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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1291344
審判番号 不服2013-15241  
総通号数 178 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-08-07 
確定日 2014-08-28 
事件の表示 特願2008-203804「部品内蔵配線板」拒絶査定不服審判事件〔平成22年2月18日出願公開、特開2010-40891〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成20年8月7日の出願であって、平成24年9月20日付けの拒絶理由に対して、同年11月26日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成25年5月1日付け(発送日:5月7日)で拒絶査定がなされ、これに対して、同年8月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。
そして、平成26年1月29日付けの審尋に対して、同年3月28日に回答書が提出されたものである。
なお、審判請求時(平成25年8月7日付け)の手続補正は、【図面の簡単な説明】に係る明細書の段落【0082】の図9の説明である「本発明のさらに別の実施態様」を「参考例」に補正するものであって、請求項の記載との整合をとるものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成24年11月26日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。
「第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層に対して積層状に位置する第2の絶縁層と、
前記第2の絶縁層に埋設された、2つ以上の端子を有する電気/電子部品と、
前記電気/電子部品を実装するための複数のランドと該複数のランドからの延設パターンとを有し、該複数のランドと該延設パターンの方向および太さとを要素とする平面図形が180度点対称図形であり、かつ、前記第1の絶縁層と前記第2の絶縁層とに接して挟まれて設けられている、表層まで銅でできた配線パターンと、
前記配線パターンの前記複数のランドと前記電気/電子部品の前記2つ以上の端子とを電気的、機械的に接続するはんだと
を具備することを特徴とする部品内蔵配線板。」

第3 刊行物に記載された事項及び発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に日本国内において頒布された特開2008-10616号公報(平成20年1月17日公開、以下「刊行物1」という。)には、「部品内蔵配線板」に関し、図面(特に、図1、3参照)とともに、次の事項が記載されている。
以下、下線は当審で付与するものである。

ア.【特許請求の範囲】の【請求項1】、【請求項4】
「【請求項1】
第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層に対して積層状に位置する第2の絶縁層と、
前記第2の絶縁層に埋め込まれて設けられた、端子を有する電気/電子部品と、
前記第1の絶縁層と前記第2の絶縁層とに挟まれて設けられた、前記電気/電子部品の実装用ランドを含む配線パターンと、
前記電気/電子部品の前記端子と前記実装用ランドとを接続する接続部とを具備し、
前記電気/電子部品の前記端子が、材料として、融点260℃以上の金属、合金、およびこれらを含有する組成物からなる群より選択される1種以上からなること
を特徴とする部品内蔵配線板。
・・・
【請求項4】
前記接続部が、融点260℃以上の半田、または導電性接着性樹脂であることを特徴とする請求項1記載の部品内蔵配線板。」

イ.段落【0001】
「本発明は、絶縁板中に電気/電子部品を埋設して有する部品内蔵配線板に係り、特に、部品内蔵が配線板としての信頼性低下につながるのを防止するのに好適な部品内蔵配線板に関する。」

ウ.段落【0021】
「以上を踏まえ、以下では本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る部品内蔵配線板の構成を模式的に示す断面図である。図1に示すように、この部品内蔵配線板は、絶縁層11(第1の絶縁層)、同12、同13、同14、同15(12、13、14、15で第2の絶縁層)、配線層21(第2の配線パターン)、同22(配線パターン)、同23(もうひとつの第2の配線パターン)、同24、同25、同26(=合計6層)、層間接続体31、同32、同34、同35、スルーホール導電体33、チップ部品41(電気/電子部品)、接続部51を有する。」

エ.段落【0022】
「チップ部品41は、ここでは例えばチップコンデンサであり、その平面的な大きさは例えば0.6mm×0.3mm、あるいは例えば1.0mm×0.5mmである。両端に端子(電極)41aを有し、その下側が配線層22による内蔵部品実装用ランドに対向位置している。チップ部品41の端子41aと実装用ランドとは接続部51により電気的・機械的に接続されている。」

オ.段落【0039】
「図3から説明する。図3は、図1中に示した各構成のうち絶縁層11を中心とした部分の製造工程を示している。まず、図3(a)に示すように、厚さ例えば18μmの金属箔(電解銅箔)22A上に例えばスクリーン印刷により、層間接続体31となるペースト状の導電性組成物をほぼ円錐形のバンプ状(底面径例えば200μm、高さ例えば160μm)に形成する。この導電性組成物は、ペースト状の樹脂中に銀、金、銅などの金属微細粒または炭素微細粒を分散させたものである。説明の都合で金属箔22Aの下面に印刷しているが上面でもよい(以下の各図も同じである)。層間接続体31の印刷後これを乾燥させて硬化させる。」

カ.段落【0041】
「次に、図3(d)に示すように、片側の金属箔22Aに例えば周知のフォトリソグラフィによるパターニングを施し、これを、実装用ランド22aを含む配線パターン22に加工する。そして、加工により得られた実装用ランド22a上に、図3(e)に示すように、例えばスクリーン印刷によりクリーム半田51Aを印刷する。クリーム半田51Aは、フラックス中に微細な半田粒(ここでは融点260℃以上300℃以下)を分散させたものでありスクリーン印刷を用いれば容易に所定パターンに印刷できる。スクリーン印刷に代えてディスペンサを使用することもできる。なお、すでに説明したように、ここでクリーム半田51Aに代えて導電性接着性樹脂(硬化前のもの)を使用することもできる。」

記載事項ウには、絶縁層11が第1の絶縁層であり、絶縁層12?15が第2の絶縁層であることが記載され、また、図1には、配線パターン22が、第1の絶縁層11と第2の絶縁層12?15の内の絶縁層12に「接して」いることが記載されており、更に、記載事項ウ、エには、チップ部品41(電気/電子部品)が、両端に端子(電極)41aを有していること、即ち、「2つ以上の端子を有する」ことが記載されている。

上記記載事項ア、認定事項及び図示内容を総合して、本願発明に則って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層に対して積層状に位置する第2の絶縁層と、
前記第2の絶縁層に埋め込まれて設けられた、2つ以上の端子を有する電気/電子部品と、
前記第1の絶縁層と前記第2の絶縁層とに接して挟まれて設けられた、前記電気/電子部品の実装用ランドを含む配線パターンと、
前記電気/電子部品の前記端子と前記実装用ランドとを電気的・機械的に接続する半田とを具備する部品内蔵配線板。」

第4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
a.引用発明における「第2の絶縁層に埋め込まれて設けられた」とは「第2の絶縁層に埋設された」ことに他ならない。

b.本願発明の「配線パターン」は、ランドと延設パターンとを有するものであるが、その延設パターンについては、明細書に特段説明がなされていない。そこで、本願明細書の記載を参酌すると、本願明細書の段落【0052】、【0054】に「ランド22aから延設されるパターン」という記載があり、本願の図1、5において、配線パターン22の一端部が実装用ランド22aとして指示されている点を併せ勘案すると、「延設パターン」とは、ランド22aと連続する配線パターン22のことと認められ、このことを、請求項1において「複数のランドと該複数のランドからの延設パターン」と特定しているものと認められる。
他方、引用発明の「配線パターン」についてみるに、刊行物1の図1、3に記載されるとおり、配線パターン22の一端部に(クリーム)半田が載置されており、この部分が実装用ランド22a(記載事項カ参照)であるから、引用発明の「配線パターン」も、本願発明と同様に、「ランドとランドからの延設パターン」を有しているものと言える。
次に、本願発明の「表層まで銅でできた」という技術事項について検討すると、当該技術事項は、平成24年11月26日付けの手続補正により追加補正されたものであるところ、請求人は、同日付けの意見書において、「補正の根拠」として、次のように記載している。
「また、『表層まで銅でできた配線パターン』については、例えば段落0057に『…。まず、図5(a)に示すように、厚さ例えば18μmの金属箔(電解銅箔)22A上に例えば…。』とあることにより、この銅箔からパターン形成される配線パターン(配線層)22は、表層まで銅でできた配線パターンになることは明白であると思料します。」(同意見書3頁22?25行)
他方、引用発明の「配線パターン」は、刊行物1の段落【0039】、【0041】(上記記載事項オ、カ参照)に、「厚さ例えば18μmの金属箔(電解銅箔)22A」、「片側の金属箔22Aに例えば周知のフォトリソグラフィによるパターニングを施し、これを、実装用ランド22aを含む配線パターン22に加工する。」と記載されるものである。
してみると、引用発明の配線パターン22も、表層まで銅でできたものであることは明白である。
以上のことを総合すると、引用発明の「前記第1の絶縁層と前記第2の絶縁層とに接して挟まれて設けられた、前記電気/電子部品の実装用ランドを含む配線パターン」は、本願発明の「前記電気/電子部品を実装するための複数のランドと該複数のランドからの延設パターンとを有し、該複数のランドと該延設パターンの方向および太さとを要素とする平面図形が180度点対称図形であり、かつ、前記第1の絶縁層と前記第2の絶縁層とに接して挟まれて設けられている、表層まで銅でできた配線パターン」と、「前記電気/電子部品を実装するための複数のランドと該複数のランドからの延設パターンとを有し、前記第1の絶縁層と前記第2の絶縁層とに接して挟まれて設けられている、表層まで銅でできた配線パターン」で共通するものである。

c.引用発明の「電気/電子部品」は2つ以上の端子を有するものであるから、引用発明の「前記電気/電子部品の前記端子と前記実装用ランドとを電気的・機械的に接続する半田」は、本願発明の「前記配線パターンの前記複数のランドと前記電気/電子部品の前記2つ以上の端子とを電気的、機械的に接続するはんだ」に相当する。

以上の点からみて、本願発明と引用発明とは、
[一致点]
「第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層に対して積層状に位置する第2の絶縁層と、
前記第2の絶縁層に埋設された、2つ以上の端子を有する電気/電子部品と、
前記電気/電子部品を実装するための複数のランドと該複数のランドからの延設パターンとを有し、前記第1の絶縁層と前記第2の絶縁層とに接して挟まれて設けられている、表層まで銅でできた配線パターンと、
前記配線パターンの前記複数のランドと前記電気/電子部品の前記2つ以上の端子とを電気的、機械的に接続するはんだと
を具備する部品内蔵配線板。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点]
配線パターンが、本願発明では「該複数のランドと該延設パターンの方向および太さとを要素とする平面図形が180度点対称図形」であるのに対し、引用発明では、配線パターンの平面図形が明らかでない点。

第5 判断
刊行物1には、配線パターン22に関し、断面図(例えば、図1、3)のみが記載され、平面図、即ち、平面図形は記載されていない。
しかしながら、配線パターン22として配置されている以上、何らかの平面図形を有していることは言うまでもない。
ところで、配線パターンの平面図形が、複数のランドと延設パターンの方向及び太さとを要素とする平面図形が180度点対称図形の配線パターンは、例えば、原査定の拒絶の理由で引用した特開2006-165003号公報(刊行物2:段落【0004】、図15参照)、同じく引用した特開2006-294932号公報(刊行物3:段落【0002】、図5参照)等に記載されるように、当該技術分野における周知の技術事項である。
そうすると、引用発明において、平面図形が明らかでないとしても、「ランドとランドからの延設パターン」を有する配線パターンについて、上記周知の技術事項を採用して、平面図形を180度点対称図形とすることは、その適用を阻害する事由がない以上、当業者が容易に想到し得ることといわざるをえない。

そして、本願発明による効果も、引用発明及び周知の技術事項から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、請求人は、刊行物2、3記載の配線パターンについて、平成26年3月28日提出の回答書において、「引用文献2、3では、技術常識からして、そのパターン上には、はんだが載っている領域を除いて腐食防止のため何らかの保護膜(はんだレジスト膜やニッケル金めっき層など)が形成されているとみるのが相当でありますので、これらはそのことによって良好なフィレットを形成できる構成であります」(回答書3頁20?23行)と主張する。確かに、刊行物2、3記載のプリント基板は、電子部品が表面実装されるものであるから、請求人が主張するように、配線パターンの上には、はんだが載っている領域を除いて保護膜が形成される可能性が高いものである(両刊行物には、保護膜が形成される旨の記載はない。)。
しかしながら、引用発明の配線パターン22は、本願発明の配線パターン22と同様に、第1の絶縁層と第2の絶縁層とに接して挟まれて設けられるものであり、配線層(配線パターン)21や26のように、配線板の表面に形成されるものではないから、引用発明においては、本願発明と同様に、配線パターンの上面に腐食防止のための保護膜を形成する必要がないことは明らかである。
また、仮に、刊行物2、3記載の配線パターンは保護膜が形成されるものであったとしても、上記判断のとおり、刊行物2、3は配線パターンの平面図形についての周知の技術事項として引用したものであって、配線パターンの保護層などの構成を含めて引用したものではない。
したがって、請求人の主張は採用できない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-06-26 
結審通知日 2014-07-01 
審決日 2014-07-15 
出願番号 特願2008-203804(P2008-203804)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉澤 秀明  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 小関 峰夫
森川 元嗣
発明の名称 部品内蔵配線板  
代理人 須山 佐一  

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