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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1291881
審判番号 不服2013-13224  
総通号数 179 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-07-10 
確定日 2014-09-10 
事件の表示 特願2009-284012「光ディスクのユーザー記憶スペースを分割する方法、分割された記憶スペースをもつ光ディスク、ならびに情報を保存する方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 3月18日出願公開、特開2010- 61808〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2003年12月3日(パリ条約による優先権主張国際事務局受理2002年12月20日、欧州特許庁)を国際出願日とした特願2004-561795号の一部を平成21年12月15日に新たな特許出願とした出願であって、原審において平成23年4月18日付けで拒絶理由が通知され、同年10月25日付けで手続補正され、平成24年4月26日付けで拒絶理由が通知されたが、平成25年3月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月10日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正され、同年8月20日付けで当審より審尋がなされ、平成26年2月25日付けで回答書が提出されたものである。

第2 補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成25年7月10日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は補正前の平成23年10月25日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項7に記載された

「【請求項7】
ある特定のアプリケーションが書き込みをすることが許される一つ以上の記憶セクションと前記アプリケーションが書き込みをすることが許されない一つ以上のセクションとに分割されたユーザー記憶スペースを有する、ユーザーによって書き込みが可能な光ディスクであって、
当該光ディスクは、少なくとも一つのアプリケーション許容記憶セクションの位置もしくは大きさまたはその両方を定義する一つ以上の利用可能情報パラメータが保存される、記憶スペース内のあらかじめ決められた領域または位置を有し、
前記利用可能情報パラメータの少なくとも一つがアプリケーション許容記憶セクションとアプリケーション禁止記憶セクションとの間の境界線アドレスを定義することを特徴とする光ディスク。」

という発明(以下、「本願発明」という。)を、

「【請求項7】
ある特定のアプリケーションが書き込みをすることが許される一つ以上の記憶セクションと前記アプリケーションが書き込みをすることが許されない一つ以上のセクションとに分割されたユーザー記憶スペースを有する、ユーザーによって書き込みが可能な光ディスクであって、
当該光ディスクは、少なくとも一つのアプリケーション許容記憶セクションの位置もしくは大きさまたはその両方を定義する一つ以上の利用可能情報パラメータが保存される、当該ディスクの記憶スペース内のあらかじめ決められた領域または位置を有し、
前記利用可能情報パラメータの少なくとも一つがアプリケーション許容記憶セクションとアプリケーション禁止記憶セクションとの間の境界線アドレスを定義し、
前記境界線アドレスが可変パラメータであり、その値が当該ディスクの記憶スペースの所定の領域または位置に保存される、
ことを特徴とする光ディスク。」

という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。

2.新規事項の有無、補正の目的要件について
本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において、補正前の特許請求の範囲の請求項7に記載された、「記憶スペース」に関し、「当該ディスクの記憶スペース」と限定し、また、「境界線アドレス」に関し、「前記境界線アドレスが可変パラメータであり、その値が当該ディスクの記憶スペースの所定の領域または位置に保存される」と限定して、特許請求の範囲を減縮するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項(新規事項)及び同改正前の特許法第17条の2第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。

3.独立特許要件について
本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。

(1)補正後の発明
上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で補正後の発明として認定したとおりである。

(2)引用発明
原審の拒絶理由に引用された特開平8-212708号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、光磁気ディスクや相変化型光ディスク等のディスク状の情報記録媒体と、ディスク状の情報記録媒体に情報を記録する情報記録方法と、上記の情報記録方法を実施するための情報記録装置に関するものである。」(4頁5欄)

ロ.「【0052】
【発明の実施の形態】この発明の第1の実施の形態の情報記録媒体を図1、図2、図3および図5に基づいて説明する。図1は第1の実施の形態におけるゾーンド・コンスタント・アンギュラ・ベロシティ(ZCAV)方式で駆動される光磁気ディスクや相変化型光ディスク等のディスク上の半径方向の情報配置を模式的に図示したもので、下側はディスク内周側であり、上側はディスク外周側である。ZCAV方式とは、ディスクを一定回転数で回転させ、ディスクを半径方向に複数のゾーンに分けて、同一ゾーン内では同一セクター数で、外周ゾーンほどセクター数を大になるようなフォーマットを持つものであり、このような構成にすることによりディスク全体にわたって記録密度を略一定とすることができる。
【0053】図5はZCAV方式のディスクの模式図であり、ディスク101には装置に装着させ回転させるための中心穴102があり、その周囲には、ユーザが情報を記録するための記録領域(Z1?Z4)がある。この記録領域には、1μm前後のピッチでスパイラル状または同心円状に情報を記録するための微細なトラック(図示せず)が設けられ、このトラックの位置と角度を示すアドレス103,104等が各トラックの断続などの形状であらかじめ記録されている。同図において、半径方向にこの記録領域をZ1?Z4のゾーンに4分割し、ディスク全体の各セクタ長105を略同一にしている。記録される情報は各セクタ内にレーザの強度変調などの方式によって光学的変化を有するピット列として記録される。同図ではゾーン数4、セクタ数は12?18になっているが、さらに多くのゾーン、セクター数をを持つものが多い。
【0054】この情報記録媒体は、図1に示すように、ディスク10の同一面上にコンピュータデータのようなランダムアクセス性能が重視されるランダムデータを記録するランダムデータ記録領域11と、画像・音声等のような即時性ないし連続性が要求される連続データを記録する連続データ記録領域12とを論理的に設けている。
【0055】上記のランダムデータ記録領域11はディスク内周側に配置し、連続データ記録領域12はディスク外周側に配置している。なお、連続データ記録領域12をディスク外周側に配置しているのは、連続データの種類によるが一般にランダムデータの場合より高速データ転送が要求され、またZCAV方式で駆動されるディスク10の場合、外周側の方が高速でデータ転送が行われるからである。
【0056】ランダムデータ記録領域11は書換型ランダムデータ記録領域13とプリピットで記録された再生専用ランダムデータ記録領域14とからなり、再生専用ランダムデータ記録領域14はディスク内周側に配置している。連続データ記録領域12は書換型連続データ記録領域15とプリピットで記録された再生専用連続データ記録領域16とからなり、再生専用連続データ記録領域16をディスク外周側に配置している。
【0057】第1の実施の形態ではZCAV方式のディスクが、外周のゾーンほど記録再生のクロック周波数を高くしているため伝送レートが速くなるという特性に着目して、より速い伝送レートが必要なデータを外周側の領域に配置するのを特徴とする。したがって上記の領域配置は一例であり、記録する内容を判断して配置する領域を決定すればよい。
【0058】上記した各記録領域13?16の境界は、論理フォーマットで設定する際に、例えばZCAV方式のディスク10の物理的なゾーン境界に配置することができる。ランダムデータ記録領域11は使用するコンピュータまたはホストシステムの論理仕様に従った論理フォーマットに設定し、連続データ記録領域12はコンピュータまたはホストシステムの論理仕様によらず一定の論理フォーマット(例えば、CD-ROM論理フォーマット)に設定する。
【0059】さらに、ディスク10の同一面の所定の位置、例えばディスク最内周およびディスク最外周には、ランダムデータ記録領域11と連続データ記録領域12のディスク面上の配置を規定する論理フォーマット定義情報を記録する論理フォーマット定義領域17,18を設けている。なお、論理フォーマット定義領域は、ディスク最内周およびディスク最外周の何れか一方にまとめて設けてもよい。
【0060】上記の論理フォーマット定義領域(ディスク管理領域とも言う)17,18には、上記したディスク10の論理フォーマットの他に、欠陥セクタの管理情報、連続データ記録領域12におけるトラック情報なども合わせて記録される。つまり、論理フォーマット定義領域17,18は、ディスク構造管理セクタ、欠陥リスト管理セクタ、初期ディフェクトリスト、2次ディフェクトリスト、トラック情報などに分割される。
【0061】また、ディスク10は、ディスク外周部よりディスク内周に向かって連続したアドレスが記録された構成であり、ランダムデータ記録領域11と連続データ記録領域12は同一の物理的アドレスおよびセクタ構造および物理フォーマットを有し、物理的にはランダムデータ記録領域11と連続データ記録領域12との区別はなく、ディスク使用開始時に行う論理フォーマット処理によって、ランダムデータ記録領域11と連続データ記録領域12に分割される。そのランダムデータ記録領域11と連続データ記録領域12の分割位置は、ZCAV方式のディスク10の物理的ゾーン境界を基準に、論理フォーマット処理によって任意に決めることができる。
【0062】なお、本構成は実際の光ディスクでは、スパイラルトラック、同心円トラックの両タイプのトラック形式に適応でき、またスパイラルの方向が内周から外周の方向に向かうもの、および外周から内周の方向に向かうものの両方に適応できるものである。したがって、ディスク10は、ディスク外周部よりディスク内周に向かって連続したアドレスが記録された構成として説明したが、ディスク10は、ディスク内周部よりディスク外周に向かって連続したアドレスが記録された構成としても全く同様の効果が得られる。
【0063】また、ランダムデータ記録領域11の中の書換型ランダムデータ記録領域13は、ディスク10の物理ゾーン単位で分割され、1物理ゾーン内で図2に示すように、多数のセクタからなるユーザデータ領域13aと多数の代替セクタからなる代替領域13bとに分割される。代替領域13bは、ユーザデータ領域13aとは離隔した位置に設けられる。図2では代替領域13bは、ユーザデータ領域13aより内周に配置された構成としているが配置が逆転することも可能でありまた、代替領域13bを2分割しユーザデータ領域13aの内周と外周に隣接して配置することも可能である。」(9頁15欄?10頁17欄)

ハ.「【0073】また、フォーマット定義情報を記録するフォーマット定義領域17,18をディスク面に設けたので、ランダムデータ記録領域11と連続データ記録領域12の配置をフォーマット定義情報により任意に設定することができ、フォーマット定義情報の変更によりランダムデータ記録領域11と連続データ記録領域12の配置を変更することができる。」(11頁19欄)

上記引用例の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記ロ.の【0054】における「この情報記録媒体は、図1に示すように、ディスク10の同一面上にコンピュータデータのようなランダムアクセス性能が重視されるランダムデータを記録するランダムデータ記録領域11と、画像・音声等のような即時性ないし連続性が要求される連続データを記録する連続データ記録領域12とを論理的に設けている。」との記載、同ロ.の【0056】における「ランダムデータ記録領域11は書換型ランダムデータ記録領域13とプリピットで記録された再生専用ランダムデータ記録領域14とからなり・・・連続データ記録領域12は書換型連続データ記録領域15とプリピットで記録された再生専用連続データ記録領域16とからなり」との記載、及び図1によれば、情報記録媒体は、書換型データ記録領域についての観点から見れば、コンピュータデータのようなランダムアクセス性能が重視されるランダムデータを記録する書換型ランダムデータ記録領域(13)と、画像・音声等のような即時性ないし連続性が要求される連続データを記録する書換型連続データ記録領域(15)とに分割されている。ここで、同ロ.の【0063】における「ランダムデータ記録領域11の中の書換型ランダムデータ記録領域13は、・・・1物理ゾーン内で図2に示すように、多数のセクタからなるユーザデータ領域13aと多数の代替セクタからなる代替領域13bとに分割される。」との記載、図1及び図2によれば、書換型データ記録領域は、ユーザデータ領域を有している。
また、上記ロ.の【0059】における「ディスク10の同一面の所定の位置、例えばディスク最内周およびディスク最外周には、ランダムデータ記録領域11と連続データ記録領域12のディスク面上の配置を規定する論理フォーマット定義情報を記録する論理フォーマット定義領域17,18を設けている。」との記載、及び図1によれば、情報記録媒体は、ディスク最内周およびディスク最外周に、ランダムデータ記録領域(11)と連続データ記録領域(12)のディスク面上の配置を規定する論理フォーマット定義情報を記録する論理フォーマット定義領域(17,18)を有している。
また、上記ロ.の【0061】における「ディスク10は、ディスク外周部よりディスク内周に向かって連続したアドレスが記録された構成であり、ランダムデータ記録領域11と連続データ記録領域12は同一の物理的アドレスおよびセクタ構造および物理フォーマットを有し、物理的にはランダムデータ記録領域11と連続データ記録領域12との区別はなく、ディスク使用開始時に行う論理フォーマット処理によって、ランダムデータ記録領域11と連続データ記録領域12に分割される。そのランダムデータ記録領域11と連続データ記録領域12の分割位置は、ZCAV方式のディスク10の物理的ゾーン境界を基準に、論理フォーマット処理によって任意に決めることができる。」との記載、及び図1によれば、情報記録媒体は、ランダムデータ記録領域(11)と連続データ記録領域(12)の分割位置を有している。ここで、当該分割位置は、図1によれば、前述の書換型ランダムデータ記録領域(13)と、前述の書換型連続データ記録領域(15)との間を定義しているということができる。
また、上記ハ.の【0073】における「フォーマット定義情報を記録するフォーマット定義領域17,18をディスク面に設けたので、ランダムデータ記録領域11と連続データ記録領域12の配置をフォーマット定義情報により任意に設定することができ、フォーマット定義情報の変更によりランダムデータ記録領域11と連続データ記録領域12の配置を変更することができる。」との記載によれば、情報記録媒体は、前述のフォーマット定義情報を記録するフォーマット定義領域(17,18)をディスク面(すなわち、ディスク最内周およびディスク最外周)に設けているから、前述の分割位置がフォーマット定義領域(17,18)に記録されることは明らかである。

したがって、上記引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「コンピュータデータのようなランダムアクセス性能が重視されるランダムデータを記録する書換型ランダムデータ記録領域(13)と、画像・音声等のような即時性ないし連続性が要求される連続データを記録する書換型連続データ記録領域(15)とに分割されたユーザデータ領域を有する、情報記録媒体であって、
当該情報記録媒体は、ランダムデータ記録領域(11)と連続データ記録領域(12)のディスク面上の配置を規定する論理フォーマット定義情報が記録される、当該情報記録媒体のディスク最内周およびディスク最外周に論理フォーマット定義領域(17,18)を有し、
前記論理フォーマット定義情報の少なくとも一つが書換型ランダムデータ記録領域(13)と、書換型連続データ記録領域(15)との間の分割位置を定義し、
分割位置が当該情報記録媒体のディスク最内周およびディスク最外周のフォーマット定義領域(17,18)に記録される、
情報記録媒体。」

(3)対比・判断
補正後の発明と引用発明とを対比する。
a.引用発明の「コンピュータデータのようなランダムアクセス性能が重視されるランダムデータを記録する書換型ランダムデータ記録領域(13)」は、引用発明の「コンピュータデータのようなランダムアクセス性能が重視されるランダムデータを記録する」以上、特定のアプリケーションによってデータを書き込むことは技術常識であり、また、書き込みができるならば書き込みが許されているといえるから、「ある特定のアプリケーションが書き込みをすることが許される一つ以上の記憶セクション」ということができる。
b.引用発明の「画像・音声等のような即時性ないし連続性が要求される連続データを記録する書換型連続データ記録領域(15)」は、引用発明の「画像・音声等のような即時性ないし連続性が要求される連続データを記録する」以上、前述の「コンピュータデータのようなランダムアクセス性能が重視されるランダムデータを記録する」(ある特定のアプリケーションが書き込みをすることが許される)ものではない(許されない)といえるから、「前記アプリケーションが書き込みをすることが許されない一つ以上のセクション」ということができる。
c.引用発明の「ユーザデータ領域」、「ディスク最内周およびディスク最外周」及び「論理フォーマット定義領域(17,18)」は、補正後の発明の「ユーザー記憶スペース」、「記憶スペース」及び「あらかじめ決められた領域または位置」にそれぞれ相当する。
d.引用発明の「ランダムデータ記録領域(11)と連続データ記録領域(12)のディスク面上の配置を規定する論理フォーマット定義情報」は、「ランダムデータ記録領域(11)と連続データ記録領域(12)のディスク面上の配置」が、「アプリケーション許容記憶セクションの位置」を表しているといえるから、「少なくとも一つのアプリケーション許容記憶セクションの位置もしくは大きさまたはその両方を定義する一つ以上の利用可能情報パラメータ」に含まれる。
e.引用発明の「記録される」は、情報が記録されて保存されるから、「保存される」ということができる。
f.引用発明の「書換型ランダムデータ記録領域(13)と、書換型連続データ記録領域(15)との間の分割位置」と、補正後の発明の「アプリケーション許容記憶セクションとアプリケーション禁止記憶セクションとの間の境界線アドレス」とは、上記a.及びb.の対比を考慮すると、いずれも、「アプリケーション許容記憶セクションとアプリケーション禁止記憶セクションとの間の特定の情報」という点で一致する。
g.引用発明の「情報記録媒体」は、上記引用例のロ.の【0052】における「この発明の第1の実施の形態の情報記録媒体を図1、図2、図3および図5に基づいて説明する。図1は第1の実施の形態におけるゾーンド・コンスタント・アンギュラ・ベロシティ(ZCAV)方式で駆動される光磁気ディスクや相変化型光ディスク等のディスク上の半径方向の情報配置を模式的に図示したもの」との記載によれば、「光ディスク」といえ、また、コンピュータデータのようなランダムアクセス性能が重視されるランダムデータを記録する書換型ランダムデータ記録領域(13)と、画像・音声等のような即時性ないし連続性が要求される連続データを記録する書換型連続データ記録領域(15)とに分割されたユーザデータ領域を有するから、「ユーザによって書き込みが可能な光ディスク」ということができる。

したがって、補正後の発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「ある特定のアプリケーションが書き込みをすることが許される一つ以上の記憶セクションと前記アプリケーションが書き込みをすることが許されない一つ以上のセクションとに分割されたユーザー記憶スペースを有する、ユーザーによって書き込みが可能な光ディスクであって、
当該光ディスクは、少なくとも一つのアプリケーション許容記憶セクションの位置もしくは大きさまたはその両方を定義する一つ以上の利用可能情報パラメータが保存される、当該ディスクの記憶スペース内のあらかじめ決められた領域または位置を有し、
前記利用可能情報パラメータの少なくとも一つがアプリケーション許容記憶セクションとアプリケーション禁止記憶セクションとの間の特定の情報を定義し、
特定の情報が当該ディスクの記憶スペースの所定の領域または位置に保存される、
光ディスク。」

(相違点1)
「特定の情報」に関し、
補正後の発明は、「境界線アドレス」であり、「その値」を有するのに対し、引用発明は、「分割位置」である点。

(相違点2)
「特定の情報」の詳細に関し、
補正後の発明は、「前記境界線アドレスが可変パラメータである」のに対し、引用発明は、その様な特定がない点。

そこで、上記相違点1及び2について検討する。
引用発明は、「分割位置」であるところ、光ディスク上で位置を表す場合、アドレスを用いることは技術常識であり、また、上記引用例の上記ハ.の【0073】における「フォーマット定義情報を記録するフォーマット定義領域17,18をディスク面に設けたので、ランダムデータ記録領域11と連続データ記録領域12の配置をフォーマット定義情報により任意に設定することができ、フォーマット定義情報の変更によりランダムデータ記録領域11と連続データ記録領域12の配置を変更することができる。」との記載によれば、ランダムデータ記録領域(11)と連続データ記録領域(12)の配置、すなわち、「分割位置」を任意に設定することができ、フォーマット定義情報の変更により、「分割位置」を以前の位置とは異なる位置に変更することができることが示唆されている。そうすると、引用発明の「分割位置」を、補正後の発明のように「境界線アドレス」と称し、「その値」を有し(相違点1)、そして、「前記境界線アドレスが可変パラメータである」とすること(相違点2)に格別な困難性はない。

そして、補正後の発明の作用効果も、引用発明から当業者が容易に予測できる範囲のものである。

以上のとおり、補正後の発明は引用発明に基づいて容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.結語
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成25年7月10日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、上記「第2 補正却下の決定 1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。

2.引用発明
引用発明は、上記「第2 補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項中の「(2)引用発明」の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は上記補正後の発明から当該本件補正に係る限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に当該本件補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2 補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用発明に基づいて容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、容易に発明できたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-04-11 
結審通知日 2014-04-15 
審決日 2014-04-30 
出願番号 特願2009-284012(P2009-284012)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G11B)
P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 堀 洋介  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 萩原 義則
関谷 隆一
発明の名称 光ディスクのユーザー記憶スペースを分割する方法、分割された記憶スペースをもつ光ディスク、ならびに情報を保存する方法および装置  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠重  

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