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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F23C
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 F23C
管理番号 1295356
審判番号 不服2014-3037  
総通号数 182 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-02-18 
確定日 2014-12-11 
事件の表示 特願2009- 89966「木質バイオマス直接粉砕燃焼方法と装置とボイラシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成22年10月28日出願公開、特開2010-242999〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年4月2日の出願であって、平成24年3月30日に手続補正書が提出され、平成25年7月25日付けで拒絶理由が通知され、平成25年9月27日に意見書および手続補正書が提出されたが、平成25年11月11日付けで拒絶査定がされた。
これに対し、平成26年2月18日に拒絶査定不服の審判請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。


第2 平成26年2月18日付け手続補正についての補正の却下の決定
<補正の却下の決定の結論>
平成26年2月18日付け手続補正を却下する。

<理由>
1 本件補正の内容
平成26年2月18日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項4については、本件補正により補正される前の(すなわち、平成25年9月27日付けで提出された手続補正書により補正された)下記(1)の特許請求の範囲の請求項4の記載を、下記(2)に示す特許請求の範囲の請求項4の記載に補正するものである。

(1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項4
「 【請求項4】
木質バイオマスの成形燃料を酸素濃度2%?11%でボイラ排ガスと温度調節された空気を搬送ガスとして使用して粉砕するローラミルと、
石炭を粉砕するローラミルと、
上記ローラミルから粉砕したバイオマスと石炭をそれぞれ別個に、又は混合して供給されるバーナを有する火炉と、
を備えたことを特徴とする木質バイオマス直接粉砕燃焼装置。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項4
「 【請求項4】
常温空気と加熱された空気を混合して温度を調節した空気とボイラ排ガスを混合して低酸素濃度の搬送ガスとして使用して木質バイオマスの成形燃料を粉砕するローラミルと、
石炭を粉砕するローラミルと、
上記ローラミルから粉砕した木質バイオマス燃料と石炭をそれぞれ別個に、又は混合して供給されるバーナを有する火炉
を備えたことを特徴とする木質バイオマス直接粉砕燃焼装置。」(なお、下線は、補正箇所を示すために請求人が付したものである。)

2 本件補正の適否
(1)補正の目的について
本件補正は、本件補正前の請求項4に「木質バイオマスの成形燃料を酸素濃度2%?11%でボイラ排ガスと温度調節された空気を搬送ガスとして使用して粉砕するローラミルと、」と記載されていたところを、「常温空気と加熱された空気を混合して温度を調節した空気とボイラ排ガスを混合して低酸素濃度の搬送ガスとして使用して木質バイオマスの成形燃料を粉砕するローラミルと、」として本件補正後の請求項4とするものであるところ、本件補正前の請求項4に記載されていた「酸素濃度2%?11%で」という発明特定事項を削除し、「低酸素濃度の」という発明特定事項を追加する補正事項を含むものである。
ここで、「低酸素濃度の」における低酸素濃度が具体的にどの程度の酸素濃度を示すものなのかが本願明細書に定義されておらず、また、一般的にも相対的な酸素濃度を示す表現であるので、「酸素濃度2%?11%で」から「低酸素濃度の」への変更が、上位概念から下位概念への変更とは認められない。
したがって、本件補正後の請求項4における上記補正事項は、直列的に記載された発明特定事項の一部を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものには該当しない。
また、上記補正事項が、請求項の削除、誤記の訂正あるいは明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものにも該当しないことは、明らかである。

(2)むすび
以上のとおり、上記補正事項を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項に違反するので、同法第159条第1項の規定により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

よって、上記<補正の却下の決定の結論>のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
以上のとおり、本件補正は却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項4に係る発明は、平成25年9月27日付け手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに願書に最初に添付された図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項4に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、特許請求の範囲の請求項4に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2<理由>1(1)のとおりである。

2 引用文献に記載された発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2005-291524号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに次の記載がある。なお、下線は当審が付したものである。

ア.「【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭を主燃料とし、バイオマス燃料を副燃料として燃焼用空気と共に火炉内に供給して燃焼させる複数のバーナを備えたバイオマス燃料の燃焼装置において、
石炭を供給して燃焼させる複数個のバーナのうち、一部のバーナに石炭に代えてバイオマス燃料を間欠供給する間欠供給手段を備えたことを特徴とするバイオマス燃焼装置。
【請求項2】
石炭を供給して燃焼させるバーナは、火炉内の燃焼ガス流れ方向に複数個設けられており、石炭に代えてバイオマス燃料を供給して燃焼させるバーナは、前記石炭を燃焼させるバーナの最下流以降に配置したバーナであることを特徴とする請求項1記載のバイオマス燃料の燃焼装置。
【請求項3】
石炭を主燃料とし、バイオマス燃料を副燃料として燃焼用空気と共に火炉内に供給して燃焼させる複数のバーナを備えたバイオマス燃料の燃焼装置において、
石炭を供給して燃焼させるバーナと、該石炭燃焼バーナとは別に起動用または補助用バーナである液体またはガス燃料燃焼バーナを設け、前記起動用または補助用のバーナにバイオマス燃料を間欠供給する間欠供給手段を備えたことを特徴とするバイオマス燃焼装置。
【請求項4】
石炭を供給して燃焼させるバーナは、火炉内の燃焼ガス流れ方向に複数個設けられており、起動用のバーナまたは補助用のバーナは、前記石炭を燃焼させるバーナの最下流以降に配置したバーナであることを特徴とする請求項3記載のバイオマス燃料の燃焼装置。
【請求項5】
主燃料である粉砕された石炭を火炉内の燃焼ガス流れ方向に複数段と各段の火炉幅方向に複数個設けられたバーナで燃焼用空気と共に火炉内に供給して燃焼させ、副燃料である粉砕されたバイオマス燃料を燃焼用空気と共に火炉内に供給して燃焼させるバイオマス燃料の燃焼方法において、
バイオマス燃料の投入熱量を、石炭を燃焼させるために各バーナ段のバーナに投入する熱量と同等とした低NOx燃焼モードと、バイオマス燃料の投入熱量を石炭を燃焼させるために各バーナ段のバーナに投入する熱量よりも少なくした低混合率モードとに切り換えて燃焼させることを特徴とするバイオマス燃料の燃焼方法。
【請求項6】
石炭を主燃料とし、バイオマス燃料を副燃料として燃焼用空気と共に火炉内に供給して燃焼させるバイオマス燃料の燃焼方法において、
石炭を燃焼する複数個設けられたバーナのうち、一部のバーナに石炭と共にバイオマス燃料を供給して同時燃焼し、全バーナの空気比を1以下とし、かつバイオマス燃料を混合投入するバーナの空気比は石炭のみを燃焼するバーナの空気比より低くすることを特徴とするバイオマス燃料の燃焼方法。
【請求項7】
粉砕したバイオマス燃料を気流搬送しながらバイオマス燃料の濃度の濃い濃縮流と濃度の薄い希薄流とに分離し、前記濃縮流は石炭とバイオマス燃料の同時燃焼バーナからバーナ空気比1以下で火炉内に投入し、前記希薄流は2段燃焼用空気口から火炉内に投入することを特徴とする請求項6記載のバイオマス燃料の燃焼方法。
【請求項8】
請求項1または3記載のバイオマス燃料の燃焼装置が蒸気を発生させる火炉から成ることを特徴とする石炭焚きボイラ。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】ないし【請求項8】)

イ.「【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭焚きボイラの火炉燃焼排ガス中の窒素酸化物を低減するに好適な低NOx燃焼技術に関するものである。
【0002】
本発明でいうバイオマス燃料とは化石燃料以外の植物系燃料であり、その種類を特定のものに限定するものではないが、特に森林や生活リサイクルとして出てくる全ての廃材や汚泥、さらにその二次加工製品等を含む燃料となりうる発熱量を有する植物系燃料をいうものとする。
【背景技術】
【0003】
従来、公害防止の観点から石炭焚きボイラにおける火炉燃焼排ガス中の窒素酸化物(以下NOxと称す)濃度の低減方法(低NOx燃焼法)として、いろいろな手段が施されてきた。
【0004】
一方、近年多量に排出されるバイオマスを有効に利用するためには、エネルギーへの変換すなわちサーマルリサイクルが望ましい方法という考え方が広まってきている。
【0005】
バイオマス燃料を有効にエネルギーに変換する場合には、できるだけ手を加えない方法、すなわち、できるだけエネルギーをかけない方法を選択しなければならいない。ここで有望視されているのが、特に既設の高効率ボイラにおいてバイオマス燃料を混焼する燃焼技術である。最新の火力発電所で用いられるボイラ効率は約40%と高く、従来から利用されているストーカ式ボイラや流動床ボイラなどでのボイラ効率が10?20%であるのに対してボイラ効率が非常に高い。
【特許文献1】特開2002-241761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
バイオマス燃料のサーマルリサイクルに関しては前記した既設の火力発電所用のボイラが有望であることから、バイオマス燃料を有効に既設ボイラに供給する技術を検討する必要がある。通常、既設の石炭焚きボイラにバイオマス燃料を供給する方法として次のような方法がある。
【0007】
1)主燃料の石炭中にバイオマス燃料を混合し、供給する方法
2)バイオマス燃料供給ノズルをボイラ水壁に設置して火炉へ吹き込む方法
3)石炭燃焼バーナと同軸上のバーナにバイオマス燃料を供給することができるようにバーナを改造する方法
4)既存の二段燃焼用エアポートからバイオマス燃料を供給できるように、同軸構造に変更する(エアポートと同軸にバイオマス燃料を供給するバーナとして用いること)方法
前記1)?4)のいずれの方法もバイオマス燃料の高効率燃焼には効果があるが、ボイラからの排ガス中のNOx排出量低減には限界がある。その理由はバイオマスを混焼用の補助燃料として使用した場合、その安定した供給量の確保が難しく、連続的に発電所へ供給できるのは、前記バイオマスの混合比率が5%以下と考えられているからである。
【0008】
本発明の課題は、バイオマス燃料を安定した補助燃料として利用して、既設の石炭焚き燃焼装置を低NOx燃焼で運転できるようにすることである。」(段落【0001】ないし【0008】)

ウ.「【0043】
本実施例の石炭バーナ4に石炭とバイオマス燃料を同時に燃焼させる燃焼技術の系統図を図6に示す。微粉炭バーナ4は複数段(図1では下流側バーナ4aと上流側バーナ4bに2分割された例を示す)に分割されている。バイオマス燃料バンカ13にあるバイオマス燃料はバイオマス燃料微粉砕機7により粉砕されて、バーナ4への搬送流路中に設けた濃縮器15によって濃縮流と希薄流に分離される。そのうち濃縮流は濃縮ライン16内を搬送されて下流側のバーナ段(図1では上流側バーナ部4b)から火炉1内へ石炭と同時に供給される。火炉1内へ投入されたバイオマス燃料は揮発分を多く含んでいるため高温雰囲気中で熱分解してNOx還元ガスを放出する。下流側のバーナ4aからバイオマス燃料を投入して熱分解させることで、バーナ部から2段燃焼用のエアポート2までに火炉1の内部に形成される還元領域の還元性を強化する。一方、希薄流は希薄ライン17から2段燃焼用のエアポート2に搬送されて火炉内に供給される。図6に示すように、バイオマス燃料をバイオマス燃料の専用の微粉砕機7単独で粉砕して粒度を調整した後、バイオマス燃料を気流搬送の途中の濃縮器15で濃度の高い濃縮流と低い希薄流に分離して、前記濃縮流を火炉1に面して高さ方向に複数段、設けられたバーナ4のうち、下流側バーナ4aから石炭と同時に投入する。
【0044】
このときバーナ空気比は低NOx燃焼を行うために1以下で運用するが、さらにバイオマス燃料を投入する混焼バーナ4の空気比は他の石炭燃焼バーナ4の空気比より低く設定する。前記設定により石炭とバイオマス燃料との同時燃焼火炎においてバイオマス燃料の燃焼によりNOx還元性を強化することができる。また、希薄流はエアポート2から火炉1内に供給すると希薄流内に含有される微量のバイオマス燃料を除去処理するのに集じん装置を設けることなく火炉内部で燃焼できるという効果がある。」(段落【0043】及び【0044】)

エ.「【0049】
また、搬送用気体としてボイラ出口からの燃焼排ガスを利用すればO_(2)濃度は低くバイオマス燃料を供給するバーナの空気比をバイオマス燃料を供給しないバーナの空気比より下げることができ、炉内脱硝効果を高めることが可能となる。
【0050】
図12に充填したバイオマス燃料の粒子の自然発火温度の測定結果を示すが、充填層高によらず自然発火温度は185℃以上であり、バイオマス燃料微粉砕機7の入口における搬送気体の温度を185℃未満とすることで火災防止に効果がある結果となった。
【0051】
また、粉じん爆発の危険性について、本システムで想定される最も危険側として0.074mm通過粒子を用いた爆発下限界粉じん濃度の結果を図13に示すが、横軸に示す酸素濃度が11%以下は爆発せず、バイオマス燃料の微粉砕機7の入口における搬送気体の酸素濃度を11%以下にすれば粉じん爆発の防止に効果がある結果となった。酸素濃度を下げることは自然発火防止にも役立つ。さらにバイオマス燃料を複数段のバーナ4のうち、火炉下流側のバーナ4aに限定して使用し、これらのバーナ4aへの空気比をバイオマス燃料を投入しないバーナ4bより低い空気比にすれば、炉内脱硝効果は高まる。
【0052】
バイオマス燃料の搬送用気体としては、図6のガス再循環ファン19を動力として火炉1から排出した燃料排ガスを用いる。排ガスの温度および酸素濃度調節は流量調整ダンパ10により行う。燃焼排ガスは酸素濃度が低く、バイオマス燃料の粉砕、搬送ラインでの火災防止に役立つのみでなく、バイオマス燃料を火炉1に供給するバーナの空気比を抑制して低NOx燃焼にも役立つ。
【0053】
図7および図8に石炭とバイオマス燃料とを同時に供給するバーナ部の詳細断面図を示す。図7は石炭を微粉砕し一次空気との混合流体流路21内の外周に燃焼用空気流路23、24が設けられた石炭バーナ4に、さらに前記混合流体流路21内に外部からバイオマス燃料と搬送気体の混合流体流路22を貫通挿入して設けバイオマス燃料を火炉1の内部に投入する。図7は石炭燃料の流路21とバイオマス燃料の気流搬送流路22とを同軸に設けた例である。また図8は石炭燃料の流路21の上流にバイオマス燃料の流路22を挿入し混合した後にバイオマス燃料を石炭との混合流体として火炉内に供給する例を示している。
【0054】
石炭の系統については、1次空気ファン9で供給された1次空気はミル6で粉砕された微粉炭を同伴して微粉炭バーナ4から火炉1に投入される。また、1次空気以外の燃焼用空気はFDF(押込み通風機)8で供給して熱交換器5を介して、風箱3に送られ、微粉炭バーナ4からは2次および3次空気として、残りは2段燃焼用エアポート2から炉内へ送入される。
【0055】
バイオマス燃料を搬送流路内で濃縮する濃縮器15としては、代表的なものに図9に示すサイクロン41を用いて旋回流44を与えて固体と気体の慣性力差を利用して濃縮流42と希薄流43に分離するサイクロン方式のもの、あるいは図10に示す配管45の曲がり部で曲がりの外側と内側で濃縮流42と希薄流43に分離するものがある。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、石炭焚き燃焼装置をバイオマス燃料用としても利用できるので、低コストで脱硝性能が高いバイオマス燃料燃焼装置及び燃焼方法として利用できる。」(段落【0049】ないし【0056】)

(2) ここで、上記(1)ア.ないしエ.及び図面から、次のことが分かる。
カ.上記イ.の段落【0002】の記載から、バイオマス燃料は、森林の廃材等からなる植物系燃料を含むことが分かる。

キ.上記エ.の段落【0052】の「排ガスの温度および酸素濃度調節は流量調整ダンパ10により行う。」という記載、並びに図6の「流量調整ダンパ10」の矢印記号の記載から、流量調整ダンパから空気を導入して排ガスの温度および酸素濃度を調節していることが分かる。

ク.上記ウ.の段落【0043】、エ.の段落【0051】及び【0052】並びに図6及び図13の記載、上記カ.及びキ.の記載から、微粉砕機7は、森林の廃材等からなるバイオマス燃料を酸素濃度11%以下で燃焼排ガスと空気を温度調節した搬送用気体として使用していることが分かる。

ケ.上記エ.の段落【0054】及び図6の記載から、ミル6は石炭を粉砕するものであることが分かる。

コ.上記ア.の【請求項6】、ウ.の段落【0043】、エ.の段落【0051】及び【0056】並びに図6の記載から、バイオマス燃料燃焼装置は、微粉砕機7及びミル6から粉砕したバイオマス燃料と石炭を混合して供給されるバーナ4aを有するボイラ1とを備えていることが分かる。

(3)上記(1)及び(2)より、引用文献には、次の発明が記載されている。
「森林の廃材等からなるバイオマス燃料を酸素濃度11%以下で燃焼排ガスと空気を温度調節された搬送用気体として使用して粉砕する微粉砕機7と、
石炭を粉砕するミル6と、
上記微粉砕機7及びミル6から粉砕したバイオマス燃料と石炭を混合して供給されるバーナ4aを有するボイラ1と、
を備えたバイオマス燃料燃焼装置。」(以下、「引用文献記載の発明」という。)

3 対比
本願発明と引用文献記載の発明を対比する。
引用文献記載の発明における「燃焼排ガス」は、その構成、機能及び技術的意義からみて、本願発明における「ボイラ排ガス」に相当し、以下同様に、「空気」は「空気」に、「搬送用気体」は「搬送ガス」に、「石炭」は「石炭」に、「バイオマス燃料」は「バイオマス」に、「混合して供給される」は「それぞれ別個に、又は混合して供給される」に、「バーナ4a」は「バーナ」に、「ボイラ1」は「火炉」に、「バイオマス燃料燃焼装置」は「木質バイオマス直接粉砕燃焼装置」に、それぞれ相当する。
そして、引用文献記載の発明における「森林の廃材等からなるバイオマス燃料」は、「木質バイオマス燃料」という限りにおいて、本願発明における「木質バイオマスの成形燃料」に一致する。
また、本願明細書の段落【0027】の「排ガスと空気を混合して酸素濃度と温度の2つを調整する必要があるので、このような系統になっている。ミル入口酸素濃度は、空気側と排ガス側の流量比率で決定されるが、温度が成り行きになるので、空気側の温度調整を行い、混合ガス出口すなわちミル入口温度を調整する。 」という記載から、引用文献記載の発明と同様に本願発明においても、排ガスと空気を混合することによって搬送ガスの温度を調節しているので、引用文献記載の発明における「燃焼排ガスと空気を温度調節された搬送用気体として使用」は、「ボイラ排ガスと空気を温度調節された搬送ガスとして使用」という限りにおいて、本願発明における「ボイラ排ガスと温度調節された空気を搬送ガスとして使用」に一致する。
さらに、引用文献記載の発明における「酸素濃度11%以下」は、「酸素濃度11%以下」という限りにおいて、本願発明における「酸素濃度2%?11%」に一致し、引用文献記載の発明における「微粉砕機7」及び「ミル6」は、「ミル」という限りにおいて、本願発明における「ローラミル」に一致する。

したがって、両者は、
「木質バイオマス燃料を酸素濃度11%以下でボイラ排ガスと空気を温度調節された搬送ガスとして使用して粉砕するミルと、
石炭を粉砕するミルと、
上記ミルから粉砕したバイオマスと石炭を混合して供給されるバーナを有する火炉と、
を備えた木質バイオマス直接粉砕燃焼装置。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
「木質バイオマス燃料」に関して、本願発明においては、「木質バイオマスの成形燃料」であるのに対して、引用文献記載の発明においては、「森林の廃材等からなるバイオマス燃料」である点(以下、「相違点1」という。)。

「酸素濃度11%以下」に関して、本願発明においては、「酸素濃度2%?11%」であるのに対して、引用文献記載の発明においては、「酸素濃度11%以下」である点(以下、「相違点2」という。)。

「ミル」に関して、本願発明においては、「ローラミル」であるのに対して、引用文献記載の発明においては、「微粉砕機7」及び「ミル6」である点(以下、「相違点3」という。)。

「ボイラ排ガスと空気を温度調節された搬送ガスとして使用」することに関して、本願発明においては、「ボイラ排ガスと温度調節された空気を搬送ガスとして使用」するのに対して、引用文献記載の発明においては、「燃焼排ガスと空気を温度調節された搬送ガスとして使用」する点(以下、「相違点4」という。)。

4 相違点についての判断
そこで、上記各相違点1ないし4について、以下に検討する。

・相違点1について
一般的にバイオマス燃料をペレットなどの固形燃料に加工することは本願出願前に周知な技術(例えば、特開2006-125687号公報の段落【0038】及び【0039】等参照。以下、「周知技術1」という。)であるので、引用文献記載の発明における「森林の廃材等からなるバイオマス燃料」をペレットなどの固形燃料に加工し、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

・相違点2について
引用文献記載の発明においては、「酸素濃度11%以下」と上限は規定されているが、下限については規定されていない。
ここで、本願明細書の段落【0029】の「なお、通常、石炭ボイラ運転上、排ガスの酸素濃度が2%よりも低くなることは無いので、ミル5に供給するガスの全量を排ガスとした場合の酸素濃度が下限となる。」という記載から判断すると、本願発明における酸素濃度の下限を「2%」に規定することに格別な臨界的な意義を見いだすことはできず、このように酸素濃度の下限を「2%」に規定することは、当業者が適宜規定する程度の設計事項である。
してみると、引用文献記載の発明においても搬送ガスの全量を排ガスとすることは可能であるので、その際の搬送ガスの酸素濃度を下限とし、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

・相違点3について
一般的に石炭やバイオマス燃料を粉砕するためのミルとしてローラミルを採用することは本願出願前に周知な技術(例えば、特開2005-291539号公報の段落【0084】、特開2008-80285号公報の段落【0021】及び図2、特開2007-101135号公報の段落【0006】等参照。以下、「周知技術2」という。)であるので、引用文献記載の発明における「微粉砕機7」及び「ミル6」としてローラミルを採用し、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

・相違点4について
本願発明においては温度調節された空気を用いるのに対して、引用文献記載の発明においては温度調節されていない空気を用いる点で、両者は異なるところ、本願明細書の段落【0025】ないし【0027】の記載、引用文献の上記エ.の段落【0050】ないし【0052】の記載等から判断すると、両者共に、ボイラ排ガスと空気を混合した搬送ガスの温度及び酸素濃度を調節している点で一致する。
ここで、本願発明において温度調節された空気を用いることに関して、平成26年2月18日に提出された審判請求書の「3-4-1.搬送ガスの「酸素濃度」と「温度」の個別の調整」において、請求人は、搬送ガスの酸素濃度と温度が個別に調整できる点で引用文献記載の発明と相違する旨主張している。
しかし、排ガスを循環して燃焼室に供給する技術において、排ガスと温度調節された空気を混合することによって混合ガスの温度と酸素濃度を別々に調節することは本願出願前に周知の技術(例えば、特開2004-84981号公報の段落【0022】、【0043】ないし【0045】及び図2等参照。以下、「周知技術3」という。)である。
してみると、排ガスを循環して燃焼室に供給する技術である点で、引用文献記載の発明と周知技術3は共通するので、引用文献記載の発明に周知技術3を適用して、上記相違点4に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願発明が、引用文献記載の発明及び周知技術1ないし3から予想しえない格別の効果を奏するものとも認められない。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献記載の発明及び周知技術1ないし3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-10-09 
結審通知日 2014-10-14 
審決日 2014-10-27 
出願番号 特願2009-89966(P2009-89966)
審決分類 P 1 8・ 57- Z (F23C)
P 1 8・ 121- Z (F23C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 稲葉 大紀  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 林 茂樹
藤原 直欣
発明の名称 木質バイオマス直接粉砕燃焼方法と装置とボイラシステム  
代理人 松永 孝義  

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