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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W |
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管理番号 | 1293011 |
審判番号 | 不服2013-7396 |
総通号数 | 180 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-12-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-04-22 |
確定日 | 2014-10-14 |
事件の表示 | 特願2010-512683「無線アクセス網での半永久的割り当てとダイナミック割り当てとの衝突を回避する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年12月24日国際公開、WO2008/155372、平成22年 9月 9日国内公表、特表2010-530691〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、2008年6月19日(優先権主張2007年6月20日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成24年2月16日付けの拒絶理由の通知に対し、同年8月22日付けで手続補正がなされ、同年12月19日付けで拒絶査定され、これに対し、平成25年4月22日に審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされ、同年6月5日付けで手続補正書(審判請求の理由補充)の提出がなされ、同年9月9日付けで当審から審尋を通知し、平成26年3月17日付けで回答書の提出がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項に係る発明は、平成25年4月22日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?19に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項12に係る発明は、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文の請求項23に係る発明に対して、上記手続補正書による、「制御チャネルを監視する監視ユニットと、」なる発明特定事項の付加及び項番の繰り上げが行われた発明であって、次のとおりのものである。 「【請求項12】 ノードからの再送要求を受信する受信ユニットと、 制御チャネルを監視する監視ユニットと、 該再送要求が所定の割り当てに衝突するか否かを判別する判別ユニットと、 優先ルールにしたがって所定の割り当てにおける第1の送信または再送信のうちいずれか一方に優先させる優先ユニットと、 前記第1の送信または前記再送信のうち優先された一方を送信する送信ユニットと を有することを特徴とする装置。」 ここで、請求項12に係る発明の発明特定事項である「該再送要求が所定の割り当てに衝突するか否かを判別する判別ユニット」に関し、「判別ユニット」が判別する事項について検討する。 「判別ユニット」に関して、国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)の翻訳文(以下、「本願翻訳文」という。)に、以下の事項が記載されている(下線は、当審が付与した。)。 ア.本願翻訳文の段落【0020】に、 「受信ユニット110は通信網の所定の送信時間においてユーザ装置からの再送要求を受信するように構成されている。判別ユニット120は所定の時間内で再送信と別の送信とが衝突する危険の有無を判別するように構成されている。無視ユニット130は判別ユニット120が衝突の危険の存在を判別した場合に再送要求を無視するように構成されている。通信網での負荷はノード100が再送信をスケジューリングできなくなる程度に高速である。ノード100は3GPPのeNB(エンハンストノードB)である。」 イ.本願翻訳文の段落【0026】に、 「図3には通信網においてアップリンク割り当てと半永久的割り当てとのダウンリンク衝突を回避する本発明のノード300のブロック図が示されている。ノード300は識別ユニット310,判別ユニット320,送信ユニット330,プロセッサ340およびメモリ350を含む。識別ユニット310はユーザ装置からの送信が不成功に終わったことを識別するように構成されている。判別ユニット320は所定の送信時間内で再送信があらかじめ定められたリソースに衝突する危険の有無を判別するように構成されている。送信ユニット330は、判別ユニット320が再送信とあらかじめ定められたリソースとの衝突を判別した場合にユーザ装置に対して再送要求でなく肯定応答を送信できるように構成されている。 」 また、「衝突」を判別している別の実施例として、本願翻訳文に、以下の事項が記載されている(下線は、当審が付与した。)。 ウ.本願翻訳文の段落【0033】に、 「図6には、所定の割り当てでの第1の送信または再送信のいずれかを優先させる方法のフローチャートが示されている。この実施例の方法は、図5のノード500によって実行され、ノードからの再送要求を受信するステップ600、この再送要求が所定の割り当てに衝突するか否かを判別するステップ610、優先ルールにしたがって所定の割り当てにおける第1の送信または再送信のいずれか一方を優先させるステップ620、および、第1の送信または再送信のうち優先された一方を送信するステップ630を有する。ここでは、優先ルールにより、第1の送信が再送信よりも優先される。また、別の実施例として、所定の割り当てでの第1の送信よりも再送信を優先する優先ルールを適用してもよい。 」 エ.図6中のステップ610の説明として、 「再送信が衝突するか否かを判別する 」 さらに、本願発明における課題及び期待する作用に関して、本願翻訳文に、以下の事項が記載されている(下線は、当審が付与した。)。 オ.本願翻訳文の段落【0005】に、 「前述したように、E‐UTRANでは、ダイナミック割り当てとHARQの第1の送信に対してあらかじめ定義された割り当てとの2つのタイプの割り当てが可能である。しかし、この2つのタイプの割り当てによって、HARQの第1の送信に対してあらかじめ定義されたリソースと再送信に割り当てられたリソースとの衝突が発生することがある。この衝突は、2つの送信が同じTTI内で行われるとき、つまり、ダイナミック割り当てと次の定義された割り当てとが同じ時間内に続けて行われるときに発生する。通信網ではこうした衝突が回避されることが望ましい。 」 カ.本願翻訳文の段落【0017】に、 「前述したように、E‐UTRANなどの無線アクセス網では、ダイナミック割り当てとHARQの第1の送信に対してあらかじめ定義された割り当てとの2つのタイプの割り当てが可能である。しかし、同じユーザ装置でこの2つのタイプの割り当てを行うことによって、HARQの第1の送信に対してあらかじめ定義されたリソースと再送信に割り当てられたリソースとの衝突が起こることがある。本発明では、2つの送信が同じ送信時間内に行われる場合に発生しうる衝突を回避するための有利な実施例が提案される。特に、ダイナミック割り当てとあらかじめ定義された割り当てとの衝突が回避される。」 そして、 (1) 摘示事項オ及びカからみて、本願発明は、再送信リソースと他の送信リソースとの衝突を問題とし、これらの衝突の回避することを期待した発明であって、該課題を解決し、該期待を奏するためには、衝突の危険性の有無の判別は、再送信リソースと他の送信リソース同士との衝突の危険性の有無であると考えるのが妥当であること、 (2) 摘示事項ア及びイからみて、実施例として、衝突の危険性の有無を判別する「物」の構成、即ち、「判別ユニット」が判別する衝突の危険性の有無は、再送信と、別の送信又はあらかじめ定められたリソースとの衝突であること、 (3) 摘示事項ウでは、衝突の対象が「再送要求」となっているものの、該摘示事項は、「物」の発明を示す実施例に関する記載ではなく、「方法」の発明を示す実施例に関する記載であるとともに、該摘示事項に対応する図面の記載である摘示事項エでは、衝突の対象が「再送信」となっており、摘示事項ウと摘示事項エとの間で記載上の矛盾があり、いずれかの記載に瑕疵があるといわざるを得ず、上記(1)及び(2)を参酌すると、摘示事項ウの記載が誤っていると解するのが妥当であること、 などを総合的に考慮すると、 上記発明特定事項の「該再送要求」は、「該再送要求による再送信」を意味しており、上記発明特定事項は、「該再送要求による再送信が所定の割り当てに衝突するか否かを判別する判別ユニット」を実質的に意味しているといえる。 このため、請求項12に係る発明は、下記の発明(以下、「本願発明」という)であると判断するのが相当である。 「ノードからの再送要求を受信する受信ユニットと、 制御チャネルを監視する監視ユニットと、 該再送要求による再送信が所定の割り当てに衝突するか否かを判別する判別ユニットと、 優先ルールにしたがって所定の割り当てにおける第1の送信または再送信のうちいずれか一方に優先させる優先ユニットと、 前記第1の送信または前記再送信のうち優先された一方を送信する送信ユニットと を有することを特徴とする装置。」 3.引用文献 平成24年2月16日付け拒絶理由通知で引用された、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特表2007-517431号公報(以下、「引用文献」という)には、図面とともに、次の事項が記載されている(なお、下線は当審が付した。)。 ア.「【0001】 本発明は、送信エンティティから受信エンティティにデータチャネルを介してデータパケットを送信するハイブリッド自動再送要求(HARQ)方法に関する。本発明は、更に、HARQ方法で実行する移動局、基地局、無線ネットワーク制御装置および通信システムに関する。 」 イ.「【0061】 第1の実施の形態によると、本発明は、データチャネルを介して送信エンティティから受信エンティティにデータパケットを送信するハイブリッド自動再送要求(HARQ)方法を提供する。送信エンティティは、受信エンティティからフィードバックメッセージを受信することができる。フィードバックメッセージは、受信エンティティによるデータパケットの受信が成功したか否かを示すことができる。 【0062】 フィードバックメッセージが、データパケットの受信が成功していないことを示す場合、フィードバックメッセージを受信してから所定タイムスパン後に再送データパケットを受信エンティティに送信することができ、受信エンティティは先に受信したデータパケットとの再送データパケットの軟合成を実行することができる。提案されるHARQプロトコルが、ダウンリンク(基地局/ノードBから移動局/UE)にもアップリンク(移動局/UEから基地局/ノードB)にも用いられるよう適用可能であることに留意すべきである。 【0063】 再送データパケットは、送信時間間隔の始めに送信されてもよく、即ち、所定タイムスパンの持続時間はその終わりが送信時間間隔の始まりと一致するよう選択される。 【0064】 更に、所定タイムスパンは、フィードバックメッセージを処理するのに必要な処理時間以上となるよう選択されてもよい。従って、再送データを送る前にフィードバックメッセージの処理を実行できることが確実になる。 【0065】 更なる実施の形態によると、データ送信のエアインタフェースリソースを制御するスケジューリングエンティティは、エアインタフェース上で所定タイムスパン後に再送データパケットを送信するためのリソースを確保することができる。 【0066】 更に、本発明の別の実施の形態によると、送信エンティティは、送信エンティティに割り当てられたリソースが、送信時間間隔において所定タイムスパン後に再送データパケットを送信し同じ送信時間間隔において送信保留中の他のデータを送信するのに十分か否かを判定することができる。送信保留中データは、再送データパケットよりも高い送信優先度を有することができる。後者の場合でリソースが十分でないときは、送信保留中データを送信時間間隔で送信することができ、再送データパケットの送信を後の送信時間間隔に延期することができる。 」 ウ.「【0092】 ユーザ機器で否定応答を受信すると、誤ったデータパケットに対する再送データパケットが、所定タイムスパン後、即ち、否定応答の受信時間に対する所定の時点で送信される。図11には、E-DCHを用いる同期再送を伴うタイムアンドレート制御スケジューリングモードでのデータ送信が示される。否定応答を受信してから所定タイムスパン後(図中でTsyncと称される)に再送を送ることができる。ユーザ機器は、再送のスケジューリング要求を送信する必要がなく、ノードBから送信されるスケジューリング割り当てメッセージのスケジューリング関連制御チャネル(scheduling related control channel)を監視する必要もない。」 以上によれば、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「 E-DCHを用いる同期再送を伴うデータ送信が示され、 送信エンティティは、受信エンティティからフィードバックメッセージを受信することができ、 フィードバックメッセージは、受信エンティティによるデータパケットの受信が成功したか否かを示すことができ、 フィードバックメッセージが、データパケットの受信が成功していないことを示す場合、フィードバックメッセージを受信してから所定タイムスパン後に再送データパケットを受信エンティティに送信することができ、 受信エンティティは先に受信したデータパケットとの再送データパケットの軟合成を実行することができ、 送信エンティティは、送信エンティティに割り当てられたリソースが、送信時間間隔において所定タイムスパン後に再送データパケットを送信し同じ送信時間間隔において送信保留中の他のデータを送信するのに十分か否かを判定することができ、 リソースが十分でないときは、送信保留中データを送信時間間隔で送信することができ、再送データパケットの送信を後の送信時間間隔に延期することができる、 送信エンティティから受信エンティティにデータチャネルを介してデータパケットを送信するハイブリッド自動再送要求(HARQ)方法で実行する移動局、基地局、無線ネットワーク制御装置。」 4.対比 引用発明の「送信エンティティは、受信エンティティからフィードバックメッセージを受信することができ」るものであって、「フィードバックメッセージは、受信エンティティによるデータパケットの受信が成功したか否かを示す」ものであり、「フィードバックメッセージが、データパケットの受信が成功していないことを示す場合、フィードバックメッセージを受信してから所定タイムスパン後に再送データパケットを受信エンティティに送信する」ものである。 該フィードバックメッセージは再送要求を含むメッセージであるといい得るとともに、引用発明の「送信エンティティ」は、「フィードバックメッセージを受信することができ」るエンティティであるから、「受信ユニット」といい得、また、引用発明の「受信エンティティ」は、データパケットや再送データを受信し、フィードバックメッセージを送信するエンティティであるから、「ノード」といい得る。 してみると、引用発明は、「ノードからの再送要求を受信する受信ユニット」を有しているといえる。 引用発明は、「E-DCHを用いる同期再送を伴うデータ送信」を行っているとともに、「受信エンティティからフィードバックメッセージを受信」している。 そして、「E-DCHを用いる同期再送を伴うデータ送信」を行っていることから、E-DCHのリソース割り当てが行われていると理解するのが一般的であって、引用発明は、E-DCHのリソース割り当てのシグナリングに用いられるL1/L2制御チャネルを、E-DCHのリソース割り当てのシグナリングを受信するために監視していると理解するの一般的である。 また、「受信エンティティからフィードバックメッセージを受信」していることから、引用発明は、「E-DCH」を用いたデータ送信に対して返送される肯定応答や再送要求というフィードバックメッセージの送信に用いられるE-HICHを、フィードバックメッセージを受信するために監視していると理解するのが一般的である。 してみると、引用発明は、「制御チャネルを監視する監視ユニット」を有しているといえる。 引用発明は、「送信エンティティは、送信エンティティに割り当てられたリソースが、送信時間間隔において所定タイムスパン後に再送データパケットを送信し同じ送信時間間隔において送信保留中の他のデータを送信するのに十分か否かを判定することができ、リソースが十分でないときは、送信保留中データを送信時間間隔で送信することができ、再送データパケットの送信を後の送信時間間隔に延期する」ものである。 引用発明の「送信保留中データ」の送信は、E-DCHを用いた送信であるから、「所定の割り当てにおける第1の送信」といい得ると共に、引用発明の「再送データパケットの送信」は、「再送信」といい得る。 そして、引用発明では、「リソースが十分でないときは、送信保留中データを送信時間間隔で送信することができ、再送データパケットの送信を後の送信時間間隔に延期する」ことから、「送信保留中データ」の送信を「再送データパケットの送信」よりも優先させるという優先ルールにしたがい、「送信保留中データ」の送信を優先させているといい得る。 してみると、引用発明は、「優先ルールにしたがって所定の割り当てにおける第1の送信または再送信のうちいずれか一方に優先させる優先ユニット」及び「前記第1の送信または前記再送信のうち優先された一方を送信する送信ユニット」を有しているといえる。 引用発明は、「移動局、基地局、無線ネットワーク制御装置」であるから、「装置」であるといえる。 以上から、本願発明と引用発明は、次の点で一致、相違する。 <一致点> ノードからの再送要求を受信する受信ユニットと、 制御チャネルを監視する監視ユニットと、 優先ルールにしたがって所定の割り当てにおける第1の送信または再送信のうちいずれか一方に優先させる優先ユニットと、 前記第1の送信または前記再送信のうち優先された一方を送信する送信ユニットと を有することを特徴とする装置。 <相違点> 本願発明は、「該再送要求による再送信が所定の割り当てに衝突するか否かを判別する判別ユニット」を有しているのに対して、引用発明は、送信エンティティに割り当てられたリソースが、送信時間間隔において所定タイムスパン後に再送データパケットを送信し同じ送信時間間隔において送信保留中の他のデータを送信するのに十分か否かを判定するエンティティを有している点。 5.当審の判断 本願発明と引用発明との相違点について、以下で検討する。 引用発明では、「送信エンティティに割り当てられたリソースが、送信時間間隔において所定タイムスパン後に再送データパケットを送信し同じ送信時間間隔において送信保留中の他のデータを送信するのに十分か否かを判定するエンティティ」を有している。 このため、引用発明のエンティティは、 (a1)「再送データパケット」と「送信保留中の他のデータ」とが同じ送信時間間隔に送信するように割り当てられており、 (a2)かつ、割り当てられたリソースが、「再送データパケット」と「送信保留中の他のデータ」とを送信するのに十分でないか、 (b)或いは、それ以外であるか を判別しているといえる。 一般的に、「衝突」は、「1.つきあたること。ぶつかること。2.主張や意見が対立し争うこと。反目すること。」([株式会社岩波書店 広辞苑第六版)を意味している。 そして、引用発明では、(a1)(a2)の両方の条件を満たす場合には、割り当てられたリソースに「再送データパケット」及び「送信保留中の他のデータ」が入りきらないことから、「再送データパケット」及び「送信保留中の他のデータ」が割り当てられたリソースにおいて「つきあたった、或いは、ぶつかった」状態であるといえるのに対して、単に、「再送データパケット」と「送信保留中の他のデータ」とが同じ送信時間間隔に送信するように割り当てられた場合、即ち、(a1)を満たすものの、(a2)を満たさない場合には、割り当てられたリソースで「再送データパケット」と「送信保留中の他のデータ」との送信が可能であり、「再送データパケット」と「送信保留中の他のデータ」とが同じ送信時間間隔に送信するように割り当てられることに起因する不都合がなんら奏し得ないことから、「再送データパケット」と「送信保留中の他のデータ」とが「つきあたった、或いは、ぶつかった」状態であるとはいえない。 してみると、引用発明のエンティティは、「再送データパケット」が「送信保留中の他のデータ」に対する割り当てに衝突するか否かを判別しているといいえ、該引用発明のエンティティは、「該再送要求による再送信が所定の割り当てに衝突するか否かを判別する判別ユニット」に実質的に相違しない。 してみると、本願発明の「該再送要求が所定の割り当てに衝突するか否かを判別する判別ユニット」、即ち、該再送要求による再送信が所定の割り当てに衝突するか否かを判別する判別ユニット」と、引用発明の「送信エンティティに割り当てられたリソースが、送信時間間隔において所定タイムスパン後に再送データパケットを送信し同じ送信時間間隔において送信保留中の他のデータを送信するのに十分か否かを判定するエンティティ」とに、実質的な相違はないことから、引用発明の該エンティティを、「該再送要求が所定の割り当てに衝突するか否かを判別する判別ユニット」、即ち、該再送要求による再送信が所定の割り当てに衝突するか否かを判別する判別ユニット」とすることは、当業者であれば容易になし得るものといえる。 なお、審判請求人は、平成25年6月4日付け手続補正書(審判請求の理由補充)で、「衝突とは、ユーザ装置UEが、2つのものを同一のリソースで同時に送信するように命令されることを意味します。」(下線は、請求人が付与した。)と主張している。 しかしながら、ユーザ装置UEが、2つのものを同一のリソースで同時に送信するように命令されたとしても、ユーザ装置における送信などの動作に支障が生じるものでなければ、2つのものが同一のリソースにおいて「つきあたった、或いは、ぶつかった」状態となっているとはいい得ないことから、上記の審判請求人の主張を採用することはできない。 そして、本願発明により得られる効果は、引用発明に基いて、当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。 5-3. まとめ 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものである。 6.予備的検討 平成25年4月22日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項3を本願の発明とした場合について、以下で、予備的に検討する。 (1)本願発明 本願の請求項に係る発明は、平成25年4月22日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?19に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項3に係る発明(以下、「本願発明2」という)は、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文の請求項3に係る発明であって、次のとおりのものである。 「【請求項3】 通信網においてあらかじめ定められた送信時間にわたってユーザ装置からの再送要求を受信する受信ユニットと、 前記あらかじめ定められた送信時間のあいだに再送信と別の送信とが衝突する危険の有無を判別する判別ユニットと、 衝突の危険が判別された場合に前記再送要求を無視する無視ユニットと を有する ことを特徴とする装置。」 (2)引用文献 引用文献(特表2007-517431号公報)には、「3.引用文献」で摘示したア?ウの事項が記載されており、これらの摘示事項によれば、引用文献には、次の引用発明が記載されている。 「 E-DCHを用いる同期再送を伴うデータ送信が示され、 送信エンティティは、受信エンティティからフィードバックメッセージを受信することができ、 フィードバックメッセージは、受信エンティティによるデータパケットの受信が成功したか否かを示すことができ、 フィードバックメッセージが、データパケットの受信が成功していないことを示す場合、フィードバックメッセージを受信してから所定タイムスパン後に再送データパケットを受信エンティティに送信することができ、 受信エンティティは先に受信したデータパケットとの再送データパケットの軟合成を実行することができ、 送信エンティティは、送信エンティティに割り当てられたリソースが、送信時間間隔において所定タイムスパン後に再送データパケットを送信し同じ送信時間間隔において送信保留中の他のデータを送信するのに十分か否かを判定することができ、 リソースが十分でないときは、送信保留中データを送信時間間隔で送信することができ、再送データパケットの送信を後の送信時間間隔に延期することができる、 送信エンティティから受信エンティティにデータチャネルを介してデータパケットを送信するハイブリッド自動再送要求(HARQ)方法で実行する移動局、基地局、無線ネットワーク制御装置。」 (4)対比 引用発明の「送信エンティティは、受信エンティティからフィードバックメッセージを受信することができ」るものであって、「フィードバックメッセージは、受信エンティティによるデータパケットの受信が成功したか否かを示す」ものでり、「フィードバックメッセージが、データパケットの受信が成功していないことを示す場合、フィードバックメッセージを受信してから所定タイムスパン後に再送データパケットを受信エンティティに送信する」ものである。 該フィードバックメッセージは再送要求を含むメッセージであるといい得るとともに、引用発明の「送信エンティティ」は、「フィードバックメッセージを受信することができ」るエンティティであるから、「受信ユニット」といい得る。 そして、E-DCHを用いられたデータ送信はTTI毎に行われ、該データ送信に対する再送要求を含むフィードバックメッセージの送信にはE-HICHが用いられ、TTI毎に行われることは、3GPPにおいて規格化され、周知な事項である。 一方、以下の本願翻訳文の記載を参酌すると、本願発明2における「通信網においてあらかじめ定められた送信時間」は具体的にはTTIである。 ア.本願翻訳文の段落【0002】の 「 従来技術の説明 スケジューリングおよびリソース割り当ては通信技術の重要な一面である。その開発は3GPP(the third generation partnership project)にしたがって無線アクセス網の発展のために行われてきた。また、無線技術の長期的発展のために、E‐UTRAN(evolved universal terrstrial radio access networks)も開発された。E‐UTRANでのスケジューリングプロトコルでは、例えば、物理リソースブロックPRBや変調コーティングスキームMCSなどのリソースを、制御チャネルを介して、ユーザ装置にそのつどの送信時間TTIでダイナミックに割り当てることができる。ユーザ装置UEは、ダウンリンク受信が許可された際にダウンリンク中に可能な割り当てを見出だせるよう、制御チャネルL1/L2を監視する。また、E‐UTRANなどの無線アクセス網は、第1の送信に対してあらかじめ定められたダウンリンクリソース、例えばハイブリッド自動再送要求HARQのエラー制御を、ユーザ装置に割り当てることができる。再送信は制御チャネルL1/L2を介して明示的にシグナリングされる。ユーザ装置が、制御チャネル上で、自身にリソースがあらかじめ割り当てられていることを表すサブフレーム内のC‐RNTI(cell radio network temporary identifier)を識別できなければ、所定の割り当てにしたがったダウンリンク送信が仮定される。こうした場合、ユーザ装置はあらかじめ定められたリソースをブラインド復号化することになる。そうでなく、ユーザ装置にリソースがあらかじめ割り当てられていることがサブフレームによって伝達され、ユーザ装置が制御チャネル上のC‐RNTIを見出した場合には、制御チャネルの割り当てが送信時間TTIの割り当てを無効化し、ユーザ装置は定義されたリソースの割り当てをブラインド復号化しない。」(なお、下線は当審が付与した。) イ.本願翻訳文の段落【0003】の 「 アップリンクスケジューリングに関しては、E‐UTRANなどの無線アクセス網は、それぞれの送信時間で同じチャネルを介してダイナミックにリソースをユーザ装置に割り当てる。ユーザ装置は、典型的には、ダウンリンク受信が許可されたとき、制御チャネルL1/L2においてアップリンク送信に対する可能な割り当てを監視する。こうした監視機能は不連続受信DRXによって制御される。また、E‐UTRANなどの無線アクセス網は、HARQの第1の送信および生じうる再送信に対してあらかじめ定められたアップリンクリソースをユーザ装置に割り当てることができる。ユーザ装置にリソースがあらかじめ割り当てられていることがサブフレームによって伝達され、ユーザ装置が制御チャネル上のC‐RNTIを見出せなかった場合には、あらかじめ定義された割り当てにしたがったアップリンク送信が所定の送信時間TTIでユーザ装置に対して行われる。このとき通信網はあらかじめ定義されたPRBをあらかじめ定義されたMCSにしたがって復号化する。そうでなく、ユーザ装置にリソースがあらかじめ割り当てられていることがサブフレームによって伝達され、ユーザ装置が制御チャネル上のC‐RNTIを見出した場合、制御チャネルの割り当てが送信時間TTIの割り当てを無効化してしまう。つまり、ユーザ装置の送信は定義された割り当てでなく制御チャネルL1/L2の制御に追従する。再送信はあらかじめ定められた割り当てを利用して割り当てられるか、または、制御チャネルL1/L2を介して明示的に割り当てられる。」(なお、下線は当審が付与した。) ウ.本願翻訳文の段落【0018】の 「 所定の送信時間TTI内では、ユーザ装置の所定の一部への送信またはそこからの送信は1回だけとなるので、衝突は回避される。非対称のHARQによって多くの衝突が回避されるが、複数のノードに自由に再送信をスケジューリングさせることにより、送信を適切にスケジューリングする手段を有さないエンハンストノードB(eNB)などのノードでは高い負荷が発生する。このような場合、エンハンストノードBはユーザ装置からのダウンリンク再送要求を無視する。また、別の実施例として、ダウンリンク再送信があらかじめ定められたリソースとの衝突回避のためにスケジューリング不能となる場合、当該のエンハンストノードBではダウンリンク再送信を行わないようにすることもできる。」 してみると、引用発明は、本願発明2と同様に、「通信網においてあらかじめ定められた送信時間にわたってユーザ装置からの再送要求を受信する受信ユニット」を有しているといえる。 引用発明の「送信エンティティ」は、「送信エンティティに割り当てられたリソースが、送信時間間隔において所定タイムスパン後に再送データパケットを送信し同じ送信時間間隔において送信保留中の他のデータを送信するのに十分か否かを判定することができ」のエンティティである。 してみると、引用発明は、判別する内容を別にすると、本願発明2と同様に、「判別ユニット」を有しているといえる。 引用発明は、「送信エンティティは、送信エンティティに割り当てられたリソースが、送信時間間隔において所定タイムスパン後に再送データパケットを送信し同じ送信時間間隔において送信保留中の他のデータを送信するのに十分か否かを判定することができ、リソースが十分でないときは、送信保留中データを送信時間間隔で送信することができ、再送データパケットの送信を後の送信時間間隔に延期する」ものである。 そして、再送データパケットの送信を後の送信時間間隔に延期することは、当該送信時間間隔、即ち、当該TTIでの送信は行わないことを意味するから、再送要求を無視することといい得る。 さらに、引用発明における「リソースが十分でないとき」とは、「判別ユニット」である「送信エンティティ」によってなされた判別である。 また、本願発明2の「衝突の危険が判別された場合」も、「判別ユニット」によってなされた判別である。 してみると、引用発明は、「判別ユニット」の判別される内容を別にして、本願発明2と同様に、判別ユニットによって「判別された場合に前記再送要求を無視する無視ユニット」を有しているといえる。 引用発明は、「移動局、基地局、無線ネットワーク制御装置」であるから、「装置」であるといえる。 以上から、本願発明2と引用発明は、次の点で一致、相違する。 <一致点> 通信網においてあらかじめ定められた送信時間にわたってユーザ装置からの再送要求を受信する受信ユニットと、 判別ユニットと、 判別ユニットによって判別された場合に前記再送要求を無視する無視ユニットと を有する ことを特徴とする装置。 <相違点> 本願発明2は、「判別ユニット」が、「衝突の危険が判別された場合に前記再送要求を無視する判別ユニット」であり、「無視ユニット」による再送要求の無視が、「衝突の危険が判別された場合」であるのに対して、引用発明は、「判別ユニット」が、送信エンティティに割り当てられたリソースが、送信時間間隔において所定タイムスパン後に再送データパケットを送信し同じ送信時間間隔において送信保留中の他のデータを送信するのに十分か否かを判定するものであり、「無視ユニット」による再送要求の無視が、「リソースが十分でないとき」である点。 (5)当審の判断 引用発明の「判別ユニット」は、「送信エンティティに割り当てられたリソースが、送信時間間隔において所定タイムスパン後に再送データパケットを送信し同じ送信時間間隔において送信保留中の他のデータを送信するのに十分か否かを判定するエンティティ」である。 このため、引用発明のエンティティは、 (a1)「再送データパケット」と「送信保留中の他のデータ」とが同じTTIに送信するように割り当てられており、 (a2)かつ、割り当てられたリソースが、「再送データパケット」と「送信保留中の他のデータ」とを送信するのに十分でないか、 (b)或いは、それ以外であるか を判別しているといえる。 一般的に、「衝突」は、「1.つきあたること。ぶつかること。2.主張や意見が対立し争うこと。反目すること。」([株式会社岩波書店 広辞苑第六版)を意味している。 そして、引用発明では、(a1)(a2)の両方の条件を満たす場合には、割り当てられたリソースに「再送データパケット」及び「送信保留中の他のデータ」が入りきらないことから、「再送データパケット」及び「送信保留中の他のデータ」が割り当てられたリソースにおいて「つきあたった、或いは、ぶつかった」状態であるといえるのに対して、単に、「再送データパケット」と「送信保留中の他のデータ」とが同じ送信時間間隔に送信するように割り当てられた場合、即ち、(a1)を満たすものの、(a2)を満たさない場合には、割り当てられたリソースで「再送データパケット」と「送信保留中の他のデータ」との送信が可能であり、「再送データパケット」と「送信保留中の他のデータ」とが同じTTIに送信するように割り当てられることに起因する不都合がなんら奏し得ないことから、「再送データパケット」と「送信保留中の他のデータ」とが「つきあたった、或いは、ぶつかった」状態であるとはいえない。 してみると、引用発明のエンティティは、「再送データパケット」が「送信保留中の他のデータ」に対する割り当てに衝突するか否かを判別しているといいえ、該引用発明のエンティティは、「前記あらかじめ定められた送信時間のあいだに再送信と別の送信とが衝突する危険の有無を判別する判別ユニット」に実質的に相違しない。 さらに、引用発明の「無視ユニット」が再送要求を無視する「リソースが十分でないとき」は、「再送データパケット」と「送信保留中の他のデータ」とが同じTTIに送信するように割り当てられていることを前提としていることから、上記の(a1)(a2)の両方の条件を満たすときであり、先に検討したごとく、上記の(a1)(a2)の両方の条件を満たすと判別されるということは、衝突の危険が判別されることといいえる。 してみると、本願発明2の「衝突の危険が判別された場合に前記再送要求を無視する判別ユニット」と、引用発明の「送信エンティティに割り当てられたリソースが、送信時間間隔において所定タイムスパン後に再送データパケットを送信し同じ送信時間間隔において送信保留中の他のデータを送信するのに十分か否かを判定するエンティティ」とに実質的な相違はなく、本願発明2の「衝突の危険が判別された場合」と、引用発明の「リソースが十分でないとき」とに実質的な相違はないことから、引用発明において、「判別ユニット」を、「衝突の危険が判別された場合に前記再送要求を無視する判別ユニット」とし、「無視ユニット」による再送要求の無視を、「衝突の危険が判別された場合」とすることは、当業者であれば容易になし得るものといえる。 そして、本願発明2により得られる効果は、引用発明に基いて、当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。 (6)まとめ 以上のとおりであるから、本願発明2は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものである。 7.むすび よって、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-05-15 |
結審通知日 | 2014-05-19 |
審決日 | 2014-06-02 |
出願番号 | 特願2010-512683(P2010-512683) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04W)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 齋藤 浩兵 |
特許庁審判長 |
水野 恵雄 |
特許庁審判官 |
佐藤 聡史 加藤 恵一 |
発明の名称 | 無線アクセス網での半永久的割り当てとダイナミック割り当てとの衝突を回避する方法 |
代理人 | アインゼル・フェリックス=ラインハルト |
代理人 | 星 公弘 |
代理人 | 久野 琢也 |
代理人 | 島村 暁 |
代理人 | 高橋 佳大 |
代理人 | 大谷 令子 |