• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1295653
審判番号 不服2014-1118  
総通号数 182 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-01-22 
確定日 2014-12-25 
事件の表示 特願2012- 93164号「配線基板及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 7月19日出願公開、特開2012-138632号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯、本願発明
本願は、平成18年12月4日に出願した特願2006-327493号(以下「原出願」という。)の一部を平成24年4月16日に新たな特許出願としたものであって、平成25年11月13日付け(発送日:同年11月19日)で拒絶査定がされ、これに対し、平成26年1月22日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

そして、本願の各請求項に係る発明は、平成25年5月24日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
パッドと、前記パッドと接続されるビアとを備えた配線基板であって、
前記パッドは、前記配線基板から露出された金属層と、
前記配線基板から露出された金属層と前記ビアとの間に設けられ、前記ビアに含まれる金属が前記配線基板から露出された金属層に拡散することを防止する第1の金属層と、
前記ビアと前記第1の金属層との間に設けられ、前記第1の金属層よりも酸化されにくい第2の金属層と、を有しており、
前記パッドを構成する金属層のうち、前記第2の金属層の上面が粗化処理されており、
前記パッドは、その側面、及び、前記第2の金属層側の面が絶縁層により覆われており、前記配線基板から露出された金属層側の面が前記絶縁層より露出しており、
前記絶縁層には、前記第2の金属層の前記粗化処理された面を露出する開口部が形成され、
前記開口部に前記第2の金属層の粗化処理された面に接続される前記ビアが形成されており、
前記絶縁層の上面には前記ビアと接続された配線が設けられ、
前記絶縁層の上面、前記絶縁層に設けられた前記開口部の側面、および、前記開口部から露出する前記第2の金属層の粗化処理された面にシード層が設けられており、
前記シード層上にはさらにCu膜が設けられ、
前記シード層および前記Cu膜により、前記ビアと前記配線とが一体に設けられていることを特徴とする配線基板。」

2 引用文献及びその記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用され、原出願の出願日前に頒布された刊行物である特開2005-327780号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0059】
次に、前述の各実施形態に係る配線基板及び半導体パッケージの製造方法について説明する。先ず、第1の実施形態に係る配線基板及び半導体パッケージの製造方法について説明する。図8(a)乃至(e)は本実施形態に係る配線基板の製造方法をその工程順に示す断面図であり、図9(a)及び(b)は本実施形態に係る半導体パッケージの製造方法をその工程順に示す断面図であり、(c)はモールディングを設けた場合の半導体パッケージを示す断面図である。先ず、図8(a)に示すように、金属又は合金、例えばCuからなる支持基板1を用意し、この支持基板1上にレジスト2を形成し、パターニングする。次に、例えばめっき法により、エッチング容易層4、エッチングバリア層5、配線本体6をこの順に形成する。このとき、支持基板1上におけるレジスト2が除去された領域には、エッチング容易層4、エッチングバリア層5、配線本体6からなる導体配線層3が形成されるが、レジスト2が残存している領域には、導体配線層3は形成されない。エッチング容易層4は例えばCu単層のめっき層、Cu層及びNi層からなる2層めっき層又はNi単層のめっき層により形成し、厚さは例えば0.5乃至10μmとする。なお、前記2層めっき層におけるNi層は、高温下においてエッチング容易層4のCu層とエッチングバリア層5との拡散を防止するために設けるものであり、このNi層の厚さは例えば0.1μm以上である。エッチングバリア層5は例えばNi、Au又はPdめっき層であり、厚さは例えば0.1乃至7.0μmとする。配線本体6は例えばCu、Ni、Au、Al又はPd等の導体めっき層により形成し、厚さは例えば2乃至20μmとする。なお、エッチングバリア層5をAuにより形成する場合においても、配線本体6を形成するCuとの間の拡散を防止するために、エッチングバリア層5と配線本体6との間にNi層を設けてもよい。
【0060】
次に、図8(b)に示すように、レジスト2を除去する。次に、図8(c)に示すように、導体配線層3を覆うように基体絶縁膜7を形成する。基体絶縁膜7は、例えば、シート状の絶縁フィルムを支持基板1にラミネートするか、プレス法により支持基板1に貼付し、例えば100乃至400℃の温度に10分乃至2時間保持する加熱処理を行い、絶縁フィルムを硬化させて形成する。加熱処理の温度及び時間は絶縁フィルムの種類に応じて適宜調整する。そして、この基体絶縁膜7における導体配線層3の直上域の一部に、レーザ加工法によりヴィアホール10を形成する。
【0061】
次に、図8(d)に示すように、ヴィアホール10内に導電材料を埋め込むと共に、基体絶縁膜7上に上層配線11を形成する。このとき、上層配線11はヴィアホール10を介して配線本体6に接続される。配線基板13がCSP(チップサイズパッケージ)の半導体パッケージに使用される場合は、ヴィアホール10の直径は例えば75μmとし、配線基板13がFCBGA(フリップチップボールグリッドアレイ)の半導体パッケージに使用される場合は、ヴィアホール10の直径は例えば40μmとする。ヴィアホール10内に埋め込む導電材料及び上層配線11は、例えばCu、Ni、Au、Al又はPd等の導体めっき層からなり、上層配線11の厚さは例えば2乃至20μmとする。次に、上層配線11の一部を覆い、残部を露出させるように、ソルダーレジスト12を形成する。ソルダーレジスト12の厚さは例えば5乃至40μmとする。なお、このソルダーレジスト12の形成は省略することができる。
【0062】
次に、図8(e)に示すように、化学的エッチング又は研磨により、支持基板1を除去する。次に、図1に示すように、エッチング容易層4をエッチングして除去する。これにより、図1に示す本実施形態に係る配線基板13が形成される。このとき、支持基板1を形成する材料がエッチング容易層4を形成する材料と異なる場合、上述の如くエッチング工程が2回必要になるが、支持基板1とエッチング容易層4とが同じ材料により形成されている場合は、エッチング工程は1回でもよい。
【0063】
次に、図9(a)に示すように、エッチングバリア層5の露出部に複数のバンプ14を接合する。そして、このバンプ14を介して、配線基板13にフリップチップ法により半導体デバイス15を搭載する。このとき、半導体デバイス15の電極(図示せず)が、バンプ14に接続されるようにする。」

イ 図8?9を参照すると、 基体絶縁膜7は、導体配線層3の側面及び上面を覆っているといえる。

ウ 上記の記載事項及び図面の記載を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が実質的に記載されている。
「金属又は合金からなる支持基板1上にレジスト2を形成し、パターニングし、めっき法により、エッチング容易層4、エッチングバリア層5、配線本体6をこの順に形成し、
支持基板1上におけるレジスト2が除去された領域には、エッチング容易層4、エッチングバリア層5、配線本体6からなる導体配線層3が形成され、
エッチングバリア層5はAuめっき層であり、配線本体6はCuの導体めっき層により形成し、配線本体6を形成するCuとの間の拡散を防止するために、エッチングバリア層5と配線本体6との間にNi層を設け、
次に、導体配線層3を覆うように基体絶縁膜7を形成し、この基体絶縁膜7における導体配線層3の直上域の一部に、ヴィアホール10を形成し、
ヴィアホール10内に導電材料を埋め込むと共に、基体絶縁膜7上に上層配線11を形成し、上層配線11はヴィアホール10を介して配線本体6に接続され、
ヴィアホール10内に埋め込む導電材料及び上層配線11は、Cuの導体めっき層からなり、
次に、支持基板1を除去し、エッチング容易層4をエッチングして除去しており、
基体絶縁膜7は、導体配線層3の側面及び上面を覆っている、配線基板。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用され、原出願の出願日前に頒布された刊行物である特開2003-179358号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【請求項6】 前記バイアホールが接続する下層側の導体回路は、その表面が粗化処理されていることを特徴とする請求項1?5のいずれか1に記載の多層プリント配線板。」

イ 「【0008】このような本発明の多層プリント配線板において、
(1) バイアホールおよび導体回路の表面は粗化処理されていることがより望ましい構成である。この理由は、上層の層間樹脂絶縁層との密着性を改善するためである。
(2) 層間樹脂絶縁層に設けた開口部の内壁面は粗化処理されていることがより望ましい構成である。この理由は、その開口部に形成されるバイアホールとの密着性を改善するためである。
(3) バイアホールが接続する下層側の導体回路(内層パッド)は、その表面が粗化処理されており、その粗化面を介して前記バイアホールと接続していることがより望ましい構成である。この理由は、バイアホールと内層パッド(下層導体回路)との密着性を向上させるためである。
・・・(中略)・・・
(8) バイアホールは、層間樹脂絶縁層に設けた開口部の内面に金属核が打ち込まれ、次いで、その金属核を触媒核として無電解めっき膜が形成され、その無電解めっき膜上に電解めっき膜が形成されてなる構成でもよい。この理由は、その開口部に形成されるバイアホールとの密着性を改善するためである。」

ウ 「【0012】本発明の多層プリント配線板は、下層導体回路の表面に設けた粗化層を介してバイアホールが電気的に接続されていることが好ましい。これにより、その粗化層が導体回路とバイアホールの密着性を改善しているので、PCTのような高温多湿条件下やヒートサイクル条件下でもその導体回路とバイアホールとの界面で剥離が発生しにくくなる。」

エ 「【0048】(4) Pdをダーゲットとして、200W、1分間の条件でスパッタリングし、Pd核を層間樹脂絶縁層に打ち込んだ。
(5) 前記(4) の処理を施した基板を無電解めっき液に浸漬し、開口部を含む層間樹脂絶縁層の表面全体に厚さ 0.6μmの無電解銅めっき膜7を形成した(図1 (e) 参照)。
(6) めっきレジスト8を常法に従い形成した(図2 (a) 参照)。
【0049】(7) 次に、以下の条件にて、めっきレジスト非形成部分に電解めっきを施し、厚さ15μmの電解めっき膜を設けて導体回路を形成すると同時に、開口部内を充填してバイアホール10を形成した(図2 (b) 参照)。
〔電解めっき水溶液〕
硫酸銅・5水和物 : 60 g/l
レベリング剤(アトテック製、HL): 40 ml/l
硫酸 : 190 g/l
光沢剤(アトテック製、UV) : 0.5 ml/l
塩素イオン : 40 ppm
・・・(中略)・・・
【0050】(8) めっきレジスト8を剥離除去した後、硫酸と過酸化水素の混合液や過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどのエッチング液でめっきレジスト下の無電解めっき膜を溶解除去して、無電解めっき膜7と電解銅めっき膜9からなる厚さ約15μmの導体回路11を形成した。このとき、バイアホール表面は平坦であり、導体回路表面とバイアホールの表面の高さは同一であった。」

オ 上記「エ」、図1(e)及び図2(b)を参照すると、導体回路11とバイアホール10とは、下側に形成される無電解銅めっき膜7と上側に形成される電解銅めっき膜9とから形成され、一体に設けられているといえる。

3 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

(1)本願発明と引用発明との対応関係および一致点
ア 引用発明の「配線基板」は、本願発明の「配線基板」に相当する。
以下、同様に、「Ni層」は「第1の金属層」に、「Cuの導体めっき層」により形成される「配線本体6」は「第2の金属層」に、ヴィアホール10内に埋め込まれている「導電材料」は「ビア」に、「上層配線11」は「ビアと接続された配線」に、「基体絶縁膜7」は「絶縁層」に、それぞれ相当する。
引用発明では、支持基板1を除去し、エッチング容易層4をエッチングして除去しているから、エッチングバリア層5は配線基板13から露出される。すると、引用発明のAuめっき層からなる「エッチングバリア層5」は、本願発明の「配線基板から露出された金属層」に相当し、また、引用発明の「導体配線層3」のうち、「エッチングバリア層5」、「Cuの導体めっき層」及び「エッチングバリア層5と配線本体6との間」の「Ni層」からなる部分は、本願発明の「パッド」に相当する。

イ 引用発明では、ヴィアホール10内に導電材料を埋め込むと共に、基体絶縁膜7上に上層配線11を形成し、上層配線11はヴィアホール10を介して配線本体6に接続されているから、引用発明は本願発明の「パッドと、前記パッドと接続されるビアとを備えた」との構成を備える。

ウ 引用発明では、エッチング容易層4、エッチングバリア層5、配線本体6をこの順に形成しており、また、エッチングバリア層5と配線本体6との間にNi層を設けているから、引用発明は本願発明の「配線基板から露出された金属層と前記ビアとの間に設けられ」た「第1の金属層」との構成を備える。

エ 引用発明では、エッチング容易層4、エッチングバリア層5、配線本体6からなる導体配線層3が形成されているところ、この基体絶縁膜7における導体配線層3の直上域の一部に、ヴィアホール10を形成し、ヴィアホール10内に導電材料を埋め込んでおり、エッチングバリア層5と配線本体6との間にNi層を設けており、また、「Cuの導体めっき層」により形成される「配線本体6」は、Ni層よりも酸化されにくいから、引用発明は本願発明の「ビアと前記第1の金属層との間に設けられ、前記第1の金属層よりも酸化されにくい第2の金属層」との構成を備える。

オ 上記「ア」、「ウ」及び「エ」より、引用発明は本願発明の「パッドは、前記配線基板から露出された金属層と、前記配線基板から露出された金属層と前記ビアとの間に設けられた第1の金属層と、前記ビアと前記第1の金属層との間に設けられ、前記第1の金属層よりも酸化されにくい第2の金属層と、を有し」との構成を備える。

カ 引用発明では、導体配線層3を覆うように基体絶縁膜7を形成しており、また、基体絶縁膜7は、導体配線層3の側面及び上面を覆っており、また、支持基板1を除去し、エッチング容易層4をエッチングして除去しているから、引用発明は本願発明の「前記パッドは、その側面、及び、前記第2の金属層側の面が絶縁層により覆われており、前記配線基板から露出された金属層側の面が前記絶縁層より露出しており」との構成を備える。

キ 引用発明では、この基体絶縁膜7における導体配線層3の直上域の一部に、ヴィアホール10を形成し、ヴィアホール10内に導電材料を埋め込んでいるから、引用発明は本願発明の「絶縁層には、前記第2の金属層の面を露出する開口部が形成され、前記開口部に前記第2の金属層の面に接続される前記ビアが形成され」との構成を備える。

ク 引用発明では、基体絶縁膜7上に上層配線11を形成し、上層配線11はヴィアホール10を介して配線本体6に接続されているから、引用発明は本願発明の「絶縁層の上面には前記ビアと接続された配線が設けられ」との構成を備える。

ケ 以上のことから、本願発明と引用発明とは次の点で一致する。
「パッドと、前記パッドと接続されるビアとを備えた配線基板であって、
前記パッドは、前記配線基板から露出された金属層と、
前記配線基板から露出された金属層と前記ビアとの間に設けられた第1の金属層と、
前記ビアと前記第1の金属層との間に設けられ、前記第1の金属層よりも酸化されにくい第2の金属層と、を有しており、
前記パッドは、その側面、及び、前記第2の金属層側の面が絶縁層により覆われており、前記配線基板から露出された金属層側の面が前記絶縁層より露出しており、
前記絶縁層には、前記第2の金属層の面を露出する開口部が形成され、
前記開口部に前記第2の金属層の面に接続される前記ビアが形成されている、配線基板。」

(2)本願発明と引用発明との相違点
一方で、両者は次の点で相違する。
[相違点]
本願発明では、第1の金属層は「ビアに含まれる金属が前記配線基板から露出された金属層に拡散することを防止する」もので、また、「パッドを構成する金属層のうち、前記第2の金属層の上面が粗化処理され」、絶縁層の第2の金属層の面を露出する開口部で、ビアが形成される第2の金属層の面が、「粗化処理された面」となっており、「絶縁層の上面、前記絶縁層に設けられた前記開口部の側面、および、前記開口部から露出する前記第2の金属層の粗化処理された面にシード層が設けられており、前記シード層上にはさらにCu膜が設けられ、前記シード層および前記Cu膜により、前記ビアと前記配線とが一体に設けられている」のに対して、
引用発明では、Ni層(第1の金属層)は、配線本体6を形成するCuとの間の拡散を防止するもので、配線本体6(第2の金属層)の上面は粗化処理されてはおらず、また、シード層を備えているかどうか明らかではなく、ヴィアホール10内に埋め込む導電材料及び上層配線11は、Cuの導体めっき層から形成されている点。

4 判断
上記相違点について検討する。

(1)導体配線層3とヴィアホール10内に埋め込む導電材料との密着性を高めることについて
配線基板において、導体配線層とヴィアホール内に埋め込む導電材料との密着性を高めることは、原出願の出願日前において、一般的な周知の課題であったといえる。例えば、引用文献2(前記「2(2)」の「ア」?「ウ」を参照。)には、導体回路(内層パッド)(引用発明の「導体配線層3」に相当。)とバイアホール(引用発明の「ヴィアホール10内に埋め込む導電材料」に相当。)との密着性を向上させることが記載されている。
上記引用文献2以外にも、例えば、特開平11-243280号公報(特に、【請求項3】、段落【0011】を参照。)には、導体回路(内層パッド)(引用発明の「導体配線層3」に相当。)とバイアホール(引用発明の「ヴィアホール10内に埋め込む導電材料」に相当。)との密着性を向上させることが記載されており、
特開2004-146742号公報(特に、段落【0019】を参照。)には、銅箔(引用発明の「導体配線層3」に相当。)とビア(引用発明の「ヴィアホール10内に埋め込む導電材料」に相当。)との密着性が良好になり電気的接続を確実にすることが記載されており、
特開2004-356219号公報(特に、段落【0052】を参照。)には、金属パターン12(引用発明の「導体配線層3」に相当。)の表面を粗面化処理を行うと、ビア(引用発明の「ヴィアホール10内に埋め込む導電材料」に相当。)と金属パターン12との密着性を向上することが記載されており、
特開2001-85846号公報(特に、段落【0040】、【0062】を参照。)には、配線層3(引用発明の「導体配線層3」に相当。)と導体(引用発明の「ヴィアホール10内に埋め込む導電材料」に相当。)との密着強度を向上させることが記載されている。
このように、配線基板において、導体配線層とヴィアホール内に埋め込む導電材料との密着性を高めることは、原出願の出願日前において、一般的な周知の課題であったといえる。

(2)引用文献2記載の事項について
ア 引用文献2(前記「2(2)」を参照。)には、下層側の導体回路(内層パッド)とバイアホール10との密着性を向上させるために、バイアホール10が接続する下層側の導体回路(内層パッド)は、その表面が粗化処理されており、その粗化面を介して前記バイアホール10と接続していることがより望ましいこと、開口部を含む層間樹脂絶縁層の表面全体に無電解銅めっき膜を形成し、次に、電解銅めっき膜を設けて導体回路11を形成すると同時に、開口部内を充填してバイアホール10を形成すること、及び、導体回路11とバイアホール10とは、下側に形成される無電解銅めっき膜7と上側に形成される電解銅めっき膜9とから形成され、一体に設けられていることが記載されている。(以下「引用文献2記載の事項」という。)

イ 引用文献2記載事項における、「下層側の導体回路」、「バイアホール10」、「導体回路11」、「粗化処理」、「無電解銅めっき膜」及び「電解銅めっき膜」は、本願発明の「パッド」、「ビア」、「配線」、「粗化処理」、「シード層」及び「電解めっき」に、それぞれ相当する。

ウ 引用文献2記載の事項における「下層側の導体回路(内層パッド)とバイアホール10との密着性を向上させるために、バイアホール10が接続する下層側の導体回路(内層パッド)は、その表面が粗化処理されており、その粗化面を介して前記バイアホール10と接続していること」は、
本願発明における、パッドとビアの密着性を向上するために「パッドを構成する金属層のうち、前記第2の金属層の上面が粗化処理され」ること、及び、絶縁層の第2の金属層の面を露出する開口部で、ビアが形成される第2の金属層の面を「粗化処理された面」とすることに相当する。

エ また、電解めっきの際に、給電層となる無電解めっき膜によるシード層を設けた後に、電解めっき膜を形成することは、技術常識(例えば、特開2003-198085号公報の特に段落【0023】?【0024】、及び、特開2004-356219号公報の特に段落【0061】を参照。)である。
したがって、引用文献2記載の事項において、無電解銅めっき膜が、電解銅めっきの際の給電層となるシード層とするために設けられていることは、当業者であれば明らかなことである。

オ 前記「ウ」及び「エ」を考慮すれば、引用文献2記載の事項における、「開口部を含む層間樹脂絶縁層の表面全体に無電解銅めっき膜を形成し、次に、電解銅めっき膜を設けて導体回路11を形成すると同時に、開口部内を充填してバイアホール10を形成すること、及び、導体回路11とバイアホール10とは、下側に形成される無電解銅めっき膜と上側に形成される電解銅めっき膜とから形成され、一体に設けられていること」は、
本願発明における「絶縁層の上面、前記絶縁層に設けられた前記開口部の側面、および、前記開口部から露出する前記第2の金属層の粗化処理された面にシード層が設けられており、前記シード層上にはさらにCu膜が設けられ、前記シード層および前記Cu膜により、前記ビアと前記配線とが一体に設けられている」ことに相当する。

(3)引用文献2記載の事項の適用について
配線基板において、導体配線層とヴィアホール内に埋め込む導電材料との密着性を高めることは、前述のとおり原出願の出願日前において、一般的な周知の課題であるから、引用発明においても内在する課題であるといえる。また、引用発明と引用文献2とは、共に、配線基板において、上層配線と下層配線とをヴィアホール内に埋め込む導電材料を介して接続するという技術分野に属している。
すると、引用発明において、引用文献2記載の事項を適用して、導体配線層3とヴィアホール10内に埋め込む導電材料との密着性を高めるために、「パッドを構成する金属層のうち、前記第2の金属層の上面が粗化処理され」ること、絶縁層の第2の金属層の面を露出する開口部で、ビアが形成される第2の金属層の面が、「粗化処理された面」とすること、及び、「絶縁層の上面、前記絶縁層に設けられた前記開口部の側面、および、前記開口部から露出する前記第2の金属層の粗化処理された面にシード層が設けられており、前記シード層上にはさらにCu膜が設けられ、前記シード層および前記Cu膜により、前記ビアと前記配線とが一体に設けられている」ようにすることは、当業者が容易になし得たものといえる。

(4)Ni層の役割について
引用発明では、Ni層(本願発明の「第1の金属層」に相当。)は、配線本体6を形成するCuとの間の拡散を防止するもの、すなわち、配線本体6(本願発明の「第2の金属層」に相当。)を形成するCuと、Auめっき層からなるエッチングバリア層5(本願発明の「配線基板から露出された金属層」に相当。)との間の拡散を防止するものである。
ここで、前記「(3)」で述べたように、引用発明に引用文献2記載の事項を適用したものにおいては、ビアはCuからなるものとなるから、引用発明におけるNi層(本願発明の「第1の金属層」に相当。)は、実質的に、ビアに含まれる金属(すなわちCu)と、Auめっき層からなるエッチングバリア層5(本願発明の「配線基板から露出された金属層」に相当。)との間の拡散についても、防止するものとなる。
すると、本願発明の、第1の金属層は「ビアに含まれる金属が前記配線基板から露出された金属層に拡散することを防止する」構成は、引用発明に引用文献2記載の事項を適用したものにおいて、おのずと備えるものといえる。

(5)小括
以上のことから、引用発明において、本願発明の上記相違点に係る構成とすることは、引用文献2記載の事項から当業者が容易になし得たものといえる。
そして、本願発明により得られる作用効果も、引用発明及び引用文献2記載の事項から当業者であれば予測できる程度のものであって、格別のものとはいえない。
以上のことから、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、引用発明及び引用文献2記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-10-27 
結審通知日 2014-10-28 
審決日 2014-11-10 
出願番号 特願2012-93164(P2012-93164)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉澤 秀明  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 小関 峰夫
中川 隆司
発明の名称 配線基板及びその製造方法  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠彦  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ