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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1295300
審判番号 不服2013-7208  
総通号数 182 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-04-18 
確定日 2014-12-17 
事件の表示 特願2009-258349「アプリケーション管理システム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 3月18日出願公開、特開2010- 61683〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
特願2003-348514号が,平成15年10月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理,2003年1月2日,大韓民国)に出願され,該出願を原出願とする特許法第44条第1号の規定による新たな特許出願として,本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)が,平成21年11月11日に出願され,同日付けで審査請求がなされた。
そして,平成24年5月16日付けで拒絶理由通知(平成24年5月22日発送)がなされ,これに対して平成24年8月22日に意見書が提出されると共に同日付けで手続補正がなされたが,平成24年12月10日付けで拒絶査定(平成24年12月18日謄本送達)がなされた。
これに対して,「原査定を取り消す。本願は特許をすべきものである,との審決を求めます。」ことを請求の趣旨として平成25年4月18日付けで審判請求がなされると共に同日付けで手続補正がなされ,平成25年5月17日付けで審査官により特許法第164条第3項に定める報告がなされ,平成25年10月4日付けで当審により特許法第134条第4項の規定に基づく審尋(平成25年10月8日発送)がなされ,平成25年12月27日付けで回答書が提出された。


第2 平成25年4月18日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成25年4月18日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1 補正の内容

平成25年4月18日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)の内容は,平成24年8月22日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項12の記載
「 【請求項1】
多数の被制御機器と,前記被制御機器を制御するアプリケーションサーバとで構成されたホームネットワークのアプリケーション管理システムにおいて,
前記アプリケーションサーバは,ホームネットワークミドルウェアを支援するフレームワークを介して前記被制御機器のためのアプリケーションのインストール,削除,アップデートを行い,
前記被制御機器は,インストールするアプリケーションファイルの位置情報を格納し,前記アプリケーションファイルは,インターネット上のファイルサーバに格納されており,
前記アプリケーションサーバは,前記ホームネットワークへの前記被制御機器の連結を感知し,前記感知された被制御機器からアプリケーションファイルの位置情報を取得し,複数のホームネットワークミドルウェアを支援するフレームワークを通して,前記取得された位置情報に基づいて前記ファイルサーバからアプリケーションファイルをダウンロードしインストールし,
前記アプリケーションサーバおよび前記被制御機器は,それぞれホームネットワークミドルウェアモジュールを備え,
前記アプリケーションサーバは,前記ホームネットワークミドルウェアモジュールを介して前記被制御機器が前記ホームネットワークに連結されたことを感知し,
前記ホームネットワークミドルウェアモジュールは,前記フレームワークに備えられることを特徴とするアプリケーション管理システム。
【請求項2】
前記ホームネットワークミドルウェアは,HAVi,UPnP,Jini,HWWの何れかに準拠することを特徴とする請求項1に記載のアプリケーション管理システム。
【請求項3】
前記フレームワークは,OSGiに準拠することを特徴とする請求項1に記載のアプリケーション管理システム。
【請求項4】
前記被制御機器は,前記アプリケーションサーバと通信を行うためのホームネットワークミドルウェアモジュールを備えることを特徴とする請求項1に記載のアプリケーション管理システム。
【請求項5】
前記アプリケーションサーバは,前記被制御機器と通信を行い,該被制御機器からアプリケーションファイルの位置情報を取得するホームネットワークミドルウェアモジュールと,
前記取得されたアプリケーションファイルの位置情報に基づいて前記ファイルサーバからアプリケーションファイルをダウンロードするアプリケーションローダーモジュールと,
前記ホームネットワークミドルウェアモジュール及びアプリケーションローダーモジュールの動作を制御するアプリケーション管理モジュールとを備えることを特徴とする請求項1に記載のアプリケーション管理システム。
【請求項6】
前記ホームネットワークミドルウェアモジュール及びアプリケーションローダーモジュールは,前記フレームワークに備えられることを特徴とする請求項5に記載のアプリケーション管理システム。
【請求項7】
多数の被制御機器と,前記被制御機器を制御するアプリケーションサーバとで構成されたホームネットワークのアプリケーション管理システムを用いてアプリケーションを管理するための方法において,
ホームネットワークミドルウェアを支援するフレームワークの搭載されたアプリケーションサーバが被制御機器の連結を感知するステップと,
前記アプリケーションサーバが被制御機器の制御に必要なアプリケーションをインストールするステップとを含み,
前記アプリケーションのインストールステップは,
アプリケーションサーバが被制御機器の制御に必要なアプリケーションファイルの位置情報を取得するステップと,
アプリケーションサーバが,複数のホームネットワークミドルウェアを支援するフレームワークを通して,前記取得された位置情報に基づいてファイルサーバから該当のアプリケーションファイルをダウンロードするステップと,
アプリケーションサーバが前記ダウンロードされたアプリケーションファイルを実行し,アプリケーションをインストールするステップとを含み,
前記フレームワークは,ホームネットワークミドルウェアモジュールを備え,
前記アプリケーションサーバおよび前記被制御機器は,それぞれホームネットワークミドルウェアモジュールを備え,
前記感知するステップは,前記ホームネットワークミドルウェアモジュールを介して行われることを特徴とするアプリケーション管理方法。
【請求項8】
前記ホームネットワークミドルウェアは,HAVi,UPnP,Jini,HWWの何れかに準拠することを特徴とする請求項7に記載のアプリケーション管理方法。
【請求項9】
前記フレームワークは,OSGiに準拠することを特徴とする請求項7に記載のアプリケーション管理方法。
【請求項10】
前記フレームワークは,インターネットアクセスサービスを提供することを特徴とする請求項7に記載のアプリケーション管理方法。
【請求項11】
前記被制御機器は,アプリケーションファイルの位置情報を格納し,前記アプリケーションファイルは,インターネット上のファイルサーバに格納されていることを特徴とする請求項7に記載のアプリケーション管理方法。
【請求項12】
前記アプリケーションサーバが,前記アプリケーションサーバにインストールされたアプリケーションの実行,停止,削除,及びアップデートを行うアプリケーション管理ステップを更に含むことを特徴とする請求項7に記載のアプリケーション管理方法。」
(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前の請求項」という。)


「 【請求項1】
多数の被制御機器と,前記被制御機器を制御するアプリケーションサーバとで構成されたホームネットワークのアプリケーション管理システムにおいて,
前記アプリケーションサーバは,ホームネットワークミドルウェアを支援するフレームワークを介して前記被制御機器のためのアプリケーションのインストール,削除,アップデートを行い,
前記被制御機器は,インストールするアプリケーションファイルの位置情報を格納し,前記アプリケーションファイルは,インターネット上のファイルサーバに格納されており,
前記アプリケーションサーバは,前記ホームネットワークへの前記被制御機器の連結を感知し,前記感知された被制御機器からアプリケーションファイルの位置情報を取得し,複数のホームネットワークミドルウェアを支援するフレームワークを通して,前記取得された位置情報に基づいて前記ファイルサーバからアプリケーションファイルをダウンロードしインストールし,
前記フレームワークは,OSGiに準拠するとともに,種々のデバイスをアクセスするためのミドルウェアサービスがバンドル機能として提供され,
前記アプリケーションサーバおよび前記被制御機器は,それぞれホームネットワークミドルウェアモジュールを備え,
前記アプリケーションサーバは,前記ホームネットワークミドルウェアモジュールを介して前記被制御機器が前記ホームネットワークに連結されたことを感知し,
前記ホームネットワークミドルウェアモジュールは,前記フレームワークにバンドル形式で備えられることを特徴とするアプリケーション管理システム。
【請求項2】
前記ホームネットワークミドルウェアは,HAVi,UPnP,Jini,HWWの何れかに準拠することを特徴とする請求項1に記載のアプリケーション管理システム。
【請求項3】
前記被制御機器は,前記アプリケーションサーバと通信を行うためのホームネットワークミドルウェアモジュールを備えることを特徴とする請求項1に記載のアプリケーション管理システム。
【請求項4】
前記アプリケーションサーバは,前記被制御機器と通信を行い,該被制御機器からアプリケーションファイルの位置情報を取得するホームネットワークミドルウェアモジュールと,
前記取得されたアプリケーションファイルの位置情報に基づいて前記ファイルサーバからアプリケーションファイルをダウンロードするアプリケーションローダーモジュールと,
前記ホームネットワークミドルウェアモジュール及びアプリケーションローダーモジュールの動作を制御するアプリケーション管理モジュールとを備えることを特徴とする請求項1に記載のアプリケーション管理システム。
【請求項5】
前記ホームネットワークミドルウェアモジュール及びアプリケーションローダーモジュールは,前記フレームワークに備えられることを特徴とする請求項4に記載のアプリケーション管理システム。
【請求項6】
多数の被制御機器と,前記被制御機器を制御するアプリケーションサーバとで構成されたホームネットワークのアプリケーション管理システムを用いてアプリケーションを管理するための方法において,
ホームネットワークミドルウェアを支援するフレームワークの搭載されたアプリケーションサーバが被制御機器の連結を感知するステップと,
前記アプリケーションサーバが被制御機器の制御に必要なアプリケーションをインストールするステップとを含み,
前記アプリケーションのインストールステップは,
アプリケーションサーバが被制御機器の制御に必要なアプリケーションファイルの位置情報を取得するステップと,
アプリケーションサーバが,複数のホームネットワークミドルウェアを支援するフレームワークを通して,前記取得された位置情報に基づいてファイルサーバから該当のアプリケーションファイルをダウンロードするステップと,
アプリケーションサーバが前記ダウンロードされたアプリケーションファイルを実行し,アプリケーションをインストールするステップとを含み,
前記フレームワークは,OSGiに準拠するとともに,種々のデバイスをアクセスするためのミドルウェアサービスがバンドル機能として提供され,
前記フレームワークは,ホームネットワークミドルウェアモジュールを備え,
前記アプリケーションサーバおよび前記被制御機器は,それぞれホームネットワークミドルウェアモジュールを備え,
前記感知するステップは,前記フレームワークにバンドル形式で備えられた前記ホームネットワークミドルウェアモジュールを介して行われることを特徴とするアプリケーション管理方法。
【請求項7】
前記ホームネットワークミドルウェアは,HAVi,UPnP,Jini,HWWの何れかに準拠することを特徴とする請求項6に記載のアプリケーション管理方法。
【請求項8】
前記フレームワークは,インターネットアクセスサービスを提供することを特徴とする請求項6に記載のアプリケーション管理方法。
【請求項9】
前記被制御機器は,アプリケーションファイルの位置情報を格納し,前記アプリケーションファイルは,インターネット上のファイルサーバに格納されていることを特徴とする請求項6に記載のアプリケーション管理方法。
【請求項10】
前記アプリケーションサーバが,前記アプリケーションサーバにインストールされたアプリケーションの実行,停止,削除,及びアップデートを行うアプリケーション管理ステップを更に含むことを特徴とする請求項6に記載のアプリケーション管理方法。」
(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後の請求項」という。)
に補正するものである。


2 目的要件
(1) 本件補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされており,特許法第17条の2第3項の規定に適合している。
そして,本件補正は,本件審判の請求と同時にする補正であり,上記「1 補正の内容」のとおり,特許請求の範囲についてする補正であるので,本件補正の目的を検討する。

(2) 補正前の請求項1及び7に記載された「フレームワーク」について,補正後の請求項1及び6において「前記フレームワークは,OSGiに準拠するとともに,種々のデバイスをアクセスするためのミドルウェアサービスがバンドル機能として提供され」と補正することは,補正前の「フレームワーク」を,「OSGiに準拠するとともに,種々のデバイスをアクセスするためのミドルウェアサービスがバンドル機能として提供され」たものに限定するものであって,産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものではない。
さらに,補正前の請求項1における「前記ホームネットワークミドルウェアモジュールは,前記フレームワークに備えられる」との記載を,補正後の請求項1における「前記ホームネットワークミドルウェアモジュールは,前記フレームワークにバンドル形式で備えられる」との記載に補正することと,補正前の請求項7における「前記感知するステップは,前記ホームネットワークミドルウェアモジュールを介して行われる」との記載を,補正後の請求項6における「前記感知するステップは,前記フレームワークにバンドル形式で備えられた前記ホームネットワークミドルウェアモジュールを介して行われる」との記載に補正することは,いずれも,「ホームネットワークミドルウェアモジュール」が「前記フレームワークにバンドル形式で備え」られるとして,補正前の「ホームネットワークミドルウェアモジュール」を更に限定するものであって,産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものではない。
してみると,本件補正は,特許請求の範囲の減縮(特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)に該当する


3 独立特許要件
本件補正は,上記「2 目的要件」において示したように特許請求の範囲の減縮に該当するから,本件補正後の各請求項に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。

(1) 特許法第36条第6項第1号(記載要件)について
ア 請求項1?5について
(ア) 上記補正後の請求項1には,「前記アプリケーションサーバは,ホームネットワークミドルウェアを支援するフレームワークを介して前記被制御機器のためのアプリケーションのインストール,削除,アップデートを行い」と記載されている。
そして,補正後の請求項1に係る発明は,前記「アプリケーションのインストール」に関しては,「アプリケーションサーバ」が「前記ホームネットワークへの前記被制御機器の連結を感知し,前記感知された被制御機器からアプリケーションファイルの位置情報を取得し…(中略)…前記取得された位置情報に基づいて前記ファイルサーバからアプリケーションファイルをダウンロードしインストール」するという構成,すなわち,「アプリケーションサーバ」が主体となってアプリケーションのインストールを行う構成を有する一方,「被制御機器」が主体となってアプリケーションのインストールを行う構成は,有していない。してみれば,補正後の請求項1は,本願明細書に記載された「制御機器のアプリケーションサーバが主体となってアプリケーションのインストール及び管理を行うアプリケーションサーバプール(Pull)方式」について特許請求したものといえる。

(イ) これに対して,本願明細書の発明の詳細な説明には,段落【0017】?【0029】及び段落【0038】?【0043】に前記「アプリケーションサーバプール(Pull)方式」について具体的な説明がなされているが,前記各段落にはアプリケーションの削除及びアップデートを行うことは記載されていない。
なお,段落【0034】及び【0052】には,アプリケーションの削除及びアップデートを行うことが記載されているが,各段落は,「被制御機器が主体となってアプリケーションのインストール及び管理を行う被制御機器プッシュ(Push)方式」について説明したものである。
してみれば,本願明細書の発明の詳細な説明には,「制御機器のアプリケーションサーバが主体となってアプリケーションのインストール及び管理を行うアプリケーションサーバプール(Pull)方式」についての発明において,「アプリケーションの…(中略)…削除,アップデートを行」うことは,記載されていない。
よって,補正後の請求項1及び同項を引用する請求項2?5に係る発明は,発明の詳細な説明に記載したものでない。

イ 請求項10について
(ア) 上記補正後の請求項10には,「前記アプリケーションサーバが,前記アプリケーションサーバにインストールされたアプリケーションの実行,停止,削除,及びアップデートを行う」と記載されている。
そして,補正後の請求項10に係る発明は,前記「アプリケーションのインストール」に関しては,「アプリケーションサーバが被制御機器の制御に必要なアプリケーションファイルの位置情報を取得するステップ」と,「アプリケーションサーバが,複数のホームネットワークミドルウェアを支援するフレームワークを通して,前記取得された位置情報に基づいてファイルサーバから該当のアプリケーションファイルをダウンロードするステップ」と,「アプリケーションサーバが前記ダウンロードされたアプリケーションファイルを実行し,アプリケーションをインストールするステップ」を含む構成,すなわち,「アプリケーションサーバ」が主体となってアプリケーションのインストールを行う構成を有する一方,「被制御機器」が主体となってアプリケーションのインストールを行う構成は,有していない。してみれば,補正後の請求項10は,本願明細書に記載された「制御機器のアプリケーションサーバが主体となってアプリケーションのインストール及び管理を行うアプリケーションサーバプール(Pull)方式」について特許請求したものといえる。

(イ) したがって,上記「ア 請求項1?5について」の(イ)に示したのと同様の理由によって,補正後の請求項10に係る発明は,発明の詳細な説明に記載したものでない。


(2) 特許法第29条第2項(進歩性)について
ア 本件補正発明
本願の請求項6に係る発明(以下,「本件補正発明」という。)は,補正後の請求項6に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。
「多数の被制御機器と,前記被制御機器を制御するアプリケーションサーバとで構成されたホームネットワークのアプリケーション管理システムを用いてアプリケーションを管理するための方法において,
ホームネットワークミドルウェアを支援するフレームワークの搭載されたアプリケーションサーバが被制御機器の連結を感知するステップと,
前記アプリケーションサーバが被制御機器の制御に必要なアプリケーションをインストールするステップとを含み,
前記アプリケーションのインストールステップは,
アプリケーションサーバが被制御機器の制御に必要なアプリケーションファイルの位置情報を取得するステップと,
アプリケーションサーバが,複数のホームネットワークミドルウェアを支援するフレームワークを通して,前記取得された位置情報に基づいてファイルサーバから該当のアプリケーションファイルをダウンロードするステップと,
アプリケーションサーバが前記ダウンロードされたアプリケーションファイルを実行し,アプリケーションをインストールするステップとを含み,
前記フレームワークは,OSGiに準拠するとともに,種々のデバイスをアクセスするためのミドルウェアサービスがバンドル機能として提供され,
前記フレームワークは,ホームネットワークミドルウェアモジュールを備え,
前記アプリケーションサーバおよび前記被制御機器は,それぞれホームネットワークミドルウェアモジュールを備え,
前記感知するステップは,前記フレームワークにバンドル形式で備えられた前記ホームネットワークミドルウェアモジュールを介して行われることを特徴とするアプリケーション管理方法。」

イ 先行技術文献
(ア) 引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された,本願の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である,特開2001-053779号公報(平成13年2月23日公開。以下,「引用文献1」という。)には,関連する図とともに,次の記載がある。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。また,段落【0064】において,丸付き数字が使用されているが,「○数字」に置き換えることとした。)

<引用文献記載事項1-1>
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,宅内のネットワーク(以下,ホームネットワークという)に接続された電子機器(以下,ホームネットワーク機器という)に対して,インターネット等の広域ネットワーク上にあるコンピュータ端末から,状態監視や操作指示を可能にする,ホームネットワークゲートウェイ装置(以下,ゲートウェイ装置という)およびホームネットワーク機器に関する。」

<引用文献記載事項1-2>
「【0016】また,本発明のホームネットワークゲートウェイ装置の第4の態様では,ホームネットワークに機器が接続されると,その機器から出力される,識別情報およびダウンロード用サーバーのアドレス情報を吸い上げると共に,前記アドレス情報に基づいてダウンロード用サーバーにアクセスして,前記機器に関する画面作成用情報および機器操作情報をダウンロードして蓄積すると共に,前記ホームネットワークに接続されている全機器の情報を一覧表メニューの形で,内蔵するWWWサーバー上に掲載するようにした。
【0017】機器情報をダウンロード用サーバーからダウンロードする方式を採用することにより,機器の設置後であっても,その機器の制御プログラムを必要に応じて変更できるようになるというメリットがある。」

<引用文献記載事項1-3>
「【0028】図1において,ホームネットワークに接続される電子機器は,コンピュータ端末(WWWブラウザ22を内蔵する)20と,ビデオカメラ24と,ランプ(電灯)34である。ビデオカメラを例にとると,その内部に,IEEE1394コントローラ26と,機器制御部28と,画面形成用のHTML記述と機器制御のためのCGIスクリプトを格納している機器情報テーブル30と,機器制御部28によって動作が制御されるハードウエア32と,が設けられている。」

<引用文献記載事項1-4>
「【0034】また,図1の広域ネットワーク上にあるダウンロード用サーバー42は,ホームネットワーク機器を制御するための操作情報を少なくとも蓄積しているサーバーである。
【0035】このダウンロードサーバー42を使用する場合には,各ホームネットワーク機器の機器情報テーブル30内には,ダウンロード用サーバーのインターネット上のアドレス(URL)(さらに,必要に応じて,そのサーバーにおける機器情報が存在する領域を示す番地情報)を記憶させておくだけでよい。
【0036】すなわち,この場合には,機器がホームネットワークに接続されると,各機器は番地情報を送出し,ゲートウェイ装置12がこれを吸い上げ,ダウンロード用サーバーの所定番地にアクセスして,必要な情報をダウンロードする。
【0037】図2は,ホームネットワークゲートウエイ装置とホームネットワーク機器(以下,ホーム機器という)の,より具体的な機能と接続関係を説明するための図である。」

<引用文献記載事項1-5>
「【0046】ゲートウェイ装置12においては,CPU50が装置全体の制御を行う。すなわち,CPU50が図1の制御部18に相当する。また,CPU50に対して,ROM54,RAM52,IEEE1394コントローラ58,WAN制御部56,補助記憶装置57が内部バス59を介して接続されている。
…(中略)…
【0052】IEEE1394コントローラ58は,ホーム機器がIEEEバスに接続されてバスリセットが出力されると,これを検知する。この検知は,その後に実行される,ノードIDを読み,新たに接続されたホーム機器から出力される機器情報を吸い上げ,補助記憶装置57に所定の形式で蓄積する,といったプラグアンドプレイのきっかけ(契機)となる。図示されるように,IEEE1394コントローラ58は,1394LINK(参照符号61)と,1394PHY(参照符号63)とを具備する。1394LINKと1394PHYは,それぞれ,通信プロトコルのLINK層と物理層の通信制御を行なうものであり,一般のIEEE1394規格で定められているものと同じ機能を有している。IEEE1394コントローラ58は,機器の挿入,挿抜があったときに発生する割り込みを検出し,また,このとき,機器のノードID等を把握し,その機器に対して機器情報の取り出し要求を発行し,機器情報テーブル内に蓄積されている機器情報を読み出す動作を行なう。」

<引用文献記載事項1-6>
「【0063】このようにして,各機器のノードIDとユニークIDとの対応関係を示すマッピングテーブル60,機器毎の画面形成用の情報であるHTML記述64,および機器の操作・制御のための情報であるCGIスクリプト66がゲートウェイ装置12に蓄積され,これによって,外部のネットワークからのアクセスを待つ状態となる。
【0064】なお,ダウンロード用サーバー42から各機器の情報をダウンロードする場合(図3中の白抜きの矢印○2のルートを使用する場合)には,各機器の機器情報テーブル79には,ダウンロード用サーバーのURL(必要に応じて,そのサーバーにおける,機器情報が存在する領域を示す番地情報)を格納しておく。機器がホームネットワークに接続されると,その機器からURL情報(さらに,番地情報)を吸い上げ,ダウンロード用サーバー42内の機器情報テーブル44にアクセスし,その機器についての,HTML情報とCGIスクリプトを含む情報をダウンロードする。機器情報をダウンロード用サーバーからダウンロードする方式を採用することにより,機器の設置後であってもその機器の制御プログラムを必要に応じて変更できるようになる。」

<引用文献記載事項1-7>
「【0079】このように,ホーム機器用の制御プログラムは,HTML記述や,Perlのようなインタプリタ言語で記述されたCGIスクリプトで書かれているので,ゲートウェイ装置におけるCPUやOS(Operating System)を選ばないという利点がある。
【0080】また,ホームネットワーク機器のハードウエア制御は,IEEE1394アドレスのレジスタ空間の特定アドレスへのリード/ライトで行うように設計されるので,ゲートウェイ装置で動作するCGIスクリプトによって容易に実現することができる。」

<引用文献記載事項1-8>
「【0105】なお,以上の説明では,ホームネットワークの構築にIEEE1394バスを使用しているが,これに限定されるものではなく,プラグアンドプレイをサポートしているインタフェース機能を有するネットワーク(システム)であるならば,どのようなものでも使用可能である。」


(イ) 引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用された,本願の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である,「山口智久,“レジデンシャルゲートウェイサーバTSUBASAの概要と評価”,情報処理学会研究報告,社団法人情報処理学会,平成13年3月22日,第2001巻,第29号,p.55-60」(以下,「引用文献2」という。)には,関連する図とともに,次の記載がある。

<引用文献記載事項2-1>
「レジデンシャルゲートウェイは,各家庭に設置され,ホームネットワークとWAN(インターネット・公衆網等)との間の高機能なインタフェースを実現する装置であると定義できる。」(第56ページ左欄第2行?第5行)

<引用文献記載事項2-2>
「ホームネットワークとしては,電力線ネットワークやBluetoothなど種々のものがあるため,これらに対応可能でなければならない。」(第57ページ左欄第2行?第5行)

<引用文献記載事項2-3>
「TSUBASAは,Javaで記述された組み込み用のサーバソフトウェアで,以下の特長をもっており,前述のレジデンシャルゲートウェイの基盤ソフトウェアの要件を満たしている。
・コンパクト:オブジェクトサイズ約100KBというコンパクトなサイズであり,コスト面からROM容量の限られているデバイスヘの組み込みに適している。
・標準への準拠:組み込み用サーバの業界標準であるOSGi(Open Services Gateway Initiative)の仕様に準拠しており,TSUBASA上で実行されるアプリケーションを容易に開発できる。また,Javaで記述されているため,JavaVMが搭載されているプラットフォームであれば容易に移植できる。
・モジュール構造:OSGi仕様に準拠したモジュール構造により,遠隔からの機能の追加・更新がモジュール単位で可能である。また,ネットワーク対応モジュール(例えばBluetoothモジュール)や,セキュリティ機能を実現するモジュール(SSL等)を追加することにより,これらの機能を実現することも可能である。」(第57ページ左欄第10行?第31行)

<引用文献記載事項2-4>
「TSUBASAは,フレームワークとコアサービスから構成される。フレームワークは,アプリケーション(OSGi仕様ではサービスと呼ぶ)のインストールや更新などの管理を行う。」(第57ページ右欄第3行?第6行)

<引用文献記載事項2-5>
「フレームワークでは,主としてバンドルとサービスの管理を行う。バンドルはサービスを実現するための任意のプログラムやコンテンツをjarファイルにまとめたもので(図4),これをフレームワークにインストールし,開始させることによりサービスを利用できるようになる。」(第57ページ右欄第12行?第58ページ左欄第2行)


(ウ) 参考文献1
原査定の拒絶の理由で引用された,本願の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である,「杉井鏡生,“利用者の声の反映が不可欠なホームネットワーク開発”,Computopia,株式会社コンピュータ・エージ社,平成13年9月1日,第36巻,第420号,p.122-123」(以下,「参考文献1」という。)には,関連する図とともに,次の記載がある。

<参考文献記載事項1-1>
「例えば,AV機器やパソコンの連携を目的とするHAViは,ネットワーク技術として高速なIEEE1394の利用を前提とする。これに対して,白物家電や照明器具などの制御を目的とするECHONETでは,高速なネットワーク技術を必要としないため,低速ではあるがコストの安い電灯線などのネットワーク技術を採用している。規格をひとつに絞ることがホームネットワークの普及につながるとは限らないのである。
むしろ,それぞれの規格を無理やり統一するのではなく,それぞれの用途に合わせたミドルウェアやネットワーク技術を生かして,それらを相互運用可能にする仕組みをつくるほうが望ましいという考えもある。いろいろなホームネットワークを束ねて外部のネットワークとの相互運用を可能にするゲートウェイサーバの標準化を目指すOSGi(Open Service Gateway Initiative)による国際的な活動も1999年から進められている。ネットワークは,つながってこそ価値があることを考えれば,ホームネットワークにとっても,相互運用性の確保は重要な課題である。」(第122ページ右欄第11行?第123ページ左欄第10行)


引用発明の認定
(ア) 引用文献1には,次の技術的事項が記載されている。
a 上記<引用文献記載事項1-1>には,「宅内のネットワーク(以下,ホームネットワークという)に接続された電子機器(以下,ホームネットワーク機器という)に対して,インターネット等の広域ネットワーク上にあるコンピュータ端末から,状態監視や操作指示を可能にする,ホームネットワークゲートウェイ装置(以下,ゲートウェイ装置という)およびホームネットワーク機器」と記載されている。また,上記<引用文献記載事項1-2>には,「ホームネットワークに機器が接続されると,…(中略)…前記機器に関する画面作成用情報および機器操作情報をダウンロードして蓄積する…(中略)…機器の設置後であっても,その機器の制御プログラムを必要に応じて変更できる」と記載されているから,ホームネットワークに接続された機器の「制御プログラム」を変更することが記載されているといえる。してみれば,引用文献1には「ホームネットワーク機器と,ホームネットワーク機器の状態監視や操作指示を可能にするゲートウェイ装置とを有するホームネットワークにおける,ホームネットワーク機器の制御プログラムの変更方法」が記載されているといえる。

b 上記<引用文献記載事項1-4>には,「ホームネットワーク機器(以下,ホーム機器という)」と記載され,上記<引用文献記載事項1-5>には,「ゲートウェイ装置12においては,…(中略)…CPU50に対して,ROM54,RAM52,IEEE1394コントローラ58,…(中略)…が内部バス59を介して接続されている」及び「IEEE1394コントローラ58は,ホーム機器がIEEEバスに接続されてバスリセットが出力されると,これを検知する」と記載されているから,引用文献1には「ゲートウェイ装置は,ホームネットワーク機器が接続されると,これを検知する」ことが記載されているといえる。

c 上記<引用文献記載事項1-6>には,「ダウンロード用サーバー42から各機器の情報をダウンロードする場合…(中略)…には,各機器の機器情報テーブル79には,ダウンロード用サーバーのURL(必要に応じて,そのサーバーにおける,機器情報が存在する領域を示す番地情報)を格納しておく。機器がホームネットワークに接続されると,その機器からURL情報(さらに,番地情報)を吸い上げ」と記載されているから,引用文献1には,「ゲートウェイ装置が,各機器情報が存在する領域を示す番地情報を吸い上げる」ことが記載されているといえる。

d 上記<引用文献記載事項1-6>には,「その機器からURL情報(さらに,番地情報)を吸い上げ,ダウンロード用サーバー42内の機器情報テーブル44にアクセスし,その機器についての,HTML情報とCGIスクリプトを含む情報をダウンロードする。機器情報をダウンロード用サーバーからダウンロードする方式を採用することにより,機器の設置後であってもその機器の制御プログラムを必要に応じて変更できるようになる。」と記載されると共に,「機器の操作・制御のための情報であるCGIスクリプト」と記載されていることから,引用文献1には,「ゲートウェイ装置が,吸い上げた番地情報に基づいてダウンロード用サーバーから,機器の操作・制御のための情報であるCGIスクリプトを含む機器情報をダウンロードする」ことと,「ゲートウェイ装置が,機器の制御プログラムを変更する」ことが記載されているといえる。

(イ) これらのことから,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「ホームネットワーク機器と,ホームネットワーク機器の状態監視や操作指示を可能にするゲートウェイ装置とを有するホームネットワークにおける,ホームネットワーク機器の制御プログラムの変更方法において,
ゲートウェイ装置は,ホームネットワーク機器が接続されると,これを検知することと,
ゲートウェイ装置が,各機器情報が存在する領域を示す番地情報を吸い上げること,
ゲートウェイ装置が,吸い上げた番地情報に基づいてダウンロード用サーバーから,機器の操作・制御のための情報であるCGIスクリプトを含む機器情報をダウンロードすることと,
ゲートウェイ装置が,機器の制御プログラムを変更することを含む,方法。」


エ 対比
(ア) 本件補正発明と引用発明を対比する。
a 引用発明の「ゲートウェイ装置」と「ホームネットワーク機器」の関係は,「ゲートウェイ装置」が「ホームネットワーク機器の状態監視や操作指示」を行う関係であって,「状態監視や操作指示」を行うことが「制御する」ことを意味するのは自明である。よって,引用発明の「ホームネットワーク機器の状態監視や操作指示を可能にするゲートウェイ装置」と「ホームネットワーク機器」は,本件補正発明の「前記被制御機器を制御するアプリケーションサーバ」と「被制御機器」に対応する。
また,<引用文献記載事項1-7>に「ホーム機器用の制御プログラムは,…(中略)…インタプリタ言語で記述されたCGIスクリプトで書かれている…(中略)…また,ホームネットワーク機器のハードウエア制御は,…(中略)…ゲートウェイ装置で動作するCGIスクリプトによって容易に実現することができる」と記載されていることから,引用発明の「ホームネットワーク機器の制御プログラム」は,「機器の操作・制御のための情報であるCGIスクリプトを含む機器情報」であるといえる。そして,本件補正発明の「アプリケーション」は,「被制御機器の制御に必要な」ものであるから,引用発明の「ホームネットワーク機器の制御プログラム」は本件補正発明の「アプリケーション」に相当する。
なお,上記<引用文献記載事項1-3>には,少なくとも複数の被制御機器がホームネットワークに接続されることが記載されているし,そもそも,ホームネットワークに,被制御機器が多数接続されることは,技術常識にすぎない。さらに,制御プログラムの「変更」が,制御プログラムの「管理」の態様の1つであることは当業者にとって自明である。
さらに,引用発明においては,「ホームネットワーク」が有している,「ホームネットワーク機器」と「ホームネットワーク機器の状態監視や操作指示を可能にするゲートウェイ装置」とを用いて,「ホームネットワーク機器の制御プログラムの変更方法」が実施されるのであるから,当該「ホームネットワーク」は,「制御プログラムの変更」を行うために用いられる,「ホームネットワーク機器」と「ゲートウェイ装置」を含む「システム」を有しているといえる。
したがって,引用発明の「ホームネットワーク機器と,ホームネットワーク機器の状態監視や操作指示を可能にするゲートウェイ装置とを有するホームネットワークにおける,ホームネットワーク機器の制御プログラムの変更方法」は,本件補正発明の「多数の被制御機器と,前記被制御機器を制御するアプリケーションサーバとで構成されたホームネットワークのアプリケーション管理システムを用いてアプリケーションを管理するための方法」に相当する。

b 上記aで示したように,引用発明の「ゲートウェイ装置」と「ホームネットワーク機器」は,本件補正発明の「アプリケーションサーバ」と「被制御機器」に対応するから,引用発明の「ゲートウェイ装置は,ホームネットワーク機器が接続されると,これを検知すること」と,本件補正発明の「ホームネットワークミドルウェアを支援するフレームワークの搭載されたアプリケーションサーバが被制御機器の連結を感知するステップ」は,「アプリケーションサーバが被制御機器の連結を感知する」ことを含む点で共通する。

c 上記aで示したように,引用発明の「ホームネットワーク機器の制御プログラム」は,「機器の操作・制御のための情報であるCGIスクリプトを含む機器情報」といえるものであって,かつ,本件補正発明の「アプリケーション」に相当するのであるから,引用発明の「各機器情報が存在する領域を示す番地情報」は,本件補正発明の「被制御機器の制御に必要なアプリケーションファイルの位置情報」に相当する。してみれば,引用発明の「ゲートウェイ装置が,各機器情報が存在する領域を示す番地情報を吸い上げること」は,本件補正発明の「アプリケーションサーバが被制御機器の制御に必要なアプリケーションファイルの位置情報を取得するステップ」に相当する。

d 引用発明の「ダウンロード用サーバー」は,本件補正発明の「ファイルサーバ」に相当する。してみれば,引用発明の「ゲートウェイ装置が,吸い上げた番地情報に基づいてダウンロード用サーバーから,機器の操作・制御のための情報であるCGIスクリプトを含む機器情報をダウンロードすること」と,本件補正発明の「アプリケーションサーバが,複数のホームネットワークミドルウェアを支援するフレームワークを通して,前記取得された位置情報に基づいてファイルサーバから該当のアプリケーションファイルをダウンロードするステップ」は,「アプリケーションサーバが,前記取得された位置情報に基づいてファイルサーバから該当のアプリケーションファイルをダウンロードする」ことを含む点で共通する。

e 「インストール」とは,アプリケーションなどをコンピューターで使えるようにするために,記録し設定することを意味し,プログラムファイルなどをハードディスクなどに適切な状態でコピーし,関連ファイルを書き換えるなどの一連の作業を指す,一般的な技術用語である。してみれば,引用発明において,ゲートウェイ装置が,ダウンロード用サーバーから機器の操作・制御のための情報であるCGIスクリプトを含む機器情報をダウンロードして,機器の制御プログラムを変更することは,制御プログラムを「インストール」することであるといえる。
したがって,引用発明の「ゲートウェイ装置が,機器の制御プログラムを変更すること」は,本件補正発明の「アプリケーションサーバが前記ダウンロードされたアプリケーションファイルを実行し,アプリケーションをインストールするステップ」に相当する。

f 引用発明の「ゲートウェイ装置が,各機器情報が存在する領域を示す番地情報を吸い上げる」,「ゲートウェイ装置が,吸い上げた番地情報に基づいてダウンロード用サーバーから,機器の操作・制御のための情報であるCGIスクリプトを含む機器情報をダウンロードする」,及び「ゲートウェイ装置が,機器の制御プログラムを変更する」との一連の動作は,本件補正発明の「前記アプリケーションサーバが被制御機器の制御に必要なアプリケーションをインストールするステップ」に対応するといえる。

(イ) 以上のことから,本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は次のとおりである。

[一致点]
「多数の被制御機器と,前記被制御機器を制御するアプリケーションサーバとで構成されたホームネットワークのアプリケーション管理システムを用いてアプリケーションを管理するための方法において,
アプリケーションサーバが被制御機器の連結を感知するステップと,
前記アプリケーションサーバが被制御機器の制御に必要なアプリケーションをインストールするステップとを含み,
前記アプリケーションのインストールステップは,
アプリケーションサーバが被制御機器の制御に必要なアプリケーションファイルの位置情報を取得するステップと,
アプリケーションサーバが,前記取得された位置情報に基づいてファイルサーバから該当のアプリケーションファイルをダウンロードするステップと,
アプリケーションサーバが前記ダウンロードされたアプリケーションファイルを実行し,アプリケーションをインストールするステップとを含む,
アプリケーションを管理するための方法。」

[相違点1]
本件補正発明は,「アプリケーションサーバ」が,「ホームネットワークミドルウェアを支援するフレームワークの搭載された」ものであるのに対し,引用発明の「ゲートウェイ装置」は,そのようなものでない点。

[相違点2]
本件補正発明は,「アプリケーションサーバ」が,「複数のホームネットワークミドルウェアを支援するフレームワークを通して」,アプリケーションファイルをダウンロードするのに対して,引用発明は,「複数のホームネットワークミドルウェアを支援するフレームワークを通して」ダウンロードするものでない点。

[相違点3]
本件補正発明は,「前記フレームワークは,OSGiに準拠するとともに,種々のデバイスをアクセスするためのミドルウェアサービスがバンドル機能として提供」されるものであるのに対して,引用発明は,そのようなものでない点。

[相違点4]
本件補正発明は,「前記フレームワークは,ホームネットワークミドルウェアモジュールを備え,」「前記アプリケーションサーバおよび前記被制御機器は,それぞれホームネットワークミドルウェアモジュールを備え」るものであるのに対して,引用発明は,そのようなものでない点

[相違点5]
本件補正発明において,「前記感知するステップは,前記フレームワークにバンドル形式で備えられた前記ホームネットワークミドルウェアモジュールを介して行われる」のに対して,引用発明においては,「ホームネットワーク機器が接続されると,これを検知すること」は,そのように行われるものでない点。


オ 当審の判断
上記[相違点1]?[相違点5]について,以下において,まとめて検討する。

(ア) 引用文献2について
上記<引用文献記載事項2-1>には,ホームネットワークとWAN(インターネット・公衆網等)との間の高機能なインタフェースを実現する装置であるレジデンシャルゲートウェイが記載され,上記<引用文献記載事項2-3>には,レジデンシャルゲートウェイの基盤ソフトウェアであって,組み込み用サーバの業界標準であるOSGi(Open Services Gateway Initiative)の仕様に準拠し,ネットワーク対応モジュール(例えばBluetoothモジュール)などを含むモジュール構造を備えることで,機能の追加,更新がモジュール単位で可能となる基盤ソフトウェアが記載され,上記<引用文献記載事項2-4>には,基盤ソフトウェアが,アプリケーション(OSGi仕様ではサービスと呼ぶ)のインストールや更新などの管理を行うフレームワークを備えることが記載され,上記<引用文献記載事項2-5>には,サービスを実現するための任意のプログラムやコンテンツをjarファイルにまとめたものであるバンドルを,フレームワークにインストールすることが記載されている。
そして,本願明細書の段落【0018】及び【0023】を参酌すると,本件補正発明の「ホームネットワークミドルウェアモジュール」とは,アプリケーションサーバと被制御機器の間の通信を行うための構成である。また,そもそも,ミドルウェアとは,オペレーティングシステムとアプリケーションの中間にあって,オペレーティングシステム上で動作し,アプリケーションに具体的で特別な機能を提供するソフトウェアであることが技術常識である。
してみれば,引用文献2に記載された,フレームワークにバンドルがインストールされることで実現される,ネットワーク対応モジュールによるサービスが,本件補正発明の「ホームネットワークミドルウェアモジュール」に対応することは自明である。

(イ) 判断について
a 上記<引用文献記載事項1-8>には,「以上の説明では,ホームネットワークの構築にIEEE1394バスを使用しているが,これに限定されるものではなく,プラグアンドプレイをサポートしているインタフェース機能を有するネットワーク(システム)であるならば,どのようなものでも使用可能である」と記載されているように,引用文献1には,ネットワークシステムを置き換えることが示唆されている。そして,上記<引用文献記載事項2-2>には,種々のホームネットワークに対応可能となることが示唆されている。また,引用発明と,引用文献2記載の発明は,共に,ホームネットワークにおけるゲートウェイとの技術分野に属する点で共通である。

b してみれば,ネットワークシステムを置き換えることが示唆されている引用発明に対して,同一技術分野に属し,かつ種々のネットワークに対応可能となることが示唆されている,引用文献2記載の発明を適用することには,十分な動機付けがあるといえる。よって,引用発明に対して,引用文献2記載の,OSGiに準拠したフレームワークと,フレームワークにバンドルがインストールされることで実現される,ネットワーク対応モジュールによるサービスを適用して,引用発明を,上記[相違点1]及び[相違点3]に係る構成を備えるものとすることは,当業者が容易になし得ることである。
また,引用発明のゲートウェイ装置に当該ネットワーク対応モジュールによるサービスを適用する際に,ゲートウェイ装置と通信するホームネットワーク機器にも当該ネットワーク対応モジュールによるサービスを適用して,引用発明を,上記[相違点4]に係る構成を備えるものとすることは,当業者が当然想到することである。
さらに,引用発明に対して,引用文献2記載のOSGiに準拠したフレームワークと,フレームワークにバンドルがインストールされることで実現される,ネットワーク対応モジュールによるサービスを適用することで,結果として,上記「ダウンロード」と上記「検知」が当該ネットワーク対応モジュールによるサービスを介してなされる構成,すなわち,上記[相違点2]及び[相違点5]に係る構成となることは,当業者にとって自明である。

c なお,上記<参考文献記載事項1-1>にみられるように,OSGiが,いろいろなホームネットワークを束ねて,外部のネットワークとの相互運用を可能にするゲートウェイサーバの標準化を目指した規格であることは,技術常識であるから,引用文献2に記載された発明を引用発明に適用した際に,ホームネットワークミドルウェアに制約されることなく動作するアプリケーション管理システムを具現でき,ホームネットワーク環境で家電機器の機能を動的に拡張できるとの効果を奏することも,当業者が当然予測し得る。
したがって,[相違点1]?[相違点5]は,いずれも,格別なものではない。

d 上記で検討したごとく,各相違点はいずれも格別なものではなく,また,各相違点を総合的に勘案しても,本件補正発明の奏する作用効果は,上記引用発明,引用文献2に記載された発明,及び参考文献1にみられる技術常識の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。
したがって,本件補正発明は,引用発明,引用文献2に記載された発明,及び参考文献1にみられる技術常識に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。


(3) 小括
以上のとおり,補正後の請求項1,同項を引用する請求項2?5,及び請求項10に係る発明は,発明の詳細な説明に記載したものでないのであるから,特許法第36条第6項第1号の要件を満たしておらず,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
また,本件補正発明は,その出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


4 補正却下の決定についてのむすび
したがって,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
平成25年4月18日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,平成24年8月22日付け手続補正書の請求の範囲の請求項1?請求項12に記載された事項により特定されるものである。そして,その請求項7に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,明細書及び図面の記載からみて,その請求項7に記載された事項により特定される,上記「第2 平成25年4月18日付けの手続補正についての補正却下の決定」の[理由]「1 補正の内容」に記載のとおりのものである。再掲すれば次のとおりである。

「多数の被制御機器と,前記被制御機器を制御するアプリケーションサーバとで構成されたホームネットワークのアプリケーション管理システムを用いてアプリケーションを管理するための方法において,
ホームネットワークミドルウェアを支援するフレームワークの搭載されたアプリケーションサーバが被制御機器の連結を感知するステップと,
前記アプリケーションサーバが被制御機器の制御に必要なアプリケーションをインストールするステップとを含み,
前記アプリケーションのインストールステップは,
アプリケーションサーバが被制御機器の制御に必要なアプリケーションファイルの位置情報を取得するステップと,
アプリケーションサーバが,複数のホームネットワークミドルウェアを支援するフレームワークを通して,前記取得された位置情報に基づいてファイルサーバから該当のアプリケーションファイルをダウンロードするステップと,
アプリケーションサーバが前記ダウンロードされたアプリケーションファイルを実行し,アプリケーションをインストールするステップとを含み,
前記フレームワークは,ホームネットワークミドルウェアモジュールを備え,
前記アプリケーションサーバおよび前記被制御機器は,それぞれホームネットワークミドルウェアモジュールを備え,
前記感知するステップは,前記ホームネットワークミドルウェアモジュールを介して行われることを特徴とするアプリケーション管理方法。」


2 引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1,引用文献2,参考文献1,及び各文献の記載事項は,上記「第2 平成25年4月18日付けの手続補正についての補正却下の決定」の[理由]「3 独立特許要件」(2)イに記載したとおりである。


3 対比・判断
本願発明は,上記「第2 平成25年4月18日付けの手続補正についての補正却下の決定」の[理由]「3 独立特許要件」(2)アに記載した本件補正発明から,「フレームワーク」に関する,「前記フレームワークは,OSGiに準拠するとともに,種々のデバイスをアクセスするためのミドルウェアサービスがバンドル機能として提供され」る,との限定事項と,「ホームネットワークミドルウェアモジュール」に関する,「前記フレームワークにバンドル形式で備えられた」,との限定事項を削除したものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の事項を附加したものに相当する本件補正発明が,上記「第2 平成25年4月18日付けの手続補正についての補正却下の決定」の[理由]「3 独立特許要件」(2)ウ,エに記載したとおり,引用発明,引用文献2に記載された発明,及び参考文献1にみられる技術常識に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用発明,引用文献2に記載された発明,及び参考文献1にみられる技術常識に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。


4 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-07-16 
結審通知日 2014-07-22 
審決日 2014-08-05 
出願番号 特願2009-258349(P2009-258349)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 572- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 多胡 滋  
特許庁審判長 仲間 晃
特許庁審判官 小林 大介
田中 秀人
発明の名称 アプリケーション管理システム及び方法  
代理人 実広 信哉  
代理人 渡邊 隆  

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