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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B64C |
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管理番号 | 1292997 |
審判番号 | 不服2012-22620 |
総通号数 | 180 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-12-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-11-15 |
確定日 | 2014-10-15 |
事件の表示 | 特願2008-543523号「導電ガスケット装置および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 6月 7日国際公開、WO2007/064974、平成21年 5月 7日国内公表、特表2009-518214号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、2006年12月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2005年12月2日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成24年7月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出された。その後、平成25年7月12日付けで当審において拒絶理由が通知され、平成26年1月14日付けで意見書が提出されたものである。 2.本願発明 本願の請求項1?8に係る発明は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、平成24年11月15日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。 「【請求項1】 外側窓と、内側窓と、窓と航空機のフレームの間をシールするガスケットと、から構成される航空機の窓であって、 導電媒体を含むガスケットは、導電層を含む内側窓と、航空機のフレームとの間に容量結合をもたらし、 ガスケットは、当該窓が共振する前に、窓から窓用鍛造品に電磁エネルギを放出するように、ガスケットが構成されるような、誘電定数、誘電率、および/または抵抗を有する材料を含み、 当該窓は、エネルギが所定の最大エネルギ量を超えるまで電磁エネルギを吸収するように構成され、 当該容量結合により、ガスケットが、1GHzから2GHzまでの電磁エネルギを航空機のフレームに放散させる航空機の窓。」 3.刊行物記載の発明及び事項 (1)刊行物1 当審の拒絶理由で引用した本願の優先日前に国内で頒布された刊行物である特表2003-523911号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (ア) 「【0001】 本発明は、少なくとも1つのガス層、中でも空気層を有する絶縁用多重ガラス、特に輸送車両の窓、さらに特定するならば、航空機の窓に関する。 【0002】 航空機の胴体は金属で覆われており、その金属製の覆いが電磁シールド機能を保証している。同様に、航空機の風防は、例えば、除氷のために用いる透明な導電層を組み込むことによって金属化されている。このようにして、電磁場によって乱される可能性のある航空機の機器類を絶縁している。 【0003】 しかし、胴体の電磁シールドには“電磁的ないくつもの穴”がある。それが窓である。実際、窓は、一般に、間に空気層を挟んだポリ(メタクリル酸メチル)の二重ガラスで構成されており、電磁シールドの機能を果たしていない。 【0004】 ところで、乗客が航空機で移動している間に使用する携帯電話およびポータブル・コンピュータが出現したことに伴い、航空機の電磁シールドに穴がなく連続的であることを保証する必要が感じられるようになっている。実際、携帯式のこれら機器類が混乱を引き起こし、乗務員と管制塔の間の連絡に支障をきたす可能性がある。そこで今や、安全を確保するという理由で、連続的な電磁シールドを用意することにより航空機の内部を完全に絶縁することが不可避になっている。 【0005】 本発明は、この問題に対する1つの解決法を提供する。本発明によれば、そのために、窓のいわゆるガラス部分に少なくとも1つの薄い導電層を組み込み、窓の気密性周辺接合部を導電性にすることが想定されている。 【0006】 したがって本発明がまず最初に目的とするのは、絶縁用多重ガラスのガラス部分が、間に少なくとも1つのガス層、一般には空気層を有する互いに重なった少なくとも2枚の透明で機械的に丈夫なスラブを備え、これらスラブは周辺部が気密性接合部の中に組み込まれており、この接合部によって、絶縁用多重ガラスが、電磁場によって乱される可能性のある機器類を含む空間を囲い込むための、電磁シールド機能を有する構造の中にはめ込まれるようになっている絶縁用多重ガラスにおいて、上記ガラス部分が少なくとも1つの薄くて透明で連続的な導電層を備え、上記接合部は少なくとも一部が導電性を有していて、薄くて透明で連続的な上記導電層と上記構造の接続を保証しており、薄くて透明で連続的な上記導電層の導電性および上記接合部の導電性は、上記構造の電磁シールドの連続性を保証するよう選択されていることを特徴とする絶縁用多重ガラスである。」(段落【0001】?【0006】) (イ) 「【0021】 本発明によれば、絶縁用多重ガラスのいわゆるガラス部分を取り付ける気密性接合部は、エラストマーで構成されている。このエラストマーは、少なくとも一部を導電性にしたシリコーンまたはフルオロシリコーンからなることが好ましい。そのためには、特に銀、銅、アルミニウム、ニッケル、銀/銅、銀/アルミニウム、銀/ガラスなどの粒子またはファイバー、あるいはカーボンブラックからなる導電体をエラストマー内部に組み込む。この導電性エラストマーは、体積抵抗の値が特に2×10^(-5)?10^(-3)Ωm(0.002?0.1Ωcm)となっている。薄い導電層は、接合部の導電部分と接触し、その導電部分が、電磁シールドを実現しようとする構造と接触することになる。接合部を構成するエラストマーが、想定される用途において要求される性質、すなわち要求されるショア硬度A、剥離に対する抵抗力、圧縮による残留変形、破断伸びなどをすべて備えていることと、導電体の組み込みによってこれらの性質が実質的に変化してはならないことは当然である。特に接合部のショア硬度Aは30?80であることが望ましい。」(段落【0021】) (ウ) 「【0028】 図1と図2を参照すると、航空機の窓の全体が参照符号1で示されていることがわかる。この窓の全体の形は、角が丸くなった長方形である。 【0029】 窓1は、一般に、板状のポリ(メタクリル酸メチル)からなる2枚のスラブ(2、3)を備えている。その2枚のスラブは対向した状態で互いに離して配置されており、エラストマーからなる気密性周辺接合部4によってその状態が維持されている。この接合部により、窓が航空機の金属製胴体にはめ込まれることになる。 【0030】 外側スラブ2は比較的厚い板の形状であり、その縁部2aは面取りされている。内側スラブ3は、スラブ2よりも薄い板で構成されている。さらに、2枚のスラブ2と3は、一般に、内側に向かって凸になるように膨らんでいる。」(段落【0028】?【0030】) (エ) 「【0036】 今説明した窓1は、航空機の胴体の電磁シールドの連続性を保証するための電磁シールドを有するという点が特別である。この電磁シールドを得るため、一方では、ITOからなる透明で薄い導電層5を約400nmの厚さで面全体にわたって堆積させて表面抵抗を15Ω/□にし、他方では、接合部4としてこの明細書の冒頭に述べた特性に対応する導電性エラストマーを選択する。導電層5と接合部4は、側部4bの側面の1つによって周辺部の全体にわたって接触する。 【0037】 導電層5はどの面(1)?(4)に堆積させることもできるとはいえ、内側面に堆積させるのが好ましい。さらに好ましいのは導電層を面(3)に堆積させることである。というのもスラブ3はスラブ2よりも単純な形状をしており、製造するのがより簡単だからである。さらに、電磁シールドを実現するにあたって航空機の構造体への接続もより容易である。」(段落【0036】?【0037】。当審註、上記の段落【0037】中の「面」の後の(1)等は○の中に1等である。以下同様。) (オ) 【図2】から、面(3)は、内側スラブ3の外側スラブ2に対向する面であり、内側スラブに導電層が堆積されていることが看取しうる。 上記の記載事項及び【図1】、【図2】の開示内容から見て、刊行物1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 〔引用発明〕 「外側スラブ2と、内側スラブ3と、窓1を航空機の金属製胴体にはめ込む気密性周辺接合部4と、から構成される航空機の窓1であって、 カーボンブラック、アルミニウム、銀からなる導電体を内部に組み込んだエラストマーで構成された気密性周辺接合部4は、導電層5が堆積した内側スラブ3を、航空機の金属製胴体へ接続し、 航空機の構造体による電磁シールドとの連続性を保証した航空機の窓。」 (2)刊行物2 同じく、当審の拒絶理由で引用した本願の優先日前に国内で頒布された刊行物である再公表特許2003/032702号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (カ) 「【発明の詳細な説明】 <技術分野> 本発明は、可視光を透過させる一方、電磁波の透過を所定のレベル以下にまで低減する電磁波シールド方法及び電磁波シールド窓、電磁波シールド窓を備えた製造装置、電磁波シールド窓を備えた輸送機器、並びに電磁波シールド窓を備えた建築構造物に関する。」(第3頁第13?17行) (キ) 「図1は本発明に係る電磁波シールド窓の第1実施形態を示す要部拡大断面図、図2は導電性シールド層にメッシュ材が用いられた場合のシールド特性を示すグラフ、図3は導電性シールド層にフィルム材が用いられた場合のシールド特性を示すグラフである。 本実施形態の電磁波シールド窓31は、可視光に対して透過性を有するシート状の導電性シールド材(導電性シールド層)33と、この導電性シールド材33を表裏面から挟み、絶縁性を有し且つ可視光に対して透過性を有する一対の窓面材35a、35bと、この一対の窓面材35a、35bの周縁を全周に亘って所定の対向幅を有して包囲しつつ断面U字状に貼着される導電性接着テープ37と、この導電性接着テープ37の外方に密着して一対の窓面材35a、35bの周縁を保持する断面コ字状に形成された導電性の窓枠材39とからなる。ここで、窓枠材39は不図示のアース回路等に接続された金属製の枠材であって、表面は酸化膜や塗装膜が形成されて絶縁されている。なお、導電性接着テープ37の接着面には絶縁性接着剤36が塗布されおり、導電性シールド材33と導電性接着テープ37とは非導通状態にされる。 この電磁波シールド窓31は、導電性シールド材33に対して所定面積の導電性接着テープ37が窓面材35a、35bを介して平行に対向配置され、導電性シールド材33と導電性接着テープ37との間が絶縁層としての絶縁性接着剤36を介して結合されている。すると、導電性シールド材33と導電性接着テープ37との間には、所定の静電容量を有したコンデンサが形成され、静電容量性結合が形成される。従って、導電性シールド材33は、例えば1MHz?300MHz程度の高周波成分に対しては、コンデンサ効果によって導電性接着テープ37との導通が得られ、導電性シールド材33と導電性接着テープ37とが疑似的に電気的接続された状態となる。また、導電性接着テープ37と窓枠材39との間には、窓枠材39表面の酸化膜や塗装膜が介在し、これらの膜が誘電体として機能することで、上記同様に静電容量性結合を形成している。 このため、電磁波シールド窓31は、高周波成分に対しては導電性シールド材33とアース回路とが接続された接地回路が構成されることになる。」(第7頁第3?27行) (ク) 「このように、本発明の電磁波シールド窓31によれば、導電性シールド材(導電性シールド層)33と窓枠材39とが非導通状態でありながら、高周波成分に対しては、コンデンサ効果によって導通接続に近いシールド効果が得られる。」(第8頁第15?17行) 上記の記載事項及び図1の開示内容からみて、刊行物2には次の事項が記載(以下、「刊行物2記載の事項」という。)されていると認められる。 〔刊行物2記載の事項〕 「電磁波シールド窓に関して、一対の窓面材35a、35bにより挟みこんだ導電性シールド材33と導電性接着テープ37とを、絶縁性接着材36を介して結合することで静電容量性結合を形成し、導電性接着テープ37と窓枠材39との間に、窓枠材39表面の酸化膜や塗装膜が介在することで静電容量性結合を形成し、電磁波シールド窓31は、高周波成分に対しては導電性シールド材33と窓枠材39のアース回路とが接続された接地回路が構成されること。」 (3)刊行物3 同じく、当審の拒絶理由で引用した本願の優先日前に国内で頒布された刊行物である特開平10-280823号公報(以下、「刊行物3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (ケ) 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、電磁遮蔽材を用いて床や天井、壁、窓開口部に電磁遮蔽層を形成し電磁遮蔽空間を構成する電磁遮蔽ビルの技術分野に属する。」(段落【0001】) (コ) 「【0005】 【発明が解決しようとする課題】ところで、携帯電話の普及により、今後周波数が不足することが想定される。現在利用されているPHSについて説明すると、同一範囲、同一時刻ではチャンネルの制限から30?50台程度が最大とされ、このことは通常のオフィスでは電話利用率15%を考慮すると、同一建物内では300台程度しか利用できないということになる。さらに、隣接する建物で使う同一システムの影響を考慮すると、上記台数は更に少なくなると想定される。 【0006】高性能の電磁遮蔽を達成する場合、その性能を大きく左右する部位は窓開口部であるが、現状の電磁遮蔽ガラスは高価であり、低コストの工法が求められている。一方、今後のビルは、ガラスの色調、省エネルギーの観点から複層ガラスの採用が多くなることが想定される。この複層ガラスの断熱複層ガラスは、ガラスの内面に金属膜を形成しており、この金属膜を電磁遮蔽に利用することできれば、低コストの電磁遮蔽が可能となる。しかしながら、断熱複層ガラスの場合、サッシ枠と金属膜間が電気的に接続されていないので、このままでは電磁遮蔽ができないと考えるのが一般的である。 【0007】本発明は、上記問題を解決するものであって、既存の断熱複層ガラスを利用して低コストで高性能の電磁遮蔽を達成することができる電磁遮蔽窓を提供することを目的とする。」(段落【0005】?【0007】) (サ) 「【0010】図2(A)において、電磁遮蔽窓4は、サッシ枠7と、サッシ枠7内の周囲に複数個設置されたセッティングブロック9と、このセッティングブロック9に嵌め込まれた複層ガラス10と、複層ガラス10bの内面に設けられた金属膜10aと、複層ガラス10の一方とサッシ枠7の間に配設されたバックアップ材11と、複層ガラス10の他方とサッシ枠7の間に配設された導電性ガスケット12と、サッシ枠7と複層ガラス10間に充填されるシール材13とから構成されている。 【0011】上記構成の窓4においては、サッシ枠7と金属膜10a間が電気的に接続されていない。しかし、図2(B)のコンデンサモデルで示すサッシ枠7と金属膜10a間の静電容量Cを計算すると、 C=εO・εS・S/d となり、サッシ枠7と金属膜10a間の抵抗Rは、 R=d/2πf・εO・εS・S となる。ここで、 d :サッシ枠7と金属膜10a間の距離 S :サッシ枠7と金属膜10a間の面積 εO:誘電率(8.854×10^(12)F/m) εS:ガラス10b及び導電性ガスケット12合成の比誘電率(ほぼ5) f :PHSの周波数(1.9GHz) である。 【0012】これを実際のサッシ枠及びガラスの断面にあてはめると上記抵抗Rが約1.9GHz帯の周波数で数Ω(3?5Ω)になり、この抵抗値を遮蔽性能に置き換えると20?25dBに対応し、このモデルでの実験結果においても同程度の性能が測定されている。」(段落【0010】?【0012】) 上記の記載事項及び【図2】の記載からみて、刊行物3には次の事項(以下、「刊行物3記載の事項」という。)が記載されていると認められる。 〔刊行物3記載の事項〕 「電磁遮蔽窓に関して、複層ガラス10の内の一方のガラス10bの内面に金属膜10aを設け、同じガラス10bの外面とサッシ枠7との間に導電性ガスケット12を配設することで、金属膜10aとサッシ枠7との間に、ガラス10bと導電性ガスケット12の合成した比誘電率からなる静電容量を形成し、高周波の遮蔽を行うこと。」 4.対比、判断 本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「外側スラブ2」、「内側スラブ3」、「窓1」、「カーボンブラック、アルミニウム、銀からなる導電体」、「導電層5」は、前者の「外側窓」、「内側窓」、「窓」、「導電媒体」、「導電層」に相当し、後者の「航空機の金属製胴体」及び「航空機の構造体」は前者の「航空機のフレーム」に相当し、後者の「導電層5が堆積した内側スラブ3」は前者の「導電層を含む内側窓」に相当する。 後者の「窓1を航空機の金属製胴体にはめ込む気密性周辺接合部4」及び「カーボンブラック、アルミニウム、銀からなる導電体を内部に組み込んだエラストマーで構成された気密性周辺接合部4」は、その機能からみて、前者の「窓と航空機のフレームの間をシールするガスケット」及び「導電媒体を含むガスケット」に相当する。 後者の気密性周辺接合部4が「導電層5が堆積した内側スラブ3を、航空機の金属製胴体へ接続」することと、前者のガスケットが「導電層を含む内側窓と、航空機のフレームとの間に容量結合をもたら」すこととは、「導電層を含む内側窓と、航空機のフレームとの間を結合」する限りにおいて一致する。 してみると、両者の一致点、相違点は次のとおりである。 〔一致点〕 外側窓と、内側窓と、窓と航空機のフレームの間をシールするガスケットと、から構成される航空機の窓であって、 導電媒体を含むガスケットは、導電層を含む内側窓と、航空機のフレームとの間を結合する、 航空機の窓。」 〔相違点〕 本願発明は、ガスケットが「内側窓と、航空機のフレームとの間に容量結合をもたら」す構成を有し、「ガスケットは、当該窓が共振する前に、窓から窓用鍛造品に電磁エネルギを放出するように、ガスケットが構成されるような、誘電定数、誘電率、および/または抵抗を有する材料を含み、当該窓は、エネルギが所定の最大エネルギ量を超えるまで電磁エネルギを吸収するように構成され、当該容量結合により、ガスケットが、1GHzから2GHzまでの電磁エネルギを航空機のフレームに放散させる」構成を有しているのに対して、引用発明は、そのように構成されているのか明らかでない点。 上記相違点について検討する。 引用発明の気密性周辺接合部は、内側スラブを航空機の金属製胴体へ接続し、航空機の構造体による電磁シールドとの連続性を保証するものであり、また、携帯電話やポータブル・コンピュータから発生する電磁波を遮蔽の対象としている(上記3.(1)(ア)を参照)。携帯電話等の電磁波の周波数として1?2GHzは一般的な数値範囲であるので、引用発明においても、1?2GHzの高周波に対してスラブと金属製胴体との間で連続したシールドとなるように気密性周辺接合部を構成することは、当業者が当然に考慮しうることといえる。 そして、窓の電磁波遮蔽構造に関して、複層ガラスの一方のガラスに形成した導電層と窓枠との間に容量結合を形成し、高周波の電磁波が導電層と窓枠との間を導通するようにし、ガラスを通過しようとする電磁波を遮蔽することは、刊行物2、3の各々に記載されている(上記、3.(2)、(3)を参照)。 してみると、引用発明において、導電層を有したスラブと金属製胴体との間を高周波が導通するように、両者の間にある気密性周辺接合部により容量結合する構成とすることは、刊行物2、3の各々に記載の事項に基づいて当業者が容易に想到し得ることといえる。その際、気密性周辺接合部の誘電定数、誘電率等々は、スラブから金属製胴体へと導く対象とする電磁波の周波数に応じて適宜に設定しうる事項と認められ、当該周波数帯で共振が発生しないように設定することは、当業者が当然に考慮しうることと認められる。 また、航空機の窓の枠を鍛造成形することは、周知の事項であり(例えば、特開2005-153680号公報の段落【0002】、特開平8-243677号公報の段落【0004】を参照)、引用発明の航空機の窓を、鍛造した窓枠を介して胴体に取り付けることは、当業者が適宜になし得ることといえる。 以上を総合的に勘案すると、引用発明を、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、刊行物2、3各々に記載の事項及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に想到し得ることといえる。 そして、本願発明の奏する作用及び効果を検討しても、引用発明、刊行物2、3各々に記載の事項及び周知の事項から予測できる程度のものであって、格別のものとはいえない。 したがって、本願発明は、引用発明及び刊行物2、3各々に記載の事項及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、引用発明、刊行物2、3各々に記載の事項及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-05-13 |
結審通知日 | 2014-05-20 |
審決日 | 2014-06-02 |
出願番号 | 特願2008-543523(P2008-543523) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(B64C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 沼田 規好 |
特許庁審判長 |
大熊 雄治 |
特許庁審判官 |
山口 直 平田 信勝 |
発明の名称 | 導電ガスケット装置および方法 |
代理人 | 園田 吉隆 |
代理人 | 小林 義教 |