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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47J
管理番号 1291346
審判番号 不服2013-16297  
総通号数 178 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-08-23 
確定日 2014-08-28 
事件の表示 特願2008-195574号「ドリップ用バッグ」拒絶査定不服審判事件〔平成22年2月12日出願公開、特開2010-29484号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成20年7月30日の出願であって、平成25年6月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成25年8月23日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日に手続補正がなされたものである。

2.本願発明

本願の特許請求の範囲の請求項1?4に係る発明は、平成25年8月23日の手続補正により補正された特許請求の範囲及び明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載されたとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「濾過機能を有するフィルター材からなる袋体に注出成分を有する内容物を封入したドリップ用バッグであって、
前記フィルター材がポリプロピレンを混抄した不織布からなり、2枚の前記フィルター材を重ね合わせて周縁を接着することにより形成された底縁熱接着部と、当該底縁熱接着部に連接し上方に向かって拡開するようにして形成された側縁熱接着部と、前記底縁熱接着部と対向するようにして形成された上縁熱接着部とにより袋体を形成し、該袋体の中に内容物を封入した構成とされ、且つ、前記上縁熱接着部が、複数の独立した微小熱接着部から構成され剥離可能に熱接着されており、
前記上縁熱接着部を構成する複数の独立した微小熱接着部の全面積が前記上縁熱接着部の面積に対して1?25%の面積比率であり、
前記上縁熱接着部を構成する前記微小熱接着部が碁盤目状に形成され、前記微小熱接着部が矩形状で一辺の長さが0.2mm?1.0mmとされ、隣接する微小熱接着部との間隔が1.0mm?1.8mmであり、
前記上縁熱接着部の熱接着強度が1.0?3.0N/15mm幅であることを特徴とするドリップ用バッグ。」

なお、平成25年8月23日の手続補正における特許請求の範囲についての補正は、補正前の請求項1?3に係る発明を削除し、補正前の請求項1?3を引用する請求項4を新たに請求項1としたものであり、特許法第17条の2第5項第1号の請求項の削除を目的としたものである。

3.引用文献

これに対して、原査定の拒絶理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である
特開2004-180852号公報(以下「引用文献1」という。)、
特開2003-95330号公報(以下「引用文献2」という。)並びに
原査定において周知例として示された
特開2005-110729号公報(以下「周知例1」という。)及び
実願平3-5900(実開平4-102932号)のマイクロフィルム(以下「周知例2」という。)、
前置報告書において周知例として示された
特開2008-50021号公報(以下「周知例3」という。)及び
特開2007-282918号公報(以下「周知例4」という。)には、
それぞれ以下の事項が記載されている。

[引用文献1について]
(1a)「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、レギュラーコーヒー粉、紅茶や緑茶の葉等の被抽出成分を有する内容物を漉すときに使用するドリッパーに関し、さらに詳しくは、被抽出成分を有する内容物を一体的に収納した使い捨てタイプのドリッパーに関する。」
(1b)「【0018】また、図1に示すように、前記袋体3は、その両側端縁に容易に剥がれない強固な接着部32を有すると共に前記袋体3の前記開口部と反対側の下端部(図1上の下側部)は折部33となっている。」
(1c)「【0020】次に、本発明に用いる袋体について説明する。袋体3としては、濾過機能を有する素材であれば特に限定するものではないが、袋体3とするときの加工性を考慮すると素材それ自体が熱接着性を有するもの、あるいは、最内層が熱接着性を有するものが好ましく、たとえば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエステル系等の透水性を有する不織布、あるいは、最内層にポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系やポリエステル系等の熱可塑性樹脂を含有している層を有する2ないし3層構成からなる濾紙等を挙げることができる。」
(1d)「【0021】次に、前記袋体3の製造方法について説明する。前記袋体3は、熱接着性を有する長尺シート、たとえば、最内層に変性ポリプロピレンを含有している3層構成からなる濾紙を、長尺方向と平行に2つ折りして折部33(図1参照)を形成するなり、あるいは、前記折部33(図1参照)をW折り(ガセット折り)するなりして重ね合わせ、所定形状に熱接着(図1上、符号32で示す接着部)し、その後に裁断、および/ないし、型抜き(図1上、折部33が幅狭となると共に前記折部33の反対側の略中央部に一部延設した一対の対向貼着部30、30’を備えた略台形状に型抜き)することにより製造することができる。」
(1e)「【0024】このようにして前記筒状紙体2に前記袋体3が組付けられた半完成品のドリッパーは、その後、前記袋体3内にレギュラーコーヒー粉等の被抽出成分を有する内容物(図示せず)が前記袋体3の開口部から充填され、前記袋体3の前記開口部が剥離可能接着部31(図1参照)となるように熱接着されて本発明のドリッパー1となる。」
(1f)「【0025】次に、前記袋体3の前記開口部の剥離可能接着部31の形成方法について説明する。本発明のドリッパー1は、前記筒状紙体2に前記袋体3を組付け、その後に前記袋体3内にレギュラーコーヒー粉等の被抽出成分を有する内容物(図示せず)を前記袋体3の開口部から充填し、最後に前記袋体3の開口部を前記筒状紙体2の外面から前記筒状紙体2を介して剥離可能接着部31となるように熱接着するものであり、通常用いられる熱板シール方法やインパルスシール方法等では前記筒状紙体2を形成している厚紙を通して前記袋体3の開口部の内面同士を剥離可能に接着することは非常に困難であり、熱接着しようとすると時間を要し、生産効率が落ちると共に前記筒状紙体2の内外面や前記袋体3の表面が焦げて褐変し、見栄えの悪いものとなる。そのために、超音波溶着装置(図示せず)を用いて前記剥離可能接着部31を形成するのが適当であり、より好ましくは、平坦な先端を有する超音波ホーン(図示せず)と、図6に示すようなローレット加工等により微小突起Bを千鳥状に形成した表面Aを有する超音波溶着用受治具(図6上、前記微小突起Bは四角錐状突起を例示している)を具備した超音波溶着装置(図示せず)を用いて形成するのがよい。」
(1g)「【0026】そして、本発明のドリッパー1は、前記剥離可能接着部31を形成する際に、前記筒状紙体2の外面から前記筒状紙体2を介して前記袋体3の開口部を熱接着するものであるが、この熱接着する部位に対応する前記筒状紙体2はほぼ均一な厚さに構成されているために、均一な圧を前記袋体3の開口部にかけることができ、前記剥離可能接着部31を一層剥離する際の剥離力が均一な接着部とすることができると共に、熱接着する部位に対応する前記筒状紙体2に接合部(重ね部)が存在するものと比べると弱い圧で熱接着することができるために、上記したような微小突起Bからなる表面Aを有する超音波溶着用受治具(図6上、前記微小突起Bは四角錐状突起を例示している)を具備した超音波溶着装置(図示せず)を用いても、微小突起Bの凹み模様を表面から目立ち難いものとすることができる。」

よって、引用文献1には、
「被抽出成分を有する内容物を一体的に収納した使い捨てタイプのドリッパーであって、
濾過機能を有する素材であって熱接着性を有するポリプロピレンの透水性を有する不織布からなる袋体を有し、
袋体は該袋体の両側端縁は容易に剥がれない強固な接着部として熱接着され、袋体の開口部は剥離可能接着部として熱接着され、袋体の開口部と反対側の下端部は折部として、当該折部が幅狭となる略台形状であり、
袋体内に被抽出成分を有する内容物を袋体の開口部から充填し、袋体の開口部を剥離可能接着部となるように熱接着してドリッパーとするものであって、
前記剥離可能接着部は平坦な先端を有する超音波ホーンと、ローレット加工等により四角錐状の微小突起を千鳥状に形成した表面を有する超音波溶着用受治具を具備した超音波溶着装置を用いて形成されている、ドリッパー」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

[引用文献2について]
(2a)「【0024】図3に示すように、このコーヒーパック7には、独立した表裏一対の濾紙7a,7bが用いられている。そして、前記表裏一対の濾紙7a,7bは、互いに両者をヒートシール等の手段を利用して接合させることにより形成された底辺シール部7cと、前記底辺シール部から両外側へ拡開するようにして形成された側辺シール部7d,7eと、前記側辺シール部の上端部間を結ぶようにして形成された上辺シール部7fとにより、ほぼ台形形状の袋体を形成している。そして、その内部には飲料抽出用の原料、すなわち、この実施の形態においてはコーヒー粉末8が封入されており、全体として偏平状に形成されている。」
(2b)「【0031】この図5に示すコーヒーパック7においても、図3に示した例と同様に独立した表裏一対の濾紙7a,7bが用いられている。そして、この実施の形態においても、上辺シール部7fの外側縁が、前記底辺シール部7c側を中心とする円弧状の軌跡をもって形成されており、かつ上辺シール部7fにおいて接合状態になされた表裏一対の濾紙7a,7bが、上辺シール部7fの全体にわたって、互いに剥離可能となるように構成されている。」
(2c)「【0032】すなわち、図5に示すコーヒーパック7においては、上辺シール部7fは、他の底辺シール部7cおよび側辺シール部7d,7eに比較して、濾紙7a,7bの互いの接合強度が若干弱めになるように接合されている。これは、各シール部7c?7fを例えばヒートシール手段を採用して接合させる場合においては、接合時に印加される温度や、両者を機械的に圧接させるダイロールのクリアランス(すなわち、ダイロールにより加えられる圧力)等を制御することで、濾紙7a,7bの互いの接合強度を制御することができる。」
(2d)「【0034】また、上辺シール部7fは、その長手方向に沿って間欠的に接合(いわゆるミシン目状に接合)させるように構成しても、同様の結果を得ることができる。さらに、上辺シール部7fを多数のドット状の接合部で集合させた構成としても、同様の結果を得ることができる。これら構成はシール部を形成させるダイスの表面形態を、それに応じて形成することで、容易に実現させることができる。」

[周知例1について]
(3a)「【0026】・・・図1乃至図4は、本発明の実施の形態のコーヒーフィルタを示している。図1に示すように、コーヒーフィルタ10は、第1フィルタ11と第2フィルタ12とを有している。」
(3b)「【0028】第1フィルタ11および第2フィルタ12には、例えば、ポリプロピレンその他の疎水性の合成繊維やレーヨン、ポリエステルその他の親水性の合成繊維、パルプ、マニラ麻その他の親水性の天然繊維などの繊維を組み合わせて不織布としたものを用いることができる。疎水性の繊維と親水性の繊維との組み合わせ比率を調整することにより、全体として親水性を調整することができる。また、厚さ、目の粗さを調整することによりろ過速度を調整することができる。これにより、第1フィルタ11は、第2フィルタ12よりコーヒー豆抽出物に対する吸着性および親水性が大きく、コーヒー液の濾過速度が速くなっている。コーヒーフィルタ10は、薄い第1フィルタを厚い第2フィルタに貼り付けて補強しているため、フィルタ形状を維持し、反転しても破れない十分な強度を有している。」

[周知例2について]
(4a)「【0001】【産業上の利用分野】本考案はコーヒーフィルターおよびコーヒー袋に関する。」
(4b)「【0019】図1において、Aは本考案の一実施例に係るコーヒーフィルターであり、該コーヒーフィルターAは外袋1と内袋2とからなる二層構造の袋体である。この袋体は略台形状(正確には台形の下底に該当する辺は円弧である)であり、下底に該当する辺が開放した構造である。外袋1および内袋2は、いずれもポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアクリル、ポリスチレンなどの熱可塑性合成繊維が30重量%以上混入された紙または不織布で作製されている。このように熱可塑性合成繊維が30重量%混入された紙または不織を用いているのは、本考案のコーヒーフィルタAがすべて熱接着加工により袋状に加工されるためである。」

[周知例3について]
(5a)「【0001】本発明は、ドリップバッグに関し、詳しくは、カップ上に載置した状態で湯を注ぎ入れることによってカップ内にコーヒーを抽出するドリップバッグに関する。」
(5b)「【0012】このドリップバッグ11は、図1に示すように、コーヒー粒子が充填される袋体12と、この袋体12の表裏両面にそれぞれ設けられた薄板状保持部材13とで形成されている。袋体12は、通水性、濾過性を有するシートで形成された矩形状のもので、図2に示すような所定幅の長尺シート材14を所定長さで切断し、幅方向中央の折曲線15に沿って二つ折りするとともに、対向する切断部16同士を貼り合わせることにより、シート材幅方向の両端部17,17の対向部分が開口した状態の袋状に形成される。このシート材幅方向両端部17,17は、袋体12における上端部17a(図1参照)の開口部となるものであって、袋体12内にコーヒー粒子を充填した後に易剥離状態でシールされる。」
(5c)「【0013】袋体12を形成するシートは、従来からこの種のドリップバッグ用に使用されている各種シート材を使用することが可能であり、例えば、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ビニロン等の合成繊維、レーヨン等の半合成繊維や、これらの合成繊維と天然繊維との複合繊維を使用した織布や不織布を用いることができる。また、袋体12を形成するシートは、図2に示した製造手順では、切断部16同士は難剥離状態でシールし、シート材幅方向両端部17同士は易剥離状態でシールする必要があることから、貼り合わせ強度を簡単に調節できる材料を選択することが望ましい。」
(5d)「【0014】シート材として合成樹脂を用いたときのシールは、超音波融着法や熱融着法を利用して容易に行うことができる。難剥離状態と易剥離状態とのシール状態の調節は、超音波融着法の場合は超音波の強度や時間、接触部の形状を調節することにより、熱融着法の場合は温度や時間、加熱時の圧力を調節することにより、簡単に行うことができる。難剥離状態における融着強度は、例えば、12N/15mm以上とすることが好ましく、易剥離状態における融着強度は、1?6N/15mmの範囲が適当であり、好ましくは2?4N/15mmの範囲が適当である。易剥離状態における融着強度が1N/15mm未満では剥がれやすくなって使用前にシール部が剥離してしまうことがあり、融着強度が6N/15mmを超えるとシール部を剥離する際に強い力が必要となって好ましくない。」

[周知例4について]
(6a)「【0058】ここで、包装袋2におけるサイドシール部23、蓋部接着部27、およびボトムシール部29におけるエンボス状のパターン加工されたヒートシール加工について説明する。」
(6b)「【0059】・・・蓋部接着部27においては、溝深さMが1.0mm、天口Nが0.6×0.6mm、ピッチPが1.5mm、傾斜角Qが45°のものが用いられ、形状は、千鳥格子が例示できる。・・・なお、蓋部接着部27は、エンボスパターンとして、溝深さMが1.0mm、天口Nが0.3×1.2mm、ピッチPが1.0mm、傾斜角Qが45°であって、形状が長方形のものを用いることもできる。このように、エンボスの形状を長方形にすることで蓋部24をはがし易くすることができる。」

4.対比

本願発明と引用発明とを対比すると、
引用発明の「被抽出成分を有する内容物を一体的に収納したドリッパー」は、その機能と構造からみて、本願発明の「注出成分を有する内容物を封入したドリップ用バッグ」に相当する。
また、引用発明の「濾過機能を有する素材であって透水性を有する不織布からなる袋体」は、その素材と機能からみて、本願発明の「濾過機能を有するフィルター材が不織布である袋体」に相当し、引用発明の袋体と本願発明の袋体とは、素材にポリプロピレンを含む点で共通する。
また、引用発明の袋体は、該袋体の両側端縁は容易に剥がれない強固な接着部として熱接着され、袋体の開口部は剥離可能接着部として熱接着され、袋体の開口部と反対側の下端部は折部として、当該折部が幅狭となる略台形状であって、袋体の両側端縁の接着部は折部から上方に向かって拡開するような形状であることは明らかであるから、引用発明の「熱接着された袋体の両側端縁の容易に剥がれない強固な接着部」、「熱接着された袋体の開口部の剥離可能接着部」は、本願発明の「側縁熱接着部」、「上縁熱接着部」に、それぞれ相当し、引用発明の「折部」は、本願発明の「底縁熱接着部」と、底縁部という点で共通する。
また、引用発明の「袋体内に被抽出成分を有する内容物を袋体の開口部から充填し、袋体の開口部を剥離可能接着部となるように熱接着してドリッパーとする」ことは、本願発明の「袋体の中に内容物を封入した構成」に相当する。
そして一般に、平坦な先端を有する超音波ホーンと、ローレット加工された表面を有する超音波溶着用受治具を具備した超音波溶着装置を用いて不織布を熱接着すると、その熱接着部は当該受治具の表面パターンと同じパターンが形成されることが本願出願前周知であるから(必要であれば特開平5-78973号公報【0013】?【0014】参照)、引用発明の剥離可能接着部は、四角錐状の微小突起を千鳥状に形成した表面を有する超音波溶着用受治具と同じパターンが形成されること、すなわち、四角錐状の微小な凹み模様の熱接着部が複数独立した千鳥状に形成されることは明らかである。そして、四角錐状の微小な凹み模様の熱接着部の輪郭は矩形状となることから、当該熱接着部は全体として矩形状ということができる。
また、千鳥状は碁盤目状の一態様ということができる(「碁盤目状」の発明特定事項を有する本願の請求項1を引用する請求項2において「千鳥状」という限定をしていることからも明らかである)。

よって、本願発明と引用発明は、
「濾過機能を有するフィルター材からなる袋体に注出成分を有する内容物を封入したドリップ用バッグであって、前記フィルター材がポリプロピレンを含む不織布からなり、底縁部と、当該底縁部に連接し上方に向かって拡開するようにして形成された側縁熱接着部と、前記底縁部と対向するようにして形成された上縁熱接着部とにより袋体を形成し、該袋体の中に内容物を封入した構成とされ、且つ、前記上縁熱接着部が、複数の独立した微小熱接着部から構成され剥離可能に熱接着されており、前記上縁熱接着部を構成する前記微小熱接着部が碁盤目状に形成され、前記微小熱接着部が矩形状である、ドリップ用バッグ。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
袋体の底縁部について、本願発明においては、2枚のフィルター材を重ね合わせて周縁を接着することにより形成された底縁熱接着部であるのに対して、引用発明においては、折部により形成している点。

(相違点2)
ポリプロピレンを含む不織布からなるフィルター材について、本願発明においては、ポリプロピレンを混抄したものであるのに対して、引用発明においては、ポリプロピレンを混抄したものであるかどうかは明らかでない点。

(相違点3)
上縁熱接着部の構成する複数の独立した微小熱接着部について、本願発明においては、微小熱接着部の全面積が上縁熱接着部の面積に対して1?25%の面積比率であり、矩形の一辺の長さが0.2mm?1.0mmとされ、隣接する微小熱接着部との間隔が1.0mm?1.8mmであり、上縁熱接着部の熱接着強度が1.0?3.0N/15mm幅であるのに対して、引用発明においては、矩形状の微小熱接着部の具体的大きさや間隔、上縁熱接着部の面積に対する面積比率、並びに上縁熱接着部の熱接着強度については、明らかでない点。

5.判断

上記相違点について検討する。
まず相違点1について検討すると、引用文献2には、内部に飲料抽出用の原料が封入されたコーヒーパックについて、独立した表裏一対の濾紙7a,7bを用い、両者をヒートシール等の手段を利用して接合させることにより、底辺シール部7cと、前記底辺シール部から両外側へ拡開するようにして形成された側辺シール部7d,7eと、前記側辺シール部の上端部間を結ぶようにして形成された上辺シール部7fとにより、ほぼ台形形状の袋体を形成することが記載されており(上記記載事項(2a)参照)、かつ上辺シール部7fにおいて接合状態になされた表裏一対の濾紙7a,7bが、上辺シール部7fの全体にわたって、互いに剥離可能となるように構成されることが記載されている(上記記載事項(2b)参照)。
引用発明と引用文献2に記載された発明とは、被抽出成分を有する内容物を一体的に収納した略台形形状のドリッパーの袋体という同じ技術分野に属し、袋体の両側端縁及び開口部を熱接着し、開口部は剥離可能な接着部とする構成についても共通するものであるところ、引用発明の袋体を、引用文献2記載のように表裏一対の2枚のフィルター材を用い、両者をヒートシール等の手段を利用して接合させて、底縁部を含め周縁をすべて熱接着部により形成することに格段の困難性はないから、上記相違点1についての本願発明のようにすることは、当業者が容易になし得ることといえる。

次に相違点2について検討する。コーヒーフィルターの技術分野において、ポリプロピレンを含む不織布からなるフィルター材をポリプロピレンを混抄して形成することは本願出願前周知の技術であり、例えば周知例1の上記記載事項(3b)、周知例2の上記記載事項(4b)に示されている。
したがって、引用発明のポリプロピレンを含む不織布からなるフィルター材についてポリプロピレンを混抄して形成すること、すなわち上記相違点2についての本願発明のようにすることは、当業者であれば容易になし得ることである。

相違点3について検討する。コーヒー粒子が充填された袋体の開口部をコーヒー粒子を充填した後に易剥離状態でシールしてあるドリップバッグに関して、ポリプロピレンの合成繊維を使用した不織布の袋体の超音波融着法によるシールを、超音波の強度や時間、接触部の形状を調節することにより易剥離状態のシール状態とすることができ、その易剥離状態における融着強度は1?6N/15mmの範囲が適当であることは、例えば周知例3にみられるように本願出願前周知の技術である(上記記載事項(5a)?(5d)参照)。
引用発明の袋体は周知例3にみられるような袋体と同様、ポリプロピレンを含む不織布を素材とし、その開口部を剥離可能接着部となるように超音波溶着装置により熱接着したものであるから、その剥離可能接着部の熱接着強度は上記本願出願前周知の技術である1?6N/15mmの範囲内にあることは当業者であれば当然に理解し得ることである。
そして、超音波融着法の場合は超音波の強度や時間、接触部の形状を調節することにより難剥離状態と易剥離状態となるシール状態を調節するものであることを踏まえれば、引用発明の剥離可能接着部の熱接着強度を1?6N/15mmの範囲内である1.0?3.0N/15mm幅に調節するにあたり、接触部の形状を形成する超音波溶着用受治具の表面形状の調節、すなわち四角錐状の微小突起の大きさ、千鳥状の配列間隔の調節を通じて、剥離可能接着部に形成される微小熱接着部の大きさや間隔、剥離可能接着部における面積比率を調節することは当業者が容易になし得ることであり、その際、微小熱接着部の全面積を剥離可能接着部の面積に対して1?25%の面積比率、矩形の一辺の長さを0.2mm?1.0mm、隣接する微小熱接着部との間隔を1.0mm?1.8mmと数値範囲を具体化した点についても、例えば周知例4の上記記載事項(6a)、(6b)に記載された例にみられるようにヒートシール加工の熱接着部のパターンとして本願出願前より通常採用される大きさ・配置の数値範囲内のものであることを考慮すれば、当業者が通常の創作能力を発揮することにより採用し得た設計的事項にすぎないものである。
したがって、引用発明において、上記相違点3についての本願発明のようにすることは、当業者が容易になし得ることといえる。

そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用文献1及び2に記載された発明並びに周知例1?4にみられるような本願出願前周知の技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

したがって、本願発明は、引用文献1及び2に記載された発明並びに周知例1?4にみられるような本願出願前周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-06-30 
結審通知日 2014-07-01 
審決日 2014-07-14 
出願番号 特願2008-195574(P2008-195574)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A47J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山城 正機  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 千壽 哲郎
山崎 勝司
発明の名称 ドリップ用バッグ  
代理人 伊藤 英生  
代理人 立石 英之  
代理人 後藤 直樹  
代理人 藤枡 裕実  
代理人 伊藤 裕介  
代理人 深町 圭子  

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