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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B25C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B25C
管理番号 1293983
審判番号 不服2013-19215  
総通号数 181 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-10-03 
確定日 2014-11-13 
事件の表示 特願2008-165319「電動式打込機」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 1月14日出願公開、特開2010- 5714〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成20年6月25日に出願され、平成24年12月20日付けて拒絶の理由が通知され、平成25年2月25日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年6月28日付けで拒絶をすべき旨の査定がされた。これに対し、同年10月3日付けで当該査定を不服として本件審判が請求され、同時に手続補正書が提出され特許請求の範囲及び明細書が補正され、同年12月27日付けの当審の審尋に対し、平成26年2月24日付け回答書が提出されている。

第2 平成25年10月3日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

平成25年10月3日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1. 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲及び明細書について補正するものであって、補正前後の請求項1の記載は、補正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。

(1) 補正前
「【請求項1】
モータと、
ノーズ部に止具を供給するマガジンと、
上死点および下死点間で移動可能に配設され、初期状態において前記ブレードの先端は先頭の前記止具の上端よりも下方に位置し、かつ前記ノーズ部に供給される前記止具を打込むためのブレードを有するプランジャと、
前記止具を打込む方向に前記プランジャを付勢する付勢手段を有し、前記モータの駆動力に基づいて、前記プランジャを駆動する駆動部と、
ユーザが操作するトリガスイッチと、
前記マガジンに収納された前記止具が所定残量より少ないことを検出する釘残量検出部と、
前記トリガスイッチおよび前記釘残量検出部に基づきオン又はオフして前記モータへの通電を制御する通電スイッチと、
を有し、前記プランジャに前記付勢手段に蓄積された圧縮力が伝達されることによって前記止具を打込む電動式打込機であって、
前記トリガスイッチがオンされたときに、前記釘残量検出部で前記止具が所定残量より少ないと検出した場合には前記通電スイッチをオフし、前記トリガスイッチがオンされてから、前記止具の打込みが完了する前に前記釘残量検出部で前記止具が所定残量より少ないと検出した場合には、少なくとも前記止具の打込み完了まで前記通電スイッチのオンを継続する通電制御回路と、
を有することを特徴とする電動式打込機。」

(2) 補正後
「【請求項1】
モータと、
ノーズ部に供給される止具を打込むためのブレードを有し、上死点および下死点間で移動可能に配設され、初期状態において前記ブレードの先端は先頭の前記止具の上端よりも下方に位置するプランジャと、
前記ノーズ部に供給される前記止具を保持する保持部と、前記保持部の長手方向に移動可能に取り付けられており、前記止具を前記ノーズ部に向けて付勢し、前記ブレードの先端が初期位置から前記止具の上端よりも上方に移動したときに前記ノーズ部に向けて移動して先頭の前記止具を前記ノーズ部内に給送する給送部とを備えたマガジンと、
前記止具を打込む方向に前記プランジャを付勢する付勢手段を有し、前記モータの駆動力に基づいて、前記プランジャを駆動する駆動部と、
ユーザが操作するトリガスイッチと、
前記給送部が所定位置に移動することにより、前記マガジンの前記保持部に保持された前記止具が所定残量より少ないことを検出する釘残量検出スイッチと、
前記トリガスイッチおよび前記釘残量検出スイッチに基づきオン又はオフして前記モータへの通電を制御する通電スイッチと、
を有し、前記プランジャに前記付勢手段に蓄積された圧縮力が伝達されることによって前記止具を打込む電動式打込機であって、
前記トリガスイッチがオンされたときに、前記釘残量検出スイッチが前記止具が所定残量より少ないと検出した場合には前記通電スイッチをオフし、前記トリガスイッチがオンされてから、前記止具の打込みが完了する前に前記釘残量検出スイッチが前記止具が所定残量より少ないと検出した場合には、少なくとも前記止具の打込み完了まで前記通電スイッチのオンを継続する通電制御回路と、
を有することを特徴とする電動式打込機。」

2. 補正の適否
請求項1に対する上記補正は、以下のとおりである。

・補正事項1
「プランジャ」について、本件補正前は、「モータと、ノーズ部に止具を供給するマガジンと、上死点および下死点間で移動可能に配設され、初期状態において前記ブレードの先端は先頭の前記止具の上端よりも下方に位置し、かつ前記ノーズ部に供給される前記止具を打込むためのブレードを有するプランジャ」と、先行する記載に「ブレード」の語句がないにもかかわらず、「前記ブレード」(下線は当審にて付した。)とされた誤記を訂正する点。
・補正事項2
本件補正前の「ノーズ部に止具を供給するマガジン」を、「前記ノーズ部に供給される前記止具を保持する保持部と、前記保持部の長手方向に移動可能に取り付けられており、前記止具を前記ノーズ部に向けて付勢し、前記ブレードの先端が初期位置から前記止具の上端よりも上方に移動したときに前記ノーズ部に向けて移動して先頭の前記止具を前記ノーズ部内に給送する給送部とを備えたマガジン」と、技術的に限定する点。
・補正事項3
本件補正前の「釘残量検出部」を、「釘残量検出スイッチ」と限定し、かつ、本件補正前の「釘残量検出部」が、「前記マガジンに収納された前記止具が所定残量より少ないことを検出する」ものであったところ、本件補正後の「釘残量検出スイッチ」は、「前記給送部が所定位置に移動することにより、前記マガジンの前記保持部に保持された前記止具が所定残量より少ないことを検出する釘残量検出スイッチと、」と、「検出」が「給送部が所定位置に移動することにより」により行われ、「止具」が「マガジンの前記保持部に保持された」ものであるよう、技術的に限定する点。

そうすると、請求項1に対する上記補正事項1は、誤記の訂正を目的とするものであり、上記補正事項2ないし3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。

(1) 補正発明
補正発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲及び明細書並びに図面の記載からみて、上記1.(2)の本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。

(2) 引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である、特開2008-68357号公報(以下、「引用文献1」という。)及び特開2008-12615号公報(以下、「引用文献2」という。)には、それぞれ図面ともに以下の記載がある(なお、理解の便のため、当審で下線を付した)。

(2-1) 引用文献1

ア. 引用文献1の記載

(ア)
「【0001】
本発明は、釘、ステープル等の留め具の打撃駆動源としてモータを使用する打込機に関し、特に、電動式打込機におけるモータの回転駆動力を、留め具を打撃するドライバブレードを有する駆動子に直線駆動力として伝達するクラッチ機構を含む動力伝達機構とモータの動作タイミングを制御するコントローラとを備えた電動式打込機に関する。」

(イ)
「【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、遅延回路の挿入によって、留め具残量センサの留め具残量信号が、留め具残量検出回路に入力されるまでの時間を遅らせ、留め具打込み動作が進行しているその回の留め具打込み動作が完了した後に、留め具残量信号が留め具残量検出回路から出力される。この結果、マガジン内の留め具残量が少なくなった場合に出力される留め具打ち動作を停止させる留め具残量信号が出力されても、進行中の留め具打込み動作が完結するまでは制御信号として入力させないようにした留め具残量検出回路を有する電動式打込機を提供できる。」

(ウ)
「【0022】
図1の上面図および図2の側面図に示すように、電動式打込機100は、前端部に留め具打撃部(ノーズ部)1cを有する本体ハウジング部1aと、本体ハウジング部1aの留め具打撃部1cに設置され、この留め具打撃部1cの通路1eに釘等の留め具(図示なし)を連続的に供給するためのマガジン2と、本体ハウジング部1aから連結し垂下して延びるハンドルハウジング部1bと、ハンドルハウジング部1bの連結部(分岐部)に設けられた、留め具打込み時に操作するためのトリガスイッチ5と、留め具打撃部1cの先端部に設けられ、工作物に押し当てることによって留め具打込みタイミングを調整するプッシュレバースイッチ22と、ハンドルハウジング部1bの下端に接続したリチウムイオン電池等の蓄電池から構成される電池パック7とから構成されている。
【0023】
マガジン2内には、図示されていなが、多数の連結留め具(ブロック)で充填されており、その連結留め具は、留め具打撃部1cのノーズ通路1eに打撃される留め具が順次供給されるように、マガジン2の下方よりバネ(図示なし)により付勢されている。マガジン2に関連し、後述する本発明に係るマイクロスイッチから成る留め具残量センサ257が設けられる。留め具残量センサとして機能するマイクロスイッチ257は、マガジンマ2内の連結釘(留め具)の釘送り機構部2aに係合するアーム257aを有し、マガジン2内に整列された留め具の残量が少なくなると、アーム257aが押圧されてオン状態となるスイッチである。マイクロスイッチ257に関連して設けられる留め具残量検出回路406(図9参照)については後述する。」

(エ)
「【0025】
本体ハウジング部1a内には、留め具打撃部1cに送られる留め具に打撃力を与えて打込むための駆動子(プランジャ)3が設けられる。駆動子3は、ノーズ通路1e内の留め具の頭に打撃力を伝えるドライバブレード3aと、後述する回転運動するピニオン11と噛合うラック3bとを有する。駆動子3のラック3bとラック3bに噛合うピニオン11とは、ピニオン11の回転駆動力を駆動子3に直線駆動力として与える駆動子送り機構3cを構成する。
【0026】
他方、図4に示されるように、本体ハウジング部1a内には、電池パック7(図2参照)による直流電源で駆動され、釘等の留め具を打込む動力源となるモータ(DC整流子モータ)6と、モータ6の回転軸に固定されたモータギア8と、モータギア8とギヤで噛合うフライホイール9と、フライホイール9を回転可能に支持する駆動回転軸10と、ピニオン11を回転可能に支持する従動回転軸12と、同軸上に設けられた駆動回転軸10端部と従動回転軸12端部(左端部)とをそれぞれ内包するコイルスプリング13と、ピニオン11の回転軸方向にソレノイド駆動部(シャフト)15を駆動する係合離脱手段(クラッチ部)となるソレノイド14とが設置されている。・・・中略・・・
【0027】
また、ソレノイド駆動部15の端部には、図4に示すように、傾斜溝部16aを有する付勢部材16とソレノイド戻りバネ17を配設し、付勢部材16およびソレノイド戻りバネ17を、円筒状の従動回転軸12の内周面側に設置する。さらに、円筒状の従動回転軸12の内周面には駆動子戻りバネ23が設けられる。この駆動子戻りバネ23の一端部23aは円筒状の従動回転軸12に固定され、その他端部23bはソレノイド14が取付けられる固定壁部24に固定される。これによって、駆動子3は、釘(留め具)を打込み後に従動回転軸12がコイルスプリング13との連結が離脱された状態になると、先端側へと付勢する力が働かなくなるため、駆動子戻りバネ23により後端側へと移動されて釘を打込前の状態に戻る。円筒状の従動回転軸12の内周面内に付勢部材16、ソレノイド戻りバネ17および駆動子戻りバネ23を設置することにより動力伝達機構の小型化を図っている。」

(オ)
「【0034】
[コントローラ50の回路構成]
次に、本体ハウジング部1a内に設けられているコントローラ50の回路構成について、図9を参照して説明する。なお、以下の説明おいてコントローラ(制御装置)50とは、マイクロコンピュータ228(図2参照)等の制御信号を出力する制御回路自体の他に、該制御回路によって制御されるモータ6の駆動回路、ソレノイド14の駆動回路、表示器(LED)駆動回路等の駆動出力回路(パワー出力回路)を含むものとする。
【0035】
<マイクロコンピュータ228の構成>
マイクロコンピュータ(以下、単に「マイコン」と称する)228は、後述する図13乃至図15に示された、留め具打込み動作を制御する制御手順(ルーチン)を実行するために設けられている。つまり、上述したプッシュレバースイッチ22、トリガスイッチ5等の制御入力信号に基づいて、留め具打込み動作に必要なモータ6の回転、ソレノイド14の駆動等を制御するために設けられる。マイコン228は、図示されていないが、モータ6の駆動制御およびソレノイド14の駆動制御などの制御プログラムを格納し、また後述するモータ6の検知逆起電圧からモータ6への電力供給のオン時間等を記憶するROMと、ROMに格納された制御プログラム等を実行する演算部を有するCPU(中央処理装置)と、CPUの作業領域の記憶や、モータ逆起電圧検知回路から入力された逆起電圧に関するデータを一時記憶するためのRAMと、基準クロック信号発生器を含むTIM(タイマー)等を備える。」

(カ)
「【0054】
<モータ駆動回路およびモータ逆起電力検出回路403の構成>
モータ6の駆動回路は、モータ6に直列接続されたNチャンネル型パワーMOSFET等から成るモータ駆動用のスイッチング素子272(以下、第1のスイッチング素子272と称する)と、その駆動部を構成するPNP型トランジスタ282およびNPN型トランジスタ283とを具備する。第1のスイッチング素子272はモータ6への電力供給をオン/オフ制御するためにモータ6と直列接続されている。この直列回路には、高い電力供給を行うために、電池パック7の電池電圧VBATが直接印加される。第1のスイッチング素子272のゲートには分圧抵抗器272aおよび273が接続され、トランジスタ282の負荷抵抗を形成している。トランジスタ282のオン動作により第1のスイッチング素子272がオンするように構成されている。トランジスタ282のベースにはベース電流制限用抵抗器285を通じてNPN型トランジスタ283のコレクタが接続される。NPN型トランジスタ283のベースはベース電流制限用抵抗器284を介して後述するオペアンプ256の出力に接続され、トランジスタ283のエミッタはマイコン228の出力端子OUT0に接続されている。この回路構成により、オペアンプ256の出力がレベル“1”で、マイコン228の出力端子OUT0がレベル“0”出力のとき、NPN型トランジスタ283およびPNP型トランジスタ282がオンして、モータ駆動用スイッチング素子であるNチャンネル型パワーMOSFET272がオンするように構成する。・・・後略・・・」

(キ)
「【0061】
<留め具残量検出回路406の構成>
本発明に従って、留め具残量検出回路406が設けられる。留め具残量検出回路406は、留め具残量センサ257と、オペアンプ256と、遅延回路401とを具備し、マガジン2に装填された釘等の留め具の残量が1本または少量になったことを検出するための回路である。留め具残量センサ257は、マガジンマ2内の連結釘(留め具)の釘送り機構部2a(図2参照)に関連して設けられたマイクロスイッチから成り、マガジン2内に整列されている釘の残量が少なくなると、マイクロスイッチ257のアーム257aが、マガジン2内の釘送り機構部2aと当接または接触してオンする。留め具残量センサ(マイクロスイッチ)257がオンすることにより、留め具残量センサ257のオフ時に抵抗器245と充電スピードアップ用ダイオード255を介してコンデンサ253に充電されていた電荷を、抵抗器254を介して緩やかに放電させると共に、マイコン228の入力端子IN3をそれまでの“1”から“0”に反転させる。本発明に従って設けられた遅延回路401は、コンデンサ253および抵抗器254から構成され、スイッチ(留め具残量センサ)257のオン動作によって発生した“0”信号がオペアンプ256の非反転入力端子(+)に“0”信号として入力されるまでの時間を遅延または減衰させる機能を持つ。その遅延時間は、コンデンサ253および抵抗器254の時定数によって決定され、ドライバブレードによる留め具打込み動作期間に対応する時間に設定される。この遅延回路401の機能については後述する。
【0062】
オペアンプ256の反転入力端子(-)には、電源電圧Vccを抵抗器250と抵抗器252によって分圧された電圧が印加されており、留め具残量センサ257のオンによりオペアンプ256の非反転入力端子(+)は、電源電圧Vccに近いレベル“1”から略0Vのレベル“0”に変化するので、オペアンプ256の出力端子はそれまでのレベル“1”出力からレベル“0”出力に反転する。オペアンプ256の出力端子がレベル“0”出力に反転することにより、留め具残量表示器を構成するLED(発光ダイオード)249が点灯し、マガジン2内の留め具が少量となったことを警告すると共に、第1のスイッチング素子272および第2のスイッチング素子295をオフさせてドライバブレードによる留め具打込み動作を停止させる。・・・後略・・・」

(ク)
「【0069】
[電動式打込機100の留め具打込みの基本動作]
次に、電動式打込機100の留め具打込みの基本動作を機械的な観点から説明する。作業者が、トリガスイッチ5を引き、さらにプッシュレバースイッチ22を被加工部材(工作物)に押し当てると、コントローラ50の制御動作により第1のスイッチング素子272がオンし、電池パック7を電源にしてモータ6が回転する(図1参照)。これによって、モータ6の回転駆動力は、モータ6と機械的に接続されたモータギア8を介してフライホイール9に伝達され、さらに駆動回転軸10に取付けられたコイルスプリング13を回転させる(図4参照)。この状態では、モータ6の回転数の増加と共に、フライホイール9の回転速度が時間と共に所定値まで増加する。フライホイール9は、モータ6の駆動により回転速度が大きくなるほど、大きな運動エネルギーを蓄積する。・・・中略・・・
【0070】
フライホイール9の回転が所定時間経過後、コントローラ50がソレノイド14を励磁すると、図7および図8に示すように、ソレノイド駆動部15および付勢部材16がフライホイール9に向う方向に動くため、付勢部材16の傾斜溝16aによってボール19が従動回転軸12の穴18より外周側に押し出され、穴18より外周側に突出したボール19はクラッチリング25の溝部25aと係合し、クラッチリング25は従動回転軸12にボール19を介して機械的に接続されることになる。従って、コイルスプリング13の他端部13bはクラッチリング25の穴25bに挿入されているので、クラッチリング25の回転とともに、コイルスプリング13の右側スプリング部13dは従動回転軸12に巻き付けられることになる。その結果、駆動回転軸10の回転力を利用して発生する巻付き力によってコイルスプリング13と従動回転軸12の外周面とで必要十分な摩擦力が発生し、従動回転軸12は数十ミリ秒以内に十分な回転速度を得ることができる。さらに、従動回転軸12が回転するとピニオン11が同期して回転するため、ピニオン11と駆動子3のラック3bが噛合う駆動子送り機構3cは、ドライバブレード3aをマガジン2に充填された留め具に近づく方向に動き、ドライバブレード3aが留め具と衝突完了(打撃)した時に打込みが終わる。
【0071】
打込み完了時にはソレノイド14の駆動も終了し、ソレノイド戻りバネ17のバネ力によってソレノイド駆動部15および付勢部材16を初期位置に戻す。付勢部材16が初期位置に戻るとボール19の押付け力が消失するので、ボール19とクラッチリング25との摩擦力が無視できるほど小さくなり、コイルスプリング13の内径が自然状態になるまで拡大する。このとき、駆動回転軸10から従動回転軸12への動力伝達は切断されるので、駆動子戻りバネ23によってドライバブレード3と、駆動子送り機構3cのピニオン11および駆動子3とは初期状態に戻る。」

(ケ)
「【0106】
単発モードあるいは連発モードで1本の留め具を打ち込み終了時に、留め具残量センサ(マイクロスイッチ)257のアーム257aが留め具の残量が少ないことを検知すると、留め具残量センサ257がオンする。このオン動作によって、遅延回路401を構成するコンデンサ253は抵抗器254を介して留め具残量センサ257で放電され、オペアンプ256の非反転入力端子(+)は反転入力端子(-)よりも低い入力電圧になるので、オペアンプ256の出力端子はそれまでのレベル“1”出力からレベル“0”出力に反転し、留め具残量表示器であるLED249が点灯すると同時に、トランジスタ298およびトランジスタ283はベース電流が供給されないためにオフ状態となる。その結果、第1のスイッチング素子272および第2のスイッチング素子295はゲート電圧が供給されないのでオフ状態を維持し、モータ6およびソレノイド14はオフされて留め具打込み動作は停止される。
【0107】
このとき、留め具残量センサ257は、電動式打込機100の留め具打込み動作中に留め具打込みの衝撃、反動等を受けてマイクロスイッチ(257)の可動接触片が振動して短い時間であるが不必要にオンする場合がある。また、留め具の打込み動作中に留め具残量が無いことを検知する場合もある。従って、このような不用意な留め具残量センサ257のオン動作または打込み動作中の留め具残量センサ257のオン動作に対して、直ちに不必要な打込み動作が開始または停止されないように、本発明に従って遅延回路401が付加されている。遅延回路401のコンデンサ253と抵抗器254の放電時定数は、ドライバブレード3aによる留め具打込み動作期間、マイクロスイッチ(257)の可動接触片の固有振動時間に対応して決定され、例えば、150ミリ秒に設定される。この遅延回路401の遅延機能または減衰機能によって、不用意な残量センサ257のオン動作によって発生する接地電位がオペアンプ256の非反転入力端子(+)に供給されるのを防止し、また打込み動作中に残量センサ257が少残量を検知してオン動作しても非反転入力端子(+)の入力電圧を急激に低下させないために、進行中の留め具打込み動作は直ちに停止または阻害されることはない。
【0108】
[本発明の効果]
以上説明した実施形態より明らかなように、本発明によれば、マガジン2内に整列保持された前記複数留め具(例えば、釘)の残量を検知して留め具の残量が所定以下になったら残量信号(留め具無しを示す信号)を発生する留め具残量センサ257と、留め具残量センサ257で発生する残量信号(スイッチオン信号)の入力に基づいて、制御手段(299、283等)を制御するための制御信号(レベル“0”信号)を出力する留め具残量検出回路406と、留め具残量センサ257で発生する残量信号(オン信号)を所定時間(例えば、20ミリ秒)遅延させ留め具残量検出回路256(406)に入力するための遅延回路(401)とを具備するので、留め具残量センサ257に発生する残量信号(オン信号)が、ドライバブレード3aによる留め具打込み動作期間中には、遅延回路401によって留め具残量検出回路406に入力されないようにできる。その結果、進行中の留め具打込み動作が完結するまでは打込み動作を停止させないようにできる。」

(コ)
引用文献1に記載された「駆動子(プランジャ)3」(段落【0025】)は、上記摘記事項(エ)から、「初期状態」に位置した「プランジャ(3)」が、「電動式打込機」の駆動に応じて「留め具」の打込みが終わる位置まで移動し、その後「駆動子戻りバネ23」によって「初期状態」の位置まで戻るものである。ここで、本願明細書の「プランジャ8反歩の上死点側には円盤形状のプランジャプレート8bが設置され、その略中心が、ブレード8aの上死点側先端と接続されている。」(段落【0018】)及び「ブレード8aが下死点側に移動した際には、ブレード8a先端によりノーズ5の射出路5a内にある釘はノーズ5先端より押し出され、被打込部材に打ち込まれる。」(段落【0022】)との記載から、「上死点」及び「下死点」の上下は、打込みに時に「留め具」の移動が上方から下方となるように設定されているところ、これに倣って上下を定めると、引用文献1に記載された「プランジャ(3)」も、「初期状態」の位置である「上死点」と、「留め具」の打込が終わる位置である「下死点」の間で移動可能に配設されたものであるということができる。

(サ)
上記摘記事項(ウ)の「留め具打撃部(ノーズ部)1c」及び「マガジン2内には、図示されていなが、多数の連結留め具(ブロック)で充填されており、その連結留め具は、留め具打撃部1cのノーズ通路1eに打撃される留め具が順次供給されるように、マガジン2の下方よりバネ(図示なし)により付勢されている。」から、「マガジン2」には、「留め具」を保持するための「保持部」が存在することは当業者にとって自明である。また、「留め具」を打込むために、「ノーズ通路1eに打撃される留め具」を「順次供給」することは、「留め具」を「ノーズ部(1c)」に送ることでもあるから、「留め具」が給送されるともいえるから、「マガジン(2)」には、「留め具をノーズ部(1c)内に給送する給送部」が存在すること、そして、上記摘記事項(エ)の「駆動子3は、ノーズ通路1e内の留め具の頭に打撃力を伝えるドライバブレード3a・・・を有する」から、「ノーズ部(1c)」内で「ドライバブレード(3a)」と送給されてきた「留め具」が干渉することを防止するために、上記「給送部」は、「ドライバブレード(3a)」の先端が「留め具」の上端よりも上方に移動したときに「留め具」を「ノーズ部(1c)」内に給送するものであることは当業者にとって自明である。

(シ)
上記摘記事項(ケ)の、「・・・1本の留め具を打ち込み終了時に、留め具残量センサ(マイクロスイッチ)257のアーム257aが留め具の残量が少ないことを検知すると、留め具残量センサ257がオンする。このオン動作によって、遅延回路401を構成するコンデンサ253は抵抗器254を介して留め具残量センサ257で放電され、オペアンプ256の非反転入力端子(+)は反転入力端子(-)よりも低い入力電圧になるので、オペアンプ256の出力端子はそれまでのレベル“1”出力からレベル“0”出力に反転し、留め具残量表示器であるLED249が点灯すると同時に、トランジスタ298およびトランジスタ283はベース電流が供給されないためにオフ状態となる。その結果、第1のスイッチング素子272は・・・ゲート電圧が供給されないのでオフ状態を維持し、モータ6およびソレノイド14はオフされて留め具打込み動作は停止される。」なる記載から、「トリガスイッチ(5)」がオンにされても、「マイクロスイッチ(257)」が留め具の残量が少ないことを検知した場合には、「モータ(6)」を駆動するための「スイッチング素子(272)」はオフ状態であり、かつ「留め具残量センサ(マイクロスイッチ)(257)」は、「マガジン2内に整列保持された前記複数留め具・・・の残量を検知して留め具の残量が所定以下になったら残量信号(留め具無しを示す信号)を発生する」といえるから、引用文献1に記載された「通電制御回路」は、「トリガスイッチ(5)」がオンされたときに、「マイクロスイッチ(257)」が「留め具」が所定残量より少ないと検出した場合には「スイッチング素子(272)」をオフするものと認められる。

イ. 引用文献1記載発明
上記摘記事項(ア)ないし(ケ)、上記認定事項(コ)ないし(シ)から、引用文献1に記載の事項を技術常識を考慮しながら、補正発明に照らして整理すると、引用文献1には以下の発明(以下、「引用文献1記載発明」という。)が記載されている。

「モータ(6)と、
ノーズ部(1c)に供給される留め具を打ち込むためのドライバブレード(3a)を有し、上死点および下死点間で移動可能に配設されたプランジャ(3)と、
前記ノーズ部(1c)に供給される前記留め具を保持する保持部と、前記留め具を前記ノーズ部(1c)に向けて付勢し、前記ドライバブレード(3a)の先端が前記留め具の上端よりも上方に移動したときに前記留め具を前記ノーズ部(1c)内に給装する給送部とを備えたマガジン(2)と、
前記モータ(6)の駆動力に基づいて、前記プランジャ(3)を駆動する駆動部と、
作業者が操作するトリガスイッチ(5)と、
前記マガジン(2)の前記保持部に保持された前記留め具が所定量より少ないことを検出するマイクロスイッチ(257)と、
前記トリガスイッチ(5)及び前記マイクロスイッチ(257)に基づきオン又はオフして前記モータ(6)への通電を制御する第1のスイッチング素子(272)と、
を有し、前記プランジャ(3)によって前記留め具を打込む電動式打込機であって、
前記トリガスイッチ(5)がオンされたときに、前記マイクロスイッチ(257)が前記留め具が所定残量より少ないと検出した場合には前記第1のスイッチング素子のオフ状態を維持し、前記トリガスイッチ(5)がオンされてから、前記留め具の打込みが完了する前に前記マイクロスイッチ(257)が前記留め具が所定残量より少ないと検出した場合には、前記マイクロスイッチ(257)で発生するオン信号を所定時間遅延させ留め具残量検出回路406に入力する遅延回路(401)によって第1のスイッチング素子(272)のオンを継続する制御装置(50)と、
を有する電動式打込機。」

(2-2) 引用文献2

ア. 引用文献2の記載

(ア)
「【0001】
本発明は打込機に関し、特に電動の打込機に関する。」

(イ)
「【0017】
本発明によれば、小型化・軽量化されると共に、打込み時に低反動でエネルギー効率の高い打込機を提供することができる。
【0018】
本発明の実施形態による打込機について図1?図5に基づき説明する。図に示される釘打機1は、外殻となるハウジング2と、ハンドル3と、ノーズ5と、マガジン6とから主に構成されている。
【0019】
ハウジング2は、内部にモータ7、プランジャ8、バネ9、遊星ギア機構10、第一スプロケット14、第二スプロケット15、及びチェーン16等を内蔵している。ノーズ5は、ハウジング2の釘を打ち込む打込側である先端側に設けられており、ハウジング2内部から先端側へ向けて貫通する通路5aを備えている。ハンドル3は、ハウジング2の後端側となる側面部分から延出されて設けられている。ハンドル3の基端部分には、モータ7の駆動を制御するトリガ3Aが設けられており、先端部分には電池4が設けられている。またハウジング2の後端側部分であって、通路5aの延長線上に位置する部分には、バネ9を保持するハウジング後端部2Aが規定されている。

(ウ)
「【0026】
またチェーン16には、その駆動される方向と略直交する方向に突出すると共に第二スプロケット15に掛止された状態で第二スプロケット15の直径方向に突出する凸部17が一箇所設けられている。この凸部17が弾性エネルギー蓄積解放手段であり、凸部17が、後述のプランジャ8の摺動軌跡近傍にあるチェーン16の直線部分にあると共に後述の係合部8Cと係合している状態を第一状態とし、凸部17が第一状態を採る位置を区間Fと定義する。チェーン16の凸部17が設けられた部分が、第二スプロケット15に掛かって第二スプロケット15周りを回り始め、係合部8Cとの係合が解消される位置を第二状態とし、第二状態を採る位置を点Sと定義する。また第一状態、第二状態の何れの状態も採らない位置を第三状態とし、第三状態を採る位置を区間Tと定義する。
【0027】
プランジャ8は座部8Aとブレード8Bと係合部8Cとから主に構成されている。座部8Aは略平板に構成され、略平板の一面が後述のバネ9と当接する当接面となり、略平板の他面の平面が通路5aの延長線と略直交するように配置されている。ブレード8Bは、座部8Aの他面から延出されて設けられており、通路5a内に挿入されている。よってプランジャ8はブレード8Bが通路5a内で摺動するように、ハウジング2内で前後方向に移動可能となっている。また係合部8Cは、座部8Aの周縁部分から後方側へ向けて延出された部分の先端に略爪状に設けられている。またプランジャ8の摺動する軌跡は、チェーン16の一方の直線部分近傍に位置している。
【0028】
ハウジング2内においてプランジャ8の座部8Aとハウジング後端部2Aとの間にはコイルスプリングであるバネ9が配置されており、バネ9はプランジャ8を先端方向に付勢している。
【0029】
マガジン6は、ノーズ5とハウジング2の先端部分とに跨って設けられている。マガジン6内には図示せぬ釘が束状に複数本内蔵されており、ノーズ5の通路5a内に釘を供給している。よってプランジャ8が先端側に移動した際には、ブレード8B先端により通路5a内にある釘がノーズ5先端より押し出され、被打込部材に打ち込まれる。また、通路5aの距離は釘長さより大きく構成されているので、釘が被打込み部材と接触するまでにプランジャ8を加速するための助走区間を備えることになる。
【0030】
上記構成の釘打機1において被打込部材に釘を打ち込む際には、トリガ3Aを引き、モータ7を駆動してピニオンギア7Aを回転させる。このピニオンギア7Aの回転は、遊星ギア機構10により減速されて、第一、第二ベベルギア12、13を経て第一スプロケット14に伝達され、第一スプロケット14に掛止されたチェーン16を駆動する。この時にチェーン16において、プランジャ8の摺動軌跡近傍に位置する一方の直線部分が前方から後方に向かって移動するように、モータ7の駆動が制御される。
【0031】
チェーン16が駆動されて第一、第二スプロケット14、15周りを周回することにより、チェーン16に設けられた凸部17は、区間F(図3)に周回移動して、係合部8Cと係合した第一状態になる。この状態でチェーン16及び凸部17が回動することにより、バネ9が圧縮され、弾性エネルギーが蓄積されていく。
【0032】
凸部17が点Sに到達したときに第二状態になり、係合部8Cから凸部17が離間して係合部8Cと凸部17との係合が解消される。係合部8Cと一体のプランジャ8は、バネ9により前方に付勢されている。よって係合部8Cと凸部17との係合が解消されることによりバネ9に蓄積された弾性エネルギーが解放される。弾性エネルギーの解放により、プランジャ8と一体のブレード8Bは、急激に前方に移動して通路5a内にある図示せぬ釘を打撃し通路5a外に打ち出して被打込材に打ち込む。
【0033】
点Sで係合部8Cから離間した凸部17は図4に示されるように、区間Tに移動して第三状態となり、第二スプロケット15周りを周回した後に第一スプロケット14周りを周回し、その後に区間Fに移動して第一状態になり、プランジャ8及びバネ9の打込に係る動作を繰り返す。」

(エ)



(オ)
上記摘記事項(ウ)より、「バネ9はプランジャ8を先端方向に付勢」しており、釘を打ち込む際には、「トリガ(3A)」を引き、「チェーン16に設けられた凸部17は、区間F(図3)に周回移動して、係合部8Cと係合した第一状態になる。この状態でチェーン16及び凸部17が回動することにより、バネ9が圧縮され、弾性エネルギーが蓄積されて」いき、「凸部17が点Sに到達したときに第二状態になり、・・・係合部8Cと凸部17との係合が解消されることによりバネ9に蓄積された弾性エネルギーが解放される。弾性エネルギーの解放により、プランジャ8と一体のブレード8Bは、急激に前方に移動して通路5a内にある図示せぬ釘を打撃し通路5a外に打ち出して被打込材に打ち込む」から、「プランジャ(8)」は、「第一状態」の開始時点での位置と、「第一状態が」終了し「第二状態」が開始された時点での位置との間で移動可能に配設されていて、上下方向を、上記引用文献1の認定事項(2)で述べたように補正発明に倣って、打込みに時に「釘」の移動が上方から下方となるように、設定するならば、「第二状態」における位置である「上死点」と、「第一状態」における「下死点」との間で、「プランジャ(8)」は、移動可能に配設されているものであるといえる。

(カ)
上記摘記事項(ウ)から、「プランジャ(8)」が有する「ブレード(8B)」は、「通路5a内に挿入されて」おり、「バネ(9)」に先端側に対して付勢されているから、「トリガ(3A)」を引く時点の状態、すなわち初期状態においては、「ブレード8B先端により通路5a内にある釘がノーズ先端より押し出され」た状態となる位置にあり、加えて【図3】から、「ブレード(8B)」が「マガジン(6)」の上端部に沿って位置している点が看取できるから、以上を総合すると、初期状態において、「プランジャ(8)」の「ブレード(8B)」の先端は先頭の「釘」の上端よりも下方に位置するものであるものと認められる。

イ. 引用文献2記載事項
上記摘記事項(ア)ないし(ウ)、【図3】、上記認定事項(オ)ないし(カ)から、引用文献2に記載の事項を技術常識を考慮しながら、補正発明に照らして整理すると、引用文献2には以下の事項(以下、「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。

「モータ(7)と、
ノーズ(5)に供給される釘を打込むためのブレード(8B)を有し、上死点および下死点間で移動可能に配設され、初期状態において前記ブレード(8B)の先端は先頭の前記釘の上端よりも下方に位置するプランジャ(8)と、
前記釘を打込む方向に前記プランジャ(8)を付勢するバネ(9)を有し、前記モータ(7)の駆動力に基づいて、前記プランジャ(8)を駆動する駆動部と、
を有する電動打込機」

(3) 対比
補正発明と引用文献1記載発明とを対比する。
引用文献1記載発明の「モータ(6)」、「ノーズ部(1c)」、「留め具」、「ドライバブレード(3a)」、「プランジャ(3)」、「マガジン(2)」、「作業者」、「トリガスイッチ(5)」「マイクロスイッチ(257)」、「第1のスイッチング素子(272)」、「制御装置(50)」は、その機能からみて、補正発明の、「モータ」、「ノーズ部」、「止具」、「ブレード」、「プランジャ」、「マガジン」、「ユーザ」「トリガスイッチ」「釘残量検出スイッチ」、「通電スイッチ」、「通電制御回路」に相当する。
引用文献1の上記摘記事項(ケ)の「マガジン2内に整列保持された前記複数留め具(例えば、釘)の残量を検知して留め具の残量が所定以下になったら残量信号(留め具無しを示す信号)を発生する留め具残量センサ257と、留め具残量センサ257で発生する残量信号(スイッチオン信号)の入力に基づいて、制御手段(299、283等)を制御するための制御信号(レベル“0”信号)を出力する留め具残量検出回路406と、留め具残量センサ257で発生する残量信号(オン信号)を所定時間(例えば、20ミリ秒)遅延させ留め具残量検出回路256(406)に入力するための遅延回路(401)とを具備するので、留め具残量センサ257に発生する残量信号(オン信号)が、ドライバブレード3aによる留め具打込み動作期間中には、遅延回路401によって留め具残量検出回路406に入力されないようにできる。その結果、進行中の留め具打込み動作が完結するまでは打込み動作を停止させないようにできる。」との記載から、引用文献1記載発明の「制御回路装置(50)」が、「前記トリガスイッチ(5)がオンされてから、前記留め具の打込みが完了する前に前記マイクロスイッチ(257)が前記留め具が所定残量より少ないと検出した場合には、前記マイクロスイッチ(257)で発生するオン信号を所定時間遅延させ留め具残量検出回路406に入力する遅延回路(401)によって第1のスイッチング素子(272)のオンを継続する」は、補正発明の「通電制御回路」が、「前記トリガスイッチがオンされたときに、前記釘残量検出スイッチが前記止具が所定残量より少ないと検出した場合には前記通電スイッチをオフし、前記トリガスイッチがオンされてから、前記止具の打込みが完了する前に前記釘残量検出スイッチが前記止具が所定残量より少ないと検出した場合には、少なくとも前記止具の打込み完了まで前記通電スイッチのオンを継続する」と、「通電制御回路」が「トリガスイッチがオンされてから、止具の打込みが完了する前に釘残量検出スイッチが止具が所定残量より少ないと検出した場合には、進行中の止具打込み動作が完了するまで打込み動作を停止させないように通電スイッチのオンを継続する」点で共通する。

そうすると、補正発明と引用文献1記載発明は以下の点で一致し、かつ相違する。

ア. 一致点
「モータと、
ノーズ部に供給される止具を打込むためのブレードを有し、上死点および下死点間で移動可能に配設されるプランジャと、
前記ノーズ部に供給される前記止具を保持する保持部と、前記止具を前記ノーズ部に向けて付勢し、前記ブレードの先端が前記止具の上端よりも上方に移動したときに前記止具を前記ノーズ部内に給送する給送部とを備えたマガジンと、
前記モータの駆動力に基づいて、前記プランジャを駆動する駆動部と、
ユーザが操作するトリガスイッチと、
前記マガジンの前記保持部に保持された前記止具が所定残量より少ないことを検出する釘残量検出スイッチと、
前記トリガスイッチおよび前記釘残量検出スイッチに基づきオン又はオフして前記モータへの通電を制御する通電スイッチと、
を有し、前記プランジャによって前記止具を打込む電動式打込機であって、
前記トリガスイッチがオンされたときに、前記釘残量検出スイッチが前記止具が所定残量より少ないと検出した場合には前記通電スイッチをオフし、前記トリガスイッチがオンされてから、前記止具の打込みが完了する前に前記釘残量検出スイッチが前記止具が所定残量より少ないと検出した場合には、進行中の止具打込み動作が完了するまで打込み動作を停止させないように通電スイッチのオンを継続する通電制御回路と、
を有する電動式打込機。」

イ. 相違点

(ア) 相違点1
補正発明の「プランジャ」は、「ブレード」を有し、「初期状態においてブレードの先端は先頭の止具の上端よりも下方に位置する」ものであって、「止具を打ち込む方向」に「付勢する付勢手段」により付勢され、「付勢手段に蓄積された圧縮力が伝達されることによって」止具を打ち込むものであるのに対し、引用文献1記載発明の「プランジャ(3)」は、「留め具」を打ち込むものではあるものの、「初期状態」における「ドライバブレード(3a)」と先頭の「留め具」との関係は不明であり、「付勢手段に蓄積された圧縮力が伝達されることによって」止具を打ち込むものではない点。

(イ) 相違点2
補正発明の「マガジン」は、「給送部」を有し、当該「給送部」は、「保持部の長手方向に移動可能に取り付けられており、前記止具を前記ノーズ部に向けて付勢し、前記ブレードの先端が初期位置から前記止具の上端よりも上方に移動したときに前記ノーズ部に向けて移動して先頭の前記止具を前記ノーズ部内に給送する」ものであって、「所定位置に移動することにより」「釘残量検出スイッチ」が「前記マガジンの前記保持部に保持された前記止具が所定残量より少ないことを検出する」ものであるのに対し、引用文献1記載発明の「マガジン(2)」が有する「給送部」は、「留め具」を「ノーズ部(1c)の向けて付勢」するものではあるが、どのように取り付けられているか、「留め具」を「ノーズ部(1c)内」にどのようにして給送するのか、そして「マイクロスイッチ(257)」が「保持部に保持された留め具が所定残量より少ないことを検出」することとの関係が不明である点。


(ウ) 相違点3
補正発明の「通電制御回路」は、「前記トリガスイッチがオンされてから、前記止具の打込みが完了する前に前記釘残量検出スイッチが前記止具が所定残量より少ないと検出した場合」に、「進行中の止具打込み動作が完了するまで打込み動作を停止させないように通電スイッチのオンを継続する」ために、「少なくとも前記止具の打込み完了まで前記通電スイッチのオンを継続する」ものであるのに対し、引用文献1記載発明の「制御回路装置(50)」は、「前記トリガスイッチ(5)がオンされてから、前記留め具の打込みが完了する前に前記マイクロスイッチ(257)が前記留め具が所定残量より少ないと検出した場合に」、「前記マイクロスイッチ(257)で発生するオン信号を所定時間遅延させ留め具残量検出回路406に入力する遅延回路(401)によって第1のスイッチング素子(272)のオンを継続する」ものである点。

(4) 判断

ア. 相違点1について
上記(2-2)、イ.にて示したように、引用文献2記載事項は、電動打込機の「ブレード(8B)」を有する「プランジャ(8)」を、「初期状態においてブレード(8B)の先端は先頭の釘の上端よりも下方に位置する」ものであって、「釘を打ち込む方向」に「付勢するバネ(9)」により付勢され、「バネ(9)に蓄積された圧縮力が伝達されることによって」釘を打ち込むものであり、当該構成を採用することで、引用文献2の上記摘記事項(イ)の、「小型化・軽量化されると共に、打込み時に低反動でエネルギー効率の高い打込機を提供することができる」との効果を奏するものである。
「小型化・軽量化」し、「打込み時に低反動でエネルギー効率の高」めることは、「作業者」が把持し、「電池パック(7)」で駆動される引用文献1記載発明の「電動打込機」においても内在する課題であるといえるから、引用文献1記載発明において、上記相違点1に係る構成としたことは、上記課題を解決しようとして、電動打込機という共通する技術分野で同じ課題を解決するために引用文献2記載事項を適用することで当業者が容易になし得たものである。

イ. 相違点2について
電動打込機のマガジンの止具を保持する保持部において、当該保持部の長手方向に移動可能に取り付けられており、前記止具を打ち込まれる箇所に向けて付勢する給送部を設けることは、例えば、特開平5-57635号公報(特に、段落【0006】の「マガジン4はガイド棒40、押しばね41、押し枠42を備えてステープル5をストライカー3の下方位置に連続供給する。」との記載及び、【図1】、【図2】の「押し枠42」が、「押しばね41」により「ストライカー5」を図示左方に向けて付勢している点に着目されたい。)に記載されているとおり、従来周知の事項である。さらに、給送部の保持部長手方向における位置は、止具の残量に比例して移動するから、給送部が所定位置に達したことを検出するスイッチを設けることで、残量が少なくなったことを検知できることは当業者にとって自明である。
そうすると、引用文献1記載発明の「マガジン(2)」を、上記相違点2に係る構成を有するものとした点は、上記自明な止具の残量検知の手法を採用しつつ、上記従来周知の止具の給送部を適用することで当業者が容易になし得た事項である。

ウ. 相違点3について
引用文献1記載発明が、「トリガスイッチ(5)」がオンされてから、進行中の「留め具」打込み動作が完了するまで打込動作を停止させないように「遅延回路(401)」によって「第1のスイッチング素子(272)」を制御するのは、引用文献1の上記摘記事項(ケ)の、「留め具残量センサ257で発生する残量信号(オン信号)を所定時間(例えば、20ミリ秒)遅延させ」ることによって、「留め具残量センサ257に発生する残量信号(オン信号)が、ドライバブレード3aによる留め具打込み動作期間中には、遅延回路401によって留め具残量検出回路406に入力されないようにできる。その結果、進行中の留め具打込み動作が完結するまでは打込み動作を停止させないようにできる。」ようにするためである。
そうすると、引用文献1記載発明が、「進行中の留め具打込み動作は直ちに停止または阻害されることはない」との効果を発揮するためには、上記「留め具打込み動作期間」が、上記「所定時間」以内であることが必要であり、そして、上記「留め具打込み動作期間」にかかわらず、より確実に「進行中の留め具打込み動作は直ちに停止または阻害されることはない」との効果を発揮するためには、「留め具」打込み動作の完了を検出するまで打込み動作が継続するよう制御すればよいことは当業者にとって自明である。
そうすると、引用文献1記載発明において、より確実にすべての「進行中の留め具打込み動作」が「留め具」の残量減少によって直ちに停止又は阻害されることがないようにするために、「遅延回路(401)」による引用文献1記載発明の手法に代えて、「トリガスイッチ(5)」がオンされてから、前記止め具の打込が完了する前に「マイクロスイッチ(257)」が所定残量より少ないと検出した場合に、少なくとも「留め具」の打込み完了まで「第1のスイッチング素子(272)」のオンを継続するよう制御することは、当業者が容易になし得た事項である。

(5) 小結
以上のとおりであるから、補正発明は、引用文献1記載発明及び引用文献2記載事項並びに従来周知の事項に基づいて当業者が容易になし得たものであり、作用及び効果の点で格別なものを奏するとは認められない。
したがって、補正発明は特許法第29条第2項の規定により、本願出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

3. むすび
上記2.で検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。

第3 本願発明

1. 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし2は、平成25年2月25日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項により特定されるとおりのものと認めるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」といいう。)は、上記第2、1.(1)の本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。

2. 対比及び判断
本願発明は、補正発明の発明特定事項から、上記第2、2で述べたところの、技術的限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する補正発明が、上記第2、2.(4)で検討したとおり、引用文献1記載発明及び引用文献2記載事項並びに従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3. むすび
以上のとおりであるので、本願発明は、引用文献1記載発明及び引用文献2記載事項並びに従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許をうけることができないから、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-09-17 
結審通知日 2014-09-18 
審決日 2014-09-30 
出願番号 特願2008-165319(P2008-165319)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B25C)
P 1 8・ 575- Z (B25C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中野 裕之  
特許庁審判長 石川 好文
特許庁審判官 長屋 陽二郎
久保 克彦
発明の名称 電動式打込機  
代理人 小泉 伸  
代理人 市川 朗子  
代理人 北澤 一浩  
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