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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1292359
審判番号 不服2013-4962  
総通号数 179 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-03-14 
確定日 2014-10-01 
事件の表示 特願2009-515565「複数レベルのロードロックチャンバ、移送チャンバ、及びこれにインターフェイスするのに適したロボット」拒絶査定不服審判事件〔平成19年12月21日国際公開、WO2007/146643、平成21年11月19日国内公表、特表2009-540613〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、2007年6月4日(パリ条約による優先権主張2006年6月15日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする特許出願であって、平成23年12月16日に特許請求の範囲について手続補正書が提出され、同23年12月9付けで拒絶の理由が通知され(同24年1月10日発送)、同24年1月13日に意見書が提出され、同24年4月6日付けで再度拒絶の理由が通知され、同24年8月14日に意見書とともに特許請求の範囲の請求項1及び8についてさらに手続補正書が提出されたが、同24年11月13日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされた。
これに対し、平成25年3月14日に該査定の取消を求めて本件審判の請求がなされるとともに明細書について手続補正書が提出され、その後、当審の同25年6月7日付け審尋に対して同25年9月10日に回答書が提出されたものである。

第2 平成25年3月14日付けの手続補正について
平成25年3月14日付けの手続補正は、明細書の段落【0030】の「スリットバルブアクチュエータ06」との記載を「スリットバルブアクチュエータ506」との記載に補正しようとするもので、当該補正は、誤記の訂正(特許法第17条の2第5項第3号)を目的とするものであり、新規事項の追加はなく、適法である。

第3 本願発明
上記のとおり本件補正は適法であるところ、本願の請求項1ないし18に係る発明は、平成23年12月16日提出の手続補正書及び同24年8月14日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし18に記載された事項により特定されるとおりのものと認めるところ、その請求項1の記載は以下のとおりである。(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)
「【請求項1】
一体的チャンバ本体と、
上記チャンバ本体に横方向に間隔を開けて形成された第1チャンバ及び第2チャンバと、
上記第1チャンバ及び第2チャンバより低い高さで上記チャンバ本体に横方向に間隔を開けて形成された第3チャンバ及び第4チャンバと、を備え、上記第1チャンバ、第2チャンバ、第3チャンバ及び第4チャンバは、互いに環境的に分離され、且つそれぞれがチャンバ開口を有し、第1及び第2チャンバのそれぞれは、処理済の基板及び未処理の基板を受け取るのに使用され、更に、
第1及び第2チャンバの両方のチャンバ開口をシールするための上部スリットバルブドアと、
第3及び第4チャンバの両方のチャンバ開口をシールするための下部スリットバルブドアと、
各チャンバに各々配置された基板支持体と、
を備え、
第1及び第2チャンバが処理済の基板を受け取るのに使用されるときは、第3及び第4チャンバが、未処理の基板を受け取るのに使用され、第1及び第2チャンバが未処理の基板を受け取るのに使用されるときは、第3及び第4チャンバが、処理済の基板を受け取るのに使用される、ロードロックチャンバ。」

第4 引用刊行物に記載の発明及び事項等
これに対して、原審の平成24年4月6日付け拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された下記刊行物には、以下の発明、あるいは事項が記載されていると認められる。
刊行物1:特表2002-504744号公報
刊行物2:特開2004-221197号公報

1 刊行物1
(1)刊行物1に記載された事項
刊行物1には、「真空処理を行う非加工物を、低汚染かつ高処理能力で取扱うためのシステムおよび方法」に関して、図面とともに、以下の事項が記載されている。なお、下線は理解の便のため、当審で付したものである。

ア 「【0001】
(技術分野)・・・(中略)・・・
本発明の技術分野は、概ね被加工物の真空処理に関する。より詳細には、本発明の技術分野は、大気圧とは異なる圧力下での処理を含んだ、低汚染、高処理能力で被加工物を取扱うためのシステムおよび方法に関する。かかる被加工物の例としては、真空処理が通常必要とされる半導体ウエハもしくはディスプレイ用フラットパネルを含むことができる。」

イ 「【0021】
(発明を実施するための最良の形態)
図4は、本発明の実施の形態に基づいた半導体被加工物取扱システムの簡略化された側部断面図であり、これは概して400で示されている。図4に示すように、システム400は、クリーン・ルーム環境にあってもよい被加工物カセット保持装置402、大気ロボット404、上側ロード・ロック406a、下側ロード・ロック406b、真空搬送室408および処理室410とを含む。コンパクトで単純化されたロード・ロックと、高い処理能力を有し汚染の可能性の低いロボット設計を用いて処理を行うために、システム400は、カセット保持装置402から処理室410へ被加工物を搬送できる。処理される被加工物のカセットは、まずカセット保持装置402にもたらされる。大気ロボット404は、・・・(中略)・・・パドル412を回転させたり、および/または、上げたり下げたりするためのシャフト414とを含んでいる。・・・(中略)・・・その後、シャフト414は回転し、パドル412がロード・ロック406aおよび406bと向かい合うよう動く。シャフトは上げられ又は下げられて、パドルをロード・ロック406a又は406bのいずれかの棚に位置合せし、その間、独立した制御に基づく全ての動作は、同時に生じてもよく、連続で生じてもよい。概して、他方のロード・ロック中の被加工物が真空圧下で処理されている間に、如何なる時でも、一方のロード・ロックを大気ロボット404に対して開くことができる。その後、パドル412は水平に前進し適切なロード・ロック内に被加工物を置く。また、大気ロボット404は類似の方法で被加工物をロード・ロックから取り去り、処理済の被加工物をカセット内に置く。
【0022】
ロード・ロックは、被加工物を保持するために1つ以上の棚416aおよび416bを含んでいる。処理後の被加工物のために、冷却ステーションを提供するよう棚を冷却してもよい。別の実施の形態において、棚をロード・ロック内に設けるのではなく、カセット状の保持装置をロード・ロック内に装填してもよい。ロード・ロックは、室外において往復ドア418aおよび418bによってシールされる。上側の往復ドア418aは、そこを通って被加工物が上側ロード・ロック406a内に装填されるか、又は上側ロード・ロックからアンロードされる開口部を露出するよう上げることができる。下側の往復ドア418bは、そこを通って被加工物が下側ロード・ロック406b内に装填されるか、又は下側ロード・ロックからアンロードされ、同様に開口部を露出するよう下ろすことができる。
【0023】
大気ロボット404が、処理済の被加工物をロード・ロックから取り去り、新規の被加工物を再装填した後、往復ドアが閉鎖されロード・ロックは真空圧まで減圧され、真空搬送室408の圧力になる。回転ドア420a、420bは、その後開放され、真空搬送ロボット422が被加工物にアクセスできるようになる。上側回転駆動装置(図示せず)が上側回転ドア420aを、上側ロード・ロックの内壁424aからわずかな距離だけ直線的に移動させ、回転させる。回転駆動装置はドアを上げ又は下ろし、そこを通って、処理前の被加工物を棚416aから取り去り、処理後の被加工物を棚に戻すことができる開口部を露出させる。下側回転駆動装置(図示せず)は、下側回転ドア420bを同様の方法で、壁424bから後および上方向又は下方向に動かし、下側ロード・ロック406b中の被加工物にアクセスできるようにする。
【0024】
図4に示される2つのロード・ロック・システムは、新しい被加工物を大気のクリーン・ルームから真空の処理環境にもたらすことに対して著しい中断時間なしに、ほぼ連続して処理ができるようにする。被加工物が一方のロード・ロック(例えば上側ロード・ロック406a)内に装填されているとき、他方のロード・ロック406bは真空圧下にある。上側ロード・ロック406aに関して、往復ドア418aは開いており、大気ロボット404は処理済の被加工物を取り去り、そのロード・ロックに新しい被加工物を再装填する。回転ドア420aは、閉じられて、真空搬送室408の真空圧に対してシールを与える。同時に、回転ドア420bは開いており、往復ドア418bは閉じられており、下側ロード・ロック406b内にある被加工物に加工を行うためにアクセスできるようになる。
【0025】
装填の後、往復ドア418aは閉じられ、上側ロード・ロック406aは真空ポンプ(図示せず)によって排気される。適切な圧力が得られたとき、回転ドア420aを閉じることができる。ほぼ連続した処理を可能にするために、上側ロード・ロック406aの排気を行ってもよく、最後から2番目の処理済の被加工物が下側ロード・ロック406bに戻される前に、又は、その時に回転ドア420aを開いてもよい。その後、上側ロード・ロック406aからの新規の被加工物が、下側ロード・ロック406bに戻される処理室410内で最後に処理された被加工物と交換される。その後、回転ドア420bは閉じられ、下側ロード・ロック406b内の圧力は周囲環境(大気圧のもとでのクリーン・ルームであってよい)と均衡を保つところまで上げられる。その後、往復ドア418bは開かれ、大気ロボット404が処理済の被加工物を取り去り、新規の被加工物を下側ロード・ロック406b内に再装填する。その後、真空環境下で処理を行うために新規の被加工物が常に又はほぼ常にロード・ロックの一方から得られるよう、この処理が連続的に行われる。」

ウ 「 【0030】
図5は、本発明の実施の形態による被加工物取扱システムの上部断面図であり、2つの並列する被加工物を処理することができる。ロボット、ロード・ロックおよび処理室は全て、同時に2つの(もしくは、場合によってはより多くの)被加工物を取扱うように設計されている。結果として、処理能力が2倍(もしくは、より多く)になるにもかかわらず、多くの機械および制御機構が共用できる。図5に示すように、2つ以上の被加工物カセット保持装置402,502を並列に設けることができる。カセット保持装置402,502のいずれにも位置合せをするよう、ロボットが水平に移動可能にするトラック505上に、大気ロボット404を位置させることができる。各々の上側ロード・ロック406a、下側ロード・ロック406b(図5に示さず)は、各々の棚416a,416b(図5に示さず)に被加工物のための並列位置を有している。搬送ロボット422は、各々のアーム430a、430b上に2つのパドルを有している。上側アーム430aは、パドル426a,526aを支持している。下側アーム430bは、パドル426b,526bを支持している。これにより、ロボットは棚416aもしくは416bから同時に2つの被加工物を置いたり取り去ったりすることができる。例えば、アーム430bが前進して2つの処理済の被加工物を各ロード・ロックに置くことができる。その後、シャフト428はパドル426a,パドル426bを、別の棚上の新規な被加工物に位置合せするために上げ下げできる。その後、アーム430aが前進して、処理のために2つの新規被加工物を取り去ることができる。一旦両アームが後退すると、シャフト428が回転可能になり、パドルは処理室410に向かい合う。処理室は、少なくとも2つの処理ステーション432,532を収容するように設計されている。ドア434が上昇し、アーム430bが前進し、処理室410から2つの処理済被加工物を取り去る。処理済の被加工物をもつアーム430bが後退した後、シャフトが上昇し又は下降し、新規の被加工物を処理室内の所望位置に位置決めを行う。その後、アーム430aは前進し、処理を行うための新規被加工物を置く。処理は、前述のように同時に処理される2つの被加工物について継続して行われる。
【0031】
図6Aは本発明の実施の形態に基づいた被加工物取扱システムを上部からみた正面斜視図、図6Bは上部からみた背面斜視図であり、被加工物取扱いシステムを支持し、拡張するために用いることができるフレーム構造部分を示す。図6Aおよび図6Bに示されるように、カセット保持装置402および502は、カセット自動装填システム602の一部分である。・・・」

(2)刊行物1記載の発明
上記摘記事項イ及び図4に記載された「上側ロード・ロック406a」及び「下側ロード・ロック406b」が互いに環境的に分離されていることは、技術常識から明らかである。
次に、摘記事項イの「被加工物が一方のロード・ロック(例えば上側ロード・ロック406a)内に装填されているとき、他方のロード・ロック406bは真空圧下にある。上側ロード・ロック406aに関して、往復ドア418aは開いており、大気ロボット404は処理済の被加工物を取り去り、・・・同時に、回転ドア420bは開いており、・・・下側ロード・ロック406b内にある被加工物に加工を行うためにアクセスできるようになる。」なる記載を技術常識を踏まえ合理的に解釈すれば、上側ロード・ロック406aが処理済の被加工物を受け取るのに使用されるときは、下側ロード・ロック406bが(未処理の)新しい被加工物を受け取るのに使用される、ということができる。さらに、上記摘記事項イの段落【0025】の記載から、逆に、上側ロード・ロック406aが(未処理の)新しい被加工物を受け取るのに使用されるときは、下側ロード・ロック406bが処理済の被加工物を受け取るのに使用されることが読み取れる。

そこで、刊行物1の上記摘記事項アないしウを、図面を参照しつつ技術常識を踏まえて本願発明に照らして整理すると、刊行物1には以下の発明が記載されていると認められる。(以下、「刊行物1発明」という。)
「 ロード・ロック本体と、
上記ロード・ロック本体に形成された上側ロード・ロック406aと、
上記上側ロード・ロック406aより低い高さで上記ロード・ロック本体に形成された下側ロード・ロック406b、を備え、上記上側ロード・ロック406a及び下側ロード・ロック406bは、互いに環境的に分離され、且つそれぞれが開口部を有し、上側ロード・ロック406aは、処理済の被加工物及び新しい被加工物を受け取るのに使用され、更に、
上側ロード・ロック406aの開口部をシールするための上側の往復ドア418aと、
下側ロード・ロック406bの開口部をシールするための下側の往復ドア418bと、
各チャンバに各々配置された棚416aおよび416bと、
を備え、
上側ロード・ロック406a及び下側ロード・ロック406bは、いずれも被加工物のための並列位置を有しており、同時に2つの被加工物を置いたり取り去ったりすることができ、
上側ロード・ロック406aが処理済の被加工物を受け取るのに使用されるときは、下側ロード・ロック406bが、新しい被加工物を受け取るのに使用され、上側ロード・ロック406aが新しい被加工物を受け取るのに使用されるときは、下側ロード・ロック406bが、処理済の被加工物を受け取るのに使用される、ロード・ロック。」

2 刊行物2
(1)刊行物2に記載された事項
刊行物2には、「処理装置」に関して、図面とともに、以下の事項が記載されている。

ア 「【0025】
ローダ/アンローダ部12は、カセットステーション10とロードロック・モジュール14との間で半導体基板Wを1枚ずつ搬送するための基板搬送機構22を備えている。・・・(後略)
【0026】
搬送アーム26は、所望のカセットCRに所望の高さ位置で正面からアクセスして、カセットCR内の該当の基板収納位置から1枚の半導体基板Wを取り出し、又は該当の基板収納位置に1枚の半導体基板Wを挿し込みできるようになっている。
【0027】
ロードロック・モジュール14は、鉛直方向、即ち、図1におけるZ方向における上下に多段配置された複数(例えば、一対)のロードロック室を左右に2組(28H,28L),(30H,30L)備えている。」

イ 「【0028】
上下に多段配置された一対のロードロック室30H,30Lは、処理済の半導体基板Wを一時的に留め置くための処理済基板配置部を構成する。本実施形態において、処理済基板配置部のロードロック室30H,30Lは、処理済の半導体基板Wを所定温度まで冷却するためのクーリングチャンバ又はステージを兼ねている。
【0029】
各ロードロック室28H,28L,30H,30Lの室内には複数本、例えば3本の支持突起部130が設けられており、半導体基板Wを載置することができる。また、各ロードロック室に真空ポンプ(図示せず)や不活性ガス供給部(図示せず)が接続されており、室内空間を真空または不活性ガス雰囲気にすることも可能となっている。さらに、クーリングチャンバとして機能する処理済基板配置部のロードロック室(以下、「冷却処理室」という)30H,30Lでは、後述する方法により、処理済の半導体基板Wが冷却される。
【0030】
未処理基板配置部のロードロック室28H,28Lにおいては、ローダ/アンローダ部12と向き合う側面には、開閉扉34付きの開口が半導体基板Wを搬入する入口として形成されている。また、トランスファ・モジュール16とゲートバルブ36を介して連結される開口が半導体基板Wを搬出する出口として形成されている。ローダ/アンローダ部12の基板搬送機構22は、開閉扉34が開いているロードロック室28H,28L内に未処理の半導体基板Wを1枚ずつ別々のタイミングで搬入する。
【0031】
冷却処理室30H,30Lにおいては、ローダ/アンローダ部12と向き合う側面に設けられた開閉扉34付きの開口が基板搬出口620を形成する。また、トランスファ・モジュール16にゲートバルブ36を介して連結される開口が基板搬入口610を形成している。ローダ/アンローダ部12の基板搬送機構22は、開閉扉34が開いている冷却処理室30H,30Lから処理済の半導体基板Wを1枚ずつ別々のタイミングで搬出する。」

ウ 以下に示す図1と図2の記載を上記摘記事項ア及びイの記載を踏まえて考えれば、横方向に間隔を開けて形成されたロードロック室28H及びロードロック室30Hと、上記ロードロック室28H及びロードロック室30Hより低い高さで上記横方向に間隔を開けて形成されたロードロック室28L及びロードロック室30Lが設けられているものと認められる。
【図1】


【図2】


(2)刊行物2事項
上記摘記事項イから、未処理の半導体基板Wを搬入するロードロック室28H及びロードロック室28Lがそれぞれ(構造的に)分離されており、処理済の半導体基板Wを搬出するロードロック室30H及びロードロック室30Lもそれぞれ(構造的に)分離されているものと認められ、これは、同じ使われ方をするロードロック室を環境的に分離すること、ということができる。
そこで、刊行物2の上記摘記事項ア及びイ及び認定事項ウを図面を参照しつつ、技術常識を踏まえて整理すると、刊行物2には以下の事項が記載されていると認められる。(以下、「刊行物2事項」という。)
「横方向に間隔を開けて形成されたロードロック室28H及びロードロック室30Hと、上記ロードロック室28H及びロードロック室30Hより低い高さで上記横方向に間隔を開けて形成されたロードロック室28L及びロードロック室30Lを備え、同じ使われ方をするロードロック室を環境的に分離すること。」

第5 対比
本願発明と刊行物1発明とを対比すると以下のとおりである。
刊行物1発明の「ロード・ロック本体」が本願発明の「一体的チャンバ本体」または「チャンバ本体」に相当することは、その機能及び技術常識に照らして明らかであり、以下同様に、「開口部」は「チャンバ開口」に、「上側の往復ドア418a」は「上部スリットバルブドア」に、「下側の往復ドア418b」は「下部スリットバルブドア」に、「ロード・ロック」は「ロードロックチャンバ」にそれぞれ相当することも明らかである。
また、上記摘記事項アに「被加工物の例としては、真空処理が通常必要とされる半導体ウエハ」とあることから、刊行物1発明の「被加工物」は本願発明の「基板」に相当するといえ、同様に、「新しい被加工物」は「未処理の基板」に、「棚416aおよび416b」は「基板支持体」に相当する。
次に、刊行物1発明の「上側ロード・ロック406a」と、本願発明の「第1チャンバ及び第2チャンバ」は、その相対的な上下位置から、上側チャンバ、である限りで共通し、同様に、刊行物1発明の「下側ロード・ロック406b」と、本願発明の「第3チャンバ及び第4チャンバ」は、下側チャンバ、である限りで共通する。さらに、刊行物1発明において「上側ロード・ロック406a及び下側ロード・ロック406bは、互いに環境的に分離され」ていることは、本願発明において「第1チャンバ、第2チャンバ、第3チャンバ及び第4チャンバは、互いに環境的に分離され」ていることと、上側チャンバと下側チャンバが互いに環境的に分離されている限りにおいて共通する。

したがって、本願発明と刊行物1発明とは、以下の点で一致しているということができる。
<一致点>
「 一体的チャンバ本体と、
上記チャンバ本体に形成された上側チャンバと、
上記上側チャンバより低い高さで上記チャンバ本体に形成された下側チャンバ、を備え、上記上側チャンバと下側チャンバは、互いに環境的に分離され、且つそれぞれがチャンバ開口を有し、上側チャンバは、処理済の基板及び未処理の基板を受け取るのに使用され、更に、
上側チャンバのチャンバ開口をシールするための上部スリットバルブドアと、
下側チャンバのチャンバ開口をシールするための下部スリットバルブドアと、
各チャンバに各々配置された基板支持体と、
を備え、
上側チャンバが処理済の基板を受け取るのに使用されるときは、下側チャンバが、未処理の基板を受け取るのに使用され、上側チャンバが未処理の基板を受け取るのに使用されるときは、下側チャンバが、処理済の基板を受け取るのに使用される、ロードロックチャンバ。」

そして、本願発明と刊行物1発明とは、以下の点で相違している。
<相違点>
本願発明においては、上側チャンバは横方向に間隔を開けて形成された第1チャンバ及び第2チャンバであり、下型チャンバは横方向に間隔を開けて形成された第3チャンバ及び第4チャンバであり、それら第1チャンバ、第2チャンバ、第3チャンバ及び第4チャンバは、互いに環境的に分離されているのに対し、
刊行物1発明においては、上側チャンバは(単一の)上側ロード・ロック406aであり、下側チャンバは(単一の)下側ロード・ロック406bであり、(単一の)上側ロード・ロック406a及び(単一の)下側ロード・ロック406bは、いずれも被加工物のための並列位置を有しており、同時に2つの被加工物を置いたり取り去ったりすることができるものである点。

第6 相違点の検討
1 <相違点>について
ア まず、刊行物1発明においては、上側ロード・ロック406a及び下側ロード・ロック406bは、いずれも単一のチャンバであるものの、2つの被加工物を横方向に並列配置させており、同時に2つの被加工物を置いたり取り去ったりすることが可能であるとともに、一つの被加工物のみを置いたり取り去ったりすることも可能である、ということができる。

イ 次に、上記第4の2(2)にて述べたように、刊行物2事項は、
「横方向に間隔を開けて形成されたロードロック室28H及びロードロック室30Hと、上記ロードロック室28H及びロードロック室30Hより低い高さで上記横方向に間隔を開けて形成されたロードロック室28L及びロードロック室30Lを備え、同じ使われ方をするロードロック室を環境的に分離すること。」というものであるところ、これを本願発明の用語に倣って表現すれば、刊行物2事項の「ロードロック室28H」は「第1チャンバ」と表現でき、以下同様に、「ロードロック室30H」は「第2チャンバ」と、「ロードロック室28L」は「第3チャンバ」と、「ロードロック室30L」は「第4チャンバ」と、「ロードロック室」は「チャンバ」と表現できる。
したがって、刊行物2事項は、
「横方向に間隔を開けて形成された第1チャンバ及び第2チャンバと、上記第1チャンバ及び第2チャンバより低い高さで上記横方向に間隔を開けて形成された第3チャンバ及び第4チャンバを備え、同じ使われ方をするチャンバを環境的に分離すること。」と言い換えることができる。

ウ ここで、刊行物1発明と刊行物2事項は、いずれも、上下方向に分離されたチャンバを有するロードロックチャンバである点で共通しており、刊行物2に接した当業者がこれを刊行物1発明に適用することを試みることに格別困難性はない。
そして、(上記アで指摘したように)上側ロード・ロック406a及び下側ロード・ロック406bのそれぞれが同時に2つの被加工物を置いたり取り去ったりすることが可能な刊行物1発明において、上記刊行物2事項を適用すれば、同じ使われ方をする上側ロード・ロック406aの2つの部分は、横方向に間隔を開けて形成された2つの第1及び第2のチャンバとして構成され、同様に、同じ使われ方をする下側ロード・ロック406bの2つの部分は、横方向に間隔を開けて形成された2つの第3及び4のチャンバとして構成され、それらの計4個のチャンバは、互いに環境的に分離されることとなる。

エ これに関し請求人は審判請求書にて「本願発明は・・・(1)第1チャンバ、第2チャンバ、第3チャンバ及び第4チャンバは、互いに環境的に分離されている。 ・・・ 上記の特徴(1)のため、本願発明では、『各チャンバ内の内部容積が減少され、これは、排気時間を短縮できるようにし、それに対応して、小型の低廉な真空ポンプしか要求しない』(本願の段落0016)。 ・・・ つまり、本願発明では、上記技術的特徴を有することで、『小型の低廉な真空ポンプを使用した場合であっても、基板のスループットを高める』ことが可能・・・
引用文献1(当審注:刊行物1)は、『各々の上側ロード・ロック406a、下側ロード・ロック406bは、各々の棚416a、416bに被加工物のための並列位置を有している』と記載しているのみであり、上記の特徴(1)は記載されておりません。
これは、引用文献1では、『各チャンバ内の内部容積を減少させる』という技術的思想が認識されていないためであると思料致します。
よって、当該技術的思想が認識されていない以上、引用文献1に、本願発明の上記技術的特徴を適用する動機付けは存在しないと思料致します。」と主張している(審判請求書「4. 本願発明が特許されるべき理由」欄)。
そこで検討するに、刊行物1には、「各チャンバ内の内部容積を減少させる」という技術思想は明記されていない。しかしながら、そもそも、各チャンバを環境的に分割してそれぞれの内部容積を減少させることは、機器の簡素化を総合的に判断して当業者が適宜選択し得る設計的事項とも言い得る事項であり、また、ロードロック室を環境的に分割して排気時間を短縮させることは、例えば、特開平7-142550号公報に「【0021】・・・また、処理速度を上げるためにロードロック準備室88とロードロック室90を別のシャッターで仕切って、それぞれ別の排気手段で排気することによって排気時間を短縮することが出来る。」と記載されているように、従来周知の事項であるから、刊行物1発明において、「上側ロード・ロック406a」及び「下側ロード・ロック406b」のそれぞれに上記刊行物2事項を適用して、各々の内部容積を減少させて排気時間を短縮させることの動機付けが存在するといえる。したがって、請求人の主張には理由がない。

オ そうしてみると、刊行物1発明に刊行物2事項を適用して相違点に係る本願発明の特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものと解するのが相当である。

2 小括
したがって、本願発明は、刊行物1発明及び刊行物2事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1発明及び刊行物2事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項2ないし18に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-05-01 
結審通知日 2014-05-07 
審決日 2014-05-20 
出願番号 特願2009-515565(P2009-515565)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 浅野 麻木金丸 治之  
特許庁審判長 石川 好文
特許庁審判官 長屋 陽二郎
久保 克彦
発明の名称 複数レベルのロードロックチャンバ、移送チャンバ、及びこれにインターフェイスするのに適したロボット  
代理人 小林 義教  
代理人 園田 吉隆  

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