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審決分類 |
審判 査定不服 発明同一 取り消して特許、登録 H05K 審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 H05K |
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管理番号 | 1294039 |
審判番号 | 不服2014-5177 |
総通号数 | 181 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-01-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-03-19 |
確定日 | 2014-12-02 |
事件の表示 | 特願2009-168366「部品実装方法および部品実装装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年2月3日出願公開、特開2011-23616、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成21年7月17日の出願であって、平成26年1月22日付けで拒絶査定(発送日:同年1月28日)がされ、これに対し、同年3月19日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に明細書及び特許請求の範囲について手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。なお、当該手続補正は、平成26年4月9日付け手続補正書(方式)により補正されている。 第2 本件補正 1 本件補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1及び請求項9について、補正前(平年25年11月19日の手続補正書)の 「【請求項1】 部品供給部からピックアップした複数の部品を一括して所定の実装位置に搬入された基板の上方に搬送した後に前記複数の部品を前記基板上の互いに異なる搭載点に実装する動作を1ターンとして実行する、複数のヘッドユニットを有し、前記複数のヘッドユニットが同一の前記基板にアクセスして部品を実装する部品実装方法であって、 前記複数のヘッドユニットのうち一のヘッドユニットのみが優先ヘッドユニットとして前記基板の排他領域へのアクセスが許可され、 前記優先ヘッドユニットにより一括搬送される部品数よりも少ない数を単位数とし、前記優先ヘッドユニットが前記単位数の前記部品を前記基板に実装するごとに、前記排他領域を見直し、 前記優先ヘッドユニットが前記単位数の部品を実装した前後における前記排他領域を比較し、前記排他領域が狭まる場合にのみ前記排他領域を再設定し、 前記優先ヘッドユニットにより前記基板の上方に搬送された部品の全部が前記基板に実装されると、前記一のヘッドユニットに次のターンを実行させるとともに他のヘッドユニットを前記優先ヘッドユニットとする優先ヘッドユニットの入れ替えを行うことを特徴とする部品実装方法。」及び 「【請求項9】 所定の実装位置に搬入された基板の上方と部品供給部との間をそれぞれ独立して往復移動自在に設けられた複数のヘッドユニットと、 前記複数のヘッドユニットの動作を制御するヘッド制御部とを備え、 前記複数のヘッドユニットの各々は、前記部品供給部からピックアップした複数の部品を一括して前記基板の上方に搬送した後に前記複数の部品を前記基板上の互いに異なる搭載点に実装する動作を1ターンとして実行し、 前記ヘッド制御部は、前記複数のヘッドユニットのうち一のヘッドユニットのみを優先ヘッドユニットとして前記基板の排他領域へのアクセスを許可し、前記優先ヘッドユニットにより一括搬送される部品数よりも少ない数を単位数とし、前記優先ヘッドユニットが前記単位数の前記部品を前記基板に実装するごとに、前記排他領域を見直し、前記優先ヘッドユニットが前記単位数の前記部品を実装した前後における前記排他領域を比較し、前記排他領域が狭まる場合にのみ前記排他領域を再設定し、前記優先ヘッドユニットにより前記基板の上方に搬送された部品の全部が前記基板に実装されると、前記一のヘッドユニットに次のターンを実行させるとともに他のヘッドユニットを前記優先ヘッドユニットとする優先ヘッドユニットの入れ替えを行う ことを特徴とする部品実装装置。」を、 「【請求項1】 部品供給部からピックアップした複数の部品を一括して所定の実装位置に搬入された基板の上方に搬送した後に前記複数の部品を前記基板上の互いに異なる搭載点に実装する動作を1ターンとして実行する、複数のヘッドユニットを有し、前記複数のヘッドユニットが同一の前記基板にアクセスして部品を実装する部品実装方法であって、 前記複数のヘッドユニットのうち一のヘッドユニットのみが優先ヘッドユニットとして前記基板の排他領域へのアクセスが許可され、 前記優先ヘッドユニットにより一括搬送される部品数よりも少ない数を単位数とし、前記優先ヘッドユニットが前記単位数の前記部品を前記基板に実装するごとに、前記排他領域を見直し、 前記優先ヘッドユニットが前記単位数の部品を実装した前後における前記排他領域を比較し、前記排他領域が狭まる場合にのみ前記排他領域を再設定し、 前記優先ヘッドユニットにより前記基板の上方に搬送された部品の全部が前記基板に実装されると、前記一のヘッドユニットの優先権を解放し、前記一のヘッドユニットに次のターンを実行させるとともに前記一のヘッドユニットの優先権解放に対応して他のヘッドユニットを前記優先ヘッドユニットとする優先ヘッドユニットの入れ替えを行う ことを特徴とする部品実装方法。」及び 「【請求項9】 所定の実装位置に搬入された基板の上方と部品供給部との間をそれぞれ独立して往復移動自在に設けられた複数のヘッドユニットと、 前記複数のヘッドユニットの動作を制御するヘッド制御部とを備え、 前記複数のヘッドユニットの各々は、前記部品供給部からピックアップした複数の部品を一括して前記基板の上方に搬送した後に前記複数の部品を前記基板上の互いに異なる搭載点に実装する動作を1ターンとして実行し、 前記ヘッド制御部は、前記複数のヘッドユニットのうち一のヘッドユニットのみを優先ヘッドユニットとして前記基板の排他領域へのアクセスを許可し、前記優先ヘッドユニットにより一括搬送される部品数よりも少ない数を単位数とし、前記優先ヘッドユニットが前記単位数の前記部品を前記基板に実装するごとに、前記排他領域を見直し、前記優先ヘッドユニットが前記単位数の前記部品を実装した前後における前記排他領域を比較し、前記排他領域が狭まる場合にのみ前記排他領域を再設定し、前記優先ヘッドユニットにより前記基板の上方に搬送された部品の全部が前記基板に実装されると、前記一のヘッドユニットの優先権を解放し、前記一のヘッドユニットに次のターンを実行させるとともに前記一のヘッドユニットの優先権解放に対応して他のヘッドユニットを前記優先ヘッドユニットとする優先ヘッドユニットの入れ替えを行う ことを特徴とする部品実装装置。」と補正することを含むものである(下線は、請求人が補正箇所を示すために付したものである。)。 2 本件補正の適否について 本件補正の目的について検討する。 本件補正後の請求項1は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「優先ヘッドユニットの入れ替えを行う」ことについて、「前記一のヘッドユニットの優先権を解放し」、「前記一のヘッドユニットの優先権解放に対応して」との限定を付加するものである。また、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。 同様に、本件補正後の請求項9は、請求項9に記載した発明を特定するために必要な事項である「優先ヘッドユニットの入れ替えを行う」ことについて、「前記一のヘッドユニットの優先権を解放し」、「前記一のヘッドユニットの優先権解放に対応して」との限定を付加するものである。また、補正前の請求項9に記載された発明と補正後の請求項9に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、本件補正は、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するものではない。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本願補正発明1」という。)及び同請求項9に記載される発明(以下「本願補正発明9」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。 (1)本願補正発明1について ア 先願発明1 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前の他の特許出願であって、その出願後に出願公開された、特願2008-78105号(特開2009-231723号公報参照。)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「先願明細書等」という。)には、「電子部品装着装置」に関して、図面と共に、次の事項が記載されている(下線は当審において付した。)。 (ア)「【0001】 本発明は電子部品供給装置から電子部品を取り出し、該電子部品をプリント基板に装着する電子部品装着装置に関する。」 (イ)「【0011】 本発明の課題は2個の装着ヘッドが、2個の部品供給装置のいずれからも電子部品を取り出すことが出来、また、2個の装着ヘッドが、プリント基板の重複した領域に電子部品を装着出来る電子部品装着装置において、2個のヘッドの衝突を確実に防止することである。」 (ウ)「【0025】 図1は本発明の電子部品装着装置1の平面図である。図1において、プリント基板PRは、レール状のプリント基板コンベア7に載って左方向から電子部品装着装置1に供給され、電子部品装着装置1の中央部に位置決めされる。プリント基板搬送装置2は、プリント基板コンベア7と駆動装置、および位置決め装置から構成される。プリント基板PRへの電子部品の装着が完了すると、プリント基板PRが右方向に排出される。」 (エ)「【0029】 y可動子9はyビーム1A、1B上をホストコンピュータからの指令によってリニアモータによって動く。また、x可動子15はxビーム4A、4B上をホストコンピュータからの指令によってリニアモータによって動く。y可動子9およびx可動子15にはリニアエンコーダがとりつけられ、各可動子の位置情報をサーボ系にフィードバックする。」 (オ)「【0045】 目的の電子部品は対応する吸着ノズル5に吸着させる必要がある。ノズル回転モータ52が、図5のθで示すように、吸着ノズル5を回転し、目的の電子部品の上に対応する吸着ノズル5を設置する。その後、ノズル選択シリンダ51によって吸着ノズル5を降下させ、目的の電子部品を吸着する。目的の電子部品を吸着すると、吸着ノズル5を上昇させる。同様の動作を12個全ての吸着ノズル5について行う。したがって、装着ヘッド6を部品供給ユニット3Bに移動させることによって一回に12個の部品を吸着する。」 【0046】(略) 【0047】 装着ヘッド6がプリント基板PRの対応する場所に移動すると、目的の電子部品が吸着された吸着ノズル5が回転して、プリント基板PRの対応する場所の上に移動する。その後、吸着ノズル5が下降して目的の電子部品がプリント基板PRの対応する場所に装着されることになる。 (カ)「【0053】 図6において、第2xビーム4Bに設置されている第2ヘッドH2の動きについて説明する。ホストコンピュータに組み込まれたプログラムにしたがって、ホストコンピュータからモーションコントローラに対して、装着ヘッド6を移動する指令が送られる。ホストコンピュータからは、装着ヘッド6の目標位置情報、目標位置に達するための速度情報、および、設定速度に達するための加速度情報が出力される。モーションコントローラはこの指令をサーボアンプに送る。サーボアンプはこの指令をリニアモータMに送り、リニアモータMはx可動子15および装着ヘッド6を所定の位置に移動させる。」 (キ)「【0060】 第1ヘッドH1は、図4で説明したように、12個の吸着ノズルに12個の電子部品が吸着されている。この12個の電子部品がプリント基板PRに装着される場所は異なる。図7において、第1ヘッドH1は12個の部品を5個のポジションにおいて装着する。すなわち、一つのポジションで複数の電子部品をプリント基板PRに装着する。図7における5個の第1ヘッドH1に記載している星印内の番号は、ヘッドが電子部品を装着する順番を示す。 【0061】 図7において、第1ヘッドH1は、まず、ポジション1において、電子部品を装着し、次にポジション2で電子部品を装着する。同様にして、ポジション6まで、順番に電子部品を装着していく。電子部品は2個の装着ヘッドによって行われるが、衝突を回避するために、第1ヘッドH1と第2ヘッドH2との間に優先順位を付けておく。本実施例では第1ヘッドH1に優先権を与えて、第1ヘッドH1が電子部品を装着している位置には、第2ヘッドH2は入り込まないようにしている。 【0062】ないし【0064】(略) 【0065】 本発明は、第1ヘッドH1が吸着している電子部品の不具合等を考慮した上で、衝突を回避しつつ、第1ヘッドH1と第2ヘッドH2の移動範囲を最大限に確保するものである。図7において、ポジション1に存在していた第1ヘッドH1が移動する可能性がある範囲で最も広い範囲は、図7の点線A1および点線A2で区画された範囲である。したがって、第2ヘッドH2は、点線Bで示された領域内に進入しなければ、第1ヘッドH1が吸着した電子部品の不具合等の条件にかかわらず、第1ヘッドH1と第2ヘッドH2とが衝突することはない。 【0066】ないし【0070】(略) 【0071】 以上説明したように、図7、あるいは、図8において、第2ヘッドH2が移動できる範囲は、x座標、y座標で表した場合、yはxに対してステップ関数的に変化している。そして、このステップ関数が変化する座標は、第1ヘッドH1が移動する可能性がある位置のうち、最も大きなx座標となる点、および、最も小さなx座標となる点によって規定されている。 【0072】 このように第2ヘッドH2が図7および図8に示すステップ関数で規定される領域を移動する限りは、第1ヘッドH1と衝突することは無い。逆に言えば、第2ヘッドH2は、図8のP2からP3までの範囲以外は、y座標にして、(y1-d+f)まで侵入出来る。したがって、この範囲の分、第2ヘッドH2の自由度が増し、電子部品の装着スピードを増すことが出来る。 【0073】 図9は、第1ヘッドH1がポジション1における電子部品の装着を終わり、ポジション2において電子部品を装着している図である。P1、P2、P3、P4、P5を結ぶ、ステップ関数を表す点線は第2ヘッドH2が侵入可能な範囲を示す。この範囲までは、第2ヘッドH2が侵入しても第1ヘッドH1と衝突することは無い。 【0074】 第1ヘッドH1がポジション2において、電子部品の装着を終えると、次に移動する可能性のあるポジションは、ポジション3からポジション6までの順番で、いずれにも移動する可能性がある。このうち、図9において、ポジション2に対し、最も左側に位置するのはポジション5である。したがって、点P1あるいはP2のx座標はポジション5によって規定される。 【0075】 一方、第1ヘッドH1のポジション2よりも右側には、第1ヘッドH1が次に移動する場所は無い。したがって、第2ヘッドH2は点P3あるいはP4のx座標まで、侵入することが出来る。なお、P1、P4、P5等のy座標は、第2ヘッドH2と、第1ヘッドH1を載置している第1xビーム4Aとの衝突、あるいは、第1ヘッドH1と、第2ヘッドH2を載置している第2xビーム4Bとのとの衝突を避けるために規定されている。 【0076】 図10は、第1ヘッドH1がポジション2における電子部品の装着を終わり、ポジション3において電子部品を装着している図である。P1、P2、P3、P4、P5を結ぶステップ関数を表す点線は、第2ヘッドH2が侵入可能な範囲を示す。この範囲までは、第2ヘッドH2が侵入しても第1ヘッドH1と衝突することは無い。 【0077】 第1ヘッドH1がポジション3において、電子部品の装着を終えると、次に移動する可能性のあるポジションはポジション4からポジション6までの順番で、いずれにも移動する可能性がある。このうち、図10において、ポジション3よりも最も左側に位置するのはポジション5である。したがって、点P1あるいはP2のx座標はポジション5によって規定される。一方、第1ヘッドH1のポジション3よりも右側には、第1ヘッドH1が次に移動する場所は無い。したがって、第2ヘッドH2は点P3あるいはP4のx座標まで、侵入することが出来る。 【0078】(略) 【0079】 図12は、第1ヘッドH1がポジション3における電子部品の装着を終わり、ポジション4において電子部品を装着している図である。P1、P2、P3、P4、P5を結ぶステップ関数を表す点線は第2ヘッドH2が侵入可能な範囲を示す。この範囲までは、第2ヘッドH2が侵入しても第1ヘッドH1と衝突することは無い。 【0080】 第1ヘッドH1がポジション4において、電子部品の装着を終えると、次に移動する可能性のあるポジションはポジション5、ポジション6の順番で、いずれにも移動する可能性がある。このうち、図12において、ポジション4よりも左側に位置するのはポジション5である。したがって、点P1あるいはP2のx座標はポジション5によって規定される。 【0081】 一方、第1ヘッドH1のポジション2よりも右側に位置するのはポジション6である。したがって、点P3あるいは点P4のx座標は、ポジション6によって規定される。なお、P1、P4、P5等のy座標は、第2ヘッドH2と、第1ヘッドH1を載置している第1xビーム4Aとの衝突、あるいは、第1ヘッドH1と、第2ヘッドH2を載置している第2xビーム4Bとのとの衝突を避けるために規定されている。 【0082】 図13は、第1ヘッドH1がポジション4における電子部品の装着を終わり、ポジション5において電子部品を装着している図である。P1、P2、P3、P4、P5を結ぶステップ関数を表す点線は第2ヘッドH2が侵入可能な範囲を示す。この範囲までは、第2ヘッドH2が侵入しても第1ヘッドH1と衝突することは無い。 【0083】 第1ヘッドH1がポジション5において、電子部品の装着を終えると、次に移動する可能性のあるポジションはポジション6のみである。第1ヘッドH1のポジション5よりも左側には、第1ヘッドH1が次に移動する場所は無い。したがって、第2ヘッドH2は点P1あるいはP2のx座標まで、侵入することが出来る。 【0084】 一方、図13において、ポジション6は、ポジション5よりも右側に位置しているので、点P3あるいはP4のx座標は、第1ヘッドH1のポジション6によって規定される。なお、P1、P4、P5等のy座標は、第2ヘッドH2と、第1ヘッドH1を載置している第1xビーム4Aとの衝突、あるいは、第1ヘッドH1と、第2ヘッドH2を載置している第2xビーム4Bとのとの衝突を避けるために規定されている。 【0085】 図14は、第1ヘッドH1がポジション5における電子部品の装着を終わり、ポジション6において電子部品を装着している図である。P1、P2、P3、P4、P5を結ぶ点線は第2ヘッドH2が侵入可能な範囲を示す。この範囲までは、第2ヘッドH2が侵入しても第1ヘッドH1と衝突することは無い。 【0086】 第1ヘッドH1がポジション6において、電子部品の装着を終えると、次に移動する場所はホームポジションあるいは、電子部品のフィーダである。つまり、第1ヘッドH1は図14の白抜きの矢印で示すように、後ろへ後退するのみである。したがって、第2ヘッドH2は図14のP1、P2、P3、P4を結ぶ点線まで侵入することが出来る。 【0087】 図15は、第1ヘッドH1あるいは第2ヘッドH2によってプリント基板PRに電子部品を装着するためのプログラムの例である。図15において、No.は第1ヘッドH1あるいは第2ヘッドH2において、電子部品を装着する順番を示す。例えば、No.12は第1ヘッドH1であることを示し、No.13?No.24の12の動作によって、12個のノズルから電子部品を装着することを示している。No.25は第2ヘッドH2であることを示し、No.26?No.37の12の動作によって、12個のノズルから電子部品を装着することを示している。第1ヘッドH1において、No.12?No.24の動作は順番に行われ、第2ヘッドH2において、No.26?No.37の動作は順番に行われる。第1ヘッドH1の動作と第2ヘッドH2の動作は同時に行われる。 【0088】 図15において、U、O、Pは部品を装着するための、座標データ等が格納されているメモリのアドレスを示す。装着順序毎に、メモリのアドレスを参照することになる。図15におけるビームは第1xビーム4Aか第2xビーム4Bかを示している。 【0089】 図15において、ノズルは、第1ヘッドH1または第2ヘッドH2のノズルの番号であり、各12個存在している。FdrNo.は、電子部品をフィードするフィーダの位置を表す。すなわち、第1ヘッドH1はNo.131のフィーダから電子部品を吸着し、第2ヘッドH2はNo.220、あるいは、230、あるいは、229、あるいは、218等のフィーダから部品を吸着することを示している。また、図15における部品IDは各ノズルに吸着される実際の電子部品を示す。 【0090】 以上の説明においては、例えば第1ヘッドH1は、プリント基板PRの6箇所のポジションに12個の電子部品を装着するとしたが、プリント基板PRへの装着位置は6箇所に限らず、これよりも多くとも少なくともよいことは言うまでもない。また、第1ヘッドH1あるいは第2ヘッドH2に一度に吸着できる電子部品の数は12個であるとして説明したが、第1ヘッドH1あるいは第2ヘッドH2の吸着ノズルを変える等によって、各ヘッドに吸着できる電子部品の数を変えることが出来る。また、以上の説明では、第1ヘッドH1に移動の優先権を与えるとして説明したが、第2ヘッドH2に移動の優先権を与えてもよい。この場合は、以上説明した内容において、第1ヘッドH1と第2ヘッドH2等を逆にして読みかえればよい。 【0091】 以上説明したように、本発明では、電子部品の装着動作は第1ヘッドH1に優先権を持たせ、第1ヘッドH1が次に移動するポジションを全て考慮して第2ヘッドH2の侵入位置を決めている。そして、第1ヘッドH1が次に移動するポジションは、第1ヘッドH1が所持している電子部品が不良である場合等も考慮して、第2ヘッドH2の侵入位置を決めているので、第1ヘッドH1と第2ヘッドH2が衝突することは無い。 【0092】 また、第1ヘッドH1が次に移動するポジションを考慮した範囲以外は、第2ヘッドH2が第1ヘッドH1側に侵入可能としているので、第2ヘッドH2の移動範囲を拡大することが出来る。したがって、その分、電子部品の装着スピードを上げることが出来る。」 (ク)上記(キ)の段落【0086】ないし【0089】の記載並びに図14及び図15からみて、第1ヘッドH1及び第2ヘッドH2はそれぞれ、吸着した複数の電子部品の装着を終えると、電子部品のフィーダに移動して次に装着すべき複数の電子部品の吸着を行うものであるから、複数の電子部品を吸着し、移動し、装着するという動作を1ターンとして実行するといえる。 (ケ)上記(キ)の段落【0065】ないし【0077】、【0079】ないし【0085】並びに図7ないし図10、図12及び図13からみて、優先権を持つ第1ヘッドH1が一つのポジションで装着すべき個数の電子部品を装着するごとに、次のポジションで装着するために第1ヘッドH1が移動する可能性のある範囲で最も広い範囲を考慮して、ステップ関数で示される領域を見直して再設定しているといえる。また、一つのポジションで装着すべき個数は、第1ヘッドH1が一回で吸着する個数より少ないといえる。 これらの記載事項、認定事項、及び図面の図示内容を総合し、本願補正発明1の記載ぶりに則って整理すると、先願明細書等には、次の発明(以下「先願発明1」という。)が記載されている。 「部品供給ユニット3Bで吸着した複数の電子部品を一回で電子部品装着装置1の中央部に位置決めされたプリント基板PRの上に移動した後に前記複数の電子部品を前記プリント基板PR上の異なるポジションに装着する動作を1ターンとして実行する、第1ヘッドH1及び第2ヘッドH2を有し、前記第1ヘッドH1及び第2ヘッドH2が同一の前記プリント基板PRの対応する場所に移動して部品を装着する電子部品装着方法であって、 前記前記第1ヘッドH1及び第2ヘッドH2のうち前記第1ヘッドH1のみが優先権を持ったヘッドとして前記プリント基板PRのステップ関数で示される領域への進入が許可され、 前記優先権を持ったヘッドが一つのポジションで装着すべき個数の電子部品を前記プリント基板PRに装着するごとに、前記ステップ関数で示される領域を見直し、 前記ステップ関数で示される領域を再設定し、 前記優先権を持った第1ヘッドH1により前記プリント基板PRの上に移動された電子部品の全部が前記プリント基板PRに装着されると、前記第1ヘッドH1に電子部品のフィーダへの移動を実行させる 電子部品装着方法。」 イ 対比 本願補正発明1と先願発明1とを対比すると、後者の「部品供給ユニット3Bで吸着した複数の電子部品を一回で」は前者の「部品供給部からピックアップした複数の部品を一括して」に相当し、以下同様に、 「電子部品装着装置1の中央部に位置決めされたプリント基板PRの上に移動」することは「所定の実装位置に搬入された基板の上方に搬送」することに、 「前記プリント基板PR上の異なるポジションに装着」することは、「前記基板上の互いに異なる搭載点に実装」することに、 「第1ヘッドH1及び第2ヘッドH2」は「複数のヘッドユニット」に、 前記プリント基板PR「の対応する場所に移動」することは、前記基板「にアクセス」することに、 「第1ヘッドH1」は「一のヘッドユニット」に 「優先権を持ったヘッド」は「優先ヘッドユニット」に 「ステップ関数で示される領域への進入」は「排他領域へのアクセス」に、 「電子部品装着方法」は「部品実装方法」にそれぞれ相当する。 上記「ア」の(ケ)に照らして、後者の「一つのポジションで装着すべき個数」は前者の「前記優先ヘッドユニットにより一括搬送される電子部品数よりも少ない数」及び「単位数」に相当する。 上記「ア」の(ク)に照らして、後者の「電子部品のフィーダへの移動」は前者の「次のターン」に相当する。 したがって、両者は、 「部品供給部からピックアップした複数の部品を一括して所定の実装位置に搬入された基板の上方に搬送した後に前記複数の部品を前記基板上の互いに異なる搭載点に実装する動作を1ターンとして実行する、複数のヘッドユニットを有し、前記複数のヘッドユニットが同一の前記基板にアクセスして部品を実装する部品実装方法であって、 前記複数のヘッドユニットのうち一のヘッドユニットのみが優先ヘッドユニットとして前記基板の排他領域へのアクセスが許可され、 前記優先ヘッドユニットにより一括搬送される部品数よりも少ない数を単位数とし、前記優先ヘッドユニットが前記単位数の前記部品を前記基板に実装するごとに、前記排他領域を見直し、 前記排他領域を再設定し、 前記優先ヘッドユニットにより前記基板の上方に搬送された部品の全部が前記基板に実装されると、前記一のヘッドユニットに次のターンを実行させる 部品実装方法。」 である点で一致し、次の点で相違する。 (ア)相違点1 本願補正発明1は、排他領域を見直し、「優先ヘッドユニットが単位数の部品を実装した前後における排他領域を比較し、前記排他領域が狭まる場合にのみ」前記排他領域を再設定するのに対し、 先願発明1は、ステップ関数で示される領域を見直し、前記ステップ関数で示される領域を再設定する点。 (イ)相違点2 本願補正発明1は、搬送された部品の全部が基板に実装されると、「一のヘッドユニットの優先権を解放し」、「前記一のヘッドユニットの優先権解放に対応して他のヘッドユニットを優先ヘッドユニットとする優先ヘッドユニットの入れ替えを行う」のに対し、 先願発明1は、かかる構成を備えていない点。 ウ 判断 上記相違点について検討する。 (ア)相違点1について 前記「ア」の(キ)の段落【0065】ないし【0077】、【0079】ないし【0085】並びに図7ないし図10、図12及び図13からみて、先願明細書等に記載された方法において、ステップ関数で示される領域は、優先権を持つ第1ヘッドH1が一つのポジションでの装着が終了するごとに、次のポジションで装着するために第1ヘッドH1が移動する可能性のある範囲で最も広い範囲を考慮して見直され(特に段落【0065】参照)、見直された結果に応じて前記ステップ関数で示される領域が再設定されるものである(例えば段落【0072】及び【0073】並びに図8及び図9参照)。そして、該再設定は、見直された結果における前記ステップ関数で示される領域の変化の有無にかかわらずなされるものである。 そうすると、先願明細書等には、本願補正発明1の、排他領域を見直し、「優先ヘッドユニットが単位数の部品を実装した前後における排他領域を比較し、前記排他領域が狭まる場合にのみ」前記排他領域を再設定することが記載ないし示唆されているとはいえない。 (イ)相違点2について 前記「ア」の(キ)の段落【0086】及び図14からみて、先願明細書等に記載された方法においては、優先権を持つ第1ヘッドH1が電子部品の装着を終えて、次のターンを実行すべく電子部品のフィーダに移動した後も、ステップ関数で示される領域は依然として残され、第2ヘッドH2は依然として前記ステップ関数で示される領域内に進入することはできないから、優先権の第2ヘッドH2への入れ替えが行われたということはできない。 そうすると、先願明細書等には、本願補正発明1の「一のヘッドユニットの優先権を解放し」、「前記一のヘッドユニットの優先権解放に対応して他のヘッドユニットを優先ヘッドユニットとする優先ヘッドユニットの入れ替えを行う」ことが記載ないし示唆されているとはいえない。 (ウ)まとめ したがって、本願補正発明1は、先願発明1と同一ではない。 (2)本願補正発明9について ア 先願発明2 前記「(1)本願補正発明1について」の「アの(ア)ないし(ケ)」の記載事項、認定事項、及び図面の図示内容を総合し、本願補正発明9の記載ぶりに則って整理すると、先願明細書等には、次の発明(以下「先願発明2」という。)が記載されている。 「電子部品装着装置1の中央部に位置決めされたプリント基板PRの上と部品供給ユニット3Bとの間をそれぞれ独立して往復移動自在に設けられた第1ヘッドH1及び第2ヘッドH2と、 前記第1ヘッドH1及び第2ヘッドH2の動作を制御するホストコンピュータとを備え、 前記第1ヘッドH1及び第2ヘッドH2の各々は、前記部品供給ユニット3Bで吸着した複数の電子部品を一回で前記プリント基板PRの上に移動した後に前記複数の電子部品を前記プリント基板PR上の異なるポジションに装着する動作を1ターンとして実行し、 前記ホストコンピュータは、前記前記第1ヘッドH1及び第2ヘッドH2のうち前記第1ヘッドH1のみを優先権を持ったヘッドとして前記プリント基板PRのステップ関数で示される領域への進入を許可し、前記優先権を持ったヘッドが一つのポジションで装着すべき個数の前記電子部品を前記プリント基板PRに装着するごとに、前記ステップ関数で示される領域を見直し、前記ステップ関数で示される領域を再設定し、前記優先権を持った第1ヘッドH1により前記プリント基板PRの上に移動された電子部品の全部が前記プリント基板PRに装着されると、前記第1ヘッドH1に電子部品のフィーダへの移動を実行させる 電子部品装着装置。」 イ 対比 本願補正発明9と先願発明2とを対比すると、後者の「電子部品装着装置1の中央部に位置決めされたプリント基板PRの上」は前者の「所定の実装位置に搬入された基板の上方」に相当し、以下同様に、 「部品供給ユニット3B」は「部品供給部」に、 「第1ヘッドH1及び第2ヘッドH2」は「複数のヘッドユニット」に、 「ホストコンピュータ」は「ヘッド制御部」に、 「吸着」は「ピックアップ」に、 複数の「電子部品を一回で」は、複数の「部品を一括して」に、 「移動」は「搬送」に、 「異なるポジションに装着」することは、「互いに異なる搭載点に実装」することに、 「第1ヘッドH1」は「一のヘッドユニット」に 「優先権を持ったヘッド」は「優先ヘッドユニット」に 「ステップ関数で示される領域への進入」は「排他領域へのアクセス」に、 「電子部品装着装置」は「部品実装装置」にそれぞれ相当する。 前記「(1)本願補正発明1について」の「アの(ケ)」に照らして、後者の「一つのポジションで装着すべき個数」は前者の「前記優先ヘッドユニットにより一括搬送される電子部品数よりも少ない数」及び「単位数」に 前記「(1)本願補正発明1について」の「アの(ク)」に照らして、後者の「電子部品のフィーダへの移動」は「次のターン」に相当する。 したがって、両者は、 「所定の実装位置に搬入された基板の上方と部品供給部との間をそれぞれ独立して往復移動自在に設けられた複数のヘッドユニットと、 前記複数のヘッドユニットの動作を制御するヘッド制御部とを備え、 前記複数のヘッドユニットの各々は、前記部品供給部からピックアップした複数の部品を一括して前記基板の上方に搬送した後に前記複数の部品を前記基板上の互いに異なる搭載点に実装する動作を1ターンとして実行し、 前記ヘッド制御部は、前記複数のヘッドユニットのうち一のヘッドユニットのみを優先ヘッドユニットとして前記基板の排他領域へのアクセスを許可し、前記優先ヘッドユニットにより一括搬送される部品数よりも少ない数を単位数とし、前記優先ヘッドユニットが前記単位数の前記部品を前記基板に実装するごとに、前記排他領域を見直し、前記排他領域を再設定し、前記優先ヘッドユニットにより前記基板の上方に搬送された部品の全部が前記基板に実装されると、前記一のヘッドユニットに次のターンを実行させる 部品実装装置。」 である点で一致し、次の点で相違する。 (ア)相違点1 本願補正発明9は、排他領域を見直し、「優先ヘッドユニットが単位数の前記部品を実装した前後における排他領域を比較し、前記排他領域が狭まる場合にのみ」前記排他領域を再設定するのに対し、 先願発明2は、ステップ関数で示される領域を見直し、前記ステップ関数で示される領域を再設定する点。 (イ)相違点2 本願補正発明9は、搬送された部品の全部が基板に実装されると、「一のヘッドユニットの優先権を解放し」、「前記一のヘッドユニットの優先権解放に対応して他のヘッドユニットを優先ヘッドユニットとする優先ヘッドユニットの入れ替えを行う」のに対し、 先願発明2は、かかる構成を備えていない点。 ウ 判断 (ア)相違点1について 前記「(1)本願補正発明1について」の「ウの(ア)」で示したとおり、先願明細書等には、本願補正発明9の、排他領域を見直し、「優先ヘッドユニットが単位数の部品を実装した前後における排他領域を比較し、前記排他領域が狭まる場合にのみ」前記排他領域を再設定することが記載ないし示唆されているとはいえない。 (イ)相違点2について 前記「(1)本願補正発明1について」の「ウの(イ)」で示したとおり、先願明細書等には、本願補正発明9の「一のヘッドユニットの優先権を解放し」、「前記一のヘッドユニットの優先権解放に対応して他のヘッドユニットを優先ヘッドユニットとする優先ヘッドユニットの入れ替えを行う」ことが記載ないし示唆されているとはいえない。 (ウ)まとめ したがって、本願補正発明9は、先願発明2と同一ではない。 3 むすび 以上のとおりであるから、本願補正発明1及び9は、先願発明1及び2と同一ではないから、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。 よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。 そして、本件補正のその余の補正事項についても、特許法第17条の2第3項ないし第6項に違反するところはない。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。 第3 本願 本件補正は、上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1ないし10に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるとおりのものである。 そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2014-11-13 |
出願番号 | 特願2009-168366(P2009-168366) |
審決分類 |
P
1
8・
161-
WY
(H05K)
P 1 8・ 575- WY (H05K) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 遠藤 邦喜 |
特許庁審判長 |
森川 元嗣 |
特許庁審判官 |
冨岡 和人 稲葉 大紀 |
発明の名称 | 部品実装方法および部品実装装置 |
代理人 | 梁瀬 右司 |
代理人 | 振角 正一 |
代理人 | 大西 一正 |