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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03B
管理番号 1292624
審判番号 不服2013-14730  
総通号数 179 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-08-01 
確定日 2014-10-09 
事件の表示 特願2009-293776「入力装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 4月22日出願公開、特開2010- 92071〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成16年6月14日に出願した特願2004-174900号(以下「原出願」という。)の一部を平成21年12月25日に新たな特許出願としたものであって,平成24年4月5日付けで拒絶理由が通知され,同年6月6日に意見書及び手続補正書が提出され,同年9月18日付けで拒絶理由が通知され,同年11月14日に意見書及び手続補正書が提出されたが,平成24年11月14日提出の手続補正書による手続補正が平成25年5月1日付けで却下されるとともに同日付けで拒絶査定がなされたところ,同年8月1日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され,当審において,平成25年8月1日提出の手続補正書による手続補正が平成26年5月7日付けで却下されるとともに同日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され,同年7月3日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。


第2 補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
平成26年7月3日提出の手続補正書による手続補正を却下する。

〔理由〕
1 補正の内容
平成26年7月3日提出の手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)は,平成24年6月6日提出の手続補正書による手続補正によって補正された(以下「本件補正前」という。)特許請求の範囲及び明細書について補正しようとするもので,そのうち,請求項1に係る補正については次のとおりである。(下線は補正箇所を示す。)
(1)本件補正前の請求項1,2及び8
「【請求項1】
複数の検出位置が設定され,任意の上記検出位置と対応する位置が押圧されることによって電気的状態が変化するシート状の一つのセンサーと,
押圧された上記検出位置の上記電気的状態の変化を検出し,検出結果に基づき操作信号および駆動信号を出力するコントローラと,
上記駆動信号により振動が与えられるアクチュエータと,
上記コントローラからの上記駆動信号を上記アクチュエータに供給する駆動手段と
を有する
入力装置。
【請求項2】
上記センサーは,押圧力に応じて上記電気的状態が変化し,
上記コントローラは,上記検出結果に基づき上記押圧力を判定し,判定した上記押圧力に応じた上記操作信号および駆動信号を出力する
請求項1記載の入力装置。
【請求項8】
上記操作信号は,上記押圧力に応じて多段階的に出力される
請求項2記載の入力装置。」

(2)本件補正後の請求項1
「【請求項1】
複数のスイッチとそれぞれ対応する複数の検出位置がほぼ直線上に設定され,任意の上記検出位置が押圧されると,押圧力に応じて電気的状態が変化するシート状の一つのセンサーと,
押圧された上記検出位置の上記電気的状態の変化を検出し,検出結果に基づき上記検出位置毎に上記押圧力を判定し,上記押圧力の強さに対応して多段階的に出力される操作信号と,上記押圧力の強さに対応して異なる駆動信号とを形成するコントローラと,
上記センサーと重なる位置に配置され,上記コントローラからの上記駆動信号が駆動手段を介して与えられ,上記駆動信号によって,上記押圧力の強さに対応する振動を発生するシート状のアクチュエータと
を有する
入力装置。」

2 新規事項の追加及び補正の目的について
(1)本件補正は,平成24年4月5日付けの拒絶理由通知に対する応答時の補正によって通知することが必要になった拒絶の理由のみを通知する「最後の拒絶理由通知」である当審拒絶理由の通知に対して,請求人が,特許法50条の規定により指定された期間内にした明細書及び特許請求の範囲についての補正であるところ,前記1で記載した請求項1に係る本件補正は次の補正事項からなる。
補正事項1:
本件補正前の請求項1,2及び8を削除するとともに,本件補正前の請求項8を独立形式の記載に改めて,新たな請求項1とする。
補正事項2:
本件補正前の請求項1に記載された「複数の検出位置」が,「複数のスイッチとそれぞれ対応する」こと,及び,「ほぼ直線上に」設定されていることを限定する。
補正事項3:
本件補正前の請求項2に記載された「上記検出結果に基づき上記押圧力を判定し」というコントローラの動作が,「検出位置毎に」行われることを限定する。
補正事項4:
本件補正前の請求項1及び2に記載された「操作信号および駆動信号」がコントローラによって形成されることを限定する。
補正事項5:
本件補正前の請求項1に記載された「アクチュエータ」が,「センサーと重なる位置に配置され」ること,及び,「シート状」であることを限定する。
補正事項6:
本件補正前の請求項1に記載された「振動が与えられるアクチュエータ」という明りょうでない記載を,「振動を発生する」「アクチュエータ」という明りょうな記載に補正する。
補正事項7:
本件補正前の請求項1に記載された「振動」が,「押圧力の強さに対応する」ことを限定する。

(2)前記補正事項2に係る限定事項である「複数の検出位置」が「複数のスイッチとそれぞれ対応する」点及び「ほぼ直線上に」設定されている点は,本願の願書に最初に添付された明細書(以下,願書に最初に添付された明細書を「当初明細書」といい,願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲及び図面をあわせて「当初明細書等」という。)の【0051】に記載されており,前記補正事項3に係る限定事項である「上記検出結果に基づき上記押圧力を判定し」というコントローラの動作が「検出位置毎に」行われる点は,本願の当初明細書の【0072】に記載されており,前記補正事項4に係る限定事項は,本願の当初明細書の【0070】及び【0072】等の記載から自明であり,前記補正事項5に係る限定事項のうち「アクチュエータ」が「センサーと重なる位置に配置され」る点は,本願の当初明細書の【0050】等の記載から自明であり,前記補正事項5に係る限定事項のうち「アクチュエータ」が「シート状」である点は,本願の当初明細書の【0026】に記載されており,前記補正事項7に係る限定事項である「振動」が「押圧力の強さに対応する」点は,本願の当初明細書の【0072】及び【0073】に記載されているから,請求項1に係る本件補正は,本願の当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされた補正であって,平成18年法律55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)17条の2第3項に規定する要件を満たしている。
また,請求項1に係る本件補正のうち,前記補正事項1は,改正前特許法17条の2第4項1号に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当し,前記補正事項2ないし5及び7は,本件補正前の請求項8の発明特定事項である「複数の検出位置」,「上記検出結果に基づき上記押圧力を判定し」というコントローラの動作,「操作信号および駆動信号」に関するコントローラの動作,「アクチュエータ」及び「振動」について,それぞれ前記各限定事項を付加するものであって,本件補正の前後で当該請求項に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であると認められるから,同法17条の2第4項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し,前記補正事項6は,同法17条の2第4項4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。

(3)前記(2)のとおり,請求項1に係る本件補正は,改正前特許法17条の2第4項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正事項を含んでいるから,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について,次欄で検討する。

3 独立特許要件について
(1)本願補正発明
本願補正発明は,本件補正後の特許請求の範囲,明細書及び図面の記載からみて,前記1(2)に示したとおりのものと認める。

(2)引用例
ア 特開2003-337649号公報
(ア)特開2003-337649号公報の記載事項
特開2003-337649号公報(原査定の拒絶の理由において「引用文献1」として引用された刊行物である。以下「引用刊行物1」という。)は,特許法44条2項の規定により本願の出願時とみなされる原出願の出願時より前(以下,単に「本願の出願前」という。)に頒布された刊行物であって,当該引用刊行物1には次の記載がある。(下線は,後述する引用発明1の認定に特に関係する箇所を示す。)
a 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,例えば,携帯用として比較的小型に構成された電子機器を操作するための入力方法及び入力装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来,携帯電話端末などの電子機器において,複雑な入力操作が簡単に行えるようにするために,ジョグダイヤルと称される入力装置を備えたものが実用化されている。・・・(中略)・・・
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところが,このような従来のジョグダイヤル型の入力装置は,回転可能に配置された操作部材が必要であるため,単純に押しボタンなどを機器に配置する場合に比べて,入力装置としての部品が比較的大型になる問題がある。図20に示した例では,ジョグダイヤル4を構成する操作部材は,筐体の外側から見えている部分は,その部材の一部だけであり,実際には破線で示す円形形状の部品であり,機器の内部のかなりの容積をその部品の配置スペースに割いている。従って,機器を小型化する上で,従来のジョグダイヤル型の入力装置を配置するのが困難な場合が多々ある。
【0006】なお,図20の例では,携帯電話端末に適用した例について説明したが,同様の操作手段(入力手段)が配置されるその他の各種電子機器の場合にも,同様の問題がある。
【0007】本発明はかかる点に鑑み,ジョグダイヤル型の入力装置の如き操作性が良好で,かつ大きな設置スペースを必要としない入力方法及び入力装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】・・・(中略)・・・
【0009】本発明の入力装置は,生体又は物体の接触位置を所定の検出範囲内で検出する接触検出センサと,接触検出センサで検出した接触位置又は接触位置の変化に対応して,所定の機能の入力を受け付ける入力処理を行い,接触位置の所定量以上の変化がある毎に,駆動信号を出力する制御手段と,制御手段が出力する駆動信号により,少なくとも上記接触検出センサの配置位置の近傍を一時的に振動させるアクチュエータとを備えたものである。
【0010】本発明によると,生体又は物体の接触をセンサで検出した位置又はその位置の変化に応じて,特定の入力を受け付けるので,平面的な接触検出センサを使用して入力の受け付けが可能になる。この場合,接触位置の所定量以上の変化がある毎に,少なくとも検出範囲の近傍を一時的に振動させることで,センサに接触したユーザ(又はセンサに接触した物体を介してユーザ)にクリック感に相当する振動が伝わり,あたかもクリック感のあるダイヤルを回転させている場合と同様の感触が得られる。」

b 「【0037】また,ここまで説明した例では,円形の凹部などで構成されたジョグダイアル型の入力装置として構成した例としたが,本例の接触検出処理構成を適用した,その他の形状の入力装置として構成しても良い。例えば,図7に示すように,直線状に接触検出部が伸びたスライダ型の入力装置として構成しても良い。
【0038】この図7に示した例では,筐体10の表面に,直線状の凹部15を形成させて,この直線状の凹部15を指などで接触したことを検出できるように構成したものである。直線状の凹部15は,例えば,ユーザが指で触れたときに,この凹部15が形成された位置が触感で判る程度に,筐体10を構成する樹脂の厚さを若干薄くする等の処理で形成してある。なお,凹部以外の形状,或いは印刷なとで直線状の操作位置が判るようにしても良い。
【0039】凹部15の裏側には,2枚の基板20,30が配置してある。図7では説明のために各基板20,30を離して示してあるが,実際には凹部15の裏側に,2枚の基板20,30が密着した状態に配置してある。各基板20,30を構成する素材は,絶縁性を有する比較的薄い材質のものとしてある。
【0040】ここでは,基板20の表面に,直線状の凹部15の形状に合わせて直線状にほぼ一定間隔で並べられた複数の電極23が配置してある。基板30には,凹部11の形状に合わせた直線状の1個の電極33が配置してある。電極23は,信号源41からの信号が,切換スイッチ42を介して供給される送信電極として使用される。電極33は,電極に得られる信号を,増幅器43側に供給する受信電極として使用される。
【0041】なお,この図7の場合にも,既に説明した図1例などと同様に,電極23,33を2枚の基板20,30に配置した例を示したが,それぞれの電極23と電極33とが絶縁した状態であれば,同一基板上に2つの電極23と電極33を配置しても良い。或いは,1枚の基板の表面側に電極23を配置し,裏面側に電極33を配置するようにしても良い。いずれの場合であっても,電極23と電極33の距離は非常に近接した距離として,両電極23,33の間がコンデンサとして機能するようにしてあり,両電極23,33間の容量結合によって,送信電極23に印加される信号が,受信電極33側に伝達される。ここで,両電極23,33の間の容量値は,凹部15の表面に指などで触れることで,その接触で発生する指と電極23,33間の容量結合によって変化する。本例の場合には,この容量値の変化を電気的に計測して,接触位置を検出するようにしたものである。
【0042】そして本例においては,筐体10の凹部15の形成位置の裏面側になる,基板20,30の取付け位置の近傍に,振動子40が取付けてあり,パルス発生器48からのパルス信号の供給で,凹部15の近傍を振動させることができる。この振動子40は,例えばピエゾ振動子やコイルなどが使用される。なお,振動子40は,その振動により凹部15の形成位置の近傍を一時的に振動させることが可能であれば,必ずしも凹部15の形成位置の裏面側に配置する必要はない。
【0043】これらの電極23,33と振動子40に接続される回路については,既に図1などで説明した構成と同じである。即ち,信号源41を用意して,この信号源41から例えば特定の周波数の交流信号などの特定の信号を出力させる。信号源41から出力される信号は,切換スイッチ42を介して複数の電極23に順に供給する。電極23は,ほぼ一定の間隔で多数用意されており,切換スイッチ42は,比較的短い周期で各電極23を順に切換える処理を行って,用意された全ての電極23に時分割で順番に信号源41からの信号が供給されるようにする。
【0044】そして,各送信電極23からの信号を受信する電極である電極33には,増幅器43が接続してあり,この増幅器43の出力を同期検波器44で検波し,検波出力をローパスフィルタ45に供給して直流化し,フィルタ出力をアナログ/デジタル変換器46に供給して,信号受信強度をデジタルデータ化する。
【0045】アナログ/デジタル変換器46で得られたデータは,入力装置の制御を行うコントローラ47に供給する。コントローラ47は,供給されるデータに基づいて操作状態を判断して,その操作状態の判断に基づいて得られた指令を端子47aから出力する。本例の場合,コントローラ47は,変換器46を介して供給されるデータに基づいて信号強度の変化を判断して,その信号強度の変化から凹部15の操作状態を判断する。
【0046】また,コントローラ47は,変換器46側から供給されるデータに基づいて判断した凹部15の操作状態により,パルス発生器48からのパルス信号の出力を制御する。ここでは,コントローラ47が,直線状に形成された凹部15を触れる位置が一定の距離変化したことを検出する毎(例えば1cm毎など)に,振動子40を一時的に振動させるパルス信号を出力させる制御を行う。
【0047】この図7の構成の入力装置で,凹部15に触れた状態を検出する原理については,図1などに示した環状の凹部11に触れた状態を検出する原理と全く同様であり,指などの接触による容量の変化に連動した信号受信強度の変化を検出して,接触位置を検出するものである。複数の位置を同時に触れた場合についても,その接触位置を図3に示した原理で検出できる。そして,コントローラ47は,その検出した位置の変化量などに応じて,入力処理を行う。また,接触する位置の変化が一定距離になる毎に,振動子40が一時的に振動して,クリック感に相当する振動が伝わる。」

c 「【0066】次に,スライダ型の入力装置として構成された本例の入力装置を,電子機器に組み込んだ例について説明する。図13は,PDA(Personal Didital Assistants )と称される携帯用のデータ処理端末に,本例のスライダ型の入力装置を組み込んだ例である。PDA300は,薄型の縦長の筐体に構成させてあり,正面に比較的大型の表示部301が配置してあり,その下側には,数個の操作キー303が配置してある。表示部301には,受信した電子メールやスケジュールなどの文字データの表示や,端末内のメモリに記憶された地図データの表示などが行える。なお,本例のPDA300は,地図を表示させる場合には,複数段階に表示縮尺を変化させることができるようにしてある。
【0067】そして,ここでは四角形の表示部301の3辺の縁に沿って,スライダ型操作部311,312,313が配置してある。即ち,表示部301の左脇にスライダ型操作部311が,右脇にスライダ型操作部312が,下側にスライダ型操作部313が,それぞれ配置してある。各スライダ型操作部311,312,313は,例えば図7又は図8に示した入力装置として構成し,操作部を指などで触れることで操作できるようにする。この場合,図3に示した原理により,複数箇所の同時接触についても検出できる構成とする。
【0068】ここでは,スライダ型操作部311,312,313を使用した入力処理として,主として表示部301で表示される画面に関連した処理を行うようにしてある。図14は,操作状態の例を示した図である。ここでは,少なくとも3種類の操作が行えるようにしてある。
【0069】即ち,表示部301に地図などを表示させた場合に,図14Aに示すように,スライダ型操作部を1本の指で触れて,その触れる位置を移動させることで,その移動に伴って,表示画面(地図など)の表示範囲をスクロールさせるようにしてある。この場合,縦方向の表示範囲のスクロールは,縦に配置されたスライダ型操作部311又は312の操作で行われ,横方向の表示範囲のスクロールは,横に配置されたスライダ型操作部313の操作で行われる。
【0070】そして,地図が表示された場合に,図14Bに示すように,スライダ型操作部を2本の指で触れて,その2本の指の間隔が広がるように操作があった場合,或いは2本の指の間隔が狭くなるような操作があった場合に,表示地図の縮尺を変化させるようにしてある。例えば,2本の指の間隔が広がるような操作があった場合に,表示地図の縮尺を小さくして,一部の範囲だけが拡大された地図を表示部301に表示させる。また,2本の指の間隔が狭まるような操作があった場合に,表示地図の縮尺を大きくして,広い範囲が縮小されて表示される地図を表示部301に表示させる。
【0071】また,図14Cに示すように,左側のスライダ型操作部311と右側のスライダ型操作部312とが同時に触れられて操作された場合には,この機器の設定状況などを調整する調整モードとなって,調整が行われるようにしてある。」

d 「【0095】
【発明の効果】本発明によると,生体又は物体の接触をセンサで検出した位置又はその位置の変化に応じて,特定の入力を受け付けるので,平面的な接触検出センサを使用して入力の受け付けが可能になる。そして,センサに接触する位置の所定量以上の変化がある毎に,少なくとも検出範囲の近傍を一時的に振動させることで,センサに接触したユーザ(又はセンサに接触した物体を介してユーザ)にクリック感に相当する振動が伝わり,あたかもクリック感のあるダイヤルを回転させている場合と同様の感触が得られ,良好な操作性が得られる。」

e 前記b及びcの記載中で参照されている図7,図13及び図14は次のとおりである。
【図7】

【図13】

【図14】


(イ)引用刊行物1に記載された発明
前記(ア)aないしeからみて,引用刊行物1には次の発明が記載されていると認められる。
「携帯用として比較的小型に構成された電子機器を操作するための,直線状に接触検出部が伸びたスライダ型の入力装置であって,
指などによる操作位置を示す直線状の凹部15が表面に形成された電子機器の筐体10の裏面側の前記凹部15の形成位置に対応する位置に配置され,絶縁性を有する比較的薄い材質の素材でできた2枚の基板20,30と,
前記基板20の表面に配置され,前記凹部15の形状に合わせて直線状にほぼ一定間隔で並べられた複数の送信電極23と,
前記基板30に配置され,前記凹部15の形状に合わせた直線状の1個の受信電極33と,
前記筐体10の裏面側の,前記基板20,30の取付け位置の近傍に取付けた,ピエゾ振動子やコイルなどの振動子40と,
信号源41から出力される,例えば特定の周波数の交流信号などの特定の信号を前記複数の送信電極23に時分割で順番に供給する切換スイッチ42と,
前記受信電極33から増幅器43を介して出力される信号を検波する同期検波器44と,
前記同期検波器44の出力を直流化するローパスフィルタ45と,
前記ローパスフィルタ45の出力における信号受信強度をデジタルデータ化するアナログ/デジタル変換器46と,
前記振動子40を振動させるパルス信号を出力するパルス発生器48と,
前記アナログ/デジタル変換器46から供給されるデータに基づいて信号強度の変化を判断して,その信号強度の変化から前記凹部15における指などの接触位置を判断し,当該接触位置の判断に基づいて得られた指令を端子47aから出力するとともに,前記接触位置の変化が一定距離になる毎に前記振動子40が一時的に振動してクリック感に相当する振動が操作者に伝わるように,前記パルス発生器48からのパルス信号の出力を制御するコントローラ47とを有し,
前記各送信電極23と前記受信電極33は,非常に近接して両電極の間がコンデンサとして機能し,前記凹部15への指などの接触により発生する当該指などと両電極の間の容量結合によって両電極間の容量値が変化して,受信電極33において受信する送信電極23に印加される信号の信号受信強度が変化するよう構成されたものであり,
例えば,
携帯用のデータ処理端末の表示部301の左脇,右脇及び下側にそれぞれスライダ型操作部311,スライダ型操作部312及びスライダ型操作部313として配置し,
当該スライダ型操作部のいずれかを1本の指で触れて,その触れる位置を移動させると,その移動に伴って,表示部301に表示された地図などの表示範囲をスクロールさせるようにしたり,
前記スライダ型操作部のいずれかを2本の指で触れて,その2本の指の間隔が広がるようにあるいは狭くなるように操作すると,表示された地図の縮尺を変化させるようにしたり,
左側のスライダ型操作部311と右側のスライダ型操作部312を同時に触れて操作すると,設定状況などを調整する調整モードとなって,データ処理端末の調整を行うことができるようにするといった用途に用いることができる,
スライダ型の入力装置。」(以下「引用発明1」という。)

イ 登録実用新案第3085481号公報
(ア)登録実用新案第3085481号公報の記載事項
登録実用新案第3085481号公報(当審拒絶理由において「引用例1」として引用された刊行物である。以下「引用刊行物2」という。)は,本願の出願前に頒布された刊行物であって,当該引用刊行物2には次の記載がある。(下線は,後述する技術的事項の認定に特に関係する箇所を示す。)
a 「【0001】
【考案の背景】
本考案は一般的にはユーザによるコンピュータと機械装置のインターフェースに関し,さらに詳しくはコンピュータおよび電子装置とのインターフェースをとるのに使用される装置であってユーザに触感フィードバック(haptic feedback)を与える装置に関する。
・・・(中略)・・・
【0006】
【考案の概要】
本考案はコンピュータシステムに入力を与えるのに使用される触感フィードバック型の平坦なタッチコントロールに向けられている。このコントロールは,ポータブルコンピュータに設けられたタッチパッドとすることができ,または様々な装置に見られるタッチスクリーンとすることができる。タッチコントロールに出力される触感は,電子装置を制御するとき,表示されたグラフィック環境での相互作用と操作を向上する。」

b 「【0012】
【考案の実施の形態】
図1は,本考案の触感タッチパッドを含むポータブルコンピュータ10の斜視図である。コンピュータ10は好ましくはポータブルすなわち「ラップトップ」コンピュータであり,ユーザが持ち運んだり,輸送することができ,固定電源に加えてバッテリーやその他のポータブル電源により給電される。コンピュータ10は,1または複数のホストアプリケーションプログラムを実行し,それによりユーザは周辺装置を介して相互作用(対話)する。
【0013】
コンピュータ10は,ユーザにグラフィック画像を出力するディスプレイ装置12,ユーザからコンピュータに文字またはトグル(toggle)入力を与えるキーボード14,および本考案のタッチパッド16を含む図示されたような種々の入力および出力装置を含む。・・・(中略)・・・
【0015】
動作時,タッチパッド16は,該タッチパッド上(または近傍)の物体の検出位置に基づいて,座標データをコンピュータ10の主マイクロプロセッサに入力する。従来の多くのタッチパッドのように,タッチパッド16は容量型,抵抗型等,異なるタイプの検出器を使用することができる。ある現存のタッチパッドの実施例は,例えば米国特許第5521336号や第5943044号に開示されている。容量型タッチパッドは,典型的には,タッチパッドと物体のコンデンサ間の容量結合に基づいて,タッチパッドの表面またはその近傍の物体の位置を検出する。抵抗型タッチパッドは,典型的には,指や,スタイラス,その他パッドに対する物体の圧力を検出する圧力感知であり,該圧力によりパッド内の導電層,トレース,スイッチ等が電気的に接続する。抵抗型や他の型式のタッチパッドは,ユーザによって加えられた圧力の大きさを検出することができ,コンピュータ10への比例または可変入力のために圧力度を使用することができる。抵抗型タッチパッドは典型的には少なくとも部分的に変形可能であり,圧力が特定の位置に加えられると,当該位置における導電体が電気的に接続する。このような変形可能性は本考案では有益である。本考案に使用されるようなタッチパッド上に出力されるパルスや振動のような力の大きさを潜在的に増幅することができるからである。アクチュエータと移動する物体との間に調整された順応懸架装置(tuned compliant suspension)が設けられているなら,力を増幅することができる。本考案の実施形態では,容量型タッチパッドや著しい接触圧力を必要としないその他の型式のタッチパッドがより良く適している。タッチパッド上の過剰圧力が多くの場合,触感フィードバックのためのタッチパッドの運動と干渉するからである。他の型式の検出技術もタッチパッドに使用することができる。ここで,「タッチパッド」の用語は,タッチパッド16の表面のほか,タッチパッド装置に含まれる如何なる検出装置も含む。」

c 「【0026】
図3は,触感フィードバックをユーザに与える本考案のタッチパッド16の第1実施形態40の斜視図である。この実施形態では,1または複数の圧電アクチュエータ42がタッチパッド16の下面に接続されている。圧電アクチュエータ42は当業者に公知の適当な電子装置によって駆動される。ある実施形態では,単一の圧電アクチュエータ42が,タッチパッド16の中央またはその近傍に配置され,あるいはハウジングの空間的制約がそのような位置を要求するなら,一方の側に離して配置される。他の実施形態では,複数の圧電アクチュエータ42をタッチパッドの異なる領域に配置することができる。破線は一つの形態を示す。ここで,アクチュエータ42はパッド16の各角部とパッドの中央に配置されている。
【0027】
圧電アクチュエータ42は,それぞれ,小さなパルス,振動またはテクスチャ感覚をタッチパッド16に出力することができ,またユーザがタッチパッドに接触しているならユーザにも出力することができる。タッチパッド16全体は,好ましくは,アクチュエータ42によって出力される力で移動される。好ましくは,タッチパッドに出力される力は,線形(またはほぼ線形)で,z軸に沿っており,タッチパッド16の表面およびコンピュータ10の上面にほぼ垂直である。異なる実施形態では,前述したように,力をタッチパッド16に作用させ,z軸運動に加えてまたはそれに代えて,その表面にパッドのサイドツーサイド(x-y)運動を引き起す。例えば,第1の線形アクチュエータはx軸の運動を与え,第2の線形アクチュエータはy軸および/またはx軸に対する運動を与えることができる。
【0028】
アクチュエータ42によって出力される振動の周波数は,アクチュエータ42に異なる制御信号を与えることによって変化させることができる。さらに,パルスまたは振動の大きさは,付与された制御信号に基づいて制御することができる。多数のアクチュエータ42が設けられているなら,2またはそれ以上のアクチュエータを同時に駆動することにより,より強い振動をタッチパッドに付与することができる。さらに,一つのアクチュエータがタッチパッドの最終端に設けられ,それが駆動される唯一のアクチュエータである場合,ユーザは,タッチパッドのアクチュエータを有する側で,タッチパッドの反対側よりも強い振動を体験することができる。異なる大きさと局所化された効果は,全てではなくいくつかのアクチュエータを駆動することによって得ることができる。パッドに接触しているユーザの指の先端はかなり敏感であるので,触感を有効にして人を感動させるのに,出力する力は大きな振幅を有する必要はない。
・・・(中略)・・・
【0030】
圧電アクチュエータ42は,タッチパッド16に対するいくつかの利点を有する。これらのアクチュエータは,非常に薄くかつ小さく作ることができるので,ポータブル電子機器では典型的なコンパクトなハウジング内で使用することができる。また,これらは非常に低い電力を要求するので,電力が限定されている(例えば,バッテリーで給電される)装置に適している。ここに開示されたいくつかの実施形態では,アクチュエータ用の電力は,コンピュータをタッチパッド(またはタッチスクリーン)に接続するバスから離して引くことができる。例えば,タッチパッド16が別個のハウジングに設けられている場合,ユニバーサルシリアルバスでパッドをコンピュータに接続し,該コンピュータから電力とデータ(例えば,流動する力データ,力コマンド)をパッドに供給することができる。
【0031】
図4は,図3に示すように本考案のタッチパッド16の実施形態40の側面図である。タッチパッド16は,電子信号がアクチュエータに入力されたときにタッチパッド16に力を生成するように動作する設置された圧電アクチュエータ42に直接連結されている。典型的には,圧電アクチュエータは電流がアクチュエータに付与されると互いに移動することができる2つの層を含む。ここで,アクチュエータの基礎部分は,包囲ハウジング41に対して静止したままであり,一方アクチュエータおよびタッチパッドの移動部分はハウジング41に対して移動する。入力電気信号に基づいて力を出力する圧電アクチュエータの動作は,当業者に公知である。
・・・(中略)・・・
【0033】
タッチパッドが直接アクチュエータ42に連結されているので,生成されるどのような力もタッチパッド16に直接付与することができる。電気信号は好ましくは,マイクロプロセッサや,マイクロプロセッサ信号を適切な信号に変換してアクチュエータ42で使用するのに要求される如何なる回路から得られる。」

d 「【0044】
図7は本考案のタッチパッド16の平面図である。タッチパッド16はある実施形態では単に位置決め装置として使用することができ,ここではパッドの全領域はカーソルに制御を与える。他の実施形態では,パッドの異なる領域は異なる機能に指定することができる。これらの領域のいくつかの実施形態では,各領域は,該領域の下方にアクチュエータを設けることができる。一方,他の領域の実施形態では,パッド16全体に力を付与する単一のアクチュエータを使用してもよい。図示された実施形態では,中央のカーソル制御領域70はカーソルを位置決めするのに使用される。
・・・(中略)・・・
【0055】
タッチパッド16は,主カーソル制御領域70とは異なる制御領域であって別個の入力を与える制御領域を設けることもできる。ある実施形態では,異なる領域は,パッド16の表面にラインや,境界,またはテクスチャで物理的に(および/またはコンピュータ10からの音で)マークしておくことができる。これにより,ユーザは,パッドのどの領域に接触しているかを視覚的,聴覚的,および/または触感的に知らせることができる。
【0056】
例えば,スクロールまたはレートコントロール領域62aと62bは,ドキュメントをスクロールしたり,(オーディオボリューム,スピーカバランス,モニタ表示輝度等のような)バリューを調整し,ゲームや仮想現実シミュレーションにおける視野をパン(panning)/チルトするといったようなレートコントロールタスクを実行する入力を与えるのに使用することができる。領域62aは,該領域に指(または他の物体)を置くことで使用することができる。ここで,当該領域の上部はバリューを増加したり,スクロールアップ等をし,当外領域の下部はバリューを減少し,スクロールダウン等をする。パッド16に設置された圧力の量を読み取ることができる実施形態では,圧力の量は調整量を直接制御することができる。例えば,より大きい圧力はドキュメントをより速くスクロールさせることができる。領域62bは,水平(左/右)スクロールや,異なるバリュー,視野等のレートコントロール調整に使用することができる。
【0057】
特定の触感効果をコントロール領域62aと62bと関連させることができる。例えば,レートコントロール領域62aまたは62bを使用するとき,特定の周波数の振動をパッド16に出力することができる。多数のアクチュエータを有する実施形態では,領域62aまたは62bの直下に設置されるアクチュエータを駆動して,「アクティブ」(現在使用されている)領域に対してさらに局所化された触感を与えることができる。領域62の一部がレートコントロールのために押圧された際に,パルスをパッド(または該パッドの領域)に出力して,ページがスクロールされたとき,特定のバリューが通過したとき等を示すことができる。ユーザが領域62aまたは62bに触れている間,振動を連続的に出力することもできる。」

e 「【0062】
図8aと8bは,本考案の触感タッチパッド16の形態を含む他の実施形態のコンピュータ装置80の平面図と断面図である。装置80は,「携帯情報端末」(PDA),「ペン入力(pen-based)」コンピュータ,「電子ブック」,または類似の装置(ここでは,これらを集合して「携帯情報端末」またはPDAという)のようなポータブルコンピュータ装置の形態である。ユーザがディスプレイ画面に接触することで情報を入力しある様式で読み取ることができるこれらの装置は,本考案の実施形態に関連する。このような装置は,3コムコーポレーションから入手できるパームパイロット,アップルコンピュータから入手できるニュートン,カシオやヒューレットパッカードその他のメーカから入手できるポケットサイズのコンピュータ装置,タッチスクリーンを有するセル式電話またはポケットベル等を含む。
【0063】
装置80の一つの実施形態では,ディスプレイスクリーン82は典型的にはコンピュータ装置80の表面の大部分を覆っている。スクリーン82は,当業者に公知のフラットパネルディスプレイであり,テキストや,画像,アニメーション等を表示することができる。ある実施形態では,スクリーン80は,パーソナルコンピュータのスクリーンのような機能である。ディスプレイスクリーン82は,ユーザがスクリーン80を物理的に接触することで情報をコンピュータ装置80に入力することができるセンサを含む「タッチスクリーン」であるのが好ましい(すなわち,タッチパッド16に類似した平坦な「タッチ装置」の他の形態である。)。例えば,透明なセンサフィルムをスクリーン80に重ねることができる。ここで,フィルムは該フィルムに接触する物体からの圧力を検出することができる。タッチスクリーンを実行するセンサ装置は,当業者に公知である。」

f 前記bないしeの記載中で参照されている図1,図3,図4,図7,図8a及び図8bは次のとおりである。
【図1】

【図3】

【図4】

【図7】

【図8】

(イ)引用刊行物2に記載された技術的事項
前記(ア)aないしfから,引用刊行物2には次の技術的事項が記載されていると認められる。

「ユーザによって加えられた圧力の大きさを検出することができる抵抗型等の検出器を用いたタッチパッドと,当該タッチパッドに連結されたアクチュエータとを用い,
タッチパッドの操作時の圧力の量に対応した速度でドキュメントをスクロールするとともに,表示されたドキュメントのページがスクロールされる毎にアクチュエータによってパルスを出力する機能を実現したユーザーインターフェース装置。」(以下「引用刊行物2記載の技術的事項1」という。)

「タッチパッドを介したユーザによる入力を受け付け,当該入力に対応した触感フィードバックをアクチュエータによってユーザに与えるユーザインターフェース装置において,
前記アクチュエータとして圧電アクチュエータを採用すると,当該アクチュエータを非常に薄くかつ小さく作ることができるので,ポータブル電子機器のコンパクトなハウジング内で使用するのに有利であり,
前記アクチュエータをタッチパッドの下面に直接連結すると,生成されるどのような力もタッチパッドに直接付与することができるので,触感フィードバックをユーザに与える上で有利なこと。」(以下「引用刊行物2記載の技術的事項2」という。)

(3)対比
本願補正発明と引用発明1とを対比する。
ア 引用発明1の「接触位置の判断に基づいて得られた指令」,「コントローラ47」,「パルス発生器48」,「振動子40」及び「スライダ型の入力装置」は,本願補正発明の「操作信号」,「コントローラ」,「駆動手段」,「アクチュエータ」及び「入力装置」にそれぞれ相当する。

イ 引用発明1の2枚の基板20,30と複数の送信電極23と1個の受信電極33とからなり,指などの接触により両電極間の容量値が変化する構成は,「シート状の一つのセンサー」ということができ,かつ,当該「2枚の基板20,30と複数の送信電極23と1個の受信電極33とからなる構成」においては,各「送信電極23の位置」がそれぞれ「検出位置」となり,各送信電極23は直線状にほぼ一定間隔で並べられているのであるから,「複数の検出位置がほぼ直線上に設定され」ているということができる。
また,前記「2枚の基板20,30と複数の送信電極23と1個の受信電極33とからなり,指などの接触により両電極間の容量値が変化する構成」においては,各送信電極23と受信電極33は,非常に近接して両電極の間がコンデンサとして機能し,凹部15への指などの接触により発生する当該指などと両電極の間の容量結合によって両電極間の容量値が変化して,受信電極33において受信する送信電極23に印加される信号の信号受信強度が変化するよう構成されたものであるから,「任意の検出位置が押圧されると電気的状態が変化する」ものであるということができる。
したがって,引用発明1の「2枚の基板20,30と複数の送信電極23と1個の受信電極33とからなる構成」と本願補正発明の「センサー」とは,「複数の検出位置がほぼ直線上に設定され,任意の上記検出位置が押圧されると電気的状態が変化するシート状の一つのセンサー」である点で一致する。

ウ 引用発明1においては,「コントローラ47」が,アナログ/デジタル変換器46から供給されるデータに基づいて信号強度の変化を判断して,その信号強度の変化から前記凹部15における指などの接触位置を判断し,当該「接触位置の判断に基づいて得られた指令」を端子47aから出力して,表示部に表示された地図などの表示範囲をスクロールさせるようにしたり,表示された地図の縮尺を変化させるようにしたり,設定状況などを調整する調整モードとなったりするという動作がなされるのであり,当該各動作は,「各送信電極23の位置」毎に検出された押圧の有無に基づいて決定されるのであるから,引用発明1における「各送信電極23の位置」で押圧したり押圧しなかったりすることを異なるスイッチのオン・オフを行うことと,「コントローラ47」の指示により行われる前記各動作を異なるスイッチのオン・オフに基づいて行われる動作ということができる。
そうすると,引用発明1においては,「各送信電極23の位置」が「複数のスイッチとそれぞれ対応」しているということができるから,引用発明1の「複数の検出位置」は,「複数のスイッチとそれぞれ対応する」という本願補正発明の発明特定事項に対応する構成を具備している。

エ 引用発明1の「コントローラ47」は,アナログ/デジタル変換器46から供給されるデータに基づいて信号強度の変化を判断して,その信号強度の変化から凹部15における指などの接触位置を判断し,当該「接触位置の判断に基づいて得られた指令」(操作信号)を端子47aから出力するものであるところ,前記アナログ/デジタル変換器46から供給されるデータは,「2枚の基板20,30と複数の送信電極23と1個の受信電極33とからなる構成」が出力する信号に,増幅器43,同期検波器44,ローパスフィルタ45及びアナログ/デジタル変換器46による処理を施して得られたデータであって,各検出位置における送信電極23と受信電極33間の容量値,すなわち電気的状態を表しているから,引用発明1の「コントローラ47」は,「押圧された検出位置の電気的状態の変化を検出し,検出結果に基づいて操作信号を形成」しているということができる。
また,引用発明1の「コントローラ47」は,凹部15における指などの接触位置の判断後に,前記「接触位置の判断に基づいて得られた指令」の端子47aからの出力とともに,パルス発生器48からのパルス信号の出力の制御をも行うものであるところ,パルス発生器48からのパルス信号の出力の制御を行う際にパルス発生器48に対して出力パルス信号に関する指示を出力していることが自明であって,当該「出力パルス信号に関する指示」が本願補正発明の「駆動信号」に該当する。
したがって,引用発明1の「コントローラ47」と本願補正発明の「コントローラ」とは,「押圧された検出位置の電気的状態の変化を検出し,検出結果に基づいて操作信号と駆動信号とを形成する」点で一致する。

オ 引用発明1の「振動子40」は,「パルス発生器48」(駆動手段)から出力されたパルス信号により振動するものであるところ,当該パルス信号は「コントローラ47」から出力された「出力パルス信号に関する指示」(駆動信号)に基づいて「パルス発生器48」が発生するものであって,前記「出力パルス信号に関する指示」の内容が反映されているから,引用発明1の「振動子40」を,「駆動手段からの駆動信号が駆動手段を介して与えられ,駆動信号によって,振動を発生する」ものであるということができる。
したがって,引用発明1の「振動子40」と本願補正発明の「アクチュエータ」とは,「コントローラからの駆動信号が駆動手段を介して与えられ,駆動信号によって,振動を発生する」点で一致する。

カ 前記アないしオから,本願補正発明と引用発明1とは,
「複数のスイッチと対応する複数の検出位置がほぼ直線上に設定され,任意の上記検出位置が押圧されると電気的状態が変化するシート状の一つのセンサーと,
押圧された上記検出位置の上記電気的状態の変化を検出し,検出結果に基づいて操作信号と駆動信号とを形成するコントローラと,
上記コントローラからの上記駆動信号が駆動手段を介して与えられ,上記駆動信号によって,振動を発生するアクチュエータと
を有する
入力装置。」である点で一致し,次の点で相違する。

相違点1:
本願補正発明では,「センサー」が,押圧力に応じて電気的状態が変化し,「コントローラ」が,「検出位置毎に押圧力を判定」し,「操作信号」を「押圧力の強さに対応して多段階的に出力される」よう形成し,「駆動信号」を「押圧力の強さに対応して異なる」ものとして形成するのに対して,
引用発明1では,「2枚の基板20,30と複数の送信電極23と1個の受信電極33とからなり,指などの接触により両電極間の容量値が変化する構成」が,押圧力に応じて電気的状態が変化するものとはいえず,「コントローラ47」が,検出位置毎に接触の有無は判定してはいるものの押圧力の強さを判定しておらず,当該「コントローラ47」が形成する「接触位置の判断に基づいて得られた指令」(操作信号)は押圧力の強さに対応して多段階的に出力されるものでなく,「コントローラ47」が形成する「出力パルス信号に関する指示」(駆動信号)は押圧力の強さに対応して異なるものでない点。

相違点2:
本願補正発明の「アクチュエータ」が,「センサーと重なる位置に配置」され,「シート状」であるのに対して,
引用発明1の「振動子40」は,筐体10の裏面側の,基板20,30の取付け位置の近傍に取付けられており,シート状であることは特定されていない点。

(4)判断
ア 相違点1の容易想到性について
(ア)引用発明1は,操作性が良好な入力装置を提供することを目的の一つとしたものであり(前記(2)ア(ア)aの【0007】参照),かつ,1本の指で触れて,その触れる位置を移動させると,その移動に伴って,表示部301に表示された地図などの表示範囲をスクロールさせるようにする等の用途に用いることができるものであるところ,ユーザによって加えられた圧力の大きさを検出することができる抵抗型等の検出器を用いたタッチパッドと,当該タッチパッドに連結されたアクチュエータとを用い,タッチパッドの操作時の圧力の量に対応した速度でドキュメントをスクロールするとともに,表示されたドキュメントのページがスクロールされる毎にアクチュエータによってパルスを出力する機能を実現している引用刊行物2記載の技術的事項1に基づいて,引用発明1の「2枚の基板20,30と複数の送信電極23と1個の受信電極33とからなり,指などの接触により両電極間の容量値が変化する構成」に代えて,ユーザによって加えられた圧力の大きさを検出することができる抵抗型等の検出器を採用し,凹部15への指などの接触時の押圧力の強さを判定し,その結果に基づいて「コントローラ47」が形成する「接触位置の判断に基づいて得られた指令」(操作信号)を押圧力の強さに対応して多段階的に出力されるものとし,もって,押圧力の強さに対応した速度で表示範囲のスクロールが行われるとともに,表示されたドキュメントのページがスクロールされる毎に「振動子40」が振動するというような機能を付加することは,当業者が容易に想到し得たことである。

(イ)ドキュメントをスクロールする速度が変化すると,表示されたドキュメントのページがめくられていく時間間隔が変化するのだから,前記(ア)で述べた構成の変更において,「振動子40」を表示されたドキュメントのページがスクロールされる毎に振動するように構成することは,「コントローラ47」が形成する「出力パルス信号に関する指示」(駆動信号)を,押圧力の強さに対応してパルスを発生させる時間間隔が異なるものとすることにほかならない。
したがって,前記(ア)で述べた構成の変更を行った引用発明1は,「センサーが,押圧力に応じて電気的状態が変化し,コントローラが,検出位置毎に押圧力を判定し,操作信号を押圧力の強さに対応して多段階的に出力されるよう形成し,駆動信号を押圧力の強さに対応して異なるものとして形成する」という相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項に相当する構成を具備することとなる。

(ウ)以上のとおりであるから,引用発明1を相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることは,引用刊行物2記載の技術的事項1に基づいて,当業者が容易に想到し得たことである。

イ 相違点2の容易想到性について
引用発明1は,大きな設置スペースを必要としない入力装置を提供することを目的の一つとしたものであるところ(前記(2)ア(ア)aの【0007】参照),さらなる設置スペースの削減等を目的としている引用刊行物2記載の技術的事項2に基づいて,引用発明1のアクチュエータとして例示されたもののうちピエゾ振動子(引用刊行物2記載の技術的事項2における「圧電アクチュエータ」と同義である。)を採用し,非常に薄い「シート状」に作成するとともに,「振動子40」の配置を,「筐体10の裏面側の,基板20,30の取付け位置の近傍」から,「検出器」の下面に変更することは,当業者が容易に想到し得たことである。
そして,当該変更を行った引用発明1では,「振動子40」(アクチュエータ)が「検出器」(センサー)と重なる位置に配置されることとなることは明らかである。
したがって,引用発明1を,「アクチュエータがセンサーと重なる位置に配置され,シート状」であるという相違点2に係る本願補正発明の構成を具備したものとすることは,引用刊行物2記載の技術的事項2に基づいて,当業者が容易に想到し得たことである。

ウ 効果について
本願補正発明の奏する効果は,引用刊行物1及び2の記載に基づいて,当業者が予測できた程度のものである。

(5)独立特許要件についてのまとめ
以上のとおり,本願補正発明は,引用発明及び引用刊行物2記載の技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって,本件補正は,改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反するから,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は前記のとおり却下されたので,本願の請求項8に係る発明(請求項8は,前記「第2〔理由〕3」において独立特許要件の検討対象とした本件補正後の請求項1に対応する請求項である。以下,請求項8に係る発明を「本願発明」という。)は,平成24年6月6日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲,明細書及び図面の記載からみて,前記「第2〔理由〕1(1)」に本件補正前の請求項8として示したとおりのものと認められるところ,これを独立形式の記載に改めると次のとおりである。

「複数の検出位置が設定され,任意の上記検出位置と対応する位置が押圧されることによって電気的状態が変化するシート状の一つのセンサーと,
押圧された上記検出位置の上記電気的状態の変化を検出し,検出結果に基づき操作信号および駆動信号を出力するコントローラと,
上記駆動信号により振動が与えられるアクチュエータと,
上記コントローラからの上記駆動信号を上記アクチュエータに供給する駆動手段と
を有し,
上記センサーは,押圧力に応じて上記電気的状態が変化し,
上記コントローラは,上記検出結果に基づき上記押圧力を判定し,判定した上記押圧力に応じた上記操作信号および駆動信号を出力し,
上記操作信号は,上記押圧力に応じて多段階的に出力される
入力装置。」

2 当審拒絶理由
本願発明に対する当審拒絶理由の概要は,次のとおりである(平成26年5月7日付け拒絶理由通知書の「第3 2(2)ア」の欄における「引用例1」を,本審決では引用刊行物2としている(前記第2〔理由〕3(2)イ(ア)参照)。)。

本願発明は,引用刊行物2に記載された発明であるから,特許法29条1項3号に該当し,特許をうけることができないか,少なくとも,引用刊行物2及び特開2002-244789号公報(前記拒絶理由通知書の「引用例2」)に記載された発明に基づいて,本願の出願前にその発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,同法29条2項の規定により特許を受けることができない。

3 引用刊行物2
(1)引用刊行物2の記載事項
当審拒絶理由で引用された引用刊行物2は,前記「第2〔理由〕3(2)イ」で述べたとおり,本願の出願前に頒布された刊行物であって,当該引用刊行物2には次の記載がある。(前記「第2〔理由〕3(2)イ(ア)」で摘記した記載についても再掲した部分がある。なお,本欄における下線は,後述する引用発明2の認定に特に関係する箇所を示す。)
ア 「【0001】
【考案の背景】
本考案は一般的にはユーザによるコンピュータと機械装置のインターフェースに関し,さらに詳しくはコンピュータおよび電子装置とのインターフェースをとるのに使用される装置であってユーザに触感フィードバック(haptic feedback)を与える装置に関する。
【0002】
人間は様々なアプリケーションで電子装置および機械装置とインターフェースをとっており,もっと自然で,使用しやすく,有益なインターフェースに対する要求は一定した関心事である。本考案に関連して,人間は様々なアプリケーションでコンピュータ装置とインターフェースをとっている。ある分野では,ゲーム,シミュレーションおよびアプリケーションプログラム等のコンピュータ生成環境と相互作用している。マウスやトラックボール等のコンピュータ入力装置は,グラフィック環境内でカーソルを制御するのに使用され,これらのアプリケーションに入力を与える。
【0003】
あるインターフェース装置では,力フィードバック(force feedback)または触知フィードバック(tactile feedback)もユーザに与えられる。ここでは,これらを集合的に「触感フィードバック(haptic feedback)」と称する。例えば,触感バージョンのジョイスティック,マウス,ゲームパッド,ステアリングホィールその他の装置は,ゲームその他のアプリケーションプログラムのようなグラフィック環境内で生じるイベントや相互作用に基づいて,ユーザに力を出力することができる。
【0004】
ラップトップコンピュータのようなポータブルコンピュータまたは電子機器では,マウスは非常に大きな作業スペースが必要である。この結果,トラックボールのようなコンパクトな装置が使用される。ポータブルコンピュータでさらに評判のよいのは,「タッチパッド」である。これは,小さな矩形の平坦なパッドで,コンピュータのキーボードの近くに設けられている。タッチパッドは,該タッチパッドに作用する圧力を検出する容量センサまたは圧力センサのような様々な検出技術によってポインティング物体の位置を検出する。ユーザは通常指先でタッチパッドに触れ,該パッド上で指を移動させてグラフィック環境で表示されたカーソルを移動させる。他の実施形態では,ユーザはタッチパッド上でスタイラスチップを押圧することで,タッチパッドと関連させてスタイラスを操作し,該スタイラスを移動させることができる。
【0005】
既存のタッチパッドに関する一つの問題は,触感フィードバックがユーザに与えられないということである。したがって,タッチパッドのユーザは,グラフィック型環境内でユーザにターゲッティングやその他の制御タスクを補助したり知らせたりする触感を経験できない。従来のタッチパッドはポータブルコンピュータ上で実行する既存の触感可能なソフトウェアの利点を得ることができない。
【0006】
【考案の概要】
本考案はコンピュータシステムに入力を与えるのに使用される触感フィードバック型の平坦なタッチコントロールに向けられている。このコントロールは,ポータブルコンピュータに設けられたタッチパッドとすることができ,または様々な装置に見られるタッチスクリーンとすることができる。タッチコントロールに出力される触感は,電子装置を制御するとき,表示されたグラフィック環境での相互作用と操作を向上する。
【0007】
さらに詳しくは,本考案はコンピュータに信号を入力し,ユーザに力を出力する触感フィードバック型タッチコントロールに関する。このコントロールは,ほぼ平坦な接触表面を有するタッチ入力装置を含み,該タッチ入力装置は接触表面上のユーザ接触の位置に基づいてコンピュータのプロセッサに位置信号を入力する。コンピュータは少なくとも部分的に位置信号に基づいてディスプレイ装置に表示されたグラフィック環境内にカーソルを配置する。少なくとも1つのアクチュエータがタッチ入力装置に接続され,該タッチ入力装置に力を出力し,接触表面に触れるユーザに触感を与える。アクチュエータはプロセッサによって出力される力情報に基づいてアクチュエータに力を出力する。
・・・(中略)・・・
【0010】
本考案はタッチパッドやタッチスクリーンのようなコンピュータの平坦なタッチコントロール装置に触感を有利に与える。触感は,ユーザを援助し,ユーザにグラフィックユーザインターフェースや他の環境内での相互作用やイベントを知らせ,カーソルターゲットタスクを容易にする。さらに,本考案は,ポータブルコンピュータ装置にこのようなタッチコントロールを保有させて,既存の触感フィードバックを可能にしたソフトウェアを利用する。ここに開示された触感タッチ装置は,安価で,コンパクトであり,電力消費が低く,広範なポータブルコンピュータや,デスクトップコンピュータ,電子機器に容易に組み込むことができる。」

イ 「【0012】
【考案の実施の形態】
図1は,本考案の触感タッチパッドを含むポータブルコンピュータ10の斜視図である。コンピュータ10は好ましくはポータブルすなわち「ラップトップ」コンピュータであり,ユーザが持ち運んだり,輸送することができ,固定電源に加えてバッテリーやその他のポータブル電源により給電される。コンピュータ10は,1または複数のホストアプリケーションプログラムを実行し,それによりユーザは周辺装置を介して相互作用(対話)する。
【0013】
コンピュータ10は,ユーザにグラフィック画像を出力するディスプレイ装置12,ユーザからコンピュータに文字またはトグル(toggle)入力を与えるキーボード14,および本考案のタッチパッド16を含む図示されたような種々の入力および出力装置を含む。ディスプレイ装置12は,様々なタイプのディスプレイ装置のいずれでもよいが,ポータブルコンピュータにはフラットパネル装置が最も普通である。ディスプレイ装置12は,動作しているアプリケーションプログラム及び/又はオペレーションシステムに基づいて,ユーザ入力により移動させることができるカーソル20,ウィンドウ22,アイコン24,その他GUI環境で公知のグラフィック体を含むグラフィカルユーザインターフェース(GUI)のようなグラフィック環境18を表示することができる。記憶装置(ハードディスクドライブ,DVD-ROMドライブ等),ネットワークサーバまたはクライエント,ゲームコントローラ等の他の装置をコンピュータ10に組み込みまたは接続してもよい。代案の実施形態では,コンピュータ10は,卓上又はその他の表面に載置する計算装置,直立のアーケードゲーム機,その他身体に装着され,ユーザの片手で携帯され,使用されるポータブル装置を含む広範な形態をとることができる。例えば,ホストコンピュータ10は,ビデオゲームコンソール,パーソナルコンピュータ,ワークステーション,テレビジョン「セットトップボックス(set top box)」,「ネットワークコンピュータ」,または他の計算または電子機器とすることができる。
【0014】
本考案のタッチパッド装置16は,外観的に従来のタッチパッドに類似しているように見えるのが好ましい。パッド16は,平坦で矩形の滑らかな表面を有し,図に示すようにコンピュータ10のハウジングにあるキーボード14の下方に配置することができ,またはハウジングの他の領域に配置することができる。ユーザがコンピュータ10を操作するとき,ユーザはタッチパッド16の上に指先または他の物体を置き,該指先を動かして対応するグラフィック環境18内のカーソルを移動させる。
【0015】
動作時,タッチパッド16は,該タッチパッド上(または近傍)の物体の検出位置に基づいて,座標データをコンピュータ10の主マイクロプロセッサに入力する。従来の多くのタッチパッドのように,タッチパッド16は容量型,抵抗型等,異なるタイプの検出器を使用することができる。ある現存のタッチパッドの実施例は,例えば米国特許第5521336号や第5943044号に開示されている。容量型タッチパッドは,典型的には,タッチパッドと物体のコンデンサ間の容量結合に基づいて,タッチパッドの表面またはその近傍の物体の位置を検出する。抵抗型タッチパッドは,典型的には,指や,スタイラス,その他パッドに対する物体の圧力を検出する圧力感知であり,該圧力によりパッド内の導電層,トレース,スイッチ等が電気的に接続する。抵抗型や他の型式のタッチパッドは,ユーザによって加えられた圧力の大きさを検出することができ,コンピュータ10への比例または可変入力のために圧力度を使用することができる。抵抗型タッチパッドは典型的には少なくとも部分的に変形可能であり,圧力が特定の位置に加えられると,当該位置における導電体が電気的に接続する。このような変形可能性は本考案では有益である。本考案に使用されるようなタッチパッド上に出力されるパルスや振動のような力の大きさを潜在的に増幅することができるからである。アクチュエータと移動する物体との間に調整された順応懸架装置(tuned compliant suspension)が設けられているなら,力を増幅することができる。本考案の実施形態では,容量型タッチパッドや著しい接触圧力を必要としないその他の型式のタッチパッドがより良く適している。タッチパッド上の過剰圧力が多くの場合,触感フィードバックのためのタッチパッドの運動と干渉するからである。他の型式の検出技術もタッチパッドに使用することができる。ここで,「タッチパッド」の用語は,タッチパッド16の表面のほか,タッチパッド装置に含まれる如何なる検出装置も含む。
【0016】
タッチパッド16は,既存のタッチパッドに類似した動作をするのが好ましく,タッチパッド上の指先の速度はカーソルがグラフィック環境で移動する距離と相関する。例えば,ユーザがパッドを横切るように指を迅速に動かすと,カーソルはユーザが指先をさらに緩やかに動かした場合よりも大きな距離を移動する。カーソルが所望の目的地に達する前にユーザの指先がタッチパッドの縁に達すると,ユーザは単純に指をタッチパッドから離して移動し,縁から離れたところに置いて,カーソルを動かすことを続ける。これは,マウスを表面から離して持ち上げ,マウスの位置とカーソルの間のオフセットを変更するのと類似した「割出し(indexing)」機能である。さらに,多くのタッチパッドは,カーソル位置に関係のない特定の機能に割り当てられた特定の領域を設けることができる。このような実施形態は図7を参照して以下に詳細に説明する。ある実施形態では,タッチパッド16は,ユーザが特定の位置でタッチパッドを「タップ(tap)」(物体をパッドに迅速に接触させて離す)して,指令を与えるとができるようにしてもよい。例えば,ユーザは指でパッドをタップし,または「ダブルタップ」する一方,制御されたカーソルをアイコンに重ねて該アイコンを選択する。
【0017】
本考案では,タッチパッド16は,該タッチパッド16と物理的に接触(contact)するユーザに,実体感覚のような触感フィードバックを出力する能力を備えている。触感フィードバックタッチパッドの構造を詳述する多くの実施形態について,以下により詳細に説明する。好ましくは,タッチパッドに出力される力は,線形(またはほぼ線形)であり,z軸に沿って向けられ,タッチパッド16の表面とコンピュータ10の上面とにほぼ垂直である。異なる実施形態では,力がタッチパッド16に与えられて,その表面の面内でz軸運動に加えまたはz軸運動の代わりに平面(x-y)運動を起こさせることができるが,そのような運動は好ましくない。
【0018】
タッチパッド16に連結された1または複数のアクチュエータを使用して,様々な触感をパッドに接触しているユーザに出力することができる。例えば,衝撃,振動(可変または一定振幅)および質感(texture)を出力することができる。パッドに出力される力は,パッド上の指の位置またはホストコンピュータ10のグラフィック環境内の制御された物体の状態に基づいて,および/または指の位置または物体の状態にかかわらず,少なくとも部分的である。マイクロプロセッサや他の電子コントローラは電子信号を使用してアクチュエータの力出力の大きさおよび/または方向を制御するので,タッチパッド16に出力される力は,「コンピュータ制御」と考えられる。パッド16全体は,単一の一体部材として触感を備えているのが好ましい。他の実施形態では,パッドの個々の移動部分に,それ自身の触感フィードバックアクチュエータと関連伝動装置を設けて,特定の位置にのみ触感を与えることができるようにすることができる。例えば,ある実施形態は,曲げることができるか,あるいはパッドの他の部分に対して移動させることができる異なる部分を有するタッチパッドを含めてもよい。」

ウ 「【0022】
ホストアプリケーションプログラムおよび/またはオペレーティングシステムは,ディスプレイ装置12上に環境のグラフィック画像を表示するのが好ましい。ホストコンピュータ12で実行されるソフトウェアと環境は,広範な種類がある。例えば,ホストアプリケーションプログラムは,ワードプロセッサ,表計算,ビデオまたはコンピュータゲーム,描画プログラム,オペレーティングシステム,グラフィカルユーザインターフェース,シミュレーション,HTMLまたはVRML命令を使用するウェブページまたはブラウザ,科学解析プログラム,仮想現実トレーニングプログラムまたはアプリケーション,またはタッチパッド16からの入力を利用して力フィードバックコマンドをタッチパッド16に出力するその他のアプリケーションプログラムとすることができる。例えば,多くのゲームその他のアプリケーションプログラムは,力フィードバック機能性を含み,米国カリフォルニア州サンホセのイマーションコーポレーションから入手できるI-Force(登録商標),FEELit(登録商標)またはTouchsense(登録商標)のような標準のプロトコル/ドライバを使用して,タッチパネル16と通信してもよい。
【0023】
タッチパッド16は,ホストコンピュータ10のマイクロプロセッサに制御信号を報告するとともにホストのマイクロプロセッサからのコマンド信号を処理するのに必要な回路を含めることができる。例えば,適切なセンサ(および関連回路)がタッチパッド16上のユーザの指の位置を報告するのに使用される。タッチパッド装置は,ホストからの信号を受信し,該ホスト信号に従って1または複数のアクチュエータを使用して触感を出力する回路を含む。ある実施形態では,タッチパッド16がタッチパッドセンサデータをホストに報告し,および/または該ホストから受信した力コマンドを実行するために,分離した局所のマイクロプロセッサを設けることができる。前記コマンドは,例えば,触感のタイプと,指令された触感を記載するパラメータとを含む。代案として,タッチパッドマイクロプロセッサは,メインプロセッサからアクチュエータへ流されたデータを単に通過させることができる。「力情報」という用語には,コマンド/パラメータと流されたデータとを含めることができる。タッチパッドマイクロプロセッサは,タッチパッドアクチュエータを制御することにより,ホストコマンドを受信した後,独立して触感を実行することができる。または,ホストプロセッサは,アクチュエータをさらに直接に制御することによって,触感を越えて,より大きな制御度(degree of control)を維持することができる。他の実施形態では,タッチパッド16に設けられたステートマシン(state machine)のような論理回路が,ホストメインプロセッサによって指示された触感を取り扱うことができる。センサ信号を読み取って装置に対する触感フィードバックを与えるのに使用することができる構造や制御方法は,米国特許第5734373号に詳細に記載されている。」

エ 「【0026】
図3は,触感フィードバックをユーザに与える本考案のタッチパッド16の第1実施形態40の斜視図である。この実施形態では,1または複数の圧電アクチュエータ42がタッチパッド16の下面に接続されている。圧電アクチュエータ42は当業者に公知の適当な電子装置によって駆動される。ある実施形態では,単一の圧電アクチュエータ42が,タッチパッド16の中央またはその近傍に配置され,あるいはハウジングの空間的制約がそのような位置を要求するなら,一方の側に離して配置される。他の実施形態では,複数の圧電アクチュエータ42をタッチパッドの異なる領域に配置することができる。破線は一つの形態を示す。ここで,アクチュエータ42はパッド16の各角部とパッドの中央に配置されている。
【0027】
圧電アクチュエータ42は,それぞれ,小さなパルス,振動またはテクスチャ感覚をタッチパッド16に出力することができ,またユーザがタッチパッドに接触しているならユーザにも出力することができる。タッチパッド16全体は,好ましくは,アクチュエータ42によって出力される力で移動される。好ましくは,タッチパッドに出力される力は,線形(またはほぼ線形)で,z軸に沿っており,タッチパッド16の表面およびコンピュータ10の上面にほぼ垂直である。異なる実施形態では,前述したように,力をタッチパッド16に作用させ,z軸運動に加えてまたはそれに代えて,その表面にパッドのサイドツーサイド(x-y)運動を引き起す。例えば,第1の線形アクチュエータはx軸の運動を与え,第2の線形アクチュエータはy軸および/またはx軸に対する運動を与えることができる。
【0028】
アクチュエータ42によって出力される振動の周波数は,アクチュエータ42に異なる制御信号を与えることによって変化させることができる。さらに,パルスまたは振動の大きさは,付与された制御信号に基づいて制御することができる。多数のアクチュエータ42が設けられているなら,2またはそれ以上のアクチュエータを同時に駆動することにより,より強い振動をタッチパッドに付与することができる。さらに,一つのアクチュエータがタッチパッドの最終端に設けられ,それが駆動される唯一のアクチュエータである場合,ユーザは,タッチパッドのアクチュエータを有する側で,タッチパッドの反対側よりも強い振動を体験することができる。異なる大きさと局所化された効果は,全てではなくいくつかのアクチュエータを駆動することによって得ることができる。パッドに接触しているユーザの指の先端はかなり敏感であるので,触感を有効にして人を感動させるのに,出力する力は大きな振幅を有する必要はない。
・・・(中略)・・・
【0030】
圧電アクチュエータ42は,タッチパッド16に対するいくつかの利点を有する。これらのアクチュエータは,非常に薄くかつ小さく作ることができるので,ポータブル電子機器では典型的なコンパクトなハウジング内で使用することができる。また,これらは非常に低い電力を要求するので,電力が限定されている(例えば,バッテリーで給電される)装置に適している。ここに開示されたいくつかの実施形態では,アクチュエータ用の電力は,コンピュータをタッチパッド(またはタッチスクリーン)に接続するバスから離して引くことができる。例えば,タッチパッド16が別個のハウジングに設けられている場合,ユニバーサルシリアルバスでパッドをコンピュータに接続し,該コンピュータから電力とデータ(例えば,流動する力データ,力コマンド)をパッドに供給することができる。
【0031】
図4は,図3に示すように本考案のタッチパッド16の実施形態40の側面図である。タッチパッド16は,電子信号がアクチュエータに入力されたときにタッチパッド16に力を生成するように動作する設置された圧電アクチュエータ42に直接連結されている。典型的には,圧電アクチュエータは電流がアクチュエータに付与されると互いに移動することができる2つの層を含む。ここで,アクチュエータの基礎部分は,包囲ハウジング41に対して静止したままであり,一方アクチュエータおよびタッチパッドの移動部分はハウジング41に対して移動する。入力電気信号に基づいて力を出力する圧電アクチュエータの動作は,当業者に公知である。
【0032】
タッチパッド16は,アクチュエータ42にのみ連結することができ,またはアクチュエータ42を除く他の位置でコンピュータ装置のハウジングに追加的に連結することができる。好ましくは,この他の連結手段(coupling)は,スプリングや泡のような材料や要素を使用する順応接続(compliant connection)である。このような接続が順応的に作られていない場合,タッチパッド16は,パッドの部分がアクチュエータの力に応答して移動し,触感をさらに有効にユーザに伝達するように,それ自身で順応性(compliance)を有しているのが好ましい。
【0033】
タッチパッドが直接アクチュエータ42に連結されているので,生成されるどのような力もタッチパッド16に直接付与することができる。電気信号は好ましくは,マイクロプロセッサや,マイクロプロセッサ信号を適切な信号に変換してアクチュエータ42で使用するのに要求される如何なる回路から得られる。」

オ 「【0044】
図7は本考案のタッチパッド16の平面図である。タッチパッド16はある実施形態では単に位置決め装置として使用することができ,ここではパッドの全領域はカーソルに制御を与える。他の実施形態では,パッドの異なる領域は異なる機能に指定することができる。これらの領域のいくつかの実施形態では,各領域は,該領域の下方にアクチュエータを設けることができる。一方,他の領域の実施形態では,パッド16全体に力を付与する単一のアクチュエータを使用してもよい。図示された実施形態では,中央のカーソル制御領域70はカーソルを位置決めするのに使用される。
【0045】
パッド16のカーソル制御領域70は,制御されたカーソルとグラフィック環境および/または当該グラフィック環境におけるイベントとの相互作用に基づいて,パッドパッドに力を出力させることができる。ユーザは,領域70内で指または他の物体を動かして,これに対応してカーソル20を移動させることができる。力は,カーソルと表示されたグラフィック物体との相互作用と関連していることが好ましい。例えば,上下動(jolts)すなわち「パルス」感覚を出力することができ,その感覚は,迅速に所望の大きさに上昇して消える,すなわちゼロまたは小さな大きさに迅速に減少する力の単一の衝撃である。タッチパッド16はz軸に上下動させてパルスを与えることができる。振動感覚も出力することができ,該感覚は典型的には周期的に時間変化する力である。この振動により,タッチパッド16またはその部分はz軸上を進退して往復する。またこの振動は,ホストまたは局所マイクロプロセッサによって出力され,ホストアプリケーションで生じる特定の効果をシミュレートする。
・・・(中略)・・・
【0055】
タッチパッド16は,主カーソル制御領域70とは異なる制御領域であって別個の入力を与える制御領域を設けることもできる。ある実施形態では,異なる領域は,パッド16の表面にラインや,境界,またはテクスチャで物理的に(および/またはコンピュータ10からの音で)マークしておくことができる。これにより,ユーザは,パッドのどの領域に接触しているかを視覚的,聴覚的,および/または触感的に知らせることができる。
【0056】
例えば,スクロールまたはレートコントロール領域62aと62bは,ドキュメントをスクロールしたり,(オーディオボリューム,スピーカバランス,モニタ表示輝度等のような)バリューを調整し,ゲームや仮想現実シミュレーションにおける視野をパン(panning)/チルトするといったようなレートコントロールタスクを実行する入力を与えるのに使用することができる。領域62aは,該領域に指(または他の物体)を置くことで使用することができる。ここで,当該領域の上部はバリューを増加したり,スクロールアップ等をし,当外領域の下部はバリューを減少し,スクロールダウン等をする。パッド16に設置された圧力の量を読み取ることができる実施形態では,圧力の量は調整量を直接制御することができる。例えば,より大きい圧力はドキュメントをより速くスクロールさせることができる。領域62bは,水平(左/右)スクロールや,異なるバリュー,視野等のレートコントロール調整に使用することができる。
【0057】
特定の触感効果をコントロール領域62aと62bと関連させることができる。例えば,レートコントロール領域62aまたは62bを使用するとき,特定の周波数の振動をパッド16に出力することができる。多数のアクチュエータを有する実施形態では,領域62aまたは62bの直下に設置されるアクチュエータを駆動して,「アクティブ」(現在使用されている)領域に対してさらに局所化された触感を与えることができる。領域62の一部がレートコントロールのために押圧された際に,パルスをパッド(または該パッドの領域)に出力して,ページがスクロールされたとき,特定のバリューが通過したとき等を示すことができる。ユーザが領域62aまたは62bに触れている間,振動を連続的に出力することもできる。
・・・(中略)・・・
【0061】
領域62と64は,タッチパッド16の物理的領域である必要はない。すなわち,タッチパッド16の全表面はユーザ接触部の座標をコンピュータのプロセッサに供給するだけで,コンピュータのソフトウェアが異なる領域がどこに位置しているかを指定することができる。コンピュータは座標を解釈し,ユーザ接触部の位置に基づいて,タッチパッド入力信号をカーソルコントロール信号またはレートコントロールやボタン機能等の異なるタイプの信号として解釈することができる。ローカルのタッチパッドマイクロプロセッサがある場合,代案として,当該マイクロプロセッサは,ユーザ接触位置と関連する機能を解釈して,適切な信号またはデータをホストプロセッサに報告するようにしてもよい(位置座標やボタン信号)。これにより,ホストプロセッサが低レベル処理を知らないままにしておくことができる。他の実施形態では,タッチパッド16は,ユーザが触れるタッチパッドの表面にマークされた異なる領域に基づいて,異なる信号をコンピュータに出力するように物理的に設計することができる。例えば,各領域は異なるセンサまたはセンサアレイによって検出することができる。」

(2)引用刊行物2に記載された発明
前記(1)アないしオからみて,引用刊行物2には次の発明が記載されていると認められる。
「タッチパッド16を介したユーザによる入力を受け付け,当該入力に対応して衝撃,可変または一定振幅の振動及び質感等の触感フィードバックをユーザに与えるポータブルコンピュータ10のユーザインターフェース装置であって,
前記タッチパッド16を構成し,タッチパッド16上のユーザの指の位置を検出するセンサおよび関連回路と,
タッチパッドセンサデータを主マイクロプロセッサに報告し,当該主マイクロプロセッサから受信した力コマンドに対応する制御信号を出力するタッチパッドマイクロプロセッサと,
前記タッチパッドマイクロプロセッサから出力されたタッチパッドセンサデータに基づいて所定の処理を行うとともに,前記タッチパッドマイクロプロセッサに力コマンドを出力する主マイクロプロセッサと,
タッチパッド16の下面に直接連結され,前記タッチパッドマイクロプロセッサから出力される制御信号に基づいて駆動される圧電アクチュエータ42とを有し,
前記タッチパッド16は,カーソル制御領域70,スクロールまたはレートコントロール領域62a,62bを含む複数の異なる領域からなり,
当該複数の異なる領域は,タッチパッド16の物理的領域でなく,タッチパッドマイクロプロセッサがユーザ接触位置と関連する機能を解釈して,適切な信号またはデータを主マイクロプロセッサに報告するようなものであっても,各領域を物理的に異なるセンサまたはセンサアレイで構成したものであってもよく,
前記センサには,ユーザによって加えられた圧力の大きさを検出することができる抵抗型等のものを用い,
前記圧電アクチュエータ42は,タッチパッド16の前記異なる領域にそれぞれ配置され,
前記圧電アクチュエータ42によって出力される振動の周波数,パルスまたは振動の大きさは,前記制御信号によって変化させることができ,
前記スクロールまたはレートコントロール領域62a,62bが操作されたときに前記主マイクロプロセッサが行う前記所定の処理は,ドキュメントをスクロールしたり,オーディオボリューム,スピーカバランス,モニタ表示輝度等のバリューを調整し,ゲームや仮想現実シミュレーションにおける視野をパン/チルトするといったようなレートコントロールタスクを実行することであり,例えば当該スクロールまたはレートコントロール領域62a,62bがより大きい圧力で操作されたときはドキュメントをより速くスクロールさせるといったように,操作時の圧力の量によって調整量を直接制御するように構成され,
前記スクロールまたはレートコントロール領域62a,62bの直下に設置された圧電アクチュエータ42は,前記スクロールまたはレートコントロール領域62a,62bの一部がレートコントロールのために押圧された際に,パルスを前記スクロールまたはレートコントロール領域62a,62bに出力して,ページがスクロールされたときや特定のバリューが通過したときを示すよう構成された
ユーザインターフェース装置。」(以下「引用発明2」という。)

4 対比・判断
本願発明と引用発明2とを対比する。
(1)引用発明2の「センサ」,「制御信号」,「圧電アクチュエータ42」及び「タッチ入力装置」は,本願発明の「センサー」,「駆動信号」,「アクチュエータ」及び「ユーザインターフェース装置」にそれぞれ相当する。

(2)引用発明2の「センサ」は,タッチパッド16上のユーザの指の位置を検出することができるのだから,「複数の検出位置が設定され」ているといえる。
また,引用発明2の「センサ」には,ユーザによって加えられた圧力の大きさを検出することができる抵抗型等のものが用いられるところ,当該抵抗型等の「センサ」が「押圧されることによって電気的状態が変化する」ものであり,かつ,「押圧力に応じて電気的状態が変化」するものであることは自明である。
また,引用刊行物2の図3,図4(前記第2〔理由〕3(2)イ(ア)f参照。)等の記載からみて,引用発明2の「タッチパッド16を構成」する「センサ」が「シート状」であることは自明である。
さらに,引用発明2のタッチパッド16の複数の異なる領域が,「タッチパッド16の物理的領域でなく,タッチパッドマイクロプロセッサがユーザ接触位置と関連する機能を解釈して,適切な信号またはデータをホストプロセッサに報告するようなもの」であるとは,タッチパッド16を構成するセンサが「一つ」であることにほかならない。
したがって,引用発明2は,本願発明の「複数の検出位置が設定され,任意の上記検出位置と対応する位置が押圧されることによって電気的状態が変化するシート状の一つのセンサー」を有するという発明特定事項に相当する構成,及び「上記センサーは,押圧力に応じて上記電気的状態が変化し」という発明特定事項に相当する構成を具備している。

(3)引用発明2のタッチパッドマイクロプロセッサと主マイクロプロセッサとからなる構成は,ユーザによって加えられた圧力の大きさを検出する「センサ」が出力する信号に基づいてタッチパッドセンサデータを生成し,当該タッチパッドセンサデータに基づいて所定の処理を行うとともに,力コマンドを生成し,当該力コマンドに基づいて「圧電アクチュエータ42」を駆動する「制御信号」(駆動信号)を出力するという機能を有しているところ,前記所定の処理を行う際には当該処理を行う各部に対してユーザの操作に対応した指示を出力することが自明であるから,引用発明2の「タッチパッドマイクロプロセッサと主マイクロプロセッサとからなる構成」を,「センサ」が出力する信号に基づいて,押圧された検出位置の電気的状態の変化を検出し,検出結果に基づき「ユーザの操作に対応した指示」及び「制御信号」を出力するコントローラであるということができる。
そして,前記「ユーザの操作に対応した指示」が本願発明の「操作信号」に相当するから,引用発明2は,本願発明の「押圧された上記検出位置の上記電気的状態の変化を検出し,検出結果に基づき操作信号および駆動信号を出力するコントローラ」を有するという発明特定事項に相当する構成を具備している。

(4)引用発明2の「圧電アクチュエータ42」は,「制御信号」(駆動信号)に基づいて駆動されるから,引用発明2は,本願発明の「上記駆動信号により振動が与えられるアクチュエータ」を有するという発明特定事項に相当する構成を具備している。

(5)引用刊行物2に明記はないものの,技術常識からみて,引用発明2において,タッチパッドマイクロプロセッサと当該タッチパッドマイクロプロセッサから出力される制御信号に基づいて駆動される圧電アクチュエータ42との間にDA変換器や増幅器等からなるドライバ回路が存在することは明らかである。
そして,当該「ドライバ回路」が,本願発明における「コントローラからの駆動信号をアクチュエータに供給する駆動手段」に相当する。
したがって,引用発明2は,本願発明の「上記コントローラからの上記駆動信号を上記アクチュエータに供給する駆動手段」を有するという発明特定事項に相当する構成を具備している。

(6)引用発明2の「タッチパッドマイクロプロセッサと主マイクロプロセッサからなる構成」(前記(3)参照)が行う所定の処理では,例えばスクロールまたはレートコントロール領域62a,62bにおいてより大きい圧力で操作されたときはドキュメントをより速くスクロールさせるといったように,操作時の圧力の量によって調整量を直接制御するから,前記(3)で述べた「ユーザの操作に対応した指示」を,ユーザによって加えられた圧力の大きさに応じた多段階のものであるということができ,引用発明2の「タッチパッドマイクロプロセッサと主マイクロプロセッサからなる構成」を,「センサ」が出力する信号に基づきユーザによって加えられた圧力の大きさを判定し,判定した圧力の大きさに応じた「ユーザの操作に対応した指示」を多段階に出力するものということができる。
また,引用発明2において,スクロールまたはレートコントロール領域62a,62bの直下に設置された「圧電アクチュエータ42」は,前記スクロールまたはレートコントロール領域62a,62bの一部がレートコントロールのために押圧された際に,パルスを前記スクロールまたはレートコントロール領域62a,62bに出力して,ページがスクロールされたとき等を示したりするところ,当該スクロールまたはレートコントロール領域62a,62bをより大きい圧力で操作してドキュメントをより速くスクロールさせた際には,より短い時間間隔でページが次々とめくられていくのであるから,引用発明2において,スクロールまたはレートコントロール領域62a,62bをより大きい圧力で操作したときには,「タッチパッドマイクロプロセッサと主マイクロプロセッサからなる構成」が,「圧電アクチュエータ42」に出力する「制御信号」をより短い時間間隔でパルスを発生させることを指示するものに変更していることは明らかである。
したがって,引用発明2は,本願発明の「上記コントローラは,上記検出結果に基づき上記押圧力を判定し,判定した上記押圧力に応じた上記操作信号および駆動信号を出力し」という発明特定事項に相当する構成,及び,「上記操作信号は,上記押圧力に応じて多段階的に出力される」という発明特定事項に相当する構成を具備している。

(7)前記(1)ないし(6)から,本願発明と引用発明2とは,
「複数の検出位置が設定され,任意の上記検出位置と対応する位置が押圧されることによって電気的状態が変化するシート状の一つのセンサーと,
押圧された上記検出位置の上記電気的状態の変化を検出し,検出結果に基づき操作信号および駆動信号を出力するコントローラと,
上記駆動信号により振動が与えられるアクチュエータと,
上記コントローラからの上記駆動信号を上記アクチュエータに供給する駆動手段とを有し,
上記センサーは,押圧力に応じて上記電気的状態が変化し,
上記コントローラは,上記検出結果に基づき上記押圧力を判定し,判定した上記押圧力に応じた上記操作信号および駆動信号を出力し,
上記操作信号は,上記押圧力に応じて多段階的に出力される
入力装置。」
である点で一致し,相違するところはない。
したがって,本願発明は引用発明2と同一である。

5 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明2と同一であるから特許法29条1項3号の規定に該当し,特許を受けることができない。
したがって,本願は,当審で通知した前記当審拒絶理由によって拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-08-04 
結審通知日 2014-08-05 
審決日 2014-08-25 
出願番号 特願2009-293776(P2009-293776)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (G03B)
P 1 8・ 575- WZ (G03B)
P 1 8・ 121- WZ (G03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齋藤 卓司  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 西村 仁志
清水 康司
発明の名称 入力装置  
代理人 杉浦 拓真  
代理人 杉浦 正知  

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