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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 H01H
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01H
管理番号 1295566
審判番号 不服2014-4448  
総通号数 182 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-03-07 
確定日 2015-01-06 
事件の表示 特願2009-544133「局所的な触覚フィードバック」拒絶査定不服審判事件〔2008年7月10日国際公開、WO2008/082776、平成22年5月6日国内公表、特表2010-515228、請求項の数(23)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2007年11月2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年12月29日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成25年11月1日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年11月7日)、これに対し、平成26年3月7日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に手続補正がされたものである。

第2 平成26年3月7日付けの手続補正(以下「本件補正」という。) の適否
1 本願補正発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1、10、及び20について、
「【請求項1】
触覚フィードバックを生成する表面であって、該表面は、
前記表面の第一の部分を形成する独立した領域であって、該独立した領域は周囲を有する、独立した領域と、
前記表面の第二の部分を形成する第二の領域であって、該第二の領域は、前記独立した領域の前記周囲を取り囲んでおり、前記独立した領域及び該第二の領域は、前記表面の同一平面上に形成される、第二の領域と、
前記独立した領域と前記第二の領域の間にあり、前記独立した領域の前記周囲を取り囲む空隙領域であって、該空隙領域は、前記独立した領域を、前記第二の領域から分離する空隙領域と、
前記独立した領域及び前記第二の領域と同一の平面上に、前記第一の部分及び前記第二の部分と共に連続的な表面を形成し、且つ前記第二の領域に対する前記独立した領域の移動を容易にするように、前記空隙領域内に充填される変形可能な封止材と、
を備え、
前記独立した領域は、前記触覚フィードバックの際にアクチュエータと接触する、表面。」、

「【請求項10】
ユーザ入力に応じて触覚フィードバックを提供するシステムであって、該システムは、
前記触覚フィードバックを生成する表面
を備え、
該表面は、
前記表面の第一の部分を形成する独立した領域であって、該独立した領域は周囲を有する、独立した領域と、
前記表面の第二の部分を形成する第二の領域であって、該第二の領域は、前記独立した領域の前記周囲を取り囲んでおり、前記独立した領域及び該第二の領域は、前記表面の同一平面上に形成される、第二の領域と、
前記独立した領域と前記第二の領域の間にあり、前記独立した領域の前記周囲を取り囲む空隙領域であって、該空隙領域は、前記独立した領域を、前記第二の領域から分離する空隙領域と、
前記独立した領域及び前記第二の領域と同一の平面上に、前記第一の部分及び前記第二の部分と共に連続的な表面を形成し、且つ前記第二の領域に対する前記独立した領域の移動を容易にするように、前記空隙領域内に充填される変形可能な封止材と、
を備えており、
前記システムは、
前記独立した領域に連結されるアクチュエータであって、該アクチュエータは、前記触覚フィードバックを生成する、アクチュエータ、を備える、システム。」、及び

「【請求項20】
表面上の触覚可能な位置にフィードバックを提供する方法であって、該方法は、
前記触覚可能な位置が押圧されているという指示を受領するステップであって、前記触覚可能な位置は、前記表面の第一の部分を形成する独立した領域から形成される、受領するステップ、
を含み、
前記表面は、
前記表面の第二の部分を形成する第二の領域であって、該第二の領域は、前記独立した領域の周囲を取り囲んでおり、前記独立した領域及び該第二の領域は、前記表面の同一平面上に形成される、第二の領域と、
前記独立した領域の前記周囲を取り囲むことにより、前記独立した領域を、前記第二の領域から分離する空隙領域と、
前記独立した領域及び前記第二の領域と同一の平面上に、前記第一の部分及び前記第二の部分と共に連続的な表面を形成し、且つ前記第二の領域に対する前記独立した領域の移動を容易にするように、前記空隙領域内に充填される変形可能な封止材と、
を備え、
前記方法は、
前記触覚可能な位置が押圧されているという前記指示に基づいて、前記独立した領域に触覚効果を生成するステップであって、該生成するステップは、前記表面の裏側で、前記独立した領域をアクチュエータと接触させるステップを含む、生成するステップ、
を含む、方法。」
と補正(下線は補正箇所を示すために請求人が付したものである。)することを含むものである。

上記補正は、請求項1、10、及び20において、発明を特定するために必要な事項である「独立した領域」(請求項1)、「表面」(請求項10)、及び「生成するステップ」(請求項20)について、それぞれ「前記触覚フィードバックの際にアクチュエータと接触する」、「前記触覚フィードバックを生成する」、及び「前記表面の裏側で、前記独立した領域をアクチュエータと接触させるステップを含む」との限定を付するものであり、かつ、補正前の請求項1、10、及び20に記載された発明と補正後の請求項1、10、及び20に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
そこで、本件補正後の請求項1、10、及び20に記載される発明(以下「本願補正発明1」、「本願補正発明10」、及び「本願補正発明20」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)否かについて検討する。

2 刊行物
(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張の日前に頒布された特開平1-243325号公報(以下「刊行物1」という。)には、「入力装置」に関して、図面(特に、第2図、第3図参照。)と共に、次の事項が記載されている。

ア 「従来の技術
近年、ビデオテープレコーダ、テレビジョン受像機等のAV機器や複写機、ファクシミリ、電話器、パソコン等のOA機器及び調理器や洗濯機等の一般家庭電化機器においては、マイコンやICの発達と共に機器の電子化、インテリジェント化が急激に進みつつある。その中で、これらの機器に用いる入力装置は、データの入力に伴い、良好なスイッチフィーリングを有するものが好まれていた。」(1ページ右下欄15行?2ページ左上欄4行)

イ 「発明が解決しようとする課題
しかしながら上記入力装置においては下記問題点が発生した。
(1)スイッチフィーリングはダイヤフラムによって決まるため、軽いいわゆるフェーザタッチの節度フィーリングの入力装置の実現は困難で、且つこの節度フィーリングを自由にコントロールする事は構造上不可能であった。
(2)上記構成の位置検出用入力タブレットでは、構造上節度機構を付加することができなかった。
本発明は、このような従来の問題点を解決するものであり、操作力に関係なく良好なスイッチフィーリングを得ることのできる入力装置を提供することを目的とするものである。」(2ページ右上欄9行?左下欄2行)

ウ 「第2図はパネルスイッチの断面図であり、21は弾性ゴムやスポンジなどより成るダンパー22を介してケース23上に載置した強磁性体の鉄やステンレスなどより成る基板で、24はこの基板21上には固定接点25を有する下FPC26とこの固定接点25に対向する位置にスペーサ27を介して可動接点28設けてなる上FPCである。29は上FPC24、スペーサ27および下FPC26により構成されたメンブレンスイッチで、このメンブレンスイッチ29とこの上部に配置されボタンデザイン30を施こされ、その外周を接着剤によりケース23に固定されたデザインパネル31によりスイッチユニット32を構成している。33は上記基板21の下側に固定された振動ユニットとなるボビン34、コイル35、強磁性体よりなるロッド36、消音キャップ37より成るプランジャーで、38は上記ケース23の下に上記メンブレンスイッチの下FPC26の延長部分と電気的に接続されるコネクタ39と、上記メンブレンスイッチ29のスイッチングの検知およびプランジャー33の制御等を行うマイコン40と、上記コネクタ39、上記プランジャー33および上記マイコン40間を電気的に接続するプリント基板41より構成される制御回路である。第3図により第2図のパネルスイッチの動作状態を説明する。なお、第3図は要部拡大断面図で、第3図aは定常状態を示す。指圧により対応する可動接点28と固定接点25を接触させ、メンブレンスイッチ29を第3図bのごとくスイッチングすると、制御回路38によりこのスイッチングの検知を行い、振動ユニット33のコイル35に動作電流を流し、コイル35の内側に配置されたロッド38が磁化され、強磁性体で形成された基板21側に移動する。ロッド38は消音キャンプ37に第3図cのごとく衝突、吸着し、その衝撃がスイッチユニット32を介して指にスイッチングフィーリングとして伝わることになる。メンブレンスイッチ29をOFFすると(指はスイッチユニット32に軽く接触している)、コイル36の動作電流は制御回路38により停止させられ、ロッド38が消磁され重力により、ボビン34の底に落ち軽い衝撃をスイッチユニット32を介して指にスイッチフィーリングとして伝えるものである。」(3ページ右上欄5行?右下欄7行)

エ 第2図は、パネルスイッチの断面図である。同図には、デザインパネル31の上面の外周とケース23の上面との間に隙間があり、両者を分離することが示されている。

上記記載事項及び図示内容を総合し、本願補正発明1の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「振動ユニット33からの衝撃が伝わるデザインパネル31の上面であって、前記デザインパネル31の上面は、前記振動ユニット33からの衝撃が基板21、下FPC26、及び上FPC24を介して伝わる、上面。」

(2)また、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張の日前に頒布された国際公開第2006/070854号(以下「刊行物2」という。)には、「薄型キーシート」に関して、図面(特に、図3、図6参照。)と共に、次の事項が記載されている。

ア 「[0009] このような現状に対して、本発明が解決しようとする課題は、ハンディ、モバイル機器の携帯性を一層向上させるように、その厚さを極力薄型化するためにキーユニット部分の個々の独立した構成要素を重積する数を減らすことと、薄型化を阻んでいた原因の一つであるキートップを裏面から照明するための光源の高さを制限することと、併せて生活防水性及び防塵性を高めることとを課題とする。」

イ 「[0021] 図1乃至図6は本発明薄型キーシートの実施例1を示すものである。本実施例のキーユニットは、図2、図3及び図6に示すように、各種キー2a、2b及び2cを集合させて一体に形成したSUS等の薄い金属板から成るキートップ2と、各キー毎にその外周に沿って配置されたガスケット3からキーシート1を構成し、その下側に樹脂成形によるプリント回路基板5を密着配置したものである。
[0022] 図6において、横に伸びる一点鎖線8は、キートップ2が押されたときに、キートップ2の底部がガスケット3及びメタルドーム4の弾性に抗して押し下げられる位置を示す。キートップ2がこの一点鎖線8の位置まで押し下げられたときには、キートップ2の裏面の押し子7によって押圧されて、プリント回路基板5上に配置された2つの常開接点(図示省略)の間をメタルドーム4が短絡する。これにより、キートップ2が押されている間だけ、電気回路が完成されることになる。なお、9は、スペーサであり、キートップ2をその外周部で支持するためのものである。
[0023] 図1乃至図3及び図6に示すように、キートップ2は、各キー2a、2b及び2cの機能をそれぞれ示すアルファベット、記号及び/又は数字等を照光式とするために、キートップ2を構成する金属板の表面から裏面までを貫通してアルファベット、記号及び/又は数字等の形状に合わせた貫通孔2dが設けられている。これら貫通孔2dは、図6の部分拡大図示で示すように、防水及び防塵のため、適宜な透明樹脂2fにより埋められている。また、キートップ2は、各キー2a、2b及び2cの領域に対応させこれらを区切るように、切れ込み線2eが設けられている。
[0024] 該切れ込み線2eは、図6に示すように、キートップ2を構成する金属板の表面から裏面までを貫通している。これにより、各キー2a、2b及び2cは一端部分でのみ他と連結された状態となり、連結された部分が略ヒンジ状の機能を果たして各キー2a、2b及び2cが押圧時には上下に動き易くする働きを為す。なお、各切れ込み線2e内には、防水、防塵のため、各キー2a、2b及び2cの動きを妨げないように、一部にのみ付着した適宜な樹脂2fによって埋められている(図6参照)。
[0025] キートップ2の各キー2a、2b及び2cの裏面に対して、透過照明用の光源として、印刷によってEL(Electro-luminescence)素子6が形成されている。
[0026] キートップ2の裏面又はプリント回路基板5の表面には、各キー2a、2b及び2cの位置に対応させて、ディスペンサー10又はスクリーン印刷(厚みが0.3mm以下の場合)などを使用して線状またはドット状で所望のパターンにのガスケット3が形成される(図4及び図5参照)。このガスケット3を介してプリント回路基板5上に直接キートップ2を配置固定する。このような構成を採ることによって、従来のキーパッドが不要になり、キーパッドを用いる場合よりも薄型化が可能になる。」

ウ 「[0029] プリント回路基板5表面のキートップ2の各キー2a、2b及び2cに対応した所定部分に、ディスペンサー10を介してガスケット3の材料を付着させる作業状態を図4の断面図で示す。図4(a)には、破線で示す各キー領域の外形に合わせてその内側に線状に付着させる状態を、図4(b)には、各キー領域に合わせて適宜な間隔でドット状に付着させる状態をそれぞれ示す。また、表裏を反転させたキートップ2の裏面の各キー2a、2b等の外形線に沿ってその内側に、ガスケット3の材料を付着させる時の作業状態を、図5(a)及び図5(b)の各斜視図で示す。
[0030] 図6に示すように、ガスケット3は、キートップ2の裏面に付着させた状態である程度盛り上がった状態を保ち、流れて形状が崩れてしまうことが無く、形状を保ったまま固化し、所定のクッション性を保つ。なお、図4(a)及び図5(a)に示すように、ガスケット3を線状に付着させる場合、その一部を切り欠いて適宜な空隙を設けて、キーの押圧に伴うエアー抜き部分とすることもでき、このような空隙を設けない場合では、プリント回路基板5のスルーホールを同様なエアー抜き部分とすることができる。
[0031] 個々のEL素子6への照明電力供給用の配線手段は、特に限定されない。例えば、図6に示すように、プリント回路基板5上のプリント配線5aの適宜な箇所に導電ゴムなどによって接点突起11を設け、該接点突起11の上端がEL素子6側の接点と常時接触する構造を採用してもよい。」

エ 図3には、キートップ2に設けられた円環状のキー2c(図中、キートップ2の右側部分参照。)の内側に円形領域を設け、その周囲を切れ込み線2eによって円環状のキー2cと区切ることが示されている。

オ 図6には、キートップ2に設けられた切れ込み線2eがキートップ2を貫通し切れ込み線2e内に透明樹脂2fが埋められること、キートップ2が押し下げられた位置を示す一点鎖線8の位置からみて押し下げられる前には切れ込み線2eの左右両側にあるキートップ2が同一平面上を形成すること、及び上記透明樹脂2fが切れ込み線2eの左右両側にあるキートップ2と同一の平面上にあることがそれぞれ示されている。

上記記載事項及び図示内容を総合すると、刊行物2には、次の発明(以下「刊行物2に記載された発明」という。)が記載されている。

「キートップ2を構成する表面であって、該表面は、
前記表面の第一の部分を形成する円環状のキー2cの内側の円形領域であって、該円形領域は周囲を有する、円形領域と、
前記表面の第二の部分を形成する円環状のキー2cであって、該円環状のキー2cは、前記円形領域の前記周囲を取り囲んでおり、前記円形領域及び該円環状のキー2cは、前記表面の同一平面上に形成される、円環状のキー2cと、
前記円形領域と前記円環状のキー2cの間にあり、前記円形領域の前記周囲を取り囲む切れ込み線2eであって、該切れ込み線2eは、前記円形領域を、前記円環状のキー2cから分離する切れ込み線2eと、
前記円形領域及び前記円環状のキー2cと同一の平面上に、前記円形領域及び前記円環状のキー2cと共に連続的な表面を形成し、且つ前記円環状のキー2cに対する前記円形領域の動きを妨げないように、前記切れ込み線2e内に充填される変形可能な透明樹脂2fと、
を備える、表面。」

3 対比
本願補正発明1と引用発明とを対比すると、後者の「振動ユニット33からの衝撃」は前者の「触覚フィードバック」に相当し、後者の「振動ユニット33からの衝撃が伝わる」ことは前者の「触覚フィードバックを生成する」ことに相当する。

また、前者の「触覚フィードバックを生成する表面」は、「独立した領域」と「第二の領域」と「空隙領域」と「封止材」とを備えるものであって、本願明細書の「各ボタン12?14は、表面10から材料を除去し、領域21の周囲の周りに空隙を形成することにより表面10から切断された、内側の独立した領域21(ボタン14について)から形成される。領域21の周りに形成された空隙は、表面10を完全に通って延在し(つまり、表面10の表側から後側へ延在し)、変形可能な封止材22で充填される。」(段落【0010】)との記載からみて、「表面」の「独立した領域」と「第二の領域」とは「表面」を完全に通る空隙によって切断され、当該空隙に変形可能な封止材が充填されたものであり、また、本願明細書の「封止材22は、表面10の他の領域に対して分離独立した部分21をわずかな量だけ移動可能とさせ、これにより、触覚感覚をボタン14上に生成させ、これは実質的にボタン14の分離独立した領域21に限定され、表面10の他の領域ではほぼ感知されることはない。」(段落【0010】)との記載及び図1(特に、ボタン14を指し示す直線参照。)からみて、触覚感覚、すなわち「触覚フィードバック」は、「表面」の「独立した領域」に実質的に限定されるものの「第二の領域」に僅かに伝わるものである。
一方、引用発明の「デザインパネル31の上面」は、振動ユニット33からの衝撃が伝わるものであり、「ケース23の上面」とは隙間により分離されているが、刊行物1の「ボタンデザイン30を施こされ、その外周を接着剤によりケース23に固定されたデザインパネル31」(前記「2」の「(1)」の「ウ」)との記載からみて、デザインパネル31がケース23に固定されているから、「ケース23の上面」には振動ユニット33からの衝撃が伝わるとは解されない。
そうすると、後者の「振動ユニット33からの衝撃が伝わるデザインパネル31の上面」は、前者の「触覚フィードバックを生成する表面」に相当するものである。

したがって、両者は、
「触覚フィードバックを生成する表面。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点〕
本願補正発明1は、「該表面は、前記表面の第一の部分を形成する独立した領域であって、該独立した領域は周囲を有する、独立した領域と、前記表面の第二の部分を形成する第二の領域であって、該第二の領域は、前記独立した領域の前記周囲を取り囲んでおり、前記独立した領域及び該第二の領域は、前記表面の同一平面上に形成される、第二の領域と、前記独立した領域と前記第二の領域の間にあり、前記独立した領域の前記周囲を取り囲む空隙領域であって、該空隙領域は、前記独立した領域を、前記第二の領域から分離する空隙領域と、前記独立した領域及び前記第二の領域と同一の平面上に、前記第一の部分及び前記第二の部分と共に連続的な表面を形成し、且つ前記第二の領域に対する前記独立した領域の移動を容易にするように、前記空隙領域内に充填される変形可能な封止材と、を備え、前記独立した領域は、前記触覚フィードバックの際に、アクチュエータと接触する」のに対し、
引用発明は、「前記デザインパネル31の上面は、前記振動ユニット33からの衝撃が基板21、下FPC26、及び上FPC24を介して伝わる」点。

4 当審の判断
(1)本願補正発明1について
そこで、相違点を検討する。
本願補正発明1は、本願明細書の「既知の触覚フィードバック装置には、特定の『ボタン』の境界内のフィードバック(すなわち振動)が独立していない傾向がある。・・・しかしながら、ボタンが『押圧されて』いるときに、ユーザがそのボタンを見ていない自動車環境および他の環境では、触覚フィードバックを標的領域のみに独立させることがより重要である。上述のことから、標的領域に対してフィードバックが独立するように、触覚フィードバックがタッチ制御に適用されるシステムおよび方法が必要である。」(段落【0004】及び段落【0005】)との記載からみて、特定の境界内に対して触覚フィードバックを独立させるようにすることを技術的課題とするものである。

これに対して、引用発明は、フェーザタッチの節度フィーリングの入力装置の提供を技術的課題とするもの(前記「2」の「(1)」の「イ」)であり、また、刊行物2に記載された発明は、キーユニット部分の個々の独立した構成要素の重積する数を減らし、かつ光源の高さを制限して、薄型化を図るとともに、生活防水性及び防塵性を高めることを技術的課題とするもの(前記「2」の「(2)」の「ア」)である。

そうすると、引用発明と刊行物2に記載された発明との技術的課題は、共通するとはいえず、しかも、本願補正発明1の技術的課題とも異なるものである。

また、本願補正発明1と刊行物2に記載された発明とを対比すると、後者の「円環状のキー2cの内側の円形領域」は前者の「独立した領域」に相当し、以下同様に、「円環状のキー2c」は「第二の領域」に、「切れ込み線2e」は「空隙領域」に、「前記円形領域の動きを妨げない」ことは「前記独立した領域の移動を容易にする」に、「透明樹脂2f」は「封止材」にそれぞれ相当するから、刊行物2に記載された発明の「キートップ2を構成する表面」は、本願補正発明1の用語で表すと、「表面の第一の部分を形成する独立した領域であって、該独立した領域は周囲を有する、独立した領域と、前記表面の第二の部分を形成する第二の領域であって、該第二の領域は、前記独立した領域の前記周囲を取り囲んでおり、前記独立した領域及び該第二の領域は、前記表面の同一平面上に形成される、第二の領域と、前記独立した領域と前記第二の領域の間にあり、前記独立した領域の前記周囲を取り囲む空隙領域であって、該空隙領域は、前記独立した領域を、前記第二の領域から分離する空隙領域と、前記独立した領域及び前記第二の領域と同一の平面上に、前記第一の部分及び前記第二の部分と共に連続的な表面を形成し、且つ前記第二の領域に対する前記独立した領域の移動を容易にするように、前記空隙領域内に充填される変形可能な封止材と、を備える」表面ということができる。

そうすると、刊行物2に記載された発明は、相違点に係る本願補正発明1の「前記独立した領域は、前記触覚フィードバックの際に、アクチュエータと接触する」という事項を備えるものでない。

また、刊行物2には、「円環状のキー2cの内側の円形領域」に引用発明の「振動ユニット33からの衝撃」を伝えることについての契機となる記載がないから、刊行物2に記載された発明の上記事項は、刊行物1に記載された事項及び刊行物2に記載された事項から、当業者が容易に想到し得たものでない。

以上から、引用発明に刊行物2に記載された発明を適用して、相違点に係る本願補正発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たということができない。

また、本願補正発明1が奏する効果は、引用発明及び刊行物2に記載された発明から、当業者が予測できる範囲内のものということができない。

したがって、本願補正発明1は、引用発明及び刊行物2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえないから、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

(2)本願補正発明10及び20について
本願補正発明10は、「前記独立した領域に連結されるアクチュエータ」との事項を有するものであり、また、本願補正発明20は、「前記独立した領域をアクチュエータと接触させるステップ」との事項を有するものである。

これらの事項は、本願補正発明1の「前記独立した領域は、前記触覚フィードバックの際に、アクチュエータと接触する」という事項と同様、刊行物1に記載された事項及び刊行物2に記載された事項から、当業者が容易に想到し得たものでない。

したがって、本願補正発明10及び20は、引用発明及び刊行物2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえないから、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

(3)まとめ
(1)及び(2)のとおりであるから、本件補正のうち請求項1、10、及び20についてする補正事項は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

そして、本件補正のその余の補正事項についても、特許法第17条の2第3項ないし第6項に違反するところはない。

5 むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

第3 本願発明について
本件補正は、上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1ないし23に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし23に記載された事項により特定されたとおりのものである。
そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-12-17 
出願番号 特願2009-544133(P2009-544133)
審決分類 P 1 8・ 575- WY (H01H)
P 1 8・ 121- WY (H01H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 段 吉享  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 冨岡 和人
小柳 健悟
発明の名称 局所的な触覚フィードバック  
代理人 松井 孝夫  
代理人 高橋 誠一郎  
代理人 岡部 讓  
代理人 内田 浩輔  
代理人 越智 隆夫  
代理人 川内 英主  

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