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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1292962
審判番号 不服2013-13178  
総通号数 180 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-07-09 
確定日 2014-10-16 
事件の表示 特願2009- 991「仕入先評価支援装置およびシステム並びにプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 7月22日出願公開、特開2010-160566〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成21年1月6日の出願であって,平成24年7月9日付けの拒絶理由の通知に対して平成24年9月18日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが,平成25年4月1日付けで拒絶査定がなされ,これに対して平成25年7月9日に審判請求がなされるとともに手続補正がなされ,平成25年10月24日付けの審尋に対し,平成26年1月6日に回答書が提出されたものである。

第2 平成25年7月9日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成25年7月9日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容について

(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載について
本件補正により,特許請求の範囲の記載は,次のとおり補正された。
(なお,以下の下線は請求項1発明の補正の箇所を示すものなどであって,審理を整理するために当審で付加したものである。)
「【請求項1】
所定のインターバルで継続的に発注を行い,かつ,複数の作業工程を経て完成品が完成する製造過程に採用されるとともに,各前記作業工程の作業場所に設置されている複数の作業現場端末とネットワークを介して接続され,現在進行中の各前記作業工程における仕入状況を考慮した仕入先の選定を支援する仕入先評価支援装置であって,
コスト,品質,生産性等の異なる複数の評価項目毎に評価値を算出するための評価演算式および各仕入先の該評価演算式における複数の評価基準のパラメータが格納されている記憶部と,
該評価演算式に,該仕入先毎に登録されている複数の評価基準のパラメータを用いることで,該仕入先毎に各評価項目の評価値を算出する第1算出部と,
前記第1算出部によって算出された各評価項目の評価値を用いて,該仕入先毎に総合評価値を算出する第2算出部と,
前記第2算出部によって算出された該仕入先毎の総合評価値を出力する出力部とを備え,
前記記憶部に格納される前記評価基準のパラメータは,各前記作業現場端末から入力される現在進行中の各作業工程における仕入状況に基づいて更新可能とされている仕入先評価支援装置。
【請求項2】
いずれかの前記作業現場端末から仕入先に関する情報を受信した場合に,該仕入先に関する情報を作業現場端末に対して送信する請求項1に記載の仕入先評価支援装置。
【請求項3】
前記評価項目毎に重み付けが設定されており,前記第2算出部は,該評価項目の評価値に該重み付けを乗算した値を足し合わせることで,該仕入先毎に総合評価値を算出する請求項1または請求項2に記載の仕入先評価支援装置。
【請求項4】
前記評価項目毎に設定されている重み付けは,変更可能とされている請求項3に記載の仕入先評価支援装置。
【請求項5】
各作業工程の担当場所に設置されている複数の作業現場端末と,
該作業現場端末の各々とネットワークを介して接続される請求項1から請求項4のいずれかに記載の仕入先評価支援装置とを備える仕入先評価支援システム。
【請求項6】
所定のインターバルで継続的に発注を行い,かつ,複数の作業工程を経て完成品が完成する製造過程に採用されるとともに,各前記作業工程の作業場所に設置されている複数の作業現場端末とネットワークを介して接続され,現在進行中の各前記作業工程における仕入状況を考慮した仕入先の選定を支援する仕入先評価支援装置に搭載される仕入先評価支援プログラムであって,
コスト,品質,生産性等の異なる複数の評価項目毎に評価値を算出するための評価演算式および各仕入先の該評価演算式における複数の評価基準のパラメータを格納するステップと,
該評価演算式に,該仕入先毎に登録されている複数の評価基準のパラメータを用いることで,該仕入先毎に各評価項目の評価値を算出するステップと,
算出した各評価項目の評価値を用いて,該仕入先毎に総合評価値を算出するステップと,
算出した該仕入先毎の総合評価値を出力するステップと,
前記評価基準のパラメータを,各前記作業現場端末から入力された現在進行中の各作業工程における仕入状況に基づいて更新するステップとをコンピュータに実行させるための仕入先評価支援プログラム。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載について
本件補正前の,平成24年9月18日の手続補正による特許請求の範囲の記載は次のとおりである。なお,請求項2?6の発明は補正がなく,本件出願当初の特許請求の範囲の記載のとおりである。
「【請求項1】
各作業工程の作業場所に設置されている複数の作業現場端末とネットワークを介して接続され,所定のインターバルで継続的に発注を行う場合において,現在進行中の各作業工程における仕入状況を考慮した仕入先の選定を支援する仕入先評価支援装置であって,
コスト,品質,生産性等の異なる複数の評価項目毎に評価値を算出するための評価演算式および各仕入先の該評価演算式における複数の評価基準のパラメータが格納されている記憶部と,
該評価演算式に,該仕入先毎に登録されている複数の評価基準のパラメータを用いることで,該仕入先毎に各評価項目の評価値を算出する第1算出部と,
前記第1算出部によって算出された各評価項目の評価値を用いて,該仕入先毎に総合評価値を算出する第2算出部と,
前記第2算出部によって算出された該仕入先毎の総合評価値を出力する出力部とを備え,
前記記憶部に格納される前記評価基準のパラメータは,現在進行している各作業工程における仕入れ状況に基づいて更新可能とされている仕入先評価支援装置。
【請求項2】
各前記評価基準のパラメータは,該作業現場端末から変更可能とされている請求項1に記載の仕入先評価支援装置。
【請求項3】
いずれかの前記作業現場端末から仕入先に関する情報を受信した場合に,該仕入先に関する情報を作業現場端末に対して送信する請求項2に記載の仕入先評価支援装置。
【請求項4】
前記評価項目毎に重み付けが設定されており,前記第2算出部は,該評価項目の評価値に該重み付けを乗算した値を足し合わせることで,該仕入先毎に総合評価値を算出する請求項1から請求項3のいずれかに記載の仕入先評価支援装置。
【請求項5】
前記評価項目毎に設定されている重み付けは,変更可能とされている請求項4に記載の仕入先評価支援装置。
【請求項6】
各作業工程の担当場所に設置されている複数の作業現場端末と,
該作業現場端末の各々とネットワークを介して接続される請求項1から請求項5のいずれかに記載の仕入先評価支援装置と
を備える仕入先評価支援システム。
【請求項7】
各作業工程の作業場所に設置されている複数の作業現場端末とネットワークを介して接続され,所定のインターバルで継続的に発注を行う場合において,現在進行中の各作業工程における仕入状況を考慮した仕入先の選定を支援する仕入先評価支援装置に搭載される仕入先評価支援プログラムであって,
コスト,品質,生産性等の異なる複数の評価項目毎に評価値を算出するための評価演算式および各仕入先の該評価演算式における複数の評価基準のパラメータを格納するステップと,
該評価演算式に,該仕入先毎に登録されている複数の評価基準のパラメータを用いることで,該仕入先毎に各評価項目の評価値を算出するステップと,
算出した各評価項目の評価値を用いて,該仕入先毎に総合評価値を算出するステップと,
算出した該仕入先毎の総合評価値を出力するステップと,
前記評価基準のパラメータを,現在進行している各作業工程における仕入れ状況に基づいて更新するステップと
をコンピュータに実行させるための仕入先評価支援プログラム。」

(3)上記補正は,請求項1発明を特定する,「各作業工程の作業場所に設置されている複数の作業現場端末とネットワークを介して接続され,所定のインターバルで継続的に発注を行う場合において,現在進行中の各作業工程における仕入状況を考慮した仕入先の選定を支援する仕入先評価支援装置」との事項を「所定のインターバルで継続的に発注を行い,かつ,複数の作業工程を経て完成品が完成する製造過程に採用されるとともに,各前記作業工程の作業場所に設置されている複数の作業現場端末とネットワークを介して接続され,現在進行中の各前記作業工程における仕入状況を考慮した仕入先の選定を支援する仕入先評価支援装置」との事項に補正し,「前記記憶部に格納される前記評価基準のパラメータは,現在進行している各作業工程における仕入れ状況に基づいて更新可能とされている仕入先評価支援装置」との事項を「前記記憶部に格納される前記評価基準のパラメータは,各前記作業現場端末から入力される現在進行中の各作業工程における仕入状況に基づいて更新可能とされている仕入先評価支援装置」との事項に補正するとともに,旧請求項2を削除するものであって,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2 補正の適否ついて
そこで,補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は,上記「1(1)【請求項1】」に記載したとおりのものである。

(2)引用例について

ア 引用例1
原査定の拒絶の理由で引用された,本願の出願の日前に頒布された刊行物である,特開2002-297976号公報(平成14年10月11日出願公開。以下「引用例1」という。)には,図面とともに,次の記載がある。

(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,発注業者選定システムに関し,特に土地に不案内や経験の少ない現場管理者であっても要求水準に応じた信頼性のある業者を容易に選択できる発注業者選定システムに関する。」

(イ)「【0014】図1は,本発明による発注業者選定システムを概要的に示している。本実施の形態において各地に配置されている複数の現場には,本社のデータベースサーバ1からWWWサーバ2を経てイントラネット等の専用通信網3を介して,これに接続されている各ユーザ端末器4?6が接続されている。
【0015】各ユーザ端末器4?6は,その操作によってデータベースサーバ1に登録されている,購買契約業者評価リスト,購買契約書及び購買契約業者評価表等をデータベースサーバ1からWWWサーバ2を経てその画面に表示させることができる。
【0016】又,各ユーザ端末器4?6からは,その操作によってWWWサーバ2を経てデータベースサーバ1に入力データや評価データが伝えられ,格納されたプログラムの下に適宜に処理されている。それぞれの処理データは,発注データ,評価処理データとして書き込みが行われ,購買契約業者評価リストの登録・更新を行っている。」

(ウ)「【0017】図2は,本発明による発注業者選定システムを稼働させる購買契約業者の選定・評価フローを示しており,データベースサーバ1と各ユーザ端末器4?6は,WWWサーバ2を経ながら各ユーザ端末器4?6とデータベースサーバ1とに格納されたプログラムの下に,これらのフローに従って作動することで,発注業者の適切な選定と不特定多数の現場管理者による客観的な購買契約業者評価リストの作成とを確実に遂行している。
【0018】購買契約業者の選定は,スタートさせると,各ユーザ端末器3?5を作動させて,データベースサーバ1に登録されている購買契約業者評価リストをWWWサーバ2からユーザ端末器の画面に表示させることから開始する。(S1)表示された購買契約業者評価リストは,図4に例示された実施の形態のように表記されており,工種を選択することによって同工種の施工可能な購買契約業者が一欄表になって表示される。
【0019】図4に基づいて主要な表示項目を説明すると,登録番号と業者名称は,選択された工種における評価の判定結果に基づいてその上位から順番に列挙されている。
【0020】基になる評価項目は,外注工事の場合では後述するように「品質」,「工期」,「原価」,「技術」及び「安全」であり,各項目についてA?Eの5段階に区分された判定結果を表示すると共に,これらの総合点についてA?Eの5段階に区分されて等級付けがなされている。
【0021】「土建」の欄には,過去4年間に使用した実績が以下のような表示で記載されている。
土:土木工種での使用実績。
建:建築工種での使用実績。
土建:土木・建築工種での使用実績。
材:材料工種での実績。
設:建築設計工種での実績。
【0022】又,「状態」の欄には,以下のような表示で記載されている。
集計:過去2年間で評価表が登録され,集計されている。
注文:過去4年間で注文書は発行されたが,過去2年間での評価表の登録が無い。
評価:過去1ケ月以内で評価表が登録されたが,集計されていない。
過去2年以上前に評価表が出されたが,集計はされていない。
新規:過去4年間で注文書の発行は無いが,新規使用承認願は出されている。
削除:倒産したか,吸収合併されたか等。
【0023】そして,その他の欄では,「件数」としてこの業種,この業者で集計された評価表の件数を記載し,「内訳」には,上記の「状態」における概要等を記載しており,「履歴」の欄には,過去の評価履歴や工種の詳細を記載して,それぞれの欄をクリックすることで表示できるようにプログラムされている。
【0024】次いで,購買契約業者評価リストから適任の業者を選択する(S2)が,適任の業者が見当たらない場合には,新規の業者を決定する(S3)ことになる。
【0025】又,この手順は,単に購買契約業者評価リストに適任業者が存在しない場合のみに活用するばかりでなく,最近のようにインターネット等を利用して資材購入業者の公募が行われている傾向に対しても対応できるものであり,後述するように,工事後の現場管理者による直接的な評価と統一した客観的な評価とによって,採用できる購買契約業者の範囲を拡張できるものである。
【0026】業者の決定が行われると,データベースサーバ1の注文書管理ファイルから図5に例示する購買契約書をユーザ端末器の画面に表示させる。(S4)
【0027】契約書は,図5に実施の形態を例示するように,「登録番号」を始めとして「業者名」,「工種」,「工事件名」,「工期」,等の所定の事項を入力することで作成され,業者との間で発注契約が交わされる。(S5)
【0028】ユーザ端末器からの購買契約書への入力は,同時にデータベースサーバ1に対して発注データを送信することであり,これによって,購買契約業者評価リストに載っている購買契約業者もしくは新規に決定された購買契約業者に対して,新規発注と未評価のデータが記録されることになる。
【0029】工事あるいは材料の納入が完了すると,その結果から購買契約業者の評価が行われる。
【0030】発注した購買契約業者の評価は,ユーザ端末器を作動させて,データベースサーバ1に登録されている購買契約業者評価リストを再びWWWサーバ2を経て画面に表示させることから開始する。(S6)
【0031】表示された購買契約業者評価リストは,図4の実施形態のように表記されているが,これらのデータに上述した発注データが追記されていることから,各現場で発注した業者名と工種を選択することによって,未評価の購買契約業者を一欄表から選定することができる。(S7)
【0032】評価する購買契約業者を選定した後は,その購買契約業者に関して必要な購買契約者評価表を表示するが,この際に,購入資材,外注工事,設計・積算,廃棄物工事等のどれに該当するかを確認して該当工種等を選択し,それぞれの評価項目,評価細目を検索表示する。(S8)
【0033】購買契約者評価表には,上記のような各種の工種に対応させて必要とする評価項目を列挙しているが,図6に外注工事に関して定められた評価項目の一例を部分的に詳解する。
【0034】外注工事の場合の評価項目は,図示の「品質」,「工期」の他に,「原価」,「技術」,「安全」及び「環境」も考慮されるところであるが,評価細目を「品質」に関して例示すると,“積極的な品質活動”,“要求品質の理解”,“工程内検査”,“製品の出来映え”の5項目を採り上げており,上記の購入資材,外注工事,設計・積算,等に関連する購買契約者評価表は,それぞれの工種に関連してその評価項目及び評価細目を適宜に設定している。
【0035】本実施の形態における各評価細目の評価は,図示のように(+1,0,-1)の3段階評価で行われ,各評価細目についての評価点が入力されると各端末機からの評価データとしてデータベースサーバ1に入力される。(S9)
【0036】データベースサーバ1では,以下の本実施の形態に基づいて作成して格納されたプログラムによって,入力される評価データに基づいた各評価項目に関する総合評価と総合得点率とが所定期間毎に反復して自動的に集計され,これによって購買契約業者評価リストの漸次更新された新規な評価処理データを算出している。
【0037】しかるに,購買契約者評価表に入力された評価結果は,各ユーザ端末器からデータベースサーバ1に伝達され,データベースサーバ1にあっては細目に関する評価点に特定の重み付けをしながら加重平均した値を総合的に自動集計されていることから,統一して作成され続ける購買契約業者評価リストの新規な評価データは,既に登録されている購買契約業者評価リストに上書きされることで,購買契約業者評価リストの内容を更新した発注データ,評価処理データの基に,新たに登録されることになる。(S10)」

(エ)「【0038】上述のように,本発明による発注業者選定システムは,現場での直接評価者が新たな評価データをデータベースサーバに入力することによって,購買契約業者評価リストは,随意に更新・登録することを可能にしているが,一方では,全ての現場管理者が全社的に共通のレベルに評価され,要求水準に応じた等級付けをすることによって,信頼性のある業者をデータベースサーバに登録することが重要であり,このためには,特定されている購買契約業者評価リストを入手する必要がある。
【0039】そこで,本発明による発注業者選定システムでは,上記の要求を満足させるために,データベースサーバにおいて行われる自動的に集計を所定の期間を経て実行するようにプログラミングすることを可能にしており,これによって,任意の周期で入力されてくる評価データをデータベースサーバに保管しておき,特定された時期において,これらの保管された評価データに基づいた各評価項目に関する総合評価と総合得点率とを自動集計している。
【0040】これによって,全ての現場管理者は,全社的に共通のレベルに評価されることで,社内的な要求水準に応じたものとして等級付けされている信頼性のある業者を容易に選択できるデータベースを確保できることになる。
【0041】次に,本実施の形態における評価項目の評価及びその自動集計について説明する。
【0042】評価項目の評価は,図6のように各評価項目毎に細分化された評価細目の段階で,3段階に区分された+1,0,-1の内からそれぞれの判断に従って一つを選択して評価細目の評価点にしている。
【0043】次の評価項目における段階での各評価は,上記の評価細目で付与された評価点を項目単位毎に集計して行われるが,この際に加算される評価点の合計は,単純平均でなく,各項目における評価細目の数に基づいた重み付けを行なうことで,加重平均の手法を用いて集計している。
【0044】又,各評価項目における評価は,評価細目での評価点を得点率として計算するように設定しており,各項目の得点率は,各評価項目における評価細目の全てが+1の場合を100%にし,評価細目の全てがー1の場合には0%であるとして,その間の集計評価値を按分計算している。
【0045】そして,総合得点率は,評価細目の数に基づいた重み付けを行なうことで加重平均しており,それぞれの評価項目に自動的に計算された数値を総合得点率として付与されている。
【0046】さらに,総合得点率は,その結果を20%毎にA?Eの5段階に区分して等級付けできるように設定しており,図4に示した購買契約業者評価リストの合計点の欄に表示してその選択判断がし易いようにプログラムを作成している。」

上記(ア)?(エ)の記載から,引用例1には,次の発明が記載されていると認められる。
(以下「引用発明」という。なお,「《」や「》」は,審理を整理するために付したものである。)

「土地に不案内や経験の少ない現場管理者であっても要求水準に応じた信頼性のある業者を容易に選択できる発注業者選定システムであって,
各地に配置されている複数の現場に,本社のデータベースサーバから専用通信網を介して各ユーザ端末器が接続され,
購買契約業者の選定・評価がなされ,
《購買契約業者の選定》は,
各ユーザ端末器を作動させて,データベースサーバに登録されている購買契約業者評価リストをユーザ端末器の画面に表示させ,
ここで購買契約業者評価リストは,購買契約業者が一欄表になって表示され,評価の判定結果に基づいてその上位から順番に列挙され,
基になる評価項目は,「品質」,「工期」,「原価」,「技術」及び「安全」であり,各項目についてA?Eの5段階に区分された判定結果を表示すると共に,これらの総合点についてA?Eの5段階に区分されて等級付けがなされ,
業者の決定が行われると発注契約が交わされ,材料の納入が完了すると,その結果から購買契約業者の評価が行われ,
《購買契約業者の評価》は,
ユーザ端末器を作動させて,データベースサーバに登録されている購買契約業者評価リストを再び画面に表示させ,
各評価細目の評価は,+1,0,-1の3段階評価で行われ,各評価細目についての評価点が入力されると各端末機からの評価データとしてデータベースサーバに入力され
データベースサーバでは,入力される評価データに基づいた各評価項目に関する総合評価と総合得点率とが所定期間毎に反復して自動的に集計され,これによって購買契約業者評価リストの漸次更新された新規な評価処理データを算出し,
購買契約業者評価リストの新規な評価データは,既に登録されている購買契約業者評価リストに上書きされることで,現場での直接評価者が新たな評価データをデータベースサーバに入力することによって,購買契約業者評価リストは,随意に更新・登録され,
全ての現場管理者は,全社的に共通のレベルに評価されることで,社内的な要求水準に応じたものとして等級付けされている信頼性のある業者を容易に選択できるものであり,
《評価項目の評価及びその自動集計》は,
3段階に区分された+1,0,-1から一つを選択した評価細目の評価点を項目単位毎に集計する際,評価細目での評価点を得点率として計算するように設定しており,各項目の得点率は,各評価項目における評価細目の全てが+1の場合を100%にし,評価細目の全てが-1の場合には0%であるとして,その間の集計評価値を按分計算し,
総合得点率は,評価細目の数に基づいた重み付けを行なうことで加重平均しており,総合得点率は,その結果を20%毎にA?Eの5段階に区分して等級付けできるように設定しており,購買契約業者評価リストの合計点の欄に表示してその選択や判断がしやすいようにしている,
発注業者選定システム。」

イ 引用例2
原査定の拒絶の理由で引用された,本願の出願の日前に頒布された刊行物である,特開2003-141386号公報(平成15年5月16日出願公開。以下「引用例2」という。)には,図面とともに,次の記載がある。
(ア)「【0052】一方,前記逆提案に係る入札図面情報も,前記入札参加者ID,工種ID,および逆提案フラグをキーにして入札図面データベース13から読み出して前記画面表示手段に表示する(e-1)。そして,当該入札図面情報の評価値を算定し,当該評価値を前記評価テーブルに入力する(e-1)。
【0053】前記評価テーブルは,図6に示すように入札参加者の入札案の総合評価に供されるものであり,入札案に係る各種評価項目毎に評価値が入力されて,入札参加者毎に当該入札案の総合評価値を算出する(e-2,e-3)。
【0054】各種評価項目としては,前記入札図面情報に対する評価の他に,前記仕様書に数値データとして記入された前記価格や納期等に対する評価や,TEXTデータとして記入された請負条件等の特記事項に対する評価がある。
【0055】前記数値データに係る評価値は,前記入札仕様書データベース15および入札参加者データベース11から,前記入札参加者IDおよび前記認証番号をキーとして読み出されて,評価テーブルに自動入力される(e-2)。しかしながら,前記価格,納期,資本金,売上高等の数値データは,互いに数値の属性が異なるので,そのまま数値データを評価値として使用できない。例えば,価格は,低い方が評価として高いという属性を有するが,資本金はその逆である。このため,前記評価テーブルに入力する前に,これら評価項目の数値データの属性を統一すべく,属性統一テーブルを用いて前記数値データを変換し,変換後の数値データを評価値として入力するようになっている(e-2)。この属性統一テーブルデータは,評価データベースに格納されている。その一例を図7に示すが,価格,資本金等の評価項目毎に,数値データを評価値に変換する関数が定められている。例えば,価格については,数値データPrに対する評価値Peは,関数Pe=a1/Pr+b1より算出され,資本金については,数値データCrに対する評価値は,関数Ce=a3×Cr+b3にて算出される。そしてこれより,これら評価値の属性は,評価が高くなる程高くなるように変換されている。
【0056】尚,前記図面情報の評価値や前記TEXTデータの評価値等,数値データを有しないものは,前記属性統一テーブルを用いることなく,キーボード等によって直接評価テーブルに評価値を入力する。そして,これら評価値は,前記自動入力された数値データに基づく評価値と共に,評価値情報として前記認証番号に対応付けられて評価データベース17に格納される。
【0057】また,これら評価項目の優先度は工種によって異なるため,前記評価データベース17には,重み係数テーブルデータが格納されていて,図8に示すように,各評価項目に重み付けする重み係数を工種毎に設定する重み係数テーブルが用意されている。そして,図6に示す評価テーブルに入力された前記評価値は,それぞれの評価項目に対応する重み係数が乗じられて補正され,各々最終評価値が算出された後,これら最終評価値が全て加算されて総合評価値が算出される(e-3)。例えば,工種1に入札参加した入札参加者1の価格の最終評価値は3であり,この工種1の価格の優先順は割と高くて,その重み係数は9であるとする。この場合,最終評価値は前記評価値3に重み係数を乗じて27となる。同様の計算を,納期や図面等の各評価項目について行って各々最終評価値を算出し,これらを全て加算して算出された入札参加者1の総合評価値は72になっている。工種1に係る入札参加者2乃至6に対しても同様に計算され,それぞれに総合評価値が算出される。このように前記評価テーブルを用いて,各評価値を加算して求められる総合評価値によって入札参加者を評価するので,工事委託者の恣意を排除した客観的な評価をすることができる。また,工種の内部事情に応じて,工種毎に評価値の重み係数を変えて設定できるので,前記内部事情に沿った総合評価をすることができる。尚,この評価テーブルは,米マイクロソフト社の「MicrosoftExcel」(商標)等の汎用の表計算ソフト等によって実現できる。」
(イ)図6には,価格や納期などの評価値に重みが乗じられて最終評価値が算出され,これが加算されて総合評価値を算出することが記載されている。

そうすると,引用例2には,次の技術的事項が記載されていると認められる。
(以下「引用例2の記載事項」という。)
「評価項目に対応する重み係数が乗じられて補正されて最終評価値が算出され,最終評価値を加算して総合評価値を算出する入札参加者の入札案の総合評価。」

(3)対比
ア(ア)本件補正発明は,「所定のインターバルで継続的に発注を行うような場合,現在発注を行っている仕入先に遅延が生じた場合には,つぎの発注にその状況を速やかに反映させ,適切な仕入先を新たに選定する必要」があり,「現在進行中の作業工程において,仕入先に何らかの問題が発生し,この仕入先に納入遅れや品質低下が発生した場合には,今後の発注に関しては,しばらくの期間において,当該仕入先を仕入先候補から外し,他の適切な仕入先を新たに選定する必要」がある(本願明細書段落【0004】参照。)ことから,「複数の作業現場端末とネットワークを介して接続」した「仕入状況を考慮した仕入先の選定を支援する仕入先評価支援装置」により「作業現場端末から仕入状況を入力して仕入先毎の総合評価値を出力することにより仕入先の選定を支援する」ものである。
(イ)引用発明は,「専用通信網」で接続された「ユーザ端末器」の画面に表示された「データベースサーバに登録されている購買契約業者評価リスト」により購買契約業者を選定し,納入が完了して購買契約業者の評価をして「新たな評価データをデータベースサーバに入力」すると,「購買契約業者評価リスト」は「更新・登録」され,「全ての現場管理者」は,共通のレベルに評価された信頼性のある業者を選択できる。
(ウ)そうすると,引用発明と本件補正発明とは,購買契約業者である仕入先に問題があると現場が判断するとその後に業者を選定する際にその判断が考慮されるように支援する点で共通し,支援をするための,引用発明の「専用通信網」,「ユーザ端末機」,「データベースサーバ」,「購買契約業者」,「購買契約業者の評価」は,後記する点で相違するものの,本件補正発明の「ネットワーク」,「作業現場端末」,「仕入先評価支援装置」,「仕入先」,「仕入状況」に相当する。
(エ)そして,引用発明と本件補正発明とは,後記する点で相違するものの,「各作業場所に設置されている複数の作業現場端末とネットワークを介して接続され,仕入状況を考慮した仕入先の選定を支援する仕入先評価支援装置により,各作業現場端末から仕入状況を入力して仕入先毎の総合評価値を出力することにより仕入先の選定を支援する」という点で共通する。

(オ)本件補正発明の「仕入先毎の総合評価値」は,「仕入先評価支援装置」の「コスト,品質,生産性等の異なる複数の評価項目毎に評価値を算出するための評価演算式および各仕入先の該評価演算式における複数の評価基準のパラメータが格納されている記憶部」と,「該評価演算式に,該仕入先毎に登録されている複数の評価基準のパラメータを用いることで,該仕入先毎に各評価項目の評価値を算出する第1算出部」と,「前記第1算出部によって算出された各評価項目の評価値を用いて,該仕入先毎に総合評価値を算出する第2算出部」と,「前記第2算出部によって算出された該仕入先毎の総合評価値を出力する出力部」とにより作業現場端末に表示される。
(カ)引用発明の「購買契約業者評価リスト」は,「購買契約業者が一欄表になって表示され,評価の判定結果に基づいてその上位から順番に列挙」されるものであり,「基になる評価項目は,品質,工期,原価,技術及び安全であり,各項目についてA?Eの5段階に区分された判定結果を表示すると共に,これらの総合点についてA?Eの5段階に区分されて等級付けがなされる」ものであり,「3段階に区分された+1,0,-1から一つを選択した評価細目の評価点を項目単位毎に集計する際,評価細目での評価点を得点率として計算するように設定しており,各項目の得点率は,各評価項目における評価細目の全てが+1の場合を100%にし,評価細目の全てが-1の場合には0%であるとして,その間の集計評価値を按分計算し,総合得点率は,評価細目の数に基づいた重み付けを行なうことで加重平均しており,総合得点率は,その結果を20%毎にA?Eの5段階に区分して等級付けできるように設定しており,購買契約業者評価リストの合計点の欄に表示」するものである。
(キ)そうすると,引用発明の「品質などの評価項目」,「評価細目」,「+1,0,-1から一つを選択した評価細目の評価点」,「評価細目の全てが+1の場合を100%にし,評価細目の全てが-1の場合には0%であるとして,その間の集計評価値を按分計算」,「評価値」は,後記する点で相違するものの,本件補正発明の「品質などの評価項目」,「評価基準」,「評価基準のパラメータ」,「評価演算式」,「評価値」に相当し,引用発明の「購買契約業者」の「各項目の判定結果とともに表示される総合点の等級付け」と,本件補正発明の「仕入先ごとの総合評価値」とは,仕入先(購買業者)の選択を支援するための「仕入先ごとの総合評価」である点で共通する。
(ク)そして,引用発明と本件補正発明とは,後記する点で相違するものの,「評価演算式に,仕入先ごとに登録されている複数の評価基準のパラメータを用いることで,仕入先ごとに各評価項目の評価値を算出」し,「算出された各評価項目の評価値を用いて,仕入先ごとに総合評価値を算出」し,「算出された仕入先ごとの総合評価を出力」すること,そのための「第1算出部」と「第2算出部」と「出力部」とを有すること,そのために「記憶部」に「品質などの異なる複数の評価項目ごとに評価値を算出するための評価演算式および各仕入先の評価演算式における複数の評価基準のパラメータを格納」する点で共通する。
(ケ)そして,引用発明と本件補正発明とは,後記する点で相違するものの,「記憶部に格納される評価基準のパラメータは,作業現場端末から入力される仕入状況に基づいて更新可能」である点で共通する。

イ 以上のことから,引用発明と本件補正発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。

【一致点】
「各作業場所に設置されている複数の作業現場端末とネットワークを介して接続され,仕入状況を考慮した仕入先の選定を支援する仕入先評価支援装置であって,
品質などの異なる複数の評価項目ごとに評価値を算出するための評価演算式および各仕入先の評価演算式における複数の評価基準のパラメータが格納されている記憶部と,
該評価演算式に,仕入先毎に登録されている複数の評価基準のパラメータを用いることで,該仕入先ごとに各評価項目の評価値を算出する第1算出部と,
前記第1算出部によって算出された各評価項目の評価値を用いて,仕入先毎に総合評価を算出する第2算出部と,
前記第2算出部によって算出された該仕入先毎の総合評価を出力する出力部とを備え,
前記記憶部に格納される前記評価基準のパラメータは,各前記作業現場端末から入力される仕入状況に基づいて更新可能とされている仕入先評価支援装置。」

【相違点1】
本件補正発明の「仕入先評価支援装置」が,「所定のインターバルで継続的に発注を行い,かつ,複数の作業工程を経て完成品が完成する製造過程に採用される」とともに,この製造過程の「各作業工程」の作業場所に設置されている複数の作業現場端末とネットワークを介して接続されるものであり,「現在進行中の各作業工程」における仕入状況を考慮した仕入先の選定を支援するものであって,「評価基準のパラメータ」が,各作業現場端末から入力される「現在進行中の各作業工程」における仕入状況に基づいて更新可能な「仕入先評価支援装置」であるのに対し,引用発明のデータベースサーバは,「複数の現場の各ユーザ端末と専用通信網を介して接続されるデータベースサーバ」であるものの,「各現場が独立して製品を完成させる建築現場」などで購買契約業者を評価して選定を支援するべく採用されるデータベースサーバであり,「量産品の製造過程(本件明細書段落【0019】参照。)」で仕入状況から仕入先を評価して選定を支援するものではない点。
【相違点2】
本件補正発明が,「コスト,品質,生産性等の異なる複数の評価項目」からなるのに対して,引用発明は,「品質等の異なる複数の評価項目」からなるものである点。
【相違点3】
本件補正発明が,「仕入先ごとに総合評価値を算出し,出力する」のに対し,引用発明は「仕入先ごとに総合評価を算出し,出力する」ものである点。

(4)判断
以下,相違点について検討する。
ア 相違点1について
(ア)各現場が製造ラインとなって製品を完成する「量産品の製造過程」で「現場の仕入状況から仕入先を評価し選定を支援する」ことは周知の技術的事項である。
例えば,特開2003-122420号公報(以下「周知例1」という。)には,「部品の検査工程,製品の生産工程,および製品の検査工程を効率的に管理する生産管理システム」(【0001】)であって,「部品検査区は,仕入先から納入される部品を検査して,検査結果をデータサーバ10に送信」(【0048】)し,「生産管理区,製造区,梱包区は,明らかに部品不良だと判断できる場合には元不良情報を入力」(【0062】)すること,「部品の不良の発生数順に仕入先をランク付け」して「不良部品を供給する仕入先の順位を把握」する(【0306】)ことが記載されている。
例えば,特開2006-323832号公報(以下「周知例2」という。)の【要約】には,「【課題】 信頼度の高い部品の品質等級および部品の供給者等級を算出することができる等級演算装置,その等級演算装置を利用した発注装置および設計支援装置を提供することである。【解決手段】評価値算出部によって,取得手段2によって取得される納入実績情報,組立時発見不良情報および出荷後発見不良情報に基づいて,組立時における部品の不良発生率および出荷後における部品の不良発生率が算出され,またこれらの各不良発生率に基づいて,部品の不良評価値を算出される。さらに品質等級算出部42によって,部品の不良評価値に基づいて,部品の品質等級を算出し,供給者等級算出部43によって,部品の供給者等級が算出される。したがって組立時における部品の不良発生率に加えて,出荷後における部品の不良発生率を考慮した部品の品質等級および部品の供給者等級を算出することができ,信頼度の高い等級演算装置を提供することができる。」と記載されている。
(イ)上記(ア)のことから,引用発明の「各現場が独立して製品を完成させる建築現場」においても,また,周知例1,2の「各現場が製造ラインとなって製品を完成する量産品の製造過程」においても,「各現場の仕入状況から仕入先を評価し選定を支援」することは共通する周知の技術的課題であると理解できる。
(ウ)そうすると,「各現場が製造ラインとなって製品を完成する量産品の製造過程」でも,「各現場の仕入状況から仕入先を評価し選定を支援」する必要があるから,引用発明の「各現場」を,「量産品の製造過程の各現場」とし,「各ユーザ端末機」と「データベースサーバ」とにより「各現場の仕入状況から仕入先を評価し選定を支援」する引用発明の構成を,「量産品の製造過程の各現場の端末」と「データベースサーバ」とにより「各現場の仕入状況から仕入先を評価し選定を支援」する構成にしようと試みる動機付けが働く。
(エ)そうすると,「量産品の製造過程」では「所定のインターバルで継続的に発注」することが技術常識であるから,引用発明の「データベースサーバ」を「所定のインターバルで継続的に発注を行い,かつ,複数の作業工程を経て完成品が完成する製造過程に採用される」とともに,この製造過程の「各作業工程」の作業場所に設置されている複数の作業現場端末とネットワークを介して接続されるよう構成し,もって本件補正発明の「仕入先評価支援装置」の構成とすることは,当業者が容易に想到することができたものである。
そうすれば,仕入は「現在進行中の各作業工程」でなされるから,引用発明の「データベースサーバ」が,「現在進行中の各作業工程」における仕入状況を考慮した仕入先の選定を支援するものとなり,「評価基準のパラメータ」が,各作業現場端末から入力される「現在進行中の各作業工程」における仕入状況に基づいて更新可能なものとなって,本件補正発明の「仕入先評価支援装置」となることは,当業者には明らかである。
(オ)以上のとおり,「仕入先評価支援装置」を,「所定のインターバルで継続的に発注を行い,かつ,複数の作業工程を経て完成品が完成する製造過程に採用される」とともに,この製造過程の「各作業工程」の作業場所に設置されている複数の作業現場端末とネットワークを介して接続されるものであり,「現在進行中の各作業工程」における仕入状況を考慮した仕入先の選定を支援するものであって,「評価基準のパラメータ」が,各作業現場端末から入力される「現在進行中の各作業工程」における仕入状況に基づいて更新可能な「仕入先評価支援装置」とすることは,当業者が容易に想到することができたものである。
(カ)審判請求人は,本願発明が,(a)「現在発注を行っている仕入先に遅延が生じた場合には,次ぎの発注にその状況を速やかに反映させ,適切な仕入先を新たに選定する必要」があり,(b)「複数の作業工程を経て完成品が出来上がる場合,ある作業工程で発生した問題を他の全ての作業工程で共有することが重要」であるという新規な課題を解決すること(審判請求書4頁末行?5頁5行,回答書3頁下から3行?4頁3行),これに対して引用発明は(c)「所定のインターバルで継続的に発注を行い,かつ,複数の作業工程を経て完成品が完成する製造過程」に適用されることについての動機付けに欠けること,(d)目的,効果で異なること(審判請求書5頁17行?20行),(e)周知例1(前置報告書の引用文献3)は品質管理を支援する装置であり仕入先選定を支援することについての開示も示唆もないこと(回答書3頁5行?15行)を主張する。
しかし,まず(e)の点について,周知例1は品質管理を支援するだけではなく「仕入先選定を支援」することは上記(ア)のとおりであること,(a)(c)(d)の点について,「各現場が独立して製品を完成させる建築現場」でも「各現場が製造ラインとなって製品を完成する量産品の製造過程」でも「各現場の仕入状況から仕入先を評価し選定を支援」することが共通する周知の技術的課題であったことは上記(ア)(イ)で判断したとおりであるから,「現在発注を行っている仕入先に遅延が生じた場合には,次ぎの発注にその状況を速やかに反映させ,適切な仕入先を新たに選定する必要」があることも周知の技術的課題であったこと,このことから,引用発明を,量産品の製造過程で仕入先の選定を支援する構成とし本件補正発明とする動機付けがあることは上記(ウ)で判断したとおりであること,以上のことから,審判請求人の(a)(c)(d)(e)の主張を採用することはできない。
(b)の主張に関し,「複数の作業工程を経て完成品が出来上がる場合,ある作業工程で発生した問題を他の全ての作業工程で共有」できるのは「仕入先に関する情報が仕入先評価支援装置を介して全ての作業現場端末に通知」される(本願明細書段落【0011】【0047】参照。)からであるところ,本件補正発明はそのような事項を特定しないから,審判請求人のこの主張は,特許請求の範囲の記載に基づかないものであり採用することができない。仮にそのように特定されるとしても,周知例1には,受入部品に不具合があると社内メール配信することが記載(段落【0063】)されており,周知例1から当業者想到容易である。
以上のことから,審判請求人の主張を採用することはできず,相違点1に係る発明の構成とすることは,当業者が容易に想到することができたものである。

イ 相違点2について
「異なる複数の評価項目」は,「仕入状況から仕入先を評価」できるものであれば,どのようなものであってもよいことが明らかであり,品質のほか,コストや生産性で評価することは周知のことであるから,引用発明の「品質等の異なる複数の評価項目」を「コスト,品質,生産性等の異なる複数の評価項目」からなるよう構成し,もって相違点2に係る発明の構成とすることは,当業者が容易に想到することができたものである。

ウ 相違点3について
(ア)「仕入先ごとに総合評価値を算出し,出力する」ことは周知の技術的事項である。
例えば,引用例2の記載事項によれば,引用例2には,「評価項目に対応する重み係数が乗じられて補正されて最終評価値が算出され,最終評価値を加算して総合評価値を算出する入札参加者の入札案の総合評価。」との事項が記載されている。
(イ)そうすると,引用発明が,「仕入先ごとに総合評価を算出し,出力する」ところ,上記(ア)の周知の技術的事項を適用することにより,「仕入先ごとに総合評価値を算出し,出力する」よう構成し,もって相違点3に係る発明の構成とすることは,当業者が容易に想到することができたものである。

エ そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本件補正発明の奏する作用効果は,引用発明及び周知の技術的事項が奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。

オ したがって,本件補正発明は,引用発明及び周知の技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 本件補正についてのむすび
よって,本件補正は,特許法第17条の2第6項で準用する同法126条7項の規定に違反してなされたものであるから,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって,上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明について
平成25年7月9日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本件補正後の請求項1に対応する本件補正前の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成24年11月26日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,前記第2の[理由]の「1(2)【請求項1】」に記載されるとおりのものである。

2 引用例について
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1及びその記載事項は,前記第2の[理由]の「2(2)」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は,前記第2の[理由]で検討した本件補正発明から,前記第2の[理由]の「1(3)」で検討した補正事項に係る限定事項を削除したものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項をすべて含み,さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が,前記第2の[理由]の「2(3)(4)」に記載したとおり,引用例1に記載された発明及び周知の技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用例1に記載された発明及び周知の技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明することができたものである。

4 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-08-18 
結審通知日 2014-08-19 
審決日 2014-09-01 
出願番号 特願2009-991(P2009-991)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮久保 博幸  
特許庁審判長 手島 聖治
特許庁審判官 須田 勝巳
清田 健一
発明の名称 仕入先評価支援装置およびシステム並びにプログラム  
代理人 上田 邦生  
代理人 藤田 考晴  

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