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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1293477 |
審判番号 | 不服2013-16464 |
総通号数 | 180 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-12-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-08-26 |
確定日 | 2014-10-27 |
事件の表示 | 特願2011-545616「複数配列された発光素子のパッケージ」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 7月22日国際公開、WO2010/081403、平成24年 7月 5日国内公表、特表2012-515440〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、2010年(平成22年)1月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年1月14日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成24年12月11日付けで拒絶理由が通知され、平成25年3月14日に特許請求の範囲の補正がなされたが、同年4月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に特許請求の範囲の補正がなされたものである(以下、この平成25年8月26日になされた補正を「本件補正」という。)。 2 本件補正についての却下の決定 (1)結論 本件補正を却下する。 (2)理由 ア 補正の内容 (ア)本件補正は、特許請求の範囲の請求項15につき、補正前の 「【請求項15】 上面から内部へと延在する空洞部を有する筐体と、 前記筐体と一体化するように結合され、前記筐体から外側に光を出射する複数の発光素子デバイスを配置する複数の導電部を有するリードフレームと を備え、 前記リードフレームは、前記筐体と共に、前記リードフレームと前記筐体との間の水漏れを防ぐ強固な結合を改善する、少なくとも1つの前記導電部の上面及び下面に設けられたV字型の切り込みを有し、前記水漏れを防ぐ強固な結合は、前記V字型の切り込みを有さないリードフレームを備えるパッケージの場合と比較して改善されている発光素子パッケージ。」 を 「【請求項15】 上面から内部へと延在する空洞部を有する筐体と、 前記筐体と一体化するように結合され、前記筐体から外側に光を出射する複数の発光素子デバイスを配置する複数の導電部を有するリードフレームと を備え、 前記リードフレームは、前記筐体と共に、前記リードフレームと前記筐体との間の水漏れを防ぐ強固な結合を改善する、少なくとも1つの前記導電部の上面及び下面に設けられた複数のV字型の切り込み及び複数の貫通孔を有し、該複数のV字型の切り込み及び複数の貫通孔は、前記複数の発光素子デバイスを上部に有する面に平行な前記複数の導電部の少なくとも一部に設けられ、前記複数のV字型の切り込みは、前記複数の導電部の上面に垂直な面上にあり、前記複数の貫通孔の少なくともいくつかは、前記複数のV字型の切り込みの少なくともいくつかと交差し、前記水漏れを防ぐ強固な結合は、前記複数のV字型の切り込み及び複数の貫通孔を有さないリードフレームを備えるパッケージの場合と比較して改善されている発光素子パッケージ。」 に補正する内容を含むものである。 (イ)上記(ア)の補正の内容は、「リードフレーム」についてさらに限定するものであり、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められるので、以下に、本件補正後の請求項15に係る発明について、独立特許要件の検討を行う。 イ 独立特許要件についての判断 補正後の請求項15に「前記複数のV字型の切り込みは、前記複数の導電部の上面に垂直な面上にあり、」の記載があるが、「複数のV字型の切り込み」がある「前記複数の導電部の上面に垂直な面」とはどの面のことを意味するのか不明であり、複数のV字型の切り込みが、前記複数の導電部の上面に垂直な面上にあるとは、どういうことを意味するのか不明である。 請求人は、審判請求書において、請求項15に関する補正事項について、本願明細書の段落【0040】の記載、図7、図9及び図10等に基づくものである旨の主張をするが、これらの記載をみても、前記「複数の導電部の上面に垂直な面」がどの面のことであるのか不明である。 したがって、本件補正後の請求項15の記載は、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしているとはいえないから、本件補正後の請求項15に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 ウ 補正却下の決定のむすび よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 (3)付言 なお、以上のとおりであって、本件補正後の請求項15の記載では、特許を受けようとする発明が明確でないが、請求人の主張を考慮し、図7、図9及び図10を踏まえて、本件補正後の請求項15に係る発明を 「上面から内部へと延在する空洞部を有する筐体と、 前記筐体と一体化するように結合され、前記筐体から外側に光を出射する複数の発光素子デバイスを配置する複数の導電部を有するリードフレームと を備え、 前記リードフレームは、前記筐体と共に、前記リードフレームと前記筐体との間の水漏れを防ぐ強固な結合を改善する、少なくとも1つの前記導電部の上面及び下面に設けられた複数のV字型の切り込み及び複数の貫通孔を有し、該複数のV字型の切り込み及び複数の貫通孔は、前記複数の発光素子デバイスを上部に有する面に平行な前記複数の導電部の少なくとも一部に設けられ、前記複数の貫通孔の少なくともいくつかは、前記複数のV字型の切り込みの少なくともいくつかと交差し、前記水漏れを防ぐ強固な結合は、前記複数のV字型の切り込み及び複数の貫通孔を有さないリードフレームを備えるパッケージの場合と比較して改善されている発光素子パッケージ。」(以下「本願補正発明」という。)に置き換えて検討しても、以下のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 ア 引用文献の記載 原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である特開2004-228387号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある。 (ア)「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、照明や、車載用、アミューズメント用および白色LEDなどの光源に適用される発光装置に関し、特に、高輝度や大電流のLED光源に対応可能な発光装置に関する。」 (イ)「【0013】 【発明の実施の形態】 (第1の実施の形態) 図1(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る発光装置の平面図を示し、図1(b)は、(a)のA-A断面図を示す。この発光装置1は、3対のリードフレーム2A,2B,2C,3A,3B,3C(以下、「2A?3C」という。)と、リードフレーム2A,2B,2Cの先端部分(インナーリード)の上に載置されたLED素子4A,4B,4Cと、LED素子4Aとリードフレーム3Aとを電気的に接続するボンディングワイヤ5Aと、LED素子4Bとリードフレーム3Bとを電気的に接続するボンディングワイヤ5Bと、LED素子4Cとリードフレーム3Cとを電気的に接続するボンディングワイヤ5Cと、各リードフレーム2A?3Cを支持するモールド樹脂によるパッケージ6と、パッケージ6の内面に形成される反射面6Aと、パッケージ6に注入されて反射面6A、LED素子4A,4B,4Cを封止するモールド樹脂7とを備えている。」 (ウ)図1は、次のものである。 イ 引用発明 以上によれば、引用文献1には、次の発明が記載されているものと認められる。 「3対のリードフレーム2A,2B,2C,3A,3B,3Cと、リードフレーム2A,2B,2Cの先端部分の上に載置されたLED素子4A,4B,4Cと、LED素子4Aとリードフレーム3Aとを電気的に接続するボンディングワイヤ5Aと、LED素子4Bとリードフレーム3Bとを電気的に接続するボンディングワイヤ5Bと、LED素子4Cとリードフレーム3Cとを電気的に接続するボンディングワイヤ5Cと、各リードフレーム2A?3Cを支持するモールド樹脂によるパッケージ6と、パッケージ6の内面に形成される反射面6Aと、パッケージ6に注入されて反射面6A、LED素子4A,4B,4Cを封止するモールド樹脂7とを備えている発光装置1。」(以下「引用発明」という。) ウ 対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「パッケージ6」において、「モールド樹脂7」により封止されている部分が本願補正発明の「空洞部」に相当するところであり、引用発明の「パッケージ6」は、本願補正発明の「上面から内部へと延在する空洞部を有する筐体」に相当する。 (イ)引用発明の「リードフレーム2A,2B,2C,3A,3B,3C」は、モールド樹脂によるパッケージ6と一体化しているものと認められ、また、引用発明の「LED素子4A,4B,4C」は、本願補正発明の「複数の発光素子デバイス」に相当すると認められるから、引用発明の「リードフレーム2A,2B,2C」は、本願補正発明の「前記筐体と一体化するように結合され、前記筐体から外側に光を出射する複数の発光素子デバイスを配置する複数の導電部を有するリードフレーム」に相当する。 (ウ)したがって、本願補正発明と引用発明は、次の点で一致する。 「上面から内部へと延在する空洞部を有する筐体と、 前記筐体と一体化するように結合され、前記筐体から外側に光を出射する複数の発光素子デバイスを配置する複数の導電部を有するリードフレームと を備える発光素子パッケージ。」 (エ)そして、両者は、次の点で相違する。 本願補正発明では、「リードフレーム」に関し、「前記筐体と共に、前記リードフレームと前記筐体との間の水漏れを防ぐ強固な結合を改善する、少なくとも1つの前記導電部の上面及び下面に設けられた複数のV字型の切り込み及び複数の貫通孔を有し、該複数のV字型の切り込み及び複数の貫通孔は、前記複数の発光素子デバイスを上部に有する面に平行な前記複数の導電部の少なくとも一部に設けられ、前記複数の貫通孔の少なくともいくつかは、前記複数のV字型の切り込みの少なくともいくつかと交差し、前記水漏れを防ぐ強固な結合は、前記複数のV字型の切り込み及び複数の貫通孔を有さないリードフレームを備えるパッケージの場合と比較して改善されている」とされているのに対し、引用発明のリードフレームは、このような「V字型の切り込み」及び「貫通孔」を有していない点。 エ 判断 特開昭61-48951号公報に、リードの封止樹脂との封着面を改良し雰囲気や水の浸入を防止する目的で、半導体装置のリードの封着部表面にその第1図に示されるような溝を穿設することが記載されており、また、実願平1-68347号(実開平3-8459号)のマイクロフィルムに、リードフレームと樹脂界面からの水分の侵入に対してバリア効果を得るために(第6頁1?2行の記載参照。)、LEDランプのリードフレームの表面にその第1図や第2図に示されるような溝6を形成することが記載されているように、リードフレームと封止樹脂のとの間の水漏れを防ぐためにリードフレームの表面に複数のV字型の切り込みを設けることは、本願優先日当時において周知の技術である。 また、国際公開第2008/081794号に、リードフレームと樹脂成型体との剥離を防止するために(【0054】参照。)、その図8に示されるようにアンカーホール90a,90bを発光装置のリードフレーム20,30に設けることが記載され、また、実願昭61-28668号(実開昭62-140758号)のマイクロフィルムに、樹脂の外装とリード部との密着強度の向上のために(1頁14行?15行、4頁7行?10行、5頁2行?6行等参照。)、その第1図、第2図に示されるように発光ダイオードのリード部2、4に貫通孔16?22を設けることが記載されているように、リードフレームと樹脂との密着強度を向上するために、リードフレームに貫通孔を設けることも本願優先日当時において周知の技術である。 してみると、引用発明において、モールド樹脂によるパッケージ6とリードフレーム2A,2B,2Cとの間の水漏れを防ぐために、パッケージ6との封着面となるリードフレーム2A,2B,2Cの上表面及び下表面に複数のV字型の切り込みを設けるとともに、パッケージ6とリードフレーム2A,2B,2Cとの密着強度を向上するために、リードフレーム2A,2B,2Cに貫通孔を設けることは当業者が容易に想到し得るものと認められるところであり、その際、V字型の切り込みと貫通孔をどのような位置に設けるかは当業者が設計上適宜定め得る事項であって、上記ウ(エ)の相違点に係る本願補正発明の構成とすることに格別の困難性は認められない。 また、かかる構成により、本願補正発明において格別顕著な効果が奏されるものとも認められない。 オ 小括 以上のとおりであるから、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 3 本願発明について (1)本願発明 上記のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成25年3月14日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項16に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、請求項15に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記2(2)ア(ア)に補正前のものとして示した、次のとおりのものである。 「上面から内部へと延在する空洞部を有する筐体と、 前記筐体と一体化するように結合され、前記筐体から外側に光を出射する複数の発光素子デバイスを配置する複数の導電部を有するリードフレームと を備え、 前記リードフレームは、前記筐体と共に、前記リードフレームと前記筐体との間の水漏れを防ぐ強固な結合を改善する、少なくとも1つの前記導電部の上面及び下面に設けられたV字型の切り込みを有し、前記水漏れを防ぐ強固な結合は、前記V字型の切り込みを有さないリードフレームを備えるパッケージの場合と比較して改善されている発光素子パッケージ。」 (2)引用文献 引用文献及び引用発明は、上記2(3)ア及びイにそれぞれ示したとおりである。 (3)対比 本願発明と引用発明の対比についても、上記2(3)ウでの検討と同様であり、一致点及び相違点は、それぞれ、次のとおりである。 ア 一致点 「上面から内部へと延在する空洞部を有する筐体と、 前記筐体と一体化するように結合され、前記筐体から外側に光を出射する複数の発光素子デバイスを配置する複数の導電部を有するリードフレームと を備える発光素子パッケージ。」 イ 相違点 本願発明では、「リードフレーム」に関し、「前記筐体と共に、前記リードフレームと前記筐体との間の水漏れを防ぐ強固な結合を改善する、少なくとも1つの前記導電部の上面及び下面に設けられたV字型の切り込みを有し、前記水漏れを防ぐ強固な結合は、前記V字型の切り込みを有さないリードフレームを備えるパッケージの場合と比較して改善されている」とされているのに対し、引用発明のリードフレーム2A,2B,2Cは、このような「V字型の切り込み」を有していない点。 (4)判断 原査定の拒絶の理由に引用された特開昭61-48951号公報(以下「引用文献2」という。)には、リードがその中間部を樹脂の外囲器ケースに封着され一端を上記ケースから突出させた半導体装置において、リードの封止樹脂との封着面を改良し雰囲気や水の浸入を防止することを目的として、リードの封着部表面を凹凸の加工面とすることが記載され(特許請求の範囲、〔発明の目的〕の記載参照。)、その凹凸の加工面を第1図に示されるような溝2、すなわち、複数のV字型の切り込みとすることが記載されている。 一方、原査定の拒絶の理由に引用された実願昭60-139996号(実開昭62-47156号)のマイクロフィルム(以下「引用文献3」という。)には、半導体発光装置において、リードフレームと外囲器の界面における水分の侵入を阻止する必要のあることが記載されており(〔考案の効果〕の記載等参照。)、引用発明においても、その「リードフレーム2A,2B,2C」と「モールド樹脂によるパッケージ6」との界面における水分の侵入を阻止する必要のあることは明らかであり、そのために、「モールド樹脂によるパッケージ6」との界面となる「リードフレーム2A,2B,2C」の上面及び下面に引用文献2の第1図に示される溝、すなわち、複数のV字型の切り込みを形成するようにして、上記(3)イの相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。 4 むすび 以上のとおりであって、本願発明は、当業者が引用発明並びに引用文献2及び3に記載される技術事項に基づいて容易に発明できたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-06-03 |
結審通知日 | 2014-06-06 |
審決日 | 2014-06-17 |
出願番号 | 特願2011-545616(P2011-545616) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01L)
P 1 8・ 537- Z (H01L) P 1 8・ 575- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 金高 敏康 |
特許庁審判長 |
小松 徹三 |
特許庁審判官 |
服部 秀男 鈴木 肇 |
発明の名称 | 複数配列された発光素子のパッケージ |
代理人 | 特許業務法人浅村特許事務所 |