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審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 E04F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04F
管理番号 1292957
審判番号 不服2013-6291  
総通号数 180 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-04-07 
確定日 2014-10-16 
事件の表示 特願2007-208578「MMA樹脂模様付け工法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 1月29日出願公開,特開2009- 19486〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2007年7月13日を出願日とする出願であって,平成24年12月19日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成25年4月7日に拒絶査定不服の審判請求がなされるとともに,同時に手続補正がなされたものである。


第2 平成25年4月7日付け手続補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成25年4月7日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正の内容
本件補正は,特許請求の範囲を,
補正前の
「【請求項1】
MMA樹脂で床面・壁面を同樹脂で模様付けする事で塗り床面の選択肢が大幅に増え短時間で意匠性の向上が出来又,模様付けによる凸面で防滑を兼ね備え硅砂等の防滑処理による清掃性の悪さを解消した工法。」から,

「【請求項1】
以下の工程を備えることを特徴とするMMA樹脂模様付け工法。
(イ)既存の床材に,ハツリ・ケレン・洗浄等の下地処理をする工程。
(ロ)下地処理をした床材に,MMA樹脂流し延べ工法・モルタル工法でベースを施工する工程。
(ハ)MMA樹脂による塗り床に,着色したMMA樹脂を,吹きつけガンを用いて吹き付ける工程。
(ホ)吹きつけたMMA樹脂の硬化後に,クリアトップコートを塗布する工程。
【請求項2】
(ハ)MMA樹脂による塗り床に,着色したMMA樹脂を,吹きつけガンを用いて吹き付ける工程は,MMA樹脂による塗り床に,異なる色に着色したMMA樹脂の吹きつけを,複数回行うものである請求項1に記載のMMA樹脂模様付け工法。
【請求項3】
(ハ)MMA樹脂による塗り床に,着色したMMA樹脂を,吹きつけガンを用いて吹き付ける工程は,MMA樹脂による塗り床に,着色したMMA樹脂を線状又は玉状に吹き付けるものである請求項1又は2に記載のMMA樹脂模様付け工法。
【請求項4】
(ハ)MMA樹脂による塗り床に,着色したMMA樹脂を,吹きつけガンを用いて吹き付ける工程は,MMA樹脂による塗り床に,緩やかな山状の凸部を形成するものである請求項1乃至3のいずれかに記載のMMA樹脂模様付け工法。」
に補正する事項が含まれている。

2.補正目的の適否の判断
上記補正事項は,特許請求の範囲の請求項数を補正前の1から4に増加する。
そして,追加された請求項の記載は新規事項の追加ではないものの,補正前の特許請求の範囲には記載されていなかった事項であり,特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえない。
また,本件補正は,請求項の削除,明りょうでない記載の釈明,誤記の訂正のいずれかを目的とするものでもない。
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1.本願発明
平成25年4月7日付けの手続補正は却下されたので,本願の請求項1に係る発明は,平成19年7月13日に提出された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ,請求項1に係る発明は,上記「第2 1.」(補正前,平成19年7月13日受付の特許請求の範囲参照。)に記載されたとおりのものである(以下,請求項1に係る発明を,「本願発明」という。)。

2.引用例
(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用され,本願出願前に頒布された刊行物である,特公昭48-27423号公報(以下,「引用例1」という。)には,図面とともに次の記載がある。(下線は当審で付した。以下同じ。)

(1a)「発明の詳細な説明
シームレツスフローリングの施工手段としては,従来既に色々の方法が開発されていて,その多くは床材の表面に樹脂・・・(中略)・・・またこれをノンスリツブとするには床材の表面に無機物の細粒子を接着したり,あるいは塗装材に細粒子を混入するか,もしくは床面に直接凹凸を設けたりする方法が慣用されている。」(第1頁左欄17-27行)

(1b)「この発明は,床材の表面に樹脂を塗布し,その上に微細な気孔を有する鱗片状樹脂ペレツトを撤布して重量層を形成し,更にその上に透明樹脂を塗布して被膜を形成させることを特徴とするノンスリツブシームレツスフローリングの施工法である。
いま,この発明の実施例を図面によって詳述すると,ポリエチレンとポリウレタンのコーポリマー,例えば英国アコーステイック・ケミカル社製のU.P.C(商品名)のような樹脂溶液を溶剤キシレンで希釈して樹脂分を26%とした塗料1をコンクリート,木材など任意の床材面2に塗布滲透させて下地とする,この下地処理に際し使用する塗液U.P.C塗膜の乾燥硬化を速進するためU.P.C(樹脂分52%)溶液1L当り硬化触媒(デイメチール・エタノール・アミン)3mgを添加してよく混合してから30分間位放置した後塗布すると良好な結果を得られる。」(第1頁右欄第3?20行)

(1c)「この塗膜8の全面に,別にポリビニール,アルコール樹脂をフオルマーカー処理を行うと同時に気孔性を賦与させた鱗片状樹脂ペレツト4を白,赤,黄,黒,鼠色など任意の色に染色したものを,その目的に応じて適宜単独,または数種類混合して,間隙なく撤布して重量ペレット層を形成させる。」(第1頁右欄第27?33行)

(1d)「前記のようにして構成したこの発明のフローリングは,塗膜の中間層を形成させるために撤布した鱗片状樹脂ペレツトの不規則な重量ペレツト層によって復雑な凹凸面を形成するので,フローリングに滑り止めの役割を果すだけでなく,数種に着色した鱗片状樹脂ペレツトを混在させることにより多種多様の色彩感覚を発揮するフローリングを簡単容易に得られるものであり,しかも中間層を形成する鱗片状樹脂ペレツトはその気孔内に浸透した塗布溶液のために塗膜と完全に結合して一体化して硬化しているから,耐久力も非常に大なるものである。この発明は前記のようであるので,その施工法が非常に簡単であって,従来のフローリング施行法のように特殊な技術を必要とせず,素人でも容易に施行することができ,工期もきわめて短縮することができるなどの効果があるものである。」(第2頁左欄13行?右欄10行)

(1e)上記(1c),(1d)より凹凸面は模様付けされていることは明らかである。


これらの記載事項(1a)乃至(1e)の記載を総合するとともに,(1b)の「ノンスリツブシームレツス」は「ノンスリップシームレス」の誤記であるから,引用例1には,次の発明が記載されているものと認められる。
「床面の表面に樹脂を塗布し,その上に鱗片状樹脂ペレットの不規則な重量ペレット層により模様付けられた凹凸面を形成し,滑り止めの役割を果たし,フローリングを簡単容易に得られ,工期も短くできるノンスリップシームレスフローリング工法」(以下,「引用発明1」という。)


3.本願発明と引用発明1の対比
(a)本願発明の「床面・壁面」は本願の実施例では床面しか記載されていないことから,「床面または壁面」を意味するものと認められ,したがって,引用発明1の「床面の表面」は本願発明の「床面または壁面」に相当する。

(b)床面の模様付けにおいて,引用発明1の「鱗片状ペレット」は,本願発明の「MMA樹脂」と樹脂を用いる点で共通している。

(c)引用発明1の「床面の表面に樹脂を塗布し」は,本願発明の「塗り床面」の形成工程である。

(d)「鱗片状樹脂ペレットの不規則な重量ペレット層に模様づけられ」は,引用例1の(1c),(1d)によれば,白,赤,黒,鼠色など任意の色により,多種多様の色彩感覚を発揮できるから,本願発明における「樹脂で模様付けする事で塗り床面の選択肢が大幅に増え」ることに他ならない。

(e)引用発明1の「フローリングを簡単容易に得られ,工期も短くでき」ることは,引用例1の(1d)の「多種多様の色彩感覚を発揮できる」ことを考慮すれば,本願発明の「短時間で意匠性の向上が出来」ることと同じことである。

(f)引用発明1の「模様付けられた凹凸面を形成し,滑り止めの役割を果たし」は,本願発明の「模様付けによる凸面で防滑を兼ね備え」と技術的に同じことである。

(g)引用発明1の「ノンスリップシームレスフローリング工法」は,「シームレス」故,継ぎ目はなく,清掃性の悪さを解消するものであり,また,上記(f)の引用発明1の「模様付けられた凹凸面」はノンスリップで「硅砂等の防滑処理」を不要にしているから,結局,本願発明の「硅砂等の防滑処理による清掃性の悪さを解消した工法」に相当している。

そうすると,本願発明と引用発明1は,次の点で一致する。

<一致点>
「樹脂で床面・壁面を同樹脂で模様付けする事で塗り床面の選択肢が大幅に増え短時間で意匠性の向上が出来又,模様付けによる凸面で防滑を兼ね備え硅砂等の防滑処理による清掃性の悪さを解消した工法。」

一方,両者は次の点で相違する。

<相違点>
床面の模様付けに使用する樹脂において,本願発明が「MMA樹脂」であるのに対し,引用発明1は「MMA樹脂」でない点。

上記相違点について検討する。
MMA樹脂を用いて模様付けを行うことは床面において周知の事項(例えば,特開平7-26686号公報【0043】【0045】,特開2005-146845号公報【0002】,特開2002-70297号公報【0003】等参照。)である。したがって,引用発明1の「鱗片状樹脂ペレット」の樹脂材料として,MMA樹脂を採用することは当業者が容易になし得るものである。

そして,本願発明の効果は,引用発明1及び周知の事項から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものということはできない。

したがって,本願発明は,引用発明1及び周知の事項から当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例1に記載された発明及び周知の事項から当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,本願は,拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-08-21 
結審通知日 2014-08-22 
審決日 2014-09-03 
出願番号 特願2007-208578(P2007-208578)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E04F)
P 1 8・ 57- Z (E04F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 昌哉西村 直史  
特許庁審判長 本郷 徹
特許庁審判官 西田 秀彦
竹村 真一郎
発明の名称 MMA樹脂模様付け工法  
代理人 神崎 正浩  

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