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審決分類 審判 全部無効 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降)  G01M
審判 全部無効 特123条1項5号  G01M
審判 全部無効 2項進歩性  G01M
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G01M
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  G01M
管理番号 1295141
審判番号 無効2011-800231  
総通号数 182 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-02-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-11-10 
確定日 2014-11-14 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4490481号「内燃機関のテストベンチ」の特許無効審判事件についてされた平成24年 9月10日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において「請求項1ないし3、6、7に係る発明についての特許を無効とする。」との部分に対し、当該審決の部分を取り消す旨の判決(平成24年(行ケ)第10358号、平成25年12月 5日)があり、当該判決は確定したので、審決が取り消された部分の請求項1ないし3、6、7に係る発明についてさらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯

1 出願手続経緯
本件特許第4490481号に係る出願は,平成17年5月24日(パリ条約による優先権主張 2004年5月24日 (AT)オーストリア)を国際出願日として特許出願されたものであり,本件出願の手続の経緯の概要は,以下のとおりである。

平成17年5月24日 本件特許出願(特願2007-513591号)
平成22年4月9日 特許権の設定登録

2 審判手続経緯
これに対して,請求人より平成23年11月10日に本件無効審判の請求がなされたものであり,本件無効審判における手続の経緯の概要は,以下のとおりである。

平成23年11月10日 無効審判請求(甲第1?6,6の1,6の2,
7,8号証,および,甲第1?3,6,6の1号
証の抄訳)の提出
平成24年 4月 3日 訂正請求の提出
4月 3日 審判事件答弁書(乙第1号証)の提出
5月11日 審判事件弁駁書の提出
6月11日 審理事項通知
7月17日 口頭審理陳述要領書(被請求人)の提出
7月19日 口頭審理陳述要領書(請求人,甲第9?19号証
)の提出
7月30日 上申書(請求人,甲第13号証の抄訳,甲第20
号証)の提出
7月30日 上申書(被請求人)の提出
7月30日 第1回口頭審理
7月30日 審理終結
9月10日 審決
10月17日 知財高裁出訴(請求人)
10月26日 知財高裁出訴(被請求人)
平成25年12月 5日 知財高裁判決

なお,審判請求書16頁下から2行の「1月19日」は「1月29日」の誤記である(第1回口頭審理において確認)。

第2 訂正請求について

1 本件訂正請求の内容

平成24年4月3日付け訂正請求書による訂正(以下「本件訂正請求」という)の内容は,本件特許明細書を,訂正請求書に添付した全文訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであり,以下(1)?(5)のとおりである(下線部は訂正箇所である)。

なお,上記全文訂正明細書の段落【0006】および【0013】における「永久磁石により作動する機械」は,「永久磁石により動作する機械」の誤記である(第1回口頭審理調書の被請求人の2)。

(1)訂正事項1
訂正事項1は,本件特許の請求項2において,
「永久磁石機械」を「永久磁石により動作する機械」と訂正するものである。

(2)訂正事項2
訂正事項2は,本件特許の請求項3において,「又は平行に並んで」を削除するものである。

(3)訂正事項3
訂正事項3は,本件特許明細書の段落【0006】において,
「永久磁石機械」を「永久磁石により動作する機械」と訂正するものである。

(4)訂正事項4
訂正事項4は,本件特許明細書の段落【0007】において,「又は平行に並んで」を削除するものである。

(5)訂正事項5
訂正事項5は,本件特許明細書の段落【0013】において,
「永久磁石機械」を「永久磁石により動作する機械」と訂正するものである。

2 当審の本件訂正請求についての判断

(1)訂正事項1について
訂正事項1は,訂正前の「永久磁石機械」を,「永久磁石により動作する機械」とする訂正である。ここで,訂正前の請求項2には「永久磁石機械が,前記駆動機械若しくは負荷機械(4)として据え付けられている」とあることから,訂正前の「永久磁石機械」が,「駆動機械若しくは負荷機械」の機能を有するものであることは明らかである。そして,「駆動機械若しくは負荷機械」の機能を有する「永久磁石機械」が,「永久磁石により動作する機械」であることは技術常識である。
してみると,訂正前の「永久磁石機械」を,「永久磁石により動作する機械」とする訂正は,実質的に特許請求の範囲の内容を変更するものではなく,請求項に記載された構成を明確にするためのものといえるから,明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当し,また,新規事項を追加するものではなく,実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものでもない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は,訂正前の「2台又は複数台の駆動機械若しくは負荷機械(4)が,直列に前後して又は平行に並んで懸架されて」なる記載において,「又は平行に並んで」を削除し,「2台又は複数台の駆動機械若しくは負荷機械(4)が,直列に前後して懸架されて」と訂正するものである。
ここで,請求項3が引用する請求項1には,「駆動機械若しくは負荷機械(4)は,…支持構造体(6)に懸架されて前記試験するべき内燃機関(2)の出力軸(7)と一列に並ぶ駆動軸(8)と共に据え付けられている…」とある。そして,「2台又は複数台の駆動機械若しくは負荷機械(4)」を,「平行に並んで」懸架し,かつ,その「駆動軸(8)」を「内燃機関(2)の出力軸(7)と一列に並ぶ」ように据え付けることが不可能であることは自明である。
したがって,請求項3が引用する請求項1における「駆動機械若しくは負荷機械(4)は,…支持構造体(6)に懸架されて前記試験するべき内燃機関(2)の出力軸(7)と一列に並ぶ駆動軸(8)と共に据え付けられている…」なる記載と矛盾する「又は平行に並んで」を削除する訂正は,実質的に特許請求の範囲の内容を変更するものではなく,請求項に記載された構成を明確にするためのものといえるから,明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当し,また,新規事項を追加するものではなく,実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものでもない。

(3)訂正事項3,5について
訂正事項3,5は,上記訂正事項1の訂正に伴い,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合をとるためのものであって,明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。

(4)訂正事項4について
訂正事項4は,上記訂正事項2の訂正に伴い,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合をとるためのものであって,明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。

(5)まとめ
以上のとおりであるから,本件訂正請求は,平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下,「特許法」という。)第134条の2第1項ただし書き第3号に掲げる事項を目的とし,かつ同条第5項において準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合する。
したがって,本件訂正を認める。

第3 本件発明

以上のように,本件訂正請求が認められることから,本件特許の請求項1?7に係る発明は,上記訂正請求により訂正された特許明細書の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下「本件発明1」?「本件発明7」という)。

「【請求項1】
一方では試験するべき内燃機関(2)と他方では前記内燃機関の出力側に対して少なくとも1つの回動連結している駆動機械若しくは負荷機械(4)とが配置されている基台(1)を有する内燃機関のテストベンチにおいて,
前記駆動機械若しくは負荷機械(4)は,前記基台(1)に対して垂直方向に間隔(5)をあけて前記基台(1)上に配置された支持構造体(6)に懸架されて前記試験するべき内燃機関(2)の出力軸(7)と一列に並ぶ駆動軸(8)と共に据え付けられていることによって,前記駆動機械若しくは負荷機械(4)の下方に前記基台(1)にかけて残されている空間が,排気装置(10)を敷設するために開放されて確保されていることを特徴とするテストベンチ。

【請求項2】
小出力に仕様されている永久磁石により動作する機械が,前記駆動機械若しくは負荷機械(4)として据え付けられていることを特徴とする請求項1に記載のテストベンチ。

【請求項3】
2台又は複数台の駆動機械若しくは負荷機械(4)が,直列に前後して懸架されて且つ回動連結して据え付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のテストベンチ。

【請求項4】
前記支持構造体(6)は,前記基台(1)の基板をブリッジ状に把持し且つこの基板の両側でこの基板上に支持され且つ固定されていることを特徴とする請求項1?3のいずれか1項に記載のテストベンチ。

【請求項5】
前記支持構造体(6)は,前記基台(1)の基板の片側上だけで支持され且つ固定されていることを特徴とする請求項1?3のいずれか1項に記載のテストベンチ。

【請求項6】
前記支持構造体(6)は,前記駆動機械若しくは負荷機械(4)を上方から若しくは側方から懸架して担持することを特徴とする請求項1?3のいずれか1項に記載のテストベンチ。

【請求項7】
前記駆動機械若しくは負荷機械(4)は,振動減衰装置(11)を中間接続して前記支持構造体(6)に懸架されていることを特徴とする請求項1?6のいずれか1項に記載のテストベンチ。」

第4 当事者の主張

1 請求人の主張

審判請求書,審判事件弁駁書,口頭審理陳述要領書および上申書によれば,請求人は,本件発明1?7は,特許法36条6項1号又は2号の規定によって特許を受けることができないものであって,本件発明に付与された本件特許は同法123条1項4号の規定により,無効とすべきものである(無効理由1)と主張して下記甲第9および10号証を提出し,また,本件発明1は,同法184条の18で読み替える同法123条1項5号に該当して無効にすべきものである(無効理由2)と主張するとともに,本件発明1?7は,同法29条1項3号または同法29条2項の規定によって特許を受けることができないものであって,本件特許は同法123条1項2号の規定により無効とすべきものである(無効理由3)と主張して下記甲第1?8,11?20号証を提出している。

なお,甲第5号証,甲第6号証,甲第6号証の1,甲第6号証の2についての主張は,第1回口頭審理において取り下げられた(第1回口頭審理調書の請求人の3)。

甲第1号証:米国特許第4899595号公報およびその翻訳文
甲第2号証:独国特許公開公報第4019581号およびその翻訳文
甲第3号証:独国特許公開公報第3135679号およびその翻訳文
甲第4号証:特開平8-15094号公報
甲第5号証:排気システム耐久装置の納入事実を示す説明書,平成23年5月17日,カルソニックカンセイ株式会社 グローバルテクノロジー本部 実験研究センター 実験技術グループ 大内健
甲第6号証:intouch,The customer magazine of Schenck DTS,p.1-12,May 2005
甲第6号証の1:オリジナルの排ガスシステムが取り付けられた内燃機関の性能試験をするためのテストスタンドであるMFPST23についての宣誓書およびその翻訳文,Peter.Tremel,29 September 2011
甲第6号証の2:MDL19の図面,HORIBA Europe,Thomas Steff,2003年7月15日
甲第7号証:特開2002-5791号公報
甲第8号証:実願昭53-45609号(実開昭54-149060号)のマイクロフィルム
甲第9号証:特開2005-205245号公報
甲第10号証:特開2005-326273号公報
甲第11号証:特開2003-106945号公報
甲第12号証:実願平3-61782号(実開平4-126139号)のマイクロフィルム
甲第13号証:"The Ford Motor Company Transmission NVH Test Cell",SAE TECHNICALPAPERS2003年5月5日発行
甲第14号証:特開平9-21726号公報
甲第15号証:特開2003-329547号公報
甲第16号証:特開2003-337092号公報
甲第17号証:フライホイールが駆動機械又は負荷機械であることを立証する陳述書,平成24年7月10日,株式会社堀場製作所 自動車計測システム設計部 MCT製品技術担当 マネジャー 富永滋
甲第18号証:特開平1-233339号公報
甲第19号証:特開昭63-266335号公報
甲第20号証:フライホイールが駆動機械又は負荷機械であることを立証する意見書,平成24年7月24日,京都大学大学院 工学研究科 機械理工学専攻 教授 西脇眞二

2 被請求人の主張

これに対して,被請求人は,審判事件答弁書,口頭審理陳述要領書および上申書において,上記無効理由は理由がないと主張して乙第1号証を提出している。

乙第1号証:小学館 独和大辞典 第2版 コンパクト版 2000年1月1日 コンパクト版2版1刷発行 p.(12),1031,1562

第5 各証拠およびその内容

以下,甲第1?4,7?20号証,乙1号証を,それぞれ,甲1?4,7?20,乙1とする。

これら書証のうち日本語ではない原語で記載されたものについては,その翻訳について当事者に争いがないので,原文は省略し,その代替として翻訳文を摘記する。

1 甲1について

本件特許の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲1には,「拡張された試験レンジを有するモジュラ一式動力計」に関して,次の事項が記載されている。なお,下線は当審により付記したものである。

(甲1-ア)1欄3?13行
「背景技術
本願発明は,一般に原動機の出力を測定する装置に関し,特に広範囲にわたる原動機出力を測定することが可能なモジュラ一式動力計である。
動力計は,原動機の出力を測定する装置である。その測定は,回転軸の同転速度,トルク,またはその他の原動機出力の形式の観点から行われる。対象となる原動機は,電気モーター,ガソリンまたはディーゼルエンジン,ガスタービン等の事実上あらゆる動力発生装置の形式を取る。」

(甲1-イ)2欄32?35行
「発明の概要
すなわち,本発明の目的は,出力を広範囲の値にわたって測定可能な原動機出力測定装置を提供することにある。」

(甲1-ウ)4欄15?32行
「発明を実施するための最良の実施形態
図1,1A,1Bには,破線で示される従来のエンジン22で表現される原動機に連結された本発明のモジュラ一式動力計20の斜視図および平面図が示される。モジュラ一式動力計20は,回転軸24によりエンジン22に連結される。原動機はこの図においてエンジン22として示されるが,本発明のモジュラ一式動力計20は,事実上,その出力が回転によって伝達されるあらゆる動力発生装置に使用される。軸24は,動的に均衡が取られ,安全シールドとして機能するシャフトカプラー筺体28内に収容されることが好ましい。
モジュラ一式動力計20は,支持パッド149に搭載され,閉鎖筺体32に連結され,それを安定的に支持する複数の支持脚,足結合体30を有する支持フレーム26を備える。閉鎖筺体32内に配置され,取り付けボルト(簡単のため図示しない)等の従来の手段によって主軸108が回転入力軸24に連結される。」

(甲1-エ)5欄51行?6欄1行
「隣接する支持脚,足結合体30の各対は,横材31によって連結される。各横材31は,閉鎖筺体内に配置され,それから延在する主軸108上に,各ベアリングクレードル27によって連結される。各ベアリングクレードル27は,主軸108を各横材31内で自由に回転させることを可能にする。」

(甲1-オ)
図1には,エンジン22が,これを支持する台上に配置されていることが記載されている。

(甲1-カ)
図1には,横材31が,モジュラー式動力計20が配置された閉鎖筺体32の側面に配置され,閉鎖筺体32は,その下方に空間を残して支持されていることが記載されている。

上記摘記事項(甲1-ア)?(甲1-カ)を総合すると,甲1には,以下の発明が記載されていると認められる。

「エンジン22が支持された台と,
主軸108を有するモジュラ一式動力計20と,
その内部に前記モジュラー式動力計20が配置される閉鎖筺体32と,
前記閉鎖筺体32を安定的に支持する複数の支持脚,足結合体30を有する支持フレーム26と,
前記複数の支持脚,足結合体30の各対を連結する横材31と,
前記支持フレーム26を搭載する支持パッド149とを備え,
前記主軸108は,回転軸24によりエンジン22に連結されており,
前記各横材31は,前記主軸108上に,各ベアリングクレードル27によって連結されている,
原動機出力測定装置。」(以下「甲1発明」という)

2 甲2について

本件特許の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲2には,「エンジン試験台」に関して,次の事項が記載されている。なお,下線は当審により付記したものである。

(甲2-ア)1頁下から8行?2頁20行
「(54)エンジン試験台
(57) 従来,排気ガス装置を特殊成形分岐管を介してエンジンに取り付ける方式のエンジン試験台が知られている。また,従来の試験台は,通常,供試体の事前取り付けができない。さらに,従来の試験台は,排気ガス装置が実車と異なる状態でエンジンに取り付けられるため,測定結果の正確さが損なわれることがあるという欠点を持つ。本発明による新しい試験台はこれらの欠点を解消することを課題とする。
本課題は,フランジ付きパワーブレーキ(B)をエンジン(M)のクランクシャフトに直接取り付け,かつ排気ガス装置(A)を実車と同じ状態でエンジン(M)に取り付けるように設計された試験台によって解決される。

説明
本発明は請求項1の上位概念に基づくエンジン試験台,特に排気サイレンサーの騒音測定を目的とする騒音測定試験台に関する。
従来,室内の適切な基礎の上に置かれたエンジンと構造的に分離されているパワーブレーキとを連結する方式の,排気サイレンサーの騒音測定用試験台が知られている。そこでは,排気サイレンサーを取り付けるための特殊成形分岐管が,エンジンまたはパワーブレーキの縦軸が排気サイレンサーの長手方向と直角になるようにエンジンに収り付けられている。排気サイレンサーは遮音施工された騒音測定室内に置かれ,分岐管がエンジン室と騒音測定室間の壁の貫通孔を貫通している。このような試験台ではエンジンおよび排気ガス装置の取り付けに時問がかかるという欠点がある。また,試験台の構造が実車の構造と異なるため,排気ガス装置の振動または騒音挙動に誤りが生じる。さらに,V型エンジン用の排気ガス装置は基本的に取り付けることができない。
本発明は,従来技術のこのような欠点を解消したエンジン用試験台を提供することを課題とする。
上記課題は,本発明の請求項1に記載した構成要素の諸特徴により解決される。フランジブレーキとして設計されたパワーブレーキをエンジンのクランクケースに直接取り付けることにより,排気ガス奘置を実車と同じ配置でエンジンに取り付け,試験台で試験することが可能になる。ブレーキ部品の配置を工夫することにより,パワーブレーキのスリム化が実現される。」

(甲2-イ)3頁18行?4頁6行
「 図2に示した試験台の構造は,それとは異なり,エンジンMの縦岫Lと排気ガス装置Aの長手方向が一致し,エンジンMと排気ガス装置Aの配置が実車の配置と同じになるように設計されている。エンジンMは走行可能な架台UのパレットベースフレームPに取り付けられる。フランジ仕様のパワーブレーキBは壁の貫通孔Wに面したエンジンMの前面に取り付けられる。壁の貫通孔Wは遮音層Iによってエンジン室R1内の騒音から遮断されている。測定室R2には図1に示すように遮音層Sが設けられている。図示されていないが,排気ガス装置Aの周りには供試体領域にマイクおよびその他の計測器が配置されている。
図3.1は,特に騒音測定試験台の送出しおよび取付位置Iならびに動作位置IIを示す部分断面図である。エンジンMは両側に配置された2簡所の支持脚S1およびS2によって走行可能な架台Uに収り付けられる。走行可能な架台UはエンジンMを支持するパレット支持フレーム26とその下に位置し,支持部材S3およびS4を介してフランジブレーキBを支持するパレットベースフレームPから構成される。パレットペースフレームPは軌道上を走行できるようになっており,適切な駆動装置を用いてパレットベースフレームPを移動することができる。動作位置IIにおいては,エンジン作動時に発生する振動は適切に支持された基礎によって吸収される。エンジンMおよびエンジンに取り付けられた排気ガス装置Aを含むフランジブレーキBが動作位置IIに移動すると,フランジブレーキは隔壁Tの貫通孔W内に位置する。貫通孔Wには遮音層Iが設けられており,測定室R2はエンジン室R1からの騒音影響からほぽ完全に遮断される。さらに,フランジブレーキBにも遮音のために遮音キャップGが装備されている。
図3.2は架台Uに取り付けられたパワーブレーキBの前面を示す。また,同図にはエンジンMの2本の支持脚S1およびS2ならびにパワーブレーキBの支持部材S3およびS4も示されている。また,パワーブレーキBのロードセルKおよび振り子PKも図示されている。さらに,前方から見て左側のガイドレールに,走行可能な架台Uの駆動装置M1が図示されている。」

(甲2-ウ)4頁18?36行
「 図5.1はフランジブレーキBの詳細を示す。ブレーキ振り子PKが共用支持プレート1上で回転可能な形で支持されている。ブレーキ振り子PKはエンジンMのクランクシャフト(図示されていない)と連結されているシャフト3を有する。共用支持プレート1のエンジン側の面には,クランクケースとの剛接合に必要なトランスミッション連結キャップ5が取り付けられている。
クランクシャフトに取り付けられている,クラッチ6付きのフライホイール7はトランスミッション連結キャップ5内に配置され,クラッチ歯車8を介しパワーブレーキのシャフト3と連結されている。ブレーキ振り子PKの反対側の面も同様に後部支持プレート9上で溝付きボールベアリング10によって支持されている。シャフト3の端部には歯付きワッシャー12が取り付けられており,それを介しパルスセンサ11が正確な回転数の測定および計算を行う。例えば,1回転は60パルスに相当する。
エンジン回転数は,片側が連結部13を介し,共用支持プレート1および後部支持プレート9に取り付けられたホルダ14を介してフランジブレーキBに取り付けられているロードセルKによって測定される。ロードセルKの反対側は別の連結部15を介してブレーキ振り子PKの外面に取り付けられている。高置水槽を出た水は配管16および流量制御器17を経由し,パワーブレーキBに達する。流量制御器17は高圧ホース21を介し,ブレーキ内圧に応じて制御を行う。水はパワーブレーキBから配管18を通り,流出する。配管18にはアクチュエータ20によって制御されるスロットルバルブ19が設けられている。高圧ホース21は流量制御器17とつながっている。」

(甲2-エ)5頁14?16行
「また,図6.2はパレットベ-スフレームPに取り付けられている,それぞれバイブレーションダンパを備えたパワーブレーキBの支持部材S3およびS4を示す。」

(甲2-オ)
図3.1および図3.2には,フランジブレーキBのブレーキ振り子PKを支持している共用支持プレート1が,支持部材S3およびS4を介してパレットベースフレームPに取り付けられていることが記載されている。

(甲2-カ)
図2および図3.1には,排気ガス装置Aが,エンジンMの側方から,フランジブレーキBの側方を通って,測定室R2に伸びていることが記載されている。

上記摘記事項(甲2-ア)?(甲2-カ)を総合すると,甲2には,以下の発明が記載されていると認められる。

「エンジンMのクランクシャフトにフランジブレーキとして設計されたパワーブレーキBのシャフト3が直接取り付けられ,排気ガス装置Aが実車と同じ状態でエンジンMに取り付けられたエンジン試験台において,
パレット支持フレーム26と,その下に位置するパレットベースフレームPから構成された走行可能な架台Uを備え,
エンジンMは,その両側に配置された2簡所の支持脚S1およびS2によってパレット支持フレーム26に収り付けられており,
フランジブレーキBは,支持部材S3およびS4を介してパレットベースフレームPに取り付けられた共用支持プレート1によって支持されており,
排気ガス装置Aは,エンジンMの側方から,フランジブレーキBの側方を通って,測定室R2に伸びている,
エンジン試験台。」(以下「甲2発明」という)

3 甲3について

本件特許の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲3には,「内燃機関を検査するための性能検査装置」に関して,次の事項が記載されている。なお,下線は当審により付記したものである。

(甲3-ア)2頁5?13行
「特許請求の範囲
1.検査すべき内燃機関に連結できる常用ブレーキを備えた内燃機関を検査するための性能検査装置であって,
常用ブレーキ(1)がフランジブレーキとして構成されており,また締結装置(7)によりハウジング側およびシャフト/ロータ側において内燃機関(2)に連結できること,
さらに常用ブレーキ(1)および検査すべき内燃機関(2)のいずれもそれぞれ少なくともほぼ自由揺動的に懸架支持されている,
ことを特徴とする性能検査装置。」

(甲3-イ)5頁12行?6頁4行
「本発明に基づく性能検査装置は,図示されていない通常の供給,測定および制御装置に加えて,基本的にフランジブレーキとして構成されている常用プレーキ1および検査すべき内燃機関2を常用ブレーキ1と連結できる締結装置7からなる。

締結装置7を備えた常用ブレーキ1は懸架ロッド13を介して移動できる,すなわち,番号が付けられていない建物天井または対応する支持台に自由揺動的に懸架されている。検査すべき内燃機関2も,自由揺動的に懸架されている。該エンジンは,その長さが変えられるフランジホイスト9,例えば電気式チェーンホイストの吊りフック10に懸架される。走行クレーン11と係合するチェーンホイスト9は,2つの機能を果たす。それは,一方では検査すべきエンジンを例えば検査装置付近を通過するチェーンコンベヤ12により性能検査装置まで運搬し,他方では本来の性能検査中に検査すべき内燃機関2を懸架する。図1では,実線で描かれた内燃機関2が正に性能検査されており,また点線で描かれた第2の内燃機関2’がチェーンコンベヤ12により運搬されている。

常用ブレーキ1として,基本的にあらゆるフランジブレーキ,例えば水-渦流式ブレーキ,渦流式ブレーキあるいは機械式ブレーキも使用できる。
常用ブレーキ1および内燃機関2の総合配置のコンパクトな構造ならびにそれらの懸架配置により,性能検査装置に対する所要の構造空間は極めて僅少となる。一方でエンジンシャフトとブレーキシャフトとの直接的連結,また他方でエンジンハウジングとブレーキハウジングとの直接的連結により,それ自体支持的つまり自立的システムが構築されるため,エンジントルクを支持するために基礎上あるいは建物床に対する付加的な支持措置は不要である。懸架ロッド13を介して伝導されるそれ自体既に極めて僅少な振動をさらに低減するために,懸架ロッド13は番号が付けられていない横桁および常用ブレーキ1のいずれにおいても,それぞれ振動を吸収するゴム金属軸受14を介して連結されている。」

(甲3-ウ)
図1には,懸架ロッド13が,番号が付されていない枠状の支持構造体の上部から吊り下げられていること,フランジホイスト9が,同図の上部であって前記番号が付されていない枠状の支持構造体の上部に存在する走行クレーン11から吊り下げられていることが記載されている。また,常用ブレーキ1の下方は空間となっていることが記載されている。

上記摘記事項(甲3-ア)?(甲3-ウ)を総合すると,甲3には,以下の発明が記載されていると認められる。

「検査すべき内燃機関に連結できる常用ブレーキを備えた内燃機関を検査するための性能検査装置であって,
常用ブレーキ1がフランジブレーキとして構成されており,また締結装置7によりハウジング側およびシャフト/ロータ側において内燃機関2に連結されており,
常用ブレーキ1は,懸架ロッド13を介して,建物天井または対応する支持台に自由揺動的に懸架されており,
検査すべき内燃機関2は,フランジホイスト9および電気式チェーンホイストの吊りフック10により自由揺動的に懸架支持されている,
性能検査装置。」(以下「甲3発明」という)

4 甲4について

本件特許の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲4には,「内燃機関試験設備」に関して,次の事項が記載されている。なお,下線は当審により付記したものである。

(甲4-ア)
「【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,たとえば自動車の組み立て工場において,車体に組み込む前の内燃機関に対して性能試験を行うのに採用される内燃機関試験設備に関するものである。」

(甲4-イ)
「【0015】
【実施例】以下に本発明の一実施例を図1?図4に基づいて説明する。10は防音構造の設備本体で,底壁部11と,一対の左右側壁部12と,前側壁部13と,後側壁部14と,天壁部15とにより,内部に直方体状の試験室16を形成して構成されている。前記底壁部11は,ベース体17と,試験室16内においてベース体17上に配設された平枠体18と,この平枠体18上に配設されたグレーチング板19などにより形成されている。そして底壁部11は,そのベース体17の後部が後側壁部14に対して後方(外方)に突出され,以て突出部11Aが形成されている。なお前側壁部13は,観音式(または横スライド式や昇降式)の開閉扉に形成され,以て開動によって前部に搬入出口20が形成される。また前側壁部13や左右側壁部12の所定の位置には透視窓21が形成されている。
【0016】前記試験室16内には内燃機関1の試験装置30が設置されている。この試験装置30は,後側壁部14側の位置においてグレーチング板19上に配設された内燃機関制御盤31や,この内燃機関制御盤31と搬入出口20との配設された内燃機関支持装置32などにより構成される。
【0017】この内燃機関支持装置32は,グレーチング板19上に配設されたベース板33と,このベース板33上に設けられた前後一対のガイド体34と,両ガイド体34に支持案内されて左右方向で位置変更自在な左右一対の支え体35と,これら支え体35の上部に取付られた受け具36などによって構成される。ここで支え体35は受け具36の上下位置を調整自在に構成されている。」

(甲4-ウ)
「【0021】前記排気装置47は,突出部11A上の中央に設置した排気ファン48と,この排気ファン48の吐き出し口に接続した上下方向のサイレンサー49と,このサイレンサー49に接続した上下方向の排気ダクト50などにより構成されている。そして排気ファン48の吸い込み口に接続した排気配管51が,後側壁部14を貫通して試験装置30の部分にまで達している。」

(甲4-エ)
「【0024】上記した一実施例において,製作工場では,据え付け運転状態で試運転が行われる。すなわち,給水タンク42に水が入れられ,さらに燃料供給装置45に燃料(油)が入れられた状態で,コード61がフック63から外され,そのプラグ62が電源に接続されることで,運転可能となる。そして前側壁部13が開放動され,その搬入出口20を通して内燃機関1が内燃機関支持装置32に供給される。
【0025】その際に供給は搬送手段25を介して行われる。すなわち固定レール26に対して可動レール27を突出移動させ,ウインチ装置28を介して外部(外部搬送手段)に位置している内燃機関1を吊り上げる。そして固定レール26に対して可動レール27を退入移動させて,内燃機関1を内燃機関支持装置32の上方に位置させる。次いで可動レール27に対してウインチ装置28を移動させるとともに,このウインチ装置28を作動させて内燃機関1を下げ降ろし,以て内燃機関1を受け具36群上に載置させる。
【0026】この前後において,内燃機関1の機種に応じて,支え体35の左右位置の調整や,受け具36の上下位置の調整が行われている。そして受け具36群上に載置させた内燃機関1に対して,給水配管44や燃料配管46や排気配管56などが接続される。さらに前側壁部13が閉塞動され,以て試験室16が密閉状にされる。」

(甲4-オ)
「【0029】その際に試験装置30では,燃料供給装置45からの燃料が,燃料配管46を介して内燃機関1に供給され,また内燃機関1で発生した排気ガスは,排気装置47の排気ファン48が作動することで排気配管51に吸引され,そしてサイレンサー49と排気ダクト50とを介して排出される。さらに内燃機関1に対する冷却水の供給は,給水装置41の給水ポンプ43の作動によって,給水タンク42の冷却水を,給水配管44を通して送ることで行われる。」

(甲4-カ)
「【0035】図5,図6は本発明の別の実施例を示す。すなわち試験室16内に設置される試験装置30は,内燃機関制御盤31や内燃機関支持装置32に,冷却水を必要とする動力計(たとえば渦流式電気動力計)70を加えることで構成され,そして突出部11Aに設けられる付帯装置40には,前記動力計70に接続された動力計用給水装置71が加えられる。ここで動力計用給水装置71は,給水タンク72と,この給水タンク72に循環配管73を介して連通された熱交換機74などにより構成され,そして給水タンク72に接続された給水配管75と排水配管76とが,後側壁部14を貫通して動力計70に接続されている。」

(甲4-キ)
図5には,動力計70がベース板33上に設けられた台(番号なし)上に載置されるとともに内燃機関1に連結されていることが記載されている。

(甲4-ク)
図5には,試験室16内で,内燃機関1が前側壁部13側,動力計70が後側壁部14に設置されており,後側壁部14の外部には,突出部11Aが形成されていることが記載されている。

(甲4-ケ)
図5には,内燃機関1の排気配管51が,内燃機関1の下方から出て,ベース板33およびグレーチング板19を貫通し,ベース体17とグレーチング板19の間の空間において突出部11Aの方向に折り曲げられていることが記載されている。

上記摘記事項(甲4-ア)?(甲4-ケ)を総合すると,甲4には,以下の発明が記載されていると認められる。

「内燃機関に対して性能試験を行うのに採用される内燃機関試験設備において,
ベース体17と,前記ベース体17上に配設された平枠体18と,前記平枠体18上に配設されたグレーチング板19より形成された底壁部11を有する試験室16内に,
内燃機関1の試験装置30が設置され,
前記試験装置30は,
前記グレーチング板19上に配設されたベース板33を備え,試験される内燃機関1を支持する内燃機関支持装置32と,
前記ベース板33上に設けられた台上に載置され,内燃機関1に連結された動力計70と,
内燃機関1の下方からベース板33およびグレーチング板19を貫通して,ベース体17とグレーチング板19の間の空間に配置された,内燃機関の排気配管51,
とを備えた内燃機関試験設備。」(以下「甲4発明」という)

5 甲7について

本件特許の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲7には,「トランスアクスルの試験装置」に関して,次の事項が記載されている。なお,下線は当審により付記したものである。

(甲7-ア)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】トランスアクスルの入力軸に入力軸用トルクメータの一端を連結するとともに,入力軸用トルクメータの他端に駆動モータを連結し,かつトランスアクスルの一対の出力軸にアクスル軸及び出力軸用トルクメータを順次連結し,出力軸用トルクメータに動力吸収部を連結したことを特徴とするトランスアクスルの試験装置。
【請求項2】上記駆動モータを永久磁石形駆動モータとし,この永久磁石形駆動モータをトランスアクスルを取り付けた取付架台と動力吸収部との間に配置し,かつアクスル軸の長さを永久磁石形駆動モータが配設可能な長さとしたことを特徴とする請求項1記載のトランスアクスルの試験装置。」

(甲7-イ)
「【0010】請求項2に係るトランスアクスルの試験装置は,駆動モータを永久磁石形駆動モータとし,この永久磁石形駆動モータをトランスアクスルを取り付けた取付架台と動力吸収部との間に配置し,かつアクスル軸の長さを永久磁石形駆動モータが配設可能な長さとしたものである。」

(甲7-ウ)
「【0013】
【発明の実施の形態】以下,この発明の実施の形態を図面とともに説明する。図1はこの実施形態によるトランスアクスルの試験装置の平面図を示し,トランスアクスル1の入力軸には入力軸用トルクメータ3を介して駆動モータ18を連結する。トルクメータ3は取付架台2と一体構造となっている。駆動モータ18には外径が小さい永久磁石形駆動モータを用いる。又,トランスアクスル1の一対の出力軸にはアクスル軸6,7及び出力軸用トルクメータ8,9を介してダイナモメータ10,11を連結する。駆動モータ18はトランスアクスル1を取り付けた取付架台2とダイナモメータ11との間に配設され,アクスル軸7の長さも駆動モータ18のこのような配設を可能とする長さとする。すなわち,アクスル軸7の長さをある程度長くして駆動モータ18とダイナモメータ11の位置が重ならないようにする。又,駆動モータ18はトランスアクスル1の入力軸の軸線上に配置され,ダイナモメータ10,11はトランスアクスル1の出力軸の軸線上に配置される。図2は駆動モータ18の断面図,図3はそのA部拡大図,図4はB部拡大図,図5はC部拡大図を示し,駆動モータ18は三相誘導電動機であり,固定子19と回転子20を有している。回転子20は,回転軸21に固定された回転子鉄心(積層鉄心)22のスロット(貫通孔)23に回転子バー24を貫通させ,この回転子バー24の両端をエンドリング25,26で短絡してなるかご形の回転子である。回転子鉄心22の軸方向中間部には回転子鉄心22と同軸,同径の静圧軸受ジャーナル27が設けられ,回転子バー24は静圧軸受ジャーナル27のスロット(貫通孔)28も貫通している。回転軸21の軸方向両端部にも静圧軸受ジャーナル29,30が設けられ,この静圧軸受ジャーナル29,30を介して回転軸21の軸方向両端部が直結側静圧軸受31と反直結側静圧軸受32により回転自在に支持される。」

6 甲8について

本件特許の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲8には,「移動台車における回転機の取付装置」に関して,次の事項が記載されている。

(甲8-ア)2頁8行?3頁6行
「本考案は移動台車に搭載する回転機の取付装置に関し,移動台車に回転機支持用のマウント装置を設置することにより,この移動台車を所定の設置場所に運搬した後,回転機の軸を別の機器の回転軸に直結する際,該回転機の高さや設置位置などを迅速かつ容易に調整できるようにしたものである。
とくに,本考案は自動車の動的性能試験を行うエンジンダイナモメータ装置において,ドライブシャフトに直結する原動機(とくにエンジン)を所定の設置場所に運搬したうえ,軸芯合せを行って直結するとともに,他種類の原動機を搭載するうえで好都合なものである。」

(甲8-イ)4頁6?10行
「第1図において,1は移動台車2に搭載されているエンジン,3はドライブシャフト,4はフライホイール,5はダイナモメータである。
前記において,エンジン1とドライブシャフト3を芯出し直結するのであるが,その移動台車2の構造が第2図以下に示されている。」

(甲8-ウ)
図1には,移動台車2に搭載されたエンジン1に,ドライブシャフト3を介して,フライホイール4が連結され,前記フライホイール4にダイナモメータ5が連結されているところが記載されている。

7 甲9について

本件特許の優先権主張日後に頒布された刊行物である甲9には,「水処理装置」に関して,次の事項が記載されている。なお,下線は当審により付記したものである。

(甲9-ア)
「【0001】
本発明は,飲料用を含む上水用の水道管又は給水間(以下,これらを「通水管」という)を挟んだ状態で使用して通水管内の水を活性化させる着脱式水処理装置に関する。」

(甲9-イ)
「【0004】
不純物を含んで水質が劣化した水においては,不純物質が仲介してイオン化した水分子同士が引き合って大きな水分子の集団(クラスター)を形成して水本来の活性力が低減している。上記の着脱式水処理装置は,通水管内を通過する水の進行方向に対して直角方向から比較的強い磁界と遠赤外線を照射することにより,クラスター化した水分子にスピン現象を生じさせることにより,結合状態の水分子を分離し微粒子化させることにより水本来の活性力を向上させる簡易式の水処理装置である。
【0005】
また,水道水の殺菌するために添加されている塩素は,水の中に元々含まれている有機物質と結合することによりカルキ臭を生じさせることから,このような水に上記のような水処理装置を用いて磁界と遠赤外線を照射することにより,塩素と有機物質の結合状態を解消させることによりカルキ臭を減少又は消滅させることができるのである。」

(甲9-ウ)
「【0030】
ヨーク15(第2ハウジング内の11も同様)は,鉄,ニッケル及びコバルト等の強磁性体により形成される。ヨーク11,15は,外部への漏洩磁力がゼロになる厚さ(即ち,いわゆる飽和状態になる厚さ)以下であれば,厚い方が表面磁力が大きくなる。しかし,ヨーク15を厚くすると,装置全体の重量が重くなるので永久磁石の厚さと同程度,又は永久磁石の厚さよりも僅かに厚い程度が好ましい。
【0031】
また,第1磁気手段16(第2ハウジング内の12も同様)は永久磁石であって,ヨーク15上の内側(通水管10側)に取り付けられている。永久磁石としては,フェライト磁石を使用することも可能ではあるが,小型で強力な表面磁力を得ることができるネオジウム磁石(表面磁力3500G?4000G)を使用するのが好ましい。」

8 甲10について

本件特許の優先権主張日後に頒布された刊行物である甲10には,「校正用ガスの発生量測定装置」に関して,次の事項が記載されている。なお,下線は当審により付記したものである。

(甲10-ア)
「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,例えば,アセトアルデヒド,アンモニア,エタノール,酢酸エチル,ジクロロメタン,二酸化窒素または硫化水素等の各種ガスを微量濃度で連続的に発生させて校正用のガスとして用いるための校正用ガスの発生量を測定する装置に関し,詳しくは,前記各種ガスを発生させる校正用ガス発生チューブの重量を連続的に測定して校正用のガスの発生量を測定する校正用ガスの発生量測定装置に関するものである。」

(甲10-イ)
「【0015】
図2に,ホルダー3の開口部4とホルダーキャップ5との要部のみを拡大した断面図を示してある。ホルダーキャップ5のキャップ本体6は,例えば,鉄またはニッケル等の磁性体により形成されている。該キャップ本体6には,前記ホルダー3の開口部4の上面に当接する略円板状の平面部7と,該開口部4の外周面を覆う垂下部8とが形成されており,これら平面部7と,垂下部8とにより前記開口部4を密封することができるようになっている。更に,前記平面部7の略中央部には,連結部材9の周面より稍大径の孔部10が形成されている。
【0016】
平面部7の上部側には,円形状の凹部11が形成されている。該凹部11内には,円環状の永久磁石12が配設されており,該永久磁石12の内側,即ち,円環状に形成された該永久磁石12の内径の内側には,前記孔部10と略同径の孔部13が形成された非磁性体14a,14bが配設されている。
【0017】
前記キャップ本体6の平面部7の孔部10と,前記非磁性体14a,14bの孔部13とは,連通した状態になっており,連結部材9は,これら孔部10と孔部13とに可動な状態で挿通されている。
【0018】
この非磁性体14a,14bに形成された孔部13内,即ち該非磁性体14a,14bと,連結部材9との間隙には,磁性流体15が充填されている。この磁性流体15は,例えば,マグネタイトまたは複合フェライト等の強磁性超微粒子と,界面活性剤と,水または油等のベース液との成分から構成されたものであり,前記強磁性超微粒子の周囲を前記界面活性剤が被覆して粒子同士の凝集を防ぐため,該強磁性超微粒子が前記ベース液中で安定した分散状態になってるものである。
【0019】
そのため,磁性流体15は,強磁性という磁性体としての性質と,流動性という液体との性質を兼ね備えたものであり,該磁性流体15を磁力の存する状況下に配設した場合には,液状の磁性体として作用するため,非磁性体14a,14bを介して永久磁石12と,該永久磁石12に隣接する磁性体によって形成されたキャップ本体6とにより形成される磁力線が存する磁束内に前記磁性流体15を充填・配設させることにより,該磁性流体15が流動的な磁性体として作用し,前記非磁性体14a,14bと,連結部材9との間隙に留滞して,前記磁性流体15のベース液(オイル状等)をベースとした磁気シールとして作用するのである。
【0020】
このように,ホルダー3の開口部4を磁性体で形成したホルダーキャップ5により施蓋し,該ホルダーキャップ5に円環状の永久磁石12と,該永久磁石12の内径の内側に配設させた非磁性体14a,14bとを配設し,該非磁性体14a,14bに形成された孔部13に磁性流体15を充填させることにより,該磁性流体15を前記非磁性体14a,14bと,連結部材9との間隙に留滞・維持させて,前記ホルダー3の内外の2つの環境を隔離・分離して,該ホルダー3内を密封状態に維持することができるのである。
【0021】
前記非磁性体14a,14bは必ずしも配設させなければならないものではなく,例えば,円環状の永久磁石12の周囲を覆うようにキャップ本体6を磁性体で形成し,該キャップ本体6の前記永久磁石12の内径の内側に位置する位置に孔部を形成して,該孔部,即ち前記永久磁石12の内径の内側に磁性流体15を充填させてホルダー3内を密封状態にさせても良く,また,非磁性体14aの換わりに磁性体を配設,即ち,非磁性体14bの上部の14aの位置に磁性体を配設させても良い。」

9 甲11について

本件特許の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲11には,「計測用支持具」に関して,次の事項が記載されている。

(甲11-ア)
「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は計測用支持具に関し,計測用支持具の発注を受けるたびに,個別に設計して計測用支持具を製造しなくても済むようしたものである。
【0002】
【従来の技術】エンジンの性能試験を行うには,エンジン試験装置が用いられる。エンジン試験装置は,エンジン及び動力計を載せる架台と,エンジン制御用コンピュータと,エンジン制御用・温度制御用・計測用の夫々の配線と,配管・排気管等で構成される。
【0003】これらのうちの計測用の配線については,図5のようにして配線が行われている。支柱1の下面に取り付けられた底板2が床面3に結合されており,支柱1の上部から水平方向へ突出する片持梁4が支柱1に固着され,計測用支持具が構成されている。片持梁4の先端は図示しないエンジンの上方に臨んでおり,図示しない計器用配線は支柱1及び片持梁4に沿って配設され,片持梁4の先端からエンジンへと配設される。
【0004】この場合,片持梁4に沿って配設された配線にはコネクタが接続され,一端がエンジンの計測部に接続されたケーブルの他端がコネクタに接続される。そして,計測しようとする要素に合わせて片持梁4の長さLを決めている。」

(甲11-イ)
「【0009】エンジン試験装置の全体の構成を図4に示す。架台6の上に支持部材5a,5bを介して固定したエンジン7と動力計8とが設けられ,動力計8の回転軸8aとエンジン7の出力軸7aとが連動連結されている。9はエンジン冷却水用のタンク。10は動力計8用の給水管。11は動力形8用の排水管である。」

10 甲12について

本件特許の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲12には,「エンジン試験装置設置用のエンジン試験補器つき移動式架台」に関して,次の事項が記載されている。

(甲12-ア)
「【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は,エンジン試験装置設置用架台に関する。更に詳しくは,エンジン試験装置設置用架台にエンジン試験補器を備え,取り付け,撤去できるエンジン試験装置設置用のエンジン試験補器つき移動式架台に関する。」

(甲12-イ)
「【0018】
【実施例】
実施例1:図1,図2は,試験エンジン及び動力計を本考案の同一架台上に設置した実施例を示す。
架台2の台上には,支持台で固定した試験エンジン3,動力計4を搭載する。…」

11 甲13について

本件特許の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲13には,次の事項が記載されている。

(甲13-ア)
図6bには,トランスミッションのノイズや振動などを試験する装置において,駆動機械若しくは負荷機械であるダイナモメータを支持する支持構造体が,ダイナモメータの片側部分だけを支持していることが記載されている。

12 甲14について

本件特許の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲14には,「エンジン姿勢試験装置」に関して,次の事項が記載されている。

(甲14-ア)
「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はガスタービンエンジンの姿勢試験を実施するために用いる試験装置に関する。」

(甲14-イ)
「【0015】一方床面20上に設置する基盤15上の1側には支柱14が垂直方向に立設され,該支柱の上部には回転軸4が水平状態に軸支されている。
【0016】そして該回転軸4は前述の別の回転軸5と直交する方向に配置されている。
【0017】回転軸4の外周には回転ドラム7が取付けられ,該ドラム7の側板面上には前記L型アーム6の基部が固定されている。」

13 甲15について

本件特許の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲15には,「エンジンダイナモメータの軸芯出し方法」に関して,次の事項が記載されている。

(甲15-ア)
「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は,エンジンダイナモメータにおけるエンジンとダイナモメータとを連結する際の軸芯出し方法に関するものである。」

(甲15-イ)
「【0010】
【発明の実施の形態】実施形態1
以下,この発明の実施の形態を図面とともに説明する。図1はこの発明の実施形態1によるエンジンダイナモメータの軸芯出し装置の構成図を示し,8は床9の定盤10上に固定されたエンジン架台であり,定盤10上に立設されたガイドピン11と嵌合して位置決めされている。エンジン架台8と定盤10との間には異物を挟まないようにする。エンジン架台8上にはエンジン5が取り付けられる。又,同様にして定盤10上にはダイナモメータ架台12が固定され,架台12上にはダイナモメータ1が取り付けられる。…」

14 甲16について

本件特許の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲16には,「動的捩りのばね定数の割り出し方法」に関して,次の事項が記載されている。

(甲16-ア)
図1および3には,ダイナモメータ4がその側方を支持されていることが記載されている。

15 甲17について

フライホイールが駆動機械又は負荷機械であることを説明した陳述書である甲17には,次の事項が記載されている。

(甲17-ア)1頁16?20行
「エンジンダイナモメータによるエンジン性能試験において,車両走行抵抗をシミュレーションするとき,昭和50年代までは一般的に,エンジン加速度に比例して変化する慣性抵抗を負荷するためにフライホイールが連結され,エンジンの加速に比例して変化しない動力をダイナモメータにより吸収し,実走行をシミュレーションしたときのエンジンの性能を測定します。」

(甲17-イ)1頁27行?2頁5行
「エンジン実走行シミュレーション試験において,上記(1)式の係数Dの慣性(車重)は,車重に対応する複数の円盤などから成るフライホイールをダイナモメータの回転軸に着脱自在に結合することで再現され,しばしばフライホイールは『慣性負荷装置』と称されます。
そして,フライホイールは,車重による慣性力を再現しながらエンジンダイナモメータと共に走行抵抗と等価な負荷をエンジンに与え,エンジンの走行シミュレーション試験を実現します。」

(甲17-ウ)2頁13行?3頁1行
「上述で述べたように,フライホイールは,実際の車重による慣性,つまり,車重による回転軸の『速度変化しにくさ』を再現させる物体であり,つまり,物体の動作に対して抵抗となるパラメータを意味する『負荷』を与える機械であります。
よって,フライホイールとは,エンジンダイナモメータと共に,エンジンに対して負荷を与える機械,つまり『負荷機械』であることは明らかです。」

(甲17-エ)3頁7?10行
「なお,甲第8号証の他に,新たに提出しています資料でもわかるように,ダイナモメータの負荷出力あるいは特性加えるために,複数のダイナモメータを直列に据え付け,エンジンシャフトに連結するような,通称『タンデムダイナモ』と呼ばれる装置については,少なくとも昭和30年代から通常行われている,いわゆる周知技術であることも付言いたします。」

16 甲18について

本件特許の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲18には,「動力計の制御装置」に関して,次の事項が記載されている。

(甲18-ア)1頁左下欄15?19行
「【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
この発明は,例えばエンジンなどの被試験体の動力を針側して被試験体を試験するための動力計(ダイナモメータ)の制御装置に関するものである。」

(甲18-イ)2頁右上欄12?20行
「[発明の実施例]
以下,この発明の一実施例を図について説明する。第1,2図において,従来と同様に,1は例えばエンジンなどの被試験体,2は継手4を介して被試験体1に連結される直流電気動力計(DC-DY),3は継手4,直流電気動力計2および継手5を介して被試験体1に連結される渦電流電気動力計(ED-DY)で,これらの動力計2,3がタンデムに被試験体1に連結されている。」

17 甲19について

本件特許の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲19には,「シヤシダイナモメ-タの速度制御方式」に関して,次の事項が記載されている。

(甲19-ア)1頁左下欄4行?右下欄1行
「2.特許請求の範囲
1,ドラム夫々に速度制御装置を備える複数台の動力計と,各動力計の軸を連結するクラツチを有するシヤシダイナモメータにおいて,前記各動力計の軸が連結されたとき,前記複数台の内の1台の速度制御装置を代表速度制御装置とし該代表速度制御装置の出力を前記複数台の内の他の速度制御装置のマイナー電流制御系に接続し,複数台の動力計の速度制御を前記代表速度制御装置で行なうことを特徴とするシヤシダイナモメータの速度制御方式。
3.発明の詳細な説明
〔産業上の利用分野〕
本発明は,フルタイム4輪駆動車(以下,4WD車という)用シヤシダイナモメータ(以下,C/Dという)の速度制御方式に係り,特に,動力計連結時の速度制御に好適な速度制御方式に関する。」

(甲19-イ)2頁左下欄17行?右下欄4行
「第1図において,11,12,13,14はC/Dの動力計である。本実施例では,4台の動力計11,12,13,14は同一定格とする。図には省略されているが各動力計にはC/Dのドラムが結合されている。21,22,23,24は動力計を連結するクラッチ,41,42はベベルギヤボツクスを示している。以上はC/Dの周知の構成である。」

18 甲20について

フライホイールが駆動機械又は負荷機械であることを説明した陳述書である甲17には,次の事項が記載されている。

(甲20-ア)13?20行
「フライホイールとは,慣性中心たる重心位置に軸を設け,その軸周りに比較的大きな慣性質量を持つ機械要素で,回転軸の回転速度が急速に変化しようとした場合,すなわち角加速度が急激に変化しようとした場合に,回転軸周りの慣性質量の効果により,その効果を阻止するように作用します。言い換えれば,回転軸周りの角速度変化をさせにくくする機械要素であり,この効果を回転軸に作用させるトルクからの観点から見れば,トルクを作用させても角速度変化を生じさせないように作用する機械要素,すなわち,『負荷機械』であると言えます。」

19 乙1について

本件特許の優先権主張日前に頒布された刊行物である乙1には,次の事項が記載されている。

(乙1-ア)(12)頁右欄34?35行


(乙1-イ)1031頁右欄49?50行



(乙1-ウ)1562頁左欄8?9行



第6 無効理由1(36条6項1号又は2号)について

1 本件発明1における「空間」の定義について

請求人は,本件発明1において、種々の形状、大きさが考えられる排気装置によって定義づけられた空間の意義が不明瞭である旨主張しているので検討する。

本件発明1には「前記駆動機械若しくは負荷機械(4)の下方に前記基台(1)にかけて残されている空間」と特定されていることからみて,該「空間」は,「駆動機械若しくは負荷機械(4)」と「基台(1)」との間に形成されたものであるから,その位置と大きさが,他の構成との関係から,明確に把握することができるというべきである。
また,本件発明1の「空間」について,本件特許明細書の段落【0013】に「…その結果,駆動機械若しくは負荷機械4の妨害輪郭9の下方に内燃機関2に取り付けた純正排気装置10に対して充分な空間が残る。」と記載されている。ここで,本件発明1における「排気装置」については,特に限定はないが,同【0003】に「…この試験が取り付けられた純正排気装置を用いて行われるべきであり,これが可能な限り現実に近い試験を可能にするためにさらに頻繁に所望される場合は,…」とあり,また,同【0004】に「本発明の課題は,テストベンチが簡単な方法で取り付けられ且つ駆動軸の下方に該駆動軸の伸長部と平行して内燃機関から離れる純正排気装置を備えた内燃機関の試験にも使用することができ,…」とあることから,本件発明1が「純正排気装置」を前提とするものであることは明らかである。
したがって,上記「空間」が「純正排気装置」を取り付けるに足る空間であれば良いことが理解される。

よって,本件発明1について,特許を受けようとする発明が明確でないとまでいうことはできない。

2 本件発明2における「永久磁石により動作する機械」について

請求人は,本件発明2において、「永久磁石機械」とは一体何か不明であり、また、永久磁石と駆動機械若しくは付加機械との関係が把握できない旨主張しているので検討する。

上記「第2 訂正請求について 2 当審の本件訂正請求についての判断 (1)訂正事項1について」において検討したとおり,訂正前の「永久磁石機械」が,「駆動機械若しくは負荷機械」の機能を有するものであることは明らかである。そして,「駆動機械若しくは負荷機械」の機能を有する「永久磁石機械」が,「永久磁石により動作する機械」であることは技術常識であって,「永久磁石により動作する機械」とはどのような機械であるか当業者には明確である。すなわち,内燃機関をテストする技術分野において,「駆動機械若しくは負荷機械」に「動力計(ダイナモメータ)」を含むことは技術常識であることから,「永久磁石により動作する機械(駆動機械若しくは負荷機械)」とは,回転子あるいは固定子が永久磁石である「動力計(ダイナモメータ)」を意味することは明らかである。

よって,本件発明2について,特許を受けようとする発明が明確でないとまでいうことはできない。

なお,請求人は,永久磁石を用いた機械であって永久磁石により動作する機械ではないものとして,甲9および10に記載された永久磁石を用いた機械を挙げているが,甲9に記載された水処理装置や,甲10に記載された校正用ガスの発生量測定装置は,本件発明の技術分野と全く異なる分野の装置であって,甲9または10に記載された永久磁石を用いた機械が本件発明のような内燃機関のテストベンチに用いられる永久磁石機械として適用不可能であることは明らかであり,請求人の主張は採用できない。

3 本件発明6における「側方から懸架して」について

請求人は,本件発明6において、「・・側方から懸架して・・・」とあるが、どういった態様か意義が不明であり、発明の詳細な説明にも記載されていない旨主張しているので検討する。

本件特許明細書段落【0016】に,「特に図2及び3から,駆動機械若しくは負荷機械4が振動減衰装置11を中間接続して支持構造体6に懸架する。」と記載されている。そして,図2及び3を参照すると,振動減衰装置11は,駆動機械若しくは負荷機械4の側方に位置しているから,図2ならびに図3に記載された態様が「側方から懸架」する態様であることは明らかである。

よって,本件発明6について,特許を受けようとする発明が明確でないとまでいうことはできず,また,本件発明6が発明の詳細な説明に記載したものではないとまではいえない。

なお,請求人は,本件発明6における「側方から懸架して」について,懸架とは,「つりさげ,ささえること」(三省堂大辞林)といった意味に加えて,「渓谷や道路などをまたいで構造物をかけ渡すこと。また,架け渡して支えること。」(goo辞書)といった意味に解されるが,側方から懸架するとはどういった態様か,意義が不明であり,また,側方から懸架する態様が発明の詳細な説明に記載されていない,と主張している。
しかしながら,本件発明6は,内燃機械のテストベンチであって,「渓谷や道路など」とは技術分野が異なるものであり,また,本件発明6の解決しようとする課題等を鑑みれば,本件発明6における「懸架」は「掛け渡して支える」の意味ではないことは明らかである。さらに,被請求人が主張するとおり,図2および図3に記載された態様が「側方から懸架」する態様であることは明らかである。
よって,請求人の上記主張は採用できない。

第7 無効理由2(原文新規事項)について(ここで,aは,aに2つの点からなるウムラウト記号が付加されたものを表している。)

請求人は,外国語特許出願の原文「hangen」には、懸架が有する「掛け渡して支える」といった意味までは含まれていないことから,原文新規事項の追加であると主張しているので検討する。

本件特許に係る国際出願時の請求項1には,動詞の
「hangen」
ではなく副詞である
「hangend」
が記載されており,この
「hangend」
は,同請求項1の記載の末尾における「montiert ist」(「montiert ist」は「montieren」の過去分詞形,「ist」は英語でいうbe動詞に相当し,ここでは受身形となっている。)に掛かるものであること,
「hangend」
は「つりさげるように」などの意を有し,「montieren」は「据え付ける,架設する,取り付ける」などの意を有することから,
「hangend ・・・ montiert ist」
は,例えば「つりさげるように取り付けられる」との意に解すことができ,本件特許の請求項1における独語原文の
「hangend ・・・ montiert ist」
を「懸架」と翻訳することに不自然な点はなく,このような翻訳が独語原文の意味から逸脱するものでないことは明らかである。そして,
「hangen」
の意味は「掛ける,つるす,下げる」(三修社 アクセス独和辞典 第1版)であるから,
「hangend ・・・ montiert ist」
は,掛けるように取り付けられる,つるすように取り付けられる,下げるように取り付けられる,等の意味となり,「懸架」は,その下位概念とするのが自然である。そうすると「懸架」と翻訳することに何ら不自然な点はなく,請求項1における「懸架」は原文新規事項とまではいえない。

なお,請求人は,請求項1における「懸架」について,前述のとおり,「架け渡して支える」との意味があるのに対し,本件特許の外国語特許出順における「懸架」の対応部分である
「hangen」
には,「懸架」が有する「架け渡して支える」といった意味までは含まれていないことから,原文新規事項の追加である,と主張している。
しかしながら,本件特許発明が属する技術分野は,「渓谷や道路などをまたいで構造物をかけ渡す」建築・土木の分野ではないから,請求人の上記主張は採用できない。

第8 無効理由3(29条1項3号または29条2項)について

1 本件特許明細書における「準3次元の実施形態」について

請求人は,本件発明が「準3次元の実施形態」を含むと主張し(第1回口頭審理調書の請求人の4),被請求人は,本件発明には「準3次元の実施形態」は含まないと主張している(第1回口頭審理調書の被請求人の3)ことに鑑み,本件特許発明の進歩性について判断するにあたり,まず,本件特許明細書に記載された「準3次元の実施形態」が,本件特許発明に含まれるかについて検討する。なお,下線は当審により付記したものである。

本件発明1には,「…前記駆動機械若しくは負荷機械(4)は,前記基台(1)に対して垂直方向に間隔(5)をあけて前記基台(1)上に配置された支持構造体(6)に懸架されて前記試験するべき内燃機関(2)の出力軸(7)と一列に並ぶ駆動軸(8)と共に据え付けられている…」とあり,「支持構造体(6)」は,「基台(1)上に配置された」ものであるといえる。

他方,上記本件特許明細書には,「準3次元の実施形態」について,次のように記載されている。

(ア)「【0010】
本発明の別の好ましい実施形態に従って,基台は準3次元の実施形態で(例えば安定したテストベンチコンテナとして),さらにまた自体駆動機械若しくは負荷機械を少なくとも領域ごとに高さで把持することができ,この場合,支持構造体は上方から又は側方からこの3次元の基台に据え付けて駆動機械若しくは負荷機械を,例えば懸架するV字形の配列を利用し懸架して担持する。」

(イ)「【0015】
図2に記載の実施形態において,支持構造体6は基板12をブリッジ状に把持し,且つ両側でこの基板上に支持かつ固定されており,これが図4でも実現されているように,非常に安定した閉じた構造を可能にする。それに対して,図3に記載の実施形態において,支持構造体は片側のみ基板12上に支持かつ固定されており,これが図示左側からのアクセスを改善し,且つ対応する片側支持の実施形態の場合はそれにもかかわらず充分な剛性を提供する。独立にテストベンチ領域に少なくとも振動絶縁して設置した基板12を有するこの両方の変形例を度外視しても,基台1は,ここに図示しない方法で,しかしまた準3次元実施形態でも試験するべき内燃機関及び,駆動機械若しくは負荷機械をコンテナ状若しくはカゴ状に囲むことができる。この場合,支持構造体が,側方又は上方からこの基台に取り付けられ,且つ試験するべき内燃機関は直接通常のテストベンチパレットを利用して固定することができる。」

上記摘記事項(ア)および(イ)から,「準3次元の実施形態」とは,基台がコンテナ状またはカゴ状であって,支持構造体は,前記コンテナ状またはカゴ状の基台内において,その上方または側方から懸架して取り付けられたものであるから,この場合,「支持構造体(6)」は,「基台(1)上に配置された」ものであるとはいえない。

したがって,本件発明1には,「準3次元の実施形態」は含まれないことは明らかであり,本件発明2?7は,すべて,本件発明1を引用するものであるから,本件発明2?7にも,「準3次元の実施形態」は含まれないことは明らかである。

2 本件発明1の進歩性について(甲1発明との対比・判断)

(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。

ア 摘記事項(甲1-ア)のとおり,甲1発明における動力計は,エンジン等の出力を測定する装置であるから,甲1発明における「エンジン22」,「モジュラー式動力計20」は,本件発明1における「試験するべき内燃機関(2)」,「駆動機械若しくは負荷機械(4)」に相当する。

イ 摘記事項(甲1-ウ)のとおり,甲1発明における「モジュラー式動力計20」は,その「主軸108」が,「回転軸24」により「エンジン22」に連結されているから,甲1発明においても,「モジュラー式動力計20」の「主軸108」と「エンジン22」の出力軸とが一列に並んで回動連結しているといえる。
したがって,甲1発明と本件発明1とは,「内燃機関の出力側に対して」「駆動機械若しくは負荷機械」が「回動連結」しており,また,「駆動機械若しくは負荷機械」が「内燃機関の出力軸と一列に並ぶ駆動軸と共に据え付けられている」点で一致する。

ウ 摘記事項(甲1-ウ)のとおり,甲1発明では,「閉鎖筺体32」に配置された「モジュラ一式動力計20」が,「支持パッド149」上で,「複数の支持脚,足結合体30を有する支持フレーム26」により支持されており,隣接する「支持脚,足結合体30」の各対は,「横材31」によって連結されている。また,各「横材31」は,前記「閉鎖筺体32」から延在する「モジュラ一式動力計20」の「主軸108」上に,「各ベアリングクレードル27」によって連結されている。さらに,摘記事項(甲1-カ)のとおり,「閉鎖筺体32」は,その下方に空間を残して支持されている。そうすると,「閉鎖筺体32」に配置された「モジュラ一式動力計20」は,「支持脚,足結合体30」および「横材31」により,下方に空間を残して支持された状態にあるから,「モジュラ一式動力計20」は,「複数の支持脚,足結合体30を有する支持フレーム26」および「横材31」により,懸架されているといえる。
したがって,甲1発明における「複数の支持脚,足結合体30を有する支持フレーム26」および「横材31」は,本件発明1における「支持構造体(6)」に相当する。

エ 摘記事項(甲1-ウ)より,甲1発明における「支持パッド149」と本件発明1における「基台(1)」とは,「駆動機械若しくは負荷機械」が配置されている台である点で共通するといえる。また,摘記事項(甲1-カ)のとおり,「閉鎖筺体32」は,その下方に空間を残して支持されているから,「閉鎖筺体32」に配置された「モジュラ一式動力計20」の下方には,「支持パッド149」にかけて空間が残されているといえる。
したがって,甲1発明と本件発明1とは,「駆動機械若しくは負荷機械」の下方に,「駆動機械若しくは負荷機械」が配置されている台にかけて空間が残されている点で共通する。

オ 上記エのとおり,「モジュラ一式動力計20」の下方には,「支持パッド149」にかけて空間が残されており,また,上記ウのとおり,「モジュラ一式動力計20」は,「支持パッド149」上に配置された「複数の支持脚,足結合体30を有する支持フレーム26」および「横材31」に支持されているから,甲1発明と本件発明1とは,「駆動機械若しくは負荷機械」が,「駆動機械若しくは負荷機械」が配置されている台に対して垂直方向に間隔をあけて,前記台上に配置された「支持構造体」に支持されている点で共通するといえる。

カ 摘記事項(甲1-オ)のとおり,甲1発明では,「エンジン22」が「台」に設置されて支持されており,また,本件発明1における「基台(1)」は,「試験するべき内燃機関(2)」が配置されるものであるから,甲1発明における「エンジン22」の「台」と,本件発明1における「基台(1)」とは,「試験するべき内燃機関」が配置される台である点で共通する。

キ 上記エおよびカから,甲1発明は,「試験するべき内燃機関」および「駆動機械若しくは負荷機械」をそれぞれ配置する「台」を有しており,また,甲1発明は,エンジン等の出力を測定するものであるから,甲1発明における「原動機出力測定装置」は,本件発明1における「テストベンチ」に相当するといえる。

以上により両者は,次の点で一致し,下記の点で相違する。

(一致点)
「試験するべき内燃機関と,試験するべき内燃機関の出力側に対して少なくとも1つの回動連結している駆動機械若しくは負荷機械とが配置されている台を有する内燃機関のテストベンチにおいて,
前記駆動機械若しくは負荷機械は,前記台に対して垂直方向に間隔をあけて前記台上に配置された支持構造体に懸架されて前記試験するべき内燃機関の出力軸と一列に並ぶ駆動軸と共に据え付けられていることによって,前記駆動機械若しくは負荷機械の下方に前記台にかけて空間が残されている,テストベンチ。」

(相違点1)「台」が,本件発明1では「試験するべき内燃機関」および「駆動機械若しくは負荷機械」を共に配置する単一の「基台」であるのに対し,甲1発明では,「エンジン22」を配置する「台」および「駆動機械若しくは負荷機械」を配置する「支持パッド」から成る点。

(相違点2)本件発明1では,「駆動機械若しくは負荷機械の下方に前記基台にかけて残されている空間が,排気装置を敷設するために開放されて確保されている」のに対し,甲1発明では,排気装置の敷設については不明である点。

(2)相違点1について
「試験するべき内燃機関」および「駆動機械若しくは負荷機械」を共に配置する単一の「基台」とすることは,本件特許の優先日前周知の事項である。例えば,甲3,4参照。
しかしながら,甲1発明では,「試験するべき内燃機関」と「駆動機械若しくは負荷機械」とを配置する「台」が,「エンジン22」を配置する「台」および「駆動機械若しくは負荷機械」を配置する「支持パッド149」から成っており,甲1の図1には,これらは別個のものであってそれぞれ床の上に設置されていることが記載されているから,甲1には,「エンジン22」を配置する「台」および「駆動機械若しくは負荷機械」を配置する「支持パッド149」を,単一の「台」とすることが示唆されているということはできない。また,これらの台を共通のものとする動機付けも見いだせないから,相違点1について,当業者が容易に想到し得ることとはいえない。

(3)相違点2について
甲1には,排気装置について全く記載がなく,駆動機械若しくは負荷機械の下方に台にかけて残されている空間を,排気装置を敷設するために開放して確保しておくことに何らの動機付けも見いだせない。また,甲1では,「閉鎖筺体32」の下方に「排出弁153」を有し,前記「排出弁153」により,冷却液等の液体を,「支持パッド149」上に設けた「サンプ147」へと排出するものであるから(4欄49行?5欄35行,図1A参照。),「駆動機械若しくは負荷機械」の下方に残されている「空間」を,「排気装置を敷設するために開放されて確保」するには阻害要因が存在するといえる。
してみると,相違点2について,当業者が容易に想到し得ることとはいえない。

(4)まとめ
以上のとおり,本件発明1は上記相違点1?2の点で,甲1に記載された発明,および,他の各甲号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

3 本件発明1の進歩性について(甲2発明との対比・判断)

(1)対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。

ア 甲2発明における「エンジンM」,「フランジブレーキB」,「エンジン試験台」は,その機能・構造からみて,本件発明1における「試験するべき内燃機関(2)」,「駆動機械若しくは負荷機械(4)」,「テストベンチ」に相当することは明らかである。

イ 摘記事項(甲2-イ)に「…エンジンMは走行可能な架台UのパレットベースフレームPに取り付けられる。…走行可能な架台UはエンジンMを支持するパレット支持フレーム26とその下に位置し,支持部材S3およびS4を介してフランジブレーキBを支持するパレットベースフレームPから構成される。…」と記載されているように,甲2発明では,「エンジンM」が「パレットベースフレームP」に取り付けられると共に,「フランジブレーキB」も「支持部材S3およびS4」を介して「パレットベースフレームP」により支持されているから,甲2発明における「パレットベースフレームP」は,本件発明1における「基台(1)」に相当する。

ウ 摘記事項(甲2-ウ)のとおり,甲2発明における「フランジブレーキB」は,その「シャフト3」が,「エンジンMのクランクシャフト」に連結されているから,甲2発明においても,「フランジブレーキB」の駆動軸と「エンジンM」の出力軸とが一列に並んで回動連結しているといえる。
したがって,甲2発明と本件発明1とは,「内燃機関の出力側に対して」「駆動機械若しくは負荷機械」が「回動連結」しており,また,「駆動機械若しくは負荷機械」が「内燃機関の出力軸と一列に並ぶ駆動軸と共に据え付けられている」点で一致する。

エ 摘記事項(甲2-オ)のとおり,甲2発明では,「フランジブレーキB」の「ブレーキ振り子PK」を支持している「共用支持プレート1」が,「支持部材S3およびS4」を介して「パレットベースフレームP」に取り付けられている。すなわち,「フランジブレーキB」が,「支持部材S3およびS4」および「共用支持プレート1」に支持されており,「支持部材S3およびS4」および「共用支持プレート1」は,「パレットベースフレームP」上に配置されているといえる。
また,図3.1及び図5.1から,「フランジブレーキB」は,その片側が「共用支持プレート1」によりつり下げられた状態で支持されていることは明らかであるから,「フランジブレーキB」は「共用支持プレート1」により片側懸架されているといえ,さらに,図3.1から,「フランジブレーキB」は,「パレットベースフレームP」に対して垂直方向に間隔をあけて「支持部材S3およびS4」および「共用支持プレート1」により片側懸架されているといえる。
したがって,甲2発明における「支持部材S3およびS4」および「共用支持プレート1」は,本件発明1における「支持構造体6」に相当し,甲2発明と本件発明1とは,「駆動機械若しくは負荷機械」が,「基台」に対して垂直方向に間隔をあけて「基台」上に配置された「支持構造体」に「懸架」されている点で共通する。

以上により両者は,次の点で一致し,下記の点で相違する。

(一致点)
「一方では試験するべき内燃機関と他方では前記内燃機関の出力側に対して少なくとも1つの回動連結している駆動機械若しくは駆動機械若しくは負荷機械とが配置されている基台を有する内燃機関のテストベンチにおいて,
前記駆動機械若しくは負荷機械は,前記基台に対して垂直方向に間隔をあけて前記基台上に配置された支持構造体に懸架されて前記試験するべき内燃機関の出力軸と一列に並ぶ駆動軸と共に据え付けられているテストベンチ。」

(相違点)
本件発明1では,「駆動機械若しくは負荷機械の下方に前記基台にかけて残されている空間が,排気装置を敷設するために開放されて確保されている」のに対し,
甲2発明では,排気ガス装置Aは,エンジンMの側方から,フランジブレーキBの側方を通って,測定室R2に伸びている点。

(2)相違点について
(ア) 前記(甲2-ア)の記載のとおり,甲2発明は,排気サイレンサーの騒音測定を目的とする騒音測定試験台に関する発明であり,試体エンジンが設置されるエンジン室,エンジン室と音響的に遮断された測定室及びエンジンに取り付けられた排気ガス装置を備え,エンジンのクランクシャフトにフランジブレーキとして設計されたパワーブレーキが直接取り付けられ,排気ガス装置が実車と同じ状態でエンジンに取り付けられるという構成を採用することにより,エンジンの騒音等の排気サイレンサー以外の音源が騒音測定室に伝わらないようにして,排気サイレンサーから出る騒音を測定するものである。
そうすると,甲2発明において,フランジブレーキとして設計されたパワーブレーキをエンジンのクランクケースに直接取り付けること及びその結果として排気ガス装置を実車と同じ配置でエンジンに取り付けることは,甲2発明の課題から必要不可欠な構成及び作用効果と認められる。
したがって,甲2発明において,パワーブレーキをエンジンのクランクケースに直接取り付けることなく配置することも,パワーブレーキを甲号証記載のその他の構成に置き換えることも共に想定されてないというべきである。
(イ) そうすると,甲2発明において,「駆動機械若しくは負荷機械の下方に前記基台にかけて残されている空間が,排気装置を敷設するために開放されて確保されている」構成を採用する動機付けがなく,阻害要因があるといえる。
してみると,相違点について,当業者が容易に想到し得ることとはいえない。

(3)まとめ
以上のとおり,本件発明1は上記相違点の点で,甲2に記載された発明,および,他の各甲号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

4 本件発明1の進歩性について(甲3発明との対比・判断)

(1)対比
本件発明1と甲3発明とを対比する。

ア 甲3発明における「検査すべき内燃機関2」,「常用ブレーキ1」は,その機能・構造からみて,本件発明1における「試験するべき内燃機関(2)」,「駆動機械若しくは負荷機械(4)」に相当することは明らかである。

イ 摘記事項(甲3-イ)に「…エンジンシャフトとブレーキシャフトとの直接的連結…」と記載されていることから,甲3発明では,「常用ブレーキ1」の駆動軸と「検査すべき内燃機関2」の出力軸とが一列に並んで回動連結しているといえる。したがって,甲3発明と本件発明1とは,「内燃機関の出力側に対して」「駆動機械若しくは負荷機械」が「回動連結」しており,また,「駆動機械若しくは負荷機械」が「内燃機関の出力軸と一列に並ぶ駆動軸と共に据え付けられている」点で一致する。

ウ 摘記事項(甲3-イ)より,甲3発明では,「常用ブレーキ1」は「懸架ロッド13」により懸架されるものであるから,甲3発明における「懸架ロッド13」は,本件発明1における「支持構造体(6)」に相当する。

エ 摘記事項(甲3-ア)のとおり,甲3発明は,内燃機関を検査するための性能検査装置であるから,甲3発明における「性能検査装置」と,本件発明1の「内燃機関のテストベンチ」とは,内燃機関を検査するための装置である点で共通する。

以上により両者は,次の点で一致し,下記の点で相違する。

(一致点)
「試験するべき内燃機関と前記内燃機関の出力側に対して少なくとも1つの回動連結している駆動機械若しくは負荷機械とを有する内燃機関を検査するための装置において,
前記駆動機械若しくは負荷機械は,支持構造体に懸架されて前記試験するべき内燃機関の出力軸と一列に並ぶ駆動軸と共に据え付けられている,内燃機関を検査するための装置。」

(相違点1)
本件発明1は,「内燃機関のテストベンチ」であって,「試験するべき内燃機関」と「駆動機械若しくは負荷機械」とが配置されている「基台」を有しており,「支持構造体」が「基台」上に配置され,「駆動機械若しくは負荷機械」が,前記「基台」に対して「垂直方向に間隔をあけて」懸架されているのに対し,甲3発明では,本件発明1における「基台」に相当する構成が不明である点。

(相違点2)
本件発明1では,「駆動機械若しくは負荷機械の下方に前記基台にかけて残されている空間が,排気装置を敷設するために開放されて確保されている」のに対し,甲3発明では,排気装置の敷設について不明である点。

(2)相違点1について
甲3発明では,摘記事項(甲3-イ)のとおり,「常用ブレーキ1」は「番号が付けられていない建物天井または対応する支持台」に「懸架ロッド13」を介して懸架されており,また,摘記事項(甲3-ウ)のとおり,「懸架ロッド13」は「番号が付されていない枠状の支持構造体」から吊り下げられている。ここで,摘記事項(甲3-イ)における「番号が付けられていない建物天井または対応する支持台」が,摘記事項(甲3-ウ)における「番号が付されていない枠状の支持構造体」であることは明らかであるから,甲3発明では,「懸架ロッド13」は「建物天井」またはそれに類する箇所から吊り下げられているといえ,したがって,「常用ブレーキ1」は,「建物天井」またはそれに類する箇所から吊り下げられた「懸架ロッド13」により懸架されているといえる。
他方,摘記事項(甲3-イ)のとおり,「内燃機関2」は,「走行クレーン11」から吊り下げられた「フランジホイスト9」を介して懸架されており,また,摘記事項(甲3-ウ)のとおり,「走行クレーン11」は,「番号が付されていない枠状の支持構造体」の上部に存在するものであるから,「走行クレーン11」は,「建物天井」付近に存在するといえる。
したがって,甲3発明では,「建物天井」付近から「試験するべき内燃機関」と「駆動機械若しくは負荷機械」との双方をそれぞれ吊り下げるものであるから,本件発明1における「基台」に相当するものが存在せず,また,このような「基台」が示唆されているともいえない。さらに,本件発明1における「基台」は,その上に「支持構造体」を設けるものであるが,甲3発明では,「内燃機関」と「常用ブレーキ」は,共に「建物天井」から懸架されるものであるから,「基台」上に「支持構造体」を設けて「駆動機械若しくは負荷機械」を懸架させると共に,「試験するべき内燃機関」も同じ「基台」に配置することは,甲3発明の技術思想からは逸脱するものであることは明らかである。

また,上記「1 本件発明の進歩性について(甲1発明との対比・判断) ウ」のとおり,甲1には,「支持パッド149」上で駆動機械若しくは負荷機械を懸架する支持構造体が記載されているが,上記のとおり,甲3発明では,「内燃機関」と「常用ブレーキ」は,共に「建物天井」付近から懸架されるものであり,また,摘記事項(甲3-ア)のとおり,甲3発明は「常用ブレーキ」や「内燃機関」を自由揺動的に懸架支持することを前提とするものであるから,甲3発明に甲1発明における支持構造体を適用する動機付けは見いだせない。

したがって,相違点1について,当業者が容易に想到し得るとはいえない。

(3)相違点2について
摘記事項(甲3-ウ)のとおり,「常用ブレーキ1」の下方は空間となっている。しかしながら,甲3には排気装置に関して全く記載がなく,駆動機械若しくは負荷機械の下方に残されている空間を,排気装置を敷設するために開放して確保しておくことに何らの動機付けも見いだせないから,相違点2について,当業者が容易に想到し得ることとはいえない。

(4)まとめ
以上のとおり,本件発明1は上記相違点1?2の点で,甲3に記載された発明,および,他の各甲号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということができない。

5 本件発明1の進歩性について(甲4発明との対比・判断)

(1)対比
本件発明1と甲4発明とを対比する。

ア 甲4発明における「内燃機関1」,「動力計70」は,その機能・構造からみて,本件発明1における「試験するべき内燃機関(2)」,「駆動機械若しくは負荷機械(4)」に相当することは明らかである。

イ 摘記事項(甲4-キ)のとおり,甲4発明では,「動力計70」が「内燃機関1」に連結されているから,甲4発明と本件発明1とは,「内燃機関の出力側に対して」「駆動機械若しくは負荷機械」が「回動連結」している点で一致する。

ウ 本件明細書の記載によれば,本件発明1の「支持構造体」とは,基台に対して垂直方向に間隔をあけて基台上に配置され,駆動機械若しくは負荷機械を懸架し,基台に備えられた基板上に支持され,かつ,固定されている構成を有するものと認められる。
甲4において,実施例を図示する【図1】及び【図2】では,試験装置30(本件発明1の駆動機械若しくは負荷機械に相当)は,内燃機関制御盤31と一体的に図示されており,支持構造体に相当する構成を特定することはできない。また,【図2】には,試験装置の下部に別部材とみられる板様のものが図示されているが,当該部材はベース板33とはつながっていない。
また,甲4の別の実施例を図示する【図5】では,動力計70(駆動機械若しくは負荷機械)は,ベース板33(本件発明1の基板に相当)上に配置されていて,ベース板33に対して垂直方向に「ベース板33上に設けられた台(番号なし)」を介在してベース板33上に配置されており,懸架されていないものの,動力計70はベース板33上に支持され,かつ,固定されているものと認められる。
そうすると,甲4発明において,本件発明1の駆動機械若しくは負荷機械に相当するものは,基台に対して垂直方向に間隔をあけて基台上に配置されるものでなく,懸架されているものでもなく,【図5】に図示される「ベース板33上に設けられた台(番号なし)」のほか,本件発明1の「支持構造体」に相当する構成は存在しない。
したがって,甲4発明における「ベース板33」は,本件発明1における「基台」に相当するといえる。

エ 上記ウのとおり,甲4発明では,「動力計70」は「ベース板33上に設けられた台(番号なし)上に載置され」ているから,「ベース板33」,および「ベース板33上に設けられた台(番号なし)」は,「動力計70」を支持するものであるといえる。
したがって,甲4発明と本件発明1とは,「駆動機械若しくは負荷機械」が,「基台」上に配置された「支持構造体」に支持されている点で共通する。

オ 摘記事項(甲4-ア)のとおり,甲4発明は,内燃機関に対して性能試験を行うのに採用される内燃機関試験設備であって,上記ウのとおり,「基台」を有するものであるから,甲4発明における「内燃機関試験設備」は,本件発明1の「内燃機関のテストベンチ」に相当する。

以上により両者は,次の点で一致し,下記の点で相違する。

(一致点)
「一方では試験するべき内燃機関と他方では前記内燃機関の出力側に対して回動連結している駆動機械若しくは負荷機械とが配置されている基台を有する内燃機関のテストベンチにおいて,
前記駆動機械若しくは負荷機械は,前記基台上に配置された支持構造体に支持されているテストベンチ。」

(相違点1)
本件発明1では,駆動機械若しくは負荷機械が基台に対して垂直方向に間隔をあけて前記基台上に配置された支持構造体により懸架されているのに対し,甲4発明では,駆動機械若しくは負荷機械が台に載置されている点。

(相違点2)
本件発明1では,駆動機械若しくは負荷機械の下方に基台にかけて残されている空間が,排気装置を敷設するために開放されて確保されているのに対し,甲4発明では,そのような空間がない点。

(相違点3)
本件発明1では,駆動機械若しくは負荷機械が,試験するべき内燃機関の出力軸と一列に並ぶ駆動軸と共に据え付けられているのに対し,甲4発明では,動力計の駆動軸と内燃機関の出力軸との関係が不明である点。

(2)相違点1について
甲4発明では,駆動機械若しくは負荷機械が台に載置されているのであるから,駆動機械若しくは負荷機械は台に対して安定な配置状体といえる。
そうすると,本件発明1の駆動機械若しくは負荷機械が基台に対して垂直方向に間隔をあけて前記基台上に配置された支持構造体により懸架されている状態は,基台に対して垂直方向に間隔をあけているので,駆動機械若しくは負荷機械の重心が高く安定性の低い配置状体といえ,また,支持構造体が加わるので,甲4発明より重量もコストも増えるものといえる。
そうすると,安定な配置状体,重量もコストもより少ない甲4発明の構成を,駆動機械若しくは負荷機械が基台に対して垂直方向に間隔をあけて前記基台上に配置された支持構造体により懸架されている相違点1に記載の本件発明の構成に置き換えて構成することには阻害要因があるといえ,何らの動機付けも見いだせないから,相違点1について,当業者が容易に想到し得ることとはいえない。

(3)まとめ
以上のとおり,本件発明1は,上記相違点1の点で,甲4に記載された発明,および,他の各甲号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということができないのであるから,相違点2,3を検討するまでもなく,本件発明1は,甲4に記載された発明,および,他の各甲号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということができない。

6 本件発明2?7の進歩性について

上記のとおり,甲1?4発明,および,他の各甲号証に記載された事項では,本件発明1の進歩性を否定することはできないため,本件発明1を引用する本件発明2?本件発明7の進歩性を否定することができないことは明らかである。

第9 むすび

以上のとおり,請求人の主張する理由および証拠によっては,本件発明1?7に係る特許は,無効とすることができない。また,本件発明1?7に係る特許を無効とすべき他の理由を発見しない。

審判に関する費用については,特許法169条2項において準用する民事訴訟法61条の規定により,審判費用は,請求人の負担すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
内燃機関のテストベンチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方では試験するべき内燃機関(2)と他方では前記内燃機関の出力側に対して少なくとも1つの回動連結している駆動機械若しくは負荷機械(4)とが配置されている基台(1)を有する内燃機関のテストベンチに関する。
【背景技術】
【0002】
上記形式のテストベンチは、駆動機械若しくは負荷機械の一定の回転数及び/又はトルク推移の設定値を介して、試験するべき内燃機関の出力に及ぼす運転環境の作用若しくは反作用の模擬試験を可能にする。これは、今日すでに非常に高動的に制御可能の、駆動機械若しくは負荷機械を介して、それにもかかわらず、この方法によりすでに先取して後の実際の使用条件における現実性に非常に近い模擬試験を可能にするので、それによって駆動される車両が駆動系の全構成要素を含み、まだ全く現実に存在していない場合でも、特に例えば内燃機関の開発経過において大きな長所となる。
【0003】
上記形式の公知のテストベンチの場合、例えばクランク軸と共に車両長手方向に組み込まれるべきであり、かつそれによって通常本質的にクランク軸の下方に車両長手方向に後方へ延びる排気装置を有する複数の直列に配設されたシリンダを備えた往復動内燃機関の試験のために、この試験が取り付けられた純正排気装置を用いて行われるべきであり、これが可能な限り現実に近い試験を可能にするためにさらに頻繁に所望される場合は、常に基台上に提供されるスペースによる問題が生じる。排気管ならびに場合によっては触媒コンバータ及び消音装置も、この場合、いつもはほぼ駆動機械若しくは負荷機械が基台上に通常配設される場所に該基台と相対的に置かれている。従って、従来公知の配列において、このようなテストベンチのために大抵は駆動機械若しくは負荷機械が、開いた支持台の下方に基台上に据え付けられるが、それによって発生する内燃機関駆動装置と、駆動機械若しくは負荷機械との間を橋渡しするギヤ、ベルト駆動装置等のオフセット配列が要求される。それと共に垂直に内燃機関の横に立つベベルギヤを介して連結された、駆動機械若しくは負荷機械による解決策も知られている。さらに、内燃機関と、駆動機械若しくは負荷機械との間の対応する長い連結軸(しばしば純正カルダン軸)の使用も知られている。これら全ての場合において、特に高動的運転における付加的な慣性質量、回転弾性、歯バックラッシュ及び類似の不利な影響ならびに付加的な管理費用及び組立費用によって、かつ特にギヤ方式の場合においてテストベンチに騒音レベルが増大する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、テストベンチが簡単な方法で取り付けられ且つ駆動軸の下方に該駆動軸の伸長部と平行して内燃機関から離れる純正排気装置を備えた内燃機関の試験にも使用することができ、しかも公知の解決策の上記欠点をもたないように、冒頭で述べた形式のテストベンチを構成することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、駆動機械若しくは負荷機械4が基台1に対して垂直方向に間隔5をあけて前記基台1上に配置された支持構造体6に懸架されて試験するべき内燃機関2の出力軸7と一列に並ぶ駆動軸8と共に据え付けられていることによって、前記駆動機械若しくは負荷機械4の下方に前記基台4にかけて残されている空間が、排気装置10を敷設するために開放されて確保されていることによって解決される。これによって、該機械の固定台若しくはその他の固定要素によって支持構造体で懸架する、駆動機械若しくは負荷機械が非常に簡単に内燃機関の出力軸の軸高に適合され、駆動機械若しくは負荷機械の外部輪郭(妨害輪郭)の下方で基台にかけて残っている空間が、開放されて確保されて排気装置のダクトに提供される。これによって中間ギヤ、シャフト伸長部等なしに駆動機械若しくは負荷機械の非常に回動剛性且つ遊びなしのカップリングを実現することができ、非常に高動的な試験がテストベンチ側の妨害若しくは影響なしに可能になる。中間ギヤの廃止は、コスト的に好適なテストベンチの構造も可能にし、且つ併せてテストベンチ領域での騒音レベルを低減することを支援する。
【0006】
本発明の特に好ましい実施形態において、駆動機械若しくは負荷機械として出力に関して小さく構成される永久磁石により作動する機械を据え付けており、これが駆動機械若しくは負荷機械の下方に提供されるスペースに関して別の長所をもたらす。
【0007】
さらに好ましい本発明の実施形態では、2台又は複数台の駆動機械若しくは負荷機械(4)が、直列に前後して懸架されて且つ回動連結して据え付けられている。この解決策は、2台又は複数台の、一緒になって要求される出力を提供する機械が、それにもかかわらず同形式の機械の妨害輪郭(軸から下方へ排気装置用に自由に保持される空間内の突出部)のみを有するので、特により大きいテストベンチ出力に対して非常に有利である。また、例えば連結ギヤ若しくは前置型ギヤによってしばしば要求される出力域若しくは回転数域をより容易に実現することができる。
【0008】
支持構造体は、本発明の別の好ましい実施形態では、支持構造体6が、基台1の基板をブリッジ状に把持し且つこの基板の両側でこの基板上に支持され且つ固定されている。これが、非常に安定性があり且つ試験運転で発生する振動に対して有利な構造を提供する。
【0009】
多数の適用のために、支持構造体を基台の片側だけで基板上に支持され且つ固定されている本発明の別の実施形態は、これによって駆動機械若しくは負荷機械、排気装置若しくはその他のこの領域に設けた補機類への改善された側方のアクセスが得られるので有利である。
【0010】
本発明の別の好ましい実施形態に従って、基台は準3次元の実施形態で(例えば安定したテストベンチコンテナとして)、さらにまた自体駆動機械若しくは負荷機械を少なくとも領域ごとに高さで把持することができ、この場合、支持構造体は上方から又は側方からこの3次元の基台に据え付けて駆動機械若しくは負荷機械を、例えば懸架するV字形の配列を利用し懸架して担持する。
【0011】
駆動機械若しくは負荷機械は、本発明の別の好ましい実施形態では、駆動機械若しくは負荷機械4が、振動減衰装置11を中間接続して支持構造体6に懸架されている。振動減衰装置を中間接続して該支持構造体に懸架することができる。これは、その他の点で対応する他の措置を介しても枠構造に干渉できる改善された振動技術的な係脱連結を可能にする。
【0012】
以下に、本発明をさらに図面に模式的に表した実施例を利用してより詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
上記全ての場合で示したテストベンチは、基台1として、一方で試験するべき内燃機関2(図1にのみ見える)と、この内燃機関の出力側に対して少なくとも1つの連結シャフト3(これも図1のみ)を介して回動連結した、駆動機械若しくは負荷機械4を配設した基板12を有する。例えば永久磁石として作動する機械として構成された、駆動機械若しくは負荷機械4は、基板12との垂直間隔5でこの基板上に配設された支持構造体6上に懸架して試験するべき内燃機関2の出力軸7と一列に並ぶ軸8と共に据え付けている。その結果、駆動機械若しくは負荷機械4の妨害輪郭9の下方に内燃機関2に取り付けた純正排気装置10に対して充分な空間が残る。
【0014】
図1?3に記載の実施形態において、1台の駆動機械若しくは負荷機械4のみを設けており、他方、図4に記載の通常より大きいテストベンチ出力用に設けた実施形態において、この種の2台の機械4を直列に前後して懸架し且つ回動連結して据え付けており、これが倍化されたテストベンチ出力にもかかわらず個々の駆動機械若しくは負荷機械4の場合と同じ妨害輪郭9の維持を可能にする。これを度外視しても、例えば2台の小さく構成される、駆動機械若しくは負荷機械4も懸架して並設し、且つ連結ギヤを介して回動連結することができる。この場合、該連結ギヤの出力軸は、試験するべき内燃機関の出力軸と一列に並ぶ。
【0015】
図2に記載の実施形態において、支持構造体6は基板12をブリッジ状に把持し、且つ両側でこの基板上に支持かつ固定されており、これが図4でも実現されているように、非常に安定した閉じた構造を可能にする。それに対して、図3に記載の実施形態において、支持構造体は片側のみ基板12上に支持かつ固定されており、これが図示左側からのアクセスを改善し、且つ対応する片側支持の実施形態の場合はそれにもかかわらず充分な剛性を提供する。独立にテストベンチ領域に少なくとも振動絶縁して設置した基板12を有するこの両方の変形例を度外視しても、基台1は、ここに図示しない方法で、しかしまた準3次元実施形態でも試験するべき内燃機関及び、駆動機械若しくは負荷機械をコンテナ状若しくはカゴ状に囲むことができる。この場合、支持構造体が、側方又は上方からこの基台に取り付けられ、且つ試験するべき内燃機関は直接通常のテストベンチパレットを利用して固定することができる。
【0016】
特に図2及び3から、駆動機械若しくは負荷機械4が振動減衰装置11を中間接続して支持構造体6に懸架する。これによって、振動が減衰されることも明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るテストベンチの模式側面図である。
【図2】駆動機械若しくは負荷機械用の支持構造体の種々の実施形態における図1の線A-Aに沿った断面図である。
【図3】駆動機械若しくは負荷機械用の支持構造体の種々の実施形態における図1の線A-Aに沿った断面図である。
【図4】本発明に係るテストベンチのもう1つの実施例の透視図である。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方では試験するべき内燃機関(2)と他方では前記内燃機関の出力側に対して少なくとも1つの回動連結している駆動機械若しくは負荷機械(4)とが配置されている基台(1)を有する内燃機関のテストベンチにおいて、
前記駆動機械若しくは負荷機械(4)は、前記基台(1)に対して垂直方向に間隔(5)をあけて前記基台(1)上に配置された支持構造体(6)に懸架されて前記試験するべき内燃機関(2)の出力軸(7)と一列に並ぶ駆動軸(8)と共に据え付けられていることによって、前記駆動機械若しくは負荷機械(4)の下方に前記基台(1)にかけて残されている空間が、排気装置(10)を敷設するために開放されて確保されていることを特徴とするテストベンチ。
【請求項2】
小出力に仕様されている永久磁石により動作する機械が、前記駆動機械若しくは負荷機械(4)として据え付けられていることを特徴とする請求項1に記載のテストベンチ。
【請求項3】
2台又は複数台の駆動機械若しくは負荷機械(4)が、直列に前後して懸架されて且つ回動連結して据え付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のテストベンチ。
【請求項4】
前記支持構造体(6)は、前記基台(1)の基板をブリッジ状に把持し且つこの基板の両側でこの基板上に支持され且つ固定されていることを特徴とする請求項1?3のいずれか1項に記載のテストベンチ。
【請求項5】
前記支持構造体(6)は、前記基台(1)の基板の片側上だけで支持され且つ固定されていることを特徴とする請求項1?3のいずれか1項に記載のテストベンチ。
【請求項6】
前記支持構造体(6)は、前記駆動機械若しくは負荷機械(4)を上方から若しくは側方から懸架して担持することを特徴とする請求項1?3のいずれか1項に記載のテストベンチ。
【請求項7】
前記駆動機械若しくは負荷機械(4)は、振動減衰装置(11)を中間接続して前記支持構造体(6)に懸架されていることを特徴とする請求項1?6のいずれか1項に記載のテストベンチ。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2014-06-20 
結審通知日 2014-06-24 
審決日 2014-07-09 
出願番号 特願2007-513591(P2007-513591)
審決分類 P 1 113・ 121- YA (G01M)
P 1 113・ 832- YA (G01M)
P 1 113・ 54- YA (G01M)
P 1 113・ 537- YA (G01M)
P 1 113・ 113- YA (G01M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福田 裕司  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 渡戸 正義
信田 昌男
登録日 2010-04-09 
登録番号 特許第4490481号(P4490481)
発明の名称 内燃機関のテストベンチ  
代理人 齊藤 真大  
代理人 江崎 光史  
代理人 肥田 正法  
代理人 篠原 淳司  
代理人 篠原 淳司  
代理人 清田 栄章  
代理人 西村 竜平  
代理人 鍛冶澤 實  
代理人 鍛冶澤 實  
代理人 清田 栄章  
代理人 江崎 光史  

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