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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B |
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管理番号 | 1294478 |
審判番号 | 不服2012-20825 |
総通号数 | 181 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-01-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-10-23 |
確定日 | 2014-12-11 |
事件の表示 | 特願2006- 3065「眼底観察装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 7月19日出願公開,特開2007-181631〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成18年1月10日を出願日とする出願であって,平成23年5月27日付けで拒絶理由が通知され,同年7月28日付けで手続補正がなされ,同年12月9日付けで最後の拒絶理由が通知され,平成24年2月2日付けで手続補正がなされ,同年7月12日付けで補正却下の決定がなされ,同日付で拒絶査定がなされ,同年10月23日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに,同日付けにて手続補正(以下,「本件補正」という。)がなされたものである。 さらに,平成25年8月6日付けで審尋がなされ,回答書が同年9月11日付けで請求人より提出されたものである。 第2 本願発明 本件補正により,補正前の特許請求の範囲の請求項2?8が削除され,請求項1のみとなった。 したがって,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前(以下,「平成18年法改正前」という。)の特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除を目的とするものに該当する。 補正後の特許請求の範囲の請求項1は,補正前の特許請求の範囲の請求項1と同じ, 「 【請求項1】 被検眼の眼底に照明光を照射する照明光学系と,前記眼底を経由した照明光を第1の検出手段により検出する撮影光学系とを有し,該第1の検出手段による検出結果に基づいて前記眼底の表面の2次元画像を形成する第1の画像形成手段と, 前記照明光とは異なる波長の光を出力する光源と,該光源から出力された前記光を前記眼底に向かう信号光と参照物体に向かう参照光とに分割し,前記眼底を経由した信号光と前記参照物体を経由した参照光とを重畳させて干渉光を生成する干渉光生成手段と,該生成された干渉光を検出する第2の検出手段とを有し,該第2の検出手段による検出結果に基づきフーリエドメインOCTの手法を用いて前記眼底の断層画像を形成する第2の画像形成手段と, 前記撮影光学系により形成される撮影光路と前記眼底に向かう信号光の光路とを合成するとともに,前記撮影光路と前記眼底を経由した信号光の光路とを分離する光路合成分離手段と, 固視標を表示する手段を含み,該表示された固視標を前記眼底に投影する手段と, を備え, 前記撮影光路に前記合成された前記信号光は,前記撮影光路を介して前記眼底に照射され, 前記撮影光路から前記分離された前記信号光は,前記干渉光生成手段により前記参照光と前記重畳され, 前記第2の画像形成手段は, 前記光路合成分離手段よりも前記第2の検出手段側に設けられ,前記固視標が投影された前記眼底上において前記信号光を主走査方向及びこれに直交する副走査方向に走査する一対のガルバノミラーを有し, 前記第1の画像形成手段による前記2次元画像の形成と同時に行われる前記主走査方向及び前記副走査方向の走査に基づいて複数の前記断層画像を形成し,該複数の断層画像に基づいて3次元画像を形成する, ことを特徴とする眼底観察装置。」(以下,「本願発明」という。) である。 第3 引用刊行物記載の発明 (下線は当審で付与した。) (1)本願出願前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平10-33484号号公報(以下「刊行物1」という。)には,「眼科装置」について,図面とともに次の事項が記載されている。 (1-ア)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は眼科装置に係わり,特に,測定対象眼内の測定対象部分の断面画像信号を形成するための眼科装置に関するものである。 【0002】 【従来の技術】従来,生体眼内の測定対象物の断面画像を得る技術は,可干渉距離が短い光源の光を採用しており,この光源を測定光束と参照光束とに分離し, 測定光束をスポット光として測定対象部分に照射する一方,参照光束の光路長を変化させる様に構成されている。 【0003】そして,反射されて戻ってくる参照光束と測定光束とを合成して干渉信号を形成し,参照光路に設けられた反射ミラーを移動した際の干渉信号から測定対象部分の断面画像を得る様になっている。 【0004】更に本出願人より,眼底カメラにこの種の干渉装置を組み込んだ装置に関する出願もなされている。(特開平8-38422号) 【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記従来の装置においては,光学配置が制約される上,本格的な眼底カメラに簡便に装着することができないという問題点があった。 【0006】更に,小型化が困難な上,撮影像に各種の悪影響が生じるという問題点があった。」 (1-イ)「【0011】「原理」 【0012】ここで,本発明に応用される干渉技術の原理を説明する。 【0013】図7に示す様に,光干渉測定用光学ユニット10000は,光源1000と,参照ミラー2000と,分波器3000と,受光器4000と,光ファイバー5000とから構成されている。 【0014】光ファイバー5000は,光源1000から光を導くための第1のファイバー5100と,測定対象物20000まで導くための測定用光ファイバー5200と,参照ミラー2000まで導くための参照用光ファイバー5300と,受光器4000に導くための検出用光ファイバー5400とから構成されている。 【0015】光源1000は,コヒーレンス長の短い20nm以下程度,例えば840nmの光源が利用される。なお光源1000には,スーパールミネセンス・ダイオード(SLD)を使用することもできる。 【0016】分波器3000は,第1のファイバー5100からの光を参照用光ファイバー5300と測定用光ファイバー5200とに分岐するためのものである。なお,分波器3000は,光束分岐手段に該当するものである。 【0017】また,分波器3000は,測定対象物20000から反射され測定用光ファイバー5200により導かれた光と,参照ミラー2000から反射され参照用光ファイバー5300に導かれた光とを合成して,検出用光ファイバー5400に導く機能も有している。 【0018】分波器3000と参照ミラー2000までの光路長が,分波器3000から測定対象物20000である眼の眼底部までの光路長と基本的に等しくなる様に,参照ミラー2000が移動制御される。なお参照ミラー2000は,参照反射鏡に該当するものである。 【0019】なお,測定対象物20000である眼の眼底部と測定用光ファイバー5200の出射端面とが,幾何光学的に共役の位置になる様に構成されている。 【0020】そして,測定用光ファイバー5200による測定反射光束と,参照用光ファイバー5300の参照反射光束とは合成して干渉され,受光器4000に導かれる様になっている。」 (1-ウ)「【0039】次に,光干渉測定用光学ユニット10000と,眼底カメラ30000の光学系との関連を詳細に説明する。 【0040】「第1実施例の眼底カメラの光学系30000A」 (1-エ) 「【0053】また,被検眼の視線を定めるための固視標960からの光束は,第2のダイクロイックミラー920を透過し,第1のダイクロイックミラー910により反射され,被検眼に向け投影する様に構成されている。 【0054】以上の様に構成された本第1実施例の眼底カメラの光学系30000Aは,跳ね上げミラー400により,撮影光源500及び観察光源600と,光干渉測定用光学ユニット10000との光路を光波分割することができる。更に,波長選択性素子200により,眼底カメラの撮影光路と,光干渉測定用光学ユニット10000の光路とを光波分割可能に構成されている。 【0055】そして,測定対象物20000である眼の眼底部と,光干渉測定用光学ユニット10000の測定用光ファイバー5200の出射端面とが,共役な位置に配置されている。 【0056】また,参照ミラー2000と参照用光ファイバー5300とで形成された参照光路は,第1実施例の眼底カメラの光学系30000Aの光路長を考慮して定められる。 【0057】ここで,光干渉測定用光学ユニット10000の測定用光ファイバー5200は,前述した走査制御部6600により一次元或いは二次元的に移動走査される様になっている。この走査による眼底上で測定用光束は移動し,各測定点で干渉測定が行われ,この干渉測定により眼底部の一次元或いは二次元的な断面像を得ることができる。」 (1-オ)「【0066】「第3実施例の眼底カメラの光学系30000C」 【0067】第3実施例の眼底カメラの光学系30000Cの基本構成を図4に基づいて説明する。第1実施例の眼底カメラの光学系30000Cは,対物レンズ100と,孔あきミラー200’と,リレーレンズ300と,撮影光源500と,観察光源600と,合焦レンズ700と,結像レンズ800と,ダイクロイックミラー900と,撮像手段950とから構成されている。 【0068】ダイクロイックミラー900は,第1のダイクロイックミラー910と,第2のダイクロイックミラー920とからなり,第1のダイクロイックミラー910は,800nm近傍の近赤外光及び840nm近傍の赤外光を反射し,可視光を透過させる特性を有している。そして第2のダイクロイックミラー920は,840nm近傍の波長を反射し,800nm近傍の近赤外光を透過させるものである。 【0069】第1のダイクロイックミラー910を透過した可視光は,写真フィルム951上に結像する様になっている。更に第1のダイクロイックミラー910で反射された800nm近傍の波長の光は,第2のダイクロイックミラー920に入射される。第2のダイクロイックミラー920は,840nm近傍の波長を反射させ,光ファイバー921を介して,光干渉測定用光学ユニット10000の測定用光ファイバー5200に至る様に構成されている。 【0070】第2のダイクロイックミラー920を透過した800nm近傍の近赤外光は,赤外感度のCCDセンサー954上に結像される。 【0071】そしてCCDセンサー954で得られた眼底画像信号は,モニター装置952でモニターすることができる。 【0072】なお,ダイクロイックミラー900は,波長選択反射部材に該当するものである。 【0073】以上の様に構成された第3実施例の眼底カメラの光学系30000Cは,従来からの眼底カメラの光学系をそのまま利用することができるという効果がある。 【0074】なお,第2のダイクロイックミラー920に代えて,跳ね上げミラーを採用することもでき,この跳ね上げミラーは,観察光源600からの光を逃がし,撮影光源500の光を取り込む様に構成されている。 【0075】その他の第3実施例の構成,作用等は,上述の第1実施例及び第2実施例と同様であるから,説明を省略する。」 上記(1-イ)?(1-オ)の記載と図1?7を参照すると,上記引用刊行物1には, 「対物レンズ100と,孔あきミラー200’と,リレーレンズ300と,撮影光源500と,観察光源600と,合焦レンズ700と,結像レンズ800と,ダイクロイックミラー900と,撮像手段950とから構成されている眼底カメラの光学系30000Cを備え, 第1のダイクロイックミラー910で反射された800nm近傍の波長の光は,第2のダイクロイックミラー920に入射され,第2のダイクロイックミラー920を透過した800nm近傍の近赤外光は,赤外感度のCCDセンサー954上に結像され,そしてCCDセンサー954で得られた眼底画像信号は,モニター装置952でモニターすることができ, コヒーレンス長の短い20nm以下程度,例えば840nmの光源1000から光を導くための第1のファイバー5100と, 第1のファイバー5100からの光を参照用光ファイバー5300と測定用光ファイバー5200とに分岐するためのものであり,測定対象物20000から反射され測定用光ファイバー5200により導かれた光と,参照ミラー2000から反射され参照用光ファイバー5300に導かれた光とを合成して,検出用光ファイバー5400に導く機能も有している分波器3000とを備え, そして,測定用光ファイバー5200による測定反射光束と,参照用光ファイバー5300の参照反射光束とは合成して干渉され,受光器4000に導かれ, 第2のダイクロイックミラー920は,840nm近傍の波長を反射させ,光ファイバー921を介して,光干渉測定用光学ユニット10000の測定用光ファイバー5200に至る様に構成されており, 測定用光ファイバー5200は,走査制御部6600により一次元或いは二次元的に移動走査され,眼底上で測定用光束は移動し,各測定点で干渉測定が行われ, 測定対象眼内の測定対象部分の断面画像信号を形成し,眼底部の一次元或いは二次元的な断面像を得る眼底カメラ。」の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認める。 (2)本願出願前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である国際公開2005/040718号公報(以下「刊行物2」という。)には,「スペクトル干渉法及びスペクトル干渉装置」について,図面とともに次の事項が記載されている。(刊行物1のパテントファミリーである特表2007-508558号公報を翻訳文として用い,刊行物2の記載を省略している。) (2-ア)「【0003】 チャネルドスペクトル法は,センシング及び光ファイバセンシングの分野において用いられてきた。・・・スペクトル法の利点は,OPD情報がチャネルドスペクトル内のピーク及びトラフの周期性に変換されることであり,たとえば,組織の光コヒーレンストモグラフィ(OCT)において,物体を深さ方向に走査するために機械的な手段は不要である,ということである。さらに,そのような方法では,多重化されたセンサアレイ内のOPDを調べるのに機械的な手段は不要である。組織のような多層化された物体がイメージングされる場合には,各層は,その深さに応じて,その層自体のチャネルドスペクトル周期性を残すことになり,そのスペクトル変調の振幅はその層の反射率の平方根に比例する。電荷結合素子(CCD)信号のスペクトルの高速フーリエ変換(FFT)は,チャネルドスペクトルの周期性を,種々の周波数のピークに変換し,その周波数が経路不平衡に直に関連する。そのようなプロファイルはOCTにおけるAスキャンと呼ばれており,それは,すなわち深さ方向の反射率のプロファイルである。」 (2-イ)「【0059】 物体光学系は走査素子を備えることができ,走査素子は目標物体を走査するように構成される。走査素子は,直線走査,ラスタ走査,螺旋走査,円形走査又は任意の他のランダムな形状の走査のうちのいずれか1つ,又はそれらの組み合わせを実行するように構成することができる。 【0060】 走査素子を用いて,物体の内部から,ミラー項の無い断面画像を得ることができる。種々の横断位置において断面の取得を繰り返すことにより,物体内部からのいくつかの断面を取得することができ,その後,ソフトウエア手段によって,その断面を用いて,ミラー項の無い物体の3Dボリュームが再構成される。」 (2ーウ)「【0102】 図3は,本発明の第1の実施形態によるスペクトル干渉装置100を示す。装置100は,OPDを選択することができ,白色光干渉計に基づいて明確なAスキャンを生成することができる。2つのビーム,すなわち目標物体に向かって誘導される物体ビーム及び参照ビームを生成するために,異なる干渉計構成も考えられる。光が光源に戻されるのを避けるために,図3には,再循環参照ビーム構成が示される。」 (2-エ)「【0130】 走査用光学系12を介して,横断するように目標物体55にわたって物体ビーム41を走査するためにXYスキャナヘッド10が設けられる。合焦素子15が,検査されるべき目標物体55,たとえば組織上に光を合焦する。一般性を損なうことなく,物体55の目標エリアとして,図5には目の網膜が示されており,合焦素子15は眼レンズである。組織55が皮膚である場合には,合焦素子15を通過した後の光線が標準的には,深さ方向の軸と平行に現われるように,走査用光学系12が変更される。また合焦は,走査用光学系12内の光学素子を変更することによって,又はコリメータ素子2を動かすことによって,又はビームスプリッタ4とスキャナヘッド10との間に適当な光学素子を追加することによっても果たすことができることも理解されよう。別個に,又は一緒に用いられるそのような素子は,目の網膜又は皮膚のような多層物体55に適用することができる合焦手段の役割を果たす。その走査は,発生器34の制御下にある。横断面内の点(X,Y)毎に,図3の実施形態と同じ構成要素を用いて,その装置によってAスキャンが生成される。1つのスキャナが固定される場合,平面(X,Z)又は(Y,Z)内の組織の断面を得ることができる。ただし,Zの向きは深さ方向に沿っている。これは,超音波の用語に従って,OCT Bスキャン画像と呼ばれる。Bスキャンが他の座標軸,それぞれY又はXに沿って繰り返されるとき,組織の全体積を調査することができる。別法では,2つの座標は,光学軸に対して直交する横断面内の極にすることができる。さらに,スキャナは,横断面内で円形を描くようにして駆動することができ,その場合に,Bスキャン画像は,深さ方向の軸に沿って向けられる円柱の横方向のサイズに沿っていイる。」 (2-オ)図5には,光路合成分離手段よりも検出手段側に設けられた,信号光を主走査方向及びこれに直交する副走査方向に走査する手段が記載されている。 第4 対比・判断 本願発明と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「対物レンズ100と,孔あきミラー200’と,リレーレンズ300と,撮影光源500と,観察光源600」および「対物レンズ100と,孔あきミラー200’と合焦レンズ700と,結像レンズ800と,ダイクロイックミラー900と,撮像手段950」は,それぞれ本願発明の「照明光学系」および「撮影光学系」に相当することは明らかである。 イ 引用発明の「撮像手段950」は「第1のダイクロイックミラー910で反射された800nm近傍の波長の光は,第2のダイクロイックミラー920に入射され,第2のダイクロイックミラー920を透過した800nm近傍の近赤外光は,赤外感度のCCDセンサー954上に結像され,そしてCCDセンサー954で得られた眼底画像信号は,モニター装置952でモニターすることができ」るから,本願発明の「第1の画像形成手段」に相当する。 ウ 引用発明の「例えば840nmの光源1000」および「受光器4000」は,本願発明の「前記照明光とは異なる波長の光を出力する光源」および「第2の検出手段」に相当する。 エ 引用発明の「分波器3000」は「第1のファイバー5100からの光を参照用光ファイバー5300と測定用光ファイバー5200とに分岐するためのものであり,測定対象物20000から反射され測定用光ファイバー5200により導かれた光と,参照ミラー2000から反射され参照用光ファイバー5300に導かれた光とを合成して,検出用光ファイバー5400に導く機能も有し」ているのであるから,本願発明の「干渉光生成手段」に相当する。 オ 引用発明は「第2のダイクロイックミラー920を透過した800nm近傍の近赤外光は,赤外感度のCCDセンサー954上に結像され」,「第2のダイクロイックミラー920は,840nm近傍の波長を反射させ,光ファイバー921を介して,光干渉測定用光学ユニット10000の測定用光ファイバー5200に至る様に構成されている」のであるから,引用発明の「第2のダイクロイックミラー920」は,本願発明の「光路合成分離手段」に相当する。 カ (1-エ)に「被検眼の視線を定めるための固視標960からの光束は,第2のダイクロイックミラー920を透過し,第1のダイクロイックミラー910により反射され,被検眼に向け投影する様に構成されている。」と第1実施例で固視標960を表示する手段が記載され,(1-オ)には「その他の第3実施例の構成,作用等は,上述の第1実施例及び第2実施例と同様である」と記載され,引用発明も固視標を表示する手段を有しているといえる。 キ 本願明細書には「【0073】〔OCTユニットの構成〕 ・・・OCTユニット150は・・・光源から出力された光を参照光と信号光とに分割し,参照物体を経由した参照光と被測定物体(眼底Ef)を経由した信号光とを重畳して干渉光を生成する干渉計を具備するとともに,この干渉光の検出結果を解析して被測定物体(眼底Ef)の画像を形成するように構成されている。」と記載されており,引用発明も「第1のファイバー5100からの光を参照用光ファイバー5300と測定用光ファイバー5200とに分岐するためのものであり,測定対象物20000から反射され測定用光ファイバー5200により導かれた光と,参照ミラー2000から反射され参照用光ファイバー5300に導かれた光とを合成して,検出用光ファイバー5400に導く機能も有している分波器3000とを備え, そして,測定用光ファイバー5200による測定反射光束と,参照用光ファイバー5300の参照反射光束とは合成して干渉され,受光器4000に導かれ」,「測定対象眼内の測定対象部分の断面画像信号を形成」する構成を備えているので,引用発明と本願発明とは「OCTの手法」を用いている点で共通する。 そうすると, 引用発明の「測定用光ファイバー5200は,走査制御部6600により一次元或いは二次元的に移動走査され,眼底上で測定用光束は移動し,各測定点で干渉測定が行われ, 測定対象眼内の測定対象部分の断面画像信号を形成し,眼底部の一次元或いは二次元的な断面像を得る」と 本願発明の「フーリエドメインOCTの手法を用いて前記眼底の断層画像を形成する第2の画像形成手段と」を備え,「前記光路合成分離手段よりも前記第2の検出手段側に設けられ,前記固視標が投影された前記眼底上において前記信号光を主走査方向及びこれに直交する副走査方向に走査する一対のガルバノミラーを有し, 前記第1の画像形成手段による前記2次元画像の形成と同時に行われる前記主走査方向及び前記副走査方向の走査に基づいて複数の前記断層画像を形成し,該複数の断層画像に基づいて3次元画像を形成する,」とは 「OCTの手法を用いて前記眼底の断層画像を形成する第2の画像形成手段と前記固視標が投影された前記眼底上において前記信号光を主走査方向に走査する手段を備え, 前記第1の画像形成手段による前記2次元画像の形成と同時に行われる前記主走査方向の走査に基づいて前記断層画像を形成する」点で共通する。 そうすると,本願発明と引用発明とは, 「被検眼の眼底に照明光を照射する照明光学系と,前記眼底を経由した照明光を第1の検出手段により検出する撮影光学系とを有し,該第1の検出手段による検出結果に基づいて前記眼底の表面の2次元画像を形成する第1の画像形成手段と, 前記照明光とは異なる波長の光を出力する光源と,該光源から出力された前記光を前記眼底に向かう信号光と参照物体に向かう参照光とに分割し,前記眼底を経由した信号光と前記参照物体を経由した参照光とを重畳させて干渉光を生成する干渉光生成手段と,該生成された干渉光を検出する第2の検出手段とを有し,該第2の検出手段による検出結果に基づきOCTの手法を用いて前記眼底の断層画像を形成する第2の画像形成手段と, 前記撮影光学系により形成される撮影光路と前記眼底に向かう信号光の光路とを合成するとともに,前記撮影光路と前記眼底を経由した信号光の光路とを分離する光路合成分離手段と, 固視標を表示する手段を含み,該表示された固視標を前記眼底に投影する手段と, を備え, 前記撮影光路に前記合成された前記信号光は,前記撮影光路を介して前記眼底に照射され, 前記撮影光路から前記分離された前記信号光は,前記干渉光生成手段により前記参照光と前記重畳され, 前記第2の画像形成手段は, 前記固視標が投影された前記眼底上において前記信号光を主走査方向に走査する手段を備え, 前記第1の画像形成手段による前記2次元画像の形成と同時に行われる前記主走査方向の走査に基づいて前記断層画像を形成する眼底観察装置。」である点で一致し,次の点で相違している。 (相違点) OCTの手法について,本願発明では,フーリエドメインOCTの手法であり, 前記光路合成分離手段よりも前記第2の検出手段側に設けられ,前記信号光を主走査方向及びこれに直交する副走査方向に走査する一対のガルバノミラーを有し, 主走査方向及び前記副走査方向の走査に基づいて複数の前記断層画像を形成し,該複数の断層画像に基づいて3次元画像を形成する,のに対して, 引用発明は,タイムドメインOCTの手法であり, 前記固視標が投影された前記眼底上において前記信号光を一次元或いは二次元的に移動走査する手段を有し, 前記第1の画像形成手段による前記2次元画像の形成と同時に行われる前記一次元或いは二次元的な移動走査に基づいて前記断層画像を形成するが3次元画像は形成しない点。 (1)相違点についての検討 上記(2-ア)には「 チャネルドスペクトル法は,・・・そのようなプロファイルはOCTにおけるAスキャンと呼ばれており,それは,すなわち深さ方向の反射率のプロファイルである。」と記載され,(2-ウ)には「図3は,本発明の第1の実施形態によるスペクトル干渉装置100を示す。装置100は,OPDを選択することができ,白色光干渉計に基づいて明確なAスキャンを生成することができる。」と記載されている。 したがって,「フーリエドメインOCT」について引用文献2に記載されている。 また,(2-イ)には「種々の横断位置において断面の取得を繰り返すことにより,物体内部からのいくつかの断面を取得することができ,その後,ソフトウエア手段によって,その断面を用いて,ミラー項の無い物体の3Dボリュームが再構成される」と記載されている。 したがって,「主走査方向及び前記副走査方向の走査に基づいて複数の前記断層画像を形成し,該複数の断層画像に基づいて3次元画像を形成する」点も引用文献2に記載されている。 また,上記(2-エ)には「横断するように目標物体55にわたって物体ビーム41を走査するためにXYスキャナヘッド10が設けられる。・・・図5には目の網膜が示されており,・・・横断面内の点(X,Y)毎に,図3の実施形態と同じ構成要素を用いて,その装置によってAスキャンが生成される。」と記載され,また,(2-オ)には「図5には,光路合成分離手段よりも検出手段側に設けられた,信号光を主走査方向及びこれに直交する副走査方向に走査する手段」が記載されている。 したがって,「主走査方向及び前記副走査方向の走査を行うXYスキャナヘッド」も引用文献2に記載されている。 そして,XYスキャナヘッドとして一対のガルバノミラーを有する構成は,例えば,特開2005-300655号公報,特開2003-185927号公報に記載されているように常套手段である。 そして,タイムドメインOCTが技術の進展によって,フーリエドメインOCTに発展し,3次元画像の作成が可能になったのであるから,タイムドメインOCTをフーリエドメインOCTに置き換え,3次元画像の作成をすることは,当業者であれば十分動機づけがあり,何ら困難性がない。 してみると,引用発明に,上記引用刊行物2に記載の技術を適用し,XYスキャナヘッドとして一対のガルバノミラーを有する常套手段を採用し,相違点における本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到するものといえる。 そして,本願発明の作用効果は,引用刊行物1,2に記載の技術,および常套手段から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎない。 したがって,本願発明は,引用発明,引用刊行物2に記載の技術,および常套手段に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである。 第5 むすび 以上のとおり,本願発明は,引用発明,引用刊行物2に記載の技術,および常套手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,本願は拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-11-14 |
結審通知日 | 2013-11-19 |
審決日 | 2013-12-10 |
出願番号 | 特願2006-3065(P2006-3065) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 島田 保 |
特許庁審判長 |
岡田 孝博 |
特許庁審判官 |
信田 昌男 藤田 年彦 |
発明の名称 | 眼底観察装置 |
代理人 | 特許業務法人三澤特許事務所 |