• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02K
管理番号 1292417
審判番号 不服2013-22497  
総通号数 179 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-11-18 
確定日 2014-10-02 
事件の表示 特願2008-244109「回転電機の回転子及び回転電機」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 4月 8日出願公開、特開2010- 81676〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成20年9月24日を出願日とする出願であって、平成24年12月21日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成25年1月8日)、これに対し、平成25年2月21日付で意見書及び手続補正書が提出されたが、平成25年8月30日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成25年9月3日)、これに対し、平成25年11月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書が提出されたものである。


2.平成25年11月18日付の手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成25年11月18日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)本件補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1-2は、
「【請求項1】
界磁空間側の外周部域に、その外周部に沿う円弧状をなし且つスキューが施された磁石挿入用孔が所定間隔を存して複数個形成された回転子鉄心と、
この回転子鉄心の磁石挿入用孔に挿入され、前記磁石挿入用孔に対応する円弧状をなし且つその磁石挿入用孔に対応するスキューが施された平面視で略平行四辺形をなす磁極形成用の永久磁石と、を具備し、
前記永久磁石は、周方向に複数に分割され、
前記永久磁石は、平面視で台形状に2分割されていることを特徴とする回転電機の回転子。
【請求項2】
界磁空間側の外周部域に、その外周部に沿う円弧状をなし且つスキューが施された磁石挿入用孔が所定間隔を存して複数個形成された回転子鉄心と、
この回転子鉄心の磁石挿入用孔に挿入され、前記磁石挿入用孔に対応する円弧状をなし且つスキューを形成する斜辺を有しその磁石挿入用孔に対応するスキューが施された平面視で略平行四辺形をなす磁極形成用の永久磁石と、を具備し、
前記永久磁石は、周方向に複数に分割され、
前記永久磁石は、1つの矩形状と2つの三角形状に3分割されていることを特徴とする回転電機の回転子。」
と補正された。

本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「磁石挿入用孔」について、設けられる箇所を、「界磁空間側の外周部或いは内周部」から「界磁空間側の外周部」と限定し、形状を、「その外周部或いは内周部に沿う円弧状」から「その外周部に沿う円弧状」と限定し、同じく必要な事項である「永久磁石」について、形状を、磁石挿入用孔に対応「するスキューが施された」と限定し、同様に、請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項である「磁石挿入用孔」について、設けられる箇所を、「界磁空間側の外周部或いは内周部」から「界磁空間側の外周部」と限定し、形状を、「その外周部或いは内周部に沿う円弧状」から「その外周部に沿う円弧状」と限定し、同じく必要な事項である「永久磁石」について、形状を、磁石挿入用孔に対応「するスキューが施された」と限定したものであるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項2に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。


(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開昭56-101367号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。

1-a「本発明に係る、永久磁石式同期機の回転子の特徴は、回転子鉄心の中間部に設けた複数個の空間に永久磁石を装着し該鉄心外周部にはかご形巻線を備え、かつ上記永久磁石の極間短絡防止部を有せしめるようにした永久磁石式同期機の回転子において、回転子鉄心の、あるいは回転子鉄心における積層間に非磁性材料よりなる中間挿入板を介在せしめたものの、そのかご形巻線導体溝部をスキューさせたときの永久磁石装着用空間における軸方向見通し部に、直線状永久磁石を、あるいは分割した複数個の直線状永久磁石を、装着して形成した永久磁石式同期機の回転子にある。」(第3頁左上欄4-15行)

1-b「上記の導体溝部2は、回転子鉄心1の各磁性鉄板の鉄心積層方向に、約20度スキューさせてあり、上記の直線状永久磁石6A,6Bは、前記のスキューさせたときの永久磁石装着用空間部3の軸方向直線見通し部に挿入されたものであり、空間7というのは、第3図に示すように、上記直線状永久磁石6A,6Bと、スキューされている永久磁石装着用空間部3との間の空隙部である。」(第3頁右下欄6-13行)

1-c「次に、上記各形状により形成された永久磁石装着用空間部3における軸方向直線見通し部に、弧形の直線状永久磁石6A,6Bを挿入するようにするものであり」(第4頁右上欄1-4行)

1-d「さらに上記と関連するが、前述に係るものの、さらに別の実施例として、第3図と同様の関係説明図である第4図に示すように、永久磁石装着用空間部3に前記直線状永久磁石6A,6Bを挿入した後、その生ずる空間7に、その直線状永久磁石6A,6Bと同一特性を有する三角形状永久磁石14を隙間なく埋込むようにすることができ、その埋込み工程は前記と同様である。」(第5頁左上欄12-19行)

上記記載及び図面を参照すると、回転子鉄心の外周部域にかご形巻線導体溝部を設けている。
上記記載及び図面を参照すると、永久磁石装着用空間部はその外周部と同心状の弧形で所定間隔を存して複数個形成されている。
上記記載及び図面を参照すると、永久磁石装着用空間部に対応する弧形をなし且つスキューを形成する斜辺を有しその永久磁石装着用空間部に対応するスキューされた平面視で略平行四辺形をなす磁極形成用の永久磁石が示されている。
上記記載及び図面を参照すると、磁極形成用の永久磁石は周方向に複数に分割され、1つの直線状永久磁石と2つの三角形状永久磁石に3分割されている。

上記記載事項からみて、引用例1には、
「回転子鉄心の外周部域にかご形巻線導体溝部を設け、前記回転子鉄心の中間部に、その外周部と同心状の弧形をなし且つスキューされた永久磁石装着用空間部が所定間隔を存して複数個形成された回転子鉄心と、
この回転子鉄心の永久磁石装着用空間部に装着され、前記永久磁石装着用空間部に対応する弧形をなし且つスキューを形成する斜辺を有しその永久磁石装着用空間部に対応するスキューされた平面視で略平行四辺形をなす磁極形成用の永久磁石と、を具備し、
前記磁極形成用の永久磁石は、周方向に複数に分割され、
前記磁極形成用の永久磁石は、1つの直線状永久磁石と2つの三角形状永久磁石に3分割されている永久磁石式同期機の回転子。」
との発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。


(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「弧形」、「スキューされた」、「永久磁石装着用空間部」、「装着され」、「前記磁極形成用の永久磁石」、「永久磁石式同期機の回転子」は、それぞれ本願補正発明の「円弧状」、「スキューが施された」、「磁石挿入用孔」、「挿入され」、「前記永久磁石」、「回転電機の回転子」に相当する。

したがって、両者は、
「円弧状をなし且つスキューが施された磁石挿入用孔が所定間隔を存して複数個形成された回転子鉄心と、
この回転子鉄心の磁石挿入用孔に挿入され、前記磁石挿入用孔に対応する円弧状をなし且つスキューを形成する斜辺を有しその磁石挿入用孔に対応するスキューが施された平面視で略平行四辺形をなす磁極形成用の永久磁石と、を具備し、
前記永久磁石は、周方向に複数に分割され、
前記永久磁石は、1つの矩形状と2つの三角形状に3分割されている回転電機の回転子。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点〕
円弧状をなし且つスキューが施された磁石挿入用孔が所定間隔を存して複数個形成された回転子鉄心に関し、本願補正発明は、界磁空間側の外周部域に、その外周部に沿うように磁石挿入用孔が形成されるのに対し、引用発明は、回転子鉄心の外周部域にかご形巻線導体溝部を設け、前記回転子鉄心の中間部に、その外周部と同心状に磁石挿入用孔が形成される点。


(4)判断
引用発明の磁石挿入用孔が、回転子鉄心の中間部にその外周部と同心状に形成されるのは、回転子外周部域に始動用のかご形巻線導体溝部を設けるからである。回転電機は効率が高い方が好ましいことは、記載は無くとも自明な課題であり、通常は効率が高くなるように設計される。引用発明の磁石挿入用孔は、中心の回転軸に近づけば近づく程永久磁石の磁路長が長くなって磁気抵抗が増えるから、磁気抵抗をなるべく増やさないために回転子鉄心の外周部域にあることが好ましく、実際には、特開2007-202254号公報(図3、図4)、特開2008-141892号公報(図2)等にもみられるように、可能な限りかご形巻線導体溝部に近づけて外周部域に配置することが一般的である。
そうであれば、引用発明において、磁石挿入用孔を回転子鉄心の外周部域、即ち界磁空間側の外周部域に設けることは当業者が容易に考えられることと認められ、その際、磁石挿入用孔はその外周部と同心状であるから、その外周部に沿う形状となる。
そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条の規定により却下されるべきものである。


3.本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項2に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成25年2月21日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「界磁空間側の外周部或いは内周部に、その外周部或いは内周部に沿う円弧状をなし且つスキューが施された磁石挿入用孔が所定間隔を存して複数個形成された回転子鉄心と、
この回転子鉄心の磁石挿入用孔に挿入され、前記磁石挿入用孔に対応する円弧状をなし且つスキューを形成する斜辺を有しその磁石挿入用孔に対応して平面視で略平行四辺形をなす磁極形成用の永久磁石と、を具備し、
前記永久磁石は、周方向に複数に分割され、
前記永久磁石は、1つの矩形状と2つの三角形状に3分割されていることを特徴とする回転電機の回転子。」


(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1及び、その記載事項は、上記「2.[理由](2)」に記載したとおりである。


(2)対比・判断
本願発明は、本願補正発明の、磁石挿入用孔について、設けられる箇所を、「界磁空間側の外周部」から択一的な「界磁空間側の外周部或いは内周部」とし、形状を、「その外周部に沿う円弧状」から択一的な「その外周部或いは内周部に沿う円弧状」とし、永久磁石について、形状を、磁石挿入用孔に対応「するスキューが施された」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の記載を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「2.[理由](4)」に記載したとおり、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-07-16 
結審通知日 2014-07-22 
審決日 2014-08-15 
出願番号 特願2008-244109(P2008-244109)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02K)
P 1 8・ 575- Z (H02K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 祐介  
特許庁審判長 新海 岳
特許庁審判官 堀川 一郎
藤井 昇
発明の名称 回転電機の回転子及び回転電機  
代理人 特許業務法人 サトー国際特許事務所  
代理人 特許業務法人 サトー国際特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ