• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1294198
審判番号 不服2013-10448  
総通号数 181 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-06-05 
確定日 2014-11-21 
事件の表示 特願2011-212884「自動化されたデータ・ストレージ・ライブラリ、ロボット通信システム、コンピュータ・プログラム、およびデータ・ストレージ・システム(自動化されたデータ・ストレージ・ライブラリのためのバースト通信)」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 3月15日出願公開、特開2012- 53976〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯・本願発明
本願は、平成18年10月18日(パリ条約による優先権主張2005年10月27日、米国)を出願日とする特願2006-284403号の一部を、平成23年9月28日に新たに特許出願したものであって、平成25年3月21日付けで拒絶査定がなされ、それに対して同年6月5日に拒絶査定不服の審判請求がされ、同時に手続補正がされたものであって、その請求項1に係る発明は、平成25年6月5日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)

「【請求項1】
自動化されたデータ・ストレージ・ライブラリであって、
データ・ストレージ・カートリッジを格納する複数のストレージ棚と、
前記データ・ストレージ・カートリッジに対してデータを読み出しまたは書き込みもしくはその両方を行う少なくとも1つのデータ・ストレージ・ドライブと、
フレーム支持体によって支持された一対の離れたバス・バーと、
前記一対のバス・バーに対して電力を供給する電源と、
ロボット・アクセス機構であって、
前記ストレージ棚および前記少なくとも1つのデータ・ストレージ・ドライブに対して前記データ・ストレージ・カートリッジの少なくとも1つのアクセスおよび配送を行うように構成されるピッカーと、
前記ロボット・アクセス機構を移動させて、少なくとも前記ピッカーが前記少なくとも1つのデータ・ストレージ・カートリッジに対するアクセスおよび配送を行うように位置付けることができるように前記ピッカーを位置付けるように構成される駆動システムと、
前記一対のバス・バーそれぞれを連結および開放するバス・バー・リレーと、
前記ロボット・アクセス機構を移動させるように前記駆動システムを動作させ、前記少なくとも1つのデータ・ストレージ・カートリッジをアクセスおよび配送するように前記ピッカーを動作させ、前記ロボット・アクセス機構が静止している場合には、前記一対のバス・バーそれぞれを連結するように前記バス・バー・リレーそれぞれを動作させるロボット制御器と、
前記バス・バー・リレーそれぞれが前記一対のバス・バーそれぞれを連結している場合には、前記バス・バー・リレーそれぞれを介して電力を受け取り、前記受け取った電力を蓄積し、前記蓄積した電力を、少なくとも前記バス・バー・リレーそれぞれが開放されている場合に、前記ロボット・アクセス機構に送る電力蓄積システムと
を備えている、前記ロボット・アクセス機構と
を備えている、前記自動化されたデータ・ストレージ・ライブラリ。」

第2 引用文献
(1)原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-250789号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の記載がある。
(ア)「【発明が解決しようとする課題】
本発明は単一の磁気媒体ライブラリ装置において、媒体テープを混合する改善方法及び装置に関する。こうした改善には、改善された物理的柔軟性及び効果的な制御が含まれる。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、それぞれが異なる物理的特性及びデータ取扱い特性を有する様々な媒体を記憶及び検索する装置が提供される。キャビネット手段は第1の開放サイドを有する。カートリッジ格納配列手段は、前記開放サイドに近接するキャビネット手段内に配置され、第1及び第2の互いに反対方向を向く開放サイドを有する。複数の同一サイズのビン・リセプタクルが前記キャビネット手段内に設けられる。全てのビンはモジュール方式すなわち最小サイズの整数倍のサイズを有する。こうしたビン配列は、低性能及び高性能システムの間で大量のデータを転送することを容易にする。各リセプタクルはカートリッジ・ビンをアクセスするための開口を有し、それぞれは前記第1及び第2の開放サイドに設けられ、ビンを受取りまた明け渡す役割をする。各ビンは複数の媒体収納カートリッジを格納できる。開放可能なドアがキャビネット手段の前記第1のサイドに設けられ、前記リセプタクルへのアクセスを阻止するように、第1のサイドを閉鎖する。・・・中略・・・ビン・センス手段が配列手段の前記第2の開放サイドに近接する各前記リセプタクル内に配置され、それぞれのリセプタクル内におけるビンの存在或いは不在をセンス及び指摘する。媒体装置を受取る複数のカートリッジがキャビネット手段内に配置される。・・・中略・・・カートリッジ移動手段は、いずれの前記リセプタクル及び前記複数のカートリッジ受取り媒体装置をアクセスできるように、キャビネット手段内に移動式に搭載され、前記第1或いは第2のタイプの媒体カートリッジの一方を、前記リセプタクルと前記第1及び第2の装置との間でそれぞれ移動する。・・・中略・・・移動手段によりピック及び移動され、任意のビン或いはカートリッジのバー・コード・ラベルを読出す。カートリッジ監査、取入れ及び取出し手段及び制御は、複数媒体ライブラリ周辺データ記憶サブシステムの保全性を保証する。」(段落【0012】?【0013】)

(イ)「【実施例】図を参照すると、同一番号は様々な図において同様のパーツ及び構成的機構を表す。図1から図3は本発明を実施する大型複数キャビネット複数媒体ライブラリ・データ記憶サブシステム10を示す。サブシステム10はホスト・プロセッサ11に通常に接続される。サブシステム10はキャビネット12-14を含み、これらは媒体収納カートリッジ、制御回路、媒体装置(レコーダ及びプレーア)などを含む。キャビネット15A及び15Bは後に説明されるように、カートリッジだけを収容する。これらのカートリッジだけを含むキャビネットは、同一サイズ或いはモジュラー・サイズのビンが使用可能であれば、いくつかの機構的構成の内のいずれか1つを含む。モジュラー・サイズのビンと言う用語は、全てのビンが最小ビン・サイズの整数倍であることを示す。媒体カートリッジは非常に多数のカートリッジ記憶リセプタクル16の間を、移動システム17及び媒体装置(ドライブ、レコーダ、プレーアなどとも称される)20、21及び21Aの内の選択される1つにより転送される。複数の装置20(図7)は小型の光ディスクに含まれる光媒体を読出しまた記録する。光ディスクは90mmの光ディスクを含むカートリッジ22(図18)を含む。異なる直径のディスク25をオペレートする他の光装置も使用可能である。典型的には光ディスク25は90mm(3.5インチ)、130mm(5.25インチ)、200mm、10或いは12インチを有する。ディスク25は特定に設計される光ディスク装置20に或いはから移動される。後に説明される制御(図20)はカートリッジ移動を管理し、媒体タイプが適切な装置にだけ移動されることを保証する。4角形の光記録カード(図示せず)もまた、他の装置(図示せず)と共に使用可能である。同様に、複数の磁気装置21(図6)がサブシステム10に含まれる。キャビネット13内の磁気装置21は、図14及び図15で示されるテープ・カートリッジ23と共に動作するように設計される。こうしたテープ・カートリッジは例えばIBM3490テープ・サブシステムにおいて使用される。キャビネット14内の磁気装置21はテープ・カートリッジ23と共には動作せず、むしろこれら後者の装置は、図16及び図17で示されるテープ・カートリッジ24と共に動作する。キャビネット14内の磁気装置21A(図8)はカートリッジ24と共に動作する。本発明によれば、3つの全ての非互換な媒体カートリッジがいずれかのリセプタクル16に格納され、後に述べられる制御の下で、それぞれのリセプタクル及び適切な装置の間で移動され、後に明らかにされるデータ処理オペレーションが実行される。
【0015】ホスト・プロセッサ11はデータを記憶及び検索するためにサブシステム10に要求を提供し、こうしたデータは1つ或いは複数の媒体カートリッジに記憶される。サブシステム10は媒体カートリッジをそれらのそれぞれの記憶リセプタクル16から移動することにより、ホスト・プロセッサ11の要求に応答する。全ての媒体カートリッジは取出し可能な記憶ビンに格納される。図35で見られるように、ハーフ・サイズのビン26及びフル・サイズのビン27はそれぞれ小型及び大型のカートリッジを格納する。2個のビン26がリセプタクル16の1個に挿入でき、一方、1個のビン27が1個のリセプタクルに挿入される。各リセプタクルはどちらのビンも受取ることができる。制御手段(周辺制御装置或いはホスト・プロセッサ11)30はマイクロプロセッサを含み、これは(通常)ホスト・プロセッサ11との通信、及び本発明を実施するためのサブシステム10のオペレーションの制御、及びこうしたサブシステムに通常関連する他の周知の機械オペレーションを担うプログラムを実行する。制御30は例えばキャビネット12などの1個のキャビネット内に存在することが好適である。装置20、21、21A、或いは制御30を収容する各キャビネットは、固有の電源31及び冷却システム32を有する。
【0016】カートリッジ移動手段は複数のトラベリング・エレベータ("ピッカ"とも称される)33-36を含む。図2で示されるように、ピッカ33及び34は共にキャビネット12及び15Aをサービスし、ピッカ35及び36はキャビネット13、14及び15Bをサービスする。1対の離れた静的なレール37は、リセプタクル16及び装置20-21Aなどを有するキャビネット内の記憶ラック(図36)の開放面に沿ってピッカが移動することを移動式に指示する。ピッカを移動し、カートリッジ・グリッパを制御する電気回路にパワー供給する電源は、軽量の可撓性のパワー・ケーブル(図示せず)により供給されるか、或いは通常にレール37上を伝送される。制御及び状態信号は各ピッカと制御30の間を可撓性ケーブル(図示せず)を介して伝達される。赤外線(IR)通信システムを使用することにより、ピッカ上のケーブルのはい回しを減らすことも望ましい。この目的のために、図2及び図3で最もよく表されるように、IRトランシーバ40-41が移動手段の終端に搭載される。トランシーバはおおよそピッカの半分の高さのところに搭載される。制御手段30は全てのトランシーバに電気的に接続され、全てのトランシーバとの間で制御及び状態情報を送受信し、この様子は図20に最もよく表されている。」(段落【0014】?【0016】)

(ウ)「【0024】図4及び図5は1個のキャビネット・データ記憶サブシステム60のそれぞれ平面図及び立面図である。構成は一般には図1乃至図3のキャビネット12のそれに準じる。レール37上の単一のピッカ33、IRトランシーバ40、及びバー・コード・ワンド・リーダ53により、カートリッジ移動装置が構成される。他の全ての要素はキャビネット12で説明されるものと同様である。」(段落【0024】)

(エ)「【0032】図20乃至図34は単一或いは複数のキャビネット構成を含む複数媒体データ記憶周辺ライブラリ・サブシステム10を提供する、本発明を実施するための制御30及びオペレーションを表す。マイクロプロセッサ90は制御30の中枢である。マイクロプロセッサ90は図21乃至図24で示されるデータ構造を使用して、図26乃至図34に示される機械オペレーションを生じるためのマイクロコード(図26乃至図34の機械オペレーション・チャートにより示される)を実行する。図26乃至図34は、サブシステム10の保全性を保証するための手動オペレーションを含み、これらはマイクロプロセッサ90により制御される機械オペレーションによりモニタ及び制限される。オペレータ・パネル50は状態情報の検索、診断の設定、及び制御情報、構成情報などの入力のために、マイクロプロセッサ90に接続される。制御アダプタ91はケーブル92を介し、マイクロプロセッサ90とホスト・プロセッサ11との間の通信リンクを提供する。この通信リンクはIBMのホストから制御装置への接続、シリアルRS232リンクなどである。」(段落【0032】)

(オ)「【0040】マイクロプロセッサ90はまたピッカ33により、カートリッジ転送を制御する。ピッカ制御123はマイクロプロセッサ90と通常の方法で通信する。ピッカ制御123はマイクロプロセッサ90のコマンドに応答して、ピッカを所与のリセプタクル16或いは媒体装置20-21Aに移動する。これは移動コマンドをケーブル124及びIRトランシーバ40または41を介して、ピッカ33に送信することにより達成される。カートリッジをビン・スロット104或いは媒体装置20-21Aのどちらからピックするかに関しても、IRトランシーバ40または41を介してピッカ33にコマンド伝達される。ピッカ33の状態、カートリッジ不在情報及び他の状態情報もまた、ピッカ33からIRトランシーバ40(41)及びピッカ制御123を介して、マイクロプロセッサ90に伝達される。」(段落【0040】)

(カ)「【0075】図38はピッカ33、IRトランシーバ40、及びワンド54用ホールダ53の空間的関係を示す。図39に示されるグリッパ機構についても説明する。ピッカ33は隔てたレール(図2)により移動式に支持されるカートリッジ(図示せず)を有し、レール上には直立した支持310が移動される。ピッカ本体311は支持310上を通常の方式により水力方向に移動する。グリッパ・アセンブリ312が本体311上に搭載される。本体311はまた、支持310の回りを回転し、これは自動ライブラリ構造として知られる。グリッパは上段及び下段のグリッパ・アーム322及び321から成る(図39)。アーム321、322は別々に或いは一緒に移動して、カートリッジをそのグリッパ・スロット75(図14乃至図18)から開放及びグリップする。ワンド54はピッカ33により移動されるための同一のグリッパ・スロット323を有する。キャビネット12(図1乃至図3)上に搭載される可撓性の電源ケーブル313は、電源装置(図示せず)に接続される。これとは別に、電源が支持レール37により供給され、そこから本体311に供給されても良い。可撓性ケーブル(図示せず)はまた、本体311からカートリッジに伸長されて、電源供給用の接続をすることも可能である。」(段落【0075】)

以上の記載によれば、引用文献1には、以下のような発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。
「大型複数キャビネット複数媒体ライブラリ・データ記憶サブシステム10であって、
媒体装置或いは制御回路(制御30)を収容する各キャビネットは、固有の電源及び冷却システムを有し、
カートリッジ格納配列手段は、キャビネット内に配置され、複数の同一サイズのビン・リセプタクルが前記キャビネット手段内に設けられ、各リセプタクルはカートリッジ・ビンをアクセスするための開口を有し、ビンを受取りまた明け渡す役割をし、各ビンは複数の媒体収納カートリッジを格納でき、複数のカートリッジがキャビネット内に配置され、
媒体カートリッジは非常に多数のカートリッジ記憶リセプタクル16の間を、移動システム17及び媒体装置(ドライブ、レコーダ、プレーアなどとも称される)20、21及び21Aの内の選択される1つにより転送され、複数の装置20は小型の光ディスクに含まれる光媒体を読出しまた記録し、
カートリッジ移動手段は複数のトラベリング・エレベータ("ピッカ"とも称される)33-36を含み、1対の離れた静的なレール37は、リセプタクル16及び装置20-21Aなどを有するキャビネット内の記憶ラックの開放面に沿ってピッカが移動することを移動式に指示し、レール37上の単一のピッカ33、IRトランシーバ40、及びバー・コード・ワンド・リーダ53により、カートリッジ移動装置が構成され、ピッカを移動し、カートリッジ・グリッパを制御する電気回路にパワー供給する電源は、軽量の可撓性のパワー・ケーブルにより供給されるか、或いは通常にレール37上を伝送され、
ピッカ33は隔てたレール37により移動式に支持され、レール上には直立した支持310が移動され、ピッカ本体311は支持310上を通常の方式により移動し、グリッパ・アセンブリ312が本体311上に搭載され、本体311は、支持310の回りを回転し、これは自動ライブラリ構造として知られ、グリッパは上段及び下段のグリッパ・アーム322及び321から成り、アーム321、322は別々に或いは一緒に移動して、カートリッジをそのグリッパ・スロット75から開放及びグリップし、
制御30の中枢であるマイクロプロセッサ90はピッカ33により、カートリッジ転送を制御し、ピッカ制御123はマイクロプロセッサ90と通常の方法で通信し、ピッカ制御123はマイクロプロセッサ90のコマンドに応答して、ピッカを所与のリセプタクル16或いは媒体装置20-21Aに移動する大型複数キャビネット複数媒体ライブラリ・データ記憶サブシステム10。」

(2)同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-92606号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに次の記載がある。
(ア)「【従来の技術】従来、軌道上を走行する移動体へ電力を供給する給電装置としては、ケーブルベヤなどを用いて電線や信号線の曲率や姿勢を保ちながら、この電線や信号線を移動させるケーブル方式のものや、ケーブルを用いずに、給電レールを移動体の移動領域内に固定的に配置し、スプリング等で常に圧接力を受けた集電シューをこの給電レールに接触させながら行う滑り接触方式のものが知られている。
【0003】このケーブル方式の給電装置では、ケーブルの機械的寿命が曲げ半径と曲げ回数で定まるために、一定の曲率で一方向にのみ屈曲させて格納可能なケーブルベヤを適用し、ケーブルをケーブルベヤ内に格納支持することで保護している。しかし、ケーブルベヤの機能上、移動体は所定距離領域での往復運動に限られている。また、ケーブルがケーブルベヤ内で保護されているものの、移動体の移動時にケーブルが屈曲するため、ケーブルがケーブルベヤとの間で擦れ、皮膜が磨耗して寿命が短くなってしまう。」(段落【0002】?【0003】)

(イ)「【発明が解決しようとする課題】このように移動体の移動速度が数m/sec 以上の高速で移動する場合、従来のケーブル方式の給電装置では、ケーブル同志もしくはケーブルとケーブルベヤとの摩擦から磨耗粉が多量に発生、飛散して製品の品質を低下させたり、高騒音により生産環境を悪化させてしまい、製品の品質と生産性の向上を阻害する大きな要因となっている。
【0008】また、従来の滑り接触方式の給電装置では、集電シューの摩耗速度の増加が集電シューの温度を上昇させて伝達能力を低下させたり、集電シューの摩耗量の増加や集電シューによる摩耗粉の乗り越えによる跳躍などで、集電切れの可能性が増大してしまい、高速になればなるほど、製品の品質や装置の信頼性を低下させてしまうという問題がある。
【0009】本発明は、従来の各給電装置が、移動体の移動時に摩擦動作が発生するような構造を前提としていることに着目し、移動体が所定の位置に停止しているときに給電し、移動中には給電を不要とするシステムとし、摩擦機構を排除して摩耗粉や騒音の発生を抑制して移動体を高速で移動可能とする一方で信頼性の高い給電装置及び給電方法を提供することを目的とする。」(段落【0007】?【0009】)

(ウ)「【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するための請求項1の本発明の給電装置は、フレームに固定されたガイドレールと、該ガイドレールに沿って移動自在に支持された移動体と、前記フレームに前記ガイドレールと平行に取付けられた給電バーと、該給電バーに対して接触及び離脱自在となるように前記移動体に支持された集電部材と、該集電部材を前記給電バーに対して接触及び離脱させる接触離脱手段と、該接触離脱手段を作動制御して前記移動体の停止時には前記集電部材を前記給電バーに接触させる一方、該移動体の移動時には該集電部材を該給電バーから離脱させる給電制御手段とを具えたことを特徴とするものである。
【0011】従って、移動体はフレームに固定されたガイドレールに沿って移動自在であり、給電制御手段は、移動体の移動時には、接触離脱手段を作動制御して集電部材を給電バーから離脱させることで、集電部材と給電バーとの間で摩擦は発生せず、摩耗が防止されると共に高騒音の発生も抑制される。一方、移動体の停止時には、接触離脱手段を作動制御して集電部材を給電バーに接触させることで、集電部材は給電バーから給電を行うこととなり、確実な給電が可能となる。
【0012】また、請求項2の本発明の給電装置では、前記移動体には充電ユニットと、バッテリとが搭載されていることを特徴としている。
【0013】従って、移動体の停止時には、集電部材が給電バーに接触して給電が行われ、電力が充電ユニットを介してバッテリに蓄電されることとなり、このバッテリに蓄電された電力により、集電部材が給電バーから離脱された状態であっても、移動体の移動が可能となる。
【0014】また、請求項3の本発明の給電装置では、前記接触離脱手段は、前記移動体に搭載されたアクチュエータであることを特徴としている。」(段落【0010】?【0014】)

(エ)「【0028】そして、固定フレーム11側に電力を供給する給電ユニット21が設けられる一方、移動ベース13側に給電ユニット21から電力を集電する集電ユニット22が設けられている。即ち、図1に示すように、給電ユニット21において、固定フレーム11にはガイドレール12と平行をなしてハウジング23が取付けられ、このハウジング23に形成された4つの溝にはそれぞれ給電バー24が取付けられている。なお、各給電バー24には図示しない電源部が接続されている。一方、集電ユニット22において、移動体13にはハウジング25がガイドロッド26によって給電バー24に対して接近離反自在に支持されると共に、スプリング27によって離間する方向に付勢支持されている。このハウジング25には4つの給電バー24に対向して集電部材としての4つの集電子28が装着され、スプリング29によって接近する方向に付勢支持されている。そして、移動ベース13には、集電子28を給電バー24に対して接触及び離脱させるために、ハウジング25を移動する接触離脱手段としてのアクチュエータ30が搭載され、プランジャ31の先端部がハウジング25に連結されている。
【0029】従って、アクチュエータ30への非通電状態では、図1に示すように、スプリング27によってハウジング25は移動ベース13に密着した位置にあり、各集電子28は給電バー24から離脱した位置に保持されている。そして、図2に示すように、アクチュエータ30へ通電すると、プランジャ31が突出してスプリング27の付勢力に抗してハウジング25を押圧して移動し、各集電子28を給電バー24に接触することができ、このとき、移動ベース13の移動ストロークの拘らず、スプリング29の付勢力により集電子28を給電バー24に所定の圧力で接触保持することができる。【0030】また、図1に示すように、このアクチュエータ30には給電制御手段としてのコントローラ32が接続されており、このコントローラ32には移動ベース13の移動及び停止を検出する検出センサ33が接続されている。また、移動ベース13には充電ユニット34と整流ユニット35とバッテリ36とが搭載されており、充電ユニット34にコントローラ32が接続されている。
【0031】従って、検出センサ33が移動ベース13の停止を検出すると、コントローラ32はアクチュエータ30へ通電してハウジング25を移動し、各集電子28を給電バー24に接触すると共に、充電ユニット34を制御して給電バー24から集電子28を介して電力を充電し、整流ユニット35を介してバッテリ36に蓄電させることができる。」(段落【0028】?【0031】)

(オ)「【0034】図1及び図3に示すように、操作盤からコントローラ32に移動指令が入力されると、このコントローラ32は駆動モータ14を駆動し、駆動ベルト17を移動して移動ベース13をガイドレール12に沿って所定の方向に移動する。このとき、検出センサ33は移動ベース13の移動を検出してコントローラ32に出力しており、コントローラ32はアクチュエータ30へ通電せず、ハウジング25はスプリング27により移動ベース13に密着した位置にあり、各集電子28は給電バー24から離脱した位置に保持され、給電は行われていない。
【0035】このように移動ベース13がガイドレール12に沿って移動しているときは、集電子28が給電バー24から離脱した位置に保持されており、両者の間で摩擦は発生せず、集電子28や給電バー24の摩耗が防止されると共に、摩擦による騒音の発生が抑制される。」(段落【0034】?【0035】)

第3 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「大型複数キャビネット複数媒体ライブラリ・データ記憶サブシステム10」は、磁気媒体ライブラリ装置であり、「制御30の中枢であるマイクロプロセッサ90はピッカ33により、カートリッジ転送を制御し、ピッカ制御123はマイクロプロセッサ90と通常の方法で通信し、ピッカ制御123はマイクロプロセッサ90のコマンドに応答して、ピッカを所与のリセプタクル16或いは媒体装置20-21Aに移動する」から、自動化されているといえ、本願発明の「自動化されたデータ・ストレージ・ライブラリ」に相当する。

(イ)引用発明の「媒体収納カートリッジ」、「媒体カートリッジ」、「カートリッジ」は、本願発明の「データ・ストレージ・カートリッジ」に相当する。

(ウ)引用発明の「リセプタクル16」「を有するキャビネット内の記憶ラック」は、本願発明の「データ・ストレージ・カートリッジを格納する複数の棚」に相当する。

(エ)引用発明の「媒体装置(ドライブ、レコーダ、プレーアなどとも称される)20、21及び21A」は、本願発明の「前記データ・ストレージ・カートリッジに対してデータを読み出しまたは書き込みもしくはその両方を行う少なくとも1つのデータ・ストレージ・ドライブ」に相当する。

(オ)引用発明の「ピッカ33」は、「カートリッジ移動手段」であり、「リセプタクル16及び装置20-21Aなどを有するキャビネット内の記憶ラックの開放面に沿って」移動し、「所与のリセプタクル16或いは媒体装置20-21Aに移動」し、さらに「ピッカ33」は、「隔てたレール37により移動式に支持され、レール上には直立した支持310が移動され、ピッカ本体311は支持310上を通常の方式により移動し、グリッパ・アセンブリ312が本体311上に搭載され、本体311は、支持310の回りを回転し、これは自動ライブラリ構造として知られ、グリッパは上段及び下段のグリッパ・アーム322及び321から成り、アーム321、322は別々に或いは一緒に移動して、カートリッジをそのグリッパ・スロット75から開放及びグリップ」するから、引用発明の「ピッカ33」は、「支持310」と「ピッカ本体311」を備え、レール37に支持されて移動し、さらに「ピッカ本体311」は、支持310上を移動し、支持310の回りを回転するから、「ピッカ33」自体を移動し、「ピッカ本体311」を移動し、回転させる駆動手段を備えることは明らかである。
そして、引用発明が備えることが明らかな前記駆動手段は、本願発明の「前記ロボット・アクセス機構を移動させて、少なくとも前記ピッカーが前記少なくとも1つのデータ・ストレージ・カートリッジに対するアクセスおよび配送を行うように位置付けることができるように前記ピッカーを位置付けるように構成される駆動システム」に相当するといえる。
また、引用発明の「ピッカを移動し、カートリッジ・グリッパを制御する電気回路」は、「ピッカ33」に備えられていることは明らかであるから、本願発明の「前記ロボット・アクセス機構を移動させるように前記駆動システムを動作させ、前記少なくとも1つのデータ・ストレージ・カートリッジをアクセスおよび配送するように前記ピッカーを動作させ、前記ロボット・アクセス機構が静止している場合には、前記一対のバス・バーそれぞれを連結するように前記バス・バー・リレーそれぞれを動作させるロボット制御器」と、「前記ロボット・アクセス機構を移動させるように前記駆動システムを動作させ、前記少なくとも1つのデータ・ストレージ・カートリッジをアクセスおよび配送するように前記ピッカーを動作させるロボット制御器」である点では一致する。
引用発明の「ピッカ33」は、本願発明の「ロボット・アクセス機構」に相当するといえ、引用発明の「ピッカ本体311」は、本願発明の「前記ストレージ棚および前記少なくとも1つのデータ・ストレージ・ドライブに対して前記データ・ストレージ・カートリッジの少なくとも1つのアクセスおよび配送を行うように構成されるピッカー」に相当するといえる。

(カ)引用発明の「1対の離れた静的なレール37」は、キャビネットに支持固定されていることは明らかであり、「ピッカを移動し、カートリッジ・グリッパを制御する電気回路にパワー供給する電源は、」「通常にレール37上を伝送」されているから、本願発明の「フレーム支持体によって支持された一対の離れたバス・バー」と、「支持された一対の離れたバス・バー」である点では一致し、引用発明の「ピッカを移動し、カートリッジ・グリッパを制御する電気回路にパワー供給する電源」は、本願発明の「前記一対のバス・バーに対して電力を供給する電源」に相当するといえる。

したがって、両者は、
「自動化されたデータ・ストレージ・ライブラリであって、
データ・ストレージ・カートリッジを格納する複数のストレージ棚と、
前記データ・ストレージ・カートリッジに対してデータを読み出しまたは書き込みもしくはその両方を行う少なくとも1つのデータ・ストレージ・ドライブと、
支持された一対の離れたバス・バーと、
前記一対のバス・バーに対して電力を供給する電源と、
ロボット・アクセス機構であって、
前記ストレージ棚および前記少なくとも1つのデータ・ストレージ・ドライブに対して前記データ・ストレージ・カートリッジの少なくとも1つのアクセスおよび配送を行うように構成されるピッカーと、
前記ロボット・アクセス機構を移動させて、少なくとも前記ピッカーが前記少なくとも1つのデータ・ストレージ・カートリッジに対するアクセスおよび配送を行うように位置付けることができるように前記ピッカーを位置付けるように構成される駆動システムと、
前記ロボット・アクセス機構を移動させるように前記駆動システムを動作させ、前記少なくとも1つのデータ・ストレージ・カートリッジをアクセスおよび配送するように前記ピッカーを動作させるロボット制御器と、
を備えている、前記ロボット・アクセス機構と
を備えている、前記自動化されたデータ・ストレージ・ライブラリ。」
で一致するものであり、次の(1)、(2)の点で相違している。

<相違点>
(1)本願発明は、一対の離れたバス・バーが「フレーム支持体によって支持」されているのに対して、引用発明の「1対の離れた静的なレール37」はその支持機構が明らかではない点。

(2)本願発明は、「前記一対のバス・バーそれぞれを連結および開放するバス・バー・リレー」と、「前記バス・バー・リレーそれぞれが前記一対のバス・バーそれぞれを連結している場合には、前記バス・バー・リレーそれぞれを介して電力を受け取り、前記受け取った電力を蓄積し、前記蓄積した電力を、少なくとも前記バス・バー・リレーそれぞれが開放されている場合に、前記ロボット・アクセス機構に送る電力蓄積システム」 をロボット・アクセス機構が備え、ロボット制御器が「前記ロボット・アクセス機構が静止している場合には、前記一対のバス・バーそれぞれを連結するように前記バス・バー・リレーそれぞれを動作」させるように構成されているのに対して、引用発明は、そのように構成されているものではなく、一対のレール37により電源電力を、レール37上に支持され移動するピッカ33の「ピッカを移動し、カートリッジ・グリッパを制御する電気回路」に供給するように構成されるものである点。

第4 当審の判断
・相違点(1)について
一般に、静的構造物を支持固定する際の機械的強度を担保するために、当該静的構造物を「フレーム支持体」と呼ばれるものによって支持することは、広範な分野においてごく普通に行われていることであるし、引用発明の「1対の離れた静的なレール37」(「一対の離れたバス・バー」に相当)の支持固定についても、機械的強度を担保する必要があることは明らかであるから、引用発明の「1対の離れた静的なレール37」を「フレーム支持体によって支持」されるものとすることは、当業者が容易に推考し得たことである。

・相違点(2)について
引用文献2には、「フレームに固定されたガイドレールと、該ガイドレールに沿って移動自在に支持された移動体と、前記フレームに前記ガイドレールと平行に取付けられた給電バーと、該給電バーに対して接触及び離脱自在となるように前記移動体に支持された集電部材と、該集電部材を前記給電バーに対して接触及び離脱させる接触離脱手段と、該接触離脱手段を作動制御して前記移動体の停止時には前記集電部材を前記給電バーに接触させる一方、該移動体の移動時には該集電部材を該給電バーから離脱させる給電制御手段とを具えたことを特徴とするものである。【0011】従って、移動体はフレームに固定されたガイドレールに沿って移動自在であり、給電制御手段は、移動体の移動時には、接触離脱手段を作動制御して集電部材を給電バーから離脱させることで、集電部材と給電バーとの間で摩擦は発生せず、摩耗が防止されると共に高騒音の発生も抑制される。一方、移動体の停止時には、接触離脱手段を作動制御して集電部材を給電バーに接触させることで、集電部材は給電バーから給電を行うこととなり、確実な給電が可能となる。【0012】また、請求項2の本発明の給電装置では、前記移動体には充電ユニットと、バッテリとが搭載されていることを特徴としている。【0013】従って、移動体の停止時には、集電部材が給電バーに接触して給電が行われ、電力が充電ユニットを介してバッテリに蓄電されることとなり、このバッテリに蓄電された電力により、集電部材が給電バーから離脱された状態であっても、移動体の移動が可能となる。」(段落【0010】?【0013】)ことが記載されており、複数の給電バー(「バス・バー」に相当する。)それぞれを連結および開放する集電部材および集電部材それぞれを動作させる接触離脱手段(「バス・バー・リレー」に相当する。)と、前記集電部材それぞれが前記給電バーそれぞれを連結している場合には、前記集電部材それぞれを介して電力を受け取り、前記受け取った電力を蓄積し、前記蓄積した電力を、少なくとも前記集電部材それぞれが開放されている場合に、移動体(「ロボット・アクセス機構」に相当する。)の移動が可能となる電力蓄積システムを移動体が備え、前記移動体が静止している場合には、前記給電バーそれぞれを連結するように前記集電部材それぞれを動作させる接触離脱手段を作動制御する給電制御手段(「ロボット制御器」に相当する。)を設ける技術が示されており、接触離脱手段を作動制御する給電制御手段も移動体に備えるようにすることは、必要に応じて適宜なし得る設計事項にすぎない。
そして、引用文献2は、給電レールを移動体の移動領域内に固定的に配置し、スプリング等で常に圧接力を受けた集電シューをこの給電レールに接触させながら行う、従来の滑り接触方式のものは、集電シューの摩耗速度の増加が集電シューの温度を上昇させて伝達能力を低下させたり、集電シューの摩耗量の増加や集電シューによる摩耗粉の乗り越えによる跳躍などで、集電切れの可能性が増大してしまい、高速になればなるほど、製品の品質や装置の信頼性を低下させてしまうという問題があり、従来の各給電装置が、移動体の移動時に摩擦動作が発生するような構造を前提としていることに着目し、移動体が所定の位置に停止しているときに給電し、移動中には給電を不要とするシステムとし、摩擦機構を排除して摩耗粉や騒音の発生を抑制して移動体を高速で移動可能とする一方で信頼性の高い給電装置及び給電方法を提供することを目的としており、同様な課題は、一対のレール37により、ピッカ33に電源電力を供給している引用発明においても存在することは明らかであるから、引用発明に上記引用文献2に示された技術を適用することは、当業者が容易に想到し得ることである。
したがって、「1対の離れた静的なレール37」を、ピッカ33へ電力を供給する一対のバス・バーとしている引用発明において、上記引用文献2記載の技術を適用し、一対のバス・バーそれぞれを連結および開放するバス・バー・リレーと、前記バス・バー・リレーそれぞれが前記一対のバス・バーそれぞれを連結している場合には、前記バス・バー・リレーそれぞれを介して電力を受け取り、前記受け取った電力を蓄積し、前記蓄積した電力を、少なくとも前記バス・バー・リレーそれぞれが開放されている場合に、ピッカ33に送る電力蓄積システムをピッカ33が備え、ピッカ33に備える電気回路が、ピッカ33が静止している場合には、前記一対のバス・バーそれぞれを連結するように前記バス・バー・リレーそれぞれを動作させるようにすることは当業者が容易になし得ることである。

・本願発明の作用効果については、引用発明及び文献2記載の技術から、当業者であれば予想できる範囲内のものである。

したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-06-18 
結審通知日 2014-06-25 
審決日 2014-07-10 
出願番号 特願2011-212884(P2011-212884)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 菅原 浩二  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 和田 志郎
千葉 輝久
発明の名称 自動化されたデータ・ストレージ・ライブラリ、ロボット通信システム、コンピュータ・プログラム、およびデータ・ストレージ・システム(自動化されたデータ・ストレージ・ライブラリのためのバースト通信)  
復代理人 村上 博司  
代理人 太佐 種一  
復代理人 松井 光夫  
代理人 上野 剛史  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ