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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1293380
審判番号 不服2013-15991  
総通号数 180 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-08-19 
確定日 2014-10-30 
事件の表示 特願2008-519523「一体ヒートシンクを有する上面実装電力発光体」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 1月 4日国際公開、WO2007/002760、平成20年12月 4日国内公表、特表2008-544577〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2006年6月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2005年6月27日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、 平成23年6月14日付けで拒絶理由通知がなされ、同年11月11日付けで手続補正がなされ、平成24年6月11日付けで最後の拒絶理由通知がなされ、同年11月19日付けで手続補正がなされ、平成25年4月16日付けで前記平成24年11月19日付け手続補正が却下されるとともに、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同時に手続補正がなされたものである。


第2 平成25年8月19日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成25年8月19日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1 補正の内容
平成25年8月19日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項34につき、補正前(平成23年11月11日付け手続補正後)の

(1)「【請求項34】
上面及び底面を有し、前記上面の一部が光学素子を実装する実装パッドを規定し、前記底面が導電要素を有しない基材と、
前記基材の前記上面のみに形成され、前記光学素子との電気的接続を提供する複数の導電配線とを備え、
前記複数の導電配線の少なくとも1つの導電配線が、前記光学素子との電気的接続を提供するべく、少なくとも1つの接続配線と並んでいる装置。」

を、

(2)「【請求項34】
上面及び底面を有し、前記上面の一部が光学素子を実装する実装パッドを規定し、前記底面が導電要素を有しない基材と、
前記基材の前記上面のみに形成され、前記光学素子との電気的接続を提供する複数の導電配線とを備え、
前記複数の導電配線の少なくとも1つの導電配線が、前記光学素子との電気的接続を提供するべく、回路基板の少なくとも1つの接続配線と並んでおり、
前記光学素子を囲むように反射体が前記回路基板に取り付けられており、前記反射体の外径は当該反射体が前記回路基板の開口と並び当該開口内に実装されるように構成されている装置。」

に補正する内容を含むものである(当審注:下線は、請求人が補正箇所に付したものである。)。

2 補正の目的

本件補正は、本件補正前の請求項34の「前記複数の導電配線の少なくとも1つの導電配線が、前記光学素子との電気的接続を提供するべく、少なくとも1つの接続配線と並んでいる」との記載を、「前記複数の導電配線の少なくとも1つの導電配線が、前記光学素子との電気的接続を提供するべく、回路基板の少なくとも1つの接続配線と並んでおり」とするとともに、「前記光学素子を囲むように反射体が前記回路基板に取り付けられており、前記反射体の外径は当該反射体が前記回路基板の開口と並び当該開口内に実装されるように構成されている」との発明特定事項を追加するものである。請求項34についてする補正の目的を検討すると、本件補正前の請求項34に係る発明は、「反射体」や「回路基板」という発明特定事項を備えるものではないところ、本件補正は前記発明特定事項を追加するとともに、それらの位置関係を特定するものであるから、本件補正前の請求項34に係る発明を特定するために必要な事項を限定する補正ではない。
よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものには該当しない。

また、本件補正の目的は、同法第17条の2第4項第1号、第3号、第4号の、請求項の削除、誤記の訂正、明りようでない記載の釈明、のいずれにも該当しない。

したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3 付言

なお、以下に検討するとおり、本件補正後の請求項34に係る発明は、特許を受けることができないものであるから、本件補正を認める余地はない。

(1) 請求の範囲の記載不備

本件補正後の請求項34には、「前記反射体の外径は当該反射体が前記回路基板の開口と並び当該開口内に実装されるように構成されている」との記載があるが、「反射体が前記回路基板の開口と並」ぶとは、「反射体」と「回路基板の開口」がどのような位置関係にあることを意味するのか不明である。
また、発明の詳細な説明にも「反射体」と「回路基板の開口」との並びについての記載はなく、発明の詳細な説明の記載を参酌しても、「反射体が前記回路基板の開口と並」ぶの記載が特定する位置関係が不明である。
したがって、本件補正後の請求項34の記載は、「反射体」及び「回路基板の開口」が、それぞれ、どのような位置関係にあるのか特定できないから、本件補正後の請求項34に係る発明は不明確である。

以上のとおり、本件補正後の請求項34の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしているとはいえないから、本件補正後の請求項34に係る発明は、特許を受けることができないものである。

(2) 進歩性

上記(1)のとおり、本件補正後の請求項34の記載では、特許を受けようとする発明が明確でないが、本件補正後の請求項34に係る発明における「前記反射体の外径は当該反射体が前記回路基板の開口と並び当該開口内に実装されるように構成されている」との特定事項を、「前記反射体の外径は当該反射体が前記回路基板の開口内に実装されるように構成されている」に置き換えた発明、すなわち、

「上面及び底面を有し、前記上面の一部が光学素子を実装する実装パッドを規定し、前記底面が導電要素を有しない基材と、
前記基材の前記上面のみに形成され、前記光学素子との電気的接続を提供する複数の導電配線とを備え、
前記複数の導電配線の少なくとも1つの導電配線が、前記光学素子との電気的接続を提供するべく、回路基板の少なくとも1つの接続配線と並んでおり、
前記光学素子を囲むように反射体が前記回路基板に取り付けられており、前記反射体の外径は当該反射体が前記回路基板の開口内に実装されるように構成されている装置。」 (以下「本願補正発明」という。)

について検討しても、以下のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである(当審注:下線は、当審が付した。以下同様。)。

ア 引用文献の記載

原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である国際公開第2005/043627号(以下「引用文献」という。)には、図とともに以下の記載がある(かっこ書で訳文を付した。)。

(ア)「1. A light emitting die package comprising: a substrate comprising an electrically and thermally conductive material and having a first surface; a thermally conductive, electrically insulating film covering at least a portion of said first surface; a first conductive element on said insulating film, said conductive element insulated from said substrate by said insulating film; a second conductive element on said insulating film, said second conductive element spaced apart from said first conductive element and electrically insulated from said substrate by said insulating film wherein at least one of said first and second conductive elements comprises a mounting pad for mounting a light emitting die thereon; a reflector plate coupled to said substrate and substantially surrounding the mounting pad; and a lens substantially covering the mounting pad.
2. The light emitting die package recited in claim 1 further comprising a light emitting diode (LED) mounted on said substrate and connected to the first and second conductive elements .
3. The light emitting die package recited in claim 2 wherein the LED is encapsulated within optically clear polymer.
4. The light emitting die package recited in claim 1 wherein said first and second conductive elements comprise metal traces . 」(請求項1?請求項4)

(「1. 導電性且つ熱伝導性の材料を含み、第1の表面を有する基板と、 前記第1の表面の少なくとも一部を覆う熱伝導性電気絶縁膜と、
該絶縁膜により前記基板から絶縁される、前記絶縁膜上の第1の導電要素と、
該第1の導電要素から離間され、前記絶縁膜により前記基板から電気的に絶縁される、前記絶縁膜上の第2の導電要素であって、前記第1の導電要素及び該第2の導電要素のうちの少なくとも一方は、発光ダイを取り付けるための取り付けパッドを備える、第2の導電要素と、
前記基板に結合され、前記取り付けパッドを略囲む反射板と、
前記取り付けパッドを略覆うレンズと、を備える発光ダイ・パッケージ。2. 前記基板上に取り付けられ、前記第1の導電要素及び前記第2の導電要素に接続された発光ダイオード(LED)をさらに備える、請求項1記載の発光ダイ・パッケージ。
3. 前記LEDは光学的に透明なポリマ内に封入されている、請求項2に記載の発光ダイ・パッケージ。
4. 前記第1の導電要素及び前記第2の導電要素は金属トレースを含む、請求項1記載の発光ダイ・パッケージ。」)

(イ)「[0039] Figure 1A is a perspective view of a semiconductor die package 10 according to one embodiment of the present invention and Figure 1B is an exploded perspective view of the semiconductor package of Figure 1A. Referring to Figures 1A and IB, the light emitting die package 10 of the present invention includes a bottom heat sink 20, a top heat sink 40, and a lens 50.
[0040] The bottom heat sink 20 is illustrated in more detail in Figures 2A through 2D. Figures 2A, 2B, 2C, and 2D provide, respectively, a top view, a side view, a front view, and a bottom view of the bottom heat sink 20 of Figure 1A. Further, Figure 2C also shows an LED assembly 60 in addition co the front view of the bottom heat sink 20. The LED assembly 60 is also illustrated in Figure 1B. Referring to Figures 1A through 2D, the bottom heat sink 20 provides support for electrical traces 22 and 24; for solder pads 26, 32, and 34; and for the LED assembly 60. For this reason, the bottom heat sink 20 is also referred to as a substrate 20. In the Figures, to avoid clutter, only representative solder pads 26, 32, and 34 are indicated with reference numbers. The traces 22 and 24 and the solder pads 26, 32, and 34 can be fabricated using conductive material. Further, additional traces and connections can be fabricated on the top, side, or bottom of the substrate 20, or layered within the substrate 20. The traces 22 and 24, the solder pads 26, 32, and 34, and any other connections can be interconnected to each other in any combinations using known methods, for example via holes.」

(「[0039] 図1Aは、本発明の一実施形態による半導体ダイ・パッケージ10の斜視図であり、図1Bは、図1Aの半導体パッケージの分解組立斜視図である。図1A及び図1Bを参照するに、本発明の発光ダイ・パッケージ10は、底部ヒート・シンク20、上部ヒート・シンク40、及びレンズ50を含む。
[0040] 底部ヒート・シンク20は、図2A?図2D中にさらに詳しく図示されている。図2A、図2B、図2C及び図2Dは、それぞれ、図1Aの底部ヒート・シンク20の上面図、側面図、前面図、及び底面図を示す。さらに、図2Cもまた、底部ヒート・シンク20の前面図に加えて、LEDアセンブリ60を示す。LEDアセンブリ60はまた、図1B中に図示されている。図1A?図2Dを参照し、底部ヒート・シンク20は、電気的トレース22及び24、半田パッド26、32、及び34、並びにLEDアセンブリ60のための支持を提供する。このため、底部ヒート・シンク20は基板20とも呼ばれる。これらの図中、混乱をさけるために、代表的な半田パッド26、32、及び34のみが参照符号で指示される。トレース22及び24並びに半田パッド26、32及び34は、導電材料を使って製造され得る。さらに、追加的なトレース及び接続を基板20の上面、側面、又は底面に作製するか、又は基板20内に積層することができる。トレース22及び24、半田パッド26、32及び34、並びに他の任意の接続は、既知の方法、例えばバイヤ・ホールを用いて任意の組み合わせで互いに相互接続することができる。」)

(ウ)「[0042] The substrate 20 has a top surface 21, the top surface 21 including the electrical traces 22 and 24. The traces 22 and 24 provide electrical connections from the solder pads (for example top solder pads 26) to a mounting pad 28. The top solder pads 26 may comprise portions of the traces 22 and 24 generally proximal to sides of the substrate 20. The top solder pads 26 are electrically connected to side solder pads 32. The mounting pad 28 is a portion of the top surface (including portions of the trace 22, the trace 24, or both) where the LED assembly 60 is mounted. Typically the mounting pad 28 is generally located proximal to center of the top surface 21. In alternative embodiments of the present invention, the LED assembly 60 can be replaced by other semiconductor circuits or chips.


(「[0042] 基板20は上面21を有し、上面21は電気的トレース22及び24を備える。トレース22及び24は、半田パッド(例えば、上部半田パッド26)から取り付けパッド28への電気的接続を提供する。上部半田パッド26は、基板20の側面に概して近接したトレース22及び24の部分を含むことができる。上部半田パッド26は、側面半田パッド32に電気的に接続されている。取り付けパッド28は、LEDアセンブリ60が取り付けられている上面の部分(トレース22又はトレース24、又はこれらの両方部分を含む)である。通常、取り付けパッド28は、上面21の中心付近に一般に配置される。本発明の代替的な実施形態では、LEDアセンブリ60は他の半導体回路又はチップで置き換えることができる。」)

(エ) 図1Aないし図2Aは次のものである。


イ 引用発明

(ア) 上記ア(ア)の請求項1の記載によれば、引用文献には、
「導電性且つ熱伝導性の材料を含み、第1の表面を有する基板と、
前記第1の表面の少なくとも一部を覆う熱伝導性電気絶縁膜と、
該絶縁膜により前記基板から絶縁される、前記絶縁膜上の第1の導電要素と、
該第1の導電要素から離間され、前記絶縁膜により前記基板から電気的に絶縁される、前記絶縁膜上の第2の導電要素であって、前記第1の導電要素及び該第2の導電要素のうちの少なくとも一方は、発光ダイを取り付けるための取り付けパッドを備える、第2の導電要素と、
前記基板に結合され、前記取り付けパッドを略囲む反射板と、
前記取り付けパッドを略覆うレンズと、
を備える発光ダイ・パッケージ。」が記載されている。

(イ) 上記ア(ア)の請求項4の記載によれば、「前記第1の導電要素及び前記第2の導電要素は金属トレースを含む」。

(ウ) 上記ア(イ)の記載とともに、図1Aないし図2Aを参照すれば、基板20は、トレース22及び24が形成された上面、及び底面を有すると認められる。

(エ) 上記ア(ウ)の記載によれば、トレース22及び24は、取り付けパッド28への電気的接続を提供する。

(オ) してみると、引用文献には、以下の発明が記載されているものと認められる。

「導電性且つ熱伝導性の材料を含み、第1の表面を有する基板と、
前記第1の表面の少なくとも一部を覆う熱伝導性電気絶縁膜と、
該絶縁膜により前記基板から絶縁される、前記絶縁膜上の第1の導電要素と、
該第1の導電要素から離間され、前記絶縁膜により前記基板から電気的に絶縁される、前記絶縁膜上の第2の導電要素であって、前記第1の導電要素及び該第2の導電要素のうちの少なくとも一方は、発光ダイを取り付けるための取り付けパッドを備える、第2の導電要素と、
前記基板に結合され、前記取り付けパッドを略囲む反射板と、
前記取り付けパッドを略覆うレンズと、
を備え、
前記第1の導電要素及び前記第2の導電要素は金属トレースを含み、
前記基板は、前記金属トレースが形成された上面、及び底面を有し、
前記金属トレースは、前記取り付けパッドへの電気的接続を提供する、
発光ダイ・パッケージ。」(以下「引用発明」という。)

ウ 対比

本願補正発明と、引用発明を対比する。

(ア) 引用発明の「発光ダイ・パッケージ」は、本願補正発明の「装置」に相当する。

(イ) 本願補正発明の「上面及び底面を有し、前記上面の一部が光学素子を実装する実装パッドを規定し、前記底面が導電要素を有しない基材」と、引用発明の「導電性且つ熱伝導性の材料を含み、第1の表面を有する基板と、・・・該絶縁膜により前記基板から絶縁される、前記絶縁膜上の第1の導電要素と、該第1の導電要素から離間され、前記絶縁膜により前記基板から電気的に絶縁される、前記絶縁膜上の第2の導電要素であって、前記第1の導電要素及び該第2の導電要素のうちの少なくとも一方は、発光ダイを取り付けるための取り付けパッドを備える、第2の導電要素と、・・・を備え、前記第1の導電要素及び前記第2の導電要素は金属トレースを含み、前記基板は、トレースが形成された前記基板は、上面及び底面を有」することを対比する。

引用発明の「基板」、「発光ダイ」、「取り付けパッド」は、それぞれ本願補正発明の「基材」、「光学素子」、「実装パッド」に相当する。引用発明の「基板」の「上面、及び底面」は、本願補正発明の「基材」の「上面及び底面」に相当する。

してみると、両者は、「上面及び底面を有し、前記上面の一部が光学素子を実装する実装パッドを規定する基材」の点で一致する。

(ウ) 本願補正発明の「前記基材の前記上面のみに形成され、前記光学素子との電気的接続を提供する複数の導電配線とを備え、前記複数の導電配線の少なくとも1つの導電配線が、前記光学素子との電気的接続を提供するべく、回路基板の少なくとも1つの接続配線と並んで」いることと、引用発明の「該絶縁膜により前記基板から絶縁される、前記絶縁膜上の第1の導電要素と、該第1の導電要素から離間され、前記絶縁膜により前記基板から電気的に絶縁される、前記絶縁膜上の第2の導電要素であって、前記第1の導電要素及び該第2の導電要素のうちの少なくとも一方は、発光ダイを取り付けるための取り付けパッドを備える、第2の導電要素と、・・・前記第1の導電要素及び前記第2の導電要素は金属トレースを含み、前記基板は、前記金属トレースが形成された上面、及び底面を有し、前記金属トレースは、前記取り付けパッドへの電気的接続を提供する」ことを対比する。

引用発明の「基板」、「発光ダイ」は、それぞれ本願補正発明の「基材」、「光学素子」に相当する。引用発明の「金属トレースを含」む「前記第1の導電要素及び前記第2の導電要素」は、「発光ダイを取り付けるための」「取り付けパッドへの電気的接続を提供」し、基板の上面に形成されているから、本願補正発明の「前記基材の前記上面に形成され、前記光学素子との電気的接続を提供する複数の導電配線」に相当する。引用発明の「前記第1の導電要素及び前記第2の導電要素」が含む「金属トレース」が「発光ダイを取り付けるための」「取り付けパッドへの電気的接続を提供する」ことは、本願補正発明の「前記複数の導電配線の少なくとも1つの導電配線が、前記光学素子との電気的接続を提供する」ことに相当する。

してみると、両者は、「前記基材の前記上面に形成され、前記光学素子との電気的接続を提供する複数の導電配線とを備え、前記複数の導電配線の少なくとも1つの導電配線が、前記光学素子との電気的接続を提供する」点で一致する。

(エ) 本願補正発明の、「前記光学素子を囲むように反射体が前記回路基板に取り付けられており、前記反射体の外径は当該反射体が前記回路基板の開口内に実装されるように構成されている」ことと、引用発明の「発光ダイを取り付けるための取り付けパッドを備える、第2の導電要素と、前記基板に結合され、前記取り付けパッドを略囲む反射板と、前記取り付けパッドを略覆うレンズと、を備え」ることを対比する。

引用発明の「発光ダイ」、「反射板」は、それぞれ本願補正発明の「光学素子」、「反射体」に相当する。引用発明の「発光ダイ取り付けるための」「取り付けパッドを略囲む反射板」「を備え」ることは、本願補正発明の「前記光学素子を囲むように反射体が」「取り付けられて」いることに相当する。

してみると、両者は、「前記光学素子を囲むように反射体が取り付けられて」いる点で一致する。

(オ) 以上のことから、本願補正発明と引用発明とは、

「上面及び底面を有し、前記上面の一部が光学素子を実装する実装パッドを規定する基材と、
前記基材の前記上面に形成され、前記光学素子との電気的接続を提供する複数の導電配線とを備え、
前記複数の導電配線の少なくとも1つの導電配線が、前記光学素子との電気的接続を提供し、
前記光学素子を囲むように反射体が取り付けられている装置。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:本願補正発明の「基材」は、「前記底面が導電要素を有しない」ものであって、「導電配線」が「基材の上面のみに形成」されているものであるのに対し、引用発明は、そのように特定されるものではない点。

相違点2:本願補正発明は、「前記複数の導電配線の少なくとも1つの導電配線が、前記光学素子との電気的接続を提供するべく、回路基板の少なくとも1つの接続配線と並んでいる」ものであるのに対し、引用発明は、そのようなものなのか否か明らかでない点。

相違点3:本願補正発明は、「反射体が前記回路基板に取り付けられており、前記反射体の外径は当該反射体が前記回路基板の開口内に実装されるように構成されている」ものであるのに対し、引用発明は、そのように特定されるものではない点。

エ 判断

以下、相違点1?3について検討する。

(ア) 相違点1について

光学素子が上面に実装された基材を有する発光装置の回路基板への取り付け構造であって、開口を有する回路基板に対し、光学素子が回路基板の開口内に位置するように、基材の上面に形成された導電配線ないし導電要素を回路基板に対向させて半田付けする取り付け構造は周知の技術事項(例えば、最後の拒絶理由通知で引用された特開2002-270903号公報の【0002】?【0005】、【0018】、図1?4、特開平11-163409号公報の【0003】、図4、特開2002-368278号公報の【0002】?【0003】、図3?4、あるいは、特開2001-326390号公報の【0002】?【0003】、【0024】、図4?5、7を参照。)であり、引用発明は、第1の導電要素及び第2の導電要素が基板の上面に形成されているものであるから、引用発明の発光ダイ・パッケージの取り付け構造として、当該周知の技術事項を採用し、光学素子が回路基板の開口内に位置するように、基板の上面に形成された第1の導電要素及び第2の導電要素を、回路基板に対向させて半田付けする取り付け構造とすることに格別の困難性はない。また当該周知の技術事項においては、半田付けされる導電配線ないし導電要素は、少なくとも回路基板に対向する基材の上面に設けられていれば足り、それ以外の側面や底面へは必ずしも導電配線ないし導電要素を設ける必要がないことは当業者にとって自明のことであるから、導電配線ないし導電要素を基材の上面のみに設けることとし、側面や底面には設けない構成として、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が適宜なし得た設計変更程度のことと認められる。

(イ) 相違点2について

上記(ア)に示したとおり、引用発明の発光ダイ・パッケージの取り付け構造として、上記周知の技術事項を採用し、光学素子が回路基板の開口内に位置するように、基板の上面に形成された第1の導電要素及び第2の導電要素を、回路基板に対向させて半田付けする取り付け構造とすることに格別の困難性はない。その際には、基板の上面に形成された第1の導電要素及び第2の導電要素を、回路基板に対向させて半田付けするのであるから、第1の導電要素及び第2の導電要素が、それぞれと対応して電気的及び機械的に接続される回路基板上の配線と並ぶように配置されるべきことは、当業者にとって自明のことである。よって引用発明の発光ダイ・パッケージの取り付け構造として上記周知の技術事項を採用し、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が適宜なし得たことと認められる。

(ウ) 相違点3について

上記(ア)に示したとおり、引用発明の発光ダイ・パッケージの取り付け構造として、上記周知の技術事項を採用し、光学素子が回路基板の開口内に位置するように、基板の上面に形成された第1の導電要素及び第2の導電要素を、回路基板に対向させて半田付けする取り付け構造とすることに格別の困難性はない。その際には、基板の上面に形成された第1の導電要素及び第2の導電要素を、回路基板に対向させて半田付けするのであるから、引用発明の基板の上面に位置する反射板が、回路基板の開口内に実装されるべきことは、当業者にとって自明のことである。また、発光ダイ・パッケージが回路基板に取り付けられることによって、発光ダイ・パッケージが備える反射板も回路基板に取り付けられることは明らかである。よって引用発明の発光ダイ・パッケージの取り付け構造として上記周知の技術事項を採用し、上記相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が適宜なし得たことと認められる。

オ 小括

以上の検討によれば、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。


第3 本願について

1 本願発明

平成25年8月19日付けの手続補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成23年11月11日付け手続補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし37に記載された事項によって特定されるものであるところ、その請求項34に係る発明は次のとおりのものである。

「上面及び底面を有し、前記上面の一部が光学素子を実装する実装パッドを規定し、前記底面が導電要素を有しない基材と、
前記基材の前記上面のみに形成され、前記光学素子との電気的接続を提供する複数の導電配線とを備え、
前記複数の導電配線の少なくとも1つの導電配線が、前記光学素子との電気的接続を提供するべく、少なくとも1つの接続配線と並んでいる装置。」(以下「本願発明」という。)

2 引用文献の記載

上記第2、3(2)アのとおりである。

3 引用発明

上記第2、3(2)イのとおりである。

4 対比

本願発明は、上記第2、3(2)で検討した本願補正発明の「回路基板の少なくとも1つの接続配線」との点を「少なくとも1つの接続配線」とし、さらに「前記光学素子を囲むように反射体が取り付けられており、前記反射体の外径は当該反射体が前記回路基板の開口内に実装されるように構成されている」との発明特定事項を削除したものに相当する。そうすると、本願発明と引用発明との対比は、上記第2、3(2)ウ(ア)ないし(ウ)での検討と同様である。

したがって、本願発明と引用発明とは、

「上面及び底面を有し、前記上面の一部が光学素子を実装する実装パッドを規定する基材と、
前記基材の前記上面に形成され、前記光学素子との電気的接続を提供する複数の導電配線とを備え、
前記複数の導電配線の少なくとも1つの導電配線が、前記光学素子との電気的接続を提供する装置。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:本願発明の「基材」は、「前記底面が導電要素を有しない」ものであって、「導電配線」が「基材の上面のみに形成」されているものであるのに対し、引用発明は、そのように特定されるものではない点。

相違点2:本願発明は「前記複数の導電配線の少なくとも1つの導電配線が、前記光学素子との電気的接続を提供するべく、少なくとも1つの接続配線と並んでいる」ものであるのに対し、引用発明は、そのようなものなのか否か明らかでない点。

5 判断

(1) 相違点1について

上記第2、3(2)エ(ア)での検討と同様の理由により、引用発明において周知の技術事項を採用し、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が適宜なし得た設計変更程度のことと認められる。

(2) 相違点2について

上記第2、3(2)エ(イ)での検討と同様の理由により、引用発明において周知の技術事項を採用し、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が適宜なし得たことと認められる。

6 むすび

以上の検討によれば、本願発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-06-06 
結審通知日 2014-06-09 
審決日 2014-06-20 
出願番号 特願2008-519523(P2008-519523)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 572- Z (H01L)
P 1 8・ 537- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉野 三寛  
特許庁審判長 小松 徹三
特許庁審判官 服部 秀男
鈴木 肇
発明の名称 一体ヒートシンクを有する上面実装電力発光体  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 大貫 敏史  

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