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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1291502
審判番号 不服2012-2261  
総通号数 178 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-02-06 
確定日 2014-09-24 
事件の表示 特願2006- 64119「眼の光力学的治療による視力改善用組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成18年10月12日出願公開、特開2006-273853〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、1997年2月25日(パリ条約による優先権主張1996年3月11日、米国)を国際出願日とする特願平9-532132号の一部を平成18年3月9日に新たな特許出願としたものであって、平成23年9月28日付けで拒絶査定がなされ、平成24年2月6日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?31に係る発明は、平成24年2月6日付け手続補正書の特許請求の範囲1?31に記載された事項により特定されたものであるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。なお、手続補正書で付されている下線は省略した。
「【請求項1】
下記処置を含む反復ホトダイナミックセラピーにより、眼に不所望の血管新生を含有する人の視力を改善するための組成物であって、薬理学的に許容可能な賦形剤と光活性化合物を含有し、該光活性化合物がグリーンポルフィリンである薬剤組成物:
a)該光活性化合物により吸収される少なくとも1つの波長の光を、その治療を必要とする人の眼に対し、該組成物を投与して該眼中に該化合物の有効量が局在化した後に照射する第1回の処置(但し、該光活性化合物の投与用量は、2?8mg/M^(2)体表面積の範囲とする)、並びに
b)該第1回の処置が反復される第1回の反復処置(但し、該平均視力は、該第1回の反復処置により、平均視力の維持のレベルを超えて、増大する)。」

第3 刊行物の記載
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である、U. Schmidt-Erfurth, et al., Investigative Ophthalmology & Visual Science, 37(3), 1996, p.S122(要旨番号580-B492)、及び特表平6-508834号公報(以下、それぞれ「引用例1」及び「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。
なお、引用例1は英文であるため訳文を示し、引用例1及び2の下線は当審で付した。

1 引用例1
(1) 「ベンゾポルフィリン誘導体を用いた中心窩下脈絡膜血管新生のホトダイナミックセラピー:多施設研究の最初の結果」(題名)
(2) 「目的:ホトダイナミックセラピー(PDT)は、追加的な網膜ダメージを引き起こすことなく、選択的に脈絡膜新生血管(CNV)を処置する新たなアプローチを潜在的に示す。PDTは中心窩下CNVを有する患者の多施設第I/II相臨床試験において評価される。視力、並びに、臨床上及び血管造影法上の所見が分析され、異なるグループの結果が要約される。」
(3) 「方法:リポソーム化ベンゾポルフィリン誘導体モノアシッドA(BPD、ベルテポルフィン)が一投与6または12mg/m^(2)の量で静脈内投与された。投与後20または30分で、50、75、100、及び150J/cm^(2)の光照射が施された。光活性化は、692nm及び600mW/cm^(2)を放射するダイオードレーザー/スリットランプシステムによってなされた。PDTの効果は、眼底撮影、血管造影、及び、標準MPS基準に従い、PDT投与前、投与後1週間、1か月、3か月のモニタリングによって記録された。」
(4) 「結果:63名の中心窩下CNVを有する患者が単回のBPD-PDT処置を受けた。PDT後、CNVの部分的閉止が全ての損傷において示された。投与後20分後の照射は、1週間後に66?100%の割合で完全な閉止を生じた。変視症及び漏出は全ての患者において顕著に減少した一方、平均視力は+0.42(^(+)1.57)のラインで安定にとどまった。CNVの局所的な持続又は再発の領域は経過観察の間、ゆっくりとのみ拡大した。閉止は潜在的CNVの領域だけでなく、典型的なCNVの領域にも認められた。」
(5) 「結論:試験的研究において、PDTによるCNVの選択的閉止が、大多数の患者において、視力を保存しつつ少なくとも部分的に達成された。CNVの完全な寛解を得るために適したパラメーターが本臨床試験に続く相で定義されなければならない。」

2 引用例2
「種々の光治療や照射の方法論は当業者に公知であり、本発明の新規ポルフィセン化合物を用いて行うことができる。治療の時期と期間、照射処理の回数は治療者(医者あるいは放射線専門医)によって、公知の光力学的治療の基準に基づいて選択される。ポルフィセン化合物の用量は破壊されるべき標的組織の大きさや場所、及び投与方法によって異なる。」(8頁左上欄下から6行?下から2行)

第4 引用発明の認定、対比
1 引用発明の認定
(1) 上記第3の1の摘示事項(3)には、摘示事項(1)の「ベンゾポルフィリン誘導体」に対応するものとして「リポソーム化ベンゾポルフィリン誘導体モノアシッドA(BPD、ベルテポルフィン)」、すなわちリポソーム化されたベルテポルフィンが記載されている。
また、リポソーム化されたベルテポルフィンを静脈内投与する際、通常、薬理学的に許容可能な賦形剤を含有させた組成物として投与するものと認められ、ホトダイナミックセラピーを含め、治療に用いる組成物が薬剤組成物にあたることは明らかといえる。
(2) したがって、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「下記処置を含むホトダイナミックセラピーにより、中心窩下脈絡膜血管新生を含有する患者の平均視力を+0.42(^(+)1.57)のラインで安定にとどめるための組成物であって、薬理学的に許容可能な賦形剤とリポソーム化されたベルテポルフィンを含有する組成物:
692nmの光を、その治療を必要とする人に対し、該組成物を投与後20または30分に照射する処置(但し、ベルテポルフィンの投与用量は、6mg/m^(2)とする。)。」

2 本願発明と引用発明の対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1) 本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「中心窩下脈絡膜」は眼の一部であるから、中心窩下脈絡膜血管新生は眼の血管新生にあたり、かつ、該血管新生は治療の対象であって、不所望のものといえる。そうすると、引用発明の「中心窩下脈絡膜血管新生を含有する患者」は、本願発明の「眼に不所望の血管新生を含有する人」にあたる。
引用発明の「平均視力を+0.42(^(+)1.57)のラインで安定にとどめる」は、63名の試験対象患者の視力の平均値が処置前に比べて増加したことを意味するから、本願発明の「視力を改善する」にあたる。
引用発明「ベルテポルフィン」は、その一部が1つのカルボキシル基で置換された、ベンゾポルフィリン骨格を有する2種の位置異性体の1:1混合物である(例えば、http://www.info.pmda.go.jp/downfiles/ph/PDF/300242_1319401F1026_2_05.pdfの5頁【有効成分に関する理化学的知見】の項参照。)ところ、上記2種の位置異性体の構造は、本願明細書の段落【0015】でグリーンポルフィリンの好ましい実施形態として挙げられる、「図1の化合物(3)に示された式に含まれるものであり、ここでR^(1)及びR^(2)はメトキシカルボニルであり、一つのR^(3)は-CH_(2)CH_(2)COOCH_(3)で、他方のR^(3)は-CH_(2)CH_(2)COOHであり、R^(4)は、CH=CH_(2)、即ちBPD-MA」の共鳴構造にあたる。また、上記第3の1の摘示事項(3)にあるように、引用発明における「692nmの光」は光活性化に用いられるところ、本願明細書の段落【0025】及び【0026】において、光活性化合物としてグリーンポルフィリンを用いた場合に、「選択された物質が吸収する波長において照射され」、「照射の結果として、励起状態の光活性化合物」となる光の波長範囲として記載されている「550?695nm」に含まれる。そうすると、引用発明の「ベルテポルフィン」は、本願発明の「グリーンポルフィリン」である「光活性化合物」にあたり、また、引用発明の「692nmの光」は、本願発明の「該光活性化合物により吸収される少なくとも1つの波長の光」にあたる。
引用発明は眼の血管新生を処置の対象とするホトダイナミックセラピーであるから、光活性化のための光を、患者の眼に対して照射することは明らかである。
引用発明ではリポソーム化されたベルテポルフィンを患者に静脈内投与しているが、本願明細書の段落【0018】に、「リポソーム組成物は、光活性化合物がグリーンポルフィリンである場合には特に好ましい」こと、及び、「リポソーム組成物は、血漿の低密度のリポたん白質成分にグリーンポルフィリンを選択的に供与すると考えられており、このリポたん白質成分は、希望する部位に活性成分をより有効に供与するための担体として作用する」ことが記載されているから、本願発明において、希望する部位へ活性成分をより有効に供与するため、すなわち、眼中に化合物の有効量を局在化するために、リポソーム化されたグリーンポルフィリンが用いられるものといえる。そして、本願明細書の実施例においてリポソームBPD-MAを投与後20分又は30分で光照射が行われている。したがって、引用発明において、リポソーム化されたベルテポルフィンの投与後20分又は30分で光照射される際には、リポソーム化されたベルテポルフィンは眼中に局在化していたものといえる。
(2) よって、本願発明と引用発明とは、
「下記処置を含むホトダイナミックセラピーにより、眼に不所望の血管新生を含有する人の視力を改善するための組成物であって、薬理学的に許容可能な賦形剤と光活性化合物を含有し、該光活性化合物がグリーンポルフィリンである薬剤組成物:
a)692nmの波長の光を、その治療を必要とする人の眼に対し、該組成物を投与して該眼中に該化合物の有効量が局在化した後に照射する第1回の処置(但し、該光活性化合物の投与用量は、6mg/M^(2)体表面積とする)。」
である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点>
本願発明では、上記a)と、「b)該第1回の処置が反復される第1回の反復処置(但し、該平均視力は、該第1回の反復処置により、平均視力の維持のレベルを超えて、増大する)」を含む「反復」ホトダイナミックセラピーに用いるものであるのに対し、引用発明では、b)を含む「反復」ホトダイナミックセラピーに用いるものであることが記載されていない点。

第5 相違点についての判断
上記相違点について、以下、検討する。
1 上記相違点について、以下、検討する。
上記第3の1の摘示事項(4)には、単回のホトダイナミックセラピーにより、平均視力として「+0.42(^(+)1.57)」という値が得られたこと、すなわち、平均視力が処置前の平均視力よりも増大したことが記載されている。また、第3の1の摘示事項(2)、(4)、及び(5)には、「ホトダイナミックセラピー(PDT)は、追加的な網膜ダメージを引き起こすことなく、選択的に脈絡膜新生血管(CNV)を処置する新たなアプローチを潜在的に示す」ことが記載されている。
さらに、例えば引用例2に、光力学的治療において「治療の時期と期間、照射処理の回数」は、治療者によって「公知の光力学的治療の基準に基づいて選択される」ことが記載される(第3の2の摘示事項)ように、ホトダイナミックセラピー処置の回数を選択することは当業者が一般に行ってみる事項といえる。
したがって、単回処置により平均視力を増大させ、追加的な網膜ダメージを引き起こすことがない、ホトダイナミックセラピーに用いられる薬剤組成物である引用発明を、平均視力が増大するよう、第1回の処置が反復される反復処置を含む、「反復」ホトダイナミックセラピーに用いることは、当業者にとり格別困難な事項とはいえない。

2 上記1の点について、請求人は意見書(平成22年4月6日付け及び平成23年9月8日付け)、審判請求理由(平成24年4月9日付け手続補正書(方式)参照)、及び回答書において、以下の点を主張する。
(1) 実施例3のデータに基づけば、その視力変化の平均値は、表7及び8に示すとおり、反復処置により明らかな増大を示しており、時間経過を踏まえ、平均値によって視力変化を観察すれば、単回処置に比べて反復処置の効果が顕著であることが自ずと確認でき、これは引用例1の記載から予測できる範囲を超える。
(2) 脈絡膜新生血管完全閉止を目的とする単回ホトダイナミックセラピーの反復は、過剰なホトダイナミックセラピーとなるおそれがあり、重大な全身性の副作用、視力低下、又は網膜への副作用等の安全性の問題があり、特に、網膜への副作用は加齢黄斑変性症に見られる網膜色素上皮萎縮症をより進行させることが当業者には予測されたため、脈絡膜新生血管閉止目的の単回ホトダイナミックセラピーの反復は、副作用のリスクから採用することが困難であった。
(3) 引用例1には、66?100%のCNV閉止があったことを確認したことは記載されているが、「視力の改善」という結論は、明らかに記載されておらず、むしろ「66?100%のCNVの完全な閉止」が認められたにも拘らず、視力の測定結果は、「平均視力は0.42(^(+)1.57)」であり(なお、(^(+)1.57)は(±1.57)の誤記である)、平均視力の増大は認められなかった、ということが、医学的な結論である。

3 しかし、上記2で挙げた請求人の主張は、いずれも以下のとおり理由がなく、採用することができない。
(1) 上記2の主張(1)について
図3に示される10名の患者901?910について、第1回の処置後の視力測定の結果は、1週間後(T1W1)、2週間後(T1W2)、及び3週間後(T1W3)が示されている。また、第2回の処置後の視力測定の結果は、1週間後(T2W1)、2週間後(T2W2)、及び4週間後(T2W4)が、第3回の処置後の視力測定の結果は、1週間後(T3W1)及び4週間後(T3W4)が、それぞれ示されている。
ここで、第1回の処置後の視力測定結果との比較のため、第1回処置後の結果と、第1回処置後と同じ経過期間を経た第2回、第3回の処置後の視力検査の結果として、T1W1、T2W1、及びT3W1をみると、(a)T1W1の結果が示された6名の患者のうち、1名はT2W1の結果が、5名はT3W1の結果が、それぞれ示されていない。また、(b)T2W1の結果が示された6名の患者のうち、1名はT1W1の結果が、4名はT3W1の結果が、それぞれ示されておらず、(c)T3W1の結果が示された6名の患者のうち、4名はT1W1の結果が、4名はT2W1の結果が、それぞれ示されていない。
このように、T1W1、T2W1、及びT3W1の結果が示された各患者群に含まれる患者が異なるところ、そのような異なる患者群についての測定値をもとに平均視力が算出された表7及び8を根拠にしても、請求人のいうような時間経過を踏まえた視力変化の平均値の増大を正確に論じることはできないから、表7及び8に示した結果に基づく請求人の主張は妥当ではない。
そして、図3の結果において、同一の患者からなる群について、単回処置及び反復処置から同じ経過期間を経た各患者の視力の平均を比較しようとしても、(d)T1W1及びT2W1の結果が示されているのは5名、(e)T1W1、T2W1、及びT3W1の結果が示されているのは1名、(f)T1W2及びT2W2の結果が示されているのは4名であり、このようなごく少数の例について平均視力を算出しても、そのような平均視力は統計的に有意なデータであるとはいえない。
(2) 上記2の主張(2)について
脈絡膜新生血管完全閉止を目的とする単回ホトダイナミックセラピーの反復による副作用等の安全性の問題に関し、請求人が挙げるのはいずれも単なる可能性に過ぎないところ、引用例1には「追加的な網膜ダメージを引き起こすことなく」と記載されるように、引用例1に記載された方法では、少なくとも単回処置の場合には副作用が生じないと認められ、処置を反復した場合に副作用等の問題が生じることが記載されているわけでもないから、引用発明を反復して行うことを妨げる特段の事情があると解することはできない。
(3) 上記2の主張(3)について
視力の変化が正の値を示す場合、視力が「増大」したものと解すべきである上、本願明細書の段落【0044】において、「……+0.53の視力の増大」と記載されており、+0.53程度をもって視力の増大としているのであるから、引用例1の平均視力「+0.42(^(+)1.57)」は、視力の増大を示すものというべきである。
なお、請求人は(^(+)1.57)は(±1.57)の誤記であると主張するが、その根拠は示されていない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
それ故、他の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-02-01 
結審通知日 2013-02-05 
審決日 2013-02-18 
出願番号 特願2006-64119(P2006-64119)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安川 聡守安 智  
特許庁審判長 今村 玲英子
特許庁審判官 荒木 英則
前田 佳与子
発明の名称 眼の光力学的治療による視力改善用組成物  
代理人 加藤 朝道  
代理人 内田 潔人  
代理人 加藤 朝道  
代理人 内田 潔人  
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