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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F
管理番号 1295655
審判番号 不服2014-2755  
総通号数 182 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-02-13 
確定日 2014-12-25 
事件の表示 特願2008-103434「印刷表示媒体およびその表示方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年10月29日出願公開、特開2009-251579〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願は、平成20年4月11日の出願であって、平成22年7月27日付け、平成24年4月10日付け、及び平成25年2月22日付けに手続補正がなされ、同年11月14日付けで拒絶の査定がなされ、これに対し、平成26年2月13日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に手続補正書が提出されて特許請求の範囲等を補正する手続補正がなされたものである。

2.平成26年2月13日付けで提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願の発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「透明のシートの表面に複数の文字又は複数の文字と記号、図形および/または絵柄とが印刷され、前記透明のシートの裏面からも前記透明のシートの表面に印刷された複数の文字又は複数の文字と記号、図形および/または絵柄とが視認することができるようにした印刷表示媒体であって、前記複数の文字のいずれにも、前記透明のシートの表面から視認した場合と前記透明のシートの裏面から視認した場合とで表裏同一の字体として視認され、若しくは、前記透明のシートの表面から視認した場合と前記透明のシートの裏面から視認した場合とで表裏同様の意に読解又は認識することのできる文字が用いられ、透明素材から成る表示場所に貼り付けるために、前記透明のシートの裏面又は表面のいずれかに、透明の素剤が用いられて成る接着剤や粘着剤が塗布されていることを特徴とする印刷表示媒体。」
と補正された。(下線は審決で付した。以下同じ。)
上記補正は、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「透明素材から成る表示場所に貼り付けること」に関し、「透明のシートの裏面又は表面のいずれかに、透明の素剤が用いられて成る接着剤や粘着剤が塗布されている」と限定するものであって、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、前記に記載された事項により特定されるところ、本願補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された「実願平5-14195号(実開平6-64262号)のCD-ROM 」(以下「引用例」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
・「表面または表裏両面に印刷(4)された、透明または不透明のプラスチックス板またはプラスチックス・フィルムあるいは合成紙、上質紙等の表示板又はポスター等の貼付製品台紙等(1)の貼付面となる片面(2)に、透明の粘着剤糊(3)を印刷または塗布して設置した両面表示できるようにした貼付製品。」(【請求項1】)
・「表示用の表示文字、絵柄等を表面または表裏両面に印刷(4)された透明または不透明のプラスチックス板またはプラスチック・フィルムあるいは合成紙、上質紙等による表示板、ポスター、ステッカー、ラベル等の貼付製品台紙(1)の接着面となる片面(2)に、透明の粘着剤糊等(3)を、スクリーン印刷またはローラー塗布の方法により設置し保護紙を貼付する。」(段落【0006】)
・「表示印刷される絵柄等が表裏何れから見ても識別される絵柄の場合には透明素材を使用して片面のみの印刷にて効果が発揮できるが、表裏逆の文字、絵柄になる表示絵柄等には、裏打ち印刷後に同一または異なる印刷を行なうか、不透明素材を使用して表裏に同一または異なる印刷を行なうことが必要である。」(段落【0007】)
・「本考案は、危険防止表示、案内標識、宣伝広告媒体等の表示絵柄印刷等(4)
がされた表示板、ポスター、ステッカー、ラベル等の貼付製品(1)をガラス窓、ガラス・ドアーに貼付して表裏両側より識別するために、両面から識別できる方法により印刷された貼付製品の貼付面(2)に粘着剤(3)を印刷等の方法により設置してあるので、貼付して使用する場合にはガラス窓、ガラス・ドアー等の両側から識別できるので危険の防止標識、案内板または、宣伝広告媒体等に使用しての効果を提供することができる。」(段落【0007】)
これらの記載事項を総合すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「表示用の表示文字、絵柄等を表面または表裏両面に印刷された透明のプラスチックス板またはプラスチックス・フィルムの表示板又はポスター等の貼付製品台紙の貼付面となる片面に、透明の粘着剤糊を塗布して、ガラス窓、ガラス・ドアーに貼付した両面表示できるようにした貼付製品であって、
表示印刷される絵柄等が表裏何れから見ても識別される絵柄の場合には透明素材を使用して片面のみの印刷にて効果が発揮できるが、表裏逆の文字、絵柄になる表示絵柄等には、裏打ち印刷後に同一または異なる印刷を行なうことが必要である貼付製品。」

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、
後者における「『透明のプラスチックス板またはプラスチックス・フィルムの表示板又はポスター等の貼付製品台紙』、『透明素材』」は、その機能、作用等からみて、前者における「透明のシート」に相当し、以下同様に、「表示文字」は「(複数の)文字」に、「貼付製品」は「印刷表示媒体」に、「『ガラス窓』、『ガラス・ドアー』」は「透明素材から成る表示場所」に、「透明の粘着剤糊」は「透明の素剤が用いられて成る接着剤」に、それぞれ相当する。
また、後者の「貼付製品」は、表示用の表示文字、絵柄等を透明のプラスチックス板等の貼付製品台紙の表面に印刷して、両面表示できるようにしたものであるから、「透明のプラスチックス板等の貼付製品台紙の表面に表示文字と絵柄とが印刷され、前記透明のプラスチックス板等の貼付製品台紙の裏面からも前記透明のプラスチックス板等の貼付製品台紙の表面に印刷された表示文字と絵柄とが視認することができるようにした」ものといえる。
また、後者の「貼付製品」は、透明のプラスチックス板またはプラスチックス・フィルムの表示板又はポスター等の貼付製品台紙の貼付面となる片面に、透明の粘着剤糊を塗布してガラス窓、ガラス・ドアーに貼付して両面表示できるようにしたものであるから、「ガラス窓、ガラス・ドアーに貼り付けるために、透明のプラスチックス板等の貼付製品台紙の片面、つまり裏面又は表面のいずれかに、透明の粘着剤糊が塗布されている」といえる。
したがって、両者は、
「透明のシートの表面に複数の文字又は複数の文字と記号、図形および/または絵柄とが印刷され、前記透明のシートの裏面からも前記透明のシートの表面に印刷された複数の文字又は複数の文字と記号、図形および/または絵柄とが視認することができるようにした印刷表示媒体であって、透明素材から成る表示場所に貼り付けるために、前記透明のシートの裏面又は表面のいずれかに、透明の素剤が用いられて成る接着剤や粘着剤が塗布されている印刷表示媒体。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点]
本願補正発明は、「複数の文字のいずれにも、透明のシートの表面から視認した場合と前記透明のシートの裏面から視認した場合とで表裏同一の字体として視認され、若しくは、前記透明のシートの表面から視認した場合と前記透明のシートの裏面から視認した場合とで表裏同様の意に読解又は認識することのできる文字が用いられ」るのに対し、引用発明は、表示印刷される絵柄等が表裏何れから見ても識別される絵柄の場合には透明素材を使用して片面のみの印刷にて効果が発揮できるが、表裏逆の文字、絵柄になる表示絵柄等には、裏打ち印刷後に同一または異なる印刷を行なうことが必要である点。

(4)判断
上記相違点について以下検討する。
一般に、裏表のいずれからも視認される表示媒体において、裏表のいずれからも視認できるようにするために、表裏のいずれから見ても識別される文字、すなわち表裏同一の字体や表裏同様の意に読解又は認識することのできる文字を表示媒体に設けることは、周知の技術事項(例えば、登録実用新案第3139516号公報の【請求項1】、【0016】、及び図1、2、並びに実願昭59-126208号(実開昭61-41286号)のマイクロフィルムの第1頁末行?第2頁第1行、及び第1、3参照。)である。
そして、引用発明と上記周知の技術事項とは、表示媒体という共通の技術分野に属するものである。
また、引用発明は、「表示印刷される絵柄等が表裏何れから見ても識別される絵柄の場合には透明素材を使用して片面のみの印刷にて効果が発揮できるが、表裏逆の文字、絵柄になる表示絵柄等には、裏打ち印刷後に同一または異なる印刷を行なうことが必要である」、つまり印刷される絵柄が、表裏何れから見ても識別されるものであれば、透明素材を使用して片面のみの印刷を行い、表裏逆のものであれば、裏打ち印刷後に同一または異なる印刷を行ない、印刷される文字が、表裏逆のものであれば、裏打ち印刷後に同一または異なる印刷を行なうことが示されており、また一般に文字においては、表裏同一の字体が存在することは、明らかである。
してみると、上記のとおり、引用発明には、印刷される絵柄が、表裏何れから見ても識別されるものであれば、透明素材を使用して片面のみの印刷を行うことが示され、一般に文字においては、表裏同一の字体が存在することが、明らかであることから、これらの事項に接した当業者は、引用発明においても、印刷される文字として、表裏何れから見ても識別されるものが用いられ得るものであること、及び印刷される文字が、表裏何れから見ても識別されるもの(例えば、表裏同一の字体)であれば、透明素材を使用して片面のみの印刷を行うことを想起するものである。
以上のことを踏まえれば、引用発明において、上記周知の技術事項を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。
したがって、引用発明において、上記周知の技術事項を適用することにより、相違点に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

そして、本願補正発明の発明特定事項の全体によって奏される効果も、引用発明、及び上記周知の技術事項から当業者が予測し得る範囲内のものである。

よって、本願補正発明は、引用発明、及び上記周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおりであって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願の発明について
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成25年2月22日付けで提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「透明のシートの表面に複数の文字又は複数の文字と記号、図形および/または絵柄とが印刷され、前記透明のシートの裏面からも前記透明のシートの表面に印刷された複数の文字又は複数の文字と記号、図形および/または絵柄とが視認することができるようにした印刷表示媒体であって、
前記複数の文字のいずれにも、前記透明のシートの表面から視認した場合と前記透明のシートの裏面から視認した場合とで表裏同一の字体として視認され、若しくは、前記透明のシートの表面から視認した場合と前記透明のシートの裏面から視認した場合とで表裏同様の意に読解又は認識することのできる文字が用いられていることを特徴とする印刷表示媒体。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、及び、その記載内容は、上記「2.(2)引用例」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、実質的に上記「2.(1)補正後の本願の発明」で検討した本願補正発明の「透明素材から成る表示場所に貼り付けること」に関し、「透明のシートの裏面又は表面のいずれかに、透明の素剤が用いられて成る接着剤や粘着剤が塗布されている」との限定を省いたものである。

そうすると、本願発明を特定する事項の全てを含み、さらに限定したものに相当する本願補正発明が、上記「2.(3)対比」及び「2.(4)判断」に記載したとおり、引用発明、及び上記周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、及び上記周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明、及び上記周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-10-27 
結審通知日 2014-10-29 
審決日 2014-11-11 
出願番号 特願2008-103434(P2008-103434)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G09F)
P 1 8・ 121- Z (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青山 玲理谷山 稔男  
特許庁審判長 江成 克己
特許庁審判官 黒瀬 雅一
畑井 順一
発明の名称 印刷表示媒体およびその表示方法  
代理人 特許業務法人大貫小竹国際特許事務所  

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