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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A44C
管理番号 1294557
審判番号 不服2002-25302  
総通号数 181 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-12-18 
確定日 2005-12-05 
事件の表示 平成11年特許願第161454号「貴金属製装飾用部品の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年11月14日出願公開、特開2000-312608号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年4月30日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成13年11月26日付けの手続補正書で補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。(以下、「本願発明」という。)
「貴金属製の中空殻体内に非耐火物を内蔵して構成した貴金属製のアクセサリーパーツと他の貴金属製のパーツとの接合部にレーザーを照射して溶接するようにしたことを特徴とする貴金属製装飾用部品の製造方法。」
2.引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された、特開平9-173116号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(a)「同一の形態と寸法を有する複数の第1部品と、該第一部品とは形態と寸法の異なる同一の形態と寸法を有していてその長手方向中心軸の周りに90°回動したときの両端部の形状が同一になるように成形された複数の第2部品とを交互に配列して前記第1部品を介して前記第2部品を自由接手式に連結すると共に、一個所のみ前記第1部品を取り除いて前記第2部品同志を隣接させ、この隣接した一対の第2部品の一方にピンを設け他方に該ピンが離脱可能に嵌合する孔を有する一対の係止片を枢着し、該係止片に、該係止片を前記ピンに前記孔が嵌合する方向に弾圧するバネを設けて成る装身具用チェーン。」(特許請求の範囲、【請求項1】)
(b)「図1は本実施例による装身具用チェーンの連鎖状態を示す斜視図、図2は第1部品を介して第2部品が連結される構造を示す分解斜視図、図3はチェーンの両端部を分離可能に連結する係止装置の斜視図である。図中、1は同一直径の球体である複数の第1部品、2は第1部品を介して自由接手式に連結された第2部品であって、これらは適宜の金属や貴金属メッキされたプラスチック材料等で構成されている。図2に示された通り、第1部品としての球体1には、球心で直交するように直径方向に明けられた一対の貫通孔1a,1bが設けられている。第2部品2は、内径が球体1の直径と略等しい円筒体から切り出された如き形態をなしていて、両端部2A,2A′;2B,2B′の形状がその長手方向中心軸(上記円筒体の中心軸)Oの周りに90°回動せしめられたとき同一になるように成形されている。
第2部品2の両端部2A,2A′;2B,2B′には、各々透孔2a,2a′;2b,2b′が穿設されていて、枢軸ピン3aを上方より透孔2aと第1部品1の貫通孔1bに共通に挿入してその外端を第2部品の端部2Aの外表面位置で切断した後レーザ光によるスポット溶接等の方法で端部2Aに固着し、同様に枢軸ピン3bを下方より透孔2a′と貫通孔1bに共通に挿入してその外方端を端部2A′に上記と同様の方法で固着することにより、第1部品1に図3において左側にある第2部品2が連結される。この場合、枢軸ピン3a,3bは貫通孔1b内で回転できるように太さが選定されており、各内端は貫通孔1aの近傍に達している。次に、枢軸ピン4を上方より透孔2bと第1部品1の貫通孔1aとに挿通してその上端を第2部品の端部2Bの外表面にレーザ光によるスポット溶接等の方法で固着し、また下端を第2部品の端部2B′の外表面位置で切断した後上記と同様の方法で固着することにより、第1部品1に図3において右側にある第2部品2が連結される。この場合、枢軸ピン4は貫通孔1a内で回転できるように太さが選定されている。」(段落番号【0007】、【0008】)
これらの記載事項を総合すると、刊行物1には、
「適宜の金属や貴金属メッキされたプラスチック材料で構成される第1部品および第2部品と、枢軸ピンとからなる装身具用チェーンの製造方法であって、第1の部品には一対の貫通孔が設けられており、第2の部品の両端部の形状が長手方向中心軸の周りに90°回動せしめられたとき同一になるように成形され、第2部品の両端部には各々透孔が穿設されていて、枢軸ピンを第1部品の貫通孔と第2部品の透孔に共通に挿入してその外端を第2部品の端部の外表面位置で切断した後レーザ光によるスポット溶接等の方法で端部に固着する装身具チェーンの製造方法。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
また、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された、登録実用新案第3041836号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
「図1において、符号1で示されるものはハート型をなす第1装飾部であり、この第1装飾部1の側部に形成された各孔2の内側には、ゴム、シリコン等の摩擦を有する弾性体からなる管体で構成された摩擦体3が設けられている。この摩擦体3内には例えば鎖等の細長状の第1細長部材4がこの摩擦体に接した状態で貫通し、かつ、各孔2を貫通して設けられている。
前記第1細長部材4の一端4aには受け輪5が設けられ、この第1細長部材4の他端4bには第2装飾部1Aが接続されている。前記第1装飾部1に接続された第2細長部材6の一端6aにはフック7が設けられ、このフック7を受け輪5に接続することにより首に吊下げられる構成である。なお、この第1装飾部1は、前述のように周知の1対のカップ型を合わせて形成した場合には前記各孔2を形成して内部に前記摩擦体3を設け、互いにレーザー等で接合して一体化しているが、第1装飾部1がムクの場合には、前記孔2の代わりに貫通孔(図示せず)を形成し、この貫通孔を介して第1装飾部1内に摩擦体3を設ける場合がある。従って、図1の状態で、第1装飾部1を矢印Aの方向に任意に移動させた場合でも、この第1装飾部1は摩擦体3の作用により細長部材4上の任意の位置で位置決めできる。」(段落番号【0005】、【0006】)
3.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、後者における「第2部品」は装身具チェーンに用いられるのであるから前者の「アクセサリーパーツ」に相当し、後者における「第2部品」は適宜の金属や貴金属メッキされたプラスチック材料で構成されるものであるから、貴金属メッキされたプラスチック材料で構成された場合には非耐火物であるプラスチック材料を貴金属メッキ内に内蔵しているといえ、貴金属でメッキしているのであるから貴金属製といえる。そうすると後者における「貴金属メッキされたプラスチック材料で構成される」「第2部品」と前者における「貴金属製の中空殻体内に非耐火物を内蔵して構成した貴金属製のアクセサリーパーツ」とは、非耐火物を内蔵して構成した貴金属製のアクセサリーパーツという概念で共通しているといえる。また、後者における「枢軸ピン」は「第2部品」以外の他のパーツであるから、後者における「枢軸ピン」と前者における「他の貴金属製のパーツ」とは、他のパーツという概念で共通しているといえる。また、後者における「レーザ光によるスポット溶接等の方法で端部に固着する」が、その作用・機能からみて前者における「接合部にレーザーを照射して溶接する」に相当し、同様に後者における「装身具チェーン」は前者における「装飾用部品」に相当する。また、少なくとも第2部品が貴金属メッキされたプラスチック材料で構成された場合には後者における「装身具チェーン」は前者における「貴金属製装飾用部品」に相当するといえる。
したがって、両者は、
「非耐火物を内蔵して構成した貴金属製のアクセサリーパーツと他のパーツとの接合部にレーザーを照射して溶接するようにした貴金属製装飾用部品の製造方法。」の点で一致し、以下の点で一応相違している。
相違点1:非耐火物を内蔵して構成した貴金属製のアクセサリーパーツが、前者では貴金属製の中空殻体内に非耐火物を内蔵して構成されたものであるのに対し、後者では非耐火物であるプラスチック材料に貴金属メッキしたものである点。
相違点2:他のパーツが、前者では、貴金属製であるのに対し、後者では、貴金属製であるか否かが明確でない点。
4.当審の判断
そこで上記相違点について検討する。
まず、相違点1について検討する。
刊行物2には、アクセリーパーツとしてレーザー溶接可能な素材からなる中空殻体内にゴム、シリコン等の非耐火物を内蔵して構成したものが記載(第1装飾部1参照)されており、装飾体に用いるレーザー溶接可能な素材として貴金属を用いる程度のことは単なる設計的事項にすぎないから、引用発明のアクセサリーパーツに代えてこのようなアクセサリーパーツを採用し相違点1の構成とすることは当業者であれば容易に想到し得ることである。
次に、相違点2について検討する。
引用発明の枢軸ピンは、装身具チェーンに用いられるものであるから、必要に応じて貴金属を用いる程度のことは単なる設計的事項にすぎない。
また、本願発明の効果も刊行物1、2の記載から予測される程度のものにすぎない。
なお、請求人は、請求の理由において期間外提出のため不受理となった平成15年5月22日付け手続補正書の請求項1に記載されている「パーツの接合部にレーザーを照射して溶接するに際し、接合部分に接合物と同質の材料を必要量付加して同時に溶接するようにしたこと」が各引用文献には開示されていないから各引用文献に基づいて当業者が容易に発明をなし得たものではない旨主張している。しかし、仮に上記手続補正書が期間内に提出されて受理されていたとしても、中空殻体と他のパーツの接合部分の材料が不足して充分な強度が得られないような場合に不足分を補う程度のことは当業者であれば必要に応じて適宜なし得ることであるから、請求人の主張は採用することができない。
5.むすび
したがって、本願発明は、刊行物1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-08-22 
結審通知日 2005-09-13 
審決日 2005-09-27 
出願番号 特願平11-161454
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A44C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 種子 浩明内山 隆史  
特許庁審判長 大元 修二
特許庁審判官 一色 貞好
北川 清伸
発明の名称 貴金属製装飾用部品の製造方法  
復代理人 松崎 一雄  

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