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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C04B
管理番号 1291829
審判番号 不服2013-23705  
総通号数 179 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-12-03 
確定日 2014-09-30 
事件の表示 特願2008-276589「セメントの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 8月20日出願公開、特開2009-184902、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成20年10月28日(優先権主張 平成20年1月10日)の出願であって、平成24年10月5日付けで拒絶理由が通知され、同年12月14日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成25年8月27日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年12月3日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、手続補正がされたものである。

第2 平成25年12月3日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)について
1.補正の内容
本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(以下、本件補正前の特許請求の範囲の請求項に係る発明を項番号に対応して、「旧本願発明1」などという。)を引用する旧本願発明2を引用する旧本願発明5を、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、本件補正後の特許請求の範囲の請求項に係る発明を項番号に対応して、「本願発明1」などという。)とし、旧本願発明1を引用する旧本願発明2を引用する旧本願発明3を引用する旧本願発明5を、本願発明2とし、旧本願発明1を引用する旧本願発明2を引用する旧本願発明3を引用する旧本願発明4を引用する旧本願発明5を、本願発明3とし、旧本願発明1を引用する旧本願発明2を引用する旧本願発明5を引用する旧本願発明6を、本願発明4とし、その他の請求項に係る発明を削除したものである。

2.補正の適否
上記1から明らかなように、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号の請求項の削除を目的としたものに該当し、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反しないことは明らかである。

第3 本願発明
本願発明は、本件補正による補正後の特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
セメント焼成設備のサスペンションプレヒータ上部から排出される排ガスを、原料粉砕工程でセメント原料の乾燥に使用し、原料粉砕工程から排出される排ガスを電気集塵機で浄化排ガスと集塵ダストとに分離した後、浄化排ガスを大気中に放出し、集塵ダストをセメント原料の一部としてサスペンションプレヒータ上部に送入するセメント製造工程において、
(A)集塵機下流側荷電区で捕集された集塵ダストを含み、集塵機で捕集される集塵ダストの15?35質量%である集塵ダストを、セメントクリンカ製造工程の循環経路から排出する工程と、
(B)工程(A)により排出した集塵ダストを、加熱装置内に導入し、酸素濃度0.5%以下の還元雰囲気中で、400℃以上の温度で加熱処理する工程と、
(C)工程(B)により加熱処理した集塵ダストを、有機塩素化合物が再合成しない速度で、150℃以下の温度まで急速冷却する工程と、
(D)工程(C)により急速冷却した集塵ダストを、セメントクリンカ製造工程の循環経路に戻し、サスペンションプレヒータ上段からセメント原料として再度送入する工程と、
(E)工程(B)において発生する排ガスを、有機塩素化合物が再合成しない速度で、150℃以下の温度まで急速冷却して、水銀を回収する工程と、
(F)工程(E)により急速冷却した排ガス中に残存する有機化合物を、吸収または吸着する工程と
を含むことを特徴とするセメントの製造方法。
【請求項2】
工程(B)において、集塵ダストを加熱処理装置に導入する前に、CaO及び/またはCa(OH)_(2)を集塵ダストに添加する、請求項1記載のセメントの製造方法。
【請求項3】
(G)工程(F)において、排ガス中に残存する有機化合物を吸収または吸着させた吸収剤または吸着剤を、セメント製造工程の燃料として用いる工程、
をさらに含む、請求項1又は2記載のセメントの製造方法。
【請求項4】
セメント製造設備が、電気集塵機を介して、セメントクリンカ製造工程の循環回路に接続された貯蔵タンク、加熱装置、第1及び第2の冷却器を含む一連のラインを備え、
工程(A)において、電気集塵機によって排ガスから捕集された集塵ダストであって、
集塵機下流側荷電区で捕集された集塵ダストを含み、集塵機で捕集される集塵ダストの15?35質量%である集塵ダストを、セメントクリンカ製造工程の循環経路から貯蔵タンクへ排出し、
工程(B)において、工程(A)により排出した集塵ダストを、貯蔵タンクから加熱装置内に導入し、酸素濃度0.5%以下の還元雰囲気中で、400℃以上の温度で加熱処理し、
工程(C)において、工程(B)により加熱処理した集塵ダストを、加熱装置から第1の冷却器内に排出して、有機塩素化合物が再合成しない速度で、150℃以下の温度まで急速冷却し、
工程(D)において、工程(C)により急速冷却した集塵ダストを、第1の冷却器からセメントクリンカ製造工程の循環経路に戻し、サスペンションプレヒータ上段からセメント原料として再度送入し、
工程(E)において、工程(B)において発生する排ガスを、第2の冷却器内に排出して、有機塩素化合物が再合成しない速度で、150℃以下の温度まで急速冷却して、水銀を回収し、
工程(F)において、工程(E)により急速冷却した排ガス中に残存する有機化合物を、第2の冷却器から有機物除去器内に導入し、吸収または吸着する、
請求項1?3のいずれか1項記載のセメントの製造方法。」

第4 原査定の拒絶理由の概要
本願発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用例1:特開2006-45006号公報
引用例2:特開2002-355531号公報
引用例3:特開2004-244308号公報
引用例4:特開平10-325534号公報
引用例5:特開平6-159646号公報

第5 当審の判断
1.引用例1について(下線は、当審が付与した。以下、同じ。)
引用例1には、「セメントキルンの排ガスの処理方法」(発明の名称)について、次の記載がある。
ア 「【0001】
本発明は、各種の廃棄物を原料や燃料として用いるセメントキルンから排出される、水銀等の重金属を含む排ガスの処理方法に関する。」
イ 「【0003】
例えば、セメント製造工程の排ガスから捕集した集塵ダストを加熱炉に導き、集塵ダストに含まれる揮発性金属成分(例えば、水銀)の揮発温度以上に加熱して上記揮発性金属成分をガス化して除去し、揮発性金属成分を除去した集塵ダストをセメント原料の一部に用いることを特徴とするセメント製造排ガスの処理方法が、提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2002-355531号公報」
ウ 「【0006】
・・・(略)・・・加熱して重金属を揮発させる従来の方法と、本発明の方法を併用することもでき、前段階で、本発明の方法を用いて処理して重金属の含有率を低くしておけば、後段階(従来の方法)における熱エネルギーの消費量を削減することができる。 ・・・(略)・・・
【0007】
本発明の排ガスの処理方法は、セメントキルンの排ガスに含まれているダストを、所定の手段を用いて、重金属の含有率の高いダストと、重金属の含有率の低いダストに分離して回収した後、得られた重金属の含有率の低いダストを、セメントキルンに供給するものである。
・・・(略)・・・
【0010】
・・・(略)・・・
「所定の手段」の他の例としては、重金属の含有率の高いダストとして、集塵手段の出口側の部分で捕集されるダストを回収する手段が挙げられる。
・・・(略)・・・
なお、「集塵手段の出口側の部分」とは、集塵手段の内部の所定の地点を境界として、該地点よりも排ガスの上流側の領域と、該地点よりも排ガスの下流側の領域に区分した場合における当該下流側の領域を意味する。
【0011】
この場合、集塵手段の出口側の部分で捕集されるダストを分離し回収するための手段の具体例としては、例えば、次の(a)?(d)が挙げられる。
・・・(略)・・・
【0012】
(b)複数の集塵室を有する集塵機
複数の集塵室を有する集塵機であって、一部の集塵室に収容されるダストを、重金属の含有率の高いダストとし、残部の集塵室に収容されるダストを、重金属の含有率の低いダストとして、別々に回収するように構成した集塵機である。
この集塵機は、次のように、既存の集塵機に若干の改変を加えるだけで作製することができる。
セメントキルンの排ガスの煙道に設置される電気集塵機は、通常、排ガスの流れの方向に直列した複数の荷電室を有する。そして、従来の電気集塵機では、これら複数の荷電室の各々に対して、ダスト収集部(ホッパー)が設けられており、これら複数のダスト収集部に収容されたダストを、一括して回収し処理するようになっている。本発明では、これら複数のダスト収集部の各々の下方に、排ガスの流れと略垂直の方向に延びる輸送路を有する輸送手段を設けて、排ガスの下流側に位置する1つ以上のダスト収集部(好ましくは、最も下流側に位置する1つのダスト収集部)に収容されたダストのみを、重金属の含有率が高いダストとして回収し、かつ、他のダストを、重金属の含有率が低いダストとして回収するものである。
・・・(略)・・・」
エ 「【0015】
以下、本発明の排ガスの処理方法を、図面に基づいて説明する。図1は、本発明の方法で用いられる排ガスの処理システムを示す図である。
図1中、まず、セメントクリンカ原料(具体的には、石灰石、粘土、珪石、鉄滓、鋳物砂・スラグ・アルミナスラッジ・都市ごみの焼却灰等の廃棄物等)を、ドライヤ(乾燥機)1で乾燥した後、原料ミル(粉砕機)2で粉砕して混合し、さらに必要に応じてフライアッシュを添加し、次いで、原料供給路3を経由してサスペンションプレヒータ4に供給する。
ここで、サスペンションプレヒータ4は、熱交換を行ないながらセメントクリンカ原料を予熱するためのものであり、複数のサイクロン4a、4b、4c、4dから構成されている。
セメントクリンカ原料は、サスペンションプレヒータ4内において、上段のサイクロン4aから下方のサイクロンへと順次移動しながら予熱され、ロータリーキルン5へと供給される。なお、ロータリーキルン5は、セメントクリンカを焼成するための加熱炉(セメントキルン)である。
サスペンションプレヒータ4とロータリーキルン5の間には、仮焼炉6を併設してもよい。仮焼炉6は、セメント原料の仮焼(脱炭酸反応)を促進させるために設けられる。
【0016】
・・・(略)・・・
ロータリーキルン5及び仮焼炉6内の燃焼によって発生する排ガス、及び、セメント原料が加熱分解(脱炭酸反応)される際に発生する排ガスは、ロータリーキルン5及び仮焼炉6からサスペンションプレヒータ4内に流入して、サスペンションプレヒータ4内を上方へと移動していき、最上段のサイクロン4aに達した後、最上段のサイクロン4aに接続されている排ガス路8(図1中、一点鎖線で示す。)内に流入する。そして、排ガスは、熱源となるために原料ミル2及びドライヤ1を通過し、排ガス路8から集塵機9内に流入し、集塵機9にて排ガス中のダストを除去する処理を施された後、処理済みガス用排出路10を経由して、最終的には煙突11から大気中へと排出される。
・・・(略)・・・
【0018】
集塵機9で捕集されたダストは、水銀等の重金属の含有率の高いダストを除去する工程(高濃度部の除去工程)を経た後、重金属の含有率の低いダストとして、原料ミル2とサスペンションプレヒータ4の間の所定の地点にて、原料供給路3に投入され、セメントクリンカ原料の一部となる。
高濃度部の除去工程は、上述のとおり、具体的には、未燃カーボンの選択的除去や、集塵手段の内部における排ガスの下流側の部分で捕集されたダストの選択的除去等によって行なわれる。
なお、図1中、矢印Aで示す経路は、高濃度部の除去工程を設けない場合(本発明に該当しない場合)を示し、矢印Bで示す経路は、高濃度部の除去工程を設けた場合(本発明に該当する場合)を示す。」
オ 「【0021】
[実施例2]
セメント工場の電気集塵機(第1荷電室?第4荷電室を有するもの)で捕集したダストのうち、排ガスの入口から第2荷電室までの領域で捕集したダストと、第3荷電室から第4荷電室までの領域で捕集したダストを別々に回収して、・・・(略)・・・
表2から、電気集塵機の出口側の部分(第3荷電室?第4荷電室)で捕集されたダストを除去することによって、ダストに含まれる水銀の量が大幅に減少することがわかる。
【0022】
【表2】



カ 図1


2.引用例2について
引用例2には、「セメント製造排ガスの処理方法」(発明の名称)について、次の記載がある。
「【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明する。本発明の処理方法は、セメント製造工程の排ガスから捕集した集塵ダストを加熱炉に導き、集塵ダストに含まれる揮発性金属成分の揮発温度以上に加熱して上記揮発性金属成分をガス化して除去し、揮発性金属成分を除去した集塵ダストをセメント原料の一部に用いることを特徴とするセメント製造排ガスの処理方法である。・・・(略)・・・
【0010】加熱炉の30の一端から装入された集塵ダスト25は炉内を搬送される間に水銀などの揮発性金属成分の揮発温度以上に加熱され、揮発性金属成分がガス化する。具体的には、概ね300?500℃に加熱するのが好ましい・・・(略)・・・
・・・(略)・・・
【0017】以上の水銀除去装置31の他に、ガス化した揮発性金属成分を冷却して除去する手段を設けても良い。・・・(略)・・・冷却部に導かれた揮発性金属成分のガスはその析出温度以下に冷却される。具体的には例えば50℃以下に冷却され、例えば、水銀は液化して傾斜板表面に析出し、・・・(略)・・・冷却温度は50℃以下が適当であり、低ければ低い方がよい。」

3.引用例3について
引用例3には、「セメント製造装置の排ガスの処理方法及び処理システム」(発明の名称)について、次の記載がある。
「【0002】
・・・(略)・・・
石炭灰、鋳物砂、都市ごみの焼却で発生する燃えがら(主灰)等のように、通常のセメント原料と共にサスペンションプレヒータに投入される廃棄物もある。これらの廃棄物に含まれるダイオキシン類は、完全には分解されず、一部が揮発して、排ガス中に残存することになる。
【0003】
このように分解されずに排ガス中にわずかに残存するダイオキシン類は、排ガスの温度の低下に伴い、排ガスに含まれるダストの表面に吸着される。そして、ダイオキシン類を吸着したダストは、煙道途中に設置された電気集塵機等の集塵機、乾燥機、粉砕機等の装置によって、排ガスから分離され捕集される。
このように、セメントの製造時に発生するダイオキシン類の大部分は、分解または捕集され、系外に排出されることがない。」

4.引用例4について
引用例4には、「廃棄物処理装置における排ガス中の飛灰処理方法」(発明の名称)について、次の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、廃棄物を燃焼処理し、生成した燃焼灰を溶融スラグにして、この溶融スラグを冷却固化させて回収する廃棄物処理装置における排ガス中の飛灰処理方法、より詳しくは、燃焼炉排ガス及び溶融炉排ガスの飛灰中に含まれるダイオキシンの量を低減する廃棄物処理装置における排ガス中の飛灰処理方法に関するものである。」
「【0012】"マル5"(審決注:以下、丸数字を、「"マル5"」などと記載する。)前記加熱装置で前記第1の集塵装置により捕集された飛灰を400℃?600℃に加熱する方法であり、ダイオキシンの分解を促進する温度範囲内に飛灰温度を保つことができる。
【0013】"マル6"前記加熱された飛灰を100℃?200℃の範囲内に急速冷却する方法であり、ダイオキシンの再合成を防止できる温度範囲内に飛灰温度を低下することができる。」

5.引用例5について
引用例5には、「焼却灰処理方法」(発明の名称)について、次の記載がある。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、焼却灰処理方法に係り、さらに詳しくは、ごみ焼却施設から排出される、都市ごみや産業廃棄物を焼却した焼却灰(以下、単に焼却灰という)に含まれる、有害な有機塩素化合物を低減するための焼却灰処理方法に関する。」
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は、焼却灰を加熱して該焼却灰に含まれる有機塩素化合物を分解する焼却灰処理方法において、有機塩素化合物の分解速度を増大させるためには、有機塩素化合物が分解したときに発生する塩素系成分を安定な化合物として固定すればよいことに着目し、鋭意研究の結果、焼却灰を反応活性の高いカルシウム化合物、例えば生石灰の存在下に加熱することにより、有機塩素化合物の分解率が向上することを見出し、本発明に到達した。」
「【0010】本発明において、加熱処理された後の焼却灰は、分解ガスの一部との再結合を防ぐために、高温のまま分解ガスと素早く分離することが好ましく、その後、速やかに250℃以下に急冷することが好ましい。」

6.引用例1に記載された発明の認定
上記摘示事項アによれば、引用例1には、各種の廃棄物を原料や燃料として用いるセメントキルンから排出される、水銀等の重金属を含む排ガスの処理方法が記載されている。
上記摘示事項イによれば、上記処理方法は、重金属の含有率の高いダストを回収するために、集塵手段の出口側の部分で捕集されるダストを回収する手段を有し、具体例として、複数の集塵室を有する集塵機を用いて、セメントキルンの排ガスの煙道に設置された、排ガスの流れの方向に直列した複数の荷電室の、それぞれに設けられたダスト収集部のうち、排ガスの下流側に位置する1つ以上のダスト収集部に収容されたダストのみを、重金属の含有率が高いダストとして回収し、他のダストを、重金属の含有率が低いダストとして回収するものであることがわかる。
上記摘示事項エによれば、上記処理方法で用いられる、排ガスの処理システムでは、
セメントクリンカ原料が、ドライヤ(乾燥機)1で乾燥した後、原料ミル(粉砕機)2で粉砕して混合し、原料供給路3を経由してサスペンションプレヒータ4に供給され、サスペンションプレヒータ4内において、上段のサイクロン4aから下方のサイクロンへと順次移動しながら予熱され、仮焼炉6を経て、ロータリーキルン5へ供給され、
ロータリーキルン5及び仮焼炉6内の燃焼によって発生する排ガス、及び、セメント原料が加熱分解される際に発生する排ガスは、排ガス路8から集塵機9内に流入し、集塵機9にて排ガス中のダストを除去する処理を施された後、処理済みガス用排出路10を経由して、最終的には煙突11から大気中へと排出され、
集塵機9で捕集されたダストは、水銀等の重金属の含有率の高いダストを除去する工程を経た後、重金属の含有率の低いダストとして、原料ミル2とサスペンションプレヒータ4の間の所定の地点にて、原料供給路3に投入され、セメントクリンカ原料の一部となる。
上記摘示事項オによれば、該「(b)複数の集塵室を有する集塵機」を具体化した実施例2では、第1荷電室?第4荷電室からなる電気集塵機で捕集したダストのうち、電気集塵機の出口側の部分(第3荷電室?第4荷電室)で捕集されたダストを除去することによって、ダストに含まれる水銀の量を大幅に減少させたことがわかり、表2から、第1荷電室?第4荷電室で捕集したダストの総量は、43(t/h)(=40+3)であり、除去されるダストである、第3荷電室?第4荷電室で捕集されたダストの総量は、3(t/h)であって、第1荷電室?第4荷電室で捕集したダストの総量の、約7.0(質量%)(=3/43×100)であることがわかる。
そして、カ(図1)及び技術常識に照らして、セメントキルンからの排ガスは、サスペンションプレヒータ4の下部から入り、上部から排出されるものであることは明らかである。
また、引用例1に記載された「セメントキルンから排出される、水銀等の重金属を含む排ガスの処理方法」は、セメント製造における排ガスの処理方法であることは明らかであるから、「セメントキルンから排出される、水銀等の重金属を含む排ガスの処理工程を有するセメントの製造方法」ということができる。

そうすると、引用例1には、実施例2として、
「各種の廃棄物を原料や燃料として用いるセメントキルンから排出される、水銀等の重金属を含む排ガスの処理工程を有するセメントの製造方法において、
セメント処理システムを備え、
セメントクリンカ原料は、ドライヤ1で乾燥された後、原料ミル2で粉砕され、原料供給路3を経由してサスペンションプレヒータ4に供給され、
セメントキルンのサスペンションプレヒータ上部から排出される排ガスの煙道に設置された、排ガスの流れの方向に直列した、上流側から第1荷電室?第4荷電室を有する電気集塵機9による排ガス中のダストを除去する処理を経て、煙突11から大気中へと排出されるものにおいて、
排ガスの上流側に位置する第1荷電室?第2荷電室で捕集されたダストを、重金属の含有率が低いダストとして回収して、セメントクリンカ原料の一部として、原料ミル2とサスペンションプレヒータ4の間の所定の地点にて、原料供給路3に投入し、
排ガスの下流側に位置する第3荷電室?第4荷電室で捕集されたダストを、重金属の含有率が高いダストとして除去するものであり、
第3荷電室?第4荷電室で捕集されたダストの総量は、第1荷電室?第4荷電室で捕集したダストの総量の、約7.0(質量%)である、
セメントの製造方法」(以下、「引用発明」という。)が記載されているということができる。

7.対比・判断
(1)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「セメント処理システム」、「セメントクリンカ原料」、「煙突11から大気中に排出される排ガス」、「ドライヤによる乾燥」、「電気集塵機9による排ガス中のダストを除去する処理」、「電気集塵機で捕集されたダスト」及び「原料ミル2とサスペンションプレヒータ4の間の所定の地点」は、本願発明1の「セメント焼成設備」、「セメント原料」、「浄化排ガス」、「セメント原料の乾燥」、「排ガスを電気集塵機で浄化排ガスと集塵ダストとに分離」すること、「集塵ダスト」及び「サスペンションプレヒータの上部」にそれぞれ相当する。
また、引用発明の、乾燥されたセメントクリンカ原料を「原料ミル2」によって「粉砕」することは、本願発明1の「原料粉砕工程」に相当する。
そして、引用発明の「排ガスの下流側に位置する第3荷電室?第4荷電室で捕集されたダストを、重金属の含有率が高いダストとして除去する」ことは、本願発明1の「集塵機下流側荷電区で捕集された集塵ダストを、セメントクリンカ製造工程の循環経路から排出する工程」に相当する。

そうすると、本願発明1と引用発明とは、
「セメント焼成設備のサスペンションプレヒータ上部から排出される排ガスを、原料粉砕工程でセメント原料の乾燥に使用し、原料粉砕工程から排出される排ガスを電気集塵機で浄化排ガスと集塵ダストとに分離した後、浄化排ガスを大気中に放出し、集塵ダストをセメント原料の一部としてサスペンションプレヒータ上部に送入するセメント製造工程において、
(A)集塵機下流側荷電区で捕集された集塵ダストを、セメントクリンカ製造工程の循環経路から排出する工程を含むセメントの製造方法」である点で一致し、次の相違点1、2で相違する。

(相違点1)
集塵機で捕集される集塵ダストの総量に対する、集塵機下流側荷電区(荷電室)で捕集され、排出される集塵ダストの量の割合が、本願発明1では、「15?35質量%」であるのに対し、引用発明では、「約7質量%」である点。
(相違点2)
本願発明1は、「(B)工程(A)により排出した集塵ダストを、加熱装置内に導入し、酸素濃度0.5%以下の還元雰囲気中で、400℃以上の温度で加熱処理する工程と、
(C)工程(B)により加熱処理した集塵ダストを、有機塩素化合物が再合成しない速度で、150℃以下の温度まで急速冷却する工程と、
(D)工程(C)により急速冷却した集塵ダストを、セメントクリンカ製造工程の循環経路に戻し、サスペンションプレヒータ上段からセメント原料として再度送入する工程と、
(E)工程(B)において発生する排ガスを、有機塩素化合物が再合成しない速度で、150℃以下の温度まで急速冷却して、水銀を回収する工程と、
(F)工程(E)により急速冷却した排ガス中に残存する有機化合物を、吸収または吸着する工程とを含む」のに対し、引用発明は、このような工程は備えていない点。

イ 判断
事案に鑑み、まず、相違点2について、検討する。
引用例1の上記摘示事項イ、ウには、引用発明と、引用例2である特開2002-355531号公報に記載された方法とを併用し、前段階で引用発明の排ガスの処理工程を行い、後段階で、引用例2に記載された処理を行うことが記載されている。
そして、引用例2には、セメント製造工程の排ガスから捕集した集塵ダストを加熱炉に導き、集塵ダストに含まれる揮発性金属成分の揮発温度以上に加熱して上記揮発性金属成分をガス化して除去するものにおいて、集塵ダストを揮発性金属成分がガス化する300?500℃に加熱し、ガス化した水銀成分を50℃以下に冷却して除去する手段を設けることが記載されている。
そうすると、引用発明において、重金属の含有率の多い集塵ダストの処理として、400℃以上に加熱することで、集塵ダストに含まれる水銀をガス化させ、水銀が含まれたガスを、150℃以下の温度に冷却して水銀を除去することは、当業者が容易に想到し得ることだということができる。

しかしながら、本願発明1は、引用例2には開示されない、加熱処理された集塵ダストに対し、「有機塩素化合物が再合成しない速度で、150℃以下の温度まで急速冷却する工程」(工程(C))及び集塵ダストを加熱処理した際の排ガスについて、「有機塩素化合物が再合成しない速度で、急速冷却する工程」(工程(E))と「急速冷却した排ガス中に残存する有機化合物を、吸収または吸着する工程」(工程(F))とを有している

一方、引用例3の上記摘示事項から、引用例3には、セメント製造装置のダイオキシン類の如き有機塩素化合物を含むダストは、集塵機等によって捕集されることが記載されているということができる。
また、引用例4の上記摘示事項から、引用例4には、廃棄物を燃焼処理し、生成した燃焼灰を溶融スラグにして、この溶融スラグを冷却固化させて回収する廃棄物処理装置における排ガス中の飛灰処理方法において、集塵装置により捕集された飛灰を、ダイオキシンの分解を促進する温度範囲内の400℃?600℃に加熱し、加熱された飛灰を、ダイオキシンの再合成を防止できる温度範囲内100℃?200℃の範囲内に急速冷却することが記載されているということができる。
そして、引用例5の上記摘示事項から、引用例5には、ごみ焼却施設から排出される焼却灰を加熱して該焼却灰に含まれる有機塩素化合物を分解する焼却灰処理方法において、焼却灰を反応活性の高いカルシウム化合物の存在下に加熱し、加熱処理された後の焼却灰を、分解ガスの一部との再結合を防ぐために、速やかに250℃以下に急冷することが記載されているということができる。

そうすると、引用例4に記載されたものは、廃棄物処理装置の排ガス中の飛灰の処理に関するものであり、引用例5に記載されたものは、ごみ焼却施設から排出される焼却灰の処理に関するものであって、引用例4及び引用例5には、セメント製造工程における集塵ダストを加熱する際に生じる集塵ダストの処理や排ガスの処理については記載も示唆もされていない。

そこで、引用例3の記載から、セメント製造工程の集塵ダストに有機塩素化合物が含まれることが当業者にとって周知であるということが認定できたとしても、引用発明に対して、引用例2記載の集塵ダストを加熱する工程を付加した上で、その排ガスの処理や発生する排ガスの処理について引用例4、5に記載された事項を組み合わせる動機付けは存在しないというべきである。

したがって、本願発明1の相違点2に係る発明特定事項は、引用発明及び引用例1?5に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到することができたものである、ということはできず、本願発明1は、相違点1について検討するまでもなく、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(2)本願発明2?4について
本願発明2?4は、本願発明1を引用し、さらに限定するものであって、本願発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本願発明1と同様な理由から、引用発明及び引用例1?5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

8.むすび
以上のとおり、本願発明は、原査定の拒絶理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-09-18 
出願番号 特願2008-276589(P2008-276589)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (C04B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 永田 史泰  
特許庁審判長 川端 修
特許庁審判官 大橋 賢一
河原 英雄
発明の名称 セメントの製造方法  
代理人 津国 肇  
代理人 伊藤 佐保子  
代理人 特許業務法人 津国  
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