
【0046】入力レンジコントロール36で各単チャンネル信号に対するスケールがミリボルト(mV)で与えられている。この場合、入力バッファ用の波形モニタに3つの単チャンネル信号Rin、Gin、Binを供給しておいて、その管面上で、ユーザが白と黒密度レベルに対するHDフィルムスキャナ12からの電圧レベル出力を校正することができる。例えば、ユーザは、ビデオモニタ上で階調を観測することによりG(緑)チャンネルに対する白レベルの入力レンジを指定するために、Gチャンネルに対する白密度レベルとして指定することを望む階調を選択する。その際、白密度レベルに対応する電圧レベルを確認するために、ユーザは、入力バッファ波形モニタ上での電圧レベルを読み取ればよい。同様にして、ユーザは、Gチャンネルに対する黒密度レベルに対応する階調を選択することができる。
【0047】この方法において、画像の校正は、そのレンジがCCDの出力レンジ内にある限り、入力白スライダと入力黒スライダの両方を設定することによって、各単チャンネルに対してユーザが任意の階調レンジを指定することができるという相対的な処理である。
【0048】もし、入力レンジが入力レンジコントロール36を用いて指定されなかった場合には、色補正器22は、CCDレンジの両端に対するデフォルトレンジを設定する。デフォルトレンジとしては、例えば、各CCDイメージセンサの出力レンジ0 ?700mV に設定する。
【0049】図2Bは、本発明に係わる色補正器22のブロック図を示している。単チャンネルRin、Gin、Binがフィルムマスキングマトリクス処理サブシステム32に供給される。フィルムマスキングマトリクス処理サブシステム32は、各単チャンネル用の3つの対数変換器を有している。これら3つの対数変換器は、それぞれ、フィルム対数ルックアップテーブル(LUT)を用いて単チャンネルRin、Gin、Binを対数等価値に変換する。このフィルム対数ルックアップテーブルは、単チャンネル信号Rin、Gin、BinをそのLUTに対するインデックスとすることで、対数領域における値を準備する。」
「【0076】上述したように、対象画像入力レンジは、色補正器22とともにHDフィルムスキャナ12の初期校正で入力レンジコントロール36によって指定される。指定された対象画像入力レンジは、色補正器22を通じてトラック(追跡)される。とりわけ、対象画像入力レンジは、フィルム対数LUT値の作成を経由して対数領域に入力単チャンネル信号Rin、Gin、Binをマップするために用いられる。対数領域の中の入力単チャンネル信号Rin、Gin、Binへの対象画像入力レンジのトラッキングは、各単チャンネルの対象画像白と黒レベルが各HDフィルム特性曲線上の適当な部分に配されるということを保証する。」

ここで、上記記載について検討する。

【構成】の「・・・HDフィルムスキャナ12で、映画フィルムから対象画像を表す3つの単チャンネルRin、Gin、Binが作成される。・・・出力単チャンネルRout、Gout、Boutが画像再構成システム18に供給されることで、ディスプレイ上に高品位ビデオ映像が表示される。」、段落【0026】?【0030】の「映画フィルムからHDビデオに電気的に変換するために、そのフィルムが画像読取手段としての高品位(HD)フィルムスキャナ12上に配される。HDフィルムスキャナ12は、・・・光源を有し、・・・光を投射する。・・・光源からの光が映画フィルム上に照射され、・・・カラー光学フィルム画像が作成(生成)される。・・・このカラー光学画像は・・・電荷結合デバイス(CCD)イメージセンサアレイ(以下、必要に応じて、単に、CCDイメージセンサという。)上に照射される。CCDイメージセンサとしては、例えば、高品位(HD)CCDイメージセンサが用いられ、・・・HDCCDイメージセンサとその関連回路により、・・・アナログの高品位ビデオ信号が作成される。アナログの高品位ビデオ信号はアナログ・デジタル(A/D)変換器に供給される。このA/D変換器は、CCDイメージセンサによって作成された上記3つのアナログの高品位ビデオ信号から対象画像についての複数のサンプルとしてのデジタル信号を作成する。」、段落【0032】?【0033】の「高品位フィルムスキャナ12は、3つのデジタル単チャンネル赤(Rin)、緑(Gin)、青(Bin)信号を画像信号処理サブシステム16に対して出力する。画像信号処理サブシステム16は、高品位フィルムスキャナ12からの出力に対して所定の処理を施して画像再構成サブシステム18に出力する。すなわち、画像信号処理サブシステム16は、3つのデジタル単チャンネル信号Rin、Gin、Binに対して信号調整と信号補正処理を含む変換を行う。・・・画像再構成サブシステム18は、画像信号処理サブシステム16の出力を入力として得、その画像を表示する。この画像再構成サブシステム18は、画像再構成という広い概念であり、ラスタースキャンのディスプレイ、HDTVモニタ等を含む」、段落【0035】?【0036】の「図2Aは、画像処理システム10を構成する画像信号処理サブシステム16の構成を示している。入力処理サブシステム20は、HDフィルムスキャナ12を構成するA/D変換器からの3つのデジタル単チャンネルRin、Gin、Binを受ける。この入力処理サブシステム20は、上記単チャンネルデジタル信号Rin、Gin、Binに対して初期補正を行い、初期補正後のデジタル信号を色補正器22に供給する。この初期色補正の内容は、例えば、特定のノイズを除去又は減少させるためのノイズ減少処理である。・・・色補正器22は、入力として入力処理サブシステム20のデジタル出力を受け取り、それを所定処理して画像再構成サブシステム18に出力する。色補正器22は色補正の機能を実行する。」、段落【0049】の「図2Bは、本発明に係わる色補正器22のブロック図を示している。単チャンネルRin、Gin、Binがフィルムマスキングマトリクス処理サブシステム32に供給される。フィルムマスキングマトリクス処理サブシステム32は、各単チャンネル用の3つの対数変換器を有している。これら3つの対数変換器は、それぞれ、フィルム対数ルックアップテーブル(LUT)を用いて単チャンネルRin、Gin、Binを対数等価値に変換する。」、図面【図2】の記載から、刊行物1には、画像読取手段であるHDフィルムスキャナ12により、3つのデジタル単チャンネル赤(Rin)、緑(Gin)、青(Bin)信号を作成し、画像信号処理サブシステム16に対して出力し、画像信号処理サブシステム16内の色補正の機能を実行する色補正器22内のフィルムマスキングマトリクス処理サブシステム32は、フィルム対数ルックアップテーブル(LUT)を用いて単チャンネルRin、Gin、Binを対数等価値に変換し、画像再構成サブシステム18は、色補正器22の出力を入力として得、高品位ビデオ映像を表示する技術が記載されている。
すなわち、刊行物1の画像信号処理サブシステム16内の色補正の機能を実行する色補正器22において、画像読取手段であるHDフィルムスキャナ12により作成された3つのデジタル単チャンネル赤(Rin)、緑(Gin)、青(Bin)信号に対して、それぞれ、フィルム対数ルックアップテーブル(LUT)を用いて単チャンネルRin、Gin、Binを対数等価値に変換し、高品位ビデオ映像を表示する画像再構成サブシステム18に出力する技術が記載されている。

段落【0040】?【0049】の「色補正器22は、フィルム補正ユニット26とビデオ補正ユニット28とを有する。フィルム補正ユニット26は、フィルム対数ルックアップテーブル(LUT)を用いて、3つの単チャンネル信号Rin、Gin、Binをそれぞれの対数等価信号に変換する。・・・第1のメディアに記録されている対象画像を第2のメディアに効果的に有効に再生するために、その変換システムは、第1のメディアの階調レベル(tone level) を第2のメディアの適正な階調レベルに相関させるというような校正がなされていなければならない。この方法によれば、第1のメディアに記録されている階調スケールが第2のメディアに再生された階調スケールに相関する。映画フィルムをHDビデオに変換するために、色補正器22は、そのフィルム上の階調密度がHDビデオ信号上の階調密度に相関するように校正する。・・・すなわち、まず、HDフィルムスキャナ12内の各CCDイメージセンサに入射される画像情報を有する光(以下、単に、画像光という。)は、CCDイメージセンサのダイナミックレンジの範囲内でなければならない。また、CCDイメージセンサに入射される画像光は、CCDイメージセンサ(イメージャ)のダイナミックレンジの全範囲を利用している必要がある。そして、入射画像光をCCDレンジに一致させることで、所望の光学画像が作成される。・・・図3は、本発明に係わる画像校正インタフェースを示している。入力レンジコントロール36は、操作インタフェースサブシステム20に含まれている。入力レンジコントロール36は、色補正器22に入力される3つの単チャンネルRin、Gin、Binに対しての相対階調密度を指定する。図3に示すように、各単チャンネルRin、Gin、Binに対して、入力白レンジ及び入力黒レンジコントロール(用)スライダが設けられている。HDフィルムスキャナ12で作成された各単チャンネルに対して、ユーザは、対象画像の白レベルを表す(指定する)入力白コントロールスライダの使用を通じて第1の信号振幅を色補正器22に指定する。また、ユーザは、対象画像の黒レベルを表す(指定する)入力黒コントロールスライダの使用を通じて第2の信号振幅を指定する。入力レンジコントロール36で各単チャンネル信号に対するスケールがミリボルト(mV)で与えられている。この場合、入力バッファ用の波形モニタに3つの単チャンネル信号Rin、Gin、Binを供給しておいて、その管面上で、ユーザが白と黒密度レベルに対するHDフィルムスキャナ12からの電圧レベル出力を校正することができる。例えば、ユーザは、ビデオモニタ上で階調を観測することによりG(緑)チャンネルに対する白レベルの入力レンジを指定するために、Gチャンネルに対する白密度レベルとして指定することを望む階調を選択する。その際、白密度レベルに対応する電圧レベルを確認するために、ユーザは、入力バッファ波形モニタ上での電圧レベルを読み取ればよい。同様にして、ユーザは、Gチャンネルに対する黒密度レベルに対応する階調を選択することができる。この方法において、画像の校正は、そのレンジがCCDの出力レンジ内にある限り、入力白スライダと入力黒スライダの両方を設定することによって、各単チャンネルに対してユーザが任意の階調レンジを指定することができるという相対的な処理である。もし、入力レンジが入力レンジコントロール36を用いて指定されなかった場合には、色補正器22は、CCDレンジの両端に対するデフォルトレンジを設定する。デフォルトレンジとしては、例えば、各CCDイメージセンサの出力レンジ0 ?700mV に設定する。図2Bは、本発明に係わる色補正器22のブロック図を示している。単チャンネルRin、Gin、Binがフィルムマスキングマトリクス処理サブシステム32に供給される。フィルムマスキングマトリクス処理サブシステム32は、各単チャンネル用の3つの対数変換器を有している。これら3つの対数変換器は、それぞれ、フィルム対数ルックアップテーブル(LUT)を用いて単チャンネルRin、Gin、Binを対数等価値に変換する。このフィルム対数ルックアップテーブルは、単チャンネル信号Rin、Gin、BinをそのLUTに対するインデックスとすることで、対数領域における値を準備する。」、段落【0076】の「対象画像入力レンジは、フィルム対数LUT値の作成を経由して対数領域に入力単チャンネル信号Rin、Gin、Binをマップするために用いられる。」の記載から、刊行物1の色補正器22は、CCDレンジの両端に対するデフォルトレンジ(デフォルトレンジは、各CCDイメージセンサの出力レンジに設定される)を設定するものであり、刊行物1の対象画像入力レンジは、単チャンネルRin、Gin、Binを対数等価値に変換するフィルム対数LUT値の作成を経由して対数領域に単チャンネルRin、Gin、Binをマップするために用いられるものである。

したがって、刊行物1には、以下の発明(以下、「刊行物1発明」という)が記載されている。

「画像信号処理サブシステム16内の色補正の機能を実行する色補正器22において、画像読取手段であるHDフィルムスキャナ12により作成された3つのデジタル単チャンネル赤(Rin)、緑(Gin)、青(Bin)信号に対して、それぞれ、フィルム対数ルックアップテーブル(LUT)を用いて単チャンネルRin、Gin、Binを対数等価値に変換し、高品位ビデオ映像を表示する画像再構成サブシステム18に出力する技術であって、
色補正の機能を実行する色補正器22は、HDフィルムスキャナ12のCCDレンジの両端に対するデフォルトレンジ(デフォルトレンジは、各CCDイメージセンサの出力レンジに設定される)を設定し、対象画像入力レンジは、単チャンネルRin、Gin、Binを対数等価値に変換するフィルム対数LUT値の作成を経由して対数領域に単チャンネルRin、Gin、Binをマップするために用いられる技術。」

(3)刊行物1発明との対比

本願補正発明と刊行物1発明とを対比する。

(3-1)本願補正発明の「処理器とメモリとを有するカラー装置における、ディジタル画像捕捉装置により捕捉されるディジタルビデオコンテンツの再生可能ディジタル映像プロダクトを与える方法」について

刊行物1発明は、「画像信号処理サブシステム16内の色補正の機能を実行する色補正器22において、画像読取手段であるHDフィルムスキャナ12により作成された3つのデジタル単チャンネル赤(Rin)、緑(Gin)、青(Bin)信号に対して、それぞれ、フィルム対数ルックアップテーブル(LUT)を用いて単チャンネルRin、Gin、Binを対数等価値に変換し、高品位ビデオ映像を表示する画像再構成サブシステム18に出力する技術」であるが、これは、「画像信号処理サブシステム16内の色補正の機能を実行する色補正器22において、画像読取手段であるHDフィルムスキャナ12により作成された3つのデジタル単チャンネル赤(Rin)、緑(Gin)、青(Bin)信号に対して、それぞれ、フィルム対数ルックアップテーブル(LUT)を用いて単チャンネルRin、Gin、Binを対数等価値に変換し、高品位ビデオ映像を表示する画像再構成サブシステム18に出力する方法」と捉えることができる。

本願補正発明の「カラー装置」に関して、本願明細書の段落【0020】には、「図3のディジタルカラーシステムにおいては、オリジナルのビデオコンテンツはディジタル動画カメラ310により捕捉される。ディジタル的に捕捉されたビデオカメラはカラー装置320と通信する。色補正層320は、ディジタル動画カメラ310からディジタル的に捕捉されたビデオコンテンツの再生可能なディジタル映像プロダクト(例えば、ログビデオ信号表現)を生成するように、そして生成された再生可能なディジタル映像プロダクトの色補正を与えるように実施されることが可能である。」と記載されており、カラー装置は、色補正を与えるように実施されるものであるから、刊行物1発明の「画像信号処理サブシステム16内の色補正の機能を実行する色補正器22」と、本願補正発明の「カラー装置」は一致する。

一般に、情報処理を行う機器において、処理を行うためには、処理を行うための部位を有することや、処理を行うために用いるデータやプログラムを記憶するためのメモリを有することは通常に有する構成であるから、刊行物1発明の色補正器においても、処理を行うための部位を有し、処理を行うために用いるデータやプログラムを記憶するためのメモリを備えているものといえる。

そうすると、刊行物1発明の色補正器22が備えている、処理を行うための部位と処理を行うために用いるデータやプログラムを記憶するためのメモリは、本願補正発明の「処理器とメモリ」に一致するので、刊行物1発明の「画像信号処理サブシステム16内の色補正の機能を実行する色補正器22」は、本願補正発明の「処理器とメモリとを有するカラー装置」に一致する。

刊行物1発明の「画像読取手段であるHDフィルムスキャナ」は、画像を3つのデジタル単チャンネル赤(Rin)、緑(Gin)、青(Bin)信号にするものであり、画像をディジタル信号にするものである。本願補正発明の「ディジタル画像捕捉装置」に関して、本願明細書の段落【0019】?【0020】には、「・・・例示として、ディジタル画像捕捉装置310(例示としては、ディジタル動画カメラ)・・・オリジナルのビデオコンテンツはディジタル動画カメラ310により捕捉される。ディジタル的に捕捉されたビデオカメラはカラー装置320と通信する。」と記載されている。すなわち、本願補正発明の「ディジタル画像捕捉装置」は、画像をディジタル的に捕捉するものであるから、刊行物1発明の「画像読取手段であるHDフィルムスキャナ12」は、本願補正発明の「ディジタル画像捕捉装置」に一致する。

本願補正発明の「ディジタルビデオコンテンツの再生可能ディジタル映像プロダクトを与える」に関して、本願明細書の段落【0020】には、「色補正層320は、ディジタル動画カメラ310からディジタル的に捕捉されたビデオコンテンツの再生可能なディジタル映像プロダクト(例えば、ログビデオ信号表現)を生成するように、そして生成された再生可能なディジタル映像プロダクトの色補正を与えるように実施されることが可能である。・・・図3のディジタルカラーシステム300においては、ディジタル映像プロダクト(例えば、ログビデオ信号)は、較正された表示装置(図示せず)において始まりを視聴されることができるように、表示変換が適用されることが可能である。」と記載されている。すなわち、本願補正発明の「ディジタルビデオコンテンツの再生可能ディジタル映像プロダクトを与える」とは、ディジタルビデオコンテンツが再生可能になるようにログビデオ信号を生成することである。
ここで、ログビデオ信号を生成することについて、本願明細書には具体的な記載が見受けられないものの、映像技術において、ログビデオ信号を生成するということは、入力信号の対数を出力することを意味する。

刊行物1発明は、画像読取手段であるHDフィルムスキャナ12により作成された3つのデジタル単チャンネル赤(Rin)、緑(Gin)、青(Bin)信号に対して、それぞれ、フィルム対数ルックアップテーブル(LUT)を用いて単チャンネルRin、Gin、Binを対数等価値に変換し、高品位ビデオ映像を表示する画像再構成サブシステムに出力するものであり、対数等価値に変換するということは、単チャンネルRin、Gin、Binの対数を出力することであるから、本願補正発明のようにログビデオ信号を生成することである。そして、刊行物1発明においても、3つのデジタル単チャンネル赤(Rin)、緑(Gin)、青(Bin)信号に対して、対数等価値に変換、すなわち、入力信号の対数を出力し、最終的に、高品位ビデオ映像を表示する画像再構成サブシステムに出力するものであるから、刊行物1発明の3つのデジタル単チャンネル赤(Rin)、緑(Gin)、青(Bin)信号は、本願補正発明のディジタルビデオコンテンツに一致し、刊行物1発明の対数等価値は、本願補正発明の再生可能なディジタル映像プロダクト(ログビデオ信号)に一致する。

したがって、本願補正発明の「処理器とメモリとを有するカラー装置における、ディジタル画像捕捉装置により捕捉されるディジタルビデオコンテンツの再生可能ディジタル映像プロダクトを与える方法」について、本願補正発明と刊行物1発明は、「処理器とメモリとを有するカラー装置における、ディジタル画像捕捉装置により捕捉されるディジタルビデオコンテンツの再生可能ディジタル映像プロダクトを与える方法」という点で一致する。

(3-2)本願補正発明の「前記処理器とメモリとが、前記ディジタル画像捕捉装置と、ディジタルビデオコンテンツを捕捉するように用いられる最大範囲のディジタル画像捕捉装置とのうち少なくとも1つのダイナミックレンジに関する情報を用いて、ログビデオ信号の階調密度値のフルレンジをマッピングすることにより、前記ディジタルビデオコンテンツのログビデオ信号表現を生成する段階」について

本願補正発明の「前記ディジタル画像捕捉装置と、ディジタルビデオコンテンツを捕捉するように用いられる最大範囲のディジタル画像捕捉装置とのうち少なくとも1つのダイナミックレンジに関する情報」について、本願明細書には、「本発明の代替の実施形態においては、カラー装置320において、ディジタル的に捕捉されたビデオコンテンツのログビデオ信号表現は、例えば、動画カメラ310のダイナミックレンジの情報を用いて生成される。」(段落【0025】)、「本発明の代替の実施形態においては、カラー装置320において、ディジタル的に捕捉されたビデオコンテンツのログ信号表現は、特定の色についての固定された階調濃度値を用いて、しかしながら、捕捉されるようになっている最大範囲のビデオコンテンツか又は最大範囲の画像捕捉装置のどちらか又はそれらの両方のダイナミックレンジを考慮して、生成される。」(段落【0030】)と記載されていることから、1つの実施形態は、動画カメラ310のダイナミックレンジの情報を用いて生成されるものであり、別の実施形態では、捕捉されるようになっている最大範囲のビデオコンテンツか又は最大範囲の画像捕捉装置のどちらか又はそれらの両方のダイナミックレンジを考慮して、生成されるものである。
すなわち、本願補正発明の「前記ディジタル画像捕捉装置と、ディジタルビデオコンテンツを捕捉するように用いられる最大範囲のディジタル画像捕捉装置とのうち少なくとも1つのダイナミックレンジに関する情報」とは、「前記ディジタル画像捕捉装置」と「ディジタルビデオコンテンツを捕捉するように用いられる最大範囲のディジタル画像捕捉装置」のうちいずれか1つのみを選択することを含む構成である。

刊行物1発明の色補正の機能を実行する色補正器22は、「HDフィルムスキャナ12のCCDレンジの両端に対するデフォルトレンジ(デフォルトレンジは、各CCDイメージセンサの出力レンジに設定される)を設定」するものであり、刊行物1の段落【0043】の「HDフィルムスキャナ12内の各CCDイメージセンサに入射される画像情報を有する光(以下、単に、画像光という。)は、CCDイメージセンサのダイナミックレンジの範囲内でなければならない。また、CCDイメージセンサに入射される画像光は、CCDイメージセンサ(イメージャ)のダイナミックレンジの全範囲を利用している必要がある。そして、入射画像光をCCDレンジに一致させることで、所望の光学画像が作成される。」との記載から、CCDレンジとは、CCDイメージセンサのダイナミックレンジのことであり、刊行物1発明の「HDフィルムスキャナのCCDレンジの両端に対するデフォルトレンジ(各CCDイメージセンサの出力レンジに設定される)」とは、CCDのダイナミックレンジに関する情報ということができる。

刊行物1発明の「HDフィルムスキャナ12」は、本願補正発明の「ディジタル画像捕捉装置」に一致するので、刊行物1発明の「HDフィルムスキャナ12のCCDレンジの両端に対するデフォルトレンジ(デフォルトレンジは、各CCDイメージセンサの出力レンジに設定される)」は、「前記ディジタル画像捕捉装置のダイナミックレンジに関する情報」という点で、本願補正発明と一致する。
すなわち、刊行物1発明の「HDフィルムスキャナ12のCCDレンジの両端に対するデフォルトレンジ(デフォルトレンジは、各CCDイメージセンサの出力レンジに設定される)」は、本願補正発明の「前記ディジタル画像捕捉装置と、ディジタルビデオコンテンツを捕捉するように用いられる最大範囲のディジタル画像捕捉装置とのうち少なくとも1つのダイナミックレンジに関する情報」において、「前記ディジタル画像捕捉装置」を選択した場合に相当する。

刊行物1発明は、「色補正の機能を実行する色補正器22において、・・・3つのデジタル単チャンネル赤(Rin)、緑(Gin)、青(Bin)信号に対して、それぞれ、フィルム対数ルックアップテーブル(LUT)を用いて単チャンネルRin、Gin、Binを対数等価値に変換」するものであり、色補正器22において、3つのデジタル単チャンネル赤(Rin)、緑(Gin)、青(Bin)信号を対数等価値に変換するものであるから、本願補正発明の「前記ディジタルビデオコンテンツのログビデオ信号表現を生成する」に一致する。

刊行物1発明では、「対象画像入力レンジは、単チャンネルRin、Gin、Binを対数等価値に変換するフィルム対数LUT値の作成を経由して対数領域に入力単チャンネル信号Rin、Gin、Binをマップするために用いられる」ものである。
ここで、刊行物1の段落【0044】?【0046】において、「入力レンジコントロール36は、色補正器22に入力される3つの単チャンネルRin、Gin、Binに対しての相対階調密度を指定する。・・・例えば、ユーザは、ビデオモニタ上で階調を観測することによりG(緑)チャンネルに対する白レベルの入力レンジを指定するために、Gチャンネルに対する白密度レベルとして指定することを望む階調を選択する。・・・同様にして、ユーザは、Gチャンネルに対する黒密度レベルに対応する階調を選択することができる。」と記載されているように、対象画像入力レンジとは、入力レンジコントロール36を用いて、白密度レベルと黒密度レベルの階調を選択することにより、各単チャンネルRin、Gin、Binに対しての相対階調密度を指定することである。
さらに、刊行物1の段落【0048】において、「もし、入力レンジが入力レンジコントロール36を用いて指定されなかった場合には、色補正器22は、CCDレンジの両端に対するデフォルトレンジを設定する。デフォルトレンジとしては、例えば、各CCDイメージセンサの出力レンジ0 ?700mV に設定する。」とあるように、刊行物1発明における「HDフィルムスキャナのCCDレンジの両端に対するデフォルトレンジを設定」は、入力レンジが指定されなかった場合に行うものであるから、設定されたデフォルトレンジ(CCDのダイナミックレンジに関する情報)についても、単チャンネルRin、Gin、Binを対数等価値に変換するフィルム対数LUT値の作成を経由して対数領域に単チャンネルRin、Gin、Binをマップするために用いられるものであるし、単チャンネルRin、Gin、Binに対しての階調密度を指定することから、対数等価値は、階調密度値であるといえる。
そうすると、刊行物1発明のデフォルトレンジ(CCDのダイナミックレンジに関する情報)は、単チャンネルRin、Gin、Binを対数等価値(階調密度値)に変換する対数変換の際に使用するフィルム対数LUT値の作成に際して、対数領域に単チャンネルRin、Gin、Binをマップするために用いられるものである。

言い換えると、刊行物1発明の色補正の機能を実行する色補正器22は、CCDのダイナミックレンジに関する情報を用いて、対数等価値の階調密度値をマップしているものである。

刊行物1発明の色補正器22は、処理器とメモリとを有するものであり、色補正器が様々な処理を行う際には、処理器とメモリが行うものであるから、刊行物1発明の「色補正の機能を実行する色補正器22」が行うことは、「前記処理器とメモリとが」行うことである。

そうすると、本願補正発明の「前記処理器とメモリとが、前記ディジタル画像捕捉装置と、ディジタルビデオコンテンツを捕捉するように用いられる最大範囲のディジタル画像捕捉装置とのうち少なくとも1つのダイナミックレンジに関する情報を用いて、ログビデオ信号の階調密度値のフルレンジをマッピングすることにより、前記ディジタルビデオコンテンツのログビデオ信号表現を生成する段階」について、本願補正発明と刊行物1発明は、「前記処理器とメモリとが、前記ディジタル画像捕捉装置と、ディジタルビデオコンテンツを捕捉するように用いられる最大範囲のディジタル画像捕捉装置とのうち少なくとも1つのダイナミックレンジに関する情報を用いて、ログビデオ信号の階調密度値をマッピングすることにより、前記ディジタルビデオコンテンツのログビデオ信号表現を生成する段階」という点で一致する

しかし、ログビデオ信号の階調密度値をマッピングするに際して、本願補正発明は、フルレンジをマッピングするものであるが、刊行物1発明においては、どの範囲でマップするかについては特定されていない。

(4)一致点、相違点

以上の対比によると、本願補正発明と刊行物1発明との一致点、相違点は次のとおりである。

[一致点]
「処理器とメモリとを有するカラー装置における、ディジタル画像捕捉装置により捕捉されるディジタルビデオコンテンツの再生可能ディジタル映像プロダクトを与える方法であって、
前記処理器とメモリとが、前記ディジタル画像捕捉装置と、ディジタルビデオコンテンツを捕捉するように用いられる最大範囲のディジタル画像捕捉装置とのうち少なくとも1つのダイナミックレンジに関する情報を用いて、ログビデオ信号の階調密度値をマッピングすることにより、前記ディジタルビデオコンテンツのログビデオ信号表現を生成する段階を有する方法。」

[相違点]
ログビデオ信号の階調密度値をマッピングするに際して、本願補正発明は、フルレンジをマッピングするものであるが、刊行物1発明においては、どの範囲でマップするかについては特定されていない点。

(5)相違点の検討、判断

刊行物1発明において、ログビデオ信号の階調密度値をマッピングする場合に、ログビデオ信号の階調密度値の範囲をどの程度にするかは、特定されていないものの、信号をディジタルで表現する場合に、使用可能な全てのビットを使用しないのは、無駄なことであり、効率的に記録するのであれば、使用可能な全ての範囲を使用するように考えること、たとえば、データを記録する際に、10ビット分の使用が可能であれば、4ビットだけ使用して記録するようなことをせずに、10ビット分全ての範囲を使用して記録することは、当業者であればきわめて自然に考え得ることである。
したがって、刊行物1発明においても、ログビデオ信号の階調密度値をマッピングするに際して、フルレンジをマッピングするようにし、相違点に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到できるといえる。

以上のとおり、相違点に係る本願補正発明の構成は、容易に想到できるといえ、本願補正発明の効果も、刊行物1発明から当業者が容易に予測し得るものであり、格別顕著なものがあるとは認められない。

本願補正発明は、刊行物1発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、補正却下の結論のとおり、決定する。

第3.本願発明について

1.本願発明

上記のとおり、平成25年4月4日付けの手続補正は却下した。
したがって、本願の請求項1ないし24に係る発明は、平成24年4月4日付け手続補正書で補正された明細書、特許請求の範囲および図面の記載からみて、平成24年4月4日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし24に記載されたとおりのものであり、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、次のとおりである。

[本願発明](平成24年4月4日付けで補正された【請求項1】)

「処理器とメモリとを有するカラー装置における、ディジタル画像捕捉装置により捕捉されるディジタルビデオコンテンツの再生可能ディジタル映像プロダクトを与える方法であって、
前記処理器とメモリとが、前記ディジタルビデオコンテンツと、捕捉される最大範囲のディジタルビデオコンテンツと、前記ディジタル画像捕捉装置と、ディジタルビデオコンテンツを捕捉するように用いられる最大範囲のディジタル画像捕捉装置とのうち少なくとも1つのダイナミックレンジに関する情報を用いて、ログビデオ信号の階調密度値のフルレンジをマッピングすることにより、前記ディジタルビデオコンテンツのログビデオ信号表現を生成する段階を有する方法。」

2.刊行物の記載事項

原査定の拒絶の理由で引用された特開平6-217193号公報(刊行物1)の記載事項および刊行物1発明は、前記第2.2.(2)に記載したとおりである。

3.対比、判断

本願発明は、前記第2.2.で検討した本願補正発明における「前記ディジタル画像捕捉装置と、ディジタルビデオコンテンツを捕捉するように用いられる最大範囲のディジタル画像捕捉装置とのうち少なくとも1つのダイナミックレンジに関する情報」において、択一的記載の要素である「前記ディジタル画像捕捉装置と、ディジタルビデオコンテンツを捕捉するように用いられる最大範囲のディジタル画像捕捉装置」を「前記ディジタルビデオコンテンツと、捕捉される最大範囲のディジタルビデオコンテンツと、前記ディジタル画像捕捉装置と、ディジタルビデオコンテンツを捕捉するように用いられる最大範囲のディジタル画像捕捉装置」としたものである。

上記補正箇所に係る本願発明について検討するに、刊行物1発明は、本願発明の「前記ディジタルビデオコンテンツと、捕捉される最大範囲のディジタルビデオコンテンツと、前記ディジタル画像捕捉装置と、ディジタルビデオコンテンツを捕捉するように用いられる最大範囲のディジタル画像捕捉装置とのうち少なくとも1つのダイナミックレンジに関する情報」において、「前記ディジタル画像捕捉装置」を選択した場合に相当する。

そうすると、本願発明の択一的記載の要素である「前記ディジタルビデオコンテンツと、捕捉される最大範囲のディジタルビデオコンテンツと、前記ディジタル画像捕捉装置と、ディジタルビデオコンテンツを捕捉するように用いられる最大範囲のディジタル画像捕捉装置」を「前記ディジタル画像捕捉装置と、ディジタルビデオコンテンツを捕捉するように用いられる最大範囲のディジタル画像捕捉装置」とした本願補正発明が前記第2.2.に記載したとおり、刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

第4.まとめ

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、残る請求項2ないし24に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-03-27 
結審通知日 2014-04-01 
審決日 2014-04-14 
出願番号 特願2008-545564(P2008-545564)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04N)
P 1 8・ 121- Z (H04N)
P 1 8・ 572- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 梅本 章子  
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 千葉 輝久
渡辺 努
発明の名称 ディジタル的に捕捉された画像から再生可能ディジタル映像プロダクトを与える方法、装置及びシステム  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠彦  

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