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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01J
管理番号 1293515
審判番号 不服2013-17198  
総通号数 180 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-09-06 
確定日 2014-10-29 
事件の表示 特願2006-45428号「光電子増倍システム及び顕微鏡」拒絶査定不服審判事件〔平成18年9月7日出願公開、特開2006-237003号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成18年2月22日(パリ条約による優先権主張 2005年2月23日 (DE)ドイツ連邦共和国、2005年4月26日 (DE)ドイツ連邦共和国)の出願であって、平成24年10月5日付けで拒絶理由が通知され、これに対して平成25年1月11日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、同年4月26日付けで拒絶査定がなされたところ、同年9月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

II.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
検出管と、該検出管を作動するために必要な加速電圧を供給するための加速電圧供給ユニットとを有する光電子増倍システムにおいて、
前記検出管(1)と前記加速電圧供給ユニット(2)は、熱的分離要素(3)の異なる側に配されること
を特徴とする光電子増倍システム。」

III.引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特開2005-30972号公報(以下「引用文献」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

引ア:「【技術分野】
【0001】
本発明は、微弱光検出に利用するシャッタ付き光電子増倍管モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、微弱光領域と呼ばれる非常に暗い領域では、光を強度としてとらえることができない。そのため、この領域にある光は、光の強度分布で構成される一般のテレビカメラの映像ではとらえることができない。また、光を一つ一つの光子として検出する方法も考えられるが、一つの光子から得られる信号レベルがあまりにも小さいため、一般の高感度カメラでも映像化することはできなかった。
【0003】
そこで、光子一つ一つを検出する技術として、例えばフォトンカウンティング装置がある。
【0004】
このフォトンカウンティング装置のような微弱光検出装置では、試料を交換する際に、強い外来光が入射すると、光電子増倍管が劣化したり、暗電流が増加して、微弱光の測定精度が低下する。そのため、試料交換の際に外来光が入射することを防止するシャッタ機構を設ける必要がある。
【0005】
従来、このような技術として、特開平7-83757号公報がある。この公報に記載されたフォトンカウンティング装置は、シャッタ羽根を電磁駆動手段で揺動する機構を設けて、試料交換の際に外来光が入射することを防止している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述したフォトンカウンティング装置は、シャッタ羽根や電磁駆動手段を設けたため、これらの部品をフォトンカウンティング装置の光電子増倍管に近づけることができず、フォトンカウンティング装置が大型化しており、その小型化が望まれていた。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、特に小型化を図ったシャッタ付き光電子増倍管モジュールを提供することを課題とする。」

引イ:「【0009】
本発明のシャッタ付き光電子増倍管モジュールによれば、暗箱内に光電子増倍管を収容するとともに、光入射開口を開閉するシャッタ羽根や、これを揺動するシャッタ駆動手段も暗箱内に収容して上記モジュールの小型化を実現している。更には、シャッタ駆動手段を駆動制御するシャッタ駆動回路も暗箱内に収容する。このシャッタ駆動回路は、直流電源からの電力をシャッタ駆動手段に供給すると共にシャッタ駆動手段に直列接続されたコンデンサに充電する充電回路と、コンデンサに充電された電力を放電してシャッタ駆動手段に供給する放電回路をスイッチ手段によって切り替えて形成する。すなわち、コンデンサの充放電によってシャッタ駆動手段の回転軸を正逆転して、シャッタ羽根を揺動する。このように直流電源から供給される電力はコンデンサによる充放電によって、無駄なくシャッタ羽根の揺動に消費されるので、消費電力が少ない。よって、光電子増倍管に悪影響を及ぼす発熱を抑制できるので、光電子増倍管にシャッタ駆動回路を近づけて暗箱内に収容できる。ゆえに、シャッタ付き光電子増倍管モジュールの小型化が実現可能となる。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明によるシャッタ付き光電子増倍管モジュールは、ヘッドオン型の光電子増倍管を収容する暗箱内に、光電子増倍管に近づけて、シャッタ駆動手段等の各種部品を収容するので、シャッタ付き光電子増倍管モジュールの小型化が実現可能である。また、このモジュールに用いるシャッタ駆動回路は発熱が少ないため、光電子増倍管に近づけて暗箱内に収容することができるので、シャッタ付き光電子増倍管モジュールの小型化が実現可能となる。」

引ウ:「【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施形態にかかるシャッタ付き光電子増倍管モジュール1について添付の図面を参照して説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0012】
図1は、シャッタ付き光電子増倍管モジュール1を一部破断して示した斜視図である。図1に示すように、このシャッタ付き光電子増倍管モジュール1は、金属またはプラスチック製で直方体形状の暗箱2を有し、この暗箱2内の一方の隅には直方体形状の保護カバー12が暗箱2の内壁面に固定されて収容されている。そして、この保護カバー12内に、いわゆるヘッドオン型の光電子増倍管3を収容することで、暗箱2内に収容した各種部品との接触から光電子増倍管3を保護している。
【0013】
ここで、図2を参照して光電子増倍管3について説明する。図2は光電子増倍管3及びその周囲の部品の断面を拡大して示した図である。図2に示すように、光電子増倍管3は、ガラス製の側管4を有し、この側管4の一端をガラス製の入射窓5で封鎖し、この入射窓5の裏面側に光電面6を蒸着させている。さらに、側管4内には、管軸P方向において、光電面6に対して、整列させた電子増倍部7が収容されると共に、この電子増倍部7の末端から放電される二次電子を捕捉するために陽極8が収容されている。よって、入射窓5を透過して光電面6に微弱な光が当たった場合、光電面6内の電子が励起されて側管4内に光電子が放出される、そして、この光電子は収束電極9によって第1段目のダイノード7aに収束しながら入射し、その後、各ダイノード7aで二次電子増倍を繰り返しながら電子を増倍させ、最終的に、多数の電子を陽極8で捕捉する。このような電子増倍現象を利用することで、微弱な光でも簡単に検出することができる。
【0014】
なお、この光電子増倍管3の入射窓5側の先端部において、側管4の外周には、環形状の絶縁性パッキン27が装着されており、この絶縁性パッキン27を後述する第1のプレート20に当接させている。図1に戻り、また、光電子増倍管3の後端は、外部と電気的に接続するためのステムピンによってソケット11に接続されている。ソケット11には、フランジ部(図示せず)が一体的に形成されており、このフランジ部が保護カバー12の後端部壁面にゴム製のグロメット(弾性部材)14を介して、ネジ(図示せず)とナット17の協働によって固定される。このようにして、外部からの衝撃が伝わり難いようにして、光電子増倍管3が固定される。
【0015】
次に、図1に示すように、暗箱2の前面側には、管軸Pに対して直行する方向に延在する金属(例えばアルマイト)又は遮光性をもった樹脂などからなる第1のプレート20が設けられている。更に、第1のプレート20の前面に当接させるように金属製の第2のプレート22を重ね合わせている。」

引エ:「【0020】
更に図1に示すように、モータ30の側方には、一方面上に4つのコンデンサ103を備えるシャッタ駆動回路基板50が、その他方面をモータ30に対向させた状態で配置されている。なお、シャッタ駆動回路基板50に形成されたシャッタ駆動回路100については後述する。
【0021】
また、図1に示すように、暗箱2内には、保護カバー12の後方に、分圧部51、高圧電源回路部52が収容されている。更に、モータ30の後方には、アンプ基板53が基板面を保護カバー12の側面に対向させた状態で収容されている。この分圧部51は、高電圧を光電子増倍管3の各電極部分に分圧して印加する機能を有し、高圧電源回路部52は、低電圧を高電圧に変換して、その電圧を分圧部51に供給する機能を有している。また、このアンプ基板53は、光電子増倍管3の陽極電流を電圧に変換した後に増幅させる機能を有する。このように、シャッタ付き光電子増倍管モジュール1は、各種部品を収容することによって暗箱2内に残されたスペースに、分圧部51、高圧電源回路部52及びアンプ基板53を配置することによって、その小型化を実現している。」

引オ:「【0022】
次に、図4を参照してシャッタ駆動回路100について詳細に説明する。図4はシャッタ駆動回路100の概念を示す回路図である。図4に示すように、シャッタ駆動回路100は、モータ30の負極にコンデンサ103が直列に接続されている。また、モータ30の正極は、スイッチ部(スイッチ手段)102に接続されている。このシャッタ駆動回路100は、スイッチ部102がA側に接続すると、モータ30とコンデンサ103と直流電源101とが直列接続されて、直流電源101からモータ30に電力が供給されると共にコンデンサ103に充電される充電回路が形成される。一方、スイッチ部102がB側に接続すると、モータ30とコンデンサ103とが直列接続され、コンデンサ103に充電された電力が放電されてモータ30に供給される放電回路が形成される。
【0023】
ここで、図4に示したシャッタ駆動回路100の具体的な回路構成の一例を図5に示す回路図を参照して説明する。図5に示すシャッタ駆動回路100では、図4に示したスイッチ部102の機能を、FET(Field Effect Transistor)等のスイッチ部102a、102bを用いて実現している。すなわち、図5に示すシャッタ駆動回路100では、スイッチ部102aをONにして、スイッチ部102bをOFFにした場合に、モータ30とコンデンサ103が直流電源101に直列接続された上述の充電回路が形成される。逆にスイッチ部102aをOFFにして、スイッチ部102bをONにした場合には、モータ30とコンデンサ103が直列接続された上述の放電回路が形成される。ここで、ダイオード104は、コンデンサ103からの放電時に、スイッチ部102aや直流電源101への電流の逆流を防止するために設けたものである。なお、直流電源101には、このモジュール1のコネクタ(図示せず)と接続され、モジュール1を駆動する電源ユニットを併用して用いることができる。また、スイッチ部102a及び102bのON・OFFの切り替えは、上記の電源ユニットから出力する電圧のON・OFFに連動した制御信号をスイッチ部102a及び102bに与えることによって実現される。
【0024】
このようなシャッタ駆動回路100では、上述の充電回路を形成すると、モータ30に電圧が印加されて、モータ30の回転軸28が回転すると共に、コンデンサ103に徐々に電荷が蓄積される。そして、コンデンサ103への充電が完了すると、モータ30には電圧がかからないため回転軸28の回転が停止する。この状態に至ったとき、モータ30には電圧がかからないため、電力が消費されない。一方、上述の放電回路を形成すると、コンデンサ103に蓄積された電力が放電されて、モータ30に供給される結果、モータ30の回転軸28が逆回転する。このように、コンデンサ103に充電された電力は、無駄無くモータ30の駆動に寄与する。すなわち、このシャッタ駆動回路100は少ない消費電力でモータ30の回転軸の正逆転を実現するので、光電子増倍管3に悪影響を及ぼす発熱を抑制できる。その結果、シャッタ駆動回路100が形成されたシャッタ駆動回路基板50を光電子増倍管3に近づけて暗箱2内に収容することが可能となるので、シャッタ付き光電子増倍管モジュール1の小型化を達成できる。」

引カ:【図1】

a:引ウの「暗箱2内の一方の隅には直方体形状の保護カバー12が暗箱2の内壁面に固定されて収容されている。そして、この保護カバー12内に、いわゆるヘッドオン型の光電子増倍管3を収容する」との記載及び図1の図示内容からして、暗箱2内において、光電子増倍管3が保護カバー12内に収容されているといえる。

b:引エの「図1に示すように、暗箱2内には、保護カバー12の後方に、分圧部51、高圧電源回路部52が収容されている。更に、モータ30の後方には、アンプ基板53が基板面を保護カバー12の側面に対向させた状態で収容されている。この分圧部51は、高電圧を光電子増倍管3の各電極部分に分圧して印加する機能を有し、高圧電源回路部52は、低電圧を高電圧に変換して、その電圧を分圧部51に供給する機能を有している。」との記載及び図1の図示内容からして、暗箱2内において、高電圧を光電子増倍管3の各電極部分に分圧して印加する分圧部51及び低電圧を高電圧に変換してその電圧を分圧部51に供給する高圧電源回路部52が保護カバー12の外側後方に収容されているといえる。

c:引エの「図1に示すように、モータ30の側方には、一方面上に4つのコンデンサ103を備えるシャッタ駆動回路基板50が、その他方面をモータ30に対向させた状態で配置されている。なお、シャッタ駆動回路基板50に形成されたシャッタ駆動回路100については後述する。また、図1に示すように、暗箱2内には、保護カバー12の後方に、分圧部51、高圧電源回路部52が収容されている。更に、モータ30の後方には、アンプ基板53が基板面を保護カバー12の側面に対向させた状態で収容されている。」との記載及び図1の図示内容からして、暗箱2内において、シャッタ駆動回路100が形成されたシャッタ駆動回路基板50が保護カバー12の外側側方に収容されているといえる。

これら記載事項及び図示内容を総合すると、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「暗箱2内に、光電子増倍管3と、シャッタ駆動回路100が形成されたシャッタ駆動回路基板50と、高電圧を光電子増倍管3の各電極部分に分圧して印加する分圧部51及び低電圧を高電圧に変換してその電圧を分圧部51に供給する高圧電源回路部52とを有するシャッタ付き光電子増倍管モジュール1において、
暗箱2内において、光電子増倍管3が保護カバー12内に収容され、分圧部51及び高圧電源回路部52が保護カバー12の外側後方に収容され、シャッタ駆動回路基板50が保護カバー12の外側側方に収容されるシャッタ付き光電子増倍管モジュール1。」

IV.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「光電子増倍管3」は本願発明の「検出管」に相当し、以下同様に、「高電圧を光電子増倍管3の各電極部分に分圧して印加する分圧部51及び低電圧を高電圧に変換してその電圧を分圧部51に供給する高圧電源回路部52」は「該検出管を作動するために必要な加速電圧を供給するための加速電圧供給ユニット」に、「シャッタ付き光電子増倍管モジュール1」は「光電子増倍システム」に、それぞれ相当する。

本願発明は、発明の詳細な説明の記載や図面の記載からして、「光電子増倍システム」が「検出管」及び「加速電圧供給ユニット」以外の構成を含むことを排除するものとはいえないから、引用発明の「暗箱2内に、光電子増倍管3と、シャッタ駆動回路100が形成されたシャッタ駆動回路基板50と、高電圧を光電子増倍管3の各電極部分に分圧して印加する分圧部51及び低電圧を高電圧に変換してその電圧を分圧部51に供給する高圧電源回路部52とを有するシャッタ付き光電子増倍管モジュール1」は、本願発明の「検出管と、該検出管を作動するために必要な加速電圧を供給するための加速電圧供給ユニットとを有する光電子増倍システム」に含まれる。
さらに、引用発明の「保護カバー12」はシャッタ付き光電子増倍管モジュール(光電子増倍システム)の暗箱2内を保護カバー12の内側と外側とに物理的に分離する「分離要素」であって、「保護カバー12内」と「保護カバー12の外側後方」とは、保護カバー12(分離要素)の「異なる側」といえるから、引用発明の「暗箱2内において、光電子増倍管3が保護カバー12内に収容され、分圧部51及び高圧電源回路部52が保護カバー12の外側後方に収容され」る構成と本願発明の「前記検出管(1)と前記加速電圧供給ユニット(2)は、熱的分離要素(3)の異なる側に配される」構成とは、「前記検出管と前記加速電圧供給ユニットは、分離要素の異なる側に配される」構成である点で一致する。

以上によれば、本願発明と引用発明とは次の点で一致する。
(一致点)
「検出管と、該検出管を作動するために必要な加速電圧を供給するための加速電圧供給ユニットとを有する光電子増倍システムにおいて、
前記検出管と前記加速電圧供給ユニットは、分離要素の異なる側に配される光電子増倍システム。」

そして、両発明は次の点で相違する。
(相違点)
検出管と、該検出管を作動するために必要な加速電圧を供給するための加速電圧供給ユニットとを異なる側に配する分離要素が、
本願発明では「熱的分離要素」であるのに対して、
引用発明では「保護カバー12」である点。

2.判断
相違点について検討する。
引用文献の引アの「本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、特に小型化を図ったシャッタ付き光電子増倍管モジュールを提供することを課題とする。」との記載、引イの「このシャッタ駆動回路は、・・・このように直流電源から供給される電力はコンデンサによる充放電によって、無駄なくシャッタ羽根の揺動に消費されるので、消費電力が少ない。よって、光電子増倍管に悪影響を及ぼす発熱を抑制できるので、光電子増倍管にシャッタ駆動回路を近づけて暗箱内に収容できる。ゆえに、シャッタ付き光電子増倍管モジュールの小型化が実現可能となる。・・・このモジュールに用いるシャッタ駆動回路は発熱が少ないため、光電子増倍管に近づけて暗箱内に収容することができるので、シャッタ付き光電子増倍管モジュールの小型化が実現可能となる。」との記載及び引オの「このシャッタ駆動回路100は少ない消費電力でモータ30の回転軸の正逆転を実現するので、光電子増倍管3に悪影響を及ぼす発熱を抑制できる。その結果、シャッタ駆動回路100が形成されたシャッタ駆動回路基板50を光電子増倍管3に近づけて暗箱2内に収容することが可能となるので、シャッタ付き光電子増倍管モジュール1の小型化を達成できる。」との記載からして、引用発明は、シャッタ駆動回路100の発熱を少なくすることにより、シャッタ駆動回路100が形成されたシャッタ駆動回路基板50を光電子増倍管3に近づけて暗箱2内に収容しても、シャッタ駆動回路100から発生する熱が光電子増倍管3に伝わって悪影響を及ぼさないようにしシャッタ付き光電子増倍管モジュール1を小型化するものといえる。
そうすると、引用発明において、光電子増倍管3は熱によって悪影響を受けるものであり、シャッタ駆動回路100の発熱が少なくされていても、依然としてシャッタ駆動回路100から発生した熱が暗箱2内に放出され続けることが明らかであることからすれば、シャッタ駆動回路基板50のシャッタ駆動回路100から発生した熱が保護カバー12内に収容された光電子増倍管3に伝わって悪影響を及ぼさないようにするために、保護カバー12の材料として断熱材を採用する等して、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項を得るようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願発明の効果は、引用発明から当業者が予測し得る範囲内のものであって、格別のものとはいえない。

3.まとめ
したがって、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

V.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-05-28 
結審通知日 2014-06-03 
審決日 2014-06-16 
出願番号 特願2006-45428(P2006-45428)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石田 佳久  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 横林 秀治郎
土屋 知久
発明の名称 光電子増倍システム及び顕微鏡  
代理人 加藤 朝道  
代理人 内田 潔人  

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