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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03B
管理番号 1293543
審判番号 不服2013-15928  
総通号数 180 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-08-16 
確定日 2014-11-06 
事件の表示 特願2011-202391「カメラシステムおよび交換レンズ」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 5月24日出願公開,特開2012- 98706〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は,平成23年9月15日(優先権主張平成22年10月6日)の出願であって,平成24年11月27日付けで拒絶理由が通知され,平成25年1月31日に意見書及び手続補正書が提出されたが,同年5月14日付けで拒絶査定がなされたところ,同年8月16日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され,当審において,平成26年5月29日付けで拒絶の理由が通知され,同年7月31日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2 本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明は,それぞれ,平成26年7月31日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。

「所定のイメージサークルを有するカメラシステムにおいて,
カメラボディに取り付けるためのレンズ側マウント部を有した前記イメージサークル内に像を結像可能な交換レンズと,
前記イメージサークル内に配置される撮像素子と,該撮像素子の受光面から所定距離離れた位置に配置される交換レンズを取り付けるためのボディ側マウント部を有したカメラボディと,を具備しており,
前記レンズ側マウント部の開口部の最大内径を持つ円弧部の半径をrM,前記ボディ側マウント部に前記レンズ側マウント部を取り付けた時の前記レンズ側マウント部から前記撮像素子の受光面迄の光軸上の距離であるフランジバックをda,前記所定のイメージサークルの直径をD,前記レンズ側マウント部から最も像側のレンズ面までの光軸上の距離をL(前記レンズ側マウント部を基準とし,像側をプラス,物体側をマイナスとする),前記ボディ側マウント部に取り付け可能な光学系の口径比を1/FNo,としたとき,次式
18.0mm≦ 2rM ≦ 34.0mm 条件式(1A)
18.0mm≦da ≦ 19.0mm 条件式(2)
14.0mm≦D ≦ 20.0mm 条件式(3)
-140.0mm≦L≦ 11.0mm 条件式(4)
2rM/da ≧ 1/FNo 条件式(5)
2rM/da ≧ 0.8 条件式(6A)
の条件を満足することを特徴とするカメラシステム。」

3 当審で通知した拒絶理由
当審において平成26年5月29日付けで通知した拒絶の理由のうち,「2 進歩性欠如」と題して通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)の概要は,本願の請求項1ないし4に係る発明は,公知公用発明及び引用文献に記載された事項に基いて,本願の優先権主張の日(以下,単に「本願優先日」という。)前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
なお,前記当審拒絶理由における公知公用発明とは,当該当審拒絶理由を通知する拒絶理由通知書において認定した,マイクロフォーサーズシステム規格に準拠する松下電器産業株式会社製レンズ交換式デジタルカメラ/レンズキット「DMC-G1K」等の販売開始等によって,本願優先日前に公然と実施され,広く知られるようになった発明のことであり,前記当審拒絶理由における引用文献とは,特開2005-6122号公報のことである。

4 引用例
(1)公知公用発明
ア マイクロフォーサーズシステム規格は,オリンパスイメージング株式会社及び松下電器産業株式会社が策定した,いわゆる「ミラーレス」タイプのレンズ交換式デジタル一眼カメラシステム(以下「ミラーレス型レンズ交換式デジタル一眼カメラシステム」という。)の規格であるところ,当該マイクロフォーサーズシステム規格に関して,次の事実が認められる。
(ア)本願優先日より前である平成20年8月5日に,マイクロフォーサーズシステム規格の概要が一般に公表された。
公表された2008年8月5日付け資料(http://www.olympus.co.jp/jp/news/2008b/nr080805fourthirdsj.jspを参照。)及びマイクロフォーサーズシステム規格のホワイトペーパー(http://www.four-thirds.org/jp/microft/whitepaper.htmlを参照。)には,次の記載がある(下線は,後述する公知公用発明の認定に特に関係する箇所を示す。)。
a 2008年8月5日付け資料の記載
「オリンパスイメージング株式会社(以下,オリンパスイメージング)と松下電器産業株式会社(以下,松下電器)は,レンズ交換式デジタル一眼レフカメラシステムの規格「フォーサーズシステム(Four Thirds System)規格」を拡張し,大幅な小型・軽量化を実現できる「マイクロフォーサーズシステム(Micro Four Thirds System)規格」を新たに策定しました。今後,両者は関連する要素技術とキーデバイスを共同で開発し,本規格を採用したデジタル一眼システムの商品化を推進していきます。・・・(中略)・・・
「マイクロフォーサーズシステム規格」の主な特徴は,以下の3点です。
1.フランジバック(マウントと撮像素子との間隔)の短縮=「フォーサーズシステム規格」の約1/2に短縮
2.マウント径の縮小=「フォーサーズシステム規格」より,外径を約6mm縮小
3.・・・(中略)・・・
※ 撮像素子の対角長は,「フォーサーズシステム規格」「マイクロフォーサーズシステム規格」両規格で共通です。
これらによって,コンパクトカメラとは一線を隔した,「フォーサーズシステム規格」用4/3型撮像素子で得られる高画質をそのままに,カメラボディー本体はもちろん,特に広角系レンズや高倍率ズームレンズを小型化することができます。これまでも小型・軽量化に関してユーザーメリットの高かった「フォーサーズシステム規格」ですが,その特長をさらに活かした,従来にない新しいコンセプトの超小型デジタル一眼システムの商品化が可能となります。」
b ホワイトペーパーの記載
「1.Overview
マイクロフォーサーズシステム規格(以下,マイクロフォーサーズ規格と呼ぶ)は,デジタルカメラ用のレンズ交換システムであるフォーサーズシステムが持つ小型軽量化の可能性をさらに追求するために生まれたフォーサーズシステムの拡張規格である。
よってマイクロフォーサーズ規格もフォーサーズシステムの4/3型の撮像素子を想定した記録画素エリアの基準対角長を基準としている。
マイクロフォーサーズ規格は,4/3 型の撮像素子を使うことでの小型化と画質の最適バランスを前提に,今後高まるであろう撮影機器の更なる小型軽量化ニーズやLive View撮影や動画撮影ニーズへの対応などを織り込むことを目的にフランジバック長の短縮化,レンズ側との信号伝達を高速・安定化させる信号接点の増設,小型化を容易にするマウント外径の小型化を行ったフォーサーズシステムと互換性を持つ拡張規格である。
2.背景
・・・(中略)・・・
3.狙い
マイクロフォーサーズ規格は,以下のような狙いで,開発されたものである。
(1)フォーサーズシステムの更なる小型軽量化を実現させながらも4/3 型撮像素子の合理的な高画質特性を保てるフォーサーズシステムの拡張規格であること。
(2)更なる小型化へのニーズやLive View撮影スタイルの発展に応えられるように根本的な構造部分から適応性を持った規格であること。
・Live View専用規格としてミラーボックスを持たない構造を基本とする。
・フランジバックをフォーサーズシステムの約1/2にする。
・強度を保持しつつ,マウント外径を小径化する。
・レンズとボディ間のデータ送受信と,制御を高速・円滑化するために接点を増強する。
(3)フォーサーズシステムが有する既存レンズシステムが活用できること。
・専用マウントアダプターにより互換性を維持させる。
※フォーサーズ規格対応のボディにマイクロフォーサーズ規格対応レンズを装着するケースには非対応。
(4)将来の動画対応も見据え,フォーサーズ規格が定める有効画素エリア対角長で4:3?16:9までのアスペクト比の撮影画面サイズに対応する。
4.システム概要
フォーサーズシステムとは135フィルムのフォーマット(36mm×24mm)の対角長の1/2となる対角長21.63mmを撮像系のフォーマットの基準とした交換レンズ式の撮像機器システムのことを指す。
マイクロフォーサーズシステムとはフランジバックを既存フォーサーズシステムよりも短くし,マイクロフォーサーズシステムに適した撮像素子(Micro Four Thirds System Sensor)を使用することを前提とした交換レンズ式の撮像機器システムを指し,フォーサーズシステムの一部(拡張規格)である。
5.マイクロフォーサーズでのマウントの変更について
・・・(中略)・・・
5-1.マイクロフォーサーズでのマウントのサイズ変更について
●フォーサーズシステムマウントとマイクロフォーサーズシステムマウントの違い:1
マウントの小型化
強度を保ちつつレンズの小型軽量設計を容易にするために各部を見直し,これまでの外径からφ約6mmの小型化を行っている。
・・・(中略)・・・
6.マイクロフォーサーズでのフランジバック変更について
約1/2になったフランジバック
一眼レフカメラシステムにおいては,交換する様々なレンズの焦点面を揃えるフランジバック(マウント面からフィルム/ 撮像素子面までの距離)の設定が重要である。一般にペンタプリズム式ファインダーなどによる観察を特徴とする一眼レフカメラにはミラーボックスが必要となるため,ミラーボックスを持たないコンパクトカメラなどに較べてフランジバックを長くせざるを得ない。
しかし,このことが一眼レフカメラの厚さを薄くできなかったり小型化を困難にしているもの事実である。
また現在のデジタル一眼レフにおいては,手ぶれ補正機構やダストリダクション装置,そしてローパスフィルターなど撮像素子面までの間に必要となる部材も多く,多くのユーザーが望むような薄型化を達成するための課題は更に増えている。
そこでLive View撮影の市場浸透と支持を背景にミラーボックスを排した条件での薄型小型化に最適なフランジバック規定をしたのがマイクロフォーサーズシステムである。
ローパスフィルターやダストリダクション装置などのデジタル一眼レフに不可欠な装置のスペースや,今後実装を予想される機構類のスペースを確保しつつ,レンズの駆動などにも支障をきたさない限界域としてフランジバックをフォーサーズシステム比での約1/2にまで短縮している。
このことと,マウントの外径寸法の小型化と合わせれば高画質性を犠牲にすることなく,市場の潜在ニーズに応えられるような薄型・小型化が可能になる条件が整備できたと言える。」

(イ)松下電器産業株式会社は,本願優先日より前である平成20年10月31日に,マイクロフォーサーズシステム規格に準拠する製品であるレンズ交換式デジタルカメラ/レンズキット「DMC-G1K」,ダブルズームレンズキット「DMC-G1W」,ボディ「DMC-G1」,望遠ズームレンズ「H-FS045200」の販売を開始した。
前記レンズ交換式デジタルカメラ/レンズキット「DMC-G1K」及びダブルズームレンズキット「DMC-G1W」に共通して付属した交換レンズの名称は,「LUMIX G VARIO 14-45mm/F3.5-F5.6 ASPH./MEGA O.I.S.」であって,その焦点距離は14mm?45mm(35mmフィルムカメラ換算28mm?90mm),Fナンバーは3.5(W端)?5.6(T端)であり,また,前記ダブルズームレンズキット「DMC-G1W」のみに付属した交換レンズであり,かつ,前記望遠ズームレンズ「H-FS045200」(品番)として単体でも販売された交換レンズの名称は,「LUMIX G VARIO 45-200mm/F4.0-F5.6/MEGA O.I.S.」であって,その焦点距離は45mm?200mm(35mmフィルムカメラ換算90mm?400mm),FナンバーはF4(W端)?F5.6(T端)である(2008年9月12日付けプレスリリース資料(http://panasonic.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn080912-1/jn080912-1.html)の
「【付属レンズ】(G1K・G1W)
レンズ名称 LUMIX G VARIO 14-45mm /F3.5-F5.6 ASPH./ MEGA O.I.S.
・・・(中略)・・・
焦点距離 14mm?45mm(35mmフィルムカメラ換算 28mm?90mm)
・・・(中略)・・・
開放絞り F3.5(W端)?F5.6(T端)
・・・(中略)・・・
(G1Wのみ)
レンズ名称 LUMIX G VARIO 45-200mm / F4.0-F5.6 / MEGA O.I.S.
・・・(中略)・・・
焦点距離 45mm?200mm(35mmフィルムカメラ換算 90mm?400mm)
・・・(中略)・・・
開放絞り F4(W端)?F5.6(T端)」
という記載等を参照。)。

イ マイクロフォーサーズシステム規格に準拠に準拠するレンズ交換式デジタル一眼カメラシステム(前記ア(イ)のレンズ交換式デジタルカメラ/レンズキット「DMC-G1K」,ダブルズームレンズキット「DMC-G1W」)が,カメラボディに取り付けるためのレンズ側マウント部を有する交換レンズと,交換レンズに取り付けるためのボディ側マウント部を有するカメラボディと,カメラボディに設けられた撮像素子とを具備すること,及び,前記交換レンズが撮像素子の受光面から所定距離離れた位置に配置されることは,当業者に自明である。
また,フォーサーズシステム規格におけるフランジバックが約40mm(38.67mm)であることが,マイクロフォーサーズシステム規格の公表時点で広く知られていたことから,当業者は,フォーサーズシステムのフランジバックの約1/2と公表されたマイクロフォーサーズシステムのフランジバックを約20mmと理解するものと推察されるし,少なくとも,マイクロフォーサーズシステム規格に準拠する製品の販売が開始された時点(前記ア(イ))で,当該製品のフランジバックを実測することにより,マイクロフォーサーズシステム規格におけるフランジバックの大きさが約20mmであることを容易に把握することが可能であったと認められる。

ウ 前記ア及びイからみて,遅くとも本願優先日より前である前記マイクロフォーサーズシステム規格準拠製品の販売が開始された平成20年10月31日には,次の発明が公然と実施され,広く知られるようになったものと認めることができる。
「カメラボディに取り付けるためのレンズ側マウント部を有する交換レンズと,撮像素子の受光面から所定距離離れた位置に配置される交換レンズに取り付けるためのボディ側マウント部を有するカメラボディと,カメラボディに設けられた撮像素子とを具備し,
撮像素子として,記録画素エリアの基準対角長が21.63mmである4/3型のものを用い,
フランジバックが約20mmであり,
交換レンズのFナンバーが3.5?5.6及び4?5.6である,
レンズ交換式デジタル一眼カメラシステム。」(以下,当該発明を「公知公用発明」という。)

(2)特開2005-6122号公報
ア 特開2005-6122号公報(以下,当審拒絶理由と同様本審決においても「引用文献」という。)には,次の記載がある。(下線は,後述する技術的事項の認定に特に関係する箇所を示す。)
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,交換レンズとその交換レンズが装着可能なカメラボディとからなるデジタルカメラシステムに関する。」

(イ)「【0054】
ここで,レンズ側マウント部37やボディ側マウント部47の光束を通過させるためのマウント開口形状,さらに,ミラーボックス42の光束通過部形状について説明する。
なお,以下の説明および図中の記載において,光軸Oに沿った方向をZ方向とし,Z方向の被写体側(レンズ側)を前方とし,撮像素子側(結像側)を後方とする。光軸Oと直交する方向であって,撮像素子の撮像範囲(光電変換面)の長辺に沿った方向をX方向(左右方向)として,その左右は,被写体側からみた方向で示す。また,光軸Oと直交する方向であって,撮像素子の撮像範囲(光電変換面)の短辺に沿った方向をY方向(上下方向)とする。
【0055】
本実施形態のデジタルカメラシステムにおいて,交換レンズ鏡筒12で取り込まれた被写体光束が撮像素子27の撮像範囲の周辺部にも入射するべく,マウント部や,ミラーボックスなど撮像素子とレンズとの間に配される部材に開口部を形成する必要がある。つまり,撮像範囲の中心部と周辺部とに均一に光を導くためには,撮像範囲の端部から,中心部に入射する光束角と同じ光束角が導かれるように開口部を形成する必要がある。このとき,周辺部に入射する光束の主光線が光軸に対し傾いていれば,その分,開口部の大きさを小さくすることができる。
【0056】
図5は,交換レンズ鏡筒12から取り込まれた被写体光束の撮像素子27への入射状態を示す光線図である。
図5に示すように交換レンズ鏡筒12の射出瞳径D0から入射する被写体光束は,撮像素子27の撮像範囲上の光電変換面27aの光軸O中心,または,周辺に入射する中心光束および周辺光束は,それぞれの主光線に対して光束角度θを有する。但し,光束角度θは,光束の片側の角度(半角)を示す。
【0057】
上記撮像範囲において,周辺部の光量不足が生じないようにするためには,周辺光束がレンズ側マウント開口部31a(少なくとも後述する開口範囲Rmの大きさを有する),および,ボディ側マウント開口部41a(後述する開口範囲Rmと同等,または,それを通過する光束を蹴らない開口),更に,ミラーボックス42の光通過部等で蹴られないことが必要となるが,撮影光学系12aが長焦点距離側(テレ側)限界では,上記周辺光束の主光線は,光軸Oと平行となり,図示するレンズ側開口部31aを必要とする。一方,撮影光学系12aが上記長焦点距離より短い短焦点距離側(ワイド側)では,上記周辺光束の主光線は,光軸O側に傾斜した光線となり,レンズ側開口部31aより狭い開口31a′でよいことになる。
【0058】
撮影光学系12aにおいて,射出瞳径D0の射出瞳位置12a0は,被写体距離が無限遠にある場合は結像位置である光電変換面27aから焦点距離fにあり,上記光束角度θは,
tan(θ)=D0 /(2×f) …(1)
で示される。射出瞳径D0 と焦点距離fとレンズのFno(Fナンバー)との関係は,
Fno=f/D0
であるので,光束角度θとFnoとの関係は,(1)式から
θ=tan^(-1)(1/(2×Fno)) …(2)
となる。
【0059】
図6は,光束角度θとFno(または,Av値)の関係を示した線図である。但し,図6上では,主光線の傾きが5度,または,10度の場合の光束角度θは,周辺光束の外側の光線が光軸Oとなす角度を示している。また,主光線の傾き角は,図5上で反時計周りの方向をプラスとする。
【0060】
また,光電変換面27aの撮像範囲を包含するイメージサークル(その直径Diとする。図11)を基準とすると,撮像面から所定距離(フランジバック)FBの位置における必要となるマウント部(レンズ側開口部31a,または,ボディ側開口部41a等)のマウント口径Dm(図11)は,
Dm=Di+2×FB×tanθ …(3)
または,
Dm=Di+FB/Fno …(4)
で示される。
【0061】
前述したように撮像素子27は,4/3型CCDであり,光電変換面27aの撮像範囲として略4:3のアスペクト比の17.8mm(長辺側)×13.4mm(短辺側)を有する(なお,上記撮像範囲は,後述する有効画素範囲Lw2×Lh2に対応する。図10)。この撮像範囲の四角形に外接するイメージサークルIceの直径Di2は,22.28mmとなる。」

(ウ)「【0077】
図10は,撮像素子27の光電変換面27aにおける有効画面範囲(有効撮像範囲)と記録画面範囲(撮像記録範囲),および,それぞれの範囲に対応するイメ-ジサークルを示した図である。
【0078】
撮像素子27は,図10に示すように撮像処理時,実際に画像情報として電気信号に変換され,取り込まれる範囲である記録画面範囲Lw1×Lh1は,撮像素子27が有する全撮像可能範囲である有効画面範囲Lw2×Lh2よりも小さくする必要がある。これは,撮像素子27により記録画素を作り出すためには,必要な記録画素の外周に設けられた領域(以下,周辺画素領域とする)が必要であるためである。また,撮像素子27自体の寸法精度,さらには,撮像素子固定板28,前板41等を介してカメラボディ11に取り付けられたときの組み立て位置誤差で光軸Oの位置と,撮像素子27の有効画面範囲Lw2×Lh2の中心とがずれ,そのずれを吸収するために上述のように記録画面範囲Lw1×Lh1よりも有効画面範囲Lw2×Lh2を大きくとる。
【0079】
そして,上記撮像範囲としての有効画面範囲Lw2×Lh2に入射する範囲の被写体光束が交換レンズ鏡筒12,および,カメラボディ11を通過するとき,蹴られないように開口形状を決定し,有効画面範囲Lw2×Lh2における周辺光の光量減少を生じさせないようにする必要がある。
【0080】
なお,記録画面範囲Lw1×Lh1の外接円が記録画面イメ-ジサークルIcrを与え,その直径は,Di1である。周辺画素領域を含む有効画面範囲(撮像範囲)Lw2×Lh2の外接円が有効画面範囲(撮像範囲)の有効画面イメ-ジサークル(撮像範囲イメ-ジサークル)Iceを与え,その直径は,Di2である。なお,実際の設計においては,有効画面イメ-ジサークルIceに対してわずか余裕を持たせ,有効画面イメ-ジサークルIceの直径Di2にΔdを含んで記録画面イメージサークルIcrに加えた直径Di3のイメ-ジサークルIc0による撮像範囲を適用して上述した各開口部形状の設定が行われる。具体的には,上記Δdとして約1mmの余裕分を見込んたイメージサークルIc0を上記録画面範囲に対応する基準イメージサークルとする。 但し,以下の説明においては,有効画面イメ-ジサークルIceを撮像範囲イメ-ジサークル(後述する基準イメ-ジサークルIc,その直径Di)とし,かつ,有効画面範囲Lw2×Lh2を撮像範囲(後述する撮像範囲Ri)として上述した各開口部形状の設定を行うものとして説明する。なお,有効画面範囲(撮像範囲)Lw2×Lh2の大きさは,本実施形態の場合,17.8mm×13.4mmである。」

イ 前記アから,引用文献には次の技術的事項が記載されていると認められる。
「レンズ側マウント部を有する交換レンズと,ボディ側マウント部を有するカメラボディと,カメラボディに設けられた撮像素子とを具備するデジタルカメラシステムにおいて,
撮像素子の記録画面範囲に対応する基準イメージサークルは,少なくとも,周辺画素領域を含む撮像素子の有効画面範囲(撮像範囲)の外接円を含む大きさとする必要があり,実際の設計においては,当該外接円に約1mmの余裕分を見込んだ大きさに設定されること,
及び,
撮像素子の有効画面範囲(撮像範囲)の周辺部の光量不足が生じないようにするためには,周辺光束がレンズ側マウント開口部等で蹴られないことが必要であり,そのためには,撮像面からフランジバックFBの距離だけ離れた位置におけるレンズ側マウント開口部のマウント口径Dmが,基準イメージサークルの直径をDi,レンズのFナンバーをFnoとして,
Dm=Di+FB/Fno
という大きさ以上であることが必要なこと。」(以下「引用文献記載の技術的事項」という。)

5 対比
本願発明と公知公用発明とを対比する。

公知公用発明の「レンズ交換式デジタル一眼カメラシステム」,「カメラボディ」,「レンズ側マウント部」,「交換レンズ」,「撮像素子」及び「ボディ側マウント部」が,本願発明の「カメラシステム」,「カメラボディ」,「レンズ側マウント部」,「交換レンズ」,「撮像素子」及び「ボディ側マウント部」に,それぞれ相当する。

また,「イメージサークル」とは,「レンズが良好に結像できる円形の範囲。カメラなどでは,結像範囲は長方形であるので,イメージサークルの直径は,その長方形エリアの対角線よりも大きければよい。」(「レンズ辞典&事典」(河合滋 編・著,オプトエレクトロニクス社 発行)の4頁左欄)を指す技術用語であるところ,公知公用発明の「交換レンズ」が「イメージサークル」内に像を結像すること,及び,公知公用発明の「撮像素子」が前記「イメージサークル」内に配置されることは明らかであるから,公知公用発明は,「所定のイメージサークルを有するカメラシステム」であるという本願発明の発明特定事項,「イメージサークル内に像を結像可能な交換レンズ」を具備しているという本願発明の発明特定事項,及び,「イメージサークル内に配置される撮像素子」を具備しているという本願発明の発明特定事項に相当する構成を具備している。

以上より,本願発明と公知公用発明とは,
「所定のイメージサークルを有するカメラシステムにおいて,
カメラボディに取り付けるためのレンズ側マウント部を有した前記イメージサークル内に像を結像可能な交換レンズと,
前記イメージサークル内に配置される撮像素子と,該撮像素子の受光面から所定距離離れた位置に配置される交換レンズを取り付けるためのボディ側マウント部を有したカメラボディと,を具備している,
カメラシステム。」である点で一致し,次の点で相違する。

相違点:
本願発明が,レンズ側マウント部の開口部の最大内径を持つ円弧部の半径をrM,ボディ側マウント部にレンズ側マウント部を取り付けた時のレンズ側マウント部から撮像素子の受光面迄の光軸上の距離であるフランジバックをda,所定のイメージサークルの直径をD,レンズ側マウント部から最も像側のレンズ面までの光軸上の距離をL(レンズ側マウント部を基準とし,像側をプラス,物体側をマイナスとする),前記ボディ側マウント部に取り付け可能な光学系の口径比を1/FNo,としたとき,次式
18.0mm≦ 2rM ≦ 34.0mm 条件式(1A)
18.0mm≦da ≦ 19.0mm 条件式(2)
14.0mm≦D ≦ 20.0mm 条件式(3)
-140.0mm≦L≦ 11.0mm 条件式(4)
2rM/da ≧ 1/FNo 条件式(5)
2rM/da ≧ 0.8 条件式(6A)
の条件を満足するのに対して,
公知公用発明では,rM及びLの値が定かでないことから,条件式(1A),(4),(5)及び(6A)を満足しているか否か不明であり,また,フランジバックdaが約20mmであることから条件式(2)を満足しておらず,さらに,撮像素子として記録画素エリアの基準対角長が21.63mmである4/3型のものを用いていて,イメージサークルの直径Dが当該基準対角長の21.63mm以上の値であると推察されることから,条件式(3)を満足していない点。

6 判断
(1)相違点の容易想到性について
ア 撮像素子には,公知公用発明(マイクロフォーサーズシステム規格)で用いられる4/3型サイズ(17.3mm×13.0mm)のほかにも,「フルサイズ」と呼称される36mm×24mmの大きさ,「APS-C」と呼称される23mm程度×15mm程度の大きさ,「1型」と呼称される13.2mm×8.8mmの大きさ,「2/3型」と呼称される8.8mm×6.6mmの大きさ等,様々なサイズの撮像記録範囲のものが存在することが,本願優先日前に当業者のみならず一般に広く知られていたところ(例えば,原査定の拒絶の理由において「引用文献1」として引用された特開平4-42206号公報の「しかし,CCTVカメラに使用する受像素子の発展に伴って,例えば,CCD素子の場合でも画面サイズが1”から2/3”へ,更に1/2”に移行し,今後は更に1/3”へ移行する傾向にあり,CCTVカメラも急速に小型化の傾向に動き出した。」(2頁左上欄8?13行)という記載,特開平6-148495号公報の「【0006】特に最近の監視カメラは,その撮像素子サイズが当初の1インチ(対角線寸法約15.9mm)から,2/3インチ(同11.0mm),1/2インチ(同8.0mm),1/3インチ(同6.0mm)と小型化されており,」という記載,特開平10-123416号公報の「【0002】【発明が解決しようとする課題】近年,ビデオカメラ等に使用されている固体撮像素子は,カメラ全体の小型化及び固体撮像素子の歩留まり(スループット)向上のため,素子サイズが年々,小さくなって行く傾向にある。例えば画質をあまり気にしない民生用ビデオカメラでは,1/3インチサイズの固体撮像素子が主流であり,最近1/4インチ,さらには1/5インチサイズの固体撮像素子も開発されている。また高画質を要求する放送用及び業務用ビデオカメラでは,まだ2/3インチサイズの固体撮像素子及び1/2インチサイズの固体撮像素子が主流であり,最も高画質を要求するハイビジョン用ビデオカメラに至っては,まだ1インチサイズの固体撮像素子が主流である」という記載等を参照。),レンズ交換式デジタル一眼カメラシステムにおいて,これら多様なサイズの撮像素子のうち如何なるサイズの撮像記録範囲のものを用いるのかは,小型化と画質のバランスやユーザーニーズ等を総合的に勘案して当業者が適宜決定すれば足りる設計上の事項にすぎない。
しかるに,フォーサーズシステム規格と同じ4/3 型の撮像素子を使うことでの小型化と画質の最適バランスを前提に,フォーサーズシステム規格に比べてフランジバック長の短縮化等を行った(前記4(1)ア(ア)bの「1.Overview」の欄を参照。)公知公用発明において,画質を多少犠牲にしつつもさらなる小型・軽量化を達成するために,撮像素子として,例えば4/3型よりも一回り小さな撮像記録範囲を有する1型(13.2mm×8.8mm)のものを採用するとともに,イメージサークルの直径やフランジバック長等の各種寸法を当該1型の撮像素子のサイズに対応するような小さな値に調整することは,当業者にとって通常の創作能力の発揮というほかない。
そこで,相違点に係る本願発明の発明特定事項の各条件式に係る各寸法毎に,以下でさらに検討する。

(ア)条件式(3)に係るイメージサークルの直径「D」について
前記4(2)イで認定したように,引用文献には,撮像素子の記録画面範囲に対応する基準イメージサークルは,少なくとも,周辺画素領域を含む該撮像素子の有効画面範囲(撮像範囲)の外接円を含む大きさとする必要があり,実際の設計においては,当該外接円に約1mmの余裕分を見込んだ大きさに設定されること(引用文献記載の技術的事項)が記載されているところ,当業者はこのような事情を当然熟知しているものと認められる。
そして,1型の撮像素子の撮像記録範囲は13.2mm×8.8mmであって,その対角長は15.9mmであるから,前記引用文献記載の技術的事項からみて,1型の撮像素子に対して設定されるイメージサークルの直径Dは,周辺画素領域及び約1mmの余裕分を見込んだ17?18mm程度となる。
そうすると,公知公用発明において,画質を多少犠牲にしつつもさらなる小型・軽量化を達成するために,撮像素子として4/3型よりも一回り小さな撮像記録範囲を有する1型のものを採用するとともに,イメージサークルの直径Dを当該1型サイズの撮像素子に適した17?18mm程度に設定することは,当業者が容易になし得たことというほかない。
そして,前記17?18mm程度というイメージサークルの直径Dは,「14.0mm≦D ≦ 20.0mm」という条件式(3)を満足する。
よって,公知公用発明において,条件式(3)を満足するよう構成することは,当業者が容易に想到し得たことである。

(イ)条件式(2)に係るフランジバック「da」について
a 当審拒絶理由において指摘したように,本願優先日より前の平成22年5月11日には,ソニー株式会社が,「Eマウント」の概要,及び,当該「Eマウント」に準拠するレンズ交換式デジタルカメラ「NEX-5」及び「NEX-3」の発売を発表した(ソニー株式会社のプレスリリース(http://www.sony.jp/CorporateCruise/Press/201005/10-0511/)を参照。)。
前記「Eマウント」は,ミラーレス型レンズ交換式デジタル一眼カメラシステムにおけるレンズマウントの規格であり,そのフランジバック長は18mmである(前記プレスリリースの「主な特徴」の「2.コンパクトカメラに迫るサイズを実現した世界最小^(※1)・最軽量^(※1)のスタイリッシュボディ」の欄の「フランジバック長(マウント面からイメージセンサーまでの距離)を従来の約40%の18mmまで短くし」との記載を参照。)。

b 公知公用発明におけるフランジバック長は,「ローパスフィルターやダストリダクション装置などのデジタル一眼レフに不可欠な装置のスペースや,今後実装を予想される機構類のスペースを確保しつつ,レンズの駆動などにも支障をきたさない限界域」(前記4(1)ア(ア)bの「6.マイクロフォーサーズでのフランジバック変更について」の欄を参照。)であるとマイクロフォーサーズシステム規格の策定者が考えた約20mmに設定されているところ,前記aのとおり,マイクロフォーサーズシステム規格の概要の公表時より後であって本願優先日より前である平成22年5月11日には,マイクロフォーサーズシステム規格のフランジバック長より小さな18mmというフランジバック長を有するミラーレス型レンズ交換式デジタル一眼カメラシステムが公表されていたのだから,ミラーレス型レンズ交換式デジタル一眼カメラシステムにおけるフランジバック長については,マイクロフォーサーズシステム規格の策定者が考えていたように約20mmが限界域というわけではなく,18mm程度にまで小さくできることが本願優先日より前に広く知られていたと認められる。
そうすると,公知公用発明において,さらなる小型化を達成するために,フランジバック長を18?19mmという範囲内の値にまで小さく調整することは,当業者が適宜なし得たことといわざるを得ない。
すなわち,公知公用発明において,条件式(2)を満足するよう構成することは,当業者が容易に想到し得たことである。

(ウ)条件式(1A)に係るレンズ側マウント部の開口部の最大内径を持つ円弧部の直径「2rM」について
前記4(2)イで認定したように,引用文献には,撮像素子の有効画面範囲(撮像範囲)の周辺部の光量不足が生じないようにするためには,周辺光束がレンズ側マウント開口部等で蹴られないことが必要であり,そのためには,撮像面からフランジバックFBの距離だけ離れた位置におけるレンズ側マウント開口部のマウント口径Dm(以下,「撮像面からフランジバックFBの距離だけ離れた位置におけるレンズ側マウント開口部のマウント口径Dm」を単に「レンズ側マウント口径Dm」という。)が,基準イメージサークルの直径をDi,レンズのFナンバーをFnoとして,
Dm=Di+FB/Fno
という大きさ以上であることが必要であること(引用文献記載の技術的事項)が記載されているところ,当業者はこのような技術的要請を当然熟知しているものと認められる。
しかるに,レンズ交換式デジタル一眼カメラシステムにおいてレンズ側マウント口径Dmを設定する際に,小型化するために,当該レンズ側マウント口径Dmの値を,周辺光束がレンズ側マウント開口部で蹴られないための必要最小限の値である前記「Di+FB/Fno」程度にまで小さく調整することは,当業者が容易になし得たことであるところ,イメージサークルの直径Dが前記(ア)の17?18mmであり,フランジバックdaが前記(イ)の18?19mmであり,Fナンバーが公知公用発明と同じ3.5?5.6及び4?5.6である場合の前記「Di+FB/Fno」の値は22.1(=17+18/3.5)?23.4(=18+19/3.5)mmであるから,公知公用発明において,レンズ側マウント口径Dmを22.1?23.4mm程度に調整することは,当業者が容易になし得たことというほかない。
ここで,一般に,レンズ側マウント開口部のマウント口径は位置に関わらず一定であって,「1型」サイズの撮像素子を採用した公知公用発明において,レンズ側マウント開口部のマウント口径を位置に応じて変化させなければならない特段の事情も見当たらないから,レンズ側マウント口径Dmは条件式(2)に係るレンズ側マウント部の開口部の最大内径を持つ円弧部の直径「2rM」に等しい。
したがって,レンズ側マウント口径Dmを22.1?23.4mm程度とした公知公用発明の「レンズ側マウント部の開口部の最大内径を持つ円弧部の直径「2rM」」は22.1?23.4mm程度の値となるが,当該「2rM」の値は「18.0mm≦ 2rM ≦ 34.0mm」という条件式(1A)を満足する。
以上のとおりであるから,公知公用発明において,条件式(1A)を満足するよう構成することは,当業者が容易に想到し得たことである。

なお,仮に,「1型」サイズの撮像素子を採用した公知公用発明において,Fナンバーが3.5よりも小さな交換レンズが装着できるようにレンズ側マウント口径Dmを調整することを想定したとしても,概ね実用域の最小値とされる1.2というFナンバー(http://ja.wikipedia.org/wiki/F%E5%80%A4の「開放F値」の欄の「現実的にはシャッタースピードの限界や被写界深度の問題があるため,最高でもF1.2からF1.4程度が実用域,F2.8程度あれば十分に明るいレベルといえる。」との記載を参照。)を有するきわめて大口径の交換レンズの周辺光束がレンズ側マウント開口部で蹴られないようにするためのレンズ側マウント口径Dmは32.0?33.8mmであって,装着可能な交換レンズの最小Fナンバーを実用域の最小値である1.2から公知公用発明の交換レンズの最小Fナンバーである3.5までの範囲内の値とした場合の「2rM」の値である22.1?33.8mmは条件式(1A)を満足するから,公知公用発明において条件式(1A)を満足するよう構成することが,当業者が容易に想到し得たことであることに何ら変わりはない。

(エ)条件式(4)に係るレンズ側マウント部から最も像側のレンズ面までの光軸上の距離「L」について
レンズ側マウント部から最も像側のレンズ面までの光軸上の距離「L」をどのような値に調整するのかは,像側のレンズ面が撮像素子等のカメラボディ側部材と干渉しない範囲で,交換レンズの全長が長くならないように,当業者が適宜決定すれば足りる設計上の事項にすぎない。
しかるに,フランジバック「da」が公知公用発明の約20mmや前記(イ)の18?19mmに設定されたミラーレス型レンズ交換式デジタル一眼カメラシステムにおいて,前記「L」の値として+11.0mmより大きい値の交換レンズを想定することは,バックフォーカス長の確保やカメラボディ側部材との干渉防止という観点からみて著しく困難であり,かつ,前記「L」の値として-140.0mmより小さい値を選択し,交換レンズの全長を長くすることも,小型化を目的とする限りおよそ考えられないから,ミラーレス型レンズ交換式デジタル一眼カメラシステムであり小型化をその目的とする公知公用発明において,前記「L」を-140.0mm以上11.0mm以下の範囲内の値に調整することは,当業者が適宜なし得たことである。
よって,公知公用発明において,条件式(4)を満足するよう構成することは,当業者が適宜なし得た設計上の事項である。

(オ)条件式(5)に係る「2rM/da」及び「1/FNo」の大小関係について
レンズ側マウント部の開口部の最大内径を持つ円弧部の直径「2rM」が前記(ウ)の22.1?23.4mm程度の値であり,フランジバック「da」が前記(イ)の18?19mmであるレンズ交換式デジタル一眼カメラシステムにおいて,条件式(5)の左辺「2rM/da」の値は約1.16?約1.30となる。
一方,公知公用発明の3.5?5.6及び4?5.6というFナンバーを有する交換レンズを装着するレンズ交換式デジタル一眼カメラシステムにおいて,条件式(5)の右辺「1/FNo」の値は約0.18?約0.29となる。
そうすると,レンズ側マウント部の開口部の最大内径を持つ円弧部の直径「2rM」を前記(ウ)の22.1?23.4mm程度の値に調整し,フランジバック「da」を前記(イ)の18?19mmに調整した公知公用発明は,必然的に条件式(5)を満足することとなる。

なお,仮に,「1型」サイズの撮像素子を採用した公知公用発明において,Fナンバーが3.5よりも小さな交換レンズが装着できるようにレンズ側マウント口径Dmを23.4?33.8mm(前記(ウ)を参照。)の範囲内の適宜値に調整することを想定したとしても,その場合の条件式(5)の左辺「2rM/da」の値は約1.23?約1.53となり,条件式(5)の右辺「1/FNo」の値は約0.18?約0.83となって,条件式(5)を満足するから,前記(イ)及び(ウ)の変更を行った公知公用発明が必然的に条件式(5)を満足することとなることに何ら変わりはない。

(カ)条件式(6A)に係る「2rM/da」について
前記(オ)で述べたように,レンズ側マウント部の開口部の最大内径を持つ円弧部の直径「2rM」を前記(ウ)の22.1?23.4mm程度の値に調整し,フランジバック「da」を前記(イ)の18?19mmに調整した公知公用発明においては,条件式(6A)の左辺「2rM/da」の値が約1.16?約1.30となるところ,当該値は条件式(6A)の右辺である0.8を越えているから,前記(イ)及び(ウ)の変更を行った公知公用発明は必然的に条件式(6A)を満足することとなる。

なお,仮に,「1型」サイズの撮像素子を採用した公知公用発明において,Fナンバーが3.5よりも小さな交換レンズが装着できるようにレンズ側マウント口径Dmを23.4?33.8mm(前記(ウ)を参照。)の範囲内の適宜値に調整することを想定したとしても,その場合の条件式(6A)の左辺「2rM/da」の値は約1.23?約1.53となり,条件式(6A)の右辺である0.8を越えていて,条件式(6A)を満足するから,前記(イ)及び(ウ)の変更を行った公知公用発明が必然的に条件式(6A)を満足することとなることに何ら変わりはない。

イ 前記アのとおりであるから,公知公用発明を,相違点に係る本願発明の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

(2)効果について
本願発明の奏する効果は,公知公用発明の奏する効果及び引用文献の記載に基づいて,当業者が予測できた程度のものである。

(3)まとめ
以上のとおりであるから,本願発明は,当業者が公知公用発明及び引用文献の記載事項に基づいて容易に発明をすることができたものである。

7 むすび
本願発明は,当業者が公知公用発明及び引用文献の記載事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は,他の請求項について検討するまでもなく,当審拒絶理由によって拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-09-08 
結審通知日 2014-09-09 
審決日 2014-09-22 
出願番号 特願2011-202391(P2011-202391)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鉄 豊郎居島 一仁  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 西村 仁志
清水 康司
発明の名称 カメラシステムおよび交換レンズ  
代理人 渡辺 隆男  
代理人 永井 冬紀  
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