ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L |
---|---|
管理番号 | 1292972 |
審判番号 | 不服2013-21141 |
総通号数 | 180 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-12-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-10-30 |
確定日 | 2014-10-16 |
事件の表示 | 特願2010-267859号「フォトレジストの除去方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 6月21日出願公開、特開2012-119491号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成22年11月30日の出願であって、平成25年7月5日付けで手続補正がなされたが、同年7月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年10月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、請求と同時に同時に手続補正がなされ、その後、平成26年1月8日付けで、審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、同年3月17日付けで回答書が提出されたものである。 2.平成25年10月30日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成25年10月30日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「基体表面に形成されたフォトレジストを、式(1) p=Hx・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1) (但し、式中、pは気相内のオゾンの分圧、HはHenry定数、xは溶液中のオゾンの濃度(モル分率)を、それぞれ表す) および式(2) H=3.842×10^(7)[OH^(-)]^(0.035exp(-2428/T))・・・(2) (但し、式中、OH-は水酸イオンの濃度、Tは液温を表し、Hは前記と同じ意味を表す) によって算出される飽和濃度であって、式(2)における液温が70℃であるときの飽和濃度を越える濃度のオゾンの過飽和水溶液で除去する除去操作を行うことを特徴とするフォトレジストの除去方法。」 と補正された。 本件補正は、平成25年7月5日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1を引用する請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項である「オゾンの飽和濃度」について、「式(2)における液温が70℃であるときの飽和濃度」に限定する補正を含むものであるから、この補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反しないか)について検討する。 (2)引用例 本願の出願前に頒布された刊行物である特開2004-31972号公報(以下「引用例」という。)には、以下の技術事項が記載されている。(下線は当審で付した。) 記載事項ア 「【請求項1】 半導体ウエハをオゾン水により洗浄する洗浄方法において、オゾン水を昇温して洗浄槽に供給し、該供給されたオゾン水を用いて洗浄することを特徴とする半導体ウエハのオゾン水洗浄方法。 【請求項2】 前記オゾン水は20?70℃に昇温されることを特徴とする請求項1記載の半導体ウエハのオゾン水洗浄方法。」 記載事項イ 「【0011】 本発明は、上記状況に鑑みて、半導体ウエハからのレジストの除去時間が短縮され、効率的な洗浄を行なうことができる半導体ウエハのオゾン水洗浄方法を提供することを目的とする。」 記載事項ウ 「【0028】 【発明の実施の形態】 以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。 【0029】 図1は本発明の第1実施例を示す半導体ウエハのオゾン(O_(3) )水洗浄システムの模式図である。 【0030】 この図に示すように、O_(3) 水生成装置6には、冷却装置7を通して純水ライン8が接続され、また、O_(3) ガスを生成するための酸素(O_(2) )ガスライン9が接続されている。そのO_(3) 水生成装置6にはオゾン水ライン4が接続され、オゾン水ライン4には、途中ヒータ5が接続されている。オゾン水ライン4の出口にはオゾン水拡散器3が設けられ、このオゾン水拡散器3は洗浄槽2の底部に設けられている。 【0031】 そこで、まず、純水ライン8から導入される純水は冷却装置7により3℃から7℃まで冷却される。冷却された純水はO_(3) 水生成装置6にO_(2) ガスライン9を介して導入されるO_(2) ガスと混合されることにより、O_(3) 水が生成される。生成されたO_(3) 水は温度が低いため、50から100ppmとO_(3) 濃度が高くなる。そのO_(3) 水はヒータ5を通して20℃から70℃程度まで昇温される。昇温されたO_(3) 水はオゾン水拡散器3を通して洗浄槽2に供給される。 【0032】 このように第1実施例によれば、供給されたO_(3) 水は温度が高いため、過飽和状態となっており、洗浄槽2に導入された時に常圧となるので急激な分解が起こる。このような状態の洗浄槽2にレジストのついた半導体ウエハ1を投入すると、レジストとO_(3) が急激に反応を起こす。そのため、レジストの除去時間が短縮され現状の生産量と同程度にすることが可能となる。また、O_(3) 水を直接昇温するため構造がシンプルである。」 上記記載事項アないしウの記載内容からして、引用例には、 「O_(3)水はヒータを通して70℃に昇温され、昇温されたO_(3)水はオゾン水拡散器を通して洗浄槽に供給され、供給されたO_(3)水は温度が高いため、過飽和状態となっており、このような状態の洗浄槽にレジストのついた半導体ウエハを投入すると、レジストとO_(3)が急激に反応を起こすため、半導体ウエハからのレジストの除去時間が短縮され、効率的な洗浄を行なうことができる半導体ウエハのオゾン水洗浄方法。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 (3)対比 本願補正発明と引用発明を対比する。 (a)引用発明の「半導体ウエハ」に「ついた」「レジスト」は、本願補正発明の「基体表面に形成されたフォトレジスト」に相当する。そうすると、引用発明の「昇温されたO_(3)水はオゾン水拡散器を通して洗浄槽に供給され、」「洗浄槽にレジストのついた半導体ウエハを投入すると、レジストとO_(3)が急激に反応を起こすため、半導体ウエハからのレジストの除去時間が短縮され、効率的な洗浄を行なうことができる」ことは、本願補正発明の「基体表面に形成されたフォトレジストを」「除去する除去操作を行う」ことに相当する。 (b)引用発明の「ヒータを通して70℃に昇温され」「温度が高いため、過飽和状態となって」いる「O_(3)水」は、本願補正発明の「液温が70℃であるときの飽和濃度を越える濃度のオゾンの過飽和水溶液」に相当する。 (c)引用発明の「半導体ウエハのオゾン水洗浄方法」は、本願補正発明の「フォトレジストの除去方法」に相当する。 上記(a)ないし(c)に記載したことからして、本願補正発明と引用発明は、 「基体表面に形成されたフォトレジストを、液温が70℃であるときの飽和濃度を越える濃度のオゾンの過飽和水溶液で除去する除去操作を行うフォトレジストの除去方法。」 である点で一致し、次の点で相違する。 相違点 本願補正発明は、式(1)および式(2)によって算出される飽和濃度であって、式(2)における液温が70℃であるときの飽和濃度を越える濃度のオゾンの過飽和水溶液で除去する除去操作を行うものであるのに対し、引用発明では、そのようなオゾンの過飽和水溶液で除去する除去操作を行うものであるか否かが不明である点。 (4)当審の判断 上記相違点について検討する。 本願補正発明の式(1)および式(2)は、ヘンリーの法則という広く周知な式であって、一般に、過飽和水溶液とは、ヘンリーの法則で定められる飽和濃度を越える濃度を有する水溶液と認められるから、引用発明の「70℃に昇温され」「過飽和状態となって」いる「O_(3)水」は、式(1)および式(2)によって算出され、式(2)における液温が70℃であるときの飽和濃度を越える濃度となっているものと認められる。そうすると、上記相違点は実質的な相違点とはいえない。 したがって、本願補正発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成25年7月5日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「基体表面に形成されたフォトレジストを、オゾンの過飽和水溶液を用いて除去する除去操作を行うことを特徴とするフォトレジストの除去方法。」 4.引用例 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2004-207515号公報(以下「引用例1」という。)には、以下の技術事項が記載されている。(下線は当審で付した。) 記載事項ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、高い効率で基板表面のレジストを除去することができるレジスト除去装置及びレジスト除去方法に関する。」 記載事項イ 「【0019】 【発明の実施の形態】 以下、本発明を実施の形態に則して説明する。 図2は、本発明のレジスト除去装置の1実施態様を示す概略図である。 図2に示す態様のレジスト除去装置は、オゾン発生器4、オゾンガス検出器5、オゾン溶解モジュール6、オゾン水濃度検出器7、反応部8、及び、ポンプ9から構成されている。 【0020】 オゾン発生器4では、オゾンガスが生成される。オゾン発生器4としては特に限定されず、公知のオゾン発生器を用いることができる。オゾン発生器4で生成されたオゾンガスの濃度はオゾンガス検出器5により測定・監視される。オゾンガス検出器5により測定されたオゾンガス濃度の値がオゾン発生器4にフィードバックされオゾン発生器4で生成されるオゾンガスの濃度が随時調整される。 【0021】 オゾン発生器4で生成したオゾンガスは、オゾン溶解モジュール6において水に溶解される。 オゾン溶解モジュール6は、非多孔性膜からなるガス透過膜が収容されているものが好ましい。このようなオゾン溶解モジュールを用いれば、一旦レジスト除去に用いたオゾン水を再度循環させて利用しても目詰まりが起こることがない。 オゾン溶解モジュール6において生成したオゾン水は、オゾン水流出口61から往路管10に排出されてオゾン水濃度検出器7に送られ、上記オゾン水の溶存オゾンガス濃度が監視・管理される。 【0022】 得られたオゾン水は、往路管10を通ってオゾン水流入口82から反応部8の内部に送られ、この反応部8において基板表面のレジストを除去するために用いられる。なお、反応部8については、後で詳述する。 また、反応部8は、紫外線を照射する手段が付加されていてもよい。基板表面のレジストを除去する際、紫外線を照射することにより、オゾンの分解速度が促進され、それに伴いレジストの除去効果を上げることができる。従って、オゾン水と紫外線照射とを併用することによって、より高いレジスト除去効果を得ることができる。 上記紫外線を照射する手段としては特に限定されず、例えば、UVランプ等が挙げられる。照射される紫外線の波長は、オゾンが吸収する254nm近辺であることが好ましい。 【0023】 本発明のレジスト除去装置においては、生成したオゾン水を循環させて用いることが好ましい。オゾン水を循環させて用いることにより、必要なオゾン水量を節約できることに加え、より高い濃度のオゾン水を容易に得ることができる。 上記オゾン水を循環させるには、例えば、反応部8のオゾン水流出口81から復路管11に排出されたオゾン水を、ポンプ9を用いてオゾン溶解モジュール6のオゾン水流入口62に送り込めばよい。 【0024】 また、本発明のレジスト除去装置は、オゾン水を加熱する手段を有することが好ましい。レジスト除去は、レジストとオゾンとの化学反応によりなされるものであることから、温度をかけることによってレジスト除去速度を高めることができる。 更に、本発明のレジスト除去装置は、装置内を加圧する手段を有することが好ましい。装置内を加圧することにより、過飽和のオゾン水を生成させることができ、このような高濃度のオゾン水を用いることにより、更に高い効率でレジスト除去を行うことができる。」 上記記載事項ア、イの記載内容からして、引用例1には、 「基板表面のレジストを過飽和のオゾン水を用いることにより高い効率でレジスト除去を行うことができるレジスト除去方法。」の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 5.対比 本願発明と引用発明1を対比する。 (a)引用発明1の「基板表面のレジスト」は、本願発明の「基体表面に形成されたフォトレジスト」に相当する。 (b)引用発明1の「過飽和のオゾン水を用いることにより高い効率でレジスト除去を行うこと」は、本願発明の「オゾンの過飽和水溶液を用いて除去する除去操作を行うこと」に相当する。 (c)引用発明1の「レジスト除去方法」は、本願発明の「フォトレジストの除去方法」に相当する。 上記(a)ないし(c)に記載したことからして、本願発明と引用発明1は、 「基体表面に形成されたフォトレジストを、オゾンの過飽和水溶液を用いて除去する除去操作を行うフォトレジストの除去方法。」 である点で一致し、両者の間に相違点はない。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明1であるから、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-08-11 |
結審通知日 | 2014-08-19 |
審決日 | 2014-09-03 |
出願番号 | 特願2010-267859(P2010-267859) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H01L)
P 1 8・ 113- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮川 数正 |
特許庁審判長 |
伊藤 昌哉 |
特許庁審判官 |
土屋 知久 北川 清伸 |
発明の名称 | フォトレジストの除去方法 |
代理人 | 西教 圭一郎 |