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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1293205
審判番号 不服2013-8472  
総通号数 180 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-05-08 
確定日 2014-10-22 
事件の表示 特願2009-520911「無線通信システムにおける設定可能なダウンリンクおよびアップリンクチャネル」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 1月17日国際公開、WO2008/008920、平成21年12月10日国内公表、特表2009-544240〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成19年7月12日(パリ条約による優先権主張 2006年7月14日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成24年12月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年5月8日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、手続補正がなされたものである。

2.平成25年5月8日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成25年5月8日付けの手続補正を却下する。

[理由]
2-1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項13は、
「第1リンク用の第1周波数チャネルおよび第2リンク用の第2周波数チャネルを経由して端末とセクタとの間の接続を確立し、
前記第1リンク用の前記セクタにおいて利用可能な多重周波数チャネルに関連するセクタ情報に基づいて前記第1リンク用の前記セクタにおいて利用可能な多重周波数チャネルから第3周波数チャネルを選択し、
周波数分割多重を利用することを継続しかつ前記第2リンク用の前記第2周波数チャネルを経由して前記端末と前記セクタとの間の前記接続を維持する一方、前記第1リンク用の前記第3周波数チャネルへ前記端末と前記セクタとの間の前記接続を切り換えることを具備し、
前記第1、第2および第3周波数チャネルは互いに異なり、前記第1および第2周波数チャネルは、前記第2周波数チャネルと第3周波数チャネルと間の第2周波数距離とは異なる第1周波数距離を持っていることを特徴とする方法。」
と補正された。(この記載事項により特定される発明を以下、「本願補正発明」という。)
本件補正は、補正前の「第1リンク用の第1周波数チャネルおよび第2リンク用の第2周波数チャネルを経由して接続を確立し」とある「接続」を、「端末とセクタと間の接続」と限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2-2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特表2005-524358号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の記載がなされている。

(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルラー・システムでダウンリンク搬送波を選択するための方法であっ
て、
移動体ノードが使用する第1のダウンリンク搬送波を選択するステップ
と、
前記移動体ノードが別のダウンリンク搬送波を使用すべきであると決定するステップと、
ネットワーク・ノードから前記移動体ノードに第2のダウンリンク搬送波を使用するように命令するステップと、
前記移動体ノードが前記第2のダウンリンク搬送波を使用するステップ
と、を含むことを特徴とする方法。
……
【請求項5】
前記同じセルから前記第1のダウンリンク搬送波と前記第2のダウンリンク搬送波とを選択するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。」

(2)「【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、例えば、2.5GHz拡張帯域から始まる新しい帯域が利用可能になるといつでも、1つのUL搬送波に関連するDL搬送波の複数の選択肢のうちどれを選択するかに関する原理が存在しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、移動体ノードが使用する第1のダウンリンク搬送波を選択するステップと、上記移動体ノードが別のダウンリンク搬送波を使用すべきであると決定するステップと、ネットワーク・ノードから上記移動体ノードに第2のダウンリンク搬送波を使用するよう命令するステップと、上記移動体
ノードが第2のダウンリンク搬送波を使用するステップとを含むセルラー・システムでダウンリンク搬送波を選択するための方法および装置に関する。第1のダウンリンク搬送波は第1のセルから選択でき、第2のダウンリンク搬送波は第2のセルから選択できるか、または第1のダウンリンク搬送波および第2のダウンリンク搬送波は同じセルから選択できる。第1のセルは基本帯域内のダウンリンク搬送波を含むことができ、第2のセルは拡張帯域内のダウンリンク搬送波を含むことができる。
【0005】
ネットワーク・ノードは、移動体ノードが第1のダウンリンク搬送波および第2のダウンリンク搬送波を供給するセルの現在の負荷状態、現在のダウンリンク搬送波上のサービス・タイプ、移動体ノードが第2のダウンリンク搬送波の周波数での接続機能があるか否か、または潜在的な干渉条件が存在するかなどのいくつかの要因に基づいて別のダウンリンク搬送波を使用すべきであると決定することができる。」

(3)「【0011】
本発明は、複数のDL搬送波が利用可能なセルラー・システムでのダウンリンク(DL)搬送波を選択するための方法および装置に関する。ダウンリンク搬送波の選択はあるセルからの第2のダウンリンク搬送波が選択され、別のセルで現在使用されているダウンリンク搬送波に置き換えられる場合に実行される。さらに、ダウンリンク搬送波の選択はあるセルからの第2のダウンリンク搬送波が選択され、同じセルで現在使用されているダウンリンク搬送波に置き換えられる場合に実行される。セルは、通常、アップリンク搬送波またはダウンリンク搬送波に使用できる周波数帯域を供給する。本発明は使用する技術にかかわらず任意のセルラー・システムで実施できる。本発明を例示するために、本発明がWCDMAシステムで使用される実施形態を用いるが、本発明はWCDMAシステムでの使用またはそれに関連するWCDMAに特有の用語および/または機能の使用に限定されるものではない。
【0012】
図1(A)および(B)は、本発明の例示としての実施形態によるアップリンクおよびダウンリンク搬送波のペアリングの図である。既存の帯域からのアップリンクおよびダウンリンク搬送波は、一般的に、同じセルによって供給される周波数でもよく、異なるセルから供給されてもよい。同様に、新しい帯域からのアップリンク搬送波およびダウンリンク搬送波は、一般的
に、同じセル(既存の帯域の周波数を供給するセルではない)から供給される周波数であってもよい。A1、A2、A3、…は異なるアップリンク/ダウンリンク搬送波の周波数のペアリングを表す。「A」から始まる各帯域のボックス内の周波数はセルの1つの運用業者によって制御でき、空きのボックス内の周波数はセルの第2の運用業者によって制御でき、網がけのボックス内の周波数はセルの第3の運用業者によって制御できる。
……
【0016】
したがって、本発明によるセルラー・システムでダウンリンク搬送波を選択するための方法および装置では、使用するダウンリンク搬送波は元のダウンリンク搬送波とは異なる周波数帯域から、または元のダウンリンク搬送波と同じ周波数帯域から選択できる。さらに、ネットワーク・ノードは移動体装置に異なるダウンリンク搬送波を使用するよう命令でき、または移動体装置は異なるダウンリンク搬送波にいつ切り替えるか自ら決定することができる。選択を決定する判定基準については後述する。
【0017】
本発明をWCDMA方式に適用可能な例で説明する。しかし、前述のように、本発明は任意のセルラー・システムに適用可能で、このタイプのセル
ラー・システムでの使用に限定されない。WCDMAはUTRANネット
ワークの一例である。UTRANは現在の3G基本帯域内のUL-DLペアリングに加えて、DL専用の動作に拡張帯域内の追加の搬送波(この例では2.5GHzであるがこれに限定されない)を使用できる帯域にまで発展した。1つの特定の基本帯域のUL搬送波に関する無線接続を複数のDL搬送波上で実行できるが、各無線リンクは1つの時点につき最大1つの搬送波
(基本帯域または2.5GHz帯域内の)しか使用できない。さらに、移動体装置(すなわち、UE)内の可変重複化(variable duplexing)を用いて2.5GHz帯域内の追加の搬送波にアクセスすることができる。移動体装置、UE、および移動体ノードという用語は本発明の動作および実施形態を説明する際に交換可能に使用できる。
【0018】
セルラー通信ネットワークに接続された移動体装置はDL搬送波の選択方法を、例えば、負荷状態、干渉状態、サービス、および移動体装置の機能などのいくつかの要因の1つに立脚させることができる。移動体装置によっては追加のDL搬送波、すなわち、2.5GHz帯域内で利用可能な追加の搬送波を使用することができない。さらに、移動体装置によるDL搬送波の選択は移動体装置が異なるモードまたは状態にある時に実行できる。」

(4)「【0023】
図2は、本発明の例示としての実施形態による、アップリンクおよびダウンリンク搬送波のペアリングが関連する周波数および帯域を示す図である。図2の最上部のボックス10は周波数帯域のITU識別を示す。1つのボックス12は移動局(MS)の周波数のUTRAFDD帯域を示す。UTRAFDDボックス14は約2100MHzから2175MHzに延びる周波数の基本帯域を示す。さらに、周波数の2.5GHz帯域がボックス16で示され、約2500MHzから2575MHzに延びている。本発明によれ
ば、UTRAFDDボックス14内に示す周波数帯域内のDLを現在使用している移動体装置はボックス16内に示す周波数の1つから異なるDL周波数を選択して使用できる。
【0024】
本発明によれば、複数のDL搬送波が1つのUL搬送波に対応することができる。複数のDL搬送波を1つのUL搬送波に対応させる必要があるこのようなケースでは、DL搬送波の複数の選択肢のどれを選択するかについて明らかに合理的な選択が必要である。
【0025】
図3は、本発明の例示としての実施形態による負荷ベースの選択を示す図である。異なるDL搬送波の選択が移動体装置の2つの異なる状態について示されている。ここで移動体装置は、ディレクテッド無線リソース制御(RRC)接続設定状態で、移動体装置はすでにRRC接続を有する状態で周波数間ハンドオーバを試みている。左のカラムは基本2GHz帯域セルを用いる周波数上の移動体装置でのDL負荷を示す。右のカラムは2.5GHzセルでの周波数上のDL負荷を示す。矢印は2.5GHzセル内の新しいDL搬送波の選択が適当(OK)および不適当(NOK)の時の状態を示す。
【0026】
移動体装置がディレクテッド無線リソース制御(RRC)接続設定状態の時には、2.5GHzセルからのDL搬送波は、ハンドオーバ元周波数(すなわち、基本2GHzセルの)のDL負荷がセルの最大負荷の50%より大きく、ハンドオーバ先周波数(2.5GHzセル)の負荷がハンドオーバ元周波数の負荷より小さい場合にのみ選択できる。
【0027】
周波数間ハンドオーバ中の移動体装置に関して、移動体装置は、ハンド
オーバ元周波数の負荷がセルの最大負荷の80%より大きく、ハンドオーバ先周波数の負荷がハンドオーバ元周波数の負荷より小さい場合に、2.5GHzセルからのDL搬送波を選択できる。
【0028】
図3で使用されるパーセンテージ、すなわち、50%および80%は、例示としての目的でのみ使用され、他の値であっても本発明の適用の制限内である。これらのパーセンテージはネットワークによって設定でき、所与の移動体装置について他のDL搬送波を選択するか否かの判定に使用できる。
ネットワーク装置、例えば、無線ネットワーク制御装置(RNC)の基地局制御装置(BSC)などが、ハンドオーバ元およびハンドオーバ先セルなどのさまざまなセルでの負荷を監視し、特定の移動体装置DL搬送波を別のDL搬送波に切り替えるか否かを負荷に基づいて決定する。移動体ノードが
ディレクテッドRRC接続設定状態の時の別のDL搬送波への切り替えの方が、移動体ノードが周波数間ハンドオーバ状態時の切り替えよりも好まし
い。何故なら、移動体ノードがディレクテッドRRC接続設定状態の時に
は、移動体ノードは事前にハンドオーバ先周波数を測定する必要はないからである。2.5GHz帯域のサービスの移動性に応じて、負荷平衡が主要なトラヒック平衡機能であり、帯域間ハンドオーバとは異なり圧縮モード(CM)での測定を必要としない。純粋な負荷平衡機能は無線ネットワーク制御装置(RNC)内の所与のサービス優先順位表を使用するサービス指示機能にまで拡張できる。」

(5)「【0046】
-RTユーザの負荷しきい値、ULでは目標受信電力(PrxTarget)に関するBTSによる総受信電力と、DLでは目標送信電力(PtxTarget)に関するBTSの総送信電力
-NRTユーザの場合、ULおよびDLでの拒絶容量要求の率
-直交符号の不足。
2.5GHzの運用では、UL負荷は周波数間およびシステム間ハンド
オーバによってのみ平衡が取れるが、DL負荷はさらに帯域間ハンドオーバによって平衡が取れる。したがって、帯域間ハンドオーバ(ULは同じま
ま)を考慮する時には、DLトリガのみが重要である。」

上記(1)の請求項1及び5には、アップリンク搬送波に関する記載はないが、その選択も必要であることは当然のことである。
引用例は、上記(2)のように、1つのアップリンク搬送波に関連するダウンリンク搬送波の複数の選択肢のうちどれを選択するかを発明が解決しようとする課題とするものであり、上記(4)にも、複数のDL搬送波を1つのUL搬送波に対応させる必要がある場合のDL搬送波の選択について記載されている。(【0024】)
そして、上記(4)には、移動体装置が周波数間ハンドオーバを行うことが記載されており、上記(5)にはULは同じままハンドオーバすることが記載されている。
したがって、上記(1)の請求項1及び5の方法には、移動体装置がアップリンク搬送波が同じまま、第1のダウンリンク搬送波から第2のダウンリンク搬送波へ周波数間ハンドオーバするものが含まれている。

引用例には、上記(3)のように、複数の異なるアップリンク/ダウンリンク搬送波(A1、A2、A3、…)が同じセルから供給されることが示されている。

引用例には、上記(2)のように、「第1のダウンリンク搬送波および第2のダウンリンク搬送波を供給するセルの現在の負荷状態」によって、ダウンリンク搬送波を選択することが記載されており、具体的には上記(4)に記載されているように、第1のダウンリンク搬送波であるハンドオーバ元周波数の負荷、セルの最大負荷、及び2のダウンリンク搬送波であるハンド
オーバ先周波数の負荷の大きさに基づいて選択がなされる。

以上のことから、引用例に記載された事項を総合すれば、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

WCDMAシステムでダウンリンク搬送波を選択するための方法であっ
て、
複数の異なるアップリンク及びダウンリンク搬送波が同じセルから供給され、
移動体ノードがアップリンク搬送波が同じまま、第1のダウンリンク搬送波から第2のダウンリンク搬送波へ周波数間ハンドオーバするときに、
前記第1のダウンリンク搬送波と前記第2のダウンリンク搬送波とは同じセルから選択されるものであり、
前記第2のダウンリンク搬送波は、前記第1のダウンリンク搬送波および前記第2のダウンリンク搬送波を供給するセルの現在の負荷状態によって選択される方法。

2-3.対比
本願の明細書には「周波数チャネル」について、
「【0023】
図2は、FDDシステムの中で使用されてもよい典型的なチャネル構造200を示す。構造200では、周波数帯はダウンリンク周波数範囲および
アップリンク周波数範囲を含んでいる。ダウンリンク周波数範囲は、イン
デックス0からK-1を通じて多重(K)ダウンリンク周波数チャネル(または単に、ダウンリンクチャネル)に分割される。同様に、アップリンク周波数範囲は、インデックス0からK-1を通じて多重(K)アップリンク周波数チャネル(または単に、アップリンクチャネル)に分割される。おのおのの周波数チャネルは、システムデザインによって決定された特定の帯域幅がある。例えば、周波数チャネルは、cdma2000およびフラッシュOFDM(登録商標)に1.25MHz、W-CDMAに5MHz、GSMに200kHz、またはIEEE802.11に20MHzの帯域幅を持ってもよい。おのおのの周波数チャネルは、システムオペレータまたは規制機関によって決定されてもよい特定の周波数に中心がある。周波数チャネルもまた、無線周波数(RF)チャネル、キャリア、トーンブロック、OFDMAチャネル、CDMAチャネルなどと呼ばれてもよい。」
と記載されていることから、本願補正発明の「周波数チャネル」はW-CDMAのキャリアを含み、引用発明の「搬送波」と対応するものである。
方法の発明である本願補正発明に対応する装置の発明である請求項1及びそれを引用する請求項4には、
「【請求項1】
第1リンク用の第1周波数チャネルおよび第2リンク用の第2周波数チャネルを経由して端末とセクタと間の接続を確立し、前記第1リンク用の前記セクタにおいて利用可能な多重周波数チャネルに関連するセクタ情報に基づいて前記第1リンク用の前記セクタにおいて利用可能な多重周波数チャネルから第3周波数チャネルを選択し、周波数分割多重を利用することを継続しかつ前記第2リンク用の前記第2周波数チャネルを経由して前記端末と前記セクタとの間の前記接続を維持する一方、前記第1リンク用の前記第3周波数チャネルへ前記端末と前記セクタとの間の前記接続を切り換える少なくとも1つのプロセッサであって、前記第1、第2および第3周波数チャネルは互いに異なり、前記第1および第2周波数チャネルは、前記第2周波数チャネルと第3周波数チャネルとの間の第2周波数距離とは異なる第1周波数距離を持つ、少なくとも1つのプロセッサと、
前記少なくとも1つのプロセッサに結合したメモリと、を具備することを特徴とする装置。
……
【請求項4】
前記第1および第2リンクは、それぞれダウンリンクおよびアップリンクであり、前記第1および第2周波数チャネルは、それぞれ前記ダウンリンクおよびアップリンク用のデフォルトの周波数チャネルであることを特徴とする請求項1に記載の装置。」
と記載されていることから、本願補正発明の「第1リンク」及び「第2リンク」は、それぞれダウンリンク及びアップリンクである場合を含む。
したがって、本願補正発明の「第1リンク用の第1周波数チャネル」、
「第2リンク用の第2周波数チャネル」、及び「第3周波数チャネル」と、引用発明の「第1のダウンリンク搬送波」、「アップリンク搬送波」、及び「第2のダウンリンク搬送波」とは、それぞれ対応するものである。

本願の明細書には「セクタ情報」について、
「【0058】
一般に、セクタ情報は、適切な動作、セクタ選択、および/またはチャネル選択にとって適切かもしれない任意の種類の情報を含んでもよい。例え
ば、セクタ情報は、どの周波数チャネルが主要および補助チャネルであるかを示してもよいし、どのダウンリンクおよびアップリンクチャネルが利用可能であるかを示してもよいし、ダウンリンクチャネル間の周波数距離を示してもよいし、アップリンクチャネル間の周波数距離を示してもよいし、ダウンリンクとアップリンクチャネル間の周波数距離を示してもよいし、おのおののアップリンクチャネル上の負荷を示してもよいし、おのおののダウンリンクチャネル上の負荷を示してもよいし、おのおのの補助チャネル用のパ
ワーバックオフ(power backoff)を示してもよいし、おのおののチャネル
のQoS情報などを示してもよいし、またはそれらの任意の組み合わせを示してもよい。セクタ情報は様々な方法で伝達されてもよい。」
と記載されており、セルもセクタも通信が行われる所定の領域であるから、本願発明の「セクタ情報」と、引用発明の「負荷状態」とは、通信が行われる所定の領域の負荷情報である点で共通するものである。
引用発明は「複数の異なるアップリンク及びダウンリンク搬送波が同じセルから供給され」とするもので、「複数の異なる」とは具体的には上記
(3)に記載された「A1、A2、A3、…」のように、周波数の異なるものであるから、「複数の異なるアップリンク及びダウンリンク搬送波」は本願補正発明の「多重周波数チャネル」に対応するものであり、本願補正発明と同様に周波数分割多重を利用するものである。
また、「同じセルから供給され」とするので、そのセルで利用可能なものであり、この複数の異なるダウンリンク搬送波に「第1のダウンリンク搬送波」及び「第2のダウンリンク搬送波」も含まれる。
したがって、引用発明は、本願補正発明の「前記第1リンク用の前記セクタにおいて利用可能な多重周波数チャネルに関連するセクタ情報に基づいて前記第1リンク用の前記セクタにおいて利用可能な多重周波数チャネルから第3周波数チャネルを選択し」とする点と、第1リンク用の通信が行われる所定の領域において利用可能な多重周波数チャネルに関連する前記通信が行われる所定の領域の情報に基づいて前記第1リンク用の前記通信が行われる所定の領域において利用可能な多重周波数チャネルから第3周波数チャネルを選択しとする点で共通するといえる。

引用発明は「移動体ノードがアップリンク搬送波が同じまま、第1のダウンリンク搬送波から第2のダウンリンク搬送波へ周波数間ハンドオーバするときに、「前記第1のダウンリンク搬送波と前記第2のダウンリンク搬送波とは同じセルから選択されるものであり」とするので、周波数間ハンドオーバ前には、「同じセル」において「移動体ノード」は、「第1のダウンリンク搬送波」と「アップリンク搬送波」により接続が確立しており、周波数間ハンドオーバにより、「アップリンク搬送波が同じまま」であるからアップリンクは「同じセル」に接続されたまま、ダウンリンクが「第1のダウンリンク搬送波」から「第2のダウンリンク搬送波」に切り換わり、「同じセ
ル」において「移動体ノード」は、「第2のダウンリンク搬送波」と「アップリンク搬送波」により接続が確立するものである。
引用発明の「移動体ノード」は、本願補正発明の「端末」に対応し、セルもセクタも通信が行われる所定の領域であるから、引用発明は、本願補正発明の「第1リンク用の第1周波数チャネルおよび第2リンク用の第2周波数チャネルを経由して端末とセクタとの間の接続を確立し」、及び「周波数分割多重を利用することを継続しかつ前記第2リンク用の前記第2周波数チャネルを経由して前記端末と前記セクタとの間の前記接続を維持する一方、前記第1リンク用の前記第3周波数チャネルへ前記端末と前記セクタとの間の前記接続を切り換える」とする点と、第1リンク用の第1周波数チャネルおよび第2リンク用の第2周波数チャネルを経由して端末と通信が行われる所定の領域との間の接続を確立し、周波数分割多重を利用することを継続しかつ前記第2リンク用の前記第2周波数チャネルを経由して前記端末と前記通信が行われる所定の領域との間の前記接続を維持する一方、前記第1リンク用の前記第3周波数チャネルへ前記端末と前記通信が行われる所定の領域との間の前記接続を切り換える点で共通するものである。

引用発明の「第1のダウンリンク搬送波」及び「第2のダウンリンク搬送波」は、「複数の異なるアップリンク及びダウンリンク搬送波が同じセルから供給され」とする複数の異なるダウンリンク搬送波に含まれるもので、
「第1のダウンリンク搬送波」から「第2のダウンリンク搬送波」へ周波数間ハンドオーバするのであるから、「第1のダウンリンク搬送波」と「第2のダウンリンク搬送波」の周波数は異なるものである。
また、「アップリンク搬送波」は同じままであり、前記のとおり引用発明は、本願補正発明と同様に周波数分割多重を利用するものであるから、
「アップリンク搬送波」、「第1のダウンリンク搬送波」,及び「第2のダウンリンク搬送波」の周波数は異なるものである。
さらに、引用発明は、「アップリンク搬送波」の周波数が、「第1のダウンリンク搬送波」及び「第2のダウンリンク搬送波」の周波数の間の周波数となるものではなく、上記のように「アップリンク搬送波」、「第1のダウンリンク搬送波」、及び「第2のダウンリンク搬送波」の周波数は異なることから、「アップリンク搬送波」の周波数と「第1のダウンリンク搬送波」の周波数との間の距離と、「アップリンク搬送波」の周波数と「第2のダウンリンク搬送波」の周波数との間の距離とは、異なるものとなる。
したがって、引用発明は本願補正発明と、「前記第1、第2および第3周波数チャネルは互いに異なり、前記第1および第2周波数チャネルは、前記第2周波数チャネルと第3周波数チャネルと間の第2周波数距離とは異なる第1周波数距離を持っている」とする点で共通するものである。

以上のことから、本願補正発明と引用発明とを対比すると、次の点で一致する。

第1リンク用の第1周波数チャネルおよび第2リンク用の第2周波数チャネルを経由して端末と通信が行われる所定の領域との間の接続を確立し、
前記第1リンク用の前記通信が行われる所定の領域において利用可能な多重周波数チャネルに関連する通信が行われる所定の領域の情報に基づいて前記第1リンク用の前記通信が行われる所定の領域において利用可能な多重周波数チャネルから第3周波数チャネルを選択し、
周波数分割多重を利用することを継続しかつ前記第2リンク用の前記第2周波数チャネルを経由して前記端末と前記通信が行われる所定の領域との間の前記接続を維持する一方、前記第1リンク用の前記第3周波数チャネルへ前記端末と前記セクタとの間の前記接続を切り換えることを具備し、
前記第1、第2および第3周波数チャネルは互いに異なり、前記第1および第2周波数チャネルは、前記第2周波数チャネルと第3周波数チャネルと間の第2周波数距離とは異なる第1周波数距離を持っていることを特徴とする方法。

また次の点で相違する。

相違点
通信が行われる所定の領域が、本願補正発明ではセクタであるのに対し
て、引用発明ではセルである点。

2-4.相違点に対する判断
通信が行われる所定の領域として、セルやセクタは周知のものであり、セクタはセルを更に分割したものである。
本願補正発明と引用発明はともに、同じ通信が行われる所定の領域のまま周波数が切り換えられるものであり、切り換えにともなって別のセルやセクタに移動したり、別のセルやセクタに移動することをトリガとして周波数が切り換えられるものではなく、通信が行われる所定の領域をセルとするか、セクタとするかによって、周波数の切り換えが異なるものとなるわけではない。
以上のことから、通信が行われる所定の領域として、セルの代わりにそれを更に分割したセクタとすることに困難な点はなく、本願補正発明は引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

2-5.むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成25年5月8日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項13に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成24年8月10日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項13に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「第1リンク用の第1周波数チャネルおよび第2リンク用の第2周波数チャネルを経由して接続を確立し、
前記第1リンク用の利用可能な多重周波数チャネルに関連するセクタ情報に基づいて前記第1リンク用の利用可能な多重周波数チャネルから選択された第3周波数チャネルを得、
周波数分割多重を利用することを継続しかつ前記第2リンク用の前記第2周波数チャネルとの前記接続を維持する一方、前記第1リンク用の前記第3周波数チャネルへ前記接続を切り換えることを具備し、
前記第1、第2および第3周波数チャネルは互いに異なり、前記第1および第2周波数チャネルは、前記第2周波数チャネルと第3周波数チャネルと間の第2周波数距離とは異なる第1周波数距離を持っていることを特徴とする方法。」

原査定の拒絶の理由に引用された引用例の記載事項は、前記「2-2.引用例」のとおりである。
そして、本願発明は、前記「2-1.補正後の本願発明」に記載したような「接続」についての限定がないものであるから、本願補正発明と同様、引用発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである。

以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-05-23 
結審通知日 2014-05-27 
審決日 2014-06-09 
出願番号 特願2009-520911(P2009-520911)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04W)
P 1 8・ 121- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 信也石井 則之  
特許庁審判長 江口 能弘
特許庁審判官 吉田 隆之
加藤 恵一
発明の名称 無線通信システムにおける設定可能なダウンリンクおよびアップリンクチャネル  
代理人 佐藤 立志  
代理人 井上 正  
代理人 白根 俊郎  
代理人 岡田 貴志  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 河野 直樹  
代理人 砂川 克  
代理人 赤穂 隆雄  
代理人 峰 隆司  
代理人 井関 守三  
代理人 堀内 美保子  
代理人 中村 誠  
代理人 竹内 将訓  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 野河 信久  
代理人 福原 淑弘  

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