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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B62H
管理番号 1293104
審判番号 不服2013-10772  
総通号数 180 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-06-10 
確定日 2014-10-24 
事件の表示 特願2008- 42198「スクータ型自動二輪車」拒絶査定不服審判事件〔平成20年10月 9日出願公開、特開2008-239143〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び本願発明
本願は、平成20年2月22日(優先権主張 平成19年2月28日)の出願であって、平成25年3月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年6月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に、特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出された。その後、平成26年5月21日付けで当審において拒絶理由が通知され、その応答期間内の同年7月28日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。
そして、本願の請求項1?14に係る発明は、明細書、平成26年7月28日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?14に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】
車体フレームと、
前記車体フレームに設けられた懸架部と、
前記懸架部によって揺動可能に支持され、エンジンと動力伝達部とが一体化されたスイング式エンジンユニットと、
前記スイング式エンジンユニットの前方において前記車体フレームに取り付けられ、駐車時に車体が略直立状態となるように支持するメインスタンドと
ライダーが着座するシートと、
前記シートよりも前方かつ下方に配設され、前記ライダーの両足が載せられるフートボードと
を備えるスクータ型自動二輪車であって、
前記エンジンは、シリンダを有し、
前記シリンダの軸線は、前記スクータ型自動二輪車の前後方向に沿っており、
前記スイング式エンジンユニットは、前記懸架部に連結される被懸架部を有し、
前記被懸架部は、前記スイング式エンジンユニットの上部に設けられ、
前記メインスタンドの車体フレーム側枢支点は、前記スイング式エンジンユニットの前端よりも前方に位置し、
前記フートボードは、前記両足が載せられる足載せ面を有し、
前記足載せ面には、前記スクータ型自動二輪車の車幅方向に沿って連続する平面が形成され、
前記スクータ型自動二輪車の前後方向における前記足載せ面の後端は、前記スイング式エンジンユニットの前端よりも前方であって、前記メインスタンドの車体フレーム側枢支点よりも後方に位置するスクータ型自動二輪車。」

2.刊行物記載の発明
(1)刊行物1
当審の拒絶理由で引用した本願の優先日前に国内で頒布された刊行物である特開平9-95271号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(ア)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、シート後方に収納空間を備えたスクータ型車両に関する。」(段落【0001】)
(イ)
「【0005】
【発明の実施の形態】・・・図2において符号1は車体フレームを示しており、この車体フレーム1はヘッドパイプ2、前部フレーム3、中間フレーム4、後部フレーム5等から構成されている。・・・」(段落【0005】)
(ウ)
「【0006】前記中間フレーム4は、その傾斜した部分に車体下方に向けて突出するブラケット4aが設けられており、このブラケット4aにはユニットスイング式エンジン11の前端が揺動自在に支持されている。前記ユニットスイング式エンジン11は、強制空冷式2サイクルエンジン11aと該エンジン11aの出力を後輪12に伝達するVベルト変速機を収容した伝動ケース11bとを一体に形成した従来公知の構造のもので、その後部は緩衝器13を介して前記後部フレーム5に支持されている。また、前記左右の中間フレーム4間には、車体上方に向けて突出する二つの門型ブラケット4b及び4cが架設されており(図2及び図4参照)、一方の門型ブラケット4bはその上端で燃料タンク14を支持しており、また、他方の門型ブラケット4cはその上端でシート20の後部の荷重を受けている。・・・」(段落【0006】)
(エ)
「【0007】また、図2中、符号17及び符号18はメインスタンドを示し、この内、一方のメインスタンド18は、中間フレーム4に設けられている。前記メインスタンド18は左右一対の脚体18a及び左右一対のリンク機構18bとから成り、前記脚体18aは各々前端が中間フレーム4に回動自在に支持されている。・・・上記したように構成されたメインスタンド18によれば、使用者が停車時に脚体18aを、その後端が接地する位置(即ち、図1及び図2における仮想線で示す位置)まで下方に回動させると、脚体18aは前記ラチェット機構によって収容方向への回動が阻止されて、その位置で固定され、車両を前輪9及び後輪12の両輪を接地した状態で地面Rに対して略垂直に自立させることが可能になる。・・・」(段落【0007】)
(オ)
「【0008】以上説明したように構成されたスクータ型車両は略全体が車体カバー21で覆われている。以下、図1及び図3を参照して車体カバー21について説明する。車体カバー21は、前側レッグシールド23、後側レッグシールド24、足置き台25、アンダーカバー25a、シートアンダーカバー26、左右一対のサイドアンダーカバー27、及び左右一対のサイドカバー28等から構成されている。・・・足置き台25は、後側レッグシールド24の後端に連結して前部フレーム3の後部と中間フレーム4の前部の上面を覆っており、また、サイドアンダーカバー27は足置き台25及びアンダーカバー25aの後端と連結して車体側方の下部を覆っている。前記した後側レッグシールド24の下部と、足置き台25と、サイドアンダーカバー27の折返し部分(図3参照)とで、ハンドルとシート20との間に低床の足置き面30が形成されている。また、足置き台25の後端とシート20の前部下端との間はシートアンダーカバー26で覆われ、・・・」(段落【0008】)
(カ)
図2から、メインスタンド18の脚体18aは、ユニットスイング式エンジン11の前端よりも前方で車体フレーム1の中間フレーム4に回動自在に支持されていることが看取しうる。
(キ)
図3から、足置き面30は、搭乗者の両足が載せられ、スクータ型車両の車幅方向に沿って連続する平面として形成され、その後端がユニットスイング式エンジン11の前端よりも前方であって、メインスタンド18の車体フレームに回動自在に支持される点よりも後方に位置することが看取しうる。

スクータのエンジンがシリンダを有していることは周知の事項である。
上記の記載事項(ア)?(キ)及び【図1】?【図3】の開示内容、上記周知の事項からみて、刊行物1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
〔引用発明〕
「ヘッドパイプ2、前部フレーム3、中間フレーム4、後部フレーム5からなる車体フレーム1と、
前記車体フレーム1の中間フレーム4に設けられたブラケット4aと、
前記ブラケット4aによって揺動自在に支持され、強制空冷式2サイクルエンジン11aと伝動ケース11bとが一体化されたユニットスイング式エンジン11と、
前記ユニットスイング式エンジン11の前方において前記車体フレーム1の中間フレーム4に回動自在に支持され、停車時に車両を地面に対して略垂直に自立させるメインスタンド18と
使用者が着座するシート20と、
前記シート20よりも前方かつ下方に配設され、低床の足置き面30を形成する足置き台25と
を備えるスクータ型車両であって、
前記エンジン11aは、シリンダを有し、
前記ユニットスイング式エンジン11は、前記ブラケット4aに揺動自在に支持され、
前記メインスタンド18の脚体18aは、ユニットスイング式エンジン11の前端よりも前方で車体フレーム1の中間フレーム4に回動自在に支持され、
前記足置き台25は、前記両足が載せられる足置き面30を有し、
前記足置き面30には、前記スクータ型車両の車幅方向に沿って連続する平面が形成され、
前記スクータ型車両の前後方向における前記足置き面30の後端は、前記ユニットスイング式エンジン11の前端よりも前方であって、前記メインスタンド18の車体フレームに回動自在に支持される点よりも後方に位置するスクータ型車両。」

(2)刊行物2
当審の拒絶理由で引用した本願の優先日前に国内で頒布された刊行物である特開平3-54085号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(ク)
「〔実施例〕
以下、本発明の実施例を図について説明する。
第1図ないし第4図は本発明の第1実施例による自動二輪車の収納ボックスを説明するための図である。
図において、1は本実施例が通用された自動二輪車であり、該自動二輪車の車体フレーム2は、いわゆる鋼管アンダーボーン型のものであり、側面視大略L字状のメインパイプ2aの縦辺の上端にヘッドパイプ2bを接続するとともに、下辺の後端付近に左.右一対のリヤパイプ2c、2cの前端を接続し、該両リヤパイプ2cを略垂直上方に屈曲させた後、略水平に後方に延長し、後端部を少し上方に傾斜させ、かつ左.右のリヤパイプ同士を相互に連結した構造になっている。上記両リヤパイプ2cの前端付近はフラットな足載部3aとなっている。」(第2頁左下欄第18行?同頁右下欄第14行)
(ケ)
「上記リヤパイプ2cの水平延長部には、ユニットスイング式のエンジンユニット6が上下に揺動可能に懸架支持されている。このエンジンユニット6は、伝動ケース7の前部に一体形成されたクランクケース8の前部にシリンダボディ9、シリンダヘッド10を積層した構造のものである。そして上記クランクケース8上部(背部)にはピボット部8aが形成されており、このピボット部8aが上記リヤパイプ2cの水平延長部に固着された支持ブラケット3bに支持リンク8bを介して揺動自在に支持されている。」(第3頁左上欄第4?14行)
(コ)
第2図から、自動二輪車はスクータ型であることが看取しうる。
(サ)
第1図、第2図のユニットスイング式のエンジンユニットにおけるシリンダボディ9、シリンダヘッド10の配置から、エンジンのシリンダの軸線は自動二輪車の前後方向に沿っていることが看取しうる。

3.対比、判断
本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「ヘッドパイプ2、前部フレーム3、中間フレーム4、後部フレーム5からなる車体フレーム1」は前者の「車体フレーム」に相当し、同様に、後者の「ブラケット4a」、「強制空冷式2サイクルエンジン11a」、「伝動ケース11b」、「ユニットスイング式エンジン11」、「メインスタンド18」、「シート20」、「足置き台25」、「スクータ型車両」、「足置き面30」は、その機能からみて、後者の「懸架部」、「エンジン」、「動力伝達部」、「スイング式エンジンユニット」、「メインスタンド」、「シート」、「フートボード」、「スクータ型自動二輪車」、「足載せ面」にそれぞれ相当する。
引用発明において、ブラケット4aによって支持されるユニットスイング式エンジン11側の部位は、本願発明の「被懸架部」に相当する。
してみると、両者の一致点、相違点は次のとおりである。

〔一致点〕
「車体フレームと、
前記車体フレームに設けられた懸架部と、
前記懸架部によって揺動可能に支持され、エンジンと動力伝達部とが一体化されたスイング式エンジンユニットと、
前記スイング式エンジンユニットの前方において前記車体フレームに取り付けられ、駐車時に車体が略直立状態となるように支持するメインスタンドと
ライダーが着座するシートと、
前記シートよりも前方かつ下方に配設され、前記ライダーの両足が載せられるフートボードと
を備えるスクータ型自動二輪車であって、
前記エンジンは、シリンダを有し、
前記スイング式エンジンユニットは、前記懸架部に連結される被懸架部を有し、
前記メインスタンドの車体フレーム側枢支点は、前記スイング式エンジンユニットの前端よりも前方に位置し、
前記フートボードは、前記両足が載せられる足載せ面を有し、
前記足載せ面には、前記スクータ型自動二輪車の車幅方向に沿って連続する平面が形成され、
前記スクータ型自動二輪車の前後方向における前記足載せ面の後端は、前記スイング式エンジンユニットの前端よりも前方であって、前記メインスタンドの車体フレーム側枢支点よりも後方に位置するスクータ型自動二輪車。」

〔相違点〕
本願発明は、エンジンの「シリンダの軸線は、スクータ型自動二輪車の前後方向に沿っており」、「被懸架部は、スイング式エンジンユニットの上部に設けられ」る構成を具備しているのに対して、引用発明は、そのように構成されていない点。

上記相違点について以下検討する。
〔相違点について〕
刊行物2には、スクータ型の自動二輪車において、エンジンのシリンダの軸線が自動二輪車の前後方向に沿ったユニットスイング式のエンジンユニットを用いることが記載されている(上記2.(2)の(ケ)、(サ)参照)。また、刊行物2には、当該ユニットスイング式のエンジンユニットをリヤパイプの水平延長部に懸架支持することも記載されており(上記2.(2)の(ケ)参照)、すなわち、ユニットスイング式のエンジンユニットの上部が懸架支持されていることが示唆されているといえる。
エンジンのシリンダの軸線が自動二輪車の前後方向に沿ったユニットスイング式のエンジンユニットをスクータ型の自動二輪車に用いることは、一般的に行われていることであり(特開平3-213482号公報の第2頁右下欄第13行?第3頁左上欄第2行、特開昭61-285177号公報の第3頁右上欄第4?9行を参照)、引用発明のユニットスイング式エンジンに、刊行物に2記載の型式のものを採用することは、当業者が容易に想到し得ることであり、その際に、刊行物2に記載の懸架構造を併せて採用することも、当業者が容易に想到し得ることといえる。そして、結果として、引用発明における車体フレームへのメインスタンドの取り付け位置とユニットスイング式エンジンの懸架部の取付位置とが、より離間した構造となることは明らかである。
したがって、引用発明を、相違点に係る本願発明の構成とすることは、刊行物2に記載の事項に基づいて当業者が容易に想到し得るといえる。

そして、本願発明の奏する作用及び効果を検討しても、引用発明及び刊行物2に記載の事項から予測できる程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願発明は、引用発明及び刊行物2に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、引用発明及び刊行物2に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-08-18 
結審通知日 2014-08-19 
審決日 2014-09-04 
出願番号 特願2008-42198(P2008-42198)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B62H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岸 智章三宅 龍平山尾 宗弘  
特許庁審判長 丸山 英行
特許庁審判官 平田 信勝
大熊 雄治
発明の名称 スクータ型自動二輪車  
代理人 三好 秀和  

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