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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q |
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管理番号 | 1291938 |
審判番号 | 不服2013-13394 |
総通号数 | 179 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-11-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-07-12 |
確定日 | 2014-09-11 |
事件の表示 | 特願2008-267432「携帯情報端末、地球環境変化通知システム及びユーザインターフェース変更方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 4月30日出願公開、特開2010- 97396〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成20年10月16日の出願であって、平成24年12月6日付けの拒絶理由通知が通知され、平成25年4月8日付けで拒絶査定がなされた。 これに対して、平成25年7月12日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正書が提出された。 そして、平成25年9月19日付けの審尋がなされたものである。 2.平成25年7月12日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成25年7月12日付け手続補正を却下する。 [理由] (1)補正の内容 平成25年7月12日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲(出願当初の特許請求の範囲)の (1-1)「【請求項1】 外部から、ユーザが環境に負荷を与える活動をしたことを示す情報を取得する無線通信手段と、 取得した前記情報に基づいて、環境負荷量を取得する環境負荷量取得手段と、 取得した前記環境負荷量に応じて、前記ユーザに対して出力するユーザインターフェースを変更するユーザインターフェース変更手段と、 を備えることを特徴とする携帯情報端末。 【請求項2】 前記ユーザインターフェース変更手段は、 取得した前記環境負荷量の変化に応じて、 前記環境負荷量が増えたときには、地球環境に与える負荷が大きくなり前記地球環境を悪化させたことを示す前記ユーザインターフェースに変更し、 前記環境負荷量が減ったときには、前記地球環境に与える負荷が小さくなり前記地球環境を好転させたことを示す前記ユーザインターフェースに変更する ことを特徴とする請求項1に記載の携帯情報端末。 【請求項3】 前記環境負荷量を算出するためのデータベースを有し、 前記環境負荷量取得手段は、 取得した前記情報を基に前記データベースを検索し、前記情報に対応した環境負荷量を取得する ことを特徴とする請求項1又は2に記載の携帯情報端末。 【請求項4】 前記無線通信手段は、 前記ユーザが交通機関を利用したときに、前記外部から無線通信によって前記ユーザが利用した乗車区間情報を取得して、 前記環境負荷量取得手段は、 取得した前記乗車区間情報に基づいて、前記環境負荷量を取得する ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の携帯情報端末。 【請求項5】 前記無線通信手段は、 自端末を利用して商品の購入を行うことにより、前記外部から無線通信によって購入した前記商品の種類に基づいて設定された商品情報を取得して、 前記環境負荷量取得手段は、 取得した前記商品情報に基づいて、前記環境負荷量を取得する ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の携帯情報端末。 【請求項6】 前記無線通信手段は、 自端末を利用して商品の購入を行うことにより、前記外部から無線通信によって前記商品の購入に伴って取得したレジ袋の枚数情報を取得して、 前記環境負荷量取得手段は、 取得した前記レジ袋の枚数情報に基づいて、前記環境負荷量を取得する ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の携帯情報端末。 【請求項7】 前記環境負荷量は、 二酸化炭素排出量、消費化石燃料量、消費電力量、消費熱量、消費運動量のうち、少なくとも何れか1つである ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の携帯情報端末。 【請求項8】 前記ユーザインターフェースは、 視覚的情報、聴覚的情報、触覚的情報の何れか又は組み合わせによって、前記地球環境を悪化させたこと又は好転させたことを前記ユーザに示す ことを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の携帯情報端末。 【請求項9】 携帯情報端末と、前記携帯情報端末と通信可能な外部サーバを備え、 前記外部サーバは、 環境に負荷を与える活動をしたことを示す情報から、環境負荷量を算出するデータベースと、 前記携帯情報端末から、前記情報を受信する情報受信手段と、 前記データベースによって算出された前記環境負荷量を送信する環境負荷量送信手段と、を備え、 前記携帯情報端末は、 外部から、前記情報を取得する無線通信手段と、 取得した前記情報を、前記外部サーバに送信する情報送信手段と、 前記データベースによって算出された前記環境負荷量を取得する環境負荷量取得手段と、 取得した前記環境負荷量に応じて、ユーザに対して出力するユーザインターフェースを 変更するユーザインターフェース変更手段と、 を備えることを特徴とする地球環境変化通知システム。 【請求項10】 コンピュータが、外部から、ユーザが環境に負荷を与える活動をしたことを示す情報を取得する無線通信ステップと、 前記コンピュータが、取得した前記情報に基づいて、環境負荷量を取得する環境負荷量取得ステップと、 前記コンピュータが、取得した前記環境負荷量に応じて、前記ユーザに対して出力するユーザインターフェースを変更するユーザインターフェース変更ステップと、 を含むことを特徴とするユーザインターフェース変更方法。 【請求項11】 外部から、ユーザが環境に負荷を与える活動をしたことを示す情報を取得する無線通信手順と、 取得した前記情報に基づいて、環境負荷量を取得する環境負荷量取得手順と、 取得した前記環境負荷量に応じて、前記ユーザに対して出力するユーザインターフェースを変更するユーザインターフェース変更手順と、 をコンピュータに実行させることを特徴とするユーザインターフェース変更プログラム。」 とあったものを (1-2)「【請求項1】 外部から、ユーザが環境に負荷を与える活動をしたことを示す情報を取得する無線通信手段と、 取得した前記情報に基づいて、環境負荷量を取得する環境負荷量取得手段と、 取得した前記環境負荷量に応じて、前記ユーザに対して出力するユーザインターフェースを変更するユーザインターフェース変更手段と、 を備え、 前記ユーザインターフェース変更手段は、 取得した前記環境負荷量の変化に応じて、 前記環境負荷量が増えたときには、地球環境に与える負荷が大きくなり前記地球環境を悪化させたことを示す前記ユーザインターフェースに変更し、 前記環境負荷量が減ったときには、前記地球環境に与える負荷が小さくなり前記地球環境を好転させたことを示す前記ユーザインターフェースに変更し、 前記ユーザインターフェースは、聴覚的情報又は触覚的情報の何れか又は組み合わせによって、前記地球環境を悪化させたこと又は好転させたことを前記ユーザに示す ことを特徴とする携帯情報端末。 【請求項2】 前記環境負荷量を算出するためのデータベースを有し、 前記環境負荷量取得手段は、 取得した前記情報を基に前記データベースを検索し、前記情報に対応した環境負荷量を取得する ことを特徴とする請求項1に記載の携帯情報端末。 【請求項3】 前記無線通信手段は、 前記ユーザが交通機関を利用したときに、前記外部から無線通信によって前記ユーザが利用した乗車区間情報を取得して、 前記環境負荷量取得手段は、 取得した前記乗車区間情報に基づいて、前記環境負荷量を取得する ことを特徴とする請求項1又は2に記載の携帯情報端末。 【請求項4】 前記無線通信手段は、 自端末を利用して商品の購入を行うことにより、前記外部から無線通信によって購入した前記商品の種類に基づいて設定された商品情報を取得して、 前記環境負荷量取得手段は、 取得した前記商品情報に基づいて、前記環境負荷量を取得する ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の携帯情報端末。 【請求項5】 前記無線通信手段は、 自端末を利用して商品の購入を行うことにより、前記外部から無線通信によって前記商品の購入に伴って取得したレジ袋の枚数情報を取得して、 前記環境負荷量取得手段は、 取得した前記レジ袋の枚数情報に基づいて、前記環境負荷量を取得する ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の携帯情報端末。 【請求項6】 前記環境負荷量は、 二酸化炭素排出量、消費化石燃料量、消費電力量、消費熱量、消費運動量のうち、少なくとも何れか1つである ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の携帯情報端末。 【請求項7】 携帯情報端末と、前記携帯情報端末と通信可能な外部サーバを備え、 前記外部サーバは、 環境に負荷を与える活動をしたことを示す情報から、環境負荷量を算出するデータベースと、 前記携帯情報端末から、前記情報を受信する情報受信手段と、 前記データベースによって算出された前記環境負荷量を送信する環境負荷量送信手段と、を備え、 前記携帯情報端末は、 外部から、前記情報を取得する無線通信手段と、 取得した前記情報を、前記外部サーバに送信する情報送信手段と、 前記データベースによって算出された前記環境負荷量を取得する環境負荷量取得手段と、 取得した前記環境負荷量に応じて、ユーザに対して出力するユーザインターフェースを変更するユーザインターフェース変更手段と、 を備え、 前記ユーザインターフェース変更手段は、 取得した前記環境負荷量の変化に応じて、 前記環境負荷量が増えたときには、地球環境に与える負荷が大きくなり前記地球環境を悪化させたことを示す前記ユーザインターフェースに変更し、 前記環境負荷量が減ったときには、前記地球環境に与える負荷が小さくなり前記地球環境を好転させたことを示す前記ユーザインターフェースに変更し、 前記ユーザインターフェースは、聴覚的情報又は触覚的情報の何れか又は組み合わせによって、前記地球環境を悪化させたこと又は好転させたことを前記ユーザに示す ことを特徴とする地球環境変化通知システム。 【請求項8】 コンピュータが、外部から、ユーザが環境に負荷を与える活動をしたことを示す情報を取得する無線通信ステップと、 前記コンピュータが、取得した前記情報に基づいて、環境負荷量を取得する環境負荷量取得ステップと、 前記コンピュータが、取得した前記環境負荷量に応じて、前記ユーザに対して出力するユーザインターフェースを変更するユーザインターフェース変更ステップと、 を含み、 前記ユーザインターフェース変更ステップは、 前記コンピュータが、取得した前記環境負荷量の変化に応じて、 前記環境負荷量が増えたときには、地球環境に与える負荷が大きくなり前記地球環境を悪化させたことを示す前記ユーザインターフェースに変更し、 前記環境負荷量が減ったときには、前記地球環境に与える負荷が小さくなり前記地球環境を好転させたことを示す前記ユーザインターフェースに変更し、 前記ユーザインターフェースは、聴覚的情報又は触覚的情報の何れか又は組み合わせによって、前記地球環境を悪化させたこと又は好転させたことを前記ユーザに示す ことを特徴とするユーザインターフェース変更方法。 【請求項9】 外部から、ユーザが環境に負荷を与える活動をしたことを示す情報を取得する無線通信手順と、 取得した前記情報に基づいて、環境負荷量を取得する環境負荷量取得手順と、 取得した前記環境負荷量に応じて、前記ユーザに対して出力するユーザインターフェースを変更するユーザインターフェース変更手順と、 をコンピュータに実行させ、 前記ユーザインターフェース変更手順は、 取得した前記環境負荷量の変化に応じて、 前記環境負荷量が増えたときには、地球環境に与える負荷が大きくなり前記地球環境を悪化させたことを示す前記ユーザインターフェースに変更し、 前記環境負荷量が減ったときには、前記地球環境に与える負荷が小さくなり前記地球環境を好転させたことを示す前記ユーザインターフェースに変更し、 前記ユーザインターフェースは、聴覚的情報又は触覚的情報の何れか又は組み合わせによって、前記地球環境を悪化させたこと又は好転させたことを前記ユーザに示す ことを特徴とするユーザインターフェース変更プログラム。」 と補正しようとするものである。 すると、本件請求項1に係る補正は、「ユーザインターフェース変更」という構成に対して「取得した環境負荷量の変化に応じて、 環境負荷量が増えたときには、地球環境に与える負荷が大きくなり地球環境を悪化させたことを示す前記ユーザインターフェースに変更し、 環境負荷量が減ったときには、地球環境に与える負荷が小さくなり前記地球環境を好転させたことを示す前記ユーザインターフェースに変更し、 ユーザインターフェースは、聴覚的情報又は触覚的情報の何れか又は組み合わせによって、地球環境を悪化させたこと又は好転させたことを前記ユーザに示す」という限定を付加し、減縮するものである。 ここで、本件補正が、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項について限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとして、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)補正の適否 ア.本件補正発明 本件補正発明は、上記(1-2)の請求項1に記載されたとおりのものである。 イ.引用例1 原査定の拒絶理由で引用文献2として引用された特開2007-323492号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (a)「【0017】 更に、本発明に係る代金決済システムを利用した環境家計簿提供システムは、ネットワークを介して相互に接続可能な、ユーザが所有する消費者端末及びカメラ付き携帯電話と、 前記ユーザの公共料金引落口座がある銀行システムと、前記ユーザが商品を購入したりサービスの提供を受ける業者の商品・サービス提供会社端末と、この商品の購入又はサービスの提供に対する代金の立替払いに使用される代金決済代行会社端末と、地球環境に対する負荷増加量及び低減量を数値化する環境負荷増加量/低減量データ収集システムと、公共サービス提供会社システムとを備え、前記公共サービス提供会社システムは、消費者に対して、一定期間内の数値化された前記地球環境に対する負荷増加量及び低減量を集計して通知する。 【0018】 更に、前記環境家計簿提供システムでは、前記消費者端末は、少なくともカメラ付き携帯電話又はICタグ読み取り機能付携帯端末を含むことができる。 更に、前記環境家計簿提供システムでは、前記環境負荷増加量/低減量データ収集システムは、更に、消費者へ各商品・サービスの購入及び各行動に対して、数値化された前記地球環境に対する負荷増加量及び低減量を通知することもできる。 【0019】 更に、前記環境家計簿提供システムでは、前記代金決済代行会社端末は、典型的にはクレジット会社のコンピュータ端末であってよい。 【0020】 更に、前記環境家計簿提供システムでは、前記環境負荷増加量/低減量データ収集システムは、消費者へ各商品・サービスの購入及び各行動に対して、数値化された前記地球環境に対する負荷増加量及び低減量を各商品・サービスの購入又は各行動の際にも確認でき、環境家計簿収支の改善に供することを可能にすることもできる。 更に、前記環境家計簿提供システムでは、前記数値化された前記地球環境に対する負荷増加量及び低減量の確認は、商品又はそのカタログに付されたバーコード又はICタグを、少なくともカメラ付き携帯電話又はICタグ読み取り機能付携帯端末を含む前記消費者端末で読み取ることにより行うこともできる。 更に、前記環境家計簿提供システムでは、前記数値化された前記地球環境に対する負荷増加量及び低減量の確認は、商品に関するホームページ上の表示プログラムで確認することにより行うこともできる。 更に、前記環境家計簿提供システムでは、前記公共サービス提供会社システムは、典型的には電力会社,ガス会社又は水道会社のコンピュータシステムであってよい。」 (b)「【0030】 消費者端末3は、携帯電話4を含み、ユーザが商品・サービス提供会社端末12に対して、ネット上で商品の購入やサービスの提供の申し込みに使用される。また、消費者端末3は、ユーザが、後で説明するように、環境負荷増加量/低減量データ収集システム6に対して、環境負荷増加量や低減量データを送信するために使用される。消費者端末3は、少なくともカメラ付き携帯電話4又はICタグ読み取り機能付携帯端末を含んでいる。 【0031】 代金決済代行会社端末11は、ネット上でユーザが商品の購入やサービスの提供を申し込んだときに、商品・サービス提供会社端末12に対して、その代金を立て替えて支払うために使用される。 【0032】 環境負荷増加量/低減量データ収集システム6は、後で説明するように、ユーザの行動情報,商品・サービス購入情報に基づき数値化された環境負荷増加量又は低減量データを算出して直接ユーザに送信し、更に、この算出された環境負荷増加量又は低減量データやユーザ又は種々の手段から送られる既に数値化された環境負荷増加量又は低減量データを、ユーザ識別情報と共にネットワーク2を介して公共サービス提供会社システムに送信し、環境家計簿サーバ10に蓄積する。ここで、ユーザの行動情報,商品・サービス購入情報に基づく環境負荷増加量又は低減量データの算出には、主として、化石エネルギの消費量、CO2換算量の算出を行い、また有害物質使用の有無等を含んでいる。 【0033】 公共サービス提供会社システム7のホストコンピュータ8は、主として公共サービス料金計算を行い、そのデータを代金回収サーバ9に蓄積すると共に、環境負荷増加量/低減量データ収集システム6から送られてくる数値化された環境負荷増加量又は低減量データを、ユーザ識別情報に基づき区分けして環境家計簿サーバ10に蓄積する。 【0034】 [システムの運営方法] 図2は、代金決済システムを利用した環境家計簿提供システムの運営方法を、環境データの流れの観点から説明する図である。消費者の商品・サービスの購入により、この商品・サービス情報が環境負荷増加量/低減量データ収集システム6に送られる。同様に、消費者の各種の行動により、この行動情報が環境負荷増加量/低減量データ収集システム6に送られる。 【0035】 環境負荷増加量/低減量データ収集システム6は、各商品・サービス情報又は各行動情報に基づき、数値化された環境負荷増加量又は低減量データを算出して直接にユーザの消費者端末3に個別データとして送信する。更に、環境負荷増加量/低減量データ収集システム6は、この個別データ(環境負荷増加量又は低減量データ)を、ユーザ識別情報と共にネットワーク2を介して公共サービス提供会社システム7に送信し、環境家計簿サーバ10に蓄積する。なお、消費者サイドから既に数値化された環境負荷増加量又は低減量データが送信されてきた場合には、この個別データをユーザ識別情報と共に公共サービス提供会社システム7に送信する。なお、環境負荷増加量/低減量データ収集システム6が行うデータ収集の例に関しては、図5?8に関連して説明する。」 以上の記載事項から、引用例1には 「消費者端末3は、携帯電話4を含み、ユーザが商品・サービス提供会社端末12に対して、ネット上で商品の購入やサービスの提供の申し込みに使用され、 消費者の商品・サービスの購入により、この商品・サービス情報が環境負荷増加量/低減量データ収集システム6に送られ、同様に、消費者の各種の行動により、この行動情報が環境負荷増加量/低減量データ収集システム6に送られ、 環境負荷増加量/低減量データ収集システム6は、各商品・サービス情報又は各行動情報に基づき、数値化された環境負荷増加量又は低減量データを算出して、消費者端末3に個別データとして送信し、個別データを受信する消費者端末3」の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されている。 ウ.引用例2 原査定の拒絶理由で引用文献3として引用された特開2000-274778号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (a)「【0039】図3では、表示部107による空調機運転コストの表示例である。画面の右半分には、間取図が提示されている。ここでは、各部屋に人体検知センサによるリアルタイム管理制御を前提に、各部屋における生活者の在不在状態までもがモニターされているが、ここでは本発明の本質ではないので説明は省略する。図3においては、各部屋への快適/省エネといったモード切替えや、詳細な温度設定が可能となっている。中央付近の温度設定ボタンにより、各設定温度に対応した快適性が分かると同時に、この図3の右下に提示されているように、リアルタイムアドバイス機能が特徴である。単位選択結果に従い、電力使用量Kwhか金額換算値¥かが選択可能である。この表示例では電力量での節約を表示している。その最下部の貢献度ボタンがあるが、これにより本発明の特徴である省エネ貢献度表示部108が機能するよう構成されている。図4には、省エネ貢献度表示部108の二酸化炭素排出量の画面表示例を示した。ここでは、上述の電力量ではなく、その換算値として二酸化炭素の発生量を提示している。 【0040】図5は、本発明の特徴の1つである省エネ貢献度表示部108による植物の画面表示例である。図4では、非常に堅苦しく、直感的に環境貢献度が分かり難い傾向があったが、図5の場合にはエコロジー貢献度として、樹木で2.5本分の二酸化炭素消費量であることが、一目で分かるように改良されている。そして、図6は動物として、熱帯魚といった非常に家庭でもなじみの深い生物による表示例を示している。例えば、魚の発生数の最大値から最小値を画面サイズから決めておき、一方省エネ量を例えば昨年度の使用量を最小値とし、30%の省エネ量を最大値と対応させることにより、直感的な省エネ努力が定性的ではあるが把握できるようになる。30%は非常に困難であるかもしれないが、10%ならば魚の数は増加し、また逆に昨年より消費電力が増加した場合に、つまり省エネ効果がマイナスの場合には魚の数が減る、或いは消滅することとなり、かなり心理的には効果があると期待できる。なお、発生数だけでなく、その生物の活動量やスピードでの表現も非常に効果的である。つまり、生活者の中でも高齢者から子供達などでも、難しい物理量ではないので、簡単に理解できる効果がある。その結果、居住者全員参加による、楽しみながら、場合によっては競争心も少し刺激しながらの省エネ推進が図れるのである。」 以上の記載から、引用例2は、「二酸化炭素の発生量を樹木の数として表示すること。」(以下、「引用例2の記載事項」という。)が記載されている。 エ.対比、判断 (ア)そこで、本件補正発明と引用例1発明を対比する。 引用例1発明の「消費者端末3」は、「携帯電話4」を含み、「商品・サービス提供会社端末12に対して、ネット上で商品の購入やサービスの提供の申し込みに使用され」るものである。この「携帯電話4を含」む「消費者端末3」は、「無線通信手段」であり、「商品・サービス提供会社端末12に対して、ネット上で商品の購入やサービスの提供の申し込みに使用され」るから、ユーザが「ネット上で商品の購入やサービスの提供の申し込み」といった「環境に負荷を与える活動をしたことを示す情報」を携帯電話4の外部から入力している。そうすると、引用例1発明の携帯端末4は、「外部から」、「環境に負荷を与える活動をしたことを示す情報」を取得しているから、この携帯電話4は、本件補正発明の「外部から、ユーザが環境に負荷を与える活動をしたことを示す情報を取得する無線通信手段」の機能を有している。 引用例1発明は、消費者端末である携帯電話4が、「行動情報が環境負荷増加量/低減量データ収集システム6」に対して「消費者の商品・サービスの購入」や「消費者の各種の行動」に関するデータを送信し、送信した「消費者の商品・サービスの購入」や「消費者の各種の行動」に関するデータに対応した数値化された環境負荷増加量又は低減量データを受信する。そうすると、引用例1発明の消費者端末である携帯電話4は、本件補正発明の「取得した情報に基づいて、環境負荷量を取得する環境負荷量取得手段」に相当する機能を有している。 引用例1発明の「消費者端末3」は、環境負荷増加量又は低減量をユーザに知らせるために表示出力をしていることが明らかであるから、引用例1発明の消費者端末である携帯電話4は、本件補正発明の「取得した前記環境負荷量に応じて、ユーザに対して出力するユーザインターフェースを変更するユーザインターフェース変更手段」に相当する機能を有している。 (イ)したがって、両発明の一致点、相違点は以下の通りである。 〈一致点〉 「 外部から、ユーザが環境に負荷を与える活動をしたことを示す情報を取得する無線通信手段と、 取得した情報に基づいて、環境負荷量を取得する環境負荷量取得手段と、 取得した環境負荷量に応じて、ユーザに対して出力するユーザインターフェースを変更するユーザインターフェース変更手段と、 を備える携帯情報端末。」 〈相違点〉 本件補正発明は、「インターフェース変更手段」が「取得した環境負荷量の変化に応じて、 環境負荷量が増えたときには、地球環境に与える負荷が大きくなり地球環境を悪化させたことを示すユーザインターフェースに変更し、 環境負荷量が減ったときには、地球環境に与える負荷が小さくなり地球環境を好転させたことを示すユーザインターフェースに変更し、 ユーザインターフェースは、聴覚的情報又は触覚的情報の何れか又は組み合わせによって、地球環境を悪化させたこと又は好転させたことをユーザに示」しているのに対して、引用例1発明は、環境負荷増加量又は低減量をユーザに知らせるための表示出力をするにとどまる点。 相違点について検討する。 引用例2の記載事項において、「二酸化炭素の発生量」すなわち「環境負荷量」を、「樹木の数として表示すること」は、省エネ効果、すなわち地球環境に与える負荷の増減をユーザにわかりやすく表示するものであるから、「取得した前記環境負荷量の変化に応じて、環境負荷量が増えたときには、地球環境に与える負荷が大きくなり地球環境を悪化させたことを示すユーザインターフェースに変更し、環境負荷量が減ったときには、地球環境に与える負荷が小さくなり地球環境を好転させたことを示すユーザインターフェースに変更し、ユーザインターフェースは、地球環境を悪化させたこと又は好転させたことをユーザに示す」ことにほかならない。 また、聴覚的情報又は触覚的情報の何れか又は組み合わせによって情報を知らせることは、携帯電話の着メロや着信時のバイブレーションまたは着メロと着信時のバイブレーションの組み合わせとして、よく知られた手段であるから、インターフェースを、「聴覚的情報又は触覚的情報の何れか又は組み合わせ」とすることは、適宜なし得る設計的事項にすぎない。 以上のことから、引用例1発明において、設計的事項を勘案して、引用例2の記載事項を適用することにより、「取得した環境負荷量の変化に応じて、環境負荷量が増えたときには、地球環境に与える負荷が大きくなり地球環境を悪化させたことを示すユーザインターフェースに変更し、環境負荷量が減ったときには、地球環境に与える負荷が小さくなり地球環境を好転させたことを示すユーザインターフェースに変更」するようにし、「ユーザインターフェースは、聴覚的情報又は触覚的情報の何れか又は組み合わせによって、地球環境を悪化させたこと又は好転させたことをユーザに示」すように構成することにより、相違点の構成とすることは当業者が容易になし得ることである。 そして、上記相違点を総合的に判断しても、本件補正発明が奏する効果は引用例1発明、引用例2の記載事項及び設計的事項から当業者が十分予測できたものであって格別なものとはいえない。 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について (1)平成25年7月12日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願請求項1に係る発明は、出願当初の特許請求の範囲請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)であって、前記2.(1)の(1-1)に記載したとおりのものである。 (2)引用例 原査定の拒絶理由に引用される引用例、およびその記載事項は、前記2.(2-2)に記載したとおりのものである。 (3)対比、判断 本願発明は、本件補正発明から、「ユーザインターフェース変更手段」という構成に対して「取得した環境負荷量の変化に応じて、環境負荷量が増えたときには、地球環境に与える負荷が大きくなり地球環境を悪化させたことを示す前記ユーザインターフェースに変更し、環境負荷量が減ったときには、地球環境に与える負荷が小さくなり前記地球環境を好転させたことを示す前記ユーザインターフェースに変更し、ユーザインターフェースは、聴覚的情報又は触覚的情報の何れか又は組み合わせによって、地球環境を悪化させたこと又は好転させたことを前記ユーザに示す」とした限定事項を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、更に他の要件を付加したものに相当する本件補正発明が前記「2.(2)」に記載したとおり、引用例1発明、引用例2の記載事項及び設計的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1発明、引用例2の記載事項及び設計的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)むすび 以上のとおり、本願発明は引用例1発明、引用例2の記載事項及び設計的事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-06-30 |
結審通知日 | 2014-07-01 |
審決日 | 2014-07-28 |
出願番号 | 特願2008-267432(P2008-267432) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06Q)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 脇岡 剛 |
特許庁審判長 |
清田 健一 |
特許庁審判官 |
西山 昇 石川 正二 |
発明の名称 | 携帯情報端末、地球環境変化通知システム及びユーザインターフェース変更方法 |
代理人 | 速水 進治 |