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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1292325
審判番号 不服2012-8250  
総通号数 179 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-05-07 
確定日 2014-10-20 
事件の表示 特願2008-519702「単一の表面実装パッケージ中に実装される完全パワーマネージメントシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 1月11日国際公開、WO2007/005864、平成20年12月11日国内公表、特表2008-545280〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,平成18年6月30日(パリ条約による優先権主張2005年7月1日,米国)を国際出願日とする出願であって,平成23年12月21日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成24年5月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2.原査定
原査定における拒絶の理由の一つは,以下のとおりのものと認める。
「この出願の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。
1.特開2004-228402号公報」

第3.平成24年5月7日付け手続補正の却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年5月7日付け手続補正(以下「本件補正」という)を却下する。

[理由]
1.本件補正の概要
本件補正は,平成23年8月2日付けで補正された特許請求の範囲をさらに補正するもので,請求項1については,補正前に
「制御装置集積回路;
前記制御装置集積回路と結合するパワーMOSFET;
少なくとも1のインダクタを有する複数の受動素子;
を有する装置であって,
前記制御装置集積回路,前記パワーMOSFET,及び前記複数の受動素子は,機能的に結合することで完全パワーマネージメントシステムを実装し,
前記制御装置集積回路,前記パワーMOSFET,及び前記複数の受動素子は,金属リードフレームに実装され,かつ
前記制御装置集積回路,前記パワーMOSFET,及び前記複数の受動素子は,プラスチックで封止されることで,単一パッケージを形成する,
装置。」
とあるのを

「制御装置集積回路;
前記制御装置集積回路と結合するパワーMOSFET;
少なくとも1のインダクタを有する複数の表面実装受動素子;
を有する装置であって,
前記制御装置集積回路,前記パワーMOSFET,及び前記複数の表面実装受動素子は,機能的に結合することで完全パワーマネージメントシステムを実装し,
前記制御装置集積回路,前記パワーMOSFET,及び前記複数の表面実装受動素子は,金属リードフレームに直接実装され,かつ
前記制御装置集積回路,前記パワーMOSFET,及び前記複数の表面実装受動素子は,プラスチックで封止されることで,単一無鉛表面実装パッケージを形成する,
装置。」
と補正するものである。

請求項1の補正は,受動素子に対して,「表面実装」との限定を付し,パッケージに対して,「無鉛表面実装」との限定を付したものである。そして,請求項1の補正が,産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものでないことは明らかである。
したがって,少なくとも請求項1の補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について検討する。

2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され,本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2004-228402号公報(以下「引用例」という。)には,半導体装置に関し,図面とともに次の事項が記載されている。

a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイパッド,該ダイパッドの主面に接着搭載された半導体チップ,一端側がインナーリード部を他端側がアウターリード部を構成する複数のリード,インナーリード部に接着搭載され半導体チップと電気的に接続される複数の受動素子,及びダイパッドと半導体チップとインナーリード部と受動素子とを収納するパッケージを備えた半導体装置において,
前記複数の受動素子を一体に構成したことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
受動素子のインナーリード部との対向面に一対の電極対を設け,受動素子のインナーリード部への接続搭載によって電極対とインナーリード部とを電気的に接続したことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。」

b)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,半導体素子と複数の受動素子とを一体に備えた半導体装置に関し,特に,高電圧制御用半導体装置に関する。」

c)「【0018】
本発明の半導体装置は,半導体素子として,パワー素子と該パワー素子制御用の半導体素子とを含むことができ,このような半導体装置は,高電圧制御用のパワーデバイスとして利用される。パワー素子としては,PwTrやMOSFET,特にIGBTや,サイリスタ,その他専用のパワー素子などを用いることができる。
【0019】
これらの半導体素子は,所定のダイパッドにダイボンドされ,リードフレームのインナーリードに,ワイヤボンディングなどにより導通されて実装されている。半導体素子は,インナーリード上に実装された受動素子と協働して,所望の性能を有する半導体装置を構成する。
【0020】
本発明の受動素子には,コンデンサ,抵抗,コイル等を用いることができる。」

d)「【0021】
本発明で用いられるリードフレームは,銅薄板から,プレス加工やエッチング加工によって成形され,特に,大量生産でのコスト低下のために,プレス加工で成形されるのが好ましい。」

e)「【0022】
本発明の半導体装置は,半導体素子,受動素子,及びインナーリードがパッケージに封止されており,アウターリードのみが露出して,半導体装置内部と外部とを電気的に接続可能としている。パッケージとしては,封止用の樹脂を用いることができ,特に,絶縁性,高周波特性,強度,接着強度,耐吸湿性,成型性に優れ,特に高温下でのそれらの特性が優れた樹脂が選択され,例えば,エポキシ樹脂が利用できる。」

f)「【0023】
【実施例】
実施例1.
本発明の半導体装置により,パワーデバイスを作成した例を以下に示す。パワーデバイス9は,樹脂モールド前は,図1に示すように,リードフレーム2に半導体素子1,4と受動素子70,71,72,8とが配置固定される。
リードフレーム2には,2つのダイパッド10,40と,インナーリード21?28とが形成されており,それらはアウターリード29等を介して,フレーム20に固定されている。リードフレームは,銅薄板から成形されている。」

上記記載事項a?f及び図面の記載によれば,引用例には以下の発明が記載されているといえる(以下「引用発明」という。)。
「半導体素子と,複数の受動素子と,ダイパッドとインナーリードとが形成され,銅薄板から成形されているリードフレームと,ダイパッドと半導体素子とインナーリードと受動素子とを収納するパッケージと,を備えた半導体装置であって,半導体素子は,受動素子と協働して,所望の性能を有する前記半導体装置を構成し,半導体素子として,MOSFETが用いられるパワー素子と該パワー素子制御用の半導体素子とを含み,受動素子には,コンデンサ,抵抗,コイル等が用いられ,半導体素子は,ダイパッドにダイボンドされ,受動素子は,インナーリードに接着搭載され,受動素子のインナーリードとの対向面に一対の電極対を設け,受動素子のインナーリードへの接続搭載によって電極対とインナーリードとを電気的に接続し,パッケージとして,封止用の樹脂を用い,パワーデバイスが作成される半導体装置。」

3.対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「MOSFETが用いられるパワー素子」及び「銅薄板から成形されているリードフレーム」は,それぞれ本願補正発明の「パワーMOSFET」及び「金属リードフレーム」に相当する。
半導体装置においてMOSFET等の半導体素子を制御する回路を集積回路で構成することが技術常識であること(例えば,特開2004-140305号公報の段落【0003】参照)を考慮すれば,引用発明において,パワー素子制御用の半導体素子が集積回路で構成されていることは明らかであり,引用発明の「パワー素子制御用の半導体素子」は,本願補正発明の「制御装置集積回路」に相当するといえる。
引用発明は,複数の受動素子を備えており,受動素子にはコイルが用いられている。また,引用発明において,受動素子は,リードフレームのインナーリードに接着搭載されるものであって,インナーリードとの対向面に一対の電極対が設けられ,インナーリードへの接続搭載によって該電極対とインナーリードとが電気的に接続されるものである。そして,コイル等の受動素子として表面実装のものが周知であること(例えば,特開2005-142280号公報の段落【0003】,【0020】,図2参照)を考慮すれば,引用発明における受動素子が,インナーリードの表面に実装される表面実装受動素子であることは明らかである。したがって,引用発明は,本願補正発明における「少なくとも1のインダクタを有する複数の表面実装受動素子」との要件を備える。
引用発明において,MOSFETが用いられるパワー素子とパワー素子制御用の半導体素子は,受動素子と協働して,所望の性能を有する半導体装置を構成し,該半導体装置によりパワーデバイスが作成されるのであるから,引用発明は,本願補正発明における「制御装置集積回路,パワーMOSFET,及び複数の表面実装受動素子は,機能的に結合することで完全パワーマネージメントシステムを実装し」との要件を備える。
引用発明において,MOSFETが用いられるパワー素子とパワー素子制御用の半導体素子は,リードフレームのダイパッドにダイボンドされ,受動素子は,リードフレームのインナーリードの表面に実装されるのであるから,引用発明は,本願補正発明における「制御装置集積回路,パワーMOSFET,及び複数の表面実装受動素子は,金属リードフレームに直接実装され」との要件を備える。
引用発明は,MOSFETが用いられるパワー素子と,パワー素子制御用の半導体素子と,受動素子とを収納するパッケージを備え,パッケージとして,封止用の樹脂を用いるのであるから,引用発明は,本願補正発明における「制御装置集積回路,パワーMOSFET,及び複数の表面実装受動素子は,プラスチックで封止されることで,単一パッケージを形成する」との要件を備える。

以上のことから,本願補正発明と引用発明は,本願補正発明の表記にしたがえば,
「制御装置集積回路;
前記制御装置集積回路と結合するパワーMOSFET;
少なくとも1のインダクタを有する複数の表面実装受動素子;
を有する装置であって,
前記制御装置集積回路,前記パワーMOSFET,及び前記複数の表面実装受動素子は,機能的に結合することで完全パワーマネージメントシステムを実装し,
前記制御装置集積回路,前記パワーMOSFET,及び前記複数の表面実装受動素子は,金属リードフレームに直接実装され,かつ
前記制御装置集積回路,前記パワーMOSFET,及び前記複数の表面実装受動素子は,プラスチックで封止されることで,単一パッケージを形成する,
装置。」
である点で一致し,以下の点で相違する。

[相違点]
本願補正発明では,パッケージが無鉛表面実装パッケージであるのに対し,引用発明では,パッケージが無鉛表面実装されるものであるか否か不明な点。

上記相違点について検討する。
半導体装置において,パッケージを無鉛はんだを用いて表面実装することは,例えば,本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2000-223638号公報(前置報告において引用した文献,段落【0014】?【0015】参照)に記載されているように周知技術である。
したがって,引用発明において,上記周知技術を参照し,上記相違点に係る構成とすることは,当業者であれば容易に想到し得たことである。

そして,本願補正発明により得られる作用効果も,引用発明及び周知技術から当業者であれば予測できる程度のものであって,格別なものとはいえない。

よって,本願補正発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。

なお,審判請求人は,平成25年1月28日付け回答書において,「刊行物1に記載の発明は,鉛の使用を必須とするものであるので,たとえ刊行物3に記載されているとしても,当業者は,刊行物1の記載事項から,鉛を取り除いて本願発明に想到する動機付けを得ることはなかったと思料いたします。」と主張している。しかしながら,刊行物1(引用例)には,鉛を使用することは何ら記載されておらず,「刊行物1に記載の発明は,鉛の使用を必須とするものである」との審判請求人の主張は失当である。
また,審判請求人は,平成25年1月28日付け回答書において,補正案を提示している。この補正案の請求項1に記載された発明は,平成24年5月7日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に対し,請求項2に記載された「金属リードフレームの一部がパッケージの背面で露出している」との限定を付したものであるが,この限定された点は,平成23年2月1日付け拒絶理由通知書に記載したとおり周知技術であるので,この補正案によっても特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

4.むすび
以上のとおりであるから,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第4.本願発明
本件補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明は,平成23年8月2日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである(以下「本願発明」という。「第3」の「1.本件補正の概要」参照。)。

第5.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項は,前記「第3」の「2.引用刊行物」に記載したとおりである。

第6.対比・判断
本願発明は,本願補正発明から,前記「第3」の「1.本件補正の概要」に記載した限定を外したものである。
そして,この限定の一部が,前記「第3」の「3.対比・判断」に記載したとおり,本願補正発明と引用発明の相違点である。
してみると,本願発明は,本願補正発明から,本願補正発明と引用発明の相違点となる限定を外したものであるから,本願発明と引用発明との間に相違点はなく,本願発明は,引用例に記載された発明と同一である。

第7.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例に記載された発明と同一であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができないので,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
したがって,原査定は妥当であり,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-02-21 
結審通知日 2013-02-26 
審決日 2013-03-12 
出願番号 特願2008-519702(P2008-519702)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂本 薫昭  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 杉浦 貴之
小関 峰夫
発明の名称 単一の表面実装パッケージ中に実装される完全パワーマネージメントシステム  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠重  

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