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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L |
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管理番号 | 1294144 |
審判番号 | 不服2013-8098 |
総通号数 | 181 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-01-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-05-02 |
確定日 | 2014-11-17 |
事件の表示 | 特願2011-511641「近距離場で光を混合する光源」拒絶査定不服審判事件〔平成21年12月10日国際公開、WO2009/148543、平成23年 8月11日国内公表、特表2011-523511〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2009年5月29日(パリ条約による優先権主張2008年5月29日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成24年8月2日付けで拒絶の理由が通知され、同年11月7日に手続補正がされたが、同年12月27日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成25年5月2日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、これと同時に手続補正がされ、平成26年1月30日付けで当審により拒絶の理由が通知され、同年5月30日に手続補正がされたものである。 第2 本願発明の認定 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。) は、平成26年5月30日に補正された本願の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。 「複数の発光ダイオード(LED)チップであって、該LEDチップが互いに平行に搭載されたLEDチップと、 前記複数のLEDチップからの光の少なくとも一部が通過して前記複数のLEDチップからの光が近距離場で混合され、拡散部を通過した光は直接見ると混合光として見えるので、前記複数のLEDチップを点灯した時、前記複数のLEDチップが単一光源に見えるように配置された前記拡散部と、 前記LEDチップの上を覆いかつ直接接触した凸レンズとを備え、 前記拡散部は前記凸レンズの少なくとも一部分に接しているLED部品。」 第3 刊行物の記載事項 当審による拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に頒布された刊行物である特開2008-60068号公報(以下「引用例」という。)には、以下の1ないし5の記載がある。 1 「【請求項1】 基板上に形成された、互いに異なる波長の光を発光する複数の自発光素子と、 前記自発光素子を覆うように前記基板上に形成された半球状のレンズ構造体と、 前記レンズ構造体の表面を覆う複数の透光性球状粒子とを備える照明装置。 (【請求項2】と【請求項3】は省略。) 【請求項4】 前記透光性球状粒子が2層に積層されていることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。」 2 「【0005】 上述のように、自発光素子を利用して所望の色の光を得るために、波長の異なる光を混合する場合、小さな空間で混合することが難しく、照明装置が大型化してしまう問題点あった。 【0006】 本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、2色以上の光源光を小さな空間で混合して、所望の色の光を得ることにより、小型、軽量な照明装置およびこれを用いた表示装置を提供することを目的とする。」 3 「【0014】 透光性球状粒子4は透明接着層5を介してレンズ構造体3に固定されている。透光性球状粒子4はレンズ構造体3表面上をほとんど隙間なく覆うように形成されている。透光性球状粒子4は透明な樹脂またはガラスからなるビーズである。透光性球状粒子の屈折率は高いほど散乱性能が向上し、光の色の混合が良好になる。 (【0015】は省略。) 【0016】 透光性球状粒子4を2層構造とすることもできる。単層構造の場合、レンズ構造体3表面に透光性球状粒子4を稠密に配列しても隙間が存在する。この隙間から光が透光性球状粒子4を通過せずにすなわち屈折されずに外部へ出射される。したがって、一部の光は混合されない。2層構造とすれば、1層目に存在する隙間上に2層目の透光性球状粒子4を配置することができ、より光を散乱させることができ、光の色の混合がさらに良好になる。・・・」 4 「【0019】 以下、実施例により本発明を具体的に説明する。 実施例1. 図2に実施例1にかかる照明装置の断面模式図を示す。まず、光学素子2として外形0.3mm×0.3mm、高さ0.1mmの赤(Red)、緑(Green)、青(Blue)3色のLEDを用い、赤1個、緑2個、青1個の計4個を、図1(b)に示すように、0.3mm間隔でシリコンからなる基板1上に配置した。 【0020】 次に、この4個のLEDを屈折率1.51の透明シリコン樹脂(信越化学工業社製LPS-5500)で封止し、封止層31を形成した。次に、図2に示すように、封止層31上に屈折率1.49、半径Rのアクリル半球レンズ32を配置した。封止層31とアクリル半球レンズ32が半球状のレンズ構造体3を構成する。このレンズ構造体3表面に、それ以外の場所に透明接着剤が付着しないようにマスクを被覆した状態で、透明接着剤5を厚さ約5μmスプレー塗布した。透明接着剤5が乾燥する前に直径約30μm、屈折率1.93のガラスビーズである透光性球状粒子4を押しつけ、レンズ構造体3表面を隙間無く覆うように接着し、図2に示す照明ユニット10を製造した。」 5 「【0023】 実施例2. 図4に実施例2にかかる照明装置の断面模式図を示す。図4に示すように、実施例1の照明ユニット10の外表面をさらに実施例1に用いた透光性球状粒子4により覆い、透光性球状粒子4を2層構造とした以外は実施例1と同様にして照明ユニット10を製造した。」 6 上記4及び5で言及されている図1、図2及び図4は、次のものである。 第4 引用発明の認定 1 上記「第3 1」における請求項4に記載された発明を、請求項1を引用しない形式で表せば、次のとおりである。 「基板上に形成された、互いに異なる波長の光を発光する複数の自発光素子と、 前記自発光素子を覆うように前記基板上に形成された半球状のレンズ構造体と、 前記レンズ構造体の表面を覆う2層に積層された複数の透光性球状粒子とを備える照明装置。」 2 上記「第3 2」によれば、上記1の発明は、2色以上の光源光を小さな空間で混合して、所望の色を得ることにより、装置を小型化するものである。 3 上記「第3 5」に記載された「実施例2」は、上記「第3 4」に記載された「実施例1」において、透光性球状粒子4を2層構造としたものであり、上記1の発明に対応する。 4 上記「第3 4」によれば、「実施例1」では、図1(b)に示すように、0.3mm間隔でシリコンからなる基板1上に配置された赤1個、緑2個、青1個の計4個のLEDが、透明シリコン樹脂で封止されて封止層31が形成され、図2に示すように、封止層31上にアクリル半球レンズ32が配置され、封止層31とアクリル半球レンズ32が半球状のレンズ構造体3を構成している。 「実施例1」を示す図1及び図2を見ると、発光素子2(上記4個のLED)は、基板1の上側平面上に配置されている。 5 上記「第3 5」によれば、「実施例2」は、透光性球状粒子4を2層構造としたこと以外は「実施例1」と同じであるから、上記4の構成を備えている。 6 上記「第3 3」によれば、複数の透光性球状粒子は、「互いに異なる波長の光を発光する複数の自発光素子」からの異なる色の光を混合する働きをし、それらが1層の場合は、透光性球状粒子を通過せずに外部へ出射される光があって、一部の光は混合されないが、2層構造とすれば、1層目に存在する隙間上に2層目の透光性球状粒子を配置することができ、より光を散乱させることができ、光の色の混合がさらに良好になる。 また、引用例の図4を見ると、「複数の透光性球状粒子」は、上記「1層目に存在する隙間上に2層目の透光性球状粒子を配置する」となっている。 してみると、2層の場合は、「互いに異なる波長の光を発光する複数の自発光素子」からの異なる色の光が透光性球状粒子を通過しない隙間はほとんどないといえるから、異なる色の光の全部が混合されて外部へ出射されるか、少なくとも、異なる色の光のほとんどが混合されて外部へ出射されると解される。 7 上記1ないし6によれば、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「0.3mm間隔でシリコン基板の上側平面上に配置された赤1個、緑2個、青1個の計4個のLEDと、 前記LEDを覆うように前記シリコン基板上に形成された半球状のレンズ構造体と、 前記レンズ構造体の表面を覆う2層に積層された複数の透光性球状粒子とを備え、 前記半球状のレンズ構造体は、前記LEDを封止する透明シリコン樹脂の封止層と、前記封止層上に配置されたアクリル半球レンズとから構成され、 前記LEDからの異なる色の光のほとんどが、前記透光性球状粒子を通過して混合されて外部へ出射され、 前記LEDからの異なる色の光を小さな空間で混合して、所望の色を得ることにより、装置を小型化した照明装置。」 第5 対比 引用発明と本願発明とを対比する。 1 引用発明の「赤1個、緑2個、青1個の計4個のLED」は、本願発明の「複数の発光ダイオード(LED)チップ」に相当する。 2 平行とは、複数の直線が交わらずねじれの位置でもないこと、または複数の平面が交わらないことを指すところ、本願発明における「LEDチップが互いに平行に搭載され」との構成は、平行をなす直線または平面が、複数あるLEDのどの部分を指すのか不明であるから、かならずしも明確でない。 しかし、請求人が平成26年5月30日に提出した意見書には、「一方、引用例1の発光装置は、3つのLED10が傾けて搭載されているため光は異なる方向へ放射され、またその光軸がカバー14で一点で交差しているため、光は主にレンズ状カバー14の頂点付近から放射される構成となっています。これに対して本発明のLED部品は、LEDチップが互いに平行に搭載され、光が一方向に放射されます。従って本発明と引用例1では構成が異なっています。さらに本発明は、引用例1のように傾斜のあるマウントを必要とせず、また傾斜面に搭載する必要がないため、実装コストの点で優位であるという利点があります。」(3頁10ないし16行)との記載がある。この記載によれば、上記構成は、「複数のLEDが、異なる傾きの異なる平面上ではなく、同一平面上に配置されること。」を指すと解される。 してみると、計4個のLEDがシリコン基板の上側平面上に配置されている引用発明は、該構成を備えているといえる。 なお、請求人は同意見書で「他方、引用例2の照明装置は、引用例1とは異なり発光素子が一つの平面上に配置されていますが」(3頁17、18行)と主張し、引用発明では、複数のLEDが、同一平面上に配置されていることを認めている。 3 引用発明の「2層に積層された複数の透光性球状粒子」は、「LEDからの異なる色の光のほとんどが、透光性球状粒子を通過して混合されて外部へ出射される」機能を奏するものである。 一方、本願発明の「拡散部」は、「拡散部を通過した光は直接見ると混合光として見える」ように機能するものである。 してみると、両者はどちらも「複数のLEDチップ」からの光を混合する作用をなすものである。 よって、引用発明の「2層に積層された複数の透光性球状粒子」は、本願発明の「拡散部」に相当する。 4 引用発明の「『LEDを封止する透明シリコン樹脂の封止層と、前記封止層上に配置されたアクリル半球レンズとから構成され』る『半球状のレンズ構造体』」は、本願発明の「LEDチップの上を覆いかつ直接接触した凸レンズ」に相当する。 5 引用発明の「拡散部」(2層に積層された複数の透光性球状粒子)が、「凸レンズ」(レンズ構造体)の表面を覆っていることは、本願発明の「拡散部は凸レンズの少なくとも一部分に接している」に相当する。 6 引用発明の「照明装置」は、本願発明の「LED部品」に相当する。 7 上記1ないし6によれば、本願発明と引用発明とは、以下の<一致点>で一致し、以下の<相違点>で相違する。 <一致点> 「複数の発光ダイオード(LED)チップであって、該LEDチップが互いに平行に搭載されたLEDチップと、 前記複数のLEDチップからの光を混合する拡散部と、 前記LEDチップの上を覆いかつ直接接触した凸レンズとを備え、 前記拡散部は前記凸レンズの少なくとも一部分に接しているLED部品。」 <相違点> 本願発明の「拡散部」は、「複数のLEDチップからの光の少なくとも一部が通過して前記複数のLEDチップからの光が近距離場で混合され、拡散部を通過した光は直接見ると混合光として見えるので、前記複数のLEDチップを点灯した時、前記複数のLEDチップが単一光源に見えるように配置され」ているのに対して、引用発明の「拡散部」(2層に積層された複数の透光性球状粒子)は、そのように配置されているか否か不明である点。 第6 判断 上記<相違点>について検討する。 1 「近距離場で混合」の意味する技術内容について、本願発明の<相違点1>に係る構成は、かならずしも明確でないので、本願明細書の記載を参酌する。 本願明細書には、本願発明が前提とする従来技術について、次の(1)の記載があり、従来技術の課題を解決する、本願発明を含む発明について、次の(2)の記載がある。 (1) 「【背景技術】 【0002】・・・ 【0005】・・・一部のケースでは、遠距離場で光を混合させるので、直接見た場合には異なる色相の光を発光している光源を個別に特定することができるが、遠距離場では光が混ざり合って白色に見える光が得られる。遠距離場で混合する方法の問題点の1つに、ランプまたは照明器具を直接見るとそれぞれ別個の光源の光が見えてしまう可能性がある点が挙げられる。・・・ 【0007】・・・別のランプでは、拡散部は複数の別個の光源から2-3インチ離して設けるとしてよく、拡散部と光源との間の距離を小さくすると、光源から発光される光が十分に混合されない可能性がある。・・・」 (2) 「【発明の概要】 【課題を解決するための手段】 【0010】 本発明は、複数の別個の光源からの光を「近距離場」で混合させることを特徴とするLED部品および照明装置のさまざまな実施形態を提供する。複数の別個の光源は、異なる色の光を発光するとしてよく、LED部品および照明装置を直接見ると、複数の別個の光源からの光は混合させられて、複数の異なる色の光を出す光源ではなく、単色光源に見える。・・・ 【0011】 本発明の一実施形態に係る発光ダイオード(LED)部品は、複数のLEDチップを備える。拡散部は、LEDからの光の少なくとも一部が当該拡散部を通過して近距離場でLEDからの光が混合されるように配置される。拡散部を通過する光は、直接見ると、混合光に見える。」 2 上記1(1)によれば、従来は、遠距離場で光を混合させるので、遠距離場では光が混ざり合って白色に見える光が得られるが、ランプまたは照明器具を直接見るとそれぞれ別個の光源の光が見えてしまう可能性があり、また、拡散部と複数の光源が(一例では2-3インチ)離れて設けられており、拡散部と光源との間の距離を小さくすると、光源から発光される光が十分に混合されない可能性があった。 3 上記1(2)によれば、本願発明は、上記2で検討した従来技術の課題を解決するものであり、複数の別個の光源からの光を「近距離場」で混合させることで、LED部品および照明装置を直接見ると、複数の別個の光源からの光は混合されて、複数の異なる色の光を出す光源ではなく、単色光源に見え、また、拡散部を通過して近距離場でLEDからの光が混合されて、拡散部を通過する光は、直接見ると、混合光に見える。 4 上記2及び3によれば、本願発明の<相違点1>に係る構成は、 「複数のLEDチップと拡散部は、十分に近い間隔で配置されており、LEDチップからの光は、拡散部を通過して混合され、拡散部を通過する光を直接見ると、複数のLEDチップからの光は、別個の光源からの光としてではなく、混合されて単色光源に見える。」 ことを意味すると解される。 5 引用発明が、「LEDからの異なる色の光のほとんどが、透光性球状粒子を通過して混合されて外部へ出射され、前記LEDからの異なる色の光を小さな空間で混合して、所望の色を得ることにより、装置を小型化した照明装置」であることに照らして、引用発明において、「計4個のLED」と「透光性球状粒子」とを、十分に近い間隔で配置し、その結果、「LED」からの光が、「透光性球状粒子」を通過して混合され、「透光性球状粒子」を通過する光を直接見ると、「(複数の)LED」からの光は、別個の光源からの光としてではなく、混合させられて単色光源に見えるようになすことは、当業者が適宜なし得たことと認められる。 6 上記4及び5によれば、引用発明において、本願発明の<相違点>に係る構成を備えることは、当業者が適宜なし得たことと認められる。 また、該構成を備えることによる効果は、当業者が予測し得る程度のものと認められる。 よって、本願発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明できたものと認められる。 第7 むすび 上記のとおり、本願発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-06-26 |
結審通知日 | 2014-06-27 |
審決日 | 2014-07-08 |
出願番号 | 特願2011-511641(P2011-511641) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 道祖土 新吾 |
特許庁審判長 |
江成 克己 |
特許庁審判官 |
畑井 順一 星野 浩一 |
発明の名称 | 近距離場で光を混合する光源 |
代理人 | 特許業務法人浅村特許事務所 |